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セグメントによる GLn(F ) の既約表現の構成

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(1)

セグメントによる

GL

n

(F )

の既約表現の構成

近藤 智 東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構

2014

2

21

1

はじめに

1.1

整数論サマースクールでは,supercuspidal表現を法とした非アルキメデス局所体上の一般線型群 の既約許容表現のマルチセグメントを用いた分類について話をした.マルチセグメントの定義および 分類定理の紹介をして,いくつかのセグメントにまつわる話題に触れた.本稿もそのような構成に なっている.第2節ではマルチセグメント(multisegment; multiset on the set of segments)の定義 をする.第3節では分類定理の紹介をし,第4節ではいくつかの関連する話題に触れる.

1.2

マ ル チ セ グ メ ン ト 自 体 は と っ て も 簡 単 な も の で ,下 の よ う な 絵 を 思 い 浮 か べ れ ば い い . ∆1σ1 σ1(1) ∆2σ2 σ2(1) ∆3σ3 σ3(1) σ3(5) ∆4σ4 σ4(1) σ4(2) ∆5σ5 σ5(1) 各σはsupercuspidal表現で,(n)は指標| det |nによるひねりを表す.こういう線分の集まりが 表現に対応していて,supercuspidalを法としたとはいえ,分類がなされているというのには私はびっ くりした.もし,これでも複雑すぎる,という考えをもつ人には阿部さんが講演で詳しく証明を行っ た次の命題をみてほしい(記号は本文参照): 定理1 ([1], Thm. 4.2, Rem. 4.2(2)) σ1, . . . , σrをsupercuspidal表現とする.このとき,σ1× · · · × σrが可約となるための必要十分条件は,ある1≤ i, j ≤ rが存在してρi ∼= ρj⊗ | det |となる こと.

(2)

今,「supercuspidalを法とする」としてしまっているので,誘導表現の部分や商として表現を構成し, それらがどうなっているかを調べることがテーマとなっている.ひとつには,誘導表現が既約かどう かを判定しなければならないわけだが,その条件が定理1で示されている.これを見ると,分類する にあたって,セグメントのような情報が必要になっているということが感じられると思う.それだけ で十分であったので分類定理があのような形をしていると思える.

1.3

分類には二種類あって,それらは標語的には「部分」による分類と「商」による分類である.(それ ぞれ,[7, p.210, Thm.2]と[7, p.211, Thm.3].) BernsteinとZelevinskyは,「部分」による分類を 論文[1],[9]において行った.「商」による分類というのは,Langlandsの分類という,GLとは限らな い一般の群にも適用できる方法を用いたものである.サマースクールの後半では一般の群を扱ってい て,そちらとの足並みをそろえるために本稿では「商」による分類を紹介する.商と部分は双対的な 感じがするので,Bernstein-Zelevinskyの結果から「商による分類」が得られるのかと思ったりした が,そういう風にはなっていないようだ.ちなみに,商による分類では,記号としてL, Q,⟨ ⟩tが用い られ,部分による分類では,Z,⟨ ⟩が用いられるのを見たことがある. Fを非アルキメデス的局所体とする.分類定理は(どちらにしても)「GLn(F ) (nは任意)の既約 許容表現がマルチセグメントと1対1に対応する」といっている.マルチセグメントを介して,「商」 と「部分」の対応が得られるわけだが,それはZelevinsky involutionと呼ばれている. マルチセグメントは数論的なGLn(F )の表現論に限らず,他の,いわゆるA型のディンキン図形 にまつわる表現論にも登場している.これについては筆者は何も知らないが,参考文献として[8]を 挙げておく.

1.4

分類定理のステートメントを最短で学びたい場合には,本稿ではなく,[5]および[7]を参照された い.特に[5]は,L因子やラングランズ対応など他の話題も扱っていて楽しく,しかも読みやすい. 本稿では,([7], p.211, 4.3)で示されているアウトラインにしたがって分類定理を述べた.オーガナ イザーの好意により,サマースクールでは筆者の安田正大氏との共同研究の結果[3]についても話を した.この内容は(もちろん)それらサーベイ記事には出ていない.

2

マルチセグメントの定義

非アルキメデス的局所体をF であらわす. 定義2 (C, Cn) 自然数n∈ Nに対し,CnでGLn(F )の(既約)supercuspidal表現の同値類の集合 をあらわす.C =n∈N Cnとおく.

(3)

上で書いた「supercuspidal表現を法として」の意味は,これらの集合C, Cnがどのようなもので あるかについては問わない,ということ. 定義3 (π(s)) GLn(F )の許容表現π,実数sに対し,許容表現π(s)を,すべてのg ∈ GLn(F )に 対して π(s)(g) :=| det g |s· π(g) とおくことで定義する. もしπ∈ Crならばπ(s)∈ Crとなることに注意しておく. 定義4 (セグメント(segment)) セグメント∆ = [σ, σ(r− 1)]とは,σ∈ C と自然数rの組のこと. セグメントとは日本語で線分のこと.セグメント∆に対応して下の図を思い浮かべている. σ σ(1) σ(2) σ(r− 2) σ(r − 1) ∆ これは,端点がσσ(r− 1)であるような線分で,各(格子)点上にはσ(m)がのっかっていると考 えたもの.これで,セグメントの記号が閉区間を模したものであることに気がつく. 整数による捻りが登場してくるのは,定理1の形をみると,仕方のないことだろうと思われる. 定義5 (合併,共通部分,包含関係) セグメント∆ = [σ, σ(r−1)]Cの部分集合{σ, σ(1), . . . , σ(r− 1)}ともみなす.このようにみることで,二つのセグメント ∆1, ∆2の合併∆1∪ ∆2 や共通部分 ∆1∩ ∆2を定義する.これらはセグメントになるとは限らないが,セグメント(あるいは空集合)に なるような場合のみを考えることになる.また,∆1⊂ ∆2などの包含関係も定義される. ふたつのセグメントの間の関係をふたつ定義する. 定義6 (linked) ∆1, ∆2 をセグメントとする.∆1, ∆2 がlinked であるとは,∆1 ̸⊃ ∆2 かつ ∆1̸⊂ ∆2 かつ∆1∪ ∆2がセグメント,となっていること. 一般的な日本語訳が見つからなかったが,「つながっている」という意味である.この用語にはちょっ と語弊があって,たとえば,σ∈ Cとして,∆1= [σ, σ(1)]と∆2= [σ(2), σ(3)]の絵を描くと, σ σ(1) σ(2) σ(3) ∆1 ∆2 となってひとつ離れているようであるが,これらは定義よりlinkedである.また,∆1= [σ, σ(3)]と ∆2= [σ(1), σ(2)]の絵を描くと, σ σ(1) σ(2) σ(3) ∆1 ∆2 となる.太線は∆2と∆1が重なっていることを表している.これらは「つながって」はいるが,定 義よりlinkedではない.

(4)

定義7 (precede) ∆1= [σ1, σ1(r1− 1)], ∆2= [σ2, σ2(r2− 1)]をセグメントとする.∆1 が∆2を precedeするとは,「(∆1と∆2はlinked)かつ(ある自然数kが存在してσ2∼= σ1(k))」であること. 日本語では「先行する」となる.絵で描いたときには,左を先と思って先行している,というのが定 義となる.上でもあげた例 σ σ(1) σ(2) σ(3) ∆1 ∆2 においては,∆1は∆2をprecedeしている.また,∆2は∆1をprecedeしていない. マルチセグメントの定義に入る. 定義8 (マルチ集合(multiset)) Ωを集合とする.Ω上のマルチ集合とは,集合の射χ : Ω→ Z≥0 のこと.ここでは,サポートが有限のもののみを扱うこととする.つまり,χ(ω)̸= 0となるω∈ Ω は有限個とする. マルチ集合の書き表し方として次を用いる.χ : Ω→ Z≥0がマルチ集合であるとき, ω1, . . . , ω1, ω2, . . . , ω2, . . . , ωr, . . . , ωr でそのマルチ集合を表すことにする.ここで,各ωiχ(ωi)回現れている.正確でなく平たくいう と,マルチ集合とは重複を許したΩの部分集合のことである.

定義9 (マルチセグメント(multisegment; multiset of segments)) マルチセグメントとは,セ グメントの集合上のマルチ集合のこと. つまり,∆1, . . . , ∆mがマルチセグメントであるとは,各∆iはセグメントであって,重複してもよ く,順番は定まっていないことを表している.イメージ図はp.1に描いた. これで分類定理を述べるための用語がそろったのだが,マルチセグメントに対する有用な操作を定 義しておく. 定義10 (マルチセグメントに対するelementary operation) ∆1, . . . , ∆mをマルチセグメントと する.あるi < j に対して∆i と∆j がlinkedであるとする.このとき,∆i と∆j をそれぞれ ∆i = ∆i∪ ∆jと∆′j= ∆i∩ ∆j で置き換えて,新たなマルチセグメント ∆1, . . . , ∆i−1, ∆′i, ∆i+1, . . . , ∆j−1, ∆′j, ∆j+1, . . . , ∆m を得る.もし∆i∩∆j =ならば,∆′jはないものとする.この操作をelementary operationと呼ぶ. 例は次のとおり.セグメントを∆1 = [σ, σ(1), σ(2)], ∆2 = [σ(1), σ(2), σ(3)]で定義するとこれらは

linked.∆1, ∆2をマルチセグメントとみなす.elementary operationをほどこして得られるマルチ

セグメントは,∆1= [σ, . . . , σ(3)], ∆′2= [σ(1), σ(2)]になる.絵を描くにあたって,重なりを太線で 表すと違いがわからなくなってしまうので,分けて描いてある.

(5)

σ σ(1) σ(2) σ(3) ∆1 ∆2 σ σ(1) σ(2) σ(3)12 この操作を施すと,linked であったものがlinkedでなくなってしまう.あるマルチセグメントから 出発して,この操作を何度も施すと,linkedでないマルチセグメントを得ることができる.linkedで ないマルチセグメントに対応する表現については定理19を参照.

3

分類定理

本節では,分類定理を述べる.分類定理は「マルチセグメントと既約許容表現が1対1で対応する」 というものである.標語的には「supercuspidal表現から2回誘導するとすべてが得られる」となる. 平賀さんの講演でみたように一般の群の場合はそうはいかない.1回誘導した表現,というのは,セ グメント(ひとつのセグメントからなるマルチセグメントと思って)に対応する表現のことである. マルチセグメントには,それらの表現を並べてもう1回誘導した表現が対応する. はじめに,誘導表現の記号を導入する.Gn = GLn(F )とおく. 定義11 (誘導表現) π1, . . . , πrをそれぞれGn1, . . . , Gnrの許容表現とする.π1× · · · × πrで,誘導 表現IndGn P 1⊗ · · · ⊗ πr)を表すことにする.ここでn = n1+· · · + nrで,P はその分割に対応す る極大放物部分群.ここでは順番は大事で,順番を変えると異なる表現になる場合がある. 定理12 ([9], p.197, 9.1) ∆ = [σ, σ(r−1)]をセグメントとする.このとき,σ×σ(1)×· · ·×σ(r−1) は唯一つの既約商表現を持つ. 定義13 (⟨∆⟩t) この既約表現を⟨∆⟩tで表す. GLの場合にはこれできれいに二乗可積分表現が分類されている.すなわち 定理14 (Bernstein ([9], p.198 Thm.9.3)) ∆ = [σ, σ(r− 1)]をセグメントとする.σ(r−12 )が ユニタリであるとき,⟨∆⟩tは二乗可積分.逆に,πを既約な二乗可積分表現とすると,あるセグメン ト∆が存在して,π ∼=⟨∆⟩tとなる. 定理15 ∆1, . . . , ∆mをセグメントの集まりとする.次の条件を考える: 任意のi < jに対し,∆iは∆jをprecedeしない. (1) このとき, ⟨∆1⟩t× · · · × ⟨∆m⟩t は唯一つの既約商を持つ.

(6)

「集まり」というのはおかしい感じがする単語だけれど「(重複はゆるして)並べ方が定まっている」 という意味で使った.これに対して,マルチセグメントというときはは並べ方が決まっていない.

定理12より各iに対し⟨∆i⟩tはessentiallyに二乗可積分([9]ではquasi-square integrableとい

う.すなわち,あるsiが存在して,| det |si⊗ ⟨∆i⟩tは二乗可積分となる.)特にessentiallyに緩増

加.さらに上の条件(1)が満たされるから,Langlandsの商定理([4], Cor .3.2(ii), p.393)を適用す ることができて,主張を得る. 補題16 ∆1, . . . , ∆mをセグメントの集まりとする. 1. 適当に並べ替えて,定理15の条件(1)が成立するようにできる. 2. 条件が成立する並べ方ごとに,定理15により既約表現を得るが,それらはどれも同型. 1は絵を描けば明らか.2について.二つの並べ方があったとする.「となりあったlinkedでない二 つ∆1, ∆2を入れ替える」という操作を繰り返すことで,一方から他方を得ることができる.さて, ふたつのセグメント∆1, ∆2がlinkedでないとき, ⟨∆1⟩t× ⟨∆2⟩t=∼⟨∆2⟩t× ⟨∆1⟩t が成立する.これは,両辺ともに既約であること([9, p.199, Thm. 9.7(a)])と両辺の組成因子が一致 すること([9, p.174,Thm.1.9])からしたがう.これで主張は示された. 定義17 (⟨∆1, . . . , ∆m⟩t) ∆1, . . . , ∆m をマルチセグメントとする.定理15 の条件(1)が成立す るような並べ方をして,その既約商を⟨∆1, . . . , ∆m⟩t で表すことにする.上の補題よりこれは well-definedとなる. 分類定理を述べる前に,緩増加表現を記述してみよう.ここは[5, p.372, 2.2]を参考にした.[4], Prop.2.2, p.390より,緩増加表現はある二乗可積分表現の誘導表現の直和因子として得られる.定 理12を使うと,緩増加表現ππ′ =⟨∆1⟩t× · · · × ⟨∆r⟩tの直和因子となる.ここで,各セグメン ト∆i = [σi, σi(ri− 1)]について,σi((ri− 1)/2)はユニタリ.Jacquetによるとこの誘導表現π′は 既約.([2, Thm.2.1(3)]より二乗可積分はgeneric.[2, Thm.3.2]を適用することができて主張が従 う.)したがって,任意の緩増加表現に対応して,下の絵のようなセグメントの集まりを考えているこ とになる. ∆1 σ1 σ1(1) ∆2σ2 σ2(1) σ2(2) ∆3σ3 σ3(1) σ3(2) σ3(3) σ3(4) σ3(5) ∆4σ4 σ4(1) σ4(2) (2) essentiallyに緩増加な表現に対応するセグメントの集まりも,同様の絵で表される.(各σi((ri−1)/2) のユニタリ性が課されなくなる.)

(7)

定理18 (分類定理, [7], p.211, Thm. 3) 1. ∆1, . . . , ∆mと∆1, . . . , ∆′m′ をふたつのマルチセ グメントとする.このとき,⟨∆1, . . . , ∆m⟩t⟨∆′1, . . . , ∆′m′⟩tが同型となるための必要十分条 件は「(m = m′)かつ(ある置換τ∈ Sm(対称群の元)が存在して任意のiに対して∆i∼= ∆τ (i) となる)」 2. π を既約許容表現とする.このとき,あるマルチセグメント∆1, . . . , ∆r が存在して,π ∼= ⟨∆1, . . . , ∆r⟩tが成立. 1の十分条件の証明には[9, p.189, Prop 6.4]と同様の命題が⟨ ⟩⟨ ⟩tで置き換えても成立すること を確かめればよい.その証明には,[9, 4.2]の代わりに[9, 9.7(a)]を用いればいい. 2の証明について.πを既約許容表現とする.Langlandsの商定理([4], p.396 Thm. 3.5)により, 緩増加表現π1, . . . , πmが存在して,「それぞれを捻ったもの」の誘導表現の唯一の既約商としてπは 表される.この「捻りかた」に条件がつくのだが,その条件が定理15の条件(1)になっている.さ て,上でみたように,緩増加表現は⟨∆1⟩t× · · · × ⟨∆r⟩tの形をしている.これは捻っても同様の形 をしているので,合わせて主張を得る.ここの部分については平賀さんの原稿を参照してほしい.

4

マルチセグメントにまつわるいくつかの話題

4.1

generic

表現と

mirahoric

表現

本節では,generic表現とmirahoric表現をマルチセグメントを用いて記述してみる.mirahoric表 現というのは聞いたことがないと思われるが,それもそのはずで,これは安田正大氏との共同研究に おいて定義をしたものなのだ.genericのような一般論があるわけではないのだが,自然なクラスで あると筆者は思っている.共同研究者がどう思っているかは聞いたかどうかも覚えていない.

先ほど引用したJacquetの論文[2]のタイトルはgeneric representationというもので,このクラ スは大変有用であることが知られている.ここでは定義もせず,その有用さをひとつを除いて書くこ ともないのだけれど,マルチセグメントによる特徴づけは次のようになっている. 定理19 (generic 表現) π を既約許容表現とし,∆1, . . . , ∆r を分類定理により対応するマルチセ グメントとする.πがgenericであるための必要十分条件は「任意のふたつのセグメント∆i, ∆jは linkedでない」こと. 特に,1つのセグメントからなるマルチセグメントに対応するessentially二乗可積分表現は他とリン クのしようがないのでgenericになる.また,緩増加表現に対応するマルチセグメントは絵(2)のよ うになっており,どのふたつもlinkedではないことが見てとれる(必ず「∆∩ ∆′=または∆⊂ ∆′ または∆⊃ ∆′」が成立)ので定理よりgenericであることがわかる. generic表現のもつ性質として次のことが知られている.(π, V )をGLd(F )のgeneric表現(V は複素ベクトル空間でπの表現空間),c をその導手としよう.F の整数環をO と書き をそ の極大イデアルとする.GLn(O)の部分群Kd,c ⊂ GLd(O)を,(xij)1≤i,j≤d ∈ GLd(O)であって

(8)

(xdj)1≤j≤d ≡ (0, . . . , 0, 1) mod ℘c となる元からなるもの,と定める.このとき, dimVKd,c′ = { 0 c′ < c 1 c′ = c (3) が成立することが知られている. mirahoric表現はこれを定義にしたものである.すなわち, 定義20 (mirahoric 表現,[3]) (π, V )をGLd(F )の既約許容表現とし,導手をcとする.導手は, イプシロン因子の複素変数sの係数の(−1)-倍を定義とする.πがmirahoricであるとは,(3)が成立 することと定義する.

余談だが,mirahoricというのは,mirabolicとIwahoriを合わせて作った単語である.インター ネットで検索すると数件はヒットする.mirabolic部分群というのは,一番下の行が(0, . . . , 0, 1)で あるような元からなる部分群を普通は表す.Iwahori部分群はGLd(O)の部分群で, mod ℘をとる と,下三角が0になるような元からなるもののことを指す.だから,mirahoricというのは,GL2を 除くと,正確には合わせたものではない. 定義より,genericならばmirahoricであることがわかる.さて,既約許容表現のある部分集合(ク ラス)が定義されたということは,分類定理があるから,マルチセグメントの集合の部分集合が定義 されたということになる.その特徴づけが可能であるはずで,それは次のようにまあまあ簡単に書き 表すことができる.もちろん,generic表現のよりも複雑になってはいる. まず,unipotentを定義しよう.

定義21 (unipotent表現) σをGLd(F )のsupercuspidal表現とする.σがunipotentであるとは

(d = 1)かつは不分岐)」のこと.∆ = [σ, σ(r− 1)]をセグメントとする.σがunipotentのと き,∆がunipotentであると定める.

このような条件が現れる理由としては次のことが考えられる.既約表現のL因子はマルチセグメント の表示に沿って帰納的に書き表すことができるが([5, p.377, 3.1]および石井さんの原稿参照)その 際に,unipotentであるかどうかによっての場合分けが一ヶ所あるのだった.

定義22 (tightly linked) ふたつのセグメント∆, ∆′がtightly linkedであるとは,「(linked)かつ

((∆がunipotentでない)または(∆∩ ∆′̸= ∅))」のこと. このように定義をすると,次が成立する.

定理23 (mirahoric表現に対応するマルチセグメント ([3], A.1.6, Prop. A.3))) 既約許容表現

πが分類定理によってマルチセグメント∆1, . . . , ∆rに対応するとする.πがmirahoricとなる必要

(9)

4.2

Zelevinsky involution

分類定理には2種類あって,マルチセグメントには二種類の既約許容表現が対応する.ひとつは 第3節で述べた⟨∆1, . . . , ∆r⟩tで表されるもの.もうひとつは,記号⟨∆1, . . . , ∆r⟩で表される[9] にあるもの.このtを操作とみなしてみよう.つまり,既約許容表現π ∼=⟨∆ 1, . . . , ∆r⟩ に対して πt∼=⟨∆ 1, . . . , ∆r⟩tを対応させる操作,というわけだ.これが,二回施すと元に戻ってくることが確 認でき,これをZelevinsky involutionと呼ぶ. マルチセグメント∆1, . . . , ∆rに対して,⟨∆′1, . . . , ∆′s⟩ ∼=⟨∆1, . . . , ∆r⟩t となるマルチセグメント ∆1, . . . , ∆′sを求めるアルゴリズムが知られていて,論文[6]に書いてある. このinvolutionは他にも意味を持っているようなのだが,筆者は専門ではないので参考文献として [8]を挙げることしかできない.ここでは,GLn(F )の既約許容表現以外にもマルチセグメントに対 応するものが挙げられていて面白い.

4.3

Jordan-H¨

older constituents

マルチセグメント∆1, . . . , ∆rに対応する既約許容表現というのは,条件(1)が成立するように並

べ替えた際の,

⟨∆1⟩t× · · · × ⟨∆r⟩t

の唯一の既約商だった.この表現のJordan-H¨older constituentsが与えられたマルチセグメント とelementary operationで記述することができる.(Jordan-H¨older組成列は並べ方によらない.

⟨∆1⟩ × · · · × ⟨∆r⟩の組成列とも同じものである.)

定理24 (Jordan-H¨older consituents) マルチセグメント∆1, . . . , ∆′sに対応する表現が Jordan-H¨older組成列に現れるための必要十分条件は,そのマルチセグメントがelementary operation(定 義10)により得られること.

すぐにわかるのは,generic表現が組成列に唯一つ現れる,ということである.なぜなら,elementary operationを施していくと,どんどんとlinkedでなくなっていくからである.もう少し丁寧に考える と,mirahoric表現が現れることもわかる.

参考文献

[1] I. N. Bernstein, A. V. Zelevinsky, Induced representations of reductive p-adic groups. I, Ann. Sci. ´Ec. Norm. Sup´er., IV. S´er. 10, 441–472 (1977)

[2] H. Jacquet, Generic representations. Non-commutative harmonic analysis (Actes Colloq., Marseille-Luminy, 1976), pp. 91–101. Lecture Notes in Math., Vol. 587, Springer, Berlin, 1977.

(10)

[3] S. Kondo, S. Yasuda, Local L and epsilon factors in Hecke eigenvalues. J. Number Theory 132 (2012), no. 9, 1910–1948.

[4] T. Konno, A note on the Langlands classification and irreducibility of induced representa-tions of p-adic groups. Kyushu J. Math. 57 (2003), no. 2, 383–409.

[5] S. S. Kudla, The local Langlands correspondence: The non-Archimedean case, in U. Jannsen et al. (ed.), Motives. Proceedings of the summer research conference on motives, held at the University of Washington, Seattle, WA, USA, July 20-August 2, 1991. Providence, RI: American Mathematical Society. Proc. Symp. Pure Math. 55, Pt. 2, 365–391 (1994) [6] C. Moeglin, J.-L. Waldspurger, Sur l’involution de Zelevinski, J. Reine Angew. Math. 372,

136–177 (1982)

[7] F. Rodier, Repr´esentations de GL(n,k) o`u k est un corps p-adique S´emin. Bourbaki, 34e ann´ee, Vol. 1981/82, Exp. No.587, Ast´erisque 92–93, 201–218 (1982)

[8] A. V. Zelevinsky, Multisegment duality, canonical bases and total positivity. Proceedings of the International Congress of Mathematicians, Vol. III (Berlin, 1998). Doc. Math. 1998, Extra Vol. III, 409417

[9] A. V. Zelevinsky, Induced representations of reductive p-adic groups. II, Ann. Sci. ´Ec. Norm. Sup´er., IV. S´er. 13, 165–210 (1980)

近藤 智

[email protected]

東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構 〒277-8583千葉県柏市柏の葉5−1−5

参照

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