V´
elu
の公式とその応用
増補改訂版∗ 佐藤 篤† E を完全体 k 上定義された楕円曲線, Γ をE(¯k) の有限な部分群でGal(¯k/k)-不変なものとす る. このとき, k 上定義された楕円曲線E∗ とk 上定義された分離的な同種写像 λ : E → E∗ で Ker λ = Γとなるようなものがk-同型の違いを除いて一意的に存在する(E∗ はE/Γ とも書かれ る). その証明の概略は次の通りである: (i)群 Γは T · φ = φ ◦ τT ( T ∈ Γ, φ ∈ ¯k(E)) により ¯k(E)に作用する; (ii)上の作用に関して不変で,かつ k 上定義されているような函数の全体 ¯ k(E)Γ∩ k(E) を函数体とするような k上の楕円曲線 E∗ が存在する;(iii)自然な単射k(E∗)→ k(E)が引き起こすk上の同種写像λ : E → E∗は分離的で, Ker λ = Γ となっている. E の Weierstrass 方程式と Γ が与えられたときに,上で述べたような楕円曲線 E∗ と同種写像 λ : E → E∗ を具体的に与えるのが標題にある V´elu の公式である. 本稿の前半では,まず §1 で 複素数体上の楕円曲線について簡単に復習した後, §2 と §3 でV´elu の原論文 [15] の解説を行う ([16] の §12.3 にも解説がある). V´elu の公式は, 体 k の標数が正でも成立し,また一般的な形の Weierstrass 方程式を扱えることから,有限体上定義された楕円曲線の間の同種写像の研究にも利 用できる(例えば [5]を見よ). 本稿の後半では,§4 でV´elu の公式が与える同種写像の形に関する 注意を述べ,それを用いて §5 で同種写像と非アルキメデス的付値による還元との関係を(特殊な 場合について) 調べた後,§6 と§7 で代数的整数論への応用を述べる. ∗仙台数論小研究集会2000 /仙台数論小セミナー2000 (2000年11月30日, 12月1日 於 東北大学大学院情報科 学研究科)報告集原稿[8]に加筆修正[2012年9月6日版] †東北大学大学院理学研究科数学専攻(E-mail: [email protected])
1 複素数体上の場合 V´elu の公式の解説に入る前に, k が複素数体C の場合について, E とΓ からE∗ と λを与え る方法を述べておく. よく知られているように, E がC上定義された楕円曲線の場合には,C内の格子L が存在して E(C) は複素トーラスC/Lと複素 Lie群として同型になり, L に付随するWeierstrass の℘-函数 ℘L(z) = 1 z2 + ∑ ω∈L−{0} ( 1 (z− ω)2 − 1 ω2 ) がみたす微分方程式 ℘′L(z)2 = 4℘L(z)3− 60G4(L) ℘L(z)− 140G6(L) から E の方程式が得られる. ここで, G2j(L) = ∑ ω∈L−{0} 1 ω2j は重さ2j のEisenstein 級数である. また, E(C)の部分群Γ にはL を含むような格子L∗ が対応 し,そのとき同種写像λ : E → E∗ にはC/L から C/L∗ への自然な写像が対応する: 0−−→ L∗/L−−→ C/L −−→ C/L∗ −−→ 0
y≀ y≀ y≀
0−−→ Γ −−→ E(C)−−→ Eλ ∗(C) −−→ 0 (横の列は共に完全). さて, L∗ に付随する℘-函数は Lに付随する℘-函数を用いて (1.1) ℘L∗(z) = ℘L(z) + ∑ ω∗∈L∗/L−{0} ( ℘L(z + ω∗)− ℘L(ω∗) ) と表せる. この式の両辺を微分して, (1.2) ℘′L∗(z) = ∑ ω∗∈L∗/L ℘′L(z + ω∗). これら2式と ℘-函数の加法公式により, ℘L∗(z)と℘′L∗(z)は℘L(z), ℘′L(z), G4(L), G6(L)ならび に℘L(ω∗), ℘′L(ω∗) (ω∗ ∈ L∗− L) の有理函数として表せることがわかる. それを具体的に計算す れば,同種写像 λ : E → E∗ の代数的な表示が得られる. さらに G2j(L∗) = G2j(L) + 1 (2j− 1)! ∑ ω∗∈L∗/L−{0} ℘(2jL −2)(ω∗)
より, G4(L∗)とG6(L∗) はG4(L), G6(L)ならびに℘L(ω∗), ℘′L(ω∗) (ω∗ ∈ L∗− L)の多項式とし て表せることがわかる. すなわち, E∗ の方程式はE の方程式と Γ に属する点の座標から具体的 に計算できる. なお, ∑ ω∗∈L∗/L−{0} ℘′L(ω∗) = 0 であるから, (1.2)は (1.3) ℘′L∗(z) = ℘′L(z) + ∑ ω∗∈L∗/L−{0} ( ℘′L(z + ω∗)− ℘′L(ω∗)) と書いてもよい. また,自明な式ではあるが, (1.4) d℘L ℘′L (z) = d℘L∗ ℘′L∗ (z) = dz が成り立つことを注意しておく. 2 V´elu の公式 本節では, V´eluの公式を手短に述べ,いくつかの計算例を与える. いま, E が方程式 (2.1) y2+ a1xy + a3y = x3+ a2x2+ a4x + a6 (ai ∈ k) により与えられているとする. まず, gx, gy ∈ k(E) をそれぞれ (2.2) gx = 3x2+ 2a2x + a4− a1y, gy =−2y − a1x− a3 によって定める. 以下, E 上の点 P ̸= O に対してx(P ), y(P ), gx(P ), gy(P )をそれぞれxP, yP, gxP, gPy と略記することにし, tP = gPx if P ∈ E[2] 2gPx − a1gPy otherwise , uP = (gPy)2 と置く. 次に, (Γ− {O})/ ± 1 の完全代表系 Γ0⊆ Γ をとり, t = ∑ T∈Γ0 tT, w = ∑ T∈Γ0 (uT + xTtT) と置く. これらはΓ0 の選び方に依らず,また t, w∈ k となっている. さらに, (2.3) A1 = a1, A2= a2, A3 = a3, A4 = a4− 5t, A6= a6− (a21+ 4a2)t− 7w と置く. 以上の記号の下で, V´elu の公式は次のように述べられる:
定理 2.1 (V´elu の公式) 楕円曲線E∗ = E/ΓとKer λ = Γなるk上定義された分離的な同種写 像λ : E → E∗ はそれぞれ (2.4) Y2+ A1XY + A3Y = X3+ A2X2+ A4X + A6 と (2.5) X = x + ∑ T∈Γ0 ( tT x− xT + uT (x− xT)2 ) , Y = y− ∑ T∈Γ0 ( uT 2y + a1x + a3 (x− xT)3 + tT a1(x− xT) + y− yT (x− xT)2 +a1uT − g x Tg y T (x− xT)2 ) により与えられる. 例 2.2 (Γ ∼=Z/2Z の場合) E が位数 2のk-有理点をもつとき,その方程式として (2.6) y2+ axy = x3+ bx2+ cx (a, b, c∈ k, c(a4+ 8a2b + 16b2− 64c) ̸= 0) なるものがとれて, T0 = (0, 0) が位数 2 の点を与える. 点 T0 が生成する E(k) の部分群を Γ と 置くと, Γ0 = { T0 = (0, 0) } で, a1= a, a2= b, a3 = 0, a4 = c, a6= 0;
gx= 3x2+ 2bx + c− ay, gy =−2y − ax;
gTx0 = c, gyT 0 = 0, tT0 = c, uT0 = 0; t = c, w = 0; A1= a, A2 = b, A3= 0, A4=−4c, A6=−c(a2+ 4b) となる. 従って,楕円曲線 E∗ と同種写像λ : E → E∗ はそれぞれ (2.7) Y2+ aXY = X3+ bX2− 4cX − c(a2+ 4b) と X = x 2+ c x , Y = x2y− acx − cy x2 により与えられる. なお, (2.6), (2.7) の判別式はそれぞれ ∆ = c2(a4+ 8a2b + 16b2− 64c), ∆∗ = c(a4+ 8a2b + 16b2− 64c)2 となる.
例 2.3 (Γ ∼=Z/3Z の場合) E が位数 3のk-有理点をもつとき,その方程式として (2.8) y2+ axy + by = x3 (a, b∈ k, b(a3− 27b) ̸= 0) なるものがとれて, T0 = (0, 0) が位数 3 の点を与える. 点 T0 が生成する E(k) の部分群を Γ と 置くと, Γ0 としては { T0= (0, 0) } がとれて, a1 = a, a2 = 0, a3 = b, a4= 0, a6 = 0; gx = 3x2− ay, gy =−2y − ax − b; gxT 0 = 0, g y T0 =−b, tT0 = ab, uT0 = b 2; t = ab, w = b2; A1 = a, A2= 0, A3= b, A4=−5ab, A6 =−b(a3+ 7b) となる. 従って,楕円曲線 E∗ と同種写像λ : E → E∗ はそれぞれ
(2.9) Y2+ aXY + bY = X3− 5abX − b(a3+ 7b) と X = x 3+ abx + b2 x2 , Y = x3y− a2bx2− abxy − 2ab2x− 2b2y− b3 x3 により与えられる. なお, (2.8), (2.9) の判別式はそれぞれ ∆ = b3(a3− 27b), ∆∗ = b(a3− 27b)3 となる. 例 2.4 (Γ ∼=Z/5Z の場合) E が位数 5のk-有理点をもつとき,その方程式として
(2.10) y2+ (a + b)xy + ab2y = x3+ abx2 (a, b∈ k, ab(a2+ 11ab− b2)̸= 0)
なるものがとれて, T0 = (0, 0) が位数 5 の点を与える. 点 T0 が生成する E(k) の部分群を Γ と 置くと, Γ0 としては { T0= (0, 0), [2]T0= (−ab, a2b) } がとれて, a1 = a + b, a2 = ab, a3= ab2, a4= 0, a6 = 0;
gx = 3x2+ 2abx− (a + b)y, gy =−2y − (a + b)x − ab2;
gTx0 = 0, gyT 0 =−ab 2, t T0 = ab 2(a + b), u T0 = a 2b4; g[2]Tx 0 =−a 3b, gy [2]T0 =−a 2b, t [2]T0 =−a 2b(a− b), u [2]T0 = a 4b2;
t =−ab(a2− 2ab − b2), w = a2b2(2a2− ab + b2);
A1 = a + b, A2= ab, A3 = ab2, A4= 5ab(a2− 2ab − b2),
となる. 従って,楕円曲線 E∗ と同種写像λ : E → E∗ はそれぞれ
(2.11) Y
2+ (a + b)XY + ab2Y = X3+ abX2+ 5ab(a2− 2ab − b2)X
+ ab(a4− 10a3b− 5a2b2− 15ab3− b4) と
X = x
5+ 2abx4− ab(a2− 3ab − b2)x3+ 3a2b3(a + b)x2+ a3b4(a + 3b)x + a4b6
x2(x + ab)2
(Y の表示は省略) により与えられる. なお, (2.10), (2.11)の判別式はそれぞれ
∆ =−a5b5(a2+ 11ab− b2), ∆∗=−ab(a2+ 11ab− b2)5 となる.
例 2.5 (Γ ∼=Z/7Z の場合) E が位数 7のk-有理点をもつとき,その方程式として
(2.12) y
2+ (a2+ ab− b2)xy + a3b2(a− b)y = x3+ ab2(a− b)x2
(
a, b∈ k, ab(a − b)(a3+ 5a2b− 8ab2+ b3)̸= 0)
なるものがとれて, T0 = (0, 0) が位数 7 の点を与える. 点 T0 が生成する E(k) の部分群を Γ と 置くと, Γ0 としては { T0= (0, 0), [2]T0 = ( −ab2(a− b), ab3(a− b)2), [3]T 0 = (
−a2b(a− b), a3b(a− b)2)}
がとれて,
a1= a2+ ab− b2, a2 = ab2(a− b), a3= a3b2(a− b), a4 = 0, a6= 0;
gx= 3x2+ 2ab2(a− b)x − (a2+ ab− b2)y, gy =−2y − (a2+ ab− b2)x− a3b2(a− b);
gTx 0 = 0, g y T0 =−a 3b2(a− b), tT0 = a 3b2(a− b)(a2+ ab− b2), u T0 = a 6b4(a− b)2; g[2]Tx 0 =−ab 3(a− b)3(a + b), gy [2]T0 =−ab 3(a− b)2, t[2]T0 =−ab3(a− b)2(a2− ab − b2), u[2]T0 = a2b6(a− b)4; gx [3]T0 =−a 3b(a− b)4, gy [3]T0 =−a 2b(a− b)3, t[3]T0 =−a 2b(a− b)3(a2− 3ab + b2), u [3]T0 = a 4b2(a− b)6; t =−ab(a − b)(a5− 6a4b + 8a3b2− 6a2b3+ ab4+ b5),
w = a2b2(a− b)2(2a6− 9a5b + 15a4b2− 8a3b3+ a2b4− 2ab5+ 2b6);
A1 = a2+ ab− b2, A2= ab2(a− b), A3= a3b2(a− b),
A4 = 5ab(a− b)(a2− ab + b2)(a3− 5a2b + 2ab2+ b3),
A6= ab(a− b)(a9− 18a8b + 76a7b2− 182a6b3+ 211a5b4
となる. 従って,楕円曲線 E∗ は
(2.13)
Y2+ (a2+ ab− b2)XY + a3b2(a− b)Y = X3+ ab2(a− b)X2
+ 5ab(a− b)(a2− ab + b2)(a3− 5a2b + 2ab2+ b3)X + ab(a− b)(a9− 18a8b + 76a7b2− 182a6b3+ 211a5b4
− 132a4b5+ 70a3b6− 37a2b7+ 9ab8+ b9)
により与えられる(λ : E → E∗ の表示は省略). なお, (2.12), (2.13)の判別式はそれぞれ
∆ =−a7b7(a− b)7(a3+ 5a2b− 8ab2+ b3), ∆∗ =−ab(a − b)(a3+ 5a2b− 8ab2+ b3)7 となる. 3 公式の証明 まず初めに,証明の方針を述べる. 各P ∈ E(¯k) に対し, ordP : ¯k(E)−→ Z ∪ {∞} をP に付随する正規化された加法付値とする. このとき, E の方程式(2.1)を与えることと,条件 (3.1)
ordO(x) =−2, ordO(y) =−3,
y2
x3(O) = 1;
ordP(x)≥ 0, ordP(y)≥ 0 if P ∈ E(¯k) − {O}
をみたすx, y∈ k(E) を与えることとは同等である.
さて, z =−x/y と置くと ordO(z) = 1 であるから, x, y をz によって点O の近傍で Laurent
展開することができる: (3.2) x = z −2− α 1z−1− α2− α3z− α4z2− α5z3− α6z4− · · · , y =−x z =−z −3+ α 1z−2+ α2z−1+ α3+ α4z + α5z2+ α6z3+· · · (αi ∈ k). これを (2.1)に代入し, 0次までの係数を比較することにより, (3.3) α1 = a1, α2= a2, α3 = a3, α4 = a1a3+ a4, α5 = a2a3+ a21a3+ a1a4, α6 = a21a4+ a31a3+ a2a4+ 2a1a2a3+ a23+ a6 を得る. これより, a1, a2, a3, a4, a6 は α1, α2, α3, α4, α6 で表せることがわかる.
ところで,以上の議論は E∗ に対しても適用できる. すなわち, E∗ の方程式(2.4)を得るために は,条件 (3.4) ordO(X) =−2, ordO(Y ) =−3, Y2 X3(O) = 1;
ordP(X)≥ 0, ordP(Y )≥ 0 if P ∈ E(¯k) − Γ
をみたす X, Y ∈ ¯k(E)Γ∩ k(E) を構成し, X の Z = −X/Y による点 O の近傍での Laurent
展開(の初めの方) を計算すればよい. また, 上の X, Y を x, y の有理函数で表せば, 同種写像 λ : E → E∗ の形がわかることになる. 以上の準備の下で, V´eluの公式は次のようにして示される: [定理 2.1 の証明] まず, X, Y ∈ ¯k(E) を (3.5) X = x + ∑ T∈Γ−{O} (x◦ τT − xT), Y = y + ∑ T∈Γ−{O} (y◦ τT − yT) により定める(cf. (1.1), (1.3)). このとき, 明らかに X, Y ∈ ¯k(E)Γ∩ k(E). また, (3.1) を使うと X, Y が条件(3.4) をみたすことも容易にわかる. 次に,上の X, Y をx, y の有理函数で表すために, x−P = xP, y−P = gyP + yP, g−Px = gxP − a1gyP, g−Py =−gyP や x◦ τP − xP = gxP x− xP +g y P(y− yP) (x− xP)2 , y◦ τP − y−P =− a1gxP x− xP − (gPx + a1gyP)(y− yP) (x− xP)2 − gyP(y− yP)2 (x− xP)3 等を使って(3.5)を変形すると, (2.5)なる表示が得られる. なお, t, w∈ k であることは t = ∑ T∈Γ−{O} gxT, w = ∑ T∈Γ0 (gyT)2+ ∑ T∈Γ−{O} xTgTx から直ちに従う. 最後に, X のZ =−X/Y による O の近傍での Laurent展開を計算するために, (2.5) に(3.2) を代入すると X = z−2− α1z−1− α2− α3z − (α4− t)z2− (α5− α1t)z3− (α6− α21− α2t− w)z4− · · · , Y =−z−3+ α1z−2+ α2z−1+ α3+ (α4+ t)z + α5z2+ (α6+ α2t + 2w)z3+· · ·
が得られる. これより (3.6) Z =−X Y = z + 2tz 5+ 3α 1tz6+ (4α21t + 4α2t + 3w)z7+· · · となり,これを逆に解いて, z = Z− 2tZ5− 3α1tZ6− (4α21t + 4α2t + 3w)Z7+· · · . 以上より X = Z−2− α1Z−1− α2− α3Z − (α4− 5t)Z2− (α5− 5α1t)Z3− (α6− 6α21t− 9α2t− 7w)Z4− · · · となることがわかり, (3.3)に注意して α1 = A1, α2 = A2, α3= A3, α4− 5t = A1A3+ A4, α6− 6α21t− 9α2t− 7w = A21A4+ A31A3+ A2A4+ 2A1A2A3+ A23+ A6 を解くと(2.3) を得る. 注意 3.1 (3.5)は X + ∑ T∈Γ−{O} xT = ∑ T∈Γ x◦ τT, Y + ∑ T∈Γ−{O} yT = ∑ T∈Γ y◦ τT とも書ける. 注意 3.2 (3.2)と(3.3)を用いると,方程式 (2.1)に付随するE 上の不変微分 ω(x, y) = dx −gy = dy gx はz によって ω(x, y) = (1 + a1z +· · · ) dz なる形に表されることがわかる. 同様に, GX, GY ∈ k(E∗) をそれぞれ (3.7) GX = 3X2+ 2A2X + A4− A1Y, GY =−2Y − A1X− A3 によって定めると,方程式 (2.4)に付随するE∗ 上の不変微分 ω(X, Y ) = dX −GY = dY GX はZ によって ω(X, Y ) = (1 + A1Z +· · · ) dZ
なる形に表される. ここで, ω(X, Y )は E 上の正則微分とも見なせて, (2.3)と(3.6)より ω(X, Y ) = (1 + a1z +· · · ) dz なる形に表せることに注意すると, ω(X, Y ) = ω(x, y) が成り立つことがわかる (cf. (1.4)). 4 いくつかの注意 以下, 楕円曲線 E∗ = E/Γ 上の点 Q̸= O に対してX(Q), Y (Q), GX(Q), GY(Q) をそれぞれ XQ, YQ, GXQ, GYQ と略記する. このとき,注意 3.1 より, Q∈ E∗(¯k)− {O}に対して (4.1) XQ+ ∑ T∈Γ−{O} xT = ∑ P∈λ−1(Q) xP, YQ+ ∑ T∈Γ−{O} yT = ∑ P∈λ−1(Q) yP が成り立つことがわかる. 4.1 GX, GY と gx, gy との関係 (3.7)で定めたGX, GY ∈ k(E∗) は(2.2)で定めたgx, gy ∈ k(E) を用いて GX = m gx+ n(gy)2, GY = m gy なる形に表される. ここで, m = 1− ∑ T∈Γ0 ( tT (x− xT)2 + 2uT (x− xT)3 ) , n = ∑ T∈Γ0 ( tT (x− xT)3 + 3uT (x− xT)4 ) . 従って, P ∈ E(¯k) − Γに対して (4.2) GXλ(P ) = mP gPx + nP(gPy)2, GYλ(P ) = mP gPy が成り立つ. ただし, mP, nP はそれぞれm(P ), n(P )の略記である. これらの等式は,注意3.2で 述べた dx −gy = dy gx = dX −GY = dY GX と dX = m dx, dY =−ngydx + m dy から容易に導かれる.
4.2 X と x との関係 同種写像λの次数 #Γをl と置くとき, (2.5)の初めの式は k-係数の多項式 I(x) = xl−( ∑ T∈Γ−{O} xT ) xl−1+· · · , J (x) = ∏ T∈Γ−{O} (x− xT) = xl−1− ( ∑ T∈Γ−{O} xT ) xl−2+· · · を用いて X = I(x) J (x)
なる形に書き直せる. [k(x) : k(X)]は[k(E) : k(E∗)] = lに一致するから, I(x)とJ (x)は共通因
子をもたない. いま, Q を[2]Q̸= Oなる E∗(¯k) 内の点とする. このとき,任意のP ∈ λ−1(Q)に対して P ̸= O, J (xP)̸= 0, I(xP)− XQJ (xP) = 0 が成り立つ. ここで, [2]Q̸= Oなる仮定より #{xP ; P ∈ λ−1(Q) } = #λ−1(Q) = l となることがわかるから, I(x)− XQJ (x) = ∏ P∈λ−1(Q) (x− xP) を得る. 4.3 λ から生じる体の拡大 Qを[2]Q̸= O なる E∗(¯k) 内の点とし,体 k(Q) = k(XQ, YQ), k ( λ−1(Q))= k(xP, yP ; P ∈ λ−1(Q) ) をそれぞれK, K′ と置く. 同種写像 λはk 上定義されているから, K はK′ の部分体となる. 以 下,体kの標数が 2 でないと仮定して,拡大 K′/K に関する注意を述べる. まず char(k)̸= 2であることより, K = k(XQ, GYQ), K′= k ( xP, gPy ; P ∈ λ−1(Q) ) . また, (4.2) より,任意の P ∈ λ−1(Q)に対してGYQ = mPgyP が成り立つ. 従って, [2]Q̸= O (i.e., GYQ̸= 0) なる仮定より mP ̸= 0, gPy = m−1P GYQ∈ k(xP, GYQ)
となり,次を得る: K′ = K(xP ; P ∈ λ−1(Q) ) . よって,§4.2 で述べたことより, K′ は多項式I(x)− XQJ (x)のK 上の最小分解体になる. 5 還元写像との関係 本節では,体k の非アルキメデス的な加法付値v : k→ R ∪ {∞} をひとつ固定し,その付値環, 付値イデアル,剰余体をそれぞれOv, pv, κv で表す. また, a∈ Ov のκv における像をeaで表す. さらに, l を素数とし, E をk 上の楕円曲線で位数l のk-有理点T0 をもつようなものとする. こ のとき, E の方程式 (5.1) y2+ a1xy + a3y = x3+ a2x2+ a4x + a6 で a1, a2, a3, a4, a6∈ Ov なるものがとれるが,上の条件に加えて xT0, yT0 ∈ Ov もみたすようにすることができる. このような方程式をひとつ固定し, eE = E mod pv を方程式 (5.2) y2+ea1xy +ea3y = x3+ea2x2+ea4x +ea6 が定めるκv 上の曲線とする. 方程式(5.1)に関する E の pv を法とする還元を
(5.3) E(k)∋ P 7−→ eP = P mod pv ∈ eE(κv) とし, E(k) の部分集合E0(k; pv), E+(k; pv) をそれぞれ E0(k; pv) = { P ∈ E(k) ; eP ∈ eEns(κv) } , E+(k; pv) = { P ∈ E(k) ; eP = eO} により定める. ここで, eEns(κv) はEe 上の非特異な κv-有理点のなす集合を表す. このとき, 明ら かに{O} ⊆ E+(k; pv)⊆ E0(k; pv). また,次も容易にわかる:
命題 5.1 (i) P ∈ E(k) − {O}に対し,
P ∈ E+(k; pv) ⇐⇒ xP ̸∈ Ov ⇐⇒ yP ̸∈ Ov. (ii) P ∈ E(k) − E+(k; pv) に対し,
P ̸∈ E0(k; pv) ⇐⇒ gxP ≡ g y
注意 5.2 点P ∈ E(k)がE0(k; pv)に属するか否かは,そのx-座標xP のpv を法とする合同条件 だけで定まる. より正確には,方程式(5.1) の判別式を∆とするとき:
(i) ∆̸≡ 0 (mod pv) ならば,E0(k; pv) = E(k).
(ii) ∆≡ 0 (mod pv)ならば, P ∈ E(k) がE0(k; pv) に属さないためには, xP ∈ Ov かつ f (xP)≡ f′(xP)≡ 0 (mod pv) if char(κv)̸= 2
x2P ≡ a4 (mod pv) if char(κv) = 2, a1≡ 0 (mod pv)
xP ≡ a3/a1 (mod pv) if char(κv) = 2, a1̸≡ 0 (mod pv)
が成り立つことが必要かつ十分. ここで,
(5.4) f (x) = 4x3+ (a21+ 4a2)x2+ 2(a1a3+ 2a4)x + a23+ 4a6.
集合 E0(k; pv), E+(k; pv) の定義は方程式 (5.1) の選び方に依存し, E, k や v から一意的に定 まっているわけではない. しかしながら, 次が成り立つことが確かめられる(証明は, 例えば [14] のChapter VII, Proposition 2.1 の証明と同様):
命題 5.3 集合E0(k; pv) はE(k) の部分群で, 還元写像 (5.3)をE0(k; pv) に制限したものは準同 型. また,その核はE+(k; pv) に一致する. 系 5.4 点T0 が生成するE(k)の部分群をΓ と置くとき: (i) Γ∩ E0(k; pv) は{O} または Γに一致する. (ii) Γ∩ E+(k; pv) ={O}. [証明] #Γ = l は素数であるから,その部分群であるΓ∩ E0(k; pv) やΓ∩ E+(k; pv) は{O} また はΓ に一致する. ところがxT0, yT0 ∈ Ov よりT0 ̸∈ E+(k; pv) であるから, Γ∩ E+(k; pv) は{O} でなければならない. 上の系の(ii)より,全ての T ∈ Γ − {O}に対して xT, yT, gxT, g y T, tT, uT ∈ Ov が成り立つことがわかる. いま, k上の楕円曲線 E∗ = E/Γの方程式 (5.5) Y2+ A1XY + A3Y = X3+ A2X2+ A4X + A6 とk 上の同種写像λ : E→ E∗ をV´eluの公式により定める. このとき, ai ∈ Ov と上で述べたこ とより A1, A2, A3, A4, A6∈ Ov
となることがわかる. また, §4.2 で定めた多項式 I(x), J (x) の係数は全て Ov に属する. eE∗ = E∗ mod pv を方程式 (5.6) Y2+ eA1XY + eA3Y = X3+ eA2X2+ eA4X + eA6 が定めるκv 上の曲線とし,方程式 (5.5)に関するE∗ のpv を法とする還元を E∗(k)∋ Q 7−→ eQ = Q mod pv ∈ eE∗(κv) とする. また, E∗(k) の部分集合E∗0(k; pv), E∗+(k; pv) を上と同様に定める. このとき, E∗ に対し ても,命題 5.1, 注意 5.2 ならびに命題 5.3と同様のことが言える. 注意 5.5 Γ∩ E0(k; pv) ={O}のとき,全てのT ∈ Γ − {O} はgxT ≡ g y T ≡ tT ≡ uT ≡ 0 (mod pv) をみたすから, t≡ w ≡ 0 (mod pv). 従って A1 = a1, A2 = a2, A3= a3, A4 ≡ a4 (mod pv), A6 ≡ a6 (mod pv) となり, eE∗ の方程式(5.6)はEe の方程式 (5.2)と一致する. また, ∆≡ ∆∗≡ 0 (mod pv). 以上の記号と仮定の下で,次が成り立つ (証明は後述): 定理 5.6 Qをλ−1(Q)⊆ E(k) なるE∗(k)内の点とするとき, Q∈ E∗0(k; pv) =⇒ λ−1(Q)∩ E0(k; pv)̸= ∅. 注意 5.7 集合 λ−1(Q) にはΓ が忠実かつ推移的に作用するから, Γ∩ E0(k; pv) = {O} ならば λ−1(Q)∩ E0(k; pv) は高々1 点より成り, Γ∩ E0(k; pv) = Γならばλ−1(Q)∩ E0(k; pv) はλ−1(Q) または ∅に一致する. 系 5.8 方程式 (5.1), (5.5) の判別式をそれぞれ∆, ∆∗ とするとき, ∆≡ 0 (mod pv) =⇒ ∆∗ ≡ 0 (mod pv). [証明]注意 5.5で述べたように, Γ∩ E0(k; pv) ={O} ならば∆≡ ∆∗ ≡ 0 (mod pv) となるから, Γ∩ E0(k; pv) = Γ の場合に証明すればよい. また, 体 kをその有限次拡大で置き換えて示せば十 分である. ∆≡ 0 (mod pv)とすると,十分大きなkに対し,E0(k; pv)に属さないようなP ∈ E(k)がとれる. このときQ = λ(P )∈ E∗(k) と置くと, P ∈ λ−1(Q)− E0(k; pv) であるから, λ−1(Q)̸⊆ E0(k; pv).
従って, 注意 5.7 よりλ−1(Q)∩ E0(k; pv) = ∅ となる(Γ∩ E0(k; pv) = Γ であることを用いた). よって定理より Q̸∈ E∗0(k; pv) となり, ∆∗≡ 0 (mod pv)がわかる.
[定理 5.6の証明] λ−1(Q)∩ E0(k; pv) =∅と仮定して, Γ∩ E0(k; pv)が{O}に一致する場合とΓ に一致する場合とに分けてQ̸∈ E∗0(k; pv) を導く. 明らかにQ̸= Oである.
(i) Γ∩ E0(k; pv) ={O} の場合. 仮定より,全てのP ∈ λ−1(Q) とT ∈ Γ − {O}はpv を法とし てEe の(高々 1 個しか存在しない) 特異点に還元されることになり, xP ∈ Ov, xP ≡ xT (mod pv) をみたす. 従って, (4.1)より, XQ∈ Ov ならびに XQ≡ xP (mod pv) が任意の P ∈ λ−1(Q) に対して成り立つことがわかる. よって, 注意 5.2 と注意 5.5 より, Q ̸∈ E∗ 0(k; pv) となることがわかる. (ii) Γ∩ E0(k; pv) = Γ の場合. P ∈ λ−1(Q)を任意にとると, P ̸∈ E0(k; pv) より xP, yP ∈ Ov, gPx ≡ g y P ≡ 0 (mod pv). また, Γ⊆ E0(k; pv) より
xP ̸≡ xT (mod pv) for T ∈ Γ − {O} が成り立つ. 従って(2.5)より XQ, YQ ∈ Ov となるが, (4.2)より GXQ ≡ GYQ≡ 0 (mod pv) となることもわかるから, Q̸∈ E∗0(k; pv). 6 代数体の不分岐巡回拡大の構成 以下, k は有限次代数体であるとし,その整数環を Ok で表す. また, l を素数とし, E をk 上の 楕円曲線で位数 lの k-有理点 T0 をもつようなものとする. このとき, E の方程式 (6.1) y2+ a1xy + a3y = x3+ a2x2+ a4x + a6 で a1, a2, a3, a4, a6∈ Ok
ならびに xT0, yT0 ∈ Ok をみたすものがとれる. このような方程式をひとつ固定しておく. 点T0 が生成するE(k)の部分 群をΓ と置くと,全ての T ∈ Γ − {O}に対して xT, yT ∈ Ok が成り立つ. 従って, k 上の楕円曲 線E∗ = E/Γの方程式 (6.2) Y2+ A1XY + A3Y = X3+ A2X2+ A4X + A6 とk 上の同種写像 λ : E→ E∗ をV´elu の公式により定めるとき, A1, A2, A3, A4, A6∈ Ok となる. また,§4.2で定めた多項式 I(x), J (x)の係数は全て Ok に属する. いま,Ok-係数の 3 次式 F (X)を F (X) = 4X3+ (A21+ 4A2)X2+ 2(A1A3+ 2A4)X + A23+ 4A6 (cf. (5.4))によって定め, ξ ∈ kに対してKξ = k (√ F (ξ)) と置く. E∗ の方程式(6.2)は左辺を平 方完成して (GY)2= F (X) と変形できるから, XQ = ξ ∈ k なるQ∈ E∗(¯k)− {O} に対してKξ は k(Q)に一致する. また, 各ξ ∈ k に対し, k-係数の l 次式 Λξ(x)を Λξ(x) = I(x)− ξJ(x) により定める. さらに,方程式(6.1), (6.2)の判別式をそれぞれ ∆, ∆∗ とし, k における∆の素因 子(系5.8より, ∆∗ の素因子でもある) pに対し,条件 F (ξ)≡ F′(ξ)≡ 0 (mod p) if 2 ̸≡ 0 (mod p) ξ2 ≡ A4 (mod p) if 2≡ A1 ≡ 0 (mod p) ξ≡ A3/A1 (mod p) if 2≡ 0, A1̸≡ 0 (mod p) (cf.注意 5.2) をみたすξ ∈ Ok,p のなす集合をXbad(k; p) とする. ここで,Ok,p は pにおける Ok の局所化を表す. 以上の記号と仮定の下で,次が成り立つ:
定理 6.1 Ξを次の 3 つの条件をみたすξ ∈ k のなす集合とする: (C0) F (ξ)̸= 0. (C1) Λξ(x)はk 上既約. (C2) k における∆の全ての素因子 p に対してξ ̸∈ Xbad(k; p). このとき, XQ∈ Ξ なる任意のQ∈ E∗(¯k)− {O}に対し, k ( λ−1(Q))/k(Q)は全ての有限素点で不 分岐な l次巡回拡大. 一般に,奇数次のGalois拡大は無限素点で分岐しないから,この定理と類体論により,直ちに次 が得られる: 系 6.2 l̸= 2 のとき,任意の ξ∈ Ξ に対し,体 Kξ の類数はl で割り切れる. 注意 6.3 体k が総虚の場合には, l = 2でも上の系と同様のことが成り立つ. 例 6.4 (例 2.2 の続き) 例 2.2においてa, b, c∈ Ok とすると, F (X) = 4X3+ (a2+ 4b)X2− 16cX − 4c(a2+ 4b). 例 6.5 (例 2.3 の続き) 例 2.3においてa, b∈ Ok とすると, F (X) = 4X3+ a2X2− 18abX − b(4a3+ 27b). [7] (あるいは [9])で述べた結果は,この例において a = 0としたものに当たる. 例 6.6 (例 2.4 の続き) 例 2.4においてa, b∈ Ok とすると,
F (X) = 4X3+ (a2+ 6ab + b2)X2+ 2ab(10a2− 19ab − 9b2)X + ab(4a4− 40a3b− 20a2b2− 59ab3− 4b4). 例 6.7 (例 2.5 の続き) 例 2.5においてa, b∈ Ok とすると,
F (X) = 4X3+ (a4+ 2a3b + 3a2b2− 6ab3+ b4)X2
+ 2ab(a− b)(10a5− 59a4b + 81a3b2− 61a2b3+ 10ab4+ 10b5)X + ab(a− b)(4a9− 72a8b + 304a7b2− 727a6b3+ 843a5b4
− 528a4b5+ 280a3b6− 148a2b7+ 36ab8+ 4b9).
それでは,定理 6.1 の証明を与える. そのアイデアは Weak Mordell-Weil Theorem の証明(例 えば [14] の Chapter VIII,§1 を見よ) や本田平氏の論説 [3] の §3 に基づく([2], [4]も参照のこ と). 方針は[7] や[9] と同様だが,以前は特殊な楕円曲線に対して直接的な計算をしていたところ を定理 5.6で置き換えたものになっている.
以下, XQ= ξ ∈ ΞなるQ∈ E∗(¯k)−{O}をひとつ固定し, K = k(Q) (= Kξ), K′ = k ( λ−1(Q)) と置く. このとき: 補題 6.8 (i) K′/K はl 次巡回拡大. (ii)任意の P ∈ λ−1(Q)に対し, K′ = K(P ). (iii) 写像 ι : Gal(K′/K)∋ σ 7−→ Pσ− P ∈ Γ (P はλ−1(Q)内の任意の点) は群の同型.
[証明]まず, Γ ⊆ E(k) ⊆ E(K) とQ ∈ E∗(K) より, K′/K が Galois 拡大であること, 任意の
P ∈ λ−1(Q)に対して K′ = K(P ) が成り立つこと,ならびに ι が(P ∈ λ−1(Q) の選び方に依ら ず) 群の単射準同型であることは明らか. さて, 群Γ の位数 l は素数であるから, Im ι は{O} または Γ に一致する. また, 仮定(C0) と §4.3の最後で述べたことより, K′ はΛξ(x)のK 上の最小分解体である. 従って,仮定 (C1)より Im ι = Γ となり,主張を得る. いま, 体K の素イデアル Pを任意にとり, K′/K はP で不分岐であることを示す. 拡大次数 [K′ : K] = lは素数であるから, P はK′ で分解しないとしてよい. K′ における Pの(ただひと つの) 素因子をP′ とし,その剰余体をκ′ とする. 方程式(6.1)に関するE のP′ を法とする還元 を用いて, E(K′) の部分集合E0(K′; P′),E+(K′; P′) を§5 と同様に定める. P′ はK′ で不分解と しているから,これらはGal(K′/K)-不変な E(K′)の部分群である. 従って, IP′/P をP′/Pの惰 性群とするとき,任意の P ∈ E0(K′; P′) と任意の σ∈ IP′/P に対して Pσ− P ∈ E+(K′; P′) が成り立つ. 特にP ∈ λ−1(Q)∩ E0(K′; P′) — 仮定 (C0), (C2) と定理5.6 により,この集合は空 ではない! —とすると, Pσ− P ∈ Γ ∩ E+(K′; P′) が全ての σ ∈ IP′/P に対して成り立つことがわかる. ここで, Γ∩ E+(K′; P′) ={O} であったか ら,点 P は σ ∈ IP′/P の作用で不変ということになる. よって, K′ = K(P ) より, 惰性群 IP′/P は単位元のみから成ることがわかる. すなわち, K′/K はPで不分岐となり,これで定理6.1が示 せた.
7 集合 Ξ の密度 本節では,§6 で定めた集合Ξが高さ函数に関して体 kの中で正の密度をもつことを示す. 以下, d− 1次元射影空間上の k-有理点P ∈ Pd−1(k)に対し,その kに関する乗法的な高さをHk(P )で 表す(高さの定義や基本的な性質については,例えば [1] の Part B を見よ). このとき, Schanuel が[13] で示したように,具体的に書ける正の定数 Cd,k が存在してB → ∞ のとき (7.1) #{P ∈ Pd−1(k) ; Hk(P )≤ B } ∼ Cd,kBd なる漸近公式が成り立つ. 以下では,P1(k) = k∪ {∞} と見なして,実変数B > 0 の函数 #{ξ∈ Ξ ; Hk(ξ)≤ B } の漸近的な挙動を求めることを考える. さて, 集合Ξ⊆ k は(C0)–(C2) なる3 つの条件で定義されているが, 条件(C0)をみたさない ξ∈ k は高々3 個であるから,これについては無視してよい. また,条件 (C1)をみたさないξ ∈ k の個数は次のように評価される: 補題 7.1 B→ ∞ のとき, #{ξ∈ k ; Λξ(x) はk上可約, Hk(ξ)≤ B } ≍ B2/l. [証明]まず, F (ξ)̸= 0 なる ξ∈ k に対して次の条件は同値であることを示す: (a) Λξ(x)はk 上可約. (b) Λξ(x)はk 内に根をもつ. (b)′ ξ はJ (ζ)̸= 0 なる ζ∈ k によってξ = I(ζ)/J (ζ) と表される. (b) から(a) が従うことは明らかで, (b) と(b)′ が同値であることは容易にわかるから, (a) から (b)が従うというのがここでの主張である. l = 2ならばこの主張は自明であるから,以下しばらく l̸= 2とする. さて,補題6.8 の証明と同様にして, F (ξ)̸= 0なるξ ∈ k に対して次の条件は同値 であることがわかる: (A) Λξ(x)は Kξ 上可約. (B) Λξ(x) はKξ 上で 1 次式の積に分解される. ここで, (a) から (A) が従うことは明らか. また, Kξ/k は高々 2 次の拡大で, Λξ(x) の次数 l は 奇数としているから, (B) が成り立てば(b)も成り立たなければならない. よって, (l̸= 2 ならば) F (ξ)̸= 0 なる ξ∈ k に対して上に挙げた5 つの条件は全て同値であることが示せた. 条件 (a), (b)′ の同値性より,次の漸近公式が得られる: #{ξ∈ k ; Λξ(x)は k上可約, Hk(ξ)≤ B } ≍ #{ζ ∈ k ; Hk ( I(ζ)/J (ζ))≤ B}.
ここで, I(x)/J (x) は次数 l の有理函数であるから, k上 Hk ( I(· )/J( · ))≍ Hk(· )l となることが高さの性質よりわかる. よって,漸近公式(7.1) より主張を得る. 続いて条件(C2) を吟味する. 集合 Xbad(k; p) ⊆ Ok,p は∆の kにおける各素因子 p に対して 定義されていたが,剰余体上の適当な有理点 ξp∈ P1(Ok/p)− {∞} を用いて Xbad(k; p) = { ξ∈ P1(k) ; ξ mod p = ξp } と表せる(特に空ではない)ことがその定義よりわかる. このように,射影空間上の有理点で,有限 個の素イデアルに対して還元の先を指定されたものの高さに関する分布は次のようになる: 補題 7.2 p1, . . . , pr を k の相異なる素イデアルとするとき,各(Pi) ∈ ∏r i=1Pd−1(Ok/pi) に対し, B → ∞ のとき #{P ∈ Pd−1(k) ; P mod pi = Pi, Hk(P )≤ B } ∼ (∏r i=1 N pi− 1 N pdi − 1 ) Cd,kBd. ここで, N pi はpi の絶対ノルムを表す. この補題は, Schanuelによる (7.1)の証明と同様の(ただし幾分込み入った) 方法により示され る([17] のExample 1も参照のこと). k が有理数体Qの場合の証明については [12]を見よ. 以上をまとめて,次を得る: 定理 7.3 B→ ∞ のとき, #{ξ ∈ Ξ ; Hk(ξ)≤ B } ∼ (∏r i=1 N pi N pi+ 1 ) C2,kB2. ここで, p1, . . . , pr はkにおける ∆の相異なる素因子. 系 7.4 集合 Ξ は体k の中で高さ函数 Hk に関して次の意味で正の密度をもつ: lim B→∞ #{ξ ∈ Ξ ; Hk(ξ)≤ B } #{ξ ∈ k ; Hk(ξ)≤ B } = r ∏ i=1 N pi N pi+ 1 . 注意 7.5 K をkの拡大体とするとき, #{ξ∈ Ξ ; Kξ= K, Hk(ξ)≤ B } ≍ (log B)r/2 となるような r ∈ Z≥0 が存在することが示せるから, Ξ を添字集合とするk の(高々 2 次の) 拡 大体の族{Kξ}ξ∈Ξ は無限族であることがわかる.
l̸= 2 のとき,系 6.2 と系7.4より,体 Kξ = k (√ F (ξ)) の類数がlで割り切れるような ξ ∈ k の全体はkの中で高さ函数 Hk に関して次の意味で正の密度をもつことがわかる: lim inf B→∞ #{ξ∈ k ; l | hKξ, Hk(ξ)≤ B } #{ξ∈ k ; Hk(ξ)≤ B } ≥ r ∏ i=1 N pi N pi+ 1 . つまり,雑な言い方をすれば,無作為に選ばれたξ ∈ k に対し,体Kξ の類数は ∏ iN pi/(N pi+ 1) 以上の“確率”でlで割り切れるということになる. 最後に,係数の絶対値の大きさの割りには“確 率”が高くなるようなF (X) の例を挙げておく. 例 7.6 (例 6.5 の続き) 例 2.3と例 6.5においてk =Q, a = 4, b = 1とすると, F (X) = 4X3+ 16X2− 72X − 283, ∆ = 37. 従って, ξ ∈ Qに対し,体Q(√4ξ3+ 16ξ2− 72ξ − 283) の類数は 37 37 + 1 = 0.9736· · · 以上の “確率” で3 で割り切れる. 例 7.7 (例 6.6 の続き) 例 2.4と例 6.6においてk =Q, a = 1, b = −1とすると, F (X) = 4X3− 4X2− 40X − 79, ∆ =−11. 従って, ξ ∈ Qに対し,体Q(√4ξ3− 4ξ2− 40ξ − 79) の類数は 11 11 + 1 = 0.9166· · · 以上の “確率” で5 で割り切れる. 例 7.8 (例 6.7 の続き) 例 2.5と例 6.7においてk =Q, a = 1, b = 2とすると, F (X) = 4X3− 15X2− 832X − 4184, ∆ =−27· 13. 従って, ξ ∈ Qに対し,体Q(√4ξ3− 15ξ2− 832ξ − 4184) の類数は 2 2 + 1 · 13 13 + 1 = 0.6190· · · 以上の “確率” で7 で割り切れる.
補遺 A m, n と x との関係 記号や仮定は§4の通りとするとき, GX, GY とgx, gy との関係を記述するm, n は, X とx と の関係を記述するI(x), J (x) と次の関係で結ばれている: m = ( I(x) J (x) )′ , 2n = ( I(x) J (x) )′′ . 本節では, l = #Γは奇数であると仮定し, m, n の“分子”と“分母” の形に関する考察を行う. lが奇数のとき, J (x)はk-係数の多項式 J0(x) = ∏ T∈Γ0 (x− xT) = x(l−1)/2− ( ∑ T∈Γ0 xT ) x(l−3)/2+· · · を用いてJ (x) = J0(x)2 と表せる. 従って M (x) = I′(x)J0(x)− 2I(x)J0′(x) = x(3l−3)/2− 3 ( ∑ T∈Γ0 xT ) x(3l−5)/2+· · · , N (x) = M′(x)J0(x)− 3M(x)J0′(x) と置くと次が成り立つ: m = M (x) J0(x)3 , 2n = N (x) J0(x)4 . さて, E, E∗ 上の位数 2の点は,それぞれ gy, GY によって
E[2]− {O} ={T ∈ E(¯k) − {O} ; gTy = 0}, E∗[2]− {O} ={U ∈ E∗(¯k)− {O} ; GYU = 0} と特徴付けられる. 従ってλ−1(E∗[2])= E[2] + Γより,
gTy ̸= 0, GYλ(T ) = 0 for T ∈ (E[2] − {O}) + (Γ − {O}). ところが上のようなT は J0(xT)̸= 0 もみたすから, (4.2)より次がわかる:
M (xT) = 0 for T ∈ (E[2] − {O}) + (Γ − {O}).
体k の標数が2 でない場合, M (x)とJ0(x) は共通因子をもたない. また#E[2] = 4であるか ら,集合 (E[2]− {O}) + Γ0 は(3l− 3)/2個の点より成る. これより M (x)の分解 M (x) = ∏ T∈(E[2]−{O})+Γ0 (x− xT) が得られる.
体kの標数が 2 である場合には, m = 1 + a1 ∑ T∈Γ0 gTy (x− xT)2 = I ′(x) J0(x)2
となるから, a1 = 0 ならば m = 1. またa1 ̸= 0 ならば #E[2] = 2で, E[2] ={O, T1} とすると
集合 (E[2]− {O}) + Γ0 = T1+ Γ0 は(l− 1)/2 個の点より成る. これより I′(x) の分解 I′(x) = ∏ T∈T1+Γ0 (x− xT)2 が得られる. 注意 A.1 l = #Γが偶数の場合には,事情はかなり異なる. 例えばl = 2 のとき, Γ ={O, T0} と するとΓ0 ={T0}であって, m = 1− g x T0 (x− xT0)2 , n = g x T0 (x− xT0)3 .
k の標数が2 でないならば, E[2] ={O, T0, T1, T0+ T1} として [2]T0′ = T0 なる T0′ ∈ E[4] をと
ると, λ−1(E∗[2])={O, T0′} + E[2] となり,この群は T0′ と T1 とで生成される. 従って, 上と同 様の議論により mT = 0 for T ∈ T0′+ E[2] がわかり,これからm の分解 m = (x− xT0′)(x− xT0′+T1) (x− xT0)2 が得られる. B 定理 5.6 の逆 本節では,定理 5.6 の逆を示す. すなわち,記号や仮定は§5 の通りとして,次が成り立つことを 証明する: 定理 B.1 Qをλ−1(Q)⊆ E(k) なるE∗(k)内の点とするとき, λ−1(Q)∩ E0(k; pv)̸= ∅ =⇒ Q ∈ E∗0(k; pv). 系 B.2 方程式 (5.1), (5.5) の判別式をそれぞれ∆, ∆∗ とするとき, ∆∗≡ 0 (mod pv) =⇒ ∆ ≡ 0 (mod pv).
[証明]系 5.8の証明と同様に,体k をその有限次拡大で置き換えて示せば十分である. ∆∗ ≡ 0 (mod pv) とすると,十分大きなk に対し,E∗0(k; pv)に属さないような Q∈ E∗(k)がと れる. Qはλ−1(Q)⊆ E(k)もみたすとしてよいから,定理よりλ−1(Q)∩ E0(k; pv) =∅. これより ∆≡ 0 (mod pv)がわかる. 以下では, λ−1(Q)⊆ E(k)なる Q∈ E∗(k)をひとつ固定し, Γ∩ E0(k; pv) が{O}に一致する場 合と Γに一致する場合とに分けて定理 B.1の証明を与える. 明らかにQ̸= Oであるとしてよい. B.1 Γ∩ E0(k; pv) ={O} の場合 このときには,注意 5.7 より, λ−1(Q)∩ E0(k; pv)は高々 1 点より成る. 命題 B.3 λ−1(Q)∩ E0(k; pv) ={P }ならば Q∈ E∗0(k; pv). [証明]仮定より, 任意の P′ ∈ λ−1(Q)− {P } とT ∈ Γ − {O} はpv を法としてEe の特異点に還 元されることになり, xP′ ∈ Ov, xP′ ≡ xT (mod pv) をみたす. 従って,定理 5.6の証明と同様にして XQ− xP = ∑ P′∈λ−1(Q)−{P } xP′ − ∑ T∈Γ−{O} xT はpv に属することがわかる. よってxP ∈ Ov ならば, XQ∈ Ov かつ xP ≡ XQ (mod pv)となる から, Q∈ E∗0(k; pv)− E∗+(k; pv). またxP ̸∈ Ov ならば, XQ ̸∈ Ov となるから, Q∈ E∗+(k; pv). い ずれの場合にも Q∈ E∗0(k; pv) となっている. B.2 Γ∩ E0(k; pv) = Γ の場合 このときには,注意 5.7 より, λ−1(Q)∩ E0(k; pv)はλ−1(Q)または ∅ に一致する. 命題 B.4 λ−1(Q)∩ E0(k; pv) = λ−1(Q)ならば Q∈ E∗0(k; pv). 次の補題は,上の命題の証明に用いられる(mP, nP の定義と性質については§4.1と§Aを見よ): 補題 B.5 ∆∗≡ 0 (mod pv) であるとき, P ∈ E0(k; pv)− E+(k; pv) が条件
xP ̸≡ xT (mod pv) for T ∈ Γ − {O} をみたすならば, mP ∈ Ov× またはnP gPy ∈ O×v.
注意 B.6 上の補題において,仮定よりxP, yP, gPx, g y P, mP, nP ∈ Ov となることは直ちにわか るから,結論は“mP ̸≡ 0 (mod pv) または nPgyP ̸≡ 0 (mod pv)”と書いてもよい. 補題 B.5の証明は §Cで与えることにし,ここでは補題を用いて命題 B.4 を示しておく. [命題 B.4の証明] ∆∗̸≡ 0 (mod pv)のときには主張は明らかなので, ∆∗≡ 0 (mod pv)とし,さ らに場合分けして証明する. (i){ eP ; P ∈ λ−1(Q)}∩{ eT ; T ∈ Γ}̸= ∅ の場合. eP = eT となるようなP ∈ λ−1(Q)とT ∈ Γ をとると,任意の T′∈ Γに対して ^ P + T′= ^T + T′ が成り立つから, { eP ; P ∈ λ−1(Q)}={ eT ; T ∈ Γ}. 特に, P ∈ E+(k; pv) となるような P ∈ λ−1(Q)が (ただひとつ)存在する. 従って,定理 5.6 の証 明と同様にして XQ− xP = ∑ P′∈λ−1(Q)−{P } xP′ − ∑ T∈Γ−{O} xT はpv に属することがわかり, xP ̸∈ Ov より XQ̸∈ Ov. すなわちQ∈ E∗+(k; pv) を得る. (ii) { eP ; P ∈ λ−1(Q)}∩{ eT ; T ∈ Γ} = ∅ の場合. 任意に P ∈ λ−1(Q) をとると, P ∈ E0(k; pv)− E+(k; pv). また,容易にわかるように
xP ̸≡ xT (mod pv) for T ∈ Γ − {O}.
従って,補題B.5よりmP ̸≡ 0 (mod pv)またはnPgPy ̸≡ 0 (mod pv). また(2.5)よりXQ, YQ∈ Ov もわかる. さらに(4.2)より GXQ = mPgxP + nP(gPy)2, GYQ= mPgyP. よって,仮に Q̸∈ E∗0(k; pv), すなわちGXQ ≡ GYQ≡ 0 (mod pv) だとすると mPgxP + nP(gyP)2≡ mPgPy ≡ 0 (mod pv) より(mP ̸≡ 0 (mod pv) かつ) gxP ≡ gPy ≡ 0 (mod pv),すなわち P ̸∈ E0(k; pv) となって矛盾. つ まりQ∈ E∗0(k; pv)− E∗+(k; pv) でなければならない.
C 補題 B.5 の証明
定理B.1の証明を完結させるためには補題B.5を示さなければならない. 本節では, Γ⊆ E0(k; pv)
かつ ∆∗≡ 0 (mod pv) であると仮定し,
xP ̸≡ xT (mod pv) for T ∈ Γ − {O}
なるP ∈ E0(k; pv)− E+(k; pv) をひとつ固定して, mP ̸≡ 0 (mod pv) またはnP gPy ̸≡ 0 (mod pv) が成り立つことを示す(注意 B.6で述べたように, xP, yP, gPx, gPy, mP, nP ∈ Ov である). なお, 補題B.5 は体k をその有限次拡大で置き換えて示せば十分であるから, E[4]⊆ E(k) であるとし てよい. 以下, eE が特異点をもつ場合には,その x-座標をα で表す. このときP ∈ E0(k; pv)− E+(k; pv) よりexP ̸= αである. C.1 l̸= 2 かつ char(k) ̸= 2 の場合 まずはΓの位数が奇素数で体kの標数が2でない場合を扱う. このときE[2] は4 点より成り, その部分群であるE[2]∩ E0(k; pv)やE[2]∩ E+(k; pv)の位数は1, 2または 4になる. それぞれの 場合に対して§A で定義した J0(x) や M (x) のpv を法とした分解を考えることが証明の鍵にな る. これらの多項式のpv を法とする還元をそれぞれ Je0(x), fM (x)で表す. 剰余体 κv の標数が 2 でない場合には, 容易にわかるようにE[2]∩ E+(k; pv) ={O} となるか ら, E[2]∩ E0(k; pv) の位数に応じて考えることにより次を得る: 補題 C.1 l̸= 2 かつ char(κv)̸= 2 とするとき:
(i) E[2]∩ E0(k; pv) ={O} ならば mP ̸≡ 0 (mod pv).
(ii) E[2]∩ E0(k; pv)̸= {O}かつ mP ≡ 0 (mod pv)ならば nPgPy ̸≡ 0 (mod pv).
[証明] T ∈ E[2]とT′ ∈ ΓがT + T′ ∈ E+(k; pv) をみたしたとすると
T = [l]T = [l](T + T′)∈ E+(k; pv)
となるから, E[2]∩ E+(k; pv) ={O} とΓ∩ E+(k; pv) ={O}よりT = T′ = O. 従って
(E[2] + Γ)∩ E+(k; pv) ={O}. よって,写像
は群の単射準同型となり,E0(k; pv) に属するようなT, T′ ∈ (E[2] + Γ) − {O}に対しては
xT ≡ xT′ (mod pv) ⇐⇒ T = ±T′ が成り立つ.
(i) E[2]∩ E0(k; pv) = {O} の場合. Γ ⊆ E0(k; pv) より, 任意の T ∈ E[2] − {O} に対して (T + Γ)∩ E0(k; pv) =∅ が成り立つ. 従ってM (x) はpv を法として f M (x) = (x− α)(3l−3)/2 と分解され, mP = M (xP) J0(xP)3 ̸≡ 0 (mod pv ) を得る.
(ii)′ E[2]∩ E0(k; pv) ={O, T1} (T1 ̸= O)の場合. (i)と同様にして
f M (x) = (x− α)l−1 ∏ T∈T1+Γ0 (x− exT), exT ̸= α for T ∈ T1+ Γ0 が成り立つことがわかる. また,異なるT, T′ ∈ (T1+ Γ0)∪ {T1} に対しては exT ̸= exT′ となる. い まmP ≡ 0 (mod pv) とすると, M (xP) ≡ 0 (mod pv) よりexP =exT となるような T ∈ T1+ Γ0 が(ただひとつ) 存在する. このときM′(xP)̸≡ 0 (mod pv) が成り立つから, N (xP) = M′(xP)J0(xP)− 3M(xP)J0′(xP)≡ M′(xP)J0(xP)̸≡ 0 (mod pv) となり, nP = N (xP) 2 J0(xP)4 ̸≡ 0 (mod p v). さらに, exT ̸= αと exT ̸= exT1 よりg y P ̸≡ 0 (mod pv) となることもわかる.
(ii)′′ E[2]∩ E0(k; pv) = E[2] の場合. このときには E[2] + Γ⊆ E0(k; pv) となるから, 異なる
T, T′ ∈ (E[2]+Γ0)∪(E[2]−{O})に対してはexT ̸= exT′ となる. 従って, (ii)′と同様にしてmP ≡ 0
(mod pv) ならばnP ̸≡ 0 (mod pv) かつ gPy ̸≡ 0 (mod pv) となることがわかる.
剰余体κv の標数が2 である場合には, eJ0(x) はM (x)f を割り切る:
M (x) = I′(x)J0(x)− 2I(x)J0′(x)≡ I′(x)J0(x) (mod pv).
また,容易に確かめられるように
ならびに
(C.2) (a21GXU)2≡ ∆∗ (≡ 0) (mod pv) for U ∈ E∗[2]− E∗+(k; pv) が成り立つから, a1 が pv に属するか否かに応じて考えることにより次を得る:
補題 C.2 l̸= 2, char(k) = 0 かつ char(κv) = 2 とするとき, mP ̸≡ 0 (mod pv).
[証明] (i) a1 ≡ 0 (mod pv) の場合. l̸= 2 とchar(κv) = 2 より
mP = 1− ∑ T∈Γ0 ( 2gxT − a1gTy (xP − xT)2 + 2(g y T)2 (xP − xT)3 ) ≡ 1 (mod pv).
(ii) a1 ̸≡ 0 (mod pv) かつ∆≡ 0 (mod pv)の場合. このときには(C.1)よりE[2]∩ E0(k; pv) =
E[2]∩ E+(k; pv) となることがわかる. 従って e = # ( E[2]∩ E+(k; pv) ) と置くと, M (x)はpv を 法として f M (x) = eJ0(x)e−1(x− α)(4−e)(l−1)/2 と分解される. (先に述べたようにJe0(x)はM (x)f を割り切るから, eは2または 4になる.) よっ て補題 C.1の証明と同様にして, mP ̸≡ 0 (mod pv) がわかる. (iii) a1 ̸≡ 0 (mod pv) かつ∆̸≡ 0 (mod pv) の場合. このとき写像
E[2] + Γ∋ T 7−→ eT ∈ eE(κv)
はE[2]∩ E+(k; pv)を核とする群準同型となる. いま仮に E[2]̸⊆ E+(k; pv)とする. このとき,点
T1∈ E[2] − E+(k; pv) をひとつ固定してU1 = λ(T1) と置くと
xT1 ̸≡ xT (mod pv) for T ∈ Γ − {O}
より U1 ∈ E∗[2]− E∗+(k; pv). 従って(4.2), (C.1), (C.2) ならびにgTy1 = 0 より ∆∗ ≡(a21GXU1)2 ≡(a21mT1g x T1 )2 ≡ m2 T1 ( a21gTx1)2 ≡ m2T1∆ (mod pv) となるが, mT1 ̸≡ 0 (mod pv)は直ちにわかるから, ∆∗̸≡ 0 (mod pv)となって仮定に反する. よっ てE[2]⊆ E+(k; pv) でなければならない. これより f M (x) = eJ0(x)3 となり, mP ̸≡ 0 (mod pv) がわかる.
C.2 l̸= 2 かつ char(k) = 2 の場合 次に Γの位数が奇素数で体 kの標数が2 である場合を扱う. このときには #E[2] = #E∗[2] = 1 if a1 = 0 2 if a1 ̸= 0
となっていて, 後者の場合には, E[2] ={O, T1}, E∗[2] ={O, U1} とすると λ(T1) = U1, xT1 =
XU1 = a3/a1 ならびに
(C.3) (a21gTx1)2 = ∆, (a21GXU1)2 = ∆∗
が成り立つ. よって補題C.2と同様に考えることにより次を得る:
補題 C.3 l̸= 2 かつ char(k) = 2とするとき, mP ̸≡ 0 (mod pv).
[証明] (i) a1 ≡ 0 (mod pv) の場合. 補題C.2 の証明の(i) と同様にしてmP ≡ 1 (mod pv) がわ かる.
(ii) a1 ̸≡ 0 (mod pv) かつ∆≡ 0 (mod pv) の場合. このときには, E[2] = {O, T1} とすると
(C.3) より T1 ̸∈ E0(k; pv)となり, (T1+ Γ)∩ E0(k; pv) =∅. 従って I′(x) はpv を法として eI′(x) = (x− α)l−1 と分解される. ただし eI′(x)は I′(x) のpv を法とする還元を表す. よって mP = I′(xP) J0(xP)2 ̸≡ 0 (mod pv ).
(iii) a1 ̸≡ 0 (mod pv)かつ∆̸≡ 0 (mod pv)の場合. このときE[2] ={O, T1}, E∗[2] ={O, U1}
とすると,上で述べたようにλ(T1) = U1 で, T1 ∈ E(k) − E+(k; pv), U1∈ E∗(k)− E∗+(k; pv). 従って(4.2), (C.3)ならびに gTy 1 = 0 より ∆∗ ≡(a21GXU1)2 ≡(a21mT1g x T1 )2 ≡ m2 T1 ( a21gTx1)2 ≡ m2T1∆ (mod pv) となるが, mT1 ̸≡ 0 (mod pv)は容易にわかるから, ∆∗̸≡ 0 (mod pv)となって仮定に反する. よっ て,この場合は起こり得ない.
C.3 l = 2 の場合 最後にΓ の位数が 2である場合を扱う. このとき, mP = 1− gx T0 (xP − xT0)2 , nP = gx T0 (xP − xT0)3 . またgyT 0 = 0であるから, T0 ∈ E0(k; pv)よりg x T0 ̸≡ 0 (mod pv),従ってnP ̸≡ 0 (mod pv)となる. 補題 C.4 l = 2かつchar(κv)̸= 2とするとき, nP ̸≡ 0 (mod pv) であって,さらに次が成り立つ:
(i) ∆≡ 0 (mod pv) ならば gPy ̸≡ 0 (mod pv).
(ii) ∆̸≡ 0 (mod pv)かつ mP ≡ 0 (mod pv) ならば gyP ̸≡ 0 (mod pv).
[証明] nP ̸≡ 0 (mod pv) については既に述べた.
(i) ∆ ≡ 0 (mod pv) のとき, 任意の T ∈ E[2] − {O, T0} はEe の特異点に還元される. いま
仮に gPy ≡ 0 (mod pv) だとすると, f (xP) ≡ 0 (mod pv) よりxP ≡ xT (mod pv) となるような
T ∈ E[2] − {O}が存在するが, xP ̸≡ xT0 (mod pv) なる仮定よりT ̸= T0. 従って P ̸∈ E0(k; pv)
となり矛盾. よってgPy ̸≡ 0 (mod pv)でなければならない.
(ii) ∆̸≡ 0 (mod pv)のとき, char(κv)̸= 2 とE[4]⊆ E(k) より,写像
E[4]∋ T 7−→ eT ∈ eE(κv)
は群の単射準同型となる. いまE[2] ={O, T0, T1, T0+ T1} として [2]T0′ = T0 なるT0′ ∈ E[4] を
とると,注意 A.1 で述べたように m = (x− xT0′)(x− xT0′+T1) (x− xT0)2 . よって mP ≡ 0 (mod pv) とするとP =e ± eT0′ またはP =e ± ^(T0′+ T1) となり, 還元写像の単射性 より gyP ̸≡ 0 (mod pv) がわかる. 補題 C.5 l = 2かつchar(κv) = 2とするとき, nP ̸≡ 0 (mod pv) であって,さらに次が成り立つ: (i) a1 ≡ 0 (mod pv) ならば mP ̸≡ 0 (mod pv).
(ii) a1̸≡ 0 (mod pv) ならばgPy ̸≡ 0 (mod pv).
[証明] nP ̸≡ 0 (mod pv) については既に述べた.
(i) a1 ≡ 0 (mod pv) のとき,