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楽しい“虫音楽”の世界(その5)

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Academic year: 2021

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楽しい 虫音楽 の世界 ― 71 ― 787 ロベルト・シュトルツ(1880 ∼ 1975)はオペレッタ の作曲者,指揮者として活躍したオーストリアの人で, ≪20 の花≫は<マーガレット><エーデルワイス>等 花の名前の小曲20 からなる素敵な歌曲集である。同じ ような趣向の曲に若い娘たちを矢車菊や睡蓮等に喩えた ドイツのリヒャルト・シュトラウス(1864 ∼ 1949)の 歌曲集≪乙女の花≫がある。フランスのダリウス・ミヨ ー(1892 ∼ 1974)の歌曲≪花のカタログ≫は 7 種類の 花の販売カタログのうたい文句をそのまま歌詞にした。 花が咲く時刻の順に七つの花の曲を並べたフランスのジ ャン・フランセ(1912 ∼ 97)のオーボエと管弦楽のた めの≪花時計≫もお洒落だ。ほかにもフィンランドのジ ャン・シベリウス(1865 ∼ 1957)のピアノ曲集≪花の 組曲≫,さらには前回≪インセクタリウム≫で取り上げ たデンマークのルーズ・ランゴー(1893 ∼ 1952)によ るピアノ曲集≪花の描写≫など花の曲集は枚挙にいとま がない。 日本にも三木 稔(1930 ∼ 2011)に馬子唄のような <ばれいしょの花>など14 曲からなる歌曲≪花ものが たり≫,病を得たのち左手のピアニストとして再起を果 たした舘野 泉のために林 光(1931 ∼ 2012)が作っ た≪花の図鑑・前奏曲集≫という独創的な曲集がある。 これらに比べ昆虫を題材にした曲集は分が悪そうだ。 前回取り上げたランゴー,ヴィルシャーたちの≪インセ クタリウム≫やロジャー・スッチー(1956 ∼)による ≪虫たち≫は昆虫たちの曲ではあるが,説明的な雰囲気 を多く纏うし,昆虫ではない節足動物も混じっている。 そのようななかで出会ったのがデンマークのスヴェ ン・ニールセン(1937 ∼)の≪ Sommerfugeldalen(蝶 の谷)≫である。この曲はレクイエムで静謐な雰囲気を 持つ。詩はノーベル賞候補にもなったデンマークの女性 詩人インガ・クリステンセンによるソネット(14 行詩) で,次のような蝶と蛾の名前が並ぶ。ベニシジミ,オオ イチモンジ,キアゲハ,オオアカタテハ,チョウセンギ ンボシセセリ,ドクロメンガタスズメ,モンシロチョウ, イガ,カイコガ,モウセンガ,ヤガ,ルリシジミ,キベ リタテハ,クジャクチョウ,フチグロベニシジミ,セイ ヨウシジミタテハ,セイヨウスグリシロエダシャク,ヤ ナギドクガ,クモマツマキチョウ,ヒメアカタテハ,ム ラサキエダシャク,チョウセンコムラサキ,ナミスジフ ユナミシャク,カバエダシャク,ヒメシロチョウ,シン ジュガ,ミドリヒョウモン,アマンダシジミ,ヒメヒオ ドシ等(田辺欧氏の訳文による)。 1991 年に発表されたこの詩は多くの国際的な賞を受 けたそうだ。ギリシャのロードス島の「蝶の谷」と呼ば れる観光名所に何km にもわたって生息する蝶はヒトリ ガの一種らしいので,この詩や曲とは関係がない。 彼女はなぜこのように多くの蝶や蛾を取り上げたの か?詩は蝶や蛾の生態や形態も織り交ぜた哲学的な内容 で容易には読み解けないが,蝶が持つと信じられた霊的 なイメージが関係していることは間違いないだろう。 CD の解説書には 30 種近くの綺麗な蝶や蛾の写真が綴 じ込まれている。 注:デンマーク語には蝶と蛾を区別する単語がなく Sommerfugel は双方を含むそうである。曲は「蝶の谷」 と訳される。

昆虫芸術研究家

エッセイ

楽しい 虫音楽 の世界

(その 5 たくさんの蝶が飛ぶ曲)

柏田 雄三

(かしわだ ゆうぞう) ニールセン 蝶の谷 DACAPO 8.224706

参照

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