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児童養護施設からの家庭復帰に係る研究 ―A児童養護施設における経年調査から― 利用統計を見る

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(1)

児童養護施設からの家庭復帰に係る研究 ―A児童

養護施設における経年調査から―

著者

林 知然

著者別名

HAYASHI Tomonori

雑誌名

東洋大学大学院紀要

56

ページ

115-133

発行年

2020-03

URL

http://doi.org/10.34428/00011747

(2)

【要旨】

A児童養護施設の対象者206名のデーターをクロス集計にて再分析した。本研究の目的は、 「児童養護施設から家庭復帰を果たす為の一定のソーシャルケースワークのタイミング・手 段を明らかにし、支援者側の手がかりとすること」、「親の精神疾患有無が家庭復帰にどのよ うな影響を及ぼしているのかを明らかにすること」である。 その結果、①家庭復帰を果たす為のソーシャルケースワークの重点的なタイミングは3年 若しくは5年未満であると言える。②家庭復帰に至った児童の入所時年齢が、5歳未満の場 合は38%の家庭復帰率である。7歳未満は55%である。③入所時の親精神疾患有は、2005年 以降では半数以上である。家庭復帰率は、親精神疾患有の場合は、20%強の劣位性が認めら れた。且つ親精神疾患有であると、入所時期が低年齢化し、在籍期間が増加する。10歳未満 は、より個別的な状況を鑑みたケースワークを経て家庭復帰に取り組んでいることが明らか になった。 以上の結果から、家庭再統合・家庭復帰の手段の一つとして、<母子生活支援施設の積極 的で多様な活用>と<家庭復帰に至るまでのステップ内に、措置を継続しながら一箇月程度 以上の外泊を実施する>の二点を指摘する。 【キーワード】児童養護施設、家庭復帰、入所時年齢、在籍年数、精神疾患

はじめに

2017年度末時点で、社会的養護環境下において生活をしている児童数は42190人1)であり、 その内、児童養護施設入所児童数は25304人である。本調査研究は、東京都内に所在するA 児童養護施設における入所児童、既に退所をした児童、また、その児童の親を対象とした経 年調査の再分析・考察である。

児童養護施設からの家庭復帰に係る研究

―A児童養護施設における経年調査から―

社会福祉学研究科社会福祉学専攻博士前期課程1年

林  知然

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入所児童やその家族、地域において、様々な社会資源が構築され、構築された社会資源が 一定期間継続する見通しが経ち、児童と親の意識が一致する等の条件が整った際には、「子 どもの権利条約」「児童福祉法」にも明記されているように、その親と共に生活を再開する ことが望ましい。 本研究は、当事者である児童の主たる願いである家庭復帰を果たす為の一定のソーシャル ケースワークのタイミング・手段を明らかにし、支援者側の手がかりとすること。また、近 年増加傾向にある親の精神疾患有無が家庭復帰にどのような影響を及ぼしているのかに注目 して研究を行った。

1.調査対象・方法

本調査の対象は、A児童養護施設が1990年度から2018年度までの29年分の調査項目データ ーを児童票、施設が獲得した情報が記載された記録の読み込み、また当時の情報を所持して いる職員への聞き取り等を経て獲得したデーターである。調査項目は、入所年度・入所年 代・入所時年齢・退所年度・退所年代・退所時年齢・在籍年数・入所時直前生活場所・退所 時生活場所・入所時きょうだい有無・退所時きょうだい有無・入所時きょうだい生活場所・ 退所時きょうだい生活場所・入所理由(主訴)・児童票記載による虐待有無・事実としての 虐待有無・虐待種類・入所時養育者状況・退所時養育者状況・入所時親生活保護受給有無・ 退所時親生活保護受給有無・入所時親就労有無・退所時親就労有無・親精神疾患有無の24項 目である。対象者の総人数は206名である。このデーターをクロス集計において再分析を行 った。 A児童養護施設は、東京都区内に位置している。都内児童相談所11箇所から、大きな偏り なく児童が措置されている。また、入所児童の受け入れについては、中学生以上や幼児中心 等の限定的な偏向はない。地域小規模児童養護施設2)と東京都独自の事業である、施設分園 型グループホーム3)と専門機能強化型児童養護施設4)の認可を受け、地域に根差して、より 家庭的な運営を行うと共に、一方では治療的、専門的なケアに取り組む等、特色のある児童 養護施設である。なお、特定の児童を対象としたグループホームを運営しているが、入所理 由・背景が異なる為に、このグループホームに所属していた児童は、本調査対象からは除外 した。

2.倫理的配慮

調査は施設独自の調査項目を採用しており、施設内での検討も行い、倫理的問題はないと 判断して実施し、すでに公表されているものである。個人情報保護の観点からも、個人が特 定されることはない。

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3.先行研究

児童養護施設に入所をしている児童の調査に代表されるものとして、厚生労働省雇用均 等・児童家庭局が実施し、1977年より、5年毎に実施されている「児童養護施設入所児童等 調査(2015)、以下『国調査』と略す」が挙げられる。この調査は、概ね同調査項目を各年 次で実施し、定点観測的調査である。2013年の調査では、「児童の入所時の年齢」「児童の在 所期間」「児童の委託経路」「養護問題発生理由」「児童の被虐待経験の有無、虐待の種類」 「入所時の親の状況」等、23項目に渡るが項目間の因果関係は明らかにしていない。また、 東京都社会福祉協議会児童部会が1997年より実施している「児童養護施設の状況(2019)、 以下『都施設調査』と略す」は、毎年調査を実施しており、「児童養護施設月別在籍児童数 及び入退所状況」「年齢別・性別の状況」「入所期間」「入所理由」「虐待の有無」「虐待の種 類」「親の状況」等29項目に渡ってデーターを集計しているが、「国調査」同様に項目間の因 果関係は明らかにしていない。この2点の調査は、調査時点で在籍している全児童を対象と しているが、本調査は、その年次に入所した児童のみを対象とした。 既存の研究報告を記す。清水、筒井(1992)は、親子2代にわたる児童施設(乳児院、養 護施設、教護院)の世代間サイクルを明らかにした。堤、高橋利等(1996)や斎藤(2001)、 松宮(2008)の研究報告では、被虐待児童と親の状況との因果関係、特徴が明らかにされて いる。2002年には佐藤、鈴木が保護者の問題と入所児童の問題行動の関連性を示した。菅原 は2004年に、「家庭引き取りによる家族再統合の可能性は、経験的に入所後二年以内(中略) であるといえる」と言及している。また、亀井は2008年、2009年の研究報告によって、特定 の児童養護施設の調査において入所理由が未解決であるのにも関わらず家庭復帰がなされて いる確率が高いことを示し、個別的なファミリーソーシャルワークの重要性を説いている。 菅野は、2016年に、家庭復帰の非促進要因を「在所年数5年未満」「親の離婚歴あり」「入所 前のネグレクトなし」と分析し、「5年以上の児童への施設内ケアと家族支援が求められる」 とした。伊藤(2016)は、「家庭復帰するケースは入所から3年以内の子どもが多いといえ る。一方、入所期間が10年以上になると多くのケースが『満年齢による(卒業・就職によ る)措置解除』となるという結果になった。」とした。

4.調査項目

4―1.入所年代及び退所年代 1990年度から、概ね5年毎に区切り、(Ⅵ期のみは4年間)Ⅰ~Ⅵ期の6段階に区分した (表1)。

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4―2.入所理由 児童養護施設に入所する際には、児童相談所から発行される措置通知書に主訴が記載され る。施設入所に至るには複合的な理由があり、主訴にも一つだけの理由だけでなく、複数の 理由が併記されていることも見られるが、入所時に児童福祉司と確認をした内容。または、 当時の記録や当時を知る職員からの聞き取りを経て、主たる理由を選別し、「表2」のよう に分類をした。 4-3.退所時生活場所 児童養護施設を退所した先は、表3のように分類をした。 表1 入所年代及び退所年代 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅴ期 Ⅵ期 1990-1994 1995-1999 2000-2004 2005-2009 2010-2014 2015-2018 表2 入所理由の分類 離婚 親の疾病(精神疾患を除く) 親の就労 親の家出 親の出産 親の拘留 親の精神疾患 家庭環境から起因する児童の非社会的行動 家庭環境から起因する児童の反社会的行動 上記に該当しない家族環境から起因する措置 被虐待 措置変更(乳児院) 措置変更(児童養護施設) 措置変更(児童自立支援施設) 措置変更(養育家庭) 不明

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5.調査結果

5-1.入所年代または退所年代とのクロス集計 表4に示したように、調査対象とした1990~2008年度間の29年分のデーター内で、入所人 数は206人であり、退所人数は164人であった。 先ずは、「入所年代」または、「退所年代」と他項目においてクロス集計を行った結果を記 載する。 入所年代×入所理由(主訴)の集計については、全期間を通じて、最も高い入所理由は、 「被虐待」であり、34.9%であった。「離婚」「親の就労」が主要因での入所は、Ⅰ期から下 がり続け、Ⅳ期からは0.0%が続いた。また、「親の疾病(精神疾患を除く)」も相対的に減 少した。「親の家出」「親の死去」「親の出産」「親の拘留」については、まばらであったが、 低数値であった。「虐待」に関しては、Ⅰ期では、0.0%であったが、上昇を続け、Ⅵ期には 56.5%に到達した。即ち、所謂単純養護(但し、あくまでも表面的な数値であり、実際には 事態は深刻であったことも考えられる)から心理的ケア、ソーシャルワーク、自立支援、ア フターケア等、多機能化が児童養護施設には求められている。なお、参考として、「国調査」 では37.9%(Ⅴ時期に該当)、「都施設調査」では50.0%(Ⅵ時期に該当)である。4つの措 置変更8)のうち「乳児院」からの措置変更のみは、右肩上がりで上昇しており、Ⅵ期には、 30.4%までに至った。 入所年代×児童票記載による虐待有無の集計では、Ⅰ期では、児童票に虐待の記載はな い。その後、Ⅱ期から被虐待の記載が相対的に増え、Ⅵ期には82.6%に至っていることが分 かる。入所年代×事実としての虐待有無9)では、Ⅰ期では、「虐待有」が、34.4%である。 期間が経過するに相対的に「虐待有」が増加した。Ⅵ期には、86.9%に至っている。両者を 表3 退所時生活場所種別 家庭引き取り 高校等卒業就労・一人暮らし等 社会的養護5) 矯正施設 親類宅 障害者関連施設6) 表4 年代7)×入退所人数(人) Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅴ期 Ⅵ期 計 入所数 29 51 39 30 34 23 206 退所数 16 32 28 33 34 21 164

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比較した際には、年代が進むにつれて差異が相対的に縮まって居ることが観察される。これ は、児童福祉関係者等を中心に、児童虐待への関心が高まった為と推測する。 入所年代×入所時年齢と集計については、全年代にかけて入所年齢「2~3歳(14.5%)」 「3~4歳(15.0%)」の入所率の高さは顕著であった(表5)。 入所年代×退所時年齢の集計では、高校卒業時の年齢となる「18~19」歳の年齢が20.1% と、最も数値が高かった。 入所年代×在籍年数の集計では、全期間を通して観察すると、在籍年数が1年未満である と20.1%。2年未満であると38.4%。3年未満であると52.4%の在籍年数であり、在籍年数 3年未満が半数以上を占める。4年未満になると57.9%と、途端に鈍化する(表6)。 入所年代×入所直前生活場所の集計では、「家」については、Ⅰ期~Ⅳ期の78.2%に比べ、 Ⅴ期~Ⅵ期が55.5%と22%程低下している。また、「乳児院」に注目する。Ⅰ期の6.9%、Ⅴ 期は20.5%、Ⅵ期は30.4%と増加傾向にある。「国調査」では、21.9%が乳児院からの措置変 更となっている。2013年のデーターである為、該当するⅤ期の数値とほぼ一致する。 入所年代×退所時生活場所の集計では、施設退所65%弱が「家庭」となっている。また、 「自立」である高校卒業時に一人暮らし等を開始するケース、「社会的養護(母子生活支援施 設5人、児童養護施設6人、児童自立支援施設8人、養育家庭3人、自立援助ホーム1人)」 のケースはそれぞれ15%程である。「都施設調査」と比較すると、「家庭復帰」が47%、「就 労自立」が24%、「児童養護施設」「自立援助ホーム」等の社会的養護は、10-13%である。 本調査結果との差異は、「家庭」は15%程、本調査結果の割合が高い。「自立」は15%程度、 本調査結果の割合が低かった。 表5 入所年代×入所時年齢(歳) N=206 (%) 入所時年齢\年代 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅴ期 Ⅵ期 計 2~3 6.9 13.7 23.0 13.3 11.7 17.3 14.5 3~4 24.1 15.6 10.2 16.6 11.7 13.0 15.0 4~5 10.3 9.8 5.1 6.6 5.8 4.3 7.2 5~6 13.7 9.8 10.2 6.6 5.8 4.3 8.7 6~7 6.9 3.9 15.3 13.3 5.8 4.3 8.2 7~10 3.4 19.5 15.2 16.6 14.6 13.0 14.4 10~13 3.4 13.5 7.5 13.3 14.6 17.3 11.5 13~15 24.0 7.8 10.1 6.6 17.6 8.7 12.1 15~17 6.9 5.8 2.5 6.6 11.7 17.3 7.7 総計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

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入所年代×入所時養育者の集計では、入所時にひとり親家庭が、57.7%(母+父+祖母) と半数以上を占めた。その内、70%以上を母によるひとり親家庭が占めた。「国調査」では、 調査実施時点で、ひとり親家庭が49.0%(実母+実父+養母+養父)と半数程度を占めた。 その内、75.51%を実母によるひとり親家庭が占めた(養母を含めると76.0%)。「都施設調査」 では、調査実施時点で、ひとり親家庭が61.1%(実母+実父+養母+養父)と半数程度を占 めた。その内、82.2%を実母によるひとり親家庭が占めた(養母を含めると83.4%)。 入所年代×入所時生活保護受給の集計では、Ⅰ~Ⅴ期までは、右肩上がりに受給率が上が ったが、Ⅵ期のみは急激に数値が下がった(Ⅴ期は、55.8%で、Ⅵ期は17.3%)。Ⅵ期は、我 が国において最も受給者数が高い数値を記録した時期から、若干受給率が下がる等、ピーク を過ぎた時期と重なる。全期間を通して、受給率は30%超であった。「都施設調査」では、 データーの取り方が異なる為に参考程度であるが、「父親の生活保護受給」では13%、「母親 の生活保護受給」では35%であった。 入所年代×入所時親就労状況(非正規雇用含む)の集計では、全期間を通じて、59.2%の 就労率であった。また、Ⅵ期のみは突出した数値が観察された(86.9%)。入所年代×入所 時生活保護受給とのⅥ期の数値と関連性が期待される。「都施設調査」では、データーの取 り方が異なる為に参考程度であるが、「父親の就労」では72%、「母親の就労」では35%であ った。 入所年代×入所時親精神疾患有無状況の集計では、全期間を観察すると精神疾患有の親 表6 入所年代×在籍年数(年) n=164 (%) 在籍年数\年代 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅴ期 Ⅵ期 参考10) 参考11) 0~1 31.0 29.4 12.8 9.0 9.0 0.0 15.5 15 20.1 1~2 27.5 15.6 15.3 9.0 22.7 100.0 13.5 16 18.2 2~3 10.3 9.8 10.2 18.1 31.8 0.0 11.4 12 14.0 3~4 6.9 0.0 7.6 9.0 9.0 0.0 9.2 10 5.4 4~5 6.9 7.8 0.0 18.1 22.7 0.0 8.6 9 9.1 5~6 0.0 5.8 10.2 0.0 4.5 0.0 7.2 6 4.8 6~7 0.0 1.9 10.2 9.0 0.0 0.0 6.1 6 4.2 7~8 0.0 3.9 0.0 4.5 0.0 0.0 5.3 5 1.8 8~9 0.0 5.8 7.6 4.5 0.0 0.0 4.9 5 4.2 9~12 13.7 7.7 10.2 9.0 0.0 0.0 10.8 10 8.4 12~16 3.4 11.5 15.1 9.0 0.0 0.0 7.06 7 9.0 総計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100 100.0

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は、40%弱であった。但し、Ⅰ~Ⅲ期とⅣ~Ⅵ期で比較をすると、28.0%と50.3%で22%程 度の差異が生じた。「都施設調査」では、父親と母親の健康状態を調査しており、父親の 「精神的疾病またはその傾向」が12%、母親は51%であった。また、斎藤(2001)は、既出 した論文内で、「高い精神障害罹患率(実父の33%、実母の49%に精神障害)」が虐待の加害 者になりやすいと明らかにした。この論文は、本研究の年代では第Ⅲ期に該当する。第Ⅵ期 では、第Ⅲ期と比較すると15%程精神疾患を有する親の割合が上昇していることを踏まえる と事態は深刻化している可能性もある(表7)。 5―2.退所時生活場所12)とのクロス集計 次に、「退所時生活場所」とのクロス集計と他項目においてクロス集計を行った結果を記 載する。 在籍年数×退所時生活場所の集計では、退所時生活場所が、「家庭」における「在籍年数」 の割合が、「0~1」の場合には、25.7%と4ケースに1ケースの割合である。また、「0~ 1」に「1~2」を加えると、48.5%となり2ケースに1ケースの割合となる。更に、「2 ~3」を加えると66.6%となる。即ち、退所時生活場所が家庭であるケースは、入所後3年 未満のケースが3ケースに2ケースを占める。その後、累積していくと73.3%(4年未満)、 80.9%(5年未満)、84.7%(6年未満)、89.4%(7年未満)と上昇するが、徐々に上昇率 が鈍化する(表8)。また、主たる「退所時生活場所」である「家庭」と「自立」を抽出し たものが図1である。 表9は、表8同様に在籍年数×退所時生活場所であるが、Ⅳ~Ⅵ期に限定したものであ る。「家庭」における「在籍年数」の割合が、「0~1」の場合には15.3%、「1~2」を加 えると42.2%、「2~3」を加えると、69.1%となる。「3~4」「4~5」を加えると、92.0 %となる。 表7 入所年代×入所時親精神疾患有無状況 N=206 (%) 有無\年代 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 Ⅴ期 Ⅵ期 計 有 24.1 21.5 38.4 51.7 47.0 52.1 37.0 無 72.4 76.4 61.5 48.2 52.9 47.8 61.9 不明 3.4 1.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.9 総計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

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入所時年齢×退所時生活場所の集計では、退所時生活場所が、「家庭」における入所時年 齢の割合が、「2~3」の場合は16.1%の家庭復帰率となる。「3~4」を加えると28.5%と なり、「4~5」を加えると38.0%となる。「5~6」を加えると47.6%、「6~7」を加える と55.2%と上昇するが、徐々に鈍化する(表10)。 虐待有無×退所時生活場所表の集計では、虐待が「有」、且つ退所時生活場所が「家庭」 のケースは、62.7%であった。虐待が「無」且つ、退所時生活場所が「家庭」のケースは、 65.7%であった。先述した「入所年代×退所時生活場所」で示した退所時生活場所総計にお いて「家庭」の64.0%と比較しても、大きな差異は認められなかった。 また、虐待「有」且つ、退所時生活場所が「自立」のケースは、15.9%であった。虐待が 表8 在籍年数(年)×退所時生活場所 n=164 (%) 在籍年数\退所時生活場所 家庭 自立 社会的養護 矯正施設 親類宅 障害者関連施設 総計 0~1 25.7 3.8 17.3 50.0 0.0 0.0 20.1 1~2 22.8 0.0 21.7 50.0 0.0 0.0 18.2 2~3 18.1 3.8 8.7 0.0 0.0 14.2 14.0 3~4 6.6 0.0 8.7 0.0 0.0 0.0 5.4 4~5 7.6 11.5 8.7 0.0 100.0 14.2 9.1 5~6 3.8 7.6 4.3 0.0 0.0 14.2 4.8 6~7 4.7 3.8 4.3 0.0 0.0 0.0 4.2 7~10 4.7 15.2 21.7 0.0 0.0 28.4 9.6 10~13 3.7 30.6 4.3 0.0 0.0 0.0 7.8 13~16 1.9 23.0 0.0 0.0 0.0 28.5 6.0 総計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 0 10 20 30 40 0〜1 1〜2 2〜3 3〜4 4〜5 5〜6 6〜7 7〜10 10〜13 13〜16 図1 在籍年数×退所時生活場所(家庭・自立) 家庭復帰 自立

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「無」且つ、退所時生活場所が「自立」のケースは、15.7%であった。これは、先述した「入 所年代×退所時生活場所」で示した退所時生活場所総計において「自立」の15.8%と比較し ても、大きな差異は認められなかった。 表9 Ⅳ~Ⅵ期 在籍年数(年)×退所時生活場所 n=46 (%) 在籍年数\退所時生活場所 家庭 自立 社会的養護 親類宅 障害者関連施設 総計 0~1 15.3 0.0 0.0 0.0 0.0 8.8 1~2 26.9 0.0 16.6 0.0 0.0 17.7 2~3 26.9 11.1 33.3 0.0 33.3 24.4 3~4 7.6 0.0 33.3 0.0 0.0 8.8 4~5 15.3 22.2 16.6 100.0 33.3 20.0 5~6 3.8 0.0 0.0 0.0 0.0 2.2 6~7 3.8 11.1 0.0 0.0 0.0 4.4 7~10 0.0 11.1 0.0 0.0 33.3 4.4 10~14 0.0 44.4 0.0 0.0 28.5 8.8 総計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 表 10 入所時年齢(歳)×退所時生活場所 n=164 (%) 入所時年齢\退所時生活場所 家庭 自立 社会的養護 矯正施設 親類宅 障害者関連施設 総計 2~3 16.1 7.6 4.3 0.0 0.0 0.0 12.2 3~4 12.3 11.5 30.4 0.0 0.0 0.0 14.0 4~5 9.5 3.8 4.3 0.0 0.0 14.2 7.9 5~6 9.5 7.6 13.0 0.0 0.0 14.2 9.7 6~7 7.6 19.2 4.3 0.0 0.0 14.2 9.1 7~9 9.5 3.8 13.1 0.0 0.0 0.0 8.4 9~11 7.5 11.4 0.0 0.0 0.0 0.0 6.6 11~13 7.6 15.3 13.1 0.0 0.0 14.2 9.6 13~15 15.1 7.6 13.0 50.0 100.0 14.2 14.6 15~17 4.7 11.5 4.3 50.0 0.0 28.4 7.3 総計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 *社会的養護の「3~4」は、30.4%と突出した数値となった。内訳は、養育家庭委託やきょうだい統合 の為の措置変更、母子生活支援施設への発展的な措置変更等7名であった。

(12)

表7で示したように、「入所年代×入所時親精神疾患有無状況」のⅣ~Ⅵ期では、入所児 童の親の半数以上が精神疾患有となっている。その為、Ⅳ~Ⅵ期間内に入所したケースに限 定し、「親精神疾患有無×入所時年齢(累積度数)」を累積度数で表したのが表11である。親 精神疾患有のケースが一貫して、精神疾患無のケースを上回っていることが分かる。つまり は、親精神疾患有のほうが低年齢での入所に至っていると言える。親精神疾患有無×退所時 生活場所の集計では、親精神疾患有で、退所時生活場所が「家庭」の場合は、家庭復帰率が 50.9%である。これは、親精神疾患無と比較すると20%強の差異が認められた。また、親精 神疾患有で、退所時生活場所が「自立」の場合は27.4%である。総計の15.8%と比較すると、 親精神疾患有であると「自立」の割合が10%強上昇することが認められた(表12) 親精神疾患有無×退所時年齢(累積度数)×退所時生活場所「家庭」では、親精神疾患有 無、且つ家庭復帰をしたケースを抽出し、退所時年齢を累積度数でクロス集計を行った。精 神疾患を有する親宅への家庭復帰の場合は、初めて確認されたのが、「4~5」で、7.6%で あった。対して、精神疾患を有していない親宅への家庭復帰の場合は、「2~3」の時点で、 6.3%の数値が認められた。この両者を比較すると、「2~3」から「9~10」までは、精神 疾患を有していない親宅への家庭復帰率のほうが上回るが、「10~11」からは、一貫して、 精神疾患を有する親宅への家庭復帰率が一転して上回ることが確認された。なお、抽出した 表 11 Ⅳ~Ⅵ期 親精神疾患有無×入所時年齢(歳)【累積度数】 n=87 (%) 有無\入所時年齢 2~3 3~4 4~5 5~6 6~7 7~8 8~9 9~10 有 16.2 30.2 39.5 46.5 53.4 60.4 72.0 72.0 無 11.6 23.2 25.5 30.2 39.5 41.8 44.1 51.1 有無\入所時年齢 10~11 11~12 12~13 13~14 14~15 15~16 16~17 有 76.7 81.4 90.7 93.0 95.3 100.0 100.0 無 55.8 60.4 62.7 74.4 81.4 90.7 100.0 表 12 親精神疾患有無×退所時生活場所 n=164 (%) 有無\退所時生活場所 家庭 自立 社会的養護 矯正施設 親類宅 障害者関連施設 総計 有 50.9 27.4 11.7 0.0 1.9 7.8 100.0 無 71.1 9.9 14.4 1.8 0.0 2.7 100.0 不明 0.0 50.0 50.0 0.0 0.0 0.0 100.0 総計 64.0 15.8 14.0 1.2 0.6 4.2 100.0

(13)

ケース数は、「有」が26ケース。「無」が79ケースであった(表13)。 表14は、親精神疾患有無×在籍年数(累積度数)×退所時生活場所「家庭」である。全期 間を通じて、精神疾患を有する親宅への家庭復帰率が、精神疾患を有していない親宅への家 庭復帰率を下回ることが確認された。6年未満までは、概ね13~20%程度の差異が見られ た。6年以上は、9%以下の差異であった。 入所時生活保護有無×退所時生活場所と退所時生活保護有無×退所時生活場所を比較し、 生活保護受給有無によって家庭復帰に差異が生じるかを比較した。入所時に生活保護が 「有」且つ「家庭」の割合は24.7%であった。また、退所時に生活保護が「有」且つ「家庭」 の割合は21.9%であり、大きな差異は見られなかった。 入所時就労有無×退所時生活場所と退所時就労有無×退所時生活場所を比較し、就労有無 によって家庭復帰に差異が生じるかを比較した。入所時も退所時も就労「有」、且つ退所時 生活場所が「家庭」の割合は両者とも65.7%の同数であり、差異は見られなかった。 「退所時きょうだい有無×退所時生活場所」では、退所時に施設入所している児童のきょ うだい有無によって、家庭復帰等の差異が生じるかを比較した。退所時きょうだいが「有」、 且つ退所時生活場所が「家庭」は、64.8%であった。退所時きょうだいが「無」、且つ退所 表 13 親精神疾患有無×退所時年齢(歳)【累積度数】×退所時生活場所「家庭」 n=105 (%) *8~9 は該当データー無 有無\退所時年齢 2~3 3~4 4~5 5~6 6~7 7~8 9~10 10~11 有 0.0 0.0 7.6 11.5 19.2 30.7 46.1 57.6 無 6.3 11.3 13.9 27.8 35.4 37.9 48.1 51.9 有無\退所時年齢 11~12 12~13 13~14 14~15 15~16 16~17 17~18 18~19 有 61.5 69.2 73.0 73.0 84.6 88.4 96.1 100.0 無 54.4 63.2 65.8 67.0 79.7 87.3 92.4 100.0 表 14 親精神疾患有無×在籍年数(年)【累積度数】×退所時生活場所「家庭」 n=105 (%) 有無\在籍年数 0~1 1~2 2~3 3~4 4~5 5~6 6~7 有 15.3 38.4 61.5 61.5 65.3 69.2 80.7 無 29.1 51.9 68.3 77.2 86.0 89.8 92.4 有無\在籍年数 7~8 8~9 9~10 10~11 11~12 12~13 14~15 有 84.6 88.4 88.4 88.4 92.3 96.1 100.0 無 92.4 93.6 96.2 97.4 98.7 98.7 100.0

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時生活場所が「家庭」は、60.6%であった。大きな差異は生じなかった。 「退所時きょうだい有無×退所時きょうだい生活場所×退所時生活場所」では、退所時に 入所している児童のきょうだいが、どのような生活場所に居るのか、その生活場所の違いに よって差異が生じるかを比較した。きょうだいが家に居るケースの退所時生活場所「家」 (家庭復帰)の割合は、70.3%であった。反対に、入所児童以外のきょうだいが、A児童養 護施設とは別の児童福祉施設に入所している際の退所時生活場所「家」は、50.0%であった。 両者では、20.0%超の差異が生じた。

6.考察

児童養護施設に入所する児童において、主たる想いは、「親との生活」であることに疑い の余地はないであろう。この想いを受容し、可能な限り模索していくことが児童養護施設職 員の使命の一つである。その中で、本研究は家庭復帰を果たす為の一定のソーシャルケース ワークのタイミング・手段において、幾つかの視座を明らかにすることが出来た。 6-1.在籍年数における家庭復帰について 児童の38.4%が2年未満で退所に至っている。また、3年未満で退所に至っているのが 52.4%であり、半数を超えることが明らかになった。なお、既出した亀井の研究結果では、 「3年未満で退所する比率が約56.6%であった(1997~2002年度)」と言及しており、先行研 究と比較をしても、大きな差異は見られない。 児童の64%が家庭復帰をしている。また、児童の在籍年数2年未満38.4%の内、家庭復帰 が80.9%を占める。また、在籍年数3年未満52.4%の内、家庭復帰が81.4%を占めているこ とが明らかになった。全期間を通して、家庭復帰に至ったケースの内、入所在籍年数が、2 年未満は48%、3年未満は66%である。在籍年数が3年を超えると家庭復帰率が鈍化した。 既出した伊藤(2006)の研究結果と同様の結果であった。また、Ⅳ~Ⅵ期(2005-2018)に 限定したところ、家庭復帰に至っているケースでは、3年未満で69.1%の家庭復帰率であり、 5年未満では92.0%の家庭復帰率であった7)。以上の研究結果から、児童養護施設から家庭 復帰を果たす為のソーシャルケースワークの重点的なタイミングは3年若しくは5年未満で あると言える。 6-2.入所時年齢における家庭復帰について 表10を観察すると、家庭復帰を果たした児童の入所時年齢が、3歳未満の場合は16.1%の 家庭復帰率、4歳未満は28.5%、5歳未満は38.0%、6歳未満は47.6%、7歳未満は55.2% (計48名)であることが明らかになり、入所時の年齢が若年であるほうが、家庭復帰率は上 昇するといった結果が明らかになった。

(15)

これらの研究結果から視座を導くには、東京都の一時保護所や児童養護施設の入所率等に 注目する必要がある。東京都における一時保護所の平成29年の平均入所率は、109.1%(厚 生労働省子ども家庭局)である。また、「都施設調査」の「児童養護施設月別在籍児童数及 び入退所状況」によると平均して、92.6%の入所率である。 一時保護所も児童養護施設も定員一杯・超過の状態であり、虐待等により重篤化した児童 が優先的に入所となる現状がある。厚生労働省子ども家庭局(2019)の資料によると、虐待 で分離となるのは児童相談所が扱ったケースの3.4%である。重篤化は、概ね被害を受けた 期間と比例する為に年齢も上がる。即ち、適切なアセスメントを基に、家族(社会)病理が より深刻化する前に、関係機関による早期の介入によって入所に至ったケースは、家庭復帰 が早まると推測できる。また、親の心情として、入所時年齢が、より低年齢であるほうが、 児童に対する罪悪感が強まるとも推測する。 6-3.入所児童の親の精神疾患について 表7で明らかにしたように、入所時の親精神疾患有は、Ⅳ~Ⅵ期では、50.3%と半数以上 であった。背景には、精神疾患を有している患者の増加(1996年 188万6千人→2017年  348万1千人)が挙げられる。 表11で示したように、親精神疾患有のケースのほうが児童は、より低年齢で入所に至って いる。また、家庭復帰率を比較すると精神疾患無が有に比べて、20%強の優位性が認められ た。更には、表13で示したように親精神疾患有であると、特に退所時年齢が10歳未満は、よ り個別的な状況を鑑みたソーシャルケースワークを経て、家族再統合に取り組んでいるこ と。表14によって、在籍期間も長期化することが明らかになった。即ち、家庭復帰がより長 期化し、より高年齢になるということが示された。 以上の研究結果から推測されるのは、親が精神疾患を有しているケースのほうが、児童相 談所や子ども家庭支援センター等の関係機関の介入が早まり、早期に入所に至っている。施 設入所後に家庭復帰を模索する段階に至っても、例えば親が精神疾患によって、朝の起床が 困難であり、朝食を提供する等して児童をスムーズに登校させることが出来ない。その為、 児童自身で朝食を摂る等が可能となる一定の年齢に至った後の家庭復帰を計画することが推 測される。しかしながら、先述したように、虐待有無によって家庭復帰の差異は生じない。 また、親の就労有無や生活保護受給有無も同様に家庭復帰には影響を及ばない。入所ケース の半数以上の親が精神疾患を有しているという現状を鑑みても、看過できない特徴である。 6-4.家庭復帰におけるソーシャルケースワーク 筆者は、家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)として家庭再統合・家庭 復帰に向けてソーシャルケースワークを行っている。筆者が、関わった児童の多くは、例え

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ば5年を超過しても親と生活をしたいという想いは、変動はありながらも継続する。但し、 親は年月を重ねれば重ねるほど、「対象となる子どもの居ない生活に慣れてしまう」様子が 見られるし、そのように吐露をした親も居た。自宅内においても、その子どもが居た形跡 (私物や個室等)が徐々に(しばしば急激に)薄れていく。筆者が強調したいのは、アドミ ッションケアの段階で、個別的な家庭復帰に向けた中長期的なアセスメント・目標設定を児 童相談所と共に担うこと。少なくともインケア内において、ケースワークは継続されるべき こと。虐待対応に忙殺されている児童相談所任せでは、ケースワークが「塩漬け」状態に陥 ることも散見され(児童福祉司担当変更時等)、「子どもの最善の利益」を掲げることは困難 である。入所時から家族状況が気にかかり、「いつになったら家に帰れるのだろう」という 不安を抱えている児童に対して、家庭復帰が困難であっても、当事者主権を常に念頭にお き、ケースワークの進捗状況を真摯に、適切な言葉・手段・時熟で、現状を歪曲することな く伝えることは児童養護施設の責務である。 更には、親の精神疾患における治療の継続や相談先の確保は担保したうえで、家庭復帰が 果たせたとしても、親が精神疾患を有しているということは、多層的な社会資源を家庭復帰 時に構築しても大なり小なり、その児童が年齢相応よりも家庭内における役割を多く担った り、親の世話をしなければならないことは紛れもない事実である。虐待が及ばない為のアセ スメントは大前提として、家庭復帰後に予測される出来事を児童、親と一緒に検討すること は重要な作業である。 以上の観点から、家庭復帰時等に活用されている既存のプログラムやチェックリストに加 えて、家庭再統合・家庭復帰の一手段として、二点の提案を試みる。 一点目として、<母子生活支援施設の積極的で多様な活用>である。母子生活支援施設 は、「配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき児童を入 所させて」と児童福祉法第38条に明記されているが、男児の場合は、小学生までとしている 運用が目立つ。都内母子生活支援施設の入所率が72.1%(2017年度)と停滞している中、高 年齢児の男児も含めた活用である。支援者が居る環境下で、母子分離を回避する為の手段、 家族病理の、より深刻化を防ぐ手段、また児童養護施設等退所時の再統合の手段である。 二点目は、<家庭復帰に至るまでのステップ内に、措置を継続しながら一箇月程度以上の 外泊を実施する>ことである。どの年齢であっても実施は好ましいが、より高年齢のほうが、 児童自身が親の状況や生活実態を客観視できる力を備えられることを勘案すると、自己決定 の意味合いは大きくなる。その外泊内において、「お客様ではない」13)外泊を児童と親が体 感して現実を目の当たりにし、家庭復帰についての意見を表明する機会は必須な作業である。 例えば親の精神疾患から生じる言動によって施設に戻るという児童自身の選択も措置を継続 することで付与される。実施に至るには、児童相談所との緊密な連携、外泊時の様子につい てのモニタリング、親に実験的な外泊であることのコンセンサスを得ること。外泊の結果、

(17)

家庭復帰に至らない可能性があることも承知の上で実施をする等のファミリーソーシャルワ ークの力も要求される。 6-5.被虐待について 2015-2018年度の入所児童において9割に迫る児童が虐待を経験している。もはや、児童 養護施設の概念を凌駕している。都内には、児童心理治療施設が存在しない為に、施設間の ボーダーレス化にも至らない。「都施設調査」では、72.4%という数値が出ているが、2016 年3月1日時点での調査である為にタイムラグが生じていること。また、本調査は、その年 次に入所した児童のみを対象としているが、「都施設調査」では、調査時点で在籍している 全児童を対象としている違いがある。「都施設調査」等の新たな発表を待ちたい。

おわりに

本研究結果は、一箇所の児童養護施設の分析であること。また、現在も41人が入所中であ る為に、現時点では正確なデーターが得られない項目があることを本調査の限界として述べ る。 そして、今回の調査は、「家庭復帰」を主眼においた研究であり、「親との生活を再開した い」という児童の主たる想いを中心とした。しかしながら、家庭復帰を果たすことだけが 「最善の利益」だと言い切ることは出来ない。施設入所を肯定的に捉えている児童も存在す るし、家庭復帰後に再度虐待を受けて保護、施設入所に至ったケースも見られる。本調査内 でも、家庭復帰後に再度A児童養護施設に再入所したケースも見られたし、A児童養護施設 以外の社会的養護下に再入所したケースも僅かであるが見られた。更には、把握できていな い児童も存在する可能性がある。逆説的に言えば、全ての再入所ケースが「家庭復帰が間違 った選択であった」とも言い切れない。家庭復帰後のアフターケア、モニタリングが最も重 要であることをつけ加える。 本研究では、「きょうだい」や「養育者状況」等の項目については禁欲的態度を心掛けた。 今後の課題とする。 児童一人ひとりの「最善の利益」は、ソーシャルケースワークでのみ存在する。今後は、 退所児童やその親等へのインタビュー等を通じて、研究を深めたい。

注)

1 厚生労働省人口動態・保健社会統計室「平成29年度福祉行政報告例」による。 2 長期にわたり、家庭復帰が見込めない子ども等を対象に民間住宅を利用して、本体施設の支 援のもとで地域社会の一員として、家庭的な環境において社会的自立を促進する事業である。 定員は原則6名であり、通称は、「国型グループホーム」等と呼称される。2017年10月1日時点

(18)

で、全国で391箇所が運営されている。 3 施設分園型グループホームは、地域小規模児童養護施設とは異なり、国よりも先だって運営 が開始された東京都独自のグループホームである。その後、「小規模グループケア地域型ホーム」 も事業が開始され、両者をまとめて、「都型グループホーム」等と呼称される。3つのグループ ホームを合わせて、東京都では「養護児童グループ」と名付けており、2018年12月現在で151箇 所が運営されている。 4 専門機能強化型児童養護施設は、「被虐待児童など、治療的・専門的ケアが必要な児童への適 切な支援を行い、もって児童の社会的自立の促進を図ることを目的とする」とされ、非常勤精 神科医師(児童精神科医等)・治療指導担当職員(心理士等)配置やケアワーカーの増員等の体 制が整備される。2018年12月時点で44箇所。 5 社会的養護には、「(A児童養護施設ではない、他の)児童養護施設」「母子生活支援施設」「児 童自立支援施設」「養育家庭」「自立援助ホーム」が該当した。 6 障害者関連施設には、「障害児入所施設」「障害者グループホーム」「宿泊型自立訓練施設(通 勤寮)」が該当した。 7 Ⅳ期以降に入所した児童87名の内、41人は入所中である為、Ⅳ-Ⅵ期は現時点での数値であ る。 8 4つの措置変更とは、乳児院、児童養護施設、児童自立支援施設、養育家庭である。 9 「入所年代×児童票記載による虐待有無」とは異なり、入所後に児童や親等の証言、また当時 の記録や当時を知る職員からの聞き取りを経て把握を行った。なお、Ⅰ期とⅡ期については、 「児童虐待の防止等に関する法律」が施行される前であったが、遡って4つの虐待の定義に照ら して、カウントを行った。更には、2004年10月1日「児童虐待の防止等に関する法律」の一部 が改正され、所謂面前DVが心理的虐待に含まれた。2004年10月1日以降に入所したケースに ついては、本改正に基づいて、該当した場合にはカウントを行った。 10 2013年2月1日現在の国調査。 11 2016年3月1日現在の都施設調査。 12 Ⅰ-Ⅵ期で退所した164人が対象。 13 児童養護施設入所中の外泊(親宅等での宿泊)は、家庭復帰・再統合を目的とした練習であ るべきだが、数泊程度であると食事が豪華であったり、物を購入したり、テーマパークに遊び にいく等、特別な外泊になりやすい。

参考文献

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児童養護施設の調査より―『新島学園短期大学紀要』、28、新島学園短期大学、71-90 3)亀井聡(2009)「児童養護施設における入所理由と退所理由及び入所期間の関係について―児 童養護施設の調査より その2―」、29、新島学園短期大学、129-148 4)菅野恵(2016)「児童養護施設における家庭復帰の非促進要因:非促進群の複数事例の検討を 含めて」、9、和光大学現代人間学部紀要、19-26 5)厚生労働省人口動態・保健社会統計室「平成29年度福祉行政報告例」e-Stat、<https:// www.e-stat.go.jp/stat-search>(アクセス日:2019/08/10) 6)厚生労働省子ども家庭局(2019a)「社会的養育の推進に向けて」 7)厚生労働省子ども家庭局(2019b)「2019年度児童相談所所長研修〈前期〉児童家庭福祉の動 向と課題」 8)厚生労働省雇用均等・児童家庭局(2015)「児童養護施設入所児童等調査結果(平成25年2月 1日現在)」 9)厚生労働省政策統括官付参事官付保健統計室(2019)「平成29年(2017)患者調査」 10)厚生労働省社会・援護局(2016)「被保護者調査(平成28年度)」 11)厚生労働省社会・援護局(2017)「被保護者調査(平成29年度)」 12)斎藤学(2001)「全国養護施設に入所してきた被虐待児とその親に関する研究」『子どもの虐 待とネグレクト』、3・2、日本子どもの虐待防止研究会、332-360 13)佐藤秀紀、鈴木幸雄(2002)「児童養護施設入所児童およびその保護者の問題の経時的変容状 況と相互関連性」『社会福祉学』、42・2、日本社会福祉学会、91-105 14)社会福祉法人東京都社会福祉協議会児童部会調査研究部(2019)「平成27年度児童養護施設入 退所児童の状況」『紀要-平成26年度・27年度版-』18・19、東京都社会福祉協議会、133-152 15)清水隆則、筒井のり子(1992)「養護問題における『貧困サイクル』」『社会福祉研究』、55、 鉄道弘済会社会福祉部、88-95 16)菅原哲男(2004)『家族の再生 ファミリーソーシャルワーカーの仕事』、言叢社 17)東京都福祉保健局(1985)「東京都養護児童グループホーム事業実施要綱」 18)東京都福祉保健局(2017)「東京都専門機能強化型児童養護施設制度実施要綱」 19)東京都福祉保健局(2019a)「都内母子生活支援施設の現状」 20)東京都福祉保健局(2019b)「2019東京の福祉保健」 21)堤賢、高橋利一、西澤哲、原田和幸(1996)「被虐待児調査研究―養護施設における子どもの 入所以前の経験と施設での生活状況に関する調査研究―」、『日本社会事業大学社会事業研究 所年報』、32、日本社会事業大学、213-243 22)松宮透髙(2008)「被虐待児童事例にみる親のメンタルヘルス問題とその支援課題―児童養護 施設入所児童の調査を通して―」『川崎医療福祉学会誌』18・1、川崎医療福祉学会、97-

(20)

Abstract:

Data regarding 206 subjects were from Children’s Nursing Home ‘A’ in Tokyo and was reanalyzed, and cross-tabulated. The purpose of this investigation were “making clear the way and timing of standard social work for children who would return to home from Children’s Nursing Home which gave the supporters a clue” and, “making clear how to in fluence to return to home if the parents have a psychological disorder.

As a results, (1) It is the goal of children to their family homes within three or five years. (2) The return-to-home rate was 38% for children aged five years or younger, 55% for seven years or younger. (3) Since 2005, more than half the parents were noted to have psychological disorders at the time of the admission of their children. The return-to-home rate was confirmed to be 20% lower in cases wherein parents had a psychological disorder. It was also found that in cases wherein the child was younger than 10 years at the time of admission, Through purdent case work were made to reunify them with their family.

Based on the above results, I indicate one way to family reunification and return-to-home that 〈 active and diverse use the Life support Groups and Facilities for Mothers and Children 〉 and 〈Carring out long-term overnight stay for about a month while continuing in the planning of return-to-home〉

Keywords:Children’s Nursing Home, Returned to their family homes, Age at time of

admission, Number of years admitted, psychological disorder

A study on the return of children to their family

homes from A Children’s Nursing Home:

―An aging survey of Children’ s Nursing Home A―

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