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トランスレーショナルリサーチ共通倫理審査指針について

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臨 床 評 価 31巻 2号 2004 − 496 −

トランスレーショナルリサーチ共通倫理審査指針について

福島 雅典 京都大学医学部附属病院 探索医療センター  2003 年 7 月 30 日,厚生労働省より「臨床研究に 関する倫理指針」が通知され,それまで事実上,野 放し状態だった医師研究者による人を対象とした 臨床研究に一定のルールが確立した.世界医師会 によるヘルシンキ宣言─人を対象とする医学研究 における倫理的原則─の初版が 1964 年に採択さ れてから実に40年の歳月を経てようやく,我が国 における臨床研究もグローバルスタンダードに近 づいた.そもそも,このような人権と臨床科学の 思想の遅れが我が国の大学病院における診療軽視 そして臨床研究の遅れと低迷を招いたものであ る.  近年の分子生物学・発生工学の急速な進展を背 景にトランスレーショナルリサーチ(TR)という 新しい研究領域の重要性が高まり,我が国におい ても多くの研究者がそのことを強く意識するよう になった.しかしながら,このような早期臨床試 験は今日に始まったものでもなく,我が国では 200 年前,世界的にも先駆的な開発研究,すなわ ち前臨床研究を重ねてから慎重に臨床適用をすす めた例がある.華岡青洲による全身麻酔薬,通仙 散の開発と実用化である.ほぼ20年の歳月をかけ ての開発であった.彼のもとには全国から患者, そして医学生が集まっていた.我が国初の医学校 といえる,春林軒塾は事実上,当時の先導的医学 の拠点であり,門下生千数百余名が江戸末から明 治初期の外科学を支えたのであった.  今日,抗体医薬や分子標的薬の発展には目をみ はるものがあるが,振り返れば 20 年前,ミサイル 療法,TNF が週刊誌・新聞を毎週のごとくにぎわ せたものであった.結局,我が国は何一つものに はできなかったのである.華岡青洲の故事,20 年 前の熱狂と興ざめを忘れてはならない.我々は今 日の科学が花開くであろう20年後をくっきりと描 き出して,周到に基盤を整備し,一歩一歩,着実 に臨床試験・臨床研究をつみ重ねて,はじめて標 準治療を革新できることを銘記すべきである.  本倫理審査指針は去る 2003 年 8 月 1 日の京都大 学における第 2 回トランスレーションナルリサー チ懇話会(記録はhttp://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/ ~trc/index.htm 参照)での研究倫理についての真 剣な,かつ激しい議論を踏まえてまとめ上げたも のである.本倫理審査指針は,厚生労働省による 「臨床研究に関する倫理指針」を補い,実体化し, さらにより高いステップにすすめるために不可欠 の基盤整備の指針であり,よって,TR のみならず あらゆる臨床研究,臨床試験に適用される.  研究者はこの審査指針をガイドに概要書,プロ トコル,被験者への説明同意文書を作成すればお のずから一定水準の研究計画を作り上げることが でき,また本指針によって,施設の倫理委員会の 委員も何を,どう審理すべきか,不可欠の論点を 系統的に考察し,議論することが可能となるはず である.次のステップとして各施設においては, 本審査指針にそって倫理審査が行われるように各 書類作成の標準業務手順書(SOP)を施設の現状 にあった形で作成しなければならない.  本指針が我が国における臨床研究,臨床試験の 水準を短期間内のうちに世界最高水準にまで引き 上げるであることを確信している.言うまでもな く本指針は各施設の整備状況,国の法律,規制等 ならびに国際的な合意形成等によって被験者の安 全と利益をより確かにすべく必要に応じてレベル の高いものに改訂される.

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