Title
Studies on the Genetic Structure, the Gene Flow and the
Molecular Evolution at the Self-incompatibility Locus in Prunus
lannesiana var. speciosa( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
加藤, 珠理
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第450号
Issue Date
2007-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/21382
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本(国)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 加 藤 珠 理 (東京都) 博士(農学) 農博甲第450号 平成19年3月13日 学位規則第3条第1項該当 連合農学研究科 生物環境科学専攻 岐阜大学
Studies on the Genetic Structure,the Gene
Flow andthe Molecular Evolution atthe SelFincompatibility Locusin伽nushDne由Da Van甲ed脱 (オオシマザクラの自家不和合性遺伝子座における遺 伝構造、遺伝子流動および、分子進化に関する研究) 主査 岐阜大学 教 授 向 井 譲 副査 岐阜大学 教 授 古 田 副査 静岡大学 教 授 角 張 副査 信州大学 教 授 南 喜 嘉 峰 論 文 の 内 容 の 要 旨 本論文は、オオシマザクラ(舟〟月び血刀月e皮由朗Var.印胱血朗)の自然集団を対象とし て自家不和合性の原因遺伝子(∫遺伝子)座における遺伝構造、遺伝子涜動および、塩基 配列レベルでの分子進化の実態について調べたものであり、その内容は以下の4点に要約 される。 ① オオシマザクラの自家不和合性遺伝子座(以下∫遺伝子座と記す)にコードされるリ ボヌクレアーゼ(S-RNase)のcDNAクローンを単離した。S遺伝子座における遺伝的多様 性を調べるため、得られたcDNAをプローブとしてサザン法による制限酵素断片長多型 沌FI.P)分析をおこない、∫遺伝子型を決定した。分析したオオシマザクラの成熟個体(計 566個体)は全て∫対立遺伝子をヘテロ接合の状態で保持していた。このことは∫対立退 伝子がホモ接合しない原則に一致する結果である。また、分析した自然受粉種子351個の うち、1個のみが∫対立遺伝子をホモ接合の状態で保持しており、その他の種子は全て、 花粉親由来の∫対立遺伝子として母樹が持つ∫対立遺伝子とは異なる∫対立遺伝子を保持 していた。これらの結果は、RFLP法で決定した対立迫伝子が自家不和合性における自己 一非自己の認識機能を反映し、遺伝的多様性を効率よく分析する研究手法であることを示 すとともに、オオシマザクラの自家不和合性が非常に強いことを示唆している。 ②伊豆半島と伊豆諸島の6箇所の島々(計7箇所)に自生するオオシマザクラの島集団を
対象として、各集団における∫対立遺伝子の分布状況を調べた。全部で75個の∫対立遺伝 子が検出されたが、このうち伊豆半島の集団のみで観察された12個は近縁のサクラ野生種 に由来する可能性が考えられたため、オオシマザクラは種内に少なくとも63個の∫対立迫 伝子を保有すると推定された。各集団における推定対立遺伝子数は26∼62個で、各島の本 州からの距離と負の相関を示した。観察された∫遺伝子座の遺伝的多様性における地理的 勾配は、本州からより離れた島集団ほど遺伝子流動が制限されていることを示しており、 伊豆諸島の各島に生育するオオシマザクラの集団は、伊豆半島の集団が分布を拡大するこ とにより形成されてきたと推察された。また、集団間では対立遺伝子を高い割合(平均87%) で共有しあっており、集団間の遺伝的分化の指標となるたtは0.014(pく0.001)と有意で あるが小さかった。オオシマザクラの∫遺伝子座における集団間の遺伝的変異は、∫遺伝 子座作用する平衡淘汰のため、小さくなったことが考察された。 ③八丈島に生育するオオシマザクラの局所集団において、∫遺伝子座の集団内遺伝構造と 花粉を介した遺伝子流動について調べた。集団内の空間的な遺伝構造は個体の位置と遺伝 子型情報に基づいて評価した。また、モモ(凸Ⅵ触り旭傲如(L)Bat鋸b)で開発された SSRマーカー7個を利用して、中立遺伝子座における結果との比較を行った。SSR座、S遺 伝子座のいずれにおいても、空間的な遺伝構造は検出できなかった。集団内のオオシマザ クラ15個体から採集した自然受粉種子を調べた結果、母樹側の2個の∫対立遺伝子が期待 分離比1:1からずれることが確認され、∫対立遺伝子間で適応度が異なる可能性が示唆さ れた。 ④本研究で確認した∫対立遺伝子のうち、45個の∫対立遺伝子についてはその塩基配列を 決定し、分子進化学的解析を行った。分子系統樹において、オオシマザクラおよび、同じ サクラ属である近縁種の∫対立遺伝子は種特異的なクラスターを形成しなかった。このこ とはオオシマザクラの∫遺伝子座における対立遺伝子の分化が、種分化の前に起こったこ とを示唆している。更に、∫遺伝子座における遺伝子内組換えの有無を検証するため、多 型サイト間の連鎖不平衡を調べた。連鎖不平衡と多型サイト間の物理距離の関係から、オ オシマザクラの5遺伝子では、遺伝子内組換えが起こっていることが示唆された。有意な 連鎖不平衡の多くは可変(耶)領域の近傍に集中しており、5対立迫伝子の認識過程にお いて、肝領域が機能的に重要であることが示唆された。-また、5遺伝子の同義置換と非同 義置換の割合を解析することにより、塩基置換パターンを調べた。全領域を通して非同義 置換、同義置換共に多くみられ、5対立遺伝子間で塩基配列が大きく異なっていることが 反映されていたが、リボヌクレアーゼ活性中心のアミノ酸を含む額域(C2領域)では非同 義置換が特に少なく、機能的制約を強く受けてきたこと考えられる。逆に、HV領域では非 同義置換が同義置換を超過し、平衡淘汰を受けてきたことが反映されていた。 審 査 結 果 の 要 旨 本論文は、オオシマザクラ(血相血血βⅤ肛甲βdお∂の自然集団を対象とし て自家不和合性の原因遺伝子(∫遺伝子)座における遮伝構造、遺伝子流動および、塩基 配列レベルでの分子進化の実態について調べたものであり、その内容は以下の4点に要 約される。 ①オオシマザクラの∫迫伝子座にコードされるリボヌクレアーゼ(S一肌ase)のcDM クローンを単離した。∫遺伝子座における遺伝的多様性を調べるため、得られたd削Aを
プローブとしてサザン法による制限酵素断片長多型(RFLP)分析をおこない、∫遺伝子 型を決定した。分析したオオシマザクラの成熟個体(計566個体)は全て∫対立遺伝子
をヘテロ痩合の状態で保持していた。このことは∫対立遺伝子がホモ接合しない原則に
-敦する結果である。また、分析した自然受粉種子351個のうち、1個のみが∫対立遺伝 子をホモ接合の状態で保持しており、その他の種子は全て、花粉親由来の∫対立遺伝子 として母樹が持つ∫対立遺伝子とは異なる∫対立遺伝子を保持していた。これらの結果 は、RFI∬法で決定した対立遺伝子が自家不和合性における自己一非自己の認許機能を 反映し、迫伝的多様性を効率よく分析する研究手法であることを示すとともに、オオシ マザクラの自家不和合性が非常に強いことを示唆している。 ②伊豆半島と伊豆諸島の6箇所の島々(計7箇所)に自生するオオシマザクラの島集 団を対象として、各集団における∫対立遺伝子の分布状況を調べた。全部で75個の∫対 立遺伝子が検出されたが、このうち伊豆半島の集団のみで観察された12個は近縁のサク ラ野生種に由来する可能性が考えられたため、オオシマザクラは種内に少なくとも63個 の∫対立遺伝子を保有すると推定された。各集団における推定対立遺伝子数は26∼62個 で、各島の本州からの距離と負の相関を示した。観察された∫遺伝子座の遺伝的多様性 における地理的勾配は、本州からより離れた島集団ほど遺伝子流動が制限されているこ とを示しており、伊豆諸島の各島に生育するオオシマザクラの集団は、伊豆半島の集団 が分布を拡大することにより形成されてきたと推察された。また、集団間では対立遺伝 子を高い割合(平均87%)で共有しあっており、集団間の遺伝的分化の指標となるたtは 0.014(pく0.001)と有意であるが小さかった。オオシマザクラの∫遺伝子座における集 団間の遺伝的変異は、∫遺伝子座作用する平衡淘汰のため、小さくなったことが考察され た。 ③八丈島に生育するオオシマザクラの局所集団において、∫遺伝子座の集団内遺伝構造 と花粉を介した遺伝子流動について調べた。集団内の空間的な遺伝構造は個体の位置と遺伝子型情報に基づいて評価したこまた、モモ(jケ〟刀〟βク朗血(L.)Batseh)で開発さ
れたSSRマーカー7個を利用して、中立遺伝子座における結果との比較を行った。SSR座、 ∫遺伝子座のいずれにおいても、空間的な遺伝構造は検出できなかった。集団内のオオシ マザクラ15個体から採集した自然受粉種子を調べた結果、母樹側の2個の∫対立遺伝子 が期待分離比1:1からずれることが確認され、∫対立遺伝子間で適応度が異なる可能性が 示唆された。 ④本研究で確認した∫対立遺伝子のうち、45個の∫対立遺伝子についてはその塩基配 列を決定し、分子進化学的解析を行った。分子系統樹において、オオシマザクラおよび、 同じサクラ属である近縁種の∫対立遺伝子は種特異的なクラスターを形成しなかった。 このことはオオシマザクラの∫遺伝子座における対立遺伝子の分化が、種分化の前に起 こったことを示唆している。更に、5遺伝子座における遺伝子内組換えの有無を検証す るため、多型サイト間の連鎖不平衡を調べた。連鎖不平衡と多型サイト間の物理距離の 関係から、オオシマザクラの5遺伝子では、遺伝子内組換えが起こっていることが示唆 された。有意な連鎖不平衡の多くは可変(HV)領域の近傍に集中しており、5対立遺伝 子の認識過程において、HV領域が機能的に重要であることが示唆された。また、5遺伝 子の同義置換と非同義置換の割合を解析することにより、塩基置換パターンを調べた。 打Ⅴ領域では非同義置換が同義置換を超過し、平衡淘汰を受けてきたことが示された。保 存領域(C2領域)では非同義置換が特に少なかったが、その他の領域では非同義置換、 同義置換共に多くみられた。 以上について、審査委員全員の一敦で本論文が、岐阜大学大学院連合農学研究科の学 位論文として十分な価値を有すると判定した。学位論文の基礎となる学術論文 1)Kato,S.andMukai,Y(2004)Al1elicdiversityofS・RNaseatthe Selfincompatibilitylocusinnaturalfloweringcherrypopulation去(乃uDZLS hDDe点由DaVar.乎eCZbsa)Heredity92:249・256 2)Kato,S.,Iwata,H.,Tsumura,Y,andMukai,Y(inpress)DistributionofSalleles inislandpopulationsofflowerlngCherry;HzLDuS血DDe皮由DaVar・乎eCjb朗 Genes&GeneticSystems