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福祉社会の正義論的基礎 : ロールズの政治哲学の射程

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福祉社.会の正義論的基礎

ロール ズの政治晢 学の射程 一

小 坂.勝.昭

Welfare

Society

and

Justice

Principles

Katsuaki

Kosaka

The purpose of this paper is to point out the necessity of introducing J. Rawls's

contractarian paradigm in considering the theme of Social Welfare and Justice

Principles. In the perspective of western moral and political philosophy, Rawls's

theory of justice is one of the most comprehensive and cumulative efforts.

Rawls has developed an alternative to the utilitarian approach based on a concept of

justice as fairness,not social utility. According to Rawls, the fairness of social

institutions could be established by the hypothetical fact that such institutional

arrangements are the outcome of rational choice by all individuals in society under

conditions of the veil of ignorance. In the original position, no one knows or may

consider whether he is rich or poor,black or white, male or female, young or old,or

the other characteristics of his own circumstances under the veil of ignorance.

Rational actors in the original positions of choice do have knowledge of primary

goods, which Rawls defines as goods that any rational human being would want to

have for the pursuit of any plan of life. And these goods are to be distributed equally

unless an unequall distribution of any,or all, of these values is to every on&s

advantage. For pursuing the justice standards for the welfare society,we need to adopt

the ideas of Difference Principle.

1.は じ め に 、 人 間 の 「幸 福 」(well-being)と か 「生 き方 」 を め ぐ り、.また望 ま しい 「福 祉 の あ り方 」 に つ い て 私 た ち は ど の よ うな提 案 が で.きるだ ろ うか 。 今 日、.現代 の先 進 資 本 主 義 国 が共 通 に抱 え る 課 題 は あ ま りに 多 い 。 と くに社 会 制 度 の 根 幹 に か か わ る 「民 主 主 義 」 の 運 営 方 法 や制 度 的 理 念 を め ぐ り、 ま た 望 ま しい 「市 民社 会 」 の 存 立 条 件 と は 何 か を め ぐっ て 、 規 範 的 な社 会 秩 序 を模 索 す る試 み が政 治 学 、 倫 理 学 の研 究者 か ら提 案 さ れ て きた 。 さ らに 、 経 済 的 自由 主義 に基 づ く市 場.原理 の 信 頼 性 が 危 機 に 瀕 して お り、.ビジネ ス倫 理 が 厳 し 一67一

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く問 わ れ て い る。 企 業 の 犯 罪 的 行 為 に 典 型 的 にみ られ る反 倫 理 的 行 動 は私 た ち の 正 義 感 覚 か らは ほ ど遠 い も の に 思 わ れ る が、 実 は私 た ち の 日常 生 活 に お い て も、 際 限 の な い欲 望 にね ざ す 社 会 問 題 や 逸 脱 行 動 が 毎 日の よ うに紙 面 を賑 わ せ て い る。 こ う した 多 様 で 困 難 な 問 題 に対 して 、 ど の よ うな解 決 策 を見 い だ す こ とが で き るだ ろ うか 。 市 場 の制 度 的 側 面 、 お よび 国 家 と民 主 主 義 制 度 を 視 野 に お さめ た政 治 経 済 学 の新 た な 分 析 ア プ ロー チ が注 目 さ れ る 。(1)ま た 、 人 間 の連 帯 と コ ミュ ニ タ リア ニ ズ ム=共 同 性 の 復 活 こそ秩 序 維 持 と 正 義 に最 も必 要 と説 く倫 理 学 的 デ ィス コー ス が政 治 学 お よび倫 理 学 の領 域 か ら現 れ た 。(2)社 会 学 の領 域 で も、 こ う した 危 機 状 況 を克 服 す る試 み が これ まで に幾 つ か現 れ た。 例 え ば 、社 会 学 者 D.J.ブ イ リ ッ プス は 『公 正 な社 会 秩 序 を め ざ して ゴ(1986)(3)の 中 で 「道 徳 と権 利 」 を め ぐる規 範 的 社 会 理 論 を提 示 し、R.ベ ラ ー とそ の仲 間 た ち の 共 著 『心 の 習 慣 』(1985)(4)で は 、 「倫 理 的 個 人 主 義 」 の 構 想 が提 案 され た 。 また 社 会 学 者A.ア ラー トと政 治 学 者J.L.コ ー エ ソの 共 著 『市 民 社 会 と政 治理 論 』(1994)(5)で は 東 欧 社 会 の民 主 化 に範 を求 め、 「市 民 社 会 の デ ィ ス コー ス 」 の考 察 を下 敷 き に 「市 民 社 会 の再 構 築 」 の た め の 理 論 的 検 討 が な され た。 そ こで は バ バ ーマ ス 、 ロ ー ル ズ、 アー レソ トな どの 現 代 の 思 想 家 の解 読 作 業 が 試 み られ た。 そ して 、危 機 の 時 代 を反 映 す る これ らの 試 み が 民 主 主 義 と 人権 に つ い て の 、 新 た な 「道 徳 社 会 学 の復 権 」 に つ な が る可 能 性 を 否 定 で きな い 。 これ らの著 作 がJ.ロ ー ル ズ の 『正 義 論 』(1971)や 、 バ バ ー マ ス の 規 範 的 、 道 徳 的 デ ィス コー ス=討 議 倫 理 学 の提 起 した 問 題 意 識 の 延 長 線 上 に あ る こ と は疑 い の な い 事 実 で あ る。 ロー ル ズ は現 代 の ア メ リカ社 会 に つ い て 透 徹 した 洞 察 を試 み る と と もに、 今 後 の市 民 社 会 の 方 向 性 に つ い て も政 治 的 リベ ラ リズ ムの 立 場 か ら 「格 差 原 理 」、 お よ び 厂重 合 的 コ ソセ ソ サ ス 」 と い う政 治 的 構 想 を提 案 して きた 。 ロー ル ズ の 『正 義 論 』 の 今 日的 意 義 は ア カ デ ミズ ムの 世 界 に人 間 の 平 等 とか 、 正 義 、 公 正 とい った倫 理 学 的 、 規 範 的 問 題 を 市 民 社 会 の 「言 説 倫 理 」(discourse ethics)と して 提 案 して きた こ とで あ る。 本 稿 も こ う した 潮 流 に 関 わ る仕 事 とい え る。 こ こで は ロー ル ズ の 規 範 的 社 会 理 論 を 手 掛 か り と して福 祉 社 会 の 「倫 理 学 的 、 正 義 論 的 基 礎 」 を 明 らか に した い 。 以 下 の 諸 章 で は ロー ル ズが 『正 義 論 』 で提 示 して きた 正 義 構 想 を手 掛 か りに 福 祉 と正 義 の 関 わ りに つ い て 若 干 の 分 析 を 試 み る。 2.ロ ール ズ のr正 義 論 』 の 政 治 的 構 想 初 期 ロー ル ズ、 す な わ ち 『正 義 論 』(1971)の 段 階 か ら 『政 治 的 リベ ラ リズ ム』(1993)へ の 移 行 の過 程 、 お よ び移 行 の筋 道 を 検 討 す る作 業 が避 け られ な い が 、 ロー ル ズの 真 骨 頂 が初 期 の 『正 義 論 』 に あ る こ と は誰 し も否定 で き な い 。 a.初 期 ロ ール ズ の 理 論 構 成 『正 義 論 』 で 採 用 され た理 論 構 成 の 方 法 的 手 続 きは 、 まず 各種 の演 繹 的 な仮 説 設 定 か ら始 ま る が 、 彼 の方 法 論 は 明 らか に カ ソ トの構 成 主 義 の 影 響 下 に あ る。 思 想 的 に は古 典 的 な 社 会 契 約 説 の 復 活 と再 生 が意 図 され 、 さ らに功 利 主 義 の 難 点 を克 服 す る こ とが 課 題 と され た。 あ の 周 知 の 「正 義 の 二 原 理 」 は仮 説 状 態 と して の 「始 原 状 態 」(originalposition)の も とで 満 場 一 致 で選 択 され る 「基 本 法 」 と して の位 置 を与 え られ て い る。 この ロー ル ズ の 「始 原 状 態 」 仮 説 は 、 基 本 的 に は ロ ック、 ル ソー の 「自然 状 態 」 に対 応 す る概 念 と して 案 出 され た もの だ が 、 古 典 的 な契 約 説 理 論 に は み られ な い理 論 的 工 夫 が な さ れ て い る。 す な わ ち 、 始 原 状 態 に お か れ た 人 び

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と は 「無 知 の ヴ ェ ー ル」(aveilofignorance)の も とで 、 自分 が 何 者 か を知 り得 な い とい う 特 殊 な状 況 が想 定 され て い る。 無 知 の ヴ ェ ー ル に覆 わ れ て 、 各 人 は 彼 の立 場 や 、 階 級 的 位 置 あ る い は 社 会 的 地 位 を 知 らず 、 ま た 天 賦 の 資 質 や 才 能 、 知 性 、 知 力 な ど の 分 配 に お け る 自分 の 「運 命 」(fortune)を 知 らず 、 ま た 自分 の 「善 」 の 構 想 や 、 自分 の 合 理 的 人 生 計 画 の 詳 細 、 ま た 危 険 回避 度 、 オ プ テ ィ ミズ ム か ペ シ ミズ ム か とい った 個 入 心 理 の 特 徴 、 自分 が お か れ た社 会 環 境 、経 済 状 況 、政 治 状 況 、 文 明 や文 化 の 水 準 、 さ らに 自分 が どの 世 代 に属 す るか 、 等 々 につ い て も知 ら な い もの と想 定 され て い る。 た だ 次 の 事 実 、 す な わ ち政 治 現 象 や経 済 現 象 の根 底 に あ る諸 原 理 、 お よび 社 会 組 織 の基 礎 や 人 間 心 理 の 法 則 な ど、 通 常 人 間 が合 理 的選 択 を行 う際 に 必 要 な情 報 だ け は与 え られ て い る。 つ ま り、正 義 の 諸 原 理 の 選 択 に 影 響 す る 「一 般 的 事 実 」 だ け は 知 って い る とい う前 提 に た つ の で あ る。(6) ロ ール ズは 何 故 この よ う な特 定 の情 報 が 欠如 した 状 態 を想 定 しな け れ ば な らな か った の か 。 彼 に と っ て 、 あ る個 人 が 天 賦 の才 能 や 資 質 に恵 まれ て い るか 否 か 、 自分 が どの よ うな 環 境 に 生 まれ つ くか は、 所 詮 「偶 然 」(contingencies)の 結 果 に過 ぎ ず 、 そ れ ら の才 能 や資 質 、 環 境 は た また ま 、運 命 の め ぐ り合 わ せ の結 果 と して あ る個 人 に分 配 さ れ た だ け だ とす る一種 の 「天 の 配 剤 」 説 に た つ か らで あ る。 従 って 、 無 知 の ヴ ェー ル の も とで は誰 もそ う した偶 然 の 恩 恵 や 不 条 理 が 自分 に降 りか か るか ど うか 、 自分 の運 命 につ い て は何 も知 り え な い と想 定 す る。 で は無 知 の ヴ ェー ル に包 ま れ 、 特 定 の 情 報 しか与 え られ な い 当事 者 は どの よ うに行 動 す るの で あ ろ う か 。 こ こで 導 入 され るの が 「マ キ シ ミソ原 理 」 で あ る。 各種 の 知 識 や 情 報 を欠 い た状 態 の も と で 人 び と は 多 かれ 少 な か れ 利 己 的 で か つ 合 理 的 に行 動 す る とい う行 動 原 理 が想 定 され る。 そ の 結果 、 人 び と は無 知 の ヴ ェー ル が取 り去 ら れ た と き 、 自分 が 最 悪 状 態 に お か れ る危 険 を予 想 し、 危 険 回 避 的 に行 動 す る と考 え る。 慎 重 な人 が賭 け 事 ゲ ー ム に 金 銭 を か け た と き最 悪 で も無 一 文 の 状 態 だ け は避 け よ う とす る賭 け か た に似 て い る。 ロー ル ズ 自身 は こ う した マ キ シ ミソの 発 想 を 不 確 実 性 の 下 で の適 切 な選 択 と考 え て お り、 「保 守 的態 度 」 で あ る こ と を認 め て い る。 こ う した 発 想 は ア ロー な どに よ り批 判 の対 象 と な り、 後 の 『政 治 的 リベ ラ リズ ム』 の段 階 で は マ キ シ ミ ソ原 理 に は言 及 され な か っ た。 br秩 序 だ っ た社 会 」 の理 念 (1)社 会 と は 自足 的 な 利 益 共 同体 で あ り、相 互 利 益 の た め の協 同 事 業 体 で あ る とい うの が ロ ー ル ズ の社 会 観 に ほ か な ら な い。 そ れ ゆ え 、社 会 的 協 同 の成 果 と して 産 出 され る利 益 をめ ぐ り 利 害 の対 立 が生 ず るか ら利 益 や 負 担 の 適 切 な 分 配 を規 定 す る一 組 の 正 義 原 理 が要 請 され る とい う。 ロー ル ズ の社 会 観 の 根 底 に は社 会 学 的 な 発 想 が あ り、 そ の こ とは 彼 の 「秩:序立 った 社 会 」 の 構 想 の な か に伺 え る。 す な わ ち 「秩 序 立 った 社 会 」 とは 社 会 の構 成 員 が 同一 の 正 義 原 理 を 容 認 し、 しか も社 会 の 基 本 的 制 度 が この 正 義 原 理 を満 た す よ うに設 計 され て い る社 会 の こ と で あ る。 さ らに 、社 会 の 構 成 員 の 「善 」 を促 進 し、 ま た 「公 共 的 な正 義 構 想 」 に よ って 調 整 さ れ て い る社 会 の こ とを 言 う。 もち ろ ん 、 ロー ル ズ は、 現 実 の社 会 が ル ソー の言 う よ うに 鉄 鎖 に しば られ 不 平 等 の 蔓 延 す る 社 会 で あ る こ とを 十 分 に認 識 して お り、 そ れ ゆ え彼 の 正 義 論 の主 題 が分 配 の結 果 を 評 価 し う る 公 正 基 準 の 提 示 に あ っ た こ とは 自明 で あ る 。 彼 が正 義 論 の 第 一 の 主 題 を 「社 会 の 基 礎 構 造 」 で あ る と言 う と き、 そ の基 礎 構 造 と は、 人 び との 権 利 と義 務 を規 定 し生 活 の 見通 しに 影 響 す る政 治 構 造 や 、 社:会的 、 経 済 的 制 度 を さす 。 そ して この基 礎 構 造 とは 社 会 的地 位 が 異 な れ ば 人 生 の 展 望 や期 待 も当 然 異 な る、 そ う した 不 平 等 の 構 造 で もあ る。 ロー ル ズ が社 会 の 「最 も恵 ま れ な 69

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い 人 び と」 の利 益 を 向上 させ る こと が 正 義 で あ る と考 えた こと は い まや 明 ら か で あ る。 彼 は正i義の 二 原理 を 、基 本 法 の制 定 に相 当 す る正 当 化 手 続 き を経 て 導 出 す る こと を構 想 し、 そ の た め に 「始 原 状 態 」 お よび 「無 知 の ヴ ェー ル 」 とい う仮 説 状 態 を設 定 した。 正 義 の 原 理 を 正 当 化 しうる想 像 上 の 始 原 契約 を設 定 した もの で あ る。 始 原 状 態 に おか れ た人 び とは無 知 の ヴ ェ ー ル の背 後 に あ って、 合 理 的 で か つ 「相 互 に他 人 の利 益 に は無 関心 」 に 自己 の利 益 を追 及 す る もの と想 定 され て い る 。 そ して 、 これ らの 人 び と は 、 無 知 の ヴ ェ ー ル の も とで 交 渉 す る間 は 「嫉 妬 」 や 「慈善 」 な ど の 意 識 に は影 響 され な い と され る。 ロ ール ズ は この始 原 状 態 仮 説 が カ ソ トの 「原 始 契 約 」 の 概 念 か ら ヒ ソ トを得 た もの で あ る こ とを 述 べ て い るが 、 カ ソ トが 自 由の 支 配 す る道 徳 的 世 界 に お い て各 々 の 人 格 が 自律 的 に 自 由 に 行 為 す る 「目的 の 王 国 」 を構 想 した よ うに ロー ル ズ も この 目的 の王 国 を 始 原 状 態 に 置 き換 え た よ う に思 わ れ る。 彼 は 始 原 状 態 に お か れ た 当事 者 が 自律 的 に 自 由 に行 為 し、 決 して 他 の 手 段 と は な らず 、 目的 と して 取 り扱 わ れ る べ き こ とを 主 張 した か っ た に違 い な い 。 こ の 自由 で 自律 的 な人 間 像 こそ始 原 状 態 に お か れ 正 義 の 原 理 を採 択 す る人 間 モ デ ル で あ る。 ロ ール ズ は始 原 状 態 が カ ソ トの 自律 性 や 定 言 命 法 の手 続 き的 解 釈 に ほ か な らぬ こ とを しば し ば強 調 して お り、 カ ソ トの定 言 命 法 と も い うべ き ロー ル ズ の正 義 原 理 は 以 下 の 内容 を 持 つ 。(7) [第 一 原 理]各 人 は、 他 者 の 同 様 の 自 由 と両 立 す るか ぎ り、最 も広 範 な基 本 的 自由 に対 す る平 等 な権 利 を もつ べ きで あ る。(自 由優 先 原 理) [第 二 原 理]社 会 的 、 経 済 的 不 平 等 は、 そ れ が(a)あ ら ゆ る人 び との 利 益 と な:るこ と が 当然 期 待 され 、(格 差 原 理 、 お よ び マ キ シ ミソ原 理)ま た(b)地 位 や 職 務 が す べ て の 人 び とに機 会 均 等 の条 件 の も とで 開 か れ て い る よ う に、 取 り決 め られ る べ きで あ る。(機 会 均 等 原 理) 選 択 され た二 原 理 は 、優 先 ル ー ル に よ り第 一 原 理 は 第 二原 理 に優 先 し、 また 第 二 原 理 の(b) 「機 会均 等 原 理 」 が(a)「 格 差 原 理 」 よ り優 先 す る(辞 書 式 順 序 づ け)。 ロー ル ズ の正 義 論 は 「基 本 的 自 由 を平 等 に 賦 与 す べ き こ と」 を定 め る第 一 原 理 を優 先 さ せ る と こ ろ に最 大 の 特 徴 が あ り、 自由 は 自 由の た め にの み制 限 され 、 少 数 者(奴 隷 もふ くめ)の 自由 は 多 数 者 の享 受 す る 自 由 の た め に犠 牲 に され な い(功 利 主 義 批 判)、 とい う こ と を定 め た 「自由 優 先 原 理 」 が 特 徴 で あ る。 第 二 原 理(a)の 「格 差 原 理 」(difεerenceprinciple)は 、 一 種 の マ キ シ ミ ソ原 理 一 ロー ル ズは 不 確 実 性 下 の 選 択 ル ー ル に対 して だ け こ の用 語 を使 う一 で あ り、最 低 所 得 層 の 所 得 を 最 大 に す る(マ キ シマ ム な保 障 を与 え る)こ と を意 味 し、 「よ り有 利 な 者 の よ り大 きな 期 待 が 、 社 会 シ ス テ ム全 体 の は た ら きの 中 で あ る役 割 を果 た す こ と に よ って 、 最 も不 利 な 者 の;期待 を 改 善 す る な らば 、 そ して ま た改 善 す る場 合 に の み 公 正 で あ る」(8)と 言 うの で あ る。 ロ ー ル ズ の 正 義 原 理 の特 徴 は 、富 や 所 得 な ど の 、 社 会 的 、経 済 的 資 源 を平 等 に分 配 す る 「完 全 平 等 主 義 」(radicalegalitarianism)と は 無 縁 で あ る。 社 会 の 「最 も恵 ま れ な い人 び と」 (theleastadvantaged)の 人 生 の 展 望 を 向 上 させ る 時 に の み 不 平 等 が 許 容 され 、 恵 まれ た 階 層 の 人 び と が彼 等 の 幸 運 を享 受 す る こ と が許 され る とい う提 案 な の で あ る。 社 会 を も う一 度 過 去 に さか の ぼ り、 不 平 等 が 発 生 す る以 前 の状 態 に戻 そ う とす る発 想 に は 、 現 在 の 不 平 等 な社 会 構 造 を無 条 件 に肯 定 しな い と い う考 え方 が うか が え る。 そ して 、 社 会 の 支 配 的 立 場 に あ る 、責 任 あ る人 び と、 ロー ル ズ 的 に い え ば 「恵 ま れ た 人 び と」 が 「恵 まれ ぬ立 場

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の 人 び と」 と立 場 を共 有 す る、 い わ ば 「他 者 の 視 点 」 が 強調 さ れ て い る と考 え るべ きで あ る。 c.格 差 原 理 と分 配 公 正 ロー ル ズ の正 義 の 二 原 理 の な か で 最 も関 心 を 呼 び 起 こ した 「格 差 原 理 」 は 、 そ の 根 底 に天 賦 の 才 能 、資 質 に も とつ く富 や 所 得 の 不 平 等 な 分配 が 何 ら根 拠 の な い もの で あ る こ とを 強 調 す る た め に導 入 され た も ので あ る。 ロー ル ズ に と って 、 天 賦 の 才 能 、 資 質 の個 人 へ の 帰 属=分 配 は 偶 然 の所 産 に ほ か な らず 、 した が って 彼 が 「自然 の 運 の め ぐ りあ わ せ の気 紛 れ な効 果 を 低 減 す るた め の一 つ の原 理 を採 用 した い 」(9)と 述 べ る と き、 格 差 原 理 の もつ 意 味 が 一 層 明 か に な る の で あ る。 ロ ール ズ に よ れ ば 社 会 シ ス テ ム の種 々 の 地 位 、異 な る社 会 階 層 、 さ ま ざ ま な所 得 グル ー プ に 生 を 受 け た 個 人 の 人 生 の 展 望 は 、 そ れ ぞ れ の地 位 に 付 随 す る経 済 的 、 社 会 的機 会 に制 約 され た 不 平 等 な もの で あ る。 い か な る社 会 に お い て も、所 得 、 身 分 、 人 種 、 性 別 な ど に よ る差 別 と不 平 等 が避 け 難 い こ とか ら、 平 等 基 準 や 正 義 基 準 が模 索 され て きた の で あ る。 ロー ル ズ が 目指 す の は 、 社 会 的 、 経 済 的 資 源 の 「完 全 平 等 」 を達 成 す る こ とで は な く、 む しろ不 平 等 の存 在 を前 提 と し、 この 不 平 等 が ど の よ う な場 合 に許 容 され 、 正 当 化 され るの か と い う問 題 設 定 で あ る。 だ か ら こそ 、 不 平 等 が 許 容 され 正 当化 され る の は 、 最 も恵 ま れ ない 状 態(貧 困 状 態 を ふ くめ) に あ る人 び との 利 益 に な る場 合 に 限 り とい う前 提 を 持 ち込 む の で あ る。 こ う した格 差 原 理 の 発 想 に は 、 人 間 存 在 を根 源 的 に 位 置 付 け よ うとす る意 図 が うか が え る。 競 争 原 理 の 支配 す る メ リ トク ラ シ ー社 会 の 歪 み を根 源 か ら問 い な お そ うとす る意 図 を汲 み と る 必 要 が あ る 。従 っ て 、 格 差 原 理 を単 な る 「慈 善 」 や 「救 済 」 と解 釈 す る こ との 過 ち は許 され な い の で あ る 。 3.ロ ー ル ズ の 基 本 財 と福 祉 構 想 a.福 祉 権 の 基 礎 と して の 自然 権 こ こで は 、 こ う した 格 差 原 理 に もと つ く構 想 を ロー ル ズの 福 祉 権 構 想 と して 位 置 付 け る こ と を 意 図 して い る。 これ ま で の 福 祉 理 論 で は 「恵 まれ な い 立 場 の 人 び と」(被 窮 恤 的 救 民)に 対 す る福 祉 的 施 策 は 、近 代 国 家 の 義 務 で あ り、 社 会 的 弱 者 の 側 か らは基 本 的 権利 とみ な され 、 法 的 に は 生 存 権 保 障 と規 定 さ れ て い る。 しか し、 この 生 存 権 保 障 に基 礎 付 け られ た 基 本 的 権 利= 人 権 とは 「国 家 以 前 の 自然 状 態 に お い て 、 他 人 に 譲 りわ た す こ と の で きな い 固 有 の 権 利 」(lo) と規 定 され た 「自然 権 」 に ほ か な らず 、 自然 権 思 想 に お け る 「天 賦 の 人 権 」 と呼 称 され た 権 利 で あ る。 ロ ール ズ は この 権 利 を 正 義 に基 礎 付 け られ た 「不 可 侵 の 権 利 」 と して 、 何 び と の 福 祉 とい え ど も侵 す こ との で きな い 自然 権 と位 置 づ け て い る。 ロ ール ズ の正 義 論 の 特 徴 は 、 自然 権 思 想 に も とづ き個 人 に帰 属 す る社 会 的 好 運 や 先 天 的 な才 能 、 資 質 を 社 会 の 「共 同資 産 」 と み な す こ と で あ る。 そ して 、 そ れ ら の才 能 、 資 質 な ど を 不 利 な 状 況 に あ る人 び との 共 通 の利 益 の た め に利 用 す る 「共 同 プ ー ル 」 と考 え るの で あ る。K.ア ロー に よ れ ば 、 こ の主 張 は 「資 産 平 等 主 義 」(assetegalitarianism)で あ る とい う。(11)ロ ー ル ズ が 「共 同資 産 」 とみ な す 個 人 の 天 賦 の 才 能 、 資 質 、 能 力 が果 た して 「天 の配 剤 」、 あ るい は運 の め ぐ りあ わ せ の 結 果 に過 ぎな い もの か 、 あ るい は努 力 や 教 育 の 結 果 と して 開 花 した もの か に つ い て は以 前 よ り論 争 が あ っ た。 自己 の天 分 や 素 質 が開 花 した と き、・そ れ を 自分 の努 力 の ご 一71

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成 果 と受 け と め、 そ こか ら得 る利 益 を当 然 の 権利 と して 享 受 す る ノー ジ ックの 「権 原 理 論 」 と、 た ま た ま偶 然 に 自分 に与 え られ た だ け と受 け止 め 、 自 己 の 才 能 を社 会 の共 同資 産 と受 け 止 め 弱 者 の 立 場 を 思 いや る ロー ル ズの 格 差 原 理 、 こ の両 者 の 間 に は か な りの断 絶 が あ る。 自然 権 思 想 に も とつ く個 人 の 権 利 か ら平 等 分 配 を 引 き出 す ロー ル ズ の 思想 が、 福 祉 を持 て る者 か ら恵 まれ な い 人 ぴ とへ の所 得 と 富 の 強 制 的 な再 分 配 政 策 とす る福 祉 国 家 的 解 釈 や、 ま た 「慈 善 」 や 「救 済 」 に福 祉 の 精 神 を見 い だ す 解 釈 の い ず れ も が ロー ル ズ の格 差 原 理 に よ る支 持 と裏 付 け を 必 要 とす るの で あ り、 契 約 説 に よ る正 義 論 的 解 釈 を不 可 欠 と して い る こ と を指 摘 して お き た い 。 b.格 差 原 理 と ジ ェ ン ダ ー 論 そ して 、格 差 原 理 が ジ ェ ソ ダ ー論 、 マ イ ノ リテ ィ問 題 、高 齢 化 社 会 の福 祉 問題 、 な ど の現 実 的 な諸 問 題 に ア プ ロ ー チす る際 に有 効 な視 点 を提 供 す る と認 識 され る よ うに な っ た 。 例 え ば 、 ス ー ザ ソ.J.オ ー キ ソは フ ェ ミニ ス トの 立 場 か ら ロ ール ズ を読 む こ とを 提 唱 し、 始 原 状 態 に お か れ た 人 ぴ と が 「女 性 の 視 点 を と くに考 慮 しな けれ ば な らな い 」 こ と を主 張 す る。(12) 従 来 、 ロー ル ズの 正 義 論 を ジ ェ ソ ダー の視 点 か ら批 判 的 に 分析 した 業 績 は ほ とん どな く、 従 って 、 オ ー キ ソの議 論 の もつ 論 争 的 視 点 は今 後 多 くの 問 題 を 投 げ掛 け る可 能 性 を有 して い る。 ま た 、 オ ー キ ソ の指i摘で 有 益 と思 わ れ るの は、 ロー ル ズ の 『正 義 論 』 で 最 も基 本 的 な 「基 礎 的 社 会 構 造 」 に関 わ る部 分 で あ る。 オ ー キ ソ に よれ ば 、 ロー ル ズ は 明 らか に 基 礎 構 造 の分 析 に含 ま れ る筈 の 「ジ ェ ソ ダ ー化 され た 社 会 構 造 」、 お よび 「ジ ェ ソ ダー 化 され た家 族 」 の 分 析 を 怠 っ た と指 摘 し て い る。 そ して 、 ジ ェ ソ ダー 化 され た家 族 の 中 で は 、 家 長(家 族 の 代 表 者)が 常 に 男 性 で あ る こ と、 そ して制 度 と して の家 族 の 分 析 が ほ とん どみ られ な い こ とな ど に疑 念 を抱 くの で あ る。 こ う し た オ ー キ ソの 批 判 的 考 察 に は実 は 今 後 の 福 祉 社 会 を構 想 す る場 合 の有 益 な視 点 が含 まれ て い る こと に注 意 す べ き で あ ろ う。 始 原 状 態 に お か れ 自分 が女 で あ る か男 で あ るか を 知 り得 ず 、 自分 が 若 い か老 人 か も知 り得 な い 、 ま た ハ ソデ ィ ・キ ャ ブ を持 つ か否 か も、 自分 が マ イ ノ リテ ィ か ど う か も知 り え ない 、 そ う した 状 態 を考 えれ ば オ ー キ ソの主 張 の 意 図 が理 解 で き る筈 で あ る。 した が って 、 福 祉社 会 を構 想 す る と き 、 ロー ル ズ の格 差 原 理 に基 づ く発 想 を取 り込 む こ と は 有効 な視 点 を提 供 す る とい え よ う。 c.社 会 的 基 本 財 の構 想 ロー ル ズ の社 会 的 基 本 財 とは 、 理 性 的 な 人 間 な らば 他 に何 を 欲 しよ うと も必 ず 欲 す る もの 、 す な わ ち合 理 的 な 人 生 計 画 を 遂 行 す るた め に 必 要 な 資 源 で あ る。 彼 はそ の基 本 財 を 社 会 的 価 値 と位 置 づ け て お り、 「自 由 と機 会 、 所 得 と富 、 そ して 自尊 心 の基 礎 」 が そ れ で あ る。 合 理 的 な 個 人 な らば 狭 い範 囲 の 自 由 よ り広 範 な 自由 を 選 好 す るだ ろ う し、 富 と所 得 に つ い て も な る べ く 多 くの 取 り分 を選 好 す る だ ろ う。 ま た 自尊 心 や 、 自分 自身 に価 値 が あ る とす る感 覚 も生 き る う え で 大 切 な 自信 に つ な が るで あ ろ う。(13)こ れ らの 基 本 財 の 組 み 合 わ せ に よ り自分 の 合 理 的 な 人 生 計 画 を遂 行 す る こ と が 可 能 と な る。 ロー ル ズ は これ らの基 本財 の不 平 等 な 分配 が そ の社 会 の 最 も恵 まれ な い 人 び と の利 益 に な らな い 限 り、 平 等 に分 配 され るべ きで あ る とい う。 彼 の こ う した 発 想 に 問 題 が な い わ け で は な い 。r最 も恵 ま れ ない 人 び と」 を い か に決 定 す る か に つ い て は 、 こ う した決 定 が 恣 意 的 とな ら ざ る を え な い と い う難 点 が あ るの も事 実 で あ る。 しか し、 ロ ー ル ズ は この 点 に 関 して次 の 解 決 を与 え て い る。 「わ れ わ れ が 最 も不 利 な立 場 に あ る代 表 的 個 人 を 識 別 す る こ とが で き る限 り、 そ れ 以 降 は 厚 生 の 序 数 的 判 断 しか 必 要 と しな い 」(14)と 「厚 生 の 個 人 間 比 較 」 の 可 能 性 を 否 定 しな い。 彼 は 、 こ う した個 人 間 比 較 が社 会 的基 本 財 に つ

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い て の 厂期 待 」 の面 か ら可 能 に な る と考 え るの で あ る。 す な わ ち 、「代 表 的 個 人 が 楽 しみ に し て 待 つ こ とが 可 能 な基 本 財 に関 す る 「指 数 」(index)と して 定 義 で き る。」(15)と い う。 熊 谷 尚 夫 は ア ロ ー の 解 釈 に 同 意 を示 しな が ら、 「社 会 的 基 本 財 の バ ス ケ ッ トの 中 に異 質 の財 が 含 ま れ て い る 限 り、 個 人 間 の 比較 の た め に は指 数 問 題 を回 避 で きな い 」(16)と の 解 釈 を 提 示 して い る。 確 か に 、 ロー ル ズ の社 会 的 基 本 財 の構 想 は 、 あ る個 人 が ど の よ うな組 み合 わ せ で 、 どの 財 を 最 も重 視 す るか に よ り、 そ の 個 人 の生 き方 丶 人 生 計 画 が 決 定 され るわ け で あ る。 こ う した ロー ル ズ の 構 想 は 厚 生 経 済 学 が 回 避 し よ う と した ア ポ リ ア、 「効 用 の 個 人 間 比 較 」 の 問 題 を 克 服 す る こ と を 意 図 した も の で あ った 。 厚 生 経 済 学 の潮 流 を み る と効 用 の 個 人 間 比 較 を 回避 す るた め に多 くの 努 力 が払 われ て い る。 例 え ば、 ピグ ー の厚生 経 済 学 は 、全 体 社 会 の効 用 が個 々 人 の 享 受 す る効 用 の 総 和 と して あ らわ せ る とす る功 利 主 義 的 前 提 の 上 に成 り立 って い た 。 しか し、 ロ ビ ン ズ が効 用 の 可 測 性 、 異 個 人 間 の 比 較 可 能 性 を前 提 とす る ピ グー の 厚 生 経 済 学 を 批 判 した こ と で 、効 用 の 可 測 性 を前 提 と しな い 新 厚 生 経 済 学 が次 第 に支 配 的 とな った 。(17)し か し、 パ レー トの 最 適 性 基 準 は 効 用 の個 人 間 比 較 を 回 避 す る こ とに 成 功 した が 、分 配 問 題 を も排 除 す る結 果 と な っ た。 ピ グー の 厚 生 経 済 学 は 富 者 か ら貧者 へ の 所 得 移 転 は 、 貧 者 の 限 界 効 用 の ほ うが富 者 の そ れ よ り高 い とい う理 由 で社 会 の 「経 済 的 厚 生 」 が 増 大 す る と い う命 題 を 提示 して い る。(18)た だ し、 この 命 題 は 「効 用=心 理 的 満 足 」 が測 定 で き る こ と を前 提 と し、 ま た功 利 主 義 的 仮 定 を 前 提 と す る た め 、 ロー ル ズ は そ れ に替 わ り得 る分 配 理 論 を提 示 し よ うと試 み た とい え る。 ロ ー ル ズの 功 利 主 義 批 判 の 主 要 な ポ イ ソ トは 「満 足 の総 計 が 諸 個 人 間 に い か に分 配 され るか を 問 題 とせ ず 」(19)、社 会 全 体 の幸 福 の 総 量 が た と え増 加 して も、 何 人 の幸 福 か が 決 定 され ず 、 社 会 的 弱 者 の 犠 牲 を許 して しま う こ とで あ る とい う。 換 言 す れ ば 、 少 数 者 の 自 由 が侵 害 さ れ て も多 数 者 に大 な る福 利 が 分 配 さ れ れ ば よい とい う解 釈 が引 き出 せ る点 で あ る。 契 約 説 に 依 拠 す る ロ ー ル ズ の正 義 論 は 弱 者 の犠 牲 の上 に築 か れ る社 会 的 幸 福 を 認 め な い。 ロ ール ズ は この よ う な 前 提 に た ち彼 の社 会 的 基 本 財 とい う ア イ デ ィ アを 提 示 した 。 ロ ー ル ズ はK.ア ロー と ハ ー バ ー ドで 共 同 セ ミナ ー を 開 催 して 互 い に活 発 な意 見 交 換 を行 っ. て い る。 ロー ル ズは ア ロー の社 会 的 選 択 理 論 の影 響 を受 け、 独 自の選 択 理論 を 開発 した ので あ っ て 、 分 配 公 正 の 主 要 テ ー マ は 「社 会 シ ス テ ムの 選 択 」(thechoiceofsocialsystem)で あ る と明 言 して い る。(20)し か し、個 人 選 択 の 原 理 を社 会 選 択(集 合選 択)に ま で拡 張 す る社 会 的 厚 生 関 数 も ア ロー の 社 会 的 選 択 の理 論 も元 来 は 功 利 主 義 的 仮 定 に た つ とい う理 由 で ロー ル ズは 拒 否 せ ざ る を得 な か った 。 しか し、 ロ ール ズの 理 論 の有 効 性 に た い して は経 済 学 者 か ら批 判 が 出 され て い る。 4.ロ ール ズ 批 判 論 の 論 点 a.ハ ー サ ニ ー の ロ ー ル ズ 批 判 の 論 点 先 ず 検 討 の 対 象 と す る の は 、J.C.ハ ー サ ニ ー の 個 人 主 義 的 公 準 の 仮 定 に 基 づ く 「公 正 な 社 会 的 厚 生 関 数 」(thejustsocialwelfarefunction)の 発 想 で あ る 。 ハ ー サ ニ ー の 批 判 の 主 要 な 論 点 は 、 ロ ー ル ズ の 始 原 状 態 の も と で 意 思 決 定 ル ー ル と し て 選 択 さ れ る マ キ シ ミ ソ ・ル ー ル が 功 利 主 義 的 な 選 択 ル ー ル と 余 り違 わ な い と い う 点 に あ る 。(21)始 原 状 態 の 中 で の 意 思 決 定 ル ー ル は 、 マ キ シ ミ ソ ・ル ー ル と い う よ り ベ イ ズ 派 意 思 決 定 理 論 の 「期 待 効 用 最 大 化 」 の 原 理 73

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に基 づ くべ きで あ る とい う主 張 で あ る。 ハ ー サ ニ ー に従 え ば 、 あ る個 人 が も し二 つ の 選 択 可 能 な制 度 的 配 置 の 中 で 、 ど ち らか に対 して 「選 好 」 を表 明す る もの とす れ ば 、 彼 は何 を も と に し て選 好 す るだ ろ うか。 い ま、n人 の個 人 か らな る社 会 を想 定 し よ う。 そ して 、 い ま 一 つ の体 制 の も とで 以 下 の状 態 を仮 定 す る。 す な わ ち、 「最 良 の 暮 ら し」、 「次 に 良 い 暮 ら し」、 「最 悪 の 暮 ら し」 の 三 状 態 で あ る。 これ らの状 態 の どれ か が生 ず る確 率 は1/nの 等確 率 で あ る とす る。 ま た二 つ の社 会 状 態 の いず れ か を 選 ぶ とい う場 合 、 意 思 決 定 ル ー ル と して 期 待 効 用 最 大 化 の原 理 に従 う もの と想 定 す る。 この想 定 は ハ ー サ ニ ー の 始 原 状 態 の解 釈 に依 拠 して い る。 彼 の 立 場 か らは 、 あ る個 人 が 社 会 体 制(あ る い は社 会 状 態)を 選 択 す る と き、 彼 は よ り高 い 水 準 の 「平 均 効 用 」(averageutility)を 産 み 出 す 体 制 を選 ぶ とい うの で あ る。 現 実 に は 、 人 び と が 一 方 の体 制 よ り他 方 の体 制 に た い して選 好 を表 明 す る とい う場 合 、 自分 の 社 会 的 位 置 が そ の体 制 の 中 で は ど うな る の か に 関 して か な り明 白 な考 え を もつ と考 え る べ きだ とい うの で あ る。 ハ ー サ ニ ー の モ デ ル で は 、 各 人 は二 つ の 相 異 な る選 好 を持 つ 。す なわ ち、(1)個 人 的 利 害 に高 い ウ エ イ トを賦 与 す る 「個 人 選 好 」 と、(2)平 均 効 用 の原 理 に した が っ て 、 社 会 の す べ て の 成 員 の利 害 に 等 しい 比 重 を与 え よ う とす る 「道 徳 的 選 好 」(moralpreference)で あ る 前 者 は個 人 の 日常 的 な 意 思 決 定 を さ し、 後 者 は 社 会 的 選 好 、 あ る い は 「倫 理 的 選 好 」 を さ して い る。 ロー ル ズの ア プ ロ ー チ が契 約 説 的 伝 統 に た ち道 徳 的 、 倫 理 的理 論 を引 き出 す の に対 して、 ハ ー サ ニ ー は平 均 効 用 の原 理 に基 づ き、 す な わ ち功 利 主 義 に基 づ き、 道 徳 理 論 を引 き出 して い る とい う こ とに な る。 以 上 の ハ ー サ ニ ー の 試 み か ら我 々 は、 従 来 の功 利 主 義 の 伝 統 に立 つ社 会 的 厚 生 関 数 の側 か ら も正 義 原 理 の 導 出 に対 して 独 自の ア プ ロー チ を 開 発 して い る こ と が理 解 で き る。 b.ア ロ ーの ロー ル ズ批 判 K.ア ロー は厚 生 経 済 学 の 立 場 に 依 拠 して 以 下 の批 判 的 検 討 を行 った 。 そ の 内 容 は か な り内 在 的 で あ り、 ロー ル ズ の 方 法論 的 前 提 に鋭 く言 及 して い る。 先 ず ロール ズ の始 原 状 態 の 概 念 が 、 す で に ヴ く ッ ク レイ や ハ ーサ ニ ー の論 文 で言 及 され て お り、 ロ ー ル ズの オ リ ジナ ル で は な い こ とを 指 摘 して い る。 ハ ー サ ニ ー が既 に 功 利 主 義 に契 約 説 的基 盤 を付 与 す る た め に 始 原 状 態 の概 念 を 使 用 して い た こ と、 また 始 原 状 態 の も とで の 人 び との 行 動 戦 略 が 「期 待 効 用 最 大 化 」 の原 理 に 従 う とす る主 張 に ア ロー は 同意 を 表 明 して い る。 始 原 状 態 の も とで 人 び と は 財 の 代 替 的 な 何 通 りか の配 分 の 中 か ら選 択 しな け れ ば な らな い 場 合 、 ロー ル ズ の い うマ キ シ ミソ ・ル ー ル に 従 う よ り、 各 人 は 自分 の期 待 を最 大 化 す る こ とを 望 む と ハ ー サ ニ ー と同 じ立 場 に 立 つ 。 ア ロー は始 原 状 態 の も とで は 危 機 的 状 態 を予 想 し、危 険 回避 の 極 端 な形 と して起 こ り得 る最 悪 の 状 態 に 関心 を もつ の は 当 然 と い う。 ア ロー に よれ ば 、 ヴ ィ ック レイ もハ ー サ ニ ー も当 然 、 効 用 が既 に危 険 回避 を反 映 す る よ うに 測 定 され て い る と考 慮 す べ き こ とを 主 張 し、 ロー ル ズ に 組 み しな い。 不 確 実 性 の も とで 人 び と が い か に行 動 す る か に つ い て は 、危 険 な 状 態 が 生 ず る確 率 の 問 題 と して 処 理 す るF.H.ナ イ トの考 え方 、 お よび 不 確 性 の も とで の 合 理 的 意 思 決 定 の戦 略 と して 古 くか らA.ウ オ ル ドに よ っ て展 開 さ れ た マ キ シ ミソ戦 略 の考 え 方 が あ っ た。(22)ま た 、 ア ロ ー は マ キ シマ ム効 用 と ミニ マ ム効 用 の 関 数 に基 づ く独 自の 考 え方 を 公 理 と して提 起 して い る こ と も付 言 して お か ね ば な らな い 。

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さ らに、 ア ロー は ロー ル ズの マ キ シ ミソ基 準 も個 人 間 比 較 を含 ん で い る こ と を指 摘 して い る。 「つ ま り最 も恵 ま れ て い な い 個 人 を選 び 出 し、個 人Aは 個 人Bよ り裕 福 で な い とい う形 の 言 い 表 しを 必要 とす る」(23)と 指 摘 す る。 要 す るに 、 社 会 的 基 本 財 につ い て の 「基 礎 的 な 数 量 的尺 度 が な く、 個 人 間 比 較 の 実 践 的 意 味 は 何 か とい う疑 問 が依 然 と して 残 る」(24)と ロー ル ズ に 疑 問 を呈 す る。 ア ロー の疑 問 は更 に続 く。 ロ ー ル ズ は 「効 用 」 と い う タ ー ム の使 用 は拒 否 す るが 、 に も か か わ らず 、 す べ て の人 が 同一 の 効 用 関 数 を も つ と仮 定 して い る よ うに 見 え 、 ま た 無 意 識 に序 数 的 立 場 を受 け 入 れ て い る と指 摘 す る。 とい う こ とは ロ ー ル ズの 社 会 的基 本 財 の発 想 が 個 人 間 比 較 を 前 提 に して い る と解 釈 す べ きで あ ろ うか 。 例 え ば 、 あ る個 人 は水 と大 豆 粉 で満 足 して い るが 、 他 の 個 人 は赤 ぶ ど う酒 と ち ど りの卵 な しに は絶 望 的 に な る と い う事 実 は 、個 人 間 比 較 と は 関 係 な い と ア ロー は 主 張 す る。 ア ロ ー は年 間4千 ドル の 凝 血 療 法 を必 要 とす る血 友 病 患 者 を例 に と り同 額 の所 得 が 平 等 を意 味 す る か と疑 問 を 投 げ掛 け 、 基 本 財 の リス トに健 康 を付 け 加 え る必 要 が あ る とい うの で あ る。 確 か に、 ロ ー ル ズ の基 本 財 の リス トの な か で ど の基 本 財 を重 視 す るか は個 人 の生 き方 、 人 生 観 を反 映 す る だ ろ う。 だ が基 本 財 の リス トに健 康 を付 加 す れ ば い い か と い え ば 、 健 康 と所 得 の トレー ド関 係 が 問題 と な り、基 本 財 の リス トを 増 や せ ば 問 題 解 決 に つ な が る と い う もの で も な い。 従 って 、 ア ロー は以 下 の コ メ ソ トを提 示 す る。(25) (1)基 本 財 が 一 つ 以 上 あ る限 り、 さ ま ざ ま な財 の釣 り合 い を図 る うえ で の指 数 問題 が 残 る。 この 問 題 は個 人 間 の 比較 可 能 性 の 問 題 と 同様 に難 しい 問 題 で あ る。 (2)ロ ー ル ズ体 系 に お け る個 人 間 比 較 の 問 題 を 、 す べ て を単 一 の基 本 財 に還 元 す る こ と に よ っ て解 決 し うる な らば 、 私 た ち は 「効 用 一和 」 ア プ ロ ー チ に お いて も同様 な こ とが い え る。 こ う した 論 点 は 、 契 約 説 と 自然 権 に依 拠 して 立 論 を企 て る ロー ル ズ と、 従 来 の功 利 主 義 的仮 定 の 上 で 効 用 原 理 を 放 棄 しな い ア ロ ー と の 決 定 的 な相 違 とい え るか も しれ な い。 cセ ンの ロ ー ル ズ批 判 A.セ ソ は彼 の論 文 「何 の た め の 平 等 か?」(26)で 、(a)功 利 主 義 的 平 等 、(b)総 効 用 の 平 等 、(c)ロ ー ル ズ的 平 等 、 の 三 種 類 に分 類 して い る。 そ して 、 この いず れ もが 深 刻 な 限 界 を もつ と指 摘 し、 セ ソ 自身 の 一 つ の定 式 化 で あ る 「潜 在 能 力 の 平 等 」 と い う考 え方 を提 示 す る。 セ ソは 功 利 主 義 の平 等 論 が ロー ル ズ の指 摘 した よ う に限 界 を 有 す る こ と を認 め る。 そ して ハ ー サ ニ ー らの 功 利 主 義 の 平 等 論 を批 判 の 俎 上 に の せ る。 即 ち 、 「効 用 が重 要 度 の 唯 一 の基 礎 で あ る と認 め た と して も、 あ る 人 が 享 受 して い る効 用 の総 量 と関 係 な く決 め られ る 限界 効 用 の 大 き さ が 道 徳 的 重 要 度 の 指 標 と して 適 切 な もの で あ る か ど うか は 、 依 然 と して 問 題 に な る。」(27) と 、 限 界 効 用 を道 徳 的 重 要 度 と結 び付 け 、 平 等 を 限 界 効 用 の 平 等 と位 置 付 け る発 想 に セ ソは 同 意 しな い 。 また 、 セ ソ は 「総 効 用 の集 計 値 が僅 か で も増 加 し さえ す れ ば 、 そ の こ との 方 が 分配 の は な は だ しい 不平 等 よ り も重 要 視 され て しま う」 と 、 ロー ル ズ が繰 り返 し指 摘 して きた 功利 主 義 批 判 に 同調 す る。 要 す る に 、功 利 主 義 に と って 平 等 と は 、 人 々 の総 効 用 を 完 全 に平 等 にす る こ とに 他 な らず 、 ま た そ の た め に は 人 び と が 同 一 の 効 用 関数 を もつ と想 定 せ ざ る を え な い の で あ る。 セ ソは 、 こ う した 功 利 主 義 や 効 用 主 義 の 発 想 に は 、 人 間 存 在 に つ い て の認 識 に 致 命 的 な 欠 陥 が あ る と見 て い る 。 そ れ は 、 人 間 そ れ ぞ れ が 有 す る 「根 本 的 な 多 様 性 」(fundamental 75

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diversity)に つ い て の認 識 に 関 わ る もの で あ る と言 え よ う。 こ う した 人 間 の 多様 性 や個 性 に つ い て 何 ら か の認 識 が な け れ ば 福 祉 社 会 の 構 想 は 極 め て 非 人 間 的 た ら ざ る を得 な い 。 セ ソは 「現 代 の政 治 哲 学 と倫 理 学 の 根 底 的 な再 生 が可 能 に な った の は 、 ロ ー ル ズ の 射 程 距 離 の長 い理 論 の お か げ に よ る と こ ろ が多 い 」!28)と 評 価 す る。 セ ソの ロー ル ズ 評価 の 核 心 に あ る の は 、 ロー ル ズ の 「自 由 の優 先 原 理 」 の位 置 付 け と解 釈 に あ る と言 っ て も過 言 で は な い 。 セ ソ の ロー ル ズへ の関 心 は ま さ し く 「格 差 原 理 」 に あ る の だ。 セ ソは 格 差 原 理 を つ ぎ の よ うに 言 い 換 え て 見 せ る。 す な わ ち 、 「不 平 等 の 許 容 範 囲 を考 察 す る彼[ロ ー ル ズ]の 目 は、 効 用 の 分 配 に で は無 く、 基 本 財 の分 配 状 態 に 向 け られ て い る。 人 び とが 個 々 そ れ ぞ れ の 目標 を 自 由 に追 及 す る の を助 け て くれ る手段 、 例 えば 所 得 、富 、 自由 な ど、 そ れ が基 本 財 な の で あ る。 しか し なが ら、基 本 財 の 保 有 量 を個 人 間 で比 較 す る こ と と、 各 人 が 実 際 に 享 受 して い る 自 由 を比 較 す る こ と 、 こ の二 つ の間 に密 接 なつ な が りが あ り う る こ と は否 定 で きな い け れ ど も、 両 者 が 同一 の 作 業 で あ る とは 言 え な い。」(29)と。 セ ソは 具 体 的 例 と して 、障 害 者 の 事 例 を 取 り上 げ 、 「基 本 財 を平 等 に保 有 して い て も、 おそ ら く身 体 に障 害 を もつ 人 び と は 自分 た ち の善 き生 を 求 め う る 自 由 を健 常 者 の よ うに味 わ うこ と が で き な い。」 と指 摘 す る。(30)セ ソに と って は ロ ー ル ズの 基 本 財 の リス トの 中 に位 置 付 け ら れ た 「自由財 」、 と りわ け 「自由 の保 有 量 」 こ そ最 大 の 関 心 事 で あ っ た。 福 祉 社 会 の 構 想 に と っ て こ う した セ ソの 関 心 が い か に重 要 で あ るか に つ い て は説 明 の 必 要 は あ る まい 。 彼 は 、 「基 本 的 潜 在 能 力 」(basiccapabilities)と い う概 念 を提:示 して 、 ロ ー ル ズの 「基 本 財 」 の 構 想 の も つ 欠 陥 を 補 完 す る こ とを 意 図 して い る。 厂基 本 的 潜 在 能 力」 と は共 同 体 の社 会 生 活 に参 加 す る 権 能 、 栄 養 補 給 の必 要 量 を摂 取 す る能 力 、 身 障 者 の 例 で は身 体 を動 か して 移 動 す る能 力 、 な ど の 基 本 的 な 能 力 を さす 。 セ ソに よれ ば ロー ル ズ の基 本 財 の 発 想 が 「財 に か かず ら う とい う物 神 崇 拝 の 欠 陥 」 を背 負 っ て い る結 果 、 基 本 財 が 人 間 に対 して 何 を な し う るの か、 と い う観 点 に つ い て は 分 析 が 弱 い と考 え る。 ロー ル ズ に と り基 本 財 は 「善 き もの」 で あ る。 従 っ て 、 自分 の人 生 計 画 に必 要 な 「基 本 財 の 組 み 合 わ せ 」 とい っ た発 想 が 容 易 に そ こか ら引 き 出せ る とい う。 だ が 、 多 量 の財 が あ れ ば 幸 せ に な れ る の か とい う疑 問 が 生 ず る し、総 効 用 で 満 足 を計 るの か 限 界 効 用 で 計 る の か 、 あ る い は指 標 で な の か も明 ら かで は な い と疑 義 を 提 示 す る。 確 か に 、 自 由財 が 最 も重 要 な基 本 財 で あ る と して もそ の財 か ら何 を う る こ と が可 能 な の か は不 明瞭 で あ る。 ま た 所 得 財 と 自由財 の 関 係 に つ い て も分 析 の 余地 が あ る よ うに思 わ れ る。 セ ソは 「ニ ー ズを 基 本 的潜 在 能 力 とい う形 で 解 釈 す る こ と」(31)と 自 らの 提 案 に 対 して 自信 を表 明 して い る が、 必 ず し も説 得 力 が あ る よ う に も思 わ れ な い ので あ る。 現 在 の と こ ろ、 ロー ル ズ の理 論 も、 セ ソの 理 論 も決 して 完 璧 な も ので は な い 。 しか し、 従 来 の 理 論 的成 果 に何 らか の 貢 献 を プ ラ ス した こ と は認 め な け れ ば な ら な い。 5.む す び に か え て み て きた よ うに 、 ロール ズ の格 差 原 理 や マ キ シ ミ ソ原 理 、社 会 的 基 本 財 の概 念 は経 済 学 者 に よ っ て批 判 さ れ 、 同 意 を え られ な か っ た。 社 会 学 者 のR.コ リソ ズ に よれ ば 、 ロー ル ズ理 論 の欠 陥 は 厂人 間 の 推 論 が 実 際 に どの よ うに な され る の か 、 と い うこ と に関 す る ネ オ合 理 主 義 者 の モ デ ル を

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無 視 して い る こ と(32)」だ と い う。 彼 の指 摘 で重 要 な の は、 これ まで マ イ ノ リテ ィに対 す る 「差 別 撤 廃 措 置 」 や 、 恵 ま れ な い 人 び と に対 す る 「補 償 」 が共 感 を え られ た 時期 が あ った に しろ 、 そ れ が ロ7・ル ズ の 描 い た よ う な種 類 の 「推 論 」 に導 か れ て お こ な わ れ た の で は な く愛 他 主 義 の社 会 運 動 や 、 自 らが お か れ た立 場 が恵 まれ ない 階 層 で あ っ た り した た め で あ った だ け とす る指 摘 で あ る。 しか し、福 祉 社 会 や福 祉 国 家 を 構 想 しよ う とす れ ば 、実 は ロ ー ル ズ 的推 論 を全 く根 拠 の ない も の と して 避 け る こ と が で き る だ ろ うか 。 こ の点 が 今 後 も多 くの 論 議 を 呼 ぶ こ とだ ろ う。 本 稿 の 課 題 は 、 ロ ー ル ズ の 正 義 論 を 手 掛 か りに 「福 祉 社 会 」 を基 礎 付 け る重 要 な 要 素 と して の 「平 等 」、 「正 義 」 に つ い て考 察 し、 次 に ロー ル ズ 的 要 請 を 福 祉 計 画 、 福 祉 政 策 の 構 想 に ど の よ うに生 か して い くか を課 題 とす る もの で あ っ た。 高齢 化 社 会 の 到 来 が世 代 間 の公 正 、 お よ び恵 ま れ た 階 層 と恵 ま れ ぬ 階 層 との 間 の格 差 が もた らす 不 平 等 問 題 や 貧 困 問 題 を われ わ れ に 突 き付 け て い る こ とに 異 論 は無 い 筈 で あ る。 こ う した 問 題 に対 して ロー ル ズの 格 差 原 理 が い か な る役 割 を果 た し う る か が最 大 の検 討 課 題 で あ った 。 ま た セ ソの 提 起 した 潜 在 的 機 能 や 、 多 様 な人 間 的 機 能 (humanfunctioning)の 概 念 に つ い て 再 検 討 す る こ と が 今 後 の 課 題 と して 残 さ れ る。 別 稿 を 待 ち た い。 「本稿 を恩師 であ る高橋 徹教授 の最愛 の伴侶 であ る故高橋 葉子令夫人 に捧 げ る。」 [注] (1)例 え ば 、 金 子 勝 『市 場 と 制 度 の 政 治 経 済 学 』 東 京 大 学 出 版 会 、1997. (2)S.M酬&A.S㎡1,Li翻s&㏄ ㎜ 皿 梱 ㎝s,B1㏄ ㎞1,1嬲.S㎝de1,M.J.,Liber訓ism andtheLimitsofJustice,CambridgeU.P.,1982.M.J.Sandel,Libera-lismand theLimitsofJustice,Cambri-dgeU.P.,1982. (3)D.L.Phillips,TowardAJustSocialOrder,PrincetonU.P.,1986。 (4)R.Bellah,HabitsoftheHeart,U。ofCaliforniaPress,1985.島 薗 進 、 中 村 圭 志 共 訳 『 心 の 習 慣 』 み す ず 書 房 、1991. (5)J.L.CQhenandA.Arato,CivilSocietyandPoliticalTheory,TheMITPress, 1994. (6)J.Rawls,ATheoryofJustice,HarvardU.P.,1971.P.ユ2. (7)J.Rawls,ibid.,P.60. (8)J.Rawls,"DistributiveJUstice,"inP.LaslettandW.G.Runciman(eds).Philosophy,Politics andSociety,1967.青 木 昌 彦 『 ラ デ ィ カ ル ・ エ コ ノ ミ ッ ク ス 』 『中 央 公 論 社 、1973、 300頁. (9) ,J.Rawls,ATheoryofJustice,P.74. (10)宮 沢 俊 義 「人 権 宣 言 概 説 」、 『人 権 宣 言 集 』(高 木 尺 八 ほ か 編)岩 波 文 庫 、1957、20頁. (U)K.J.Arrow,SomeOrdinalist-UtilitarianNotesonRawlssTheoryofJustice,J.of Philosophy,70,1973.K.J.ア ロ ー 「 ロ ー ル ズ の 公 正 原 理 一 序 数 論 的 功 利 主 義 の 立 場 か ら 一 」 『季 刊 現 代 経 済 』12、1974、 日 本 経 済 新 聞 社 、156頁. (12)S.M.Okin,Justice,Gender,andtheFamily,BasicBooks,1989,PP.89-109.高 橋 久 一 郎 訳 「公 正 と し て の 正 義 一 誰 の た め?」 『現 代 思 想 』1994、4月 号 、pp.156、71. (13)J.Rawls,ATheoryofJustice,P.440. 77

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(14)∫.Rawls、ibid.,p.91. (15)J.・Rawls,ibid.,P.93. (16)熊 谷 尚 夫.『 厚 生 経 済 学 』 創 文 社 、.1978、334頁. (17)清 水 幾 太 郎r倫 理 学 ノ ー ト』 岩 波 書 店 、1974、50-62頁. (18)A.G.ピ グ ー(永 田 清 監 訳)『 厚 生 経 済 学(1)』 東 洋 経 済 新 報 社 、1975、111頁. (19)J.Rawls,ibid.,P.26二 (20)J.Rawls》ibid.,P.247. (21)J.C.Harsanyi,"CantheMakiminPrincibleServeas.aBasisforMorality?A CritiqueofJohnRawlsTheory,"AmericanPoliticalScienceReview ,June 1975,69,pp.594-606. (22)(23)(24)(25):K.J.ア ロ ー 、 前 掲 訳 書 、159-162頁. (26)A,Sen,EqualityofWhat?,inChoice,WelfareandMeasurement,byA.Sen,198 2,p.353.(original!ypublishedinTheTurnerLecturesonHumanValues,vol. 1,byU.ofUtahandCambridgeU.P.,1980.A.セ ソ(大 庭 健 、 川 本 隆 史 共 訳)『 合 理 的 愚 か 者 』 勁 草 書 房 、22』5頁. (27)A.Sen,ibid.,p.142.邦 訳228頁. (28)A.セ ン(川 本 隆 史 訳)「 社 会 的 コ ミ ッ ト メ ソ ト と し て の 個 人 の 自 由 」『み す ず 』、1991年 、1 月 号 、78頁. (29)A.セ ソ 、 同 訳 書 、78頁. (30)A.セ ソ 、 同 訳 書 、78二79頁.. (31)A.セ ソ 『合 理 的 愚 か 者 』、254頁. (32)R.コ リ ソ ズ 、 友 枝 敏 雄 編 訳 『社 会 学 の 歴 史 』 有 斐 閣 、1997、177-179頁 。 [参 考:文 献] Atokinson,A・B.,SocialJdsticeandPublicPolicy,TheMITPress,1983. Gordon,S.,Welfare,知stice,andFreedom,ColulnbiaU.P.,1980. 川 本 隆 史 『現 代 倫 理 学 の 冒 険 』 創 文 社 、1995. Martin,Rex.,RawlsandRight,U.P.ofKansas 、ゴ1985. Muller,D.C.,PublicChoiceII、CambridgeU.P.,1989. Rawls,J.,PoliticalLiberalism,ColulnbiaU.P.,1993.

参照

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