高炉スラグ微粉末を用いたセメント硬化体中の六価クロムの挙動に関する一考察
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(2) の一つとして挙げられる。. 表-1. 試料に含有する Cr を形態別に定量可能とする手法と して,X 線吸収微細構造(以下 XAFS)測定がある。こ れは,対象試料が固相,液相のどちらでも測定ができ, 含有量が数十 ppm の希薄試料に関しても測定が可能な 手法である。そこで本研究では,酸による溶解などの前 処理を必要とせず,固相状態で測定が可能な XAFS 測定. ※ 種類 W/P (%). s/a (%). 配(調)合及びフレッシュ性状 単位量(kg/m3) W. N. N 340 B5 323 B10 50.0 46.5 170 306 B25 255 B45 187 ※PはN及びGGBSを表す. GGBS. S. G. 0 17 34 85 153. 813 812 811 810 807. 986 985 984 982 979. フレッシュ性状 SL Air 温度 (cm) (%) (℃) 11.0 4.1 20.0 13.0 4.8 19.8 13.0 4.6 19.2 13.5 4.4 21.1 12.0 4.7 20.1. を用いて,以下の検討を実施した。 1)シリーズ 1 として,XAFS 測定試料の GGBS 置換. ークラッシャーによって粗砕することで溶出試験用のコ. 率を決定するために,結合材条件を変化させた場. ンクリート試料を作成した。粒度は JIS A 5001「道路用. 合におけるコンクリート試料の Cr(VI)溶出試験を. 砕石」に定められている C-20 の粒度範囲になるように. 実施した。. 調整した。コンクリート試料は,20℃,R.H60%環境下で. 2)シリーズ 2 として,セメント硬化体中における水. 4 週間風化させ,JIS K 0058-1「スラグ類の化学物質試験. 和物が安定的に Cr(VI)を固定できるのかを確認す. 方法-第 1 部:溶出試験方法」に準じて溶出試験を実施. るために,各水和物を合成し,Cr(VI)の固定形態を. し,検液を得た。前述したが,コンクリート殻が炭酸化. 評価した。. することで水溶性 Cr(VI)溶出量が増加する傾向にあるこ. 3)シリーズ 3 として,シリーズ 1 で選定した GGBS. とが報告. 4)されているため,大気環境及び促進中性化環. 置換率を用いて,セメントの水和や GGBS などの. 境(CO2 濃度=5%)にて試料を風化させたが,どちらの. 還元物質の存在が Cr(VI)の形態変化に与える影響. 環境においても溶出量は同程度であったため,本検討の. を定量的に評価した。. 結果は大気環境にて風化させた結果のみを示す。. 以上の検討により,セメント硬化体中における Cr(VI). 得られた検液は JIS K 0102「工場排水試験方法」の. の挙動を把握することで,GGBS の Cr(VI)溶出問題対策. Cr(VI)の測定方法を参考にし,ジフェニルカルバジドを. としての有効性を評価することとした。. 用いた吸光光度法で測定した。結果の詳細は後述するが, GGBS 置換率を変えた場合におけるコンクリート試料か. 2. 試験概要. らの水溶性 Cr(VI)の溶出量は GGBS 置換率 10%の条件に おいて,安定的に土壌環境基準値である 0.05mg/L を満足. 2.1 シリーズ 1. 可能と判断したため,シリーズ 3 の検討に関しては. 2.1.1 使用材料及び試験水準. GGBS 置換率 10%を基準として試験を実施した。. 結合材は研究用普通ポルトランドセメント(以下 N) (密度 3.16g/cm3,SO3=2.0%,比表面積 3300cm2/g)及び GGBS(密度. 2.89g/cm3,SO3=2.0%,比表面積. 2.2 シリーズ 2 2.2.1 使用材料及び試験水準. 4000cm2/g). セメント硬化体中において,Cr(VI)を固定もしくは吸. を用い,N の内割りで GGBS を 0,5,10,25,45%質量. 着する水和物としては,モノサルフェート,エトリンガ. 置換(それぞれ N,B5,B10,B25,B45)する事で各種. イト,カルシウムシリケート水和物が挙げられる. 高炉セメントを試製し試験に供した。なお,市販の普通. 検討では,これらの水和物が Cr(VI)をどのような状態で. ポルトランドセメントは少量混合成分として,石灰石微. 固定もしくは吸着しているのかを確認するために,各水. 粉末や GGBS を含む場合があるため,本検討では少量混. 和物を合成し試験に供した。合成方法を以下に示す。. 合成分を含まない研究用普通ポルトランドセメントを. 8)。本. (1)モノサルフェート 9). 使用した。骨材として,細骨材は海砂 S(表乾密度. 水酸化カルシウム,水酸化アルミニウム及び硫酸アル. 2.57g/cm3 ,FM2.68),粗骨材は硬質砂岩 G(表乾密度. ミニウムをそれぞれ 12:4:1 のモル比で混合し,窒素雰. 2.72g/cm3,FM6.58)を用いた。混和剤として,AE 減水. 囲気下の脱炭酸水中において 60℃で 72 時間撹拌した。. 剤(リグニンスルホン酸系)及び AE 剤(アルキルエー. 撹拌終了後,懸濁液を吸引ろ過し,脱炭酸水,メタノー. テル系界面活性剤)を用い,目標スランプを 12±2.5cm,. ル,アセトンで洗浄することでモノサルフェート(以下. 空気量を 4.5±1.5%に調整した。コンクリートの配(調). AFm)を合成した。. 合及びフレッシュ性状を表-1 に示す。 2.1.2 試験方法. (2)エトリンガイト 10) 水酸化カルシウムを蒸留水に溶解させ濃度 0.02mol/L. 試験体はφ10×20cm の円柱供試体を用い,コンクリー. に調整した溶液と硫酸アルミニウムを蒸留水に溶解させ. トを打込み後,材齢 28 日まで 20℃環境下において封か. 濃度 0.7mol/L に調整した溶液を CaO/Al2O3 モル比が 6 に. ん養生を施した。脱型後,雨掛かりのある屋外環境に曝. なるように混合し,20℃で 30 時間撹拌した。撹拌終了. 露し,材齢 28 日,1 年,2 年,4 年,7 年に試験体をジョ. 後,懸濁液を吸引ろ過し,水及びアセトンで洗浄するこ. 26.
(3) 表-2. 種類 研究用普通ポルトランドセメント. 使用材料(シリーズ 3). 記号及び化学式 密度(g/cm3) 比表面積(cm2/g) 備考 N 3.16 3430 SO 3=2.0%,少量混合成分を含まない. 高炉スラグ微粉末. GGBS. 2.89. 4120. S=0.77%. 再溶融スラグ微粉末. HGGBS. 2.89. 3960. GGBSを再溶融し作製. 硫酸第一鉄1水和物. FeSO4・H 2O. 3.14. -. 硫酸第一鉄7水和物. FeSO4・7H 2O. 1.90. -. とでエトリンガイト(以下 AFt)を合成した。 (3)カルシウムシリケート水和物. 11). カルシウムシリケート水和物(以下 C-S-H)はサスペ. 粉砕後,300μm以下に調整. 各水和物に固定もしくは吸着されている Cr(VI)の Cr-O 配位数及び原子間距離を求めた。これを,標準試料であ る K2CrO4 の Cr-O 配位数及び原子間距離と比較すること. ンジョン法により合成した。酸化カルシウム及び二酸化. で各水和物における Cr(VI)の存在状態を評価した。なお,. ケイ素を Ca/Si 比 1.5 となるように大気雰囲気下で計量. データの解析は 2 回測定した結果の平均値を用いて実施. し,窒素雰囲気下としたグローブボックス内で脱炭酸水. した。. を用いて固液比 50 となるように浸漬させ撹拌した。 20℃. 解析手順としては,式(2)に示す FEFF による EXAFS. で 28 日間養生(ハンドシェイクによる混合撹拌を 1 回/. 振動(Χ(k))の理論計算から F 及びφを求め,N を固定. 日実施)し,0.45μm メンブレンフィルターを使用し吸. 値にして標準試料に対してフィッティングを行い,S02,. 引ろ過をすることで固液分離をした。ろ過物はポリ袋内. R,σ2,E0 を算出した。次に,上記の S02 を固定値にし. に薄く広げて密封し,試験実施時まで冷凍庫にて保管し. て各水和物に対してフィッティングを行い,N,R,σ2,. た。. E0 を算出した。. 上記の AFm,AFt 及び C-S-H をクロム酸カリウム(以 下 K2CrO4)の濃度として 500ppm に調整した溶液に固液 比 30 として浸漬させ,6 時間撹拌させた。ここで,AFm 相とクロム化合物の混合モル比が 0.5 を超える場合, AFm から放出された硫酸イオンによって,Cr(VI)を固定. 𝜒𝜒(𝑘𝑘) = 𝑆𝑆�� � �. した AFt が生成すると報告 2)されているが,本検討の混 合モル比は 0.01 程度であるため,各水和物は単独で. 𝑁𝑁� 𝐹𝐹� (𝑘𝑘� ) �����𝑠𝑘𝑘�� 𝜎𝜎�� � 𝑘𝑘� 𝑟𝑟��. × 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠� 𝑟𝑟� + 𝜙𝜙� (𝑘𝑘� )). (2). ここで,理論計算で求まるパラメーターとして,. Cr(VI)を固定もしくは吸着している状態である。撹拌後,. Fi(k) :後方散乱因子. AFm は脱炭酸水,メタノール及びアセトン,AFt は脱炭. φi(k) :位相因子. 酸水及びアセトンで洗浄することで得た試料を用いて. k. :波数. XAFS 測定を実施した。C-S-H は脱炭酸水で洗浄後,真 空乾燥により遊離水を除去した試料を用いて XAFS 測定. ここで,フィッティングで求まるパラメーターとして,. を実施した。なお,測定に用いた試料は XRD にて同定. S02. :多体効果. し,浸漬前後において水和物の変化がないことを確認し. Ni. :配位数(標準試料は既存値). た。. ri. :原子間距離(R). 2.2.2 測定方法及び解析方法. σi. :デバイワラー因子. XAFS 測定は大型放射光施設(九州シンクロトロン光. E0. :吸収端(k の原点). 研究センター)の BL11 を使用した。測定は Cr-K 吸収端 近傍から高エネルギー側に 800eV 程度の領域(以下. なお,フーリエ変換のパラメーターとしては,kmax=12,. EXAFS)に対して実施した。なお,測定対象試料の Cr 含. kmin=4.8,rmax=2.3,rmin=1.3 とし,窓関数としては. 有量は濃厚であり,透過法による測定が可能であったが. dk=0.5,Dr=0.2 とした。. 蛍光法を選択した。検出器は 19 素子 SSD を用い,1 試. 2.3 シリーズ 3. 料当たり 4 時間の測定を要した。標準試料としては. 2.3.1 使用材料及び試験水準. K2CrO4 を使用し,窒化ホウ素と混ぜ合わせてペレットを 作製し,透過法で測定した。 解析は Artemis12)及び FEFF13)によって求めた K2CrO4 の. 試験に使用した材料は N,GGBS,硫化物イオンの影響 を除外するために GGBS を再溶融し,硫化物イオンを揮 発させた再溶融スラグ微粉末(以下 HGGBS),還元剤と. Scattering Path(散乱経路に対応した EXAFS スペクトル). して硫酸第一鉄 1 水和物(以下 FeSO4・H2O)及び硫酸第. と Athena12) によって得られた各試料の EXAFS スペクト. 一鉄 7 水和物(以下 FeSO4・7H2O)の 5 種類を用いた(表. ルを第一配位圏に対してフィッティングさせることで,. -2)。なお,N 及び GGBS はシリーズ 1 で使用したもの. 27.
(4) SO42S2O32-. 水溶性Cr(VI)溶出量(mg/L). 硫黄の形態別量(%). 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0. S2-. GGBS 図-1. HGGBS. GGBS 及び HGGBS 中の硫黄の形態. 0.12 0.11 0.10 0.09 0.08 0.07 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0.00 図-2. 28d. N. B5. 1y. B10. 2y. B25. 4y. 7y. B45. GGBS 置換率ごとの水溶性 Cr(VI)溶出量. と異なるロットを用いた。HGGBS は GGBS を室温から. め,蛍光法を選択した。検出器は 19 素子 SSD を用い,. 1600℃まで 12 時間で昇温し,1600℃で 6.5 時間保持した. 1 試料当たり 2~3 時間の測定を要した。なお,試料中に. 後,急冷却することでガラス化させた。HGGBS 中の硫化. 数%程度含有している Fe などの金属元素の存在により,. 物イオン量に関しては,既往の報告. 14)を参考に測定し,. 測定精度の低下が懸念されたため,バナジウムフィルタ. 図-1 に示す様に元原料の GGBS に対してほぼ揮発して. ーを用いた。標準試料としては K2CrO4,水酸化クロム 1.3. いることを確認した。FeSO4 を 2 種類用いた理由として. 水和物(以下 Cr(OH)3),酸化クロム(以下 Cr2O3)を使. は,溶解速度の影響を調査するためであり,溶解速度は. 用し,それぞれ窒化ホウ素と混ぜ合わせてペレットを作. FeSO4・H2O の方が FeSO4・7H2O と比較して遅い. 製し,透過法で測定した。. 15)。. 結合材の還元効果を評価するための水準としては,N. データの解析は Athena を用い,XANES スペクトル形. 及び N の内割で GGBS を 10%質量置換した B10,同様に. 状を数値化し,測定試料と標準試料の結果を最小二乗近. HGGBS を 10%置換した HB10 の 3 水準とした。還元剤. 似することにより,試料中の全 Cr 量に対する Cr(VI)及. 種類の影響を調査するための試験水準としては,B10,N. び Cr(III)の割合を算出した。なお,データの解析は 2 回. の内割で FeSO4・H2O 及び FeSO4・7H2O をそれぞれ 1%. 測定した結果の平均値を用いて実施した。. 質量置換した F1,F7 の 3 水準とした。なお,FeSO4 を過 剰添加した場合,凝結が遅延する事や硬化体物性に悪影 響を及ぼす. 16)ため,本検討では. 3. 結果及び考察. 1%質量置換とした。ま. た,全ての結合材は SO3=2.0%となるように二水石こうを. 3.1 シリーズ 1. 用いて調整した。. 図-2 にコンクリート試料からの水溶性 Cr(VI)の溶出. 試験体は 1×1×6cm の角柱供試体を用い, W/B=50%. 試験結果を示す。N に関しては,材齢 28 日から 4 年にお. のセメントペーストをブリーディングが収まるまで,30. いて 0.1mg/L 程度と同等であり,材齢 7 年においては. 分おきにさじを用いて練り混ぜた後に打込み,材齢 1~. 0.07mg/L 程度と減少した。GGBS を用いた水準に関して. 28 日の脱型時まで封かん養生(20℃一定)を施した。加. は,全ての水準及び材齢において,土壌環境基準値であ. えて,一部の水準において長期的な還元効果を調査する. る 0.05mg/L 以下となった。水溶性 Cr(VI)の溶出量として. ために,材齢 28 日まで封かん養生を行った後,標準養生. は,B5 は 0.04mg/L,B10 は 0.02mg/L,B25 は 0.01mg/L,. を材齢 3 年まで施した場合も実施した。試験材齢に達し. B45 は 0.005mg/L 程度となり,GGBS 置換率の増加に伴. た試験体は粗砕し,1.2~2.5mm の粒径範囲となるように. い減少する傾向が確認された。. 調整した。その後,窒素雰囲気下とした 20℃,R.H11%の. 本検討における全ての水準において,材齢の進行に伴. デシケータ―内で恒量になるまで静置し,水和停止を行. い減少するのではなく,不規則に増減する傾向であった。. い,振動ミルで微粉砕したものを用いて XAFS 測定を実. これは,用いたコンクリート試験体の被粉砕性や試験体. 施した。また,比較用として未水和のセメントに関して. 中のセメント及び骨材の比率の差などによって生じたも. も測定を実施した。. のと推察される。また,この差は GGBS 置換率の増加に. 2.3.2 測定方法及び解析方法. 伴い小さくなる傾向が確認された。. XAFS 測定はシリーズ 2 と同一の試験装置を用いて実. コンクリート試験体の粗砕材齢ごとの溶出量の差を考. 施した。測定は Cr-K 吸収端近傍の 5800~6300eV 程度の. 慮すると,本検討内において GGBS 置換率 10%以上の条. エネルギー領域(以下 XANES)に対して実施したが,測. 件であれば,安定的に Cr(VI)の土壌環境基準値である. 定対象である Cr 含有量が数十 ppm 程度と希薄であるた. 0.05mg/L を満足できると判断した。以上の結果より,シ. 28.
(5) (a)K2CrO4. (b)AFm. (c)AFt. (d)C-S-H 図-3. EXAFS スペクトル及び動径構造関数. リーズ 3 の検討において,GGBS 置換率 10%を基準とし. 表-3. て試験を実施した。. 種類. 3.2 シリーズ 2 図-3 及び表-3 に XAFS 測定によって得られた各水 和物に固定もしくは吸着されている Cr(VI)の EXAFS ス. Cr-O の配位数及び原子間距離. atom-O. core. N. R. 4(FIX). 1.682. 4.00. 1.682. 3.95. 1.629. AFt. 4.07. 1.657. C-S-H. 1.67. 1.625. K2CrO4-base K2CrO4. ペクトル,動径構造関数及び Cr-O の配位数及び原子間. Cr. AFm. 距離の解析結果を示す。 図-3 より標準試料である K2CrO4,AFm 及び AFt に 関しては概ねフィッティングできているが,C-S-H に関 しては,フィッティング精度が低い結果となった。C-S-. 10000. 発生したため測定精度が低下 17)したと推察される。 O の配位数及び原子間距離は N=4 程度,R=1.6 程度と基 準である K2CrO4-base と概ね同等であった。つまり,こ れらの物質に含まれている Cr(VI)は CrO42-として存在す ることが確認された。C-S-H の場合,原子間距離は他と 同様に R=1.6 程度であったが,測定精度が低かったため. 8000. Cr(VI)濃度(mg/L). 表-3 より,標準試料である K2CrO4,AFm,AFt の Cr-. 濃度比率(橋本ら 8)). 100 80 60. 4000. 40. 2000. 20. 0. きなかった。前述したように,ゲルによる散乱が発生し 態を明確にするためにはエネルギーステップごとの測定. 濃度比率(結果). 6000. か,配位数が 1.6 となり,存在状態を確認することがで たことに起因する結果であると推察されるため,存在状. Cr(VI)濃度(結果). 図-4. AFm. AFt. C-S-H. Cr(VI)濃度比率(AFm base)(%). H は非晶質試料であることから,ゲル成分による散乱が. 0. 各水和物中の Cr(VI)の濃度及び AFm を基準とした場合 の Cr(VI)の濃度比率. 時間を延ばすことや,測定回数を増やすことなどの対応 によって,ノイズを小さくする必要があることが確認さ. Cr(VI)の濃度を測定した結果を図-4 に示す。加えて,. れた。. AFm の Cr(VI)の濃度を基準として各水和物の Cr(VI)の濃. 本検討で使用した試料を(1+9)硫酸で溶解させ,ジフ ェニルカルバジドを用いた吸光光度法(JIS K 0102)で. 度比率を算出した結果を示す。また,本検討における K2CrO4 溶液の Cr(VI)の濃度は 100ppm 程度であるため,. 29.
(6) 28 days. 7 days. 7 days. 1 day. 3 days. 未水和. 1 day 未水和. K2CrO4. K2CrO4. Cr(OH)3. Cr(OH)3 Cr2O3. 5950. 6000 Energy(eV). (b)B10. 6050. (c)HB10. 結合材種類ごとの XANES スペクトル. して少なくなる結果となった。 セメントが含有している Cr(VI)量は微量であることに 加え,セメント硬化体中において,主として AFm に CrO42-の形で安定して水和物に取り込まれるため,通常. Cr(III) Cr(VI). N. の硬化体であれば溶出問題は考慮しなくてもよい。しか し,炭酸化によって水和物が分解することで,細孔内の. 図-6. B10. 7days. 比較的多く固定し,次いで AFt,C-S-H の順に固定量と. 28days. 濃度比率は橋本らの傾向と同様であり,AFm が Cr(VI)を. 1day. 率を算出した結果を合わせて示す。各水和物の Cr(VI)の. 未水和. の Cr(VI)の固定割合の結果を参考にし,Cr(VI)の濃度比. 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0. 3years. 橋本ら 8)の Cr(VI)の濃度 100ppm 溶液における各水和物. 28days. 図-5. Cr(VI)の濃度が高くなる. 5950. 6050. 未水和. (a)N. 6000 Energy(eV). 1day. 6050. 3years. 6000 Energy(eV). Cr2O3. 未水和. Cr2O3. 7days. Cr(OH)3. 28days. K2CrO4. 3days. 未水和. 全Crに対するCrの形態割合(%). Intensity(-). 28 days. 5950. 28 days. 3 years. 3 years. HB10. 結合材種類ごとの試料中の Cr の形態割合. 7)場合もあることから,セメン. ト硬化体として Cr(VI)を安定的に無害化させるためには,. B10 の場合,N の傾向とは異なり,経時的に Cr(VI)の. 還元反応によって Cr(III)に変化させることが有効である. 割合が減少する傾向であった。未水和における Cr(VI)の. と考えられた。. 割合は 80%程度であったが,材齢 1 日で 75%,材齢 3 日. 3.3 シリーズ 3. で 65%,材齢 7 日で 55%程度と還元反応が進行し,材齢. (1)結合材種類の影響. 28 日では 20%程度と大きく減少した。また,材齢 3 年時. 図-5 に結合材種類を変化させた場合における. において,Cr(VI)の割合はさらに減少しており,継続的に. XANES スペクトルの測定結果を示す。ほぼ全ての測定. 還元反応が進行していることが確認された。よって,. 試料において 5992eV 付近に Cr(VI)の pre-edge ピークが. GGBS には還元能力があり,水和の進行に伴い,N 中の. 確認されたことから,セメント中に Cr(VI)が存在 18)して. Cr(VI)を Cr(III)に還元可能であることが確認された。. いることが確認された。また,6000eV 以降のスペクトル 形状から,Cr(III)の存在も確認された。. GGBS の還元効果の要因としては,微量に含有する S や Fe,Mn などの還元物質の影響と推察される。その中. XANES スペクトルから算出した全 Cr に対する Cr の. でも,還元の主要因としては,Fe や Mn と比較して含有. 形態割合を図-6 に示す。なお,測定結果の妥当性を評. 量の多い S の影響であると予測されるため,前述したよ. 価するために,未水和の N に含有する全 Cr 中の Cr(VI). うに,GGBS を再溶融させ,硫化物イオンを揮発させた. 割合を XAFS 及び ICP 分析(JIS K 0102)によって算出. HGGBS を用いることで,その影響を調査した。材齢 1 日. した結果,それぞれ Cr(VI)の割合は 78%,83%であった。. において,HB10 の Cr(VI)の割合は 70%程度と未水和の. N の場合,未水和から材齢 28 日において,Cr(VI)の割. 場合と比較して 10%程度減少したが,その後の材齢にお. 合は 80%程度であり,材齢 3 年時では 75%程度であった。. いて B10 の様な減少傾向は確認されなかった。HGGBS. N は還元物質を含有しておらず,還元能力を有していな. は GGBS から硫化物イオンを除去しているため,HB10. いため,長期材齢においても Cr(VI)の割合に変化が確認. の材齢初期における還元反応は硫化物イオン以外の還元. されなかった。つまり,N の水和反応が Cr の形態変化に. 物質として Fe や Mn などの影響であると考えられるが,. 影響を与えないことが確認された。. GGBS の還元効果を十分に発揮させるためには硫化物イ. 30.
(7) 28 days. 28 days. 7 days. 7 days. 7 days. 1 day. 1 day. 1 day. 未水和. 未水和. 未水和. K2CrO4. K2CrO4. K2CrO4. Cr(OH)3. Cr(OH)3. Cr(OH)3. Cr2O3. Cr2O3. Cr2O3. 5950. 6000 Energy(eV). (a)B10. 6050. 5950. 6000 Energy(eV). (b)F1 還元剤種類ごとの XANES スペクトル. XANES スペクトルから算出した全 Cr に対する Cr の. B10. 形態割合を図-8 に示す。還元物質を用いた全ての試料 において Cr(VI)の割合は減少することが確認された。F1. 図-8. F1. 28days. の存在も確認された。. 7days. れた。また,6000eV 以降のスペクトル形状から,Cr(III). Cr(III) Cr(VI). 1day. から,セメント中に Cr(VI)が存在していることが確認さ. 未水和. 付近に Cr(VI)の pre-edge ピークが明確に確認されたこと. 28days. XANES スペクトルを示す。全ての試料において 5992eV. 7days. 図-7 に還元剤種類を変化させた場合における. 1day. (2)還元剤種類の影響. 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0. 未水和. オンの存在が重要であることが確認された。. 28days. 図-7. 6050. (c)F7. 7days. 6050. 1day. 6000 Energy(eV). 未水和. 5950. 全Crに対するCrの形態割合(%). Intensity(-). 28 days. F7. 還元剤種類ごとの試料中の Cr の形態割合. 及び F7 の場合,材齢 1 日から 7 日の短期において,B10 と比較して Cr(VI)の割合がより減少すると確認されたが,. 以上より,N に対して GGBS を 10%置換した場合と,. 材齢 7 日から 28 日の減少は確認されず,概ね同程度で. 硬化体物性を考慮して FeSO4 を 1%置換した場合を比較. あった。B10 の場合,材齢 7 日までは F1 及び F7 と比較. すると,置換率の差はあるが,セメント硬化体中におけ. して Cr(VI)の割合が多かったが,材齢 28 日においては. る Cr(VI)の還元効果は FeSO4 と比較して GGBS の方が優. 少なくなる傾向であった。また,FeSO4 の種類による差. 位である。. が明確に生じなかったことから,セメント硬化体内にお ける還元能力としては溶解速度に関わらず同程度である. 4. まとめ. と確認された。 N に含有する Cr(VI)はクリンカー鉱物に広く分布 19)し. Cr(VI)の溶出試験及び XAFS 測定により,セメント硬. ていることから,水和反応の進行に伴い Cr(VI)は硬化体. 化体中の Cr(VI)の挙動を調査した結果,以下の知見が得. 内へ溶出し,AFm などに固定されると考えられる。その. られた。. ため,N の水和反応が進行している間,硬化体中を還元. 1)本検討内において,GGBS 置換率を結合材の内割. 雰囲気に維持することで,Cr(VI)を効率的に還元するこ. りで 10%以上とすることで,安定的にコンクリー. とができると考えられる。FeSO4 は GGBS と比較して,. ト試料の水溶性 Cr(VI)溶出量を土壌環境基準値で. 還元能力が高く,N の水和反応が収束する以前に Cr(VI). ある 0.05mg/L 以下にすることが確認された。. だけでなく酸素などの溶存物質とも酸化還元反応が起こ. 2)セメント硬化体中において,Cr(VI)を比較的多く. るため,長期における還元効果はほぼ無いと推察される。. 固定する水和物としては AFm であり,次いで AFt,. 一方,GGBS は還元の主要因である硫化物イオンが高炉. C-S-H の順に固定量は減少した。. スラグのガラス相内に安定して存在. 20)し,GGBS. の水和. に伴い硫化物イオンを供給するため,硬化体中の Cr(VI) を継続的に Cr(III)に還元できると考えられる。. 3)C-S-H 以外の水和物において,Cr(VI)は CrO42-の形 態で固定されていることが確認された。 4)GGBS の還元能力の主要因は硫化物イオンであり,. 31.
(8) 材齢の進行に伴いセメント硬化体中の Cr(VI)を. of cemented wastes: chromium,Cement and Concrete Research,Vol.27,. Cr(III)に還元させることが可能であり,その効果. No.2,pp.215 -225,1997. は材齢 3 年時まで継続する事が確認された。. 8). 5)還元剤としての FeSO4 は高い還元能力によって,. 橋本敦美ほか:合成したセメント水和生成物による微量元素(六 価クロム,ヒ素,セレン,ホウ素,フッ素およびアルミニウム)の. 材齢初期において GGBS と比較して Cr(VI)の割合. 固定化について,セメント・コンクリート論文集,Vol.66,pp.71-. が減少する傾向であったが,材齢 28 日において. 78,2012. は GGBS 使用時の方が Cr(VI)の割合が少なくなる. 9). セメント水和物の Cr(VI)の固定及び吸着挙動,長期的. 鈴木英介ほか:モノサルフェートの熱分解と炭酸化,Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan,Vol.8,pp.17-25,2001. ことが確認された。 10). 鈴木一孝ほか:コンクリートの耐久性評価を目的とした水和組織. な観点においても N の水和が Cr の形態変化に影響を与. の分析手法に関する研究,コンクリート工学論文集,Vol.1,No.2,. えないこと,コンクリートに用いられる一般的な還元剤. pp.39-49,1990. と比較して GGBS が長期的に還元能力を有するといった. 11). セメント協会:コンクリート中のケイ酸カルシウム水和物(C-S-H). 結果を勘案すると,セメント硬化体中の Cr(VI)の溶出対. とは何か~キャラクタリゼーションと性能発現機構~,pp.234-279,. 策として,GGBS を用いることは有効である。. 2018.3. 謝辞:. 12). Bruce Ravel:Demeter,http://bruceravel.github.io/demeter/,2020.4. 13). University of Washington:FEFF,http://monalisa.phys.washington.edu/,. 本研究は,九州シンクロトロン光研究センターの BL11 を用いて実施したもので,関係各位に感謝いたします。. 2020.4 14). 小野昭紘ほか:高炉スラグ中硫黄化合物の形態別分析方法,鉄と 鋼,72-9,pp.1287-1292,1986. 参 考 文 献 1). 細谷俊夫:セメント系固化材と六価クロム,材料,Vol.51,No.8,. 15). 野村幸治ほか:セメント添加剤,特許公報,第 4358400 号,2009. 16). 岸谷孝一:コンクリート材料:水・骨材中に含まれる不純物(第 1. pp.933-942,2002 2). 3). 回) ,コンクリート・ジャーナル,Vol.4,No.9,pp.38-48,1966. 大宅淳一ほか:六価クロムの AFm 相への固定化と溶出挙動,. 17). P. Eisenberger and G. S. Brown: Solid State Commun,29,481,1979. Cement Science and Concrete Technology ,No.64,pp.35-41,2010. 18). 露本伊佐男ほか:X 線吸収微細構造による標準ポルトランドセメ. セメント協会:セメント・コンクリートと安全,. ント中の微量クロムの分析,Journal of the Ceramic Society of Japan. http://www.jcassoc.or.jp/,2020.4 4). 土木学会:コンクリートからの微量成分溶出に関する現状と課題,. 5). 盛岡実ほか:高炉徐冷スラグの還元効果とその機構,Journal of the. 111[8],pp.608-610,2003 19). コンクリートライブラリー111,pp.62-63,2003. Society of Inorganic Materials, Japan,Vol.12,pp.408-415,2005 6). 櫻井園子ほか:高炉スラグ微粉末の六価クロム溶出抑制効果の検. 白坂徳彦ほか:廃棄物中の特定成分がクリンカー鉱物の微細組織 及び構成鉱物への固溶分配に及ぼす影響,セメント・コンクリー ト論文集,No.49,pp.14-19,1995. 20). 岩本信也ほか:人工高炉スラグ中の硫黄の状態および硫黄の偏析 と初晶の形態の関連,鉄と鋼,69-2,pp.220-227,1983. 討,コンクリート工学年次論文集,Vol.36,No.1,pp.52-57,2014 7). 32. A. Macias et al: Impact of carbon dioxide on the immobilization potential. (原稿受理年月日:2020 年 6 月 29 日).
(9) A Study on the Behavior of Hexavalent Chromium in Hardened Cement using Ground Granulated Blast furnace Slag By Shinya Hiramoto , Koichiro Uemura , Yusuke Otsuka and Yasuhiro Dan Concrete Research and Technology, Vol.32, 2021. Synopsis: The concrete waste generated when dismantling concrete structures is used as a roadbed material. However, the elution amount of hexavalent chromium derived from cement clinker may increase due to the progress of carbonation during storage. Therefore, in this study, we evaluated the effectiveness of the use of ground granulated blast furnace slag as one of the measures to suppress the elution of hexavalent chromium by elution tests and X-ray absorption fine structure measurements. As a result, we confirmed the reduction of hexavalent chromium eluted from the hardened cement by the reducing substance contained in the ground granulated blast furnace slag as the hydration reaction proceeded. Furthermore, the reducing effect of ground granulated blast furnace slag was maintained for a long period of time compared with other reducing substances. From the above results, we confirmed that ground granulated blast furnace slag is effective as a measure against the elution of hexavalent chromium. Keywords: Ground granulated blast furnace slag, Hexavalent chromium, Reduction, Elution control, X-ray absorption fine structure, Soil environmental standard. 33.
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