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アートとリスク感性・リスクマネジメント 医療機関におけるアートとコロナ禍における取組み

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はじめに

 アートとリスク感性、アートとリスクマネジメントはいかに関連するのか。  本論で検討を試みる。まず第一に理論的な考察として、アートとリスク感性・ リスクマネジメントの関係について概観する。第二に、事例として、医療機関に おけるアート導入の事例について考察する。医療機関にアートを導入することが リスクマネジメントの観点からいかなる意義を持つのか、コロナ禍においていか なる試みがなされて、いかなる効果をもたらしたのかを明らかにする。

1.アートとマネジメント

 山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アー ト」と「サイエンス」』が20万部を超えるベストセラーになっている。この本の 冒頭で、QS世界大学ランキングの「アート・デザイン」分野で世界第1位の英国 ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)が提供するトレーニング・プログ ラムにグローバル企業から幹部が送り込まれている様子が記されている。  現代社会は、VUCA、つまり不安定(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複 雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)な状況にある。VUCAな現代においては、 様々な要素が複雑に絡み合い白黒がはっきりしない場合がある。こうした世界で は、論理的思考では答えを導くことができず、アートが育む感性や直感を頼りに した方がよいと山口氏は問題提起している。  このように山口氏によれば、第一に、論理的・理性的な情報処理スキルの限界

アートとリスク感性・リスクマネジメント

― 医療機関におけるアートとコロナ禍における取り組み ―

亀 井 克 之

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が露呈しつつある現代社会においては、全体を直覚的に捉える感性と、「真・善・ 美」が感じられる打ち手を内省的に創出する構想力や創造力が求められる。第二 に、世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある現代、人の承認欲求 や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要になる。第三に、システム の変化にルールの制定が追いつかない状況が発生している現代世界では、明文化 されたルールや法律だけを拠り所にするのではなく、内在的な自分なりの「真・善・ 美」の感覚、すなわち「美意識」に照らして判断する態度が必要となる1)  それゆえ、世界のビジネスエリートは、感性、美意識、直感力を練磨すること に意義を見出しているのである。以上のように、アートとマネジメントは結びつ けられる。さらには、通常のマネジメントのみならず、リスクに対応するリスク マネジメントにおいても、アートは貢献しうるというのが本稿の主題である。

2.感性のカテゴリー −弥生的感性と縄文的感性−

 前節で概観したように、昨今、感性を磨くことの重要性が認識されている。し かしながら感性とは何かということは曖昧である。元来、感性とは何かを考える のが、感性的認識の学としてのaesthetics(エステティクス)であった。これが日 本で明治期に「美学」と翻訳され定着した。しかし、感性的認識の学問としての 芸術学では、美を特権化しない。いろいろな感性のバリエーションがあるとする。 そこに言う感性は「五感」プラス「想像力」である。人間は想像力を持ち、何かを感 じて自分自身に刻み込む。それゆえ感性的認識の学問としての芸術学は、美術、 美学に限定されない、身体的感覚、倫理などを含む広い意味での人間論である2)  では、感性のバリエーションには何が考えられるのか。デッソワールは美的カ テゴリーとして「美」「崇高」「優美」「悲壮」「こっけい」「醜」の6つを挙げた3) 日本的な感性として、九鬼周蔵は「いき」に着目し、その構造を示した。谷川徹 三は、日本の美の系譜として縄文的原型と弥生的原型とに分類した。前者は動的・ 有機的・装飾性・怪奇、後者は静的・無機的・機能性・優美という特徴を持つ。 1)山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書、2017年)9-13頁(はじめに) ならびに22-31頁(本書における経営の「美意識」の適用範囲)より。 2)京都工芸繊維大学・三木順子教授「感性論」講義(2018年度春学期)に基づく。 3)デッソワール『美学および一般芸術学』(1906)と九鬼周蔵『「いき」の構造 他二篇』(岩波文庫、1979年) における諸説は、いずれも上記の三木教授「感性論」講義に基づく。三木教授は「感性論」講義の中で、 次のように述べられた。感性的カテゴリーに対して、どうすれば主観的な感じ方で、客観的そして普 遍的に私たちは社会の中でつながっていけるのか。芸術の感じ方は人それぞれでいいという考え方で は、バイキング料理で好きなものしか食べないのと同じである。カテゴリーの数だけチャンネルが必 要となる。自分がどう感じるのか。客観的にどう感じられるのか。普遍的にどのように描出するのか。 これらが現代社会において、感性的認識のカテゴリーを考える際の真髄だと考えられる。

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谷川徹三によれば、2つの原型の中で、日本の美の正系は、弥生的系譜の中にあ る4)。岡本太郎はそれを「繊細で優しい平明さ」と表現する5)  ここで、もう少し縄文的原型に基づく感性と弥生的原型に基づく感性という分 類に着目してみよう。「芸術は爆発だ」という言葉で知られる芸術家の岡本太郎 (1911-1996)は、1929年にヨーロッパに渡り、1940年に帰国するまで、20代すべ てをパリで過ごした。ヨーロッパで世界の非情でたくましい様々な伝統に触れな がら過ごした岡本太郎は、日本に帰国して「わび」「さび」を基調とする日本の「伝 統」と呼ばれる美に触れ、その弱々しさと陰性にがっかりする。    「豪華で壮大な奈良時代の仏教美術などをながめても、… さかのぼって古 墳時代の埴輪文化のあまりにも楽天的な美感にも、現代日本人にそのまま通 じる、イージーな形式主義を見てとり絶望したのです。してみると、なんと なくなまぬるい、消極的な楽天主義は、どうにもならないわが国文化の宿命 なのだろうか」6)    落胆していた岡本太郎は、1951年秋に、東京・上野での展示会で縄文土器や土 偶を目にした。岡本太郎は縄文文化の激しくて凄みのある美に触れて全身が震え るほど感動した。「いやったらしい美しさ」「からだじゅうがひっかきまわされる ような気がしました。やがてなんともいえない快感が血管の中をかけめぐり、モ リモリ力があふれ、吹きおこるのを覚えたのです」と表現している。縄文文化は 考古学の分野では当然研究されていた。さらに岡本太郎の発言が契機となって、 縄文文化は、美的鑑賞の対象になった7)。2018年に東京国立博物館で開催された 「縄文特別展 1万年の美の鼓動」の大成功が日本の美の原点としての縄文への 関心の高まりを示している。  岡本太郎は、激しくて力強い縄文文化の源流には、縄文時代が狩猟期だったこ とにあると指摘している。狩猟文化においては、獲物を探し求めて、闘い獲らね ばならないゆえ、立体空間的で、動的で、激しく、積極的な性格となる。これは、 弥生期以降の農耕文化が、一箇所に定住し、田畑を耕作し、毎年毎時期に一定の 規律による作業が繰り返されるのと好対照となる8) 4)谷川徹三『縄文的原型と弥生的原型』岩波書店、1971年、31-34頁。 5)岡本太郎「縄文土器 ―民族の生命力」(『みずゑ』1950年2月)岡本太郎『日本の伝統』光文社知 恵の森文庫、2005年所収、73-101頁;「講談社現代新書版 はじめに」『日本の伝統』284-286頁。 6)前掲書、76-77頁。 7)前掲書、76-77頁;284-286頁。 8)前掲書、78-80頁。

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 縄文的原型(感性)と弥生的原型(感性)の特徴とそれぞれ代表的な芸術を下 表にまとめる9) 火焔型縄文土器(箱根美術館) 9)谷川徹三『縄文的原型と弥生的原型』31-38頁。縄文的原型(感性)と弥生的原型(感性)のそれぞ れ代表的なアートの組み合わせの内、日光東照宮と桂離宮に着目すれば、ナチス政権下のドイツを離 れて来日した建築家ブルーノ・タウト(1880-1938)が後者を高く評価していた。タウトは伊勢神宮に ついても評価していた。世界遺産となったタウトによる一連の集合住宅は、縄文的な派手な色彩である。 そのタウトが弥生的な桂離宮の方を評価していたことは興味深い。田中辰明・柚木玲『建築家ブルーノ・ タウト』(オーム社、2010年)参照。 縄文的感性 弥生的感性 縄文時代:旧石器時代の後、紀元前1万 1000年頃から紀元前1000年頃まで 弥生時代:紀元前1000年頃から紀元300年 代半ばまで、古墳時代が続く 狩猟文化 農耕文化 動的・有機的・装飾性・怪奇 静的・無機的・機能性・優美 貞観の仏像彫刻:高雄神護寺の薬師如来 像 藤原の仏像彫刻:宇治平等院鳳凰堂の阿 弥陀如来像 桃山の障屛画:狩野永徳の唐獅子図屛風 江戸時代初期の肉筆浮世絵:彦根屏風の風俗画 日光東照宮 桂離宮 瀬戸黒・志野焼・織部焼の茶陶 有田の柿右衛門・京焼 白隠の書画 良寛の書画 葛飾北斎:富嶽三十六景 歌川広重:東海道中五十三次 (谷川徹三『縄文的原型と弥生的原型』31-38頁に基づき筆者作成)

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3.リスク感性とアート

 リスクマネジメント研究の分野では、従来より、リスクに直面した時に発揮さ れるリスク感性が重視されてきた。  亀井利明『危機管理とリスクマネジメント 改訂増補版』(同文舘出版、2001年、 28頁、初版1997年刊行)は、リスク感性について学術的にアプローチした最初の 試みである。リスク感性について、次のように説明されている。 「リスク感性はリスクに対する刺激や反応であって、リスクや危機をその前 兆の段階で把握し、その対応策を講じうる能力である。また、リスク感性は リスクや危機を理性や理論でもって把握するのではなく、直感や経験に基づ く勘によって把握する能力である。人間は感性(パトス)と理性(ロゴス) で物事を判断し、冷静な意思決定や決断を下すものである。しかし、リスク への対応やその処理に関しては理性や理論もさることながら感性や直感が重 要な意味を持つ。」10)  では、どのようにしてリスク感性を磨くことができるのか。リスク感性の向上 法として、次の諸点が挙げられる11)  以上より、アート→リスク感性の滋養→リスクマネジメントにおけるよりよい 決断、という図式が成り立つと考える。さらに、前節で見た分類に基づけば、平 常時における事前のリスクマネジメントの決断には弥生的感性、事象発生後の危 機管理の決断には縄文的感性が発揮されるとまとめておきたい。

4.感性的カテゴリーとしての「癒し」と医療機関のアート

 美的カテゴリー(感性的カテゴリー)の一つとして「やすらぎ」「平穏」を付 け加えたい。芸術的作品の内容そのものと同時に、芸術的作品が展示・掲示・設 置される「空間」によって、全体として「やすらぎ」や「平穏」がもたらされる。 ① 異文化に触れる(海外文化、異世代、異業種) ② アートに触れる ③ 決断に触れる(歴史上の人物や過去の経営者が下した決断について学習) 10)亀井利明『危機管理とリスクマネジメント 改訂増補版』同文舘出版、2001年)28頁。 11)亀井克之『決断力にみるリスクマネジメント』ミネルヴァ書房、2017年、5頁。

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特別な「場」にあるアートである。  現代社会の大きな病根はストレスにある。それゆえ「やすらぎ」「平穏」をも たらす芸術、そしてそれが展示される「空間」「場」を「癒しのアート」という カテゴリーで表現したい。「癒しのアート」は、鑑賞すると心が和むタイプの芸術、 またストレスで疲弊した心に優しい採光や色調や音調の芸術である。またそれが 展示・掲示・設置される場である。  「癒しのアート」の一つの例として医療機関におけるアート導入がある。従来 の病院は無機質な白い壁が中心であった。少しでも患者の気持ちが和むようにと 芸術作品を院内に導入する試みがホスピタル・アートの端緒である。これには患 者のみならず、医師、看護師、職員も癒されるという効果がある。

5.医療機関へのアート導入の意義

 ティム・ブラウンは、『デザイン思考が世界を変える』(葉敏生訳、2014年、早 川書房)の中で、医療機関の設備について、次のように指摘している。  「受付のプロセスがいかに分かりづらいかを身をもって感じた。目的も理 由も伝えられないまま、ただ待つよう指示されるストレスを肌で感じた。さ らに、名前も分からない職員に車椅子を押され、無機質な廊下を進み、恐ろ しい二重扉をふたつ通り抜けて、強烈な光と騒音に包まれた緊急診療室に 入っていく心許なさにじっと耐えた」「天井の防音タイル、無機質な廊下、 質素な待合室を延々と見せられる…」「患者の快適性というよりも、病院職 員のニーズに基づいてデザインされている」12)  同様に、後述する耳原総合病院の奥村伸二前院長は、次のように問題提起して いる。  「病気を治すため」とはいえ、冷たくて怖い空間に我慢してくるというこ とが本当に患者さんやそのご家族のためになっているのか?13) 12)ティム・ブラウン『デザイン思考が世界を変える』(葉敏生訳、早川書房、2014年)69-71頁。 13)奥村伸二「何故ホスピタルアートを導入したのか?」亀井克之編『なぜホスピタルアートを導入し たのか』「ホスピタル・アートのある街・堺」耳原総合病院・奥村伸二院長講演録(『調査と資料』第 118号、関西大学経済・政治研究所)2020年。

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14)なごやヘルスケア・アートマネジメント推進プロジェクト『子どもに優しい療養環境 名古屋市 立大学鈴木研究室における取り組みから』ヘルスケアとアートそのマネジメントを考えるBooklet Vol.19、2019年3月、24-25頁。

 こうした状況を改善しようと、近年、日本では、医療機関にアートを導入する ことが定着してきた。こうした試みは「ホスピタルアート(Hospital Art)」「ヘ ルスケアアート(Healthcare Art)」「アートフォーヘルス(Art for Health)」な どと呼ばれている。医療機関におけるアート導入の試みは、医療機関における社 会的課題解決の試み、つまりソーシャル・リスクマネジメントの取り組みの一つ と言えよう。

6.医療機関におけるアートの役割と効用

 名古屋市立大学・鈴木賢一教授の研究室がまとめた「子どもにやさしい療養環 境」(なごやヘルスケア・アートマネジメント推進プロジェクト、ヘルスケアとアー トそのマネジメントを考えるBooklet Vol.19、2019年3月)によれば、医療機関 におけるアートの役割と期待されるものとして以下のものが挙げられる14) 療養環境におけるアートの役割  ○不安を受容する Hospitality  ○不安を紛らわせる Distraction  ○平常心を取り戻す Refreshment  ○そっと応援する Encouragement  (鈴木賢一研究室「子どもにやさしい療養環境」24頁) 病院の環境デザイン  1.人にやさしい環境    利用者を主人公にしたデザイン    利用者が参画するデザイン  2.感情移入ができる環境    機能的な空間(SPACE)ではなく    愛着が感じられる場所(PLACE)の構築  3.自然に受け入れられる環境    環境が患者に応援メッセージを発信している (鈴木賢一研究室「子どもにやさしい療養環境」25頁)

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 香川県の四国こどもとおとなの医療センターの森合音アートディレクターは、 フランス語で「アール・テロワール」という概念を打ち出している。テロワールは、 テール(terre、土壌)から派生した語である。ぶどう栽培・ワイン醸造の分野 で用いられる言葉で、ぶどうが生育する地域や土地の特性を表す。これは、医療 機関がアートを導入・展開する時に、アーティストやアートディレクターが率先 して動いたり、全てをコントロールしたりするのではなく、医療現場や地域の人 の声にしっかりと耳を傾け、院内にある「痛み」を多くの人と共有しながらアー トを使って解決の手伝いをすることを意味する。アート(アール)の生まれる過 程や周りの環境・循環を大切にすることにより、「場を育てる」という考え方で ある。森氏は「アートのある場にはもともと痛みがあったと言い換えることもで きる」「痛みには希望が隠れている」と述べている15)

7.日本における医療機関へのアート導入の例

 我が国における医療機関へのアート導入の事例として以下のようなものがあ る。  NPO法人「アーツプロジェクト」(前代表は森口ゆたか・現近畿大学教授)に よる取り組み。例:後述する堺市の耳原総合病院(室野愛子アートディレクター) のアートや、香川県の四国こどもとおとなの医療センター(森合音アートディレ クター)など。 15)森合音「病院のアートマネジメント」、なごやヘルスケア・アートマネジメント推進プロジェクト、 シンポジウム「アートでもっと病院を元気に!! ヘルスケアアートでつながろう」(オンライン)2020年 12月12日 https://healthcare-art.net/news/event/entry-185.html ヘルスケアアートの分類  ○ 空間を演出する:作品展示、施設に付随したアート、建築・デザイン、 デジタル機器を利用したアート  ○病状・身体機能の回復:精神療法、身体療法、  ○ 特別な時間を演出する:パフォーマンス系アート、デジタル機器を利用 したアート  ○ブランディング・共有・伝達:広報、デザイン  ○特別な経験とコミュニケーションを促進する:参加型アート (鈴木賢一研究室「子どもにやさしい療養環境」25頁)

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 筑波大学附属病院、筑波メディカルセンター病院における取り組み。  名古屋市立大学・鈴木賢一研究室による取り組み。例:名古屋市立大学病院、 名古屋第一赤十字病院、名古屋第二赤十字病院、富山県リハビリテーション病院・ こども支援センターなど。  医療機関におけるアートの研究団体として、アートミーツケア学会がある。  名古屋市立大学の鈴木賢一教授を代表とする「なごやヘルスケア・アートマネ ジメント推進プロジェクト」のWEBサイトに、日本におけるヘルスケアアート の事例を写真で紹介する「ヘルスケアアート事例集」がある。医療機関におけ るアートを考える上で必見のサイトとなっている。https://healthcare-art-works. com16)

8.英国をモデルにした堺市・耳原総合病院におけるアート

 英国でアートが導入された病院の代表例として、ロンドンのチェルシー・ウェ ストミンスター病院がある。2018年、同病院は前身が設立されて70周年、現在の 場所に建造されて25周年を迎えた。英国はチャリティ文化の国であるが、チェル シー・ウェストミンスター病院もチェルシー・ウェストミンスター NHS財団を 通じたチャリティによって支えられている。このチャリティにより芸術展示も進 められてきた。同病院では、吹き抜けに大型造形作品の設置、壁面に造形作品や 絵画の設置、病室にアートの設置、病院内に患者と家族専用の映画館の設置など がなされている。もともと若い芸術家に作品展示の場を提供するという意味もホ スピタル・アートにはあった。近年、チェルシー・ウェストミンスター病院では、 展示の場から脱皮し、テーマを設定してのアート導入を進めている。  英国における他の一例として、筆者が訪問調査したものとしては、マンチェス ターにある王立眼科病院や王立子ども病院でのLimeという団体による取り組み がある17) 16)「ヘルスケアアート事例集」https://healthcare-art-works.com   同時に、なごやヘルスケア・アートマネジメント推進プロジェクトのWEBサイトも必見である。 https://healthcare-art.net 17)英国における医療機関のアートについては、なごやヘルスケア・アートマネジメント推進プロジェ クト『英国のヘルスケアアートとマネジメント 2018・2019年度シンポジウムより』ヘルスケアとアー トそのマネジメントを考えるBooklet Vol.3、2020年3月ならびに亀井克之編前掲『調査と資料』2020 年3月所収の英国調査レポートに詳しい。

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 チェルシー・ウェストミンスター病院をモデルにして、堺市にある耳原総合病 院では、2015年4月の建て替えに際して、奥村伸二前院長のリーダーシップと決 断により、アートが導入されることになった。奥村氏がホスピタルアートを認識 するに至ったのは、もともと異文化交流に熱心で、異分野の専門家を招いての講 演会を病院内で定期的に開催していたことがきっかけであった。異文化交流の講 演会の1つで、NPO法人アーツプロジェクトの代表であった森口ゆたか氏が講 師を務めていた。  アート導入決定に伴い、アートディレクターの役職、アートセクションの組織 が設けられた。耳原総合病院においてもアートの導入にチャリティが貢献してい る。戦後の混乱期における貧困と飢餓の中、1950年に地域住民の100円のカンパ から、地域医療を担う医療機関として民家の2階で耳原総合病院は開業した。アー ト導入の際も「健康友の会みみはら」に代表される地域住民の寄付が大きな力と なった。歴史的経緯を踏まえて、地域住民に聞き取りをしてコンセプトが練り上 げられた。耳原総合病院におけるアートのコンセプトは「希望のともしび」とさ れた。アートを貫くこの理念は、室野愛子アートディレクターが中心となって策 定された。  同院では、造形作家や銅板作家の作品をエントランスホールや待合室に並べ、 絵画や写真が病院各所に飾られた。また、中島裕司画伯の壁画が病院内の交流ゾー Limeという団体による英国・王立マンチェスター眼科病院におけるアート 白衣内障手術の今昔がアートとして掲示され、視覚障害者が触れることのできる蜜蜂のアー トが置かれている

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ンにある。中島画伯は病院を取り巻くステークフォルダーの声に耳を傾け、地域 社会の歴史と文化を調査し、1年半かけて壁画を完成した。  同院では「希望のともしび」プロジェクトという形でストーリー性のあるアー トが導入され、地域住民、患者、医師、看護師、職員の「癒しの場」ができあがっ ている。こうしたデザインや絵画系のアート導入に加えて、院内で流すのにふさ わしい音楽の開発、朗読イベントの開催、音楽とダンスパフォーマンスの発表な どが実践されている。  耳原総合病院のアートセクションには今や4人のキーパーソンが在籍してい る。室野愛子アートディレクターによれば、アートは現場の表現を引き出す手伝 いをすることを目指している。メディカルスタッフは実は皆アーティスト的な面 を持っている。医療機関では、たくさんの感受性が日々詰まっていて、そこで刺 激されるからだと推測される。しかし、「時間がない」「こんなのを発案したら自 分がしないといけなくなるけども自分は絶対できない」「ノッてくれないだろう」 「具体的じゃないから」などと尻込みする。しかし、アート担当セクションは、「時 間がなくてもできる工夫をします」「代わりにしますよ」「やっとそんな話を持っ てきてくれましたね」と前向きに「具体化を手伝いますよ」という形で対応する。 このように、病院の中にアートセクションがあり、アートディレクターがいると、 現場が思っている「こうだったらいいのに」という潜在的なニーズを引き出して 耳原総合病院のエントランス ユーコ・タカダ・ケラーによる作品「希望の芽」

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実現化することができる18)

9.コロナ禍中の医療機関におけるアートの取り組み① 耳原総合病院

 では、2020年来のコロナ禍において、日々大変厳しい状況となった医療機関に おいて、導入されたアートはいかに貢献したのか?  その答えを耳原総合病院の奥村伸二・前院長の講演と室野愛子チーフ・アート ディレクターの講演に見出してみよう19)  講演当時、院長として、コロナ対策の最前線で指揮を執っていた奥村氏は断言 している。  「これまでもアートが病院マネジメントに極めて有用であることは分かっ ていたのですが、今回のCovid-19パンデミックとの戦いから本当にアート の役割を確信しました。」  「本当にギリギリの戦いをしていまして、感染への恐怖、経営破綻への恐怖、 誹謗中傷との戦い、家族関係の危機などいろいろあります。医療機関同士の 申し合わせで患者さんの受け入れについて公表しないと決めていたので、本 当に孤独な戦いだと思っています。また、面会制限もありました。面会を制 限すると、効率が上がるだろうと思っていたのですが、実際は逆でした。家 族の方からの荷物を預かり、配ることも大変でした。やはり家族の方がおら れる方が非常に治療効果が上がリます。患者さんのご家族に会えないという 不安と恐怖も大きかった。医師になって初めて面会制限を経験しましたが、 大変な状況だと思いました。  その中で、アートチームの作品や活動に勇気をもらったという声がたくさ ん来ました。紙でも、言葉でもいっぱい来ました。今回の経験からアートの 「可能性」から「役割」という表現に変えようと思った次第です。」  耳原総合病院のアートセクションが、コロナ禍において行った取り組みは、ま 18)室野愛子「耳原総合病院のアートを体験する」堺市と関西大学の地域連携事業「ホスピタルアート のある街」堺のブランド力向上と堺市民の健康意識向上への貢献、Zoomによる連続講演会、第6回、 2021年2月19日;室野愛子「病院におけるアートディレクターの役割」なごやヘルスケアアート・マ ネジメント推進プロジェクト、第2回 ヘルスケア・アートマネジメント連続講座、2019年7月18日 https://healthcare-art.net/case/murono2019.html 19)奥村伸二「病院運営におけるアートの役割」なごやヘルスケア・アートマネジメント推進プロジェ クト、2020年ヘルスケア・アートマネジメント連続講座第7回、2020年8月19日 https://healthcare-art.net/case/okumura2020.html; 室野愛子、前掲講演(堺市と関西大学の地域連携事業)

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ず第一に「クリアー・スカイ・プロジェクト(Clear Sky Project)」である。これは、 募集した青空の写真を廊下にたくさん貼るというものである。疲れ切った医師、 看護師、職員が立ち止まって綺麗な写真を見てリフレッシュしていた。  堺市の救急隊員がERの前に飾られている写真を見入っているという光景も見 られた。「自分も疲れているけれども、写真を選ぶ時間に癒やされた」「頭が割れ るほどしんどいが、このひとときは楽しい」「自分の写真が飾られているのが嬉 しい」という意見などが寄せられた。空は一番身近にある美しいものである。何 気ない風景の中に奇跡的に美しいものがあり、それを再度見直す機会を設ける 形となった。日常に実は準備されている美しいものに目を向けるひとときが、慌 ただしく働いている中で、ほっとできる時間になるという簡単なプロジェクトで あったが、効果は大きかった。  第二に「みみはらアマビエ」である。コロナ禍において、疫病除けのご利益が あるとアマビエが話題となった。そこで、アマビエの鱗に模した用紙にみんなが 胸のうちを書いて貼っていくことにした。だんだん増えていき、意味不明のもの も見られるが、スタッフのストレスや努力が可視化され、感動を呼んだ。これは 苦しいコロナ禍における胸の内を吐き出すという、言わば吐き出しアートである。

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 第三に「ひかりの子ラジオ」という院内ラジオ放送を始めた。週1回、金曜日 だけの取り組みであるが、異常事態において、癒しにつながっている。  第四に4コマ漫画である。週に一度、給食のときに添えて、患者に喜んでもら うと同時にコロナの情報を伝えている。面会ができないという状況で、不平不満 が出ることが予想されたが、このようなアートセクションの取り組みによって、 大きなトラブルは起きなかったという。

10.コロナ禍中の医療機関におけるアートの取り組み② フランス・アー

ル・ダン・ラ・シテ(Artdanslacité)

 アール・ダン・ラ・シテ(Art dans la cité、都市における芸術)は、フランス で1999年から病院にコンテンポラリーなビジュアルアートを導入している団体で ある。理念は「病院に美しいものをもたらし、入院している患者の心を癒す」こ とにある。フランスだけでなくヨーロッパ各国、アメリカ、日本、カナダの医療 機関にこれまでに100以上の作品を展示してきた。2014年からは、デジタルデバ イスを利用する作品も提案し始めた。例として、小児科の待合室用に創案された アドリアン・ガルシア(Adrien Garcia)というアーティストによる音楽プラネ タリウム(Planétarium musical)がある。音楽プラネタリウムは視覚及び聴覚 的要素を備え、観る者の動きによって星の色や動きが変化する。観る側にいる患 者自身が製作者(アーチスト)になると、認知機能にポジティブな影響がみられ みみはらアマビエ

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ると言う。「インターアクティブな作品を携えて患者の病室を訪ねる」というコ ンセプトで生まれたのがイルミナール(Illuminart)である。これはタブレット にコードレスでボックスを接続した持ち運びできる装置である。作品の画像、光、 色彩、音によって患者のいる病室の雰囲気が変化し、観る者の感覚に作用し心地 よい世界に引き込む。最新作には「森の散歩」がある。本物の森を撮影した作品 とバーチャルな森の作品が収められている。フランスでは既に20件の病院でイル ミナールが取り入れられている。まずは無菌病室(クリーンルーム)に入院する 子供たちが孤独にならないように導入された。更にサポート治療、緩和ケア、フォ ローアップケア、精神ケア、アルツハイマー患者のケアといった様々な科の病棟 で取り入れられている。採用病院では、ストレス減少、自尊心の向上、孤独感の 克服など、更には痛みの軽減という効果についての検証が行われている。最新の プロジェクトとして、サンティアゴ・トレス(Santiago Torres)というアーチ ストが創作した美術館散歩(Promenade au Musée)というイルミナールがある。  2020年から新型コロナウイルス感染拡大の状況下では、病院へ行くことが制限 されている。このような状況の中でどのように医療機関にアートを届けていくか を考え、プログラムを遠隔操作で届けることが検討された。その結果、2020年3 月から夏までの間、美術館の作品を一般の人が見られるように、毎日一作品ずつ、 ソーシャルネットワーク上で無料公開した。この団体の目的はあくまでも医療機 関を対象にアートを役立てることにあるので、一般公開したのは一時的なことで はあった。しかし、コロナ禍で外出自粛生活を送っている一般の人は、入院患者 と同様に自由が利かない状況にある。また一時期ではあるが公開して、一般の人 たちの反応などを見ることによって、イルミナートやビジュアルミュージアムの コンテンツの改良点を知ることが可能となった。  患者の許に容易に行くことができない状況下で、オンラインでできる対策をと して考案されたのがイルミナートのプラットフォームである。医療関係者とも連 絡を取り合って、遠隔、オンラインでどのように団体の活動を続けていけるか検 討が重ねられている。これまで、イルミナートのプログラムを病院に行って紹介 していたが、それを全て遠隔(オンライン)でできる体制を整備している。  このプラットフォームは完成したばかりであるが、アイテムが幾つかある。そ の中の一つに「道具箱(Boîte à outils)」というアイテムがあり、文字通りいろ いろな道具が入っている。この道具箱に入っているコンテンツを遠隔で購入して 医療機関は使用できるが、使う側は人と場所に合ったコンテンツを選ぶことがで きるようになっている。大人と子どもで見るもの使うものは違ってくるし、病院

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の待合室で使えるもの、病室で使えるものなど、場所によっても使うコンテンツ は違ってくる。二つ目は「伴奏(Accompagnement)」と言い、人にどのように 寄り添っていくかの提案である。医療関係者たちは団体のメンバーと面会のアポ を取ることができ、その病院だったらどういうプロジェクトがいいのか、どうい うものが合っているかを一緒に選んで、病院に合ったアートプロジェクトを一緒 に進めていけるというサービスである。三つ目が「アトリエ(Ateliers)」、つま りワークショップである。遠隔になるが、医療チームと一緒に行なうアトリエの プログラムが検討されている。アトリエには、二つのタイプがある。一つは、アー ティストがアトリエで作品を製作しているところを録画したものを見せて、それ が投影されたものを見ながら医療関係者と患者がワークショップで作品制作をす るものである。もう一つはライブで、アーティストが自分のアトリエから画面に 出てきて同時にするものである。そして四つ目が、「イルミナート・コンテンツ (Contenus illuminart)」である。有料だが、イルミナートに登録すればダウンロー ドできるようになっていて、ダウンロードしたものを病院で使用できる。投影す る技術も全て含まれている。タブレットやスクリーン、またはVRヘッドセット なども同時に使用できる。コロナ禍において、このプラットフォームは運用が可 能になったばかりであるが、遠隔で上手く活用されることが期待されている。  現在も、作品を制作してほしいという医療機関からの要請は多く届いている。 実際に病院を訪れて作品づくりができる日が戻ってくることが待たれている。  レイチェル・イーブン(Rachel Even)代表は次のように述べている。  「コロナ禍においても、アートを病院に導入するためにいろいろな方法が 考えられているが、遠隔だけでなく、本来の病院に作品を届けるという活動 は大切なので、そのための研究は継続している。  WHOも認めているが、アートは患者へのインパクト、効果が非常に高い ことがわかっている。患者がアートを創作し、アートの中に没入して、少し でも不安が取り除かれて治療に役立っていくことや、薬を飲む代わりに少 しでもアートを役立てていくことは、効果が見えている。Covid-19との日々 の戦いはあるが、医療機関へのアートの導入を続けていくことは重要であ る。」20)

20)Rachel Even, Art dans la cité -Covid-19 & Futurs Projets,前掲連続講演会第5回(堺市と関西大学 の地域連携事業)2021年1月29日。

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おわりに アートとリスクマネジメントの関係

 アートとリスク感性、アートとリスクマネジメントは以下の⑴〜⑸のように関 係がある。これらは学術的、実務的にアプローチ可能である。 ⑴ リスク感性を磨くためのアート  リスクマネジメントは究極的には「決断」である。判断を支えるのは理性であ り、決断を支えるのは感性である。リスクに直面したときは、「時間」と「情報」 が少ないので、リスクにどう対応するか、つまりリスクマネジメントの決断には 感性が重要となる。これがリスク感性である。リスク感性の滋養には、既に述べ たように、①異文化体験、②アート、③過去の偉人がリスクに直面したときにど のような決断をしたかの学習が役立ちうる。したがって、アートを導入すること はリスク感性の滋養に役立つ。医療機関を例に取れば、医療安全を軸にリスクマ ネジメントを推進するときに、アートは間接的に貢献しうる。 ⑵ 組織活性化のためのアート  どのような組織にとっても、組織がよどんでいること、風通しが悪いことが大 きなリスクである。アートを導入することによって組織が明るくなり、ひいては 組織間のコミュニケーションがよくなることは、組織がよどむというリスクに対 するリスクマネジメントになり得る。  医療機関を例に取れば、日々の激務の中で、医療従事者が疲弊し、コミュニケー ションが欠如し、組織がよどむことがリスクである。アートの導入によって、医 療従事者が癒され、気分転換につながって、いきいきしていくことが、組織の活 イルミナール

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性化につながり、間接的に医療機関にとってリスクマネジメントとなる。 ⑶ 顧客との関係性向上のためのアート  企業であれ、病院であれ、重要なリスクとなるのは、顧客・患者の不満足、つ まり信頼されないことである。医療機関の場合、アートを導入することにより、 患者が少しでも通院・入院生活の苦しさの緩和を感じることができれば、そして 患者と病院との関係性がよくなれば、それは一つのリスクマネジメントと言えよ う。 ⑷ リスク対応を支えるアート  リスクは3分類できる21)。予防すべきリスク(preventable risk):失敗、事故、 不祥事。「防ぐ」。外襲的リスク(external risk):自然災害、経済状況の急激的変化。 発生しても損失を最小限に食い止める。「守る」。戦略リスク(strategy risk): 戦略的決断に伴う「利得」と「損失」両方の可能性。投機的リスク。「とる」。  これらに対応して、事前に「防ぐ」ことを支える感性、事後に「守る」ことを 支える感性、そしてよりよくリスクを「とる」決断を支える感性があり得る。  アートは、リスク感性を錬磨し、間接的にリスクマネジメントに貢献しうる。 ⑸ リスク対応の美意識  山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』では、経営におけ る4つの美意識が掲げられている22)  ・従業員や取引先の心を掴み、ワクワクさせるような「ビジョンの美意識」  ・道徳や倫理に基づき。自分たちの行動を律するような「行動規範の美意識」  ・自社の強みや弱みに整合する、合理的で効果的な「経営戦略の美意識」  ・顧客を魅了するコミュニケーションやプロダクト等の「表現の美意識」  本稿の主題から、リスクマネジメントに関する美意識を付け加えるとすれば以 下のようになろう。  リスクを特定し、最悪の事態を想定し、予防と保護の対応策を決定する「リス ク対応の美意識」。

21)Robert S. Kaplan and Anette Mikes, “Managing Risks: A New Framework”Harvard Business Review, June 2012 issue.

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参考文献

亀井克之「医療機関におけるアートの導入とコロナ禍における対応−アートとリ スク感性−」『産業能率』vol.697、2021年3−4月 陽春号、大阪能率協会、 12−15頁 三木順子『形象という経験 絵画・意味・解釈』勁草書房、2002年 (本稿は、『産業能率』編集部の許可を得て、同誌に掲載した上記論文の内容を用 いて、2020年9月19日に開催されたオンライン総合部会における報告に加筆修正 したものである。) (本稿は、2018年度〜2020年度 堺市と関西大学との地域連携事業「「ホスピタル アートのある街」堺のブランド力向上と堺市民の健康意識向上への貢献」による 研究成果の一部である。) (筆者は関西大学社会安全学部教授、認定危機管理士)

参照

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