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小学校における特別教育活動の成立と展開 ─「道徳の時間」との関連に着目して─ 利用統計を見る

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小学校における特別教育活動の成立と展開 ─「道

徳の時間」との関連に着目して─

著者

板橋 雅則

著者別名

ITABASHI Masanori

雑誌名

東洋大学文学部紀要. 教育学科編

42

ページ

1-10

発行年

2016

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00008623/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

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─ 1 ─ 1 *いたばし まさのり 東洋大学文学部教育学科 はじめに  2015(平成27)年 3 月に公示された一部改正小 学校学習指導要領の「第 1 章 総則」では、「第 1  教育課程編成の一般方針」として「学校にお ける道徳教育は、特別の教科である道徳(以下「道 徳科」という。)を要として学校の教育活動全体 を通じて行うものであり、道徳科はもとより、各 教科、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別 活動のそれぞれの特質に応じて、児童の発達の段 階を考慮して、適切な指導を行わなければならな い」ことが示されている1。この方針は、今回の 改正によって変更されたものではなく、これまで の小学校学習指導要領の内容を踏襲したものと なっている。この基本方針に変更はないにしても、 「道徳の時間」が「特別の教科 道徳」となるに あたり、道徳授業の質的転換が図られることに なった点には留意する必要がある。なぜならば、 「特別の教科 道徳」では、授業方法の一つとして、 問題解決的な学習や道徳的行為に関わる体験的な 学習が例示されており、このような学習を取り入 れた道徳授業は、他の教育活動との連携のあり方 に影響を及ぼすものと考えられるからである。こ れらの学習でどのような問題を題材として取り上 げるか、道徳的実践の一環としての指導をどこま で取り入れるか、これらが問題となり、特に、こ れまで道徳的実践の場としての役割を果たしてい た特別活動との関わりがより複雑化することが予 想されるのである。  このような状況下において、特別活動は、「特 別の教科 道徳」と、どのような連携が可能であ るか、この点が問題となる。この問題を検討する にあたり、この基礎作業として、これまでに、特 別活動と「道徳の時間」がどのように連携を図っ てきたかという点を明らかにする必要がある。な かでも、小学校における特別教育活動の成立と「道

小学校における特別教育活動の成立と展開

─「道徳の時間」との関連に着目して─

板 橋 雅 則

*  本稿は、「道徳の時間」創設との関連に着目しながら、小学校教員による実践の試行錯 誤の実態を解明することを通して、1958(昭和33)年に成立した小学校の特別教育活動に おける実践上の特質を明らかにすることを目的とする。  小学校の特別教育活動は、「道徳の時間」と同時に成立することによって、この両者の 関連が問題となった。これに関して、宮坂哲文は、特別教育活動の教育的意義を主張する とともに、特別教育活動から「道徳の探求」を奪うという問題、「道徳の時間」の授業に おける「生活との遮断」という 2 つの問題点を指摘した。この 2 つの問題に対して、東京 教育大学附属小学校は、特別教育活動のなかでも、学級会活動における話し合い活動と「道 徳の時間」を関連付けることで問題の解決を図った。同校においては、「道徳の時間」に おける学習の題材を子どもの日常生活に求めたことにより、「道徳の時間」を特別教育活 動の延長・発展ととらえて実践を展開することを試み、この問題点の克服を試みていたの であった。同校における特別教育活動の特徴は、子どもの日常生活上の問題について「道 徳の時間」と連動させながら、話し合い活動を行い、これを通して子どもたちの道徳的判 断力の育成をめざしていた点にあるといえるのである。 キーワード:東京教育大学附属小学校/特別教育活動/道徳の時間/学級会活動

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1 .特別教育活動の成立  特別教育活動の成立前史を概観してみると、ま ず、1947(昭和22)年の「小学校学習指導要領一 般編(試案)」における「自由研究」の設置があ げられる。しかし、「自由研究」の趣旨が現場レ ベルで十分理解されず、他教科の授業の補習や延 長に終わってしまうなどさまざまな問題点が浮き 彫りとなり、早急にこの改善が求められることと なった。つづく、1951(昭和26)年の改訂にあたっ ては、小学校における「自由研究」が廃止となり、 新たに「教科以外の活動」が設定された。しかし、 これも、「自由研究」同様に学校現場に定着する ことはなく、姿を消すことになる。これに関して、 文部省は、都道府県小学校教育課程研究協議会に おいて「活発に行なった学校があるかと思うと、 ある学校ではほんの一部しか行なっていなかった り、形だけは実施していてもその内容は<教科以 外の活動>にふさわしくないものであったり、な かには全然これを行なってない学校すらあった」 と嘆くような状況であった4。このような歴史的 変遷があり、1958(昭和33)年の小学校学習指導 要領改訂において、特別教育活動が成立する。こ の改訂により、教育課程が「各教科」、「道徳」、「特 別教育活動」、「学校行事等」の 4 領域で編成され ることとなった。この改訂により、特別教育活動 の「目標」および「内容」が規定され、活動の充 実がめざされた。  以上が、特別教育活動成立までの経緯である。 特別教育活動の成立は、教育課程における歴史に おいて大きな意義をもつものであったといえる。 しかし、これが「道徳の時間」創設と同時に実現 されることによって、ここには重要な道徳教育上 の問題が包含されることとなる。すなわち、従来、 「教科以外の活動」のなかに含まれていた道徳性 の育成を、特別教育活動と「道徳の時間」におい て、どのように図っていくかという問題である。  これは、次に示す先行研究によっても指摘がな されている。磯田は、「機能的・領域的な活動の 実質」からみるならば、「教科以外の活動」は、「道 徳」、「特別教育活動」、「学校行事等」に三分され たという見解を示し、この問題性を指摘した5 ここで問題の一つとして提起されたのは、子ども たちの「生活」にかかわる指導をどのように行っ ていくかという問題である。この点に関連して、 徳の時間」の創設がなされた1958(昭和33)年に おいて、両者はどのような教育活動として構想さ れ、実践されていたかという点を解明することは 必要不可欠な作業であると考えられる。しかしな がら、これまでの特別活動の歴史に関する先行研 究では、その制度や学習指導要領の変遷が明らか になっているものの、実践レベルにおける実態の 解明にまでは至っていない状況にある2  そこで、本稿は、「道徳の時間」創設との関連 に着目しながら、小学校教員による実践上の試行 錯誤の実態を解明することを通して1958(昭和 33)年に成立した小学校の特別教育活動における 実践上の特質を明らかにすることを目的とする。 なお、本稿では、東京教育大学附属小学校(以下、 附小)を事例として取り上げる。筆者は、これま でに附小の道徳教育実践に関する検討を通して、 その特質として、子どもの「生活」を題材とした 「問題解決学習」を展開していた点を見出してい る3。ここで明らかにしたように、附小は、特別 教育活動と「道徳の時間」との関連について課題 意識をもって実践研究を行っており、1958(昭和 33)年前後において数多くの実践研究を精力的に 発表していた学校であった。そのため、これらの 当時の実践に関する豊富な資料を活用すること で、実践上の試行錯誤の内実に明らかにするとい う本稿の研究の目的を達成することができると考 え、同校を事例として選定した。  この研究の目的を達成するために、まず、特別 教育活動と「道徳の時間」との関係性によって浮 上した実践上の課題を明らかにする。ここでは、 小学校学習指導要領や特別教育活動の指導書の記 述を手がかりとしながら、文部省の見解を明らか にする。つづいて、これらの文部省の一連の教育 政策に対して、特別教育活動の教育的意義を主張 することで、これらを批判した教育学者・宮坂哲 文の諸論について考察する。最後に、文部省政策 分析と宮坂の特別教育活動に関する諸論から明ら かになった実践上の課題について、附小の教師は どのように認識し、これらの課題に対して、どの ような構想をもち、克服しようと実践を行ってい たか、主に、 2 人の教師による論考・実践報告を 手がかりとして、その試行錯誤の実態を解明する。 これらの検討を通して、特別教育活動と「道徳の 時間」の実践上の関連について考察する。

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─ 3 ─ 小学校における特別教育活動の成立と展開 3 別教育活動が設立されると、宮坂は、翌年に、『特 別教育活動─市民形成のための学校計画─』を発 行し、このなかで特別教育活動の教育的意義を主 張した。同書の「はしがき」において、彼は、「特 別教育活動なる名のもとに包括されている生徒会 活動、ホーム・ルーム活動、クラブ活動、集会活 動その他の一連の生徒活動は、いちように、『よ き市民の形成』を、その第一義とするという点で、 われわれの、みのがすことのできない教育領域な のである」と述べ、この重要性を指摘する9。同 書では、アメリカにおける中等学校課外活動の概 説がなされるとともに、これとの比較において、 日本における特別教育活動の基本的な問題点の考 察がなされている。道徳教育との関わりでみてみ ると、同書では、道徳に関する用語はほとんど使 用されることなく、道徳教育に関する詳細な論究 はなされていない。ここでは、特別教育活動を通 した「市民」の形成の重要性や、生活指導を組織 的計画的に展開することの必要性が説かれている 程度である。  しかし、『特別教育活動─市民形成のための学 校計画─』発行の翌年にあたる1951(昭和26)年 の段階では、これが一変する。この年に同書の増 補改訂版が発行されるのだが、ここには 3 篇の論 考が収録されている。これらのうち、次に示す 2 つの論考において、道徳教育との関わりのなかで 特別教育活動の意義が主張されており、この点に おいて、彼の道徳教育に対する関心の高まりを指 摘できるのである。  まず、増補改訂版に収録されている論考の一つ である「小学校における児童会・クラブ活動の教 育的意義」の内容を検討していこう。ここでは、 児童会とクラブ活動の実践のなかで子どもたちは 「情緒的満足」を得ることができることが述べら れ、宮坂は、これこそが道徳教育における効果を もたらす「原動力」であると主張する。彼によれ ば、子どもたちがこれらの活動に興味を感じ、生 きがいを感じるような「情緒的満足」を得ること によって、「集団への協力、ある程度の自己犠牲、 責任の遂行等々の必要を心に刻みこむことができ る」といい、この状況において道徳教育の教育的 効果を認めることができるという10。ここに、特 別教育活動の実践を通して、道徳教育の充実を図 るべきと考える彼の立場が明確に示されているの である。 竹内は、「子どもの生活問題をとりあげるにして も、学級会でとりあげるのか、それとも『道徳』 でとりあげるのかという問題に直面しなければな らなくなった」と述べている6。「教科以外の活動」 は、道徳性の育成という点においても教育的な役 割を果たしていたゆえに、特別教育活動と「道徳 の時間」とが同時に誕生するにあたり、両者の関 連が問題視されることとなったのである。  それでは、特別教育活動と「道徳の時間」の道 徳教育上の関連について、文部省はどのような説 明をしていたのだろうか。この点を明らかにする ため、『小学校特別教育活動 指導書』の記述を確 認しておこう。  指導書では、「児童の道徳性の形成という点か らいえば、各教科はもとより、学校生活のあらゆ る面が道徳と関係をもつのであるが、その本来の 性質からいって特に特別教育活動が重要な関連を もつことは明らかであろう」という見解が示され ている7。つづけて、特別教育活動における学級 会活動の話し合いと「道徳の時間」の類似性が指 摘されるとともに、両者の違いが次のように説明 されている8。指導書によれば、学級会活動は、「学 級に関する諸問題を児童の自発的、自治的な実践 活動によってできるだけ効果的に解決しようとす るところに重点がある」と示されており、一方、「道 徳の時間」は、「道徳性の内面化を意図的、計画 的に図るために一定のねらいを達成する指導が行 われる」時間であると明記されている。指導書の これらの記述から、道徳的行為に関わる「実践活 動」は特別教育活動において、そして、「道徳性 の内面化」は「道徳の時間」において、という道 徳教育に関する実践上の一応の区分がなされてい たといえるのである。 2 .宮坂哲文の「道徳の時間」創設批判と特 別教育活動に対する問題提起  特別教育活動の指導書において示されていたよ うに、特別教育活動、特に学級会活動は、「道徳 の時間」と類似性を有するものであった。当時、 両者の関連に着目し、その問題性を鋭く指摘して いたのが、宮坂哲文であった。彼は、特別教育活 動の教育的意義を主張したうえで、「道徳の時間」 の創設に反対していた。以下、このような考えを もつ彼の主張について、詳細に検討していく。  1949(昭和24)年に中学校および高等学校に特

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徳の時間」創設に対して明確に反対の意を示して いる。また、これと同時に、自身の道徳教育観を より鮮明に明らかにしていく15。彼は、道徳教育 とは「つねに子どもたちの日々の生活に根をおろ した形で行われていかねばならないもの」であり、 道徳とは「日々の生活のなかで子どもたち自身に よって学びとられ、獲ちとられていくべき性質の もの」であると考えていた。このような考えをも つ彼は、「教師をも含めた学級という集団の人間 関係のいとなみ」である学級会活動に着目し、こ れが本質的に道徳の問題を含んでいるものと主張 する。つづけて、「道徳問題をもっぱらあつかう 時間」は、「道徳的問題をさまざまな形で含んだ 日常生活の流れを前提とし基盤として、はじめて 現実的な意味を帯びてくるものであって、それと 無関係には考えることができない」と主張し、「道 徳の時間」ではなく、特別教育活動における道徳 教育の重要性を指摘する。このような考えにより、 彼は、「道徳教育特設時間は学級(ホームルーム) 活動を道徳性の稀薄なも0 0 0 0のに限定するか、変質さ せるか、あるいはまた故意に道徳性の稀薄なもの と見なすかのいずれかの方法によって自己の存立 をたしかなものにしようとしている、ということ もできよう(傍点ママ)」と述べ、「道徳の時間」 創設に対して、猛烈に反対したのであった。  これらのことから、「道徳の時間」創設批判の 背景には、特別教育活動における道徳教育の重要 性の認識があり、これとの関連のもとで批判がな されていたといえる。「道徳の時間」創設に反対 するにあたり、その根拠としては、大きく次の二 点に集約される。すなわち、「道徳の探求」が特 別教育活動から剥奪されてしまう点16、「道徳の 時間」の授業が「生活との遮断」のうえに成立し ている点の二点である17 3 .東京教育大学附属小学校における特別教 育活動の展開  前述した通り、特別教育活動の成立と「道徳の 時間」創設に関して、宮坂哲文の指摘した問題点 をまとめると次の二点に集約される。一つは、特 別教育活動から「道徳の探求」を奪うという問題、 もう一つは、「道徳の時間」の授業における「生 活との遮断」という問題である。  これらの問題について、当時の小学校教員はど れほど自覚し、実践を展開していたのだろうか。  増補改訂版に収録されたもう一つの論考は、道 徳教育について中心的に論じたものであるため、 ここで詳細に検討しておきたい。これが、「社会 科及び特別教育活動における道徳教育の問題」と いう論考である。まず、特筆すべきこととして、 この論考の冒頭に「結論から申上げるようになり ますが、はつきり申上げますと、現在とりあげら れているような道徳教育論議にはついていけない ような気持がする」と述べていることがあげられ る11。「道徳教育論議にはついていけない」とは、 どのようなことを意味するのか、彼の道徳教育に 関する主張を以下で検討していこう。  まず、宮坂は、道徳教育の強化、あるいは道徳 教育を主目的とする時間の特設の主張に対して、 戦後日本の社会や日本の教育の問題性を指摘し、 その主張を批判する12。彼は、時間特設に対して、 「民主主義というものがほんとうに根をおろしも しなかつたし、また育つてもこなかつた結果とし てのさまざまな病状病態に対して応急にぬりつけ られた膏薬のようなもの」であると痛烈に批判し ている。このように考えるのは、彼の道徳教育観 に基づいている。彼は、「道徳教育とか躾とかい うものは、大体において一つの安定した社会秩序 が前提」であり、この「安定した社会秩序」のう えに、道徳教育は「その維持発展のためのファン クションとして生まれてくるのが本筋」という考 えを示している。このように考える彼にあっては、 道徳教育のまえに、民主主義の実現こそが、最優 先課題なのであって、これは、「どうしても日本 の学校は民主主義の生活秩序の安定した段階に進 まなければならない」という言葉に、彼の強い気 持ちがあらわれている13。また、「道徳を意識し てかかつているとき」はあまり効果がなく、「口 にまで出してさわいだりしているとき」には「道 徳に対する嫌悪」さえおきるとまで述べている彼 の言葉からは、この論考において、道徳教育を主 目的とする時間の特設に対して、明確な反対の意 を示していないものの、明らかにそれに否定的な 見方であったことが読み取れるのである14  それでは、宮坂は、「道徳の時間」創設に関して、 どのような点にその問題を感じていたのだろう か。彼は、「道徳の時間」創設後にあたる1959(昭 和34)年に『新訂 特別教育活動─その歴史と理 論─』および『生活指導と道徳教育』を発行し、 本格的に道徳教育について論じるとともに、「道

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─ 5 ─ 小学校における特別教育活動の成立と展開 5 実践研究が展開されていた。それぞれの時期にお ける研究主題をまとめたものが上に示す「表:研 究主題一覧」である19 ( 2 )特別教育活動における実践の基本方針  特別教育活動前史ともいえる「教科以外の活動」 に関する実践研究は、各教師による個人研究にゆ だねられていた傾向が見受けられ、管見の限り、 附小全体としての研究活動は見当たらない。この ような状況から、1958(昭和33)年における特別 教育活動の成立にともない、附小全体における特 別教育活動の研究体制の整備がすすめられたと推 測される。  特別教育活動の成立に伴い、附小では、特別教 育活動研究会が発足され、この研究会の構成員が 中心となり、実践研究が組織的に展開されていく こととなる。特別教育活動に関する研究活動とし ては、雑誌『教育研究』への掲載、毎年の研究発 表会および研究協議会の開催があげられる。また、 これら特別教育活動開始時からの 3 年間の実践成 果をまとめたものは、『特別教育活動の理論と方 法』(東洋館出版社、1964年)として発行されて いる。  『特別教育活動の理論と方法』の記述をみると、 特別教育活動成立直後における附小の全体構想を 知ることができる。附小の特別教育活動の基本目 標は、次の 6 つとされた20 1 .自分で考えて正しく行動する子ども (自主) 2 .集団の中で、責任をもって行動する子ども (集団) 3 .自然のたくましさをもった健康な子ども (健康) 4 .能力をいかす、個性豊かな子ども (個性) 仮に、自覚していたとするならば、どのような方 策でもって、この問題の解決につとめようと実践 を行っていたのであろうか。以下、この点を解明 するために、附小における実践を検討していく。 ここでは、主に、附小全体としての特別教育活動 に関する実践研究について考察することとし、特 に、特別教育活動の成立と「道徳の時間」の創設 がなされた1958(昭和33)年前後の実践を検討対 象とする。 ( 1 )実践研究の概要  1949(昭和24)年 4 月、東京教育大学の発足に 際し、東京教育大学附属学校委員会が組織された。 ここで作成された「東京教育大学附属学校要項」 によれば、附属学校は、次の 4 つの任務を担うと される18。すなわち、「教育の理論及び実際に関 する科学的研究を行なうこと(研究学校)」、「研 究の結果を実証して教育界の参考に供すること (実証学校)」、「本学学生の中、教員たらんとする 者のために教育研究、特に観察・参加・実習を行 なうこと(実習学校)」、「現職教員の研修に資す ること(現職教育学校)」の 4 つである。これら の任務を果たすことがめざされ、附小の創立が実 現する。ここでいう任務の一つである「研究学校」 としての役割を果たすため、附小の研究成果は、 次の 2 つの方法によって発表された。一つは、研 究会の開催である。年 2 回、全国的な研究会を開 いて各教科や領域の学習指導の研究成果が発表さ れるとともに、参加者による相互討議が行われて いた。研究成果発表のいま一つの方法は、雑誌『教 育研究』の発行である。これは、附小の教員で組 織される初等教育研究会によって発行される月刊 誌である。  本稿の検討対象時期にあたる1958(昭和33)年 前後において、附小では、多種多様な研究主題が 設定されており、それぞれの担当の教員によって 【表:研究主題一覧】 研究開始の年 計 画 名 研 究 主 題 1949(昭和24)年 第 1 期 5 か年計画 カリキュラムの比較研究 1954(昭和29)年 第 2 期 5 か年計画 学習内容の研究 1959(昭和34)年 第 3 期 5 か年計画 学習指導法の研究 1964(昭和39)年 第 4 期 5 か年計画 初等教育における理論と方法の研究

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話し合いの活動、係りの活動、学級集会の 3 つで ある。このなかで、話し合いの活動は、「学級生 活における問題」を取り上げるものとされ、原則 的には週 1 時間、予定された時間内で行われるも のであった。この話し合いが、「道徳の時間」の 内容項目と関連付けて指導を展開することが可能 であると考えられることから、本研究の目的を達 成するうえで、学級会活動と「道徳の時間」の関 連について詳細に実践の検討をしていく必要があ る。 4 .特別教育活動と「道徳の時間」の関連  附小における特別教育活動の実践研究の検討を 通して、特に学級会活動において、「道徳の時間」 との関連を見出すことができた。ここでは、両者 の関連について留意しながら、学級における実践 レベルの検討を行う。ここで取り上げるのは、 1958(昭和33)年前後において、特別教育活動お よび道徳教育に関する論考を数多く発表していた 附小教員の篠原重利と高田典衛の実践である。 ( 1 )篠原重利の教育実践 ①特別教育活動成立前における教育実践  ここでは、1958(昭和33)年以前において、「教 科以外の活動」および道徳教育に関する論考を数 多く発表していた附小の教師、篠原重利の教育実 践について考察していく。特に、「道徳の時間」 創設に反対する宮坂と異なり、これの創設に賛成 していた彼の主張について、以下、詳細に検討す る。  1951(昭和26)年発行の『教育研究』において、 篠原は、道徳教育に関して「教科の特設はともか く、『時間』だけは毎週特設すべきであると主張 したい」と述べている25。彼は、次のような学習 活動を想定したうえで道徳教育を行う時間の特設 を主張する。すなわち、「児童が内心においてど んな問題に当面し、その問題の解決にどのような 判断をくだそうとしているか」、「学級の社会生活 において、どのような問題がありそれを共同でど のように解決したらよいか」、「個人の問題につい ても、他の子どもはどのような判断をし、どのよ うに解決したらよいかと考えているか」、これら について子どもたち同士で話し合うとともに、こ れらについて教師が指導する時間である。彼によ れば、これらの時間を設けることによって、児童 5 .きまりよく着実にものごとを行なう子ども (着実) 6 .人に対する理解と情愛をもつ子ども (情愛)  この 6 つの目標に従い、附小の特別教育活動は 実践された。これらの目標をみてみると、道徳教 育の目標との関連が指摘できる。特別教育活動と 「道徳の時間」の関連について、同書では、「道徳 で学んだ知性を、血の通う情愛のある特別教育活 動にいかすべく、この両者が一体になって高めて いくようにしたいと思う」と示されており、くわ えて、特別教育活動における 6 つの目標の一つで ある「情愛」について、次のような説明がなされ ている21  「実践を通しての喜び、しかも理屈でわり切 れないもの、それこその情愛である。上級生に 下級生をいたわる情愛があり、また下級生に上 級生を尊敬し慕う情愛があり、友人どうしに親 愛の情があってこそ、始めて特別教育活動の行 動も組織も運営も成果をあげることができるの ではなかろうか。」  ここでは、実践における他者に対する情愛の重 要性が示されており、「道徳の時間」における内 容項目との関連が明確に示されているといえるの である。  つぎに、特別教育活動における内容について検 討していこう。附小では、小学校学習指導要領に 示されている児童会活動、学級会活動、クラブ活 動の 3 つに加えて、校外活動、清掃活動の 2 つが 設定され、合計 5 つの活動が実施されていた。週 あたりの授業時間として、低学年で 1 単位時間、 中学年では 2 単位時間、高学年では 2 または 3 単 位時間が、特別教育活動のための時間としてあて られている22  これら 5 つの内容を検討したとき、「道徳の時 間」と最も重要な関連がみられるのが、学級会活 動である。なぜならば、学級会活動も「道徳の時 間」も、一学級単位の指導が基本であるからであ る。附小の学級会活動は、「学級集団の向上発展 につくすとともに、その一員としての自覚を高め、 自主的に学級生活における問題を話し合い解決 し、学級内での係り仕事を分担協力して実践する のがねらい」とされている23。学級会活動の実際 としては、次の 3 つの種別があげられている24

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─ 7 ─ 小学校における特別教育活動の成立と展開 7 を主張していた。そのため、彼は、1958(昭和 33)年における「道徳の時間」創設に賛成し、こ れを歓迎したのであった。 ②特別教育活動成立後における教育実践  1958(昭和33)年に「道徳の時間」創設が決ま ると、篠原は、道徳教育における指導方法につい て、より詳しく発表していく。「道徳の時間」特 設にあたり、この時間で行う道徳教育に関する学 習を、彼は「問題解決学習」とよび、この学習方 法について『教育研究』誌上で詳述している30 彼によれば、人生は課題の連続であり、生活はそ の課題の解決によって更新されていくものである ゆえ、問題解決の能力を育成することは、教育上 重視されなければならないという。このような立 場から、従来の教育を次のように批判している。 「道徳の時間」創設以前、道徳教育に関連する教 科として社会科があるが、その教科の性格として、 道徳問題の実践的解決を本領とするものではない と、彼は考えていた。また、児童の実生活におい て当面する切実な問題は、ときに「学級児童会」 や「学校児童会」において取り扱うことができる が、教師の関心はどうしても教科の指導に向きが ちであり、「教科外指導は手がすいたらというこ とになり易い」といった状況であったという。彼 は、児童の実生活において直面する切実な道徳問 題の実践的解決をねらうための特設の 1 時間を切 望しており、「教科以外の活動」の一つである「学 級児童会」を必ず週 1 時間は開くことを、「道徳 の時間」創設前から主張していた。つまり、「道 徳の時間」の「中軸」を児童の実生活において当 面している道徳問題の実践的解決に求める彼に あっては、「道徳の時間」とは、道徳教育のため の新たな時間の特設ではなく、これまで実践して きた「学級児童会」の重視・強化であると捉えら れているのである。このように、彼にとって、「道 徳の時間」は、道徳教育を行う新たな時間という 認識ではなく、これまで「学級児童会」のなかで 取り扱っていた実践をより充実させるための時間 なのであった。  これまで篠原の道徳教育構想を検討してきた が、道徳教育のための時間を特設するかどうかと いう点において、宮坂と異なる考えをもっていた が、その指導内容では、児童の日常生活上の問題 を取り扱っているという点において、両者は一致 は、「今までの行動のしかたを反省し、みずから よいしつけを身につけていくこと」になるという。 さらに、彼は、教育課程を考慮したうえで、 4 年 生から、児童会の活動の一環という位置づけにお いて、教科外に毎週 1 時間を特設することを提案 している。  このように道徳教育を行う時間の特設を主張す る篠原は、この時間の指導内容について、次のよ うに述べている26  「道徳教育といえばわれわれはともすると、 どんな項目を指導したらよいかという表を作る ことに専念するが、表をつくることはさほど困 難なことではない。その一々の項目が生活の─ 行動の現場において、どのように複雑な様相を 呈するか、そしてその解決─その判断をどうし たらよいかを指導して始めて教育が全きを得る のである。」  この記述から、篠原にあっては、生活における 行動を道徳教育の学習内容と関連付けていること がわかる。ここでは、生活における行動に関して 生じる問題の解決や、これらの問題に対する判断 に関する指導が構想されているといえる。これら の点に、彼の道徳教育構想の特徴をみてとること ができるのである。  また、篠原の単著『道徳教育』(高陵社書店、 1953年)には、次のような記述があり、注目され る。彼によれば、道徳教育は「あらゆる活動を通 して、活動のうちに行われるのがもっとも適切有 効」であり、「道徳教育のために生活と離れ、実 際活動と分離した活動を設けることは理くつに合 わない」という27。このように考える彼は、日常 生活のなかで生じる道徳上の問題について話し合 いを行う時間の確保を主張する。ここでも、教科 の特設ではなく、時間の特設が主張されている。 この時間は、「実際に展開している学習や生活の 反省であり、学習や生活において直面した問題解 決の時間」とされる28。また、彼は、「教科以外 の活動」の内容を「道徳教育そのもの」であると 評し、「教科外活動が、よく組織され、その運営 よろしきを得るならば、小学校に関する限り何も 道徳教育に関する特別の教科を必要としないので ある」とも述べている29  このように、篠原は「道徳の時間」創設以前に おいて、児童の生活上の行動を問題にした指導の 重要性を主張し、この指導を行うための時間特設

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「道徳の時間」との連携を主張し、その実践を『教 育研究』誌上で発表していた人物であるからであ る。 2 点目は、道徳教育に関して、前述した篠原 の道徳教育構想と共通する考えをもっており、篠 原の構想の継承者と目されるからである。  まず、特別教育活動と「道徳の時間」の関連に ついて、高田がどのような考えをもっていたのか、 この点を解明していこう。彼は、特別教育活動に おける児童会活動に関して、次のような考えを示 している。彼によれば、「児童会は、まず現実問 題を処理させ、その処理に対する方法を合理化し、 意義づけを深める過程をたどりながら、文化価値 と一致させていくことのできる途である」とされ る32。この点に児童会活動の教育的意義を認める 彼にとって、従来の児童会が、問題処理の実践の 場としてのみ機能していることに不満を抱いてい た。彼は、自分自身のことや、学級および学校全 体のことを、じっくりと考える時間的な余裕のな い点に問題を感じ、学級のすべての児童が、人生 の問題について深く、広く考える時間がほしいと 切望していたのであった。  このように考えるに至ったのは、教育実践上の 気づきによるものであった。高田は、かつて高学 年の指導を行った際に、「学級児童会の中には、 学級活動の処理を目的とする実務的な活動と、こ の実務活動から派生して、深くその矛盾を追求す るための思考活動とがあることに気づいた」とい う。つづけて、「日常の問題をクラスで集団的に 思考するなかから、道徳的な意識が育ち判断力も 高まっていくことを知った」と述べている。この ような実践を通した気づきがあったため、彼は「児 童会の活動や学級の係活動は、道徳教育に欠くこ とのできない分野であると考えるようになった」 という。  このような考えをもっていた高田にあっては、 「道徳の時間」における指導は、「子どもたちの自 治活動の当然の帰結」であり、自身のこれまでの 実践の「延長発展にすぎない」ととらえられてい る。彼は、「道徳の時間」の「本領」を「子ども たちが現実問題をじっくり話し合い、考え合い、 しかも、教師からの生きた話によって子どもたち の経験が定着していく時間」と位置づけた。これ らのことから、彼は、道徳教育の実践の場として 特別教育活動を、そして「現実問題」の話し合い の場として「道徳の時間」を位置づけていたこと していたことがわかる。これは、次の篠原の主張 から、より鮮明となる31  「自分たちで自分たちの生活をよりよくして いくという児童会の集団づくりの過程におい て、具体的な生活問題と対決させるところに個 人のあり方も考えられていくもので、深く自己 に目ざめさせる道徳も、ほんとうはここに育つ のである。特設時間を単に個人道徳の指導時間 とか、客観的な文化遺産の伝達時間とか、道徳 的心情の陶冶時間などに当てるとかいう抽象的 な道徳指導の時間とすることには賛成できな い。」  このように「集団づくり」の過程における「具 体的な生活問題」を考えさせる学習活動に道徳教 育の可能性を見いだしていた点において、篠原と 宮坂の見解は一致しているのであった。また、篠 原は、つづけて次のように説明する。  「道徳的行為や道徳的心情の理解ないし啓培 の中核は、児童自身の体験の累積にある。たと えば責任という徳性についての理解や心情は、 責任を果したむかしの人ないしは他人の話を聞 くことで、真に子どもたちの身につくものでは なく、教科の学習活動一例をあげればグループ 学習、教科外や日常生活における作業の分担な どを通して、責任遂行の体験を累積させていく ところに体得される。偉人の話などの追体験は、 それが刺激剤となる価値はあっても、本剤の効 能は発揮し得ないことを銘記すべきである。」  この篠原の主張においても、宮坂同様に、道徳 教育においては「児童自身の体験」を重視してい たという点が認められる。これらのことから、宮 坂の指摘していた、特別教育活動から「道徳の探 求」を奪うという問題、「道徳の時間」の授業に おける「生活との遮断」という問題を、篠原は、「道 徳の時間」において特別教育活動と連動させた学 習内容を取り入れることで克服しようとしていた といえるのである。 ( 2 )高田典衛の教育実践  ここでは、特別教育活動と「道徳の時間」とを 連動させた実践として、どのようなものが行われ ていたか、具体的に実践の検討を行う。ここで取 り上げる事例は、附小の教師、高田典衛による実 践である。ここで彼の実践を取り上げるのは、次 の 2 つの理由による。 1 点目は、特別教育活動と

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─ 9 ─ 小学校における特別教育活動の成立と展開 9 れについて話し合う時間として「道徳の時間」を 位置づけたのであった。このような特別教育活動 と「道徳の時間」との関連を図る学校教育全体に おける道徳教育構想は、特別教育活動研究会にお ける実践研究の基本目標とも関連を見出すことが できた。特別教育活動研究会は、特別教育活動の 基本目標として「自分で考えて正しく行動する子 ども」、「人に対する理解と情愛をもつ子ども」と いった道徳教育と関連のあるものを設定し、特に 学級会活動における学級生活上の問題の話し合い 活動において、「道徳の時間」との連携を図りな がら、これらの目標の達成をめざした。  このように附小における特別教育活動の特徴 は、子どもの日常生活上の問題について「道徳の 時間」と連動させながら、話し合い活動を行い、 これを通して子どもたちの道徳的判断力の育成を めざしていた点にあるといえる。なお、本稿は、 公刊されている文献・資料による検討にとどまっ た。附小の校内資料の発掘・調査を行い、同校の 学校教育全体における道徳教育構想が実践される にあたり、どのような実践上の成果および課題が あったか、これらの解明を今後の課題としたい。 註 1 一部改正学習指導要領の記述は、次に示す文部科学省ホーム ページを参照した。http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ doutoku/index.htm 2 特別活動の歴史に関する先行研究として、稲垣忠彦らの研究 (『戦後日本の教育改革 第 6 巻 教育課程(総論)』東京大学出 版会、1971年)、竹内常一らの研究(『講座日本の学力10教科 外教育』日本標準、1979年)、志村明善の研究(「特別活動の 本質 1 ─特別教育活動の成立まで─」青山学院大学教育学会 『教育研究』第45号、2001年、101-112頁)があげられる。  3 拙稿「道徳授業における『問題解決学習』の実践史的考察」 東洋大学文学部教育学科『東洋大学文学部紀要』第69集、 2016年、55-64頁。 4 東京教育大学附属小学校特別教育活動研究会『特別教育活動 の理論と方法』東洋館出版社、1964年、序 2 頁。 5 磯田一雄「学習指導要領の内容的検討(二)─教科外領域に おける変化とその特質─」肥田野直・稲垣忠彦『戦後日本の 教育改革 第 6 巻 教育課程(総論)』東京大学出版会、1971年、 423頁。 6 竹内常一「教科外活動の教育課程化」竹内常一『講座日本の 学力10 教科外教育』日本標準、1979年、135頁。 7 文部省『小学校特別教育活動指導書』日本書籍、1960年、 8 頁。 8 同上、 9 頁。 9 宮坂哲文『特別教育活動─市民形成のための学校計画─』明 治図書、1950年、 3 頁。 10 宮坂哲文『増補改訂 特別教育活動─市民形成のための学校計 画─』明治図書、1951年、308頁。 がわかる。これは、前述した篠原と共通の構図で ある。  このような構想は、次の高田の実践に明確にあ らわれている33。彼は、低学年における「道徳の 時間」において、子どもたちの日常生活のいろい ろな事象を取り上げ、しつけと結び付けながら道 徳的判断力の育成を図ることをねらった。ここで は、子どもたちの日常生活場面が取り上げられる ため、特別教育活動との関連が密になる。彼は、 日常生活のいろいろな事象のなかから取捨選択し たうえで、題材を取り上げ、ここで選ばれた題材 を「もめごと」とよんだ。「もめごと」とは、「子 どもたちなりにそれぞれ意見がわかれ、どうにも 決しかねる」ものや、「それぞれの考えにスジが 通っていて、互いに意見が対立する」ものである とされる。彼によれば、このような「もめごと」 を取り上げて、実践を展開することで、「自分の 立場を客観化すると同時に、他人の立場をも深く 理解すること」ができるといい、彼は、ここに道 徳教育上の教育的意義を主張するのであった。 おわりに  これまで、特別教育活動の成立をめぐる諸問題 について、「道徳の時間」創設との関連のなかで 論じてきた。最後にあらためて、特別教育活動と 「道徳の時間」の関連について、宮坂哲文の指摘 した問題点を念頭に置きつつ、附小の実践に即し て考察したい。  宮坂は、子どもの日常生活に基づく道徳教育を 提言するとともに、学級会活動を中心として、特 別教育活動を通した道徳教育の教育的意義を主張 していた。この主張は、「道徳の時間」創設後に、 より明確に示されていた。彼は、「道徳の時間」 創設に関して、特別教育活動から「道徳の探求」 を奪いとり、ここで行われる授業を「生活との遮 断」をもたらすものであると主張し、痛烈に批判 した。  これらの問題に対して、附小は、「道徳の時間」 における学習の題材を子どもの日常生活に求めた ことにより、「道徳の時間」を特別教育活動の延長・ 発展ととらえて実践を展開することを試み、この 問題点の克服を試みていた。附小の教師である篠 原は、日常生活上の話し合いのための時間特設を 強く主張し、また、高田は、自身の教育実践経験 に基づき、生活上の「もめごと」を取り上げ、こ

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23 同上、25頁。 24 同上、106-108頁。 25 篠原重利「道徳教育はどのように行つたらよいか」東京教育 大学附属小学校初等教育研究会『教育研究』第55号、大日本 図書、1951年 5 月、32頁。 26 同上、34頁。 27 篠原重利『道徳教育』高陵社書店、1953年、208頁。 28 同上、211頁。 29 同上、263頁。 30 篠原重利「道徳の特設時間の指導はどのようにしたらよいか」 東京教育大学附属小学校初等教育研究会『教育研究』第141号、 大日本図書、1958年 7 月、11-14頁を参照した。 31 篠原重利「道徳教育の全体計画─立案に当つての問題点─」 東京教育大学附属小学校初等教育研究会『教育研究』第136号、 大日本図書、1958年 2 月、18頁。 32 高田典衛「特設道徳の指導計画をどのように作成するか」東 京教育大学附属小学校初等教育研究会『教育研究』第141号、 大日本図書、1958年 7 月、16頁。 33 高田典衛「特別教育活動と『道徳』の指導」東京教育大学附 属小学校初等教育研究会『教育研究』第175号、大日本図書、 1961年 5 月、46-49頁。 11 同上、321頁。 12 同上、321-322頁。 13 同上、327頁。 14 同上、330頁。 15 宮坂哲文『生活指導と道徳教育』明治図書、1959年、121-122 頁。 16 宮坂は、『新訂 特別教育活動─その歴史と理論─』(明治図書、 1959年、194頁)のなかで「道徳の探求」という表現を用いて いる。 17 宮坂は、『生活指導と道徳教育』(明治図書、1959年、123頁) のなかで「生活との遮断」という表現を用いている。 18 東京教育大学附属小学校創立百周年記念事業委員会『東京教 育大学附属小学校教育百年史─沿革と業績─』1973年、110頁。 19 表の作成にあたっては、同上127-186頁を参照した。1958(昭 和33)年以前における「教科以外の活動」に関する研究組織 の内実は不明である。1958(昭和33)年に「道徳の時間」が 創設されたことをうけ、附小は、道徳教育推進のための研究 に着手するとともに、生活指導部を設立して「教科外活動の 充実」と「児童生活指導の組織化」を図った。 20 前掲『特別教育活動の理論と方法』、 4 頁。 21 同上、15頁。 22 同上、21頁。

参照

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