日立製作所とGE社の原子力事業統合 は,2006年11月13日に統合に向けた検討 を始める意向書を交わした後,約半年の 交渉を経て,2007月5月16日付けで統合 に か か わ る 基 本 合 意 書( F o r m a t i o n Agreement)の締結に至った。基本合意書 に基づいて両社は新会社設立準備に入 り,2007年6月4日に米国ならびにカナダ に お け る 新 会 社( GE-Hitachi Nuclear Energy,日立製作所とGE社の持分比率 40:60)を設立,次いで2007年7月1日に 日本における新会社(日立GEニュークリ ア・エナジー株式会社,日立製作所と GE社の持分比率約80:20)をそれぞれ設 立し,現在に至っている。 この統合は,両社が原子力事業におけ るリソースの相互活用を進め,拡大する 原子力市場に対応した経営資源の効率的 な運用を行うことを目的としている。日 立製作所にとっての本統合の意義を以下 の3点にまとめてみた。 まず第一点は日立製作所のコア技術で あるBWR(Boiling Water Reactor:沸騰水 型原子炉)技術を将来にわたって維持, 発展させ,BWR専業メーカーとして国 内外の顧客に安定的かつ信頼される製 品,サービスの提供をコミットすること にある。元々日立製作所の原子力技術は, GE社からのBWR技術導入によってスター トし,以来GE社と共にBWR技術の発展 を支えてきた。現在世界の原子力市場は PWR(Pressurized Water Reactor:加圧水型 原子炉)とBWRが主要な炉型として競合 2001年5月にブッシュ政権が国家エネ ルギー政策の中で原子力拡大を提言して 以降,米国では原子力ルネッサンスと言 われる新規原子力発電所建設に向けた動 きが着実に進行している。原子力ルネッサ ンスの動きは,温室効果ガスの排出抑制 と近年の化石燃料高騰などの影響もあっ て世界各国に広がっており,原子力のグ ローバル市場は拡大基調にある。また, このような市場の拡大に際して,核不拡 散の観点から国際的な核管理の枠組みを 整備していくことが必要であり,米国, ロシアがそれぞれGNEP(Global Nuclear Energy Partnership:国際原子力エネルギー・ パートナーシップ)プログラムや核燃料 サイクルセンター構想を掲げているほ か,わが国も原子力立国計画の中で原子 力産業の国際展開支援とともにこのよう な国際的な枠組みづくりへの積極的関与 を行うとしている。 このようにグローバル市場が活発化し 政府レベルでの国際協調が進む状況下 で,産業界においても国際的な企業間連 携体制を確立することがグローバル事業 を推進するうえで重要な戦略となった。 国内各社がそれぞれ海外パートナーとの 連携を模索する中,日立製作所は原子力 導 入 以 来 の パ ー ト ナ ー で あ る 米 国 General Electric Company(GE社)との原 子力事業統合を進める決断をし,米国な らびに日本に新会社を設立して原子力事 業拡大に取り組んでいる。 13 Preface
原子力事業のグローバル化への取り組み
Challenges to Achieve Globalization of Nuclear Business日立GEニュークリア・エナジー 株式会社 代表取締役・取締役社長 羽生 正治 略歴 1975年日立製作所入社,入 社以来一貫して,原子力事業 の基本計画から現地据付けに 至るまで幅広く従事。2003 年から2年間他事業(産業プ ラント事業)を経て,2005 年原子力事業分野に復帰,原 子力事業部長に就任。2007 年 7 月 か ら 新 会 社 発 足 に 伴 い,現職。 原子力学会会員。 Preface はじめに
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原子力事業統合の意義設経験をベースとした統合エンジニアリ ング力,建設取りまとめ力や,研究開発 力である。これらの役割を統合会社の中 で日立側が着実に果たすことで,プラン ト供給者としての総合力,競争力を高め, 同時に日立GEニュークリア・エナジー が世界市場で安定的な受注を獲得するこ とができるものと考える。 最後に両社のシナジーによる経営基盤 の強化である。共にBWR事業をコアと する両社には共通する領域も多く,研究 開発,設計,製造,調達といった業務フ ローのさまざまな側面で,互いのベスト プラクティスを取り入れてより効率的な 経営を実現する潜在的な機会がある。現 在,新会社間では「グローバル・アドバ イザリ・コミッティ」を設けてこのよう なシナジー創出機会を議論し,実行する ためのチーム活動を推進しているところ である。 GE社との原子力事業統合によって, 日立原子力技術をグローバルに展開する ための事業体制を構築した。しかしこれ はまだ枠組みのレベルであり,この仕組 みの中で日立原子力技術を世界に通用さ せるためには,われわれ自身が取り組ま なければならない真のグローバル化に向 けた課題がある。 日立原子力技術が強みとするコアコン ピタンスをグローバルに通用する形で, かつ世界最高の水準で維持・発展させる ことが必要であり,それを成し得て初め て安定的な補完関係が成立し,事業統合 の意義を形あるものにできる。以下では 日立原子力技術のコアコンピタンスを 「モノづくり力」,「エンジニアリング力」, 「研究開発力」と位置づけ,それぞれに ついてグローバル化に向けた取り組み課 題を示す。 「モノづくり」に関しては,原子力特 有機器の製造に関して,常に世界最高レ しているが,過去に何回かの統合が行わ れた結果として,PWRの供給者は三菱 重工業株式会社−AREVA社連合と,株 式会社東芝−WH(ウェスチングハウス) 社 と い う 2 大 グ ル ー プ に 集 約 さ れ た 。 PWRに対抗してBWRを世界市場に展開 し,国際競争に勝ってBWR事業を維持 するためには,日立製作所とGE社の両 社が戦略を共有し,経営資源を統合して 総力を結集することが必要と考えた。 2点目は新会社を介して日立製作所の 原子力技術を世界に展開することであ る。両社の連携には,お互いの強みを生 かした補完関係によって,より統合され た製品,サービスを供給するねらいがあ る。日立製作所の強みは「モノづくり」 と,国内での継続的な原子力発電所の建 14 Vol.90 No.02 154-155 2008.02 電力・エネルギー分野の最新開発技術 次世代軽水炉「ESBWR」 最先端の原子力プラントをグローバル市場に提供できる体制構築 最適な組み合わせ ABWR ライセンス対応 (許認可・規格) マーケティング 生産システム (製品, 建設技術) ・日本での製造・建設・運転実績 ・米国設計承認取得済 ESBWR ・経済性の高い次世代向け技術 ・米・英国設計承認申請中 自然循環のため再循環ポンプ不要 重力落下注水, 自然放熱などの安全系採用 真のグローバル化に向けた 取り組み課題
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注:略語説明ABWR(Advanced Boiling Water Reactor),ESBWR(Economic and Simplified BWR)
事業統合のねらい
日立製作所とGE社が連携することにより,お互いの強みを生かした補完関係によって, 統合された製品,サービスを供給することができる。
日立製作所とGE社の記者会見
あり,その結果としてわれわれの原子力 技術の世界展開が実現すると考える。 拡大基調にある原子力のグローバル市 場の状況と,それに伴う国際協調の動き を踏まえ,GE社との事業統合に至った 経緯と日立製作所にとっての統合意義に ついての考えを述べた。また,今後の統 合事業の推進の中で,日立グループの原 子力技術をグローバルに展開していくう えでの取り組み課題を示した。これらの 課題への取り組みにおいて最も重要なの は人材,「ひと」であり,日立GEニュー クリア・エナジーの一人ひとりがグロー バルに通用する力量を発揮し,「日立原 子力」のプレゼンスを示していくことが 必要である。日立グループの一員として, 新会社一丸となって原子力事業の真のグ ローバル化に取り組んでいきたい。 ベルの競争力を維持していかなければな らない。設計,製造,品質保証といった プロセスを海外の規格基準に適応した形 で最適化し,素材・部品の国際調達を進 め,適切な設備投資によって生産性を高 めていく不断の努力が必要である。 「エンジニアリング力」,とりわけわ れわれが国内の建設経験を通じて築いて きたプラント統合エンジニアリングや建 設エンジニアリングといった領域は,長 年新規建設が途絶えていた米国市場にお いて,日立グループの経験の反映が期待 されている分野である。国内での成功経 験をいかに海外のプラント建設に生か し,実績として評価される結果を残せる かどうかは今後の取り組み次第である。 多様な建設プロジェクト体制の中で期待 される役割を果たすためには,国内の経 験をそのまま移すのではなく,それぞれ のプロジェクトの状況に応じた課題解決 が必要である。そのためには,グローバ ルに通用するエンジニアリング力が求め られる。 「研究開発力」は将来にわたって日立原 子力技術を世界に発信していくうえで欠 かせない要素である。これまでの原子力 技術開発は主として国内原子力市場に焦 点を当ててきた。新会社間でのシナジー を追求していく過程では,両社の研究開 発プログラムを統合し,より効率的な開 発を指向することになる。このような状 況下でグローバルに通用する研究開発提 案を日立がリードしていくことが重要で 15 Preface おわりに