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<総説>変異導入マウスを用いた家族性アミロイドポリニューロパチーの発症機構の解析 利用統計を見る

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山梨医大誌!3(4),!07∼115,ユ998

変異導入マウスを用いた家族性アミロイド

ポリニューロパチーの発症機構の解析

   前 田 秀一郎 由梨医科大学医学部生化学第一講座 抄録:常染色体性優性の遺伝性神経難病,家族性アミロイドポリニューロパチーの主因は血清蛋 白質トランスサイレチン遺伝子の点変異だが,発症時期の違いに環境因子や他の蛋白質などが関与 すると考えられる。筆者らは,発生工学的手法を用いて,EAPの疾患モデルマウスや発症に関与す ると考えられる蛋白質を欠損したマウスを作製し,FAPの発症機構の解析を進め,治療法の開発を 目指している。本稿では,このような研究結果を紹介する。 キーワード トランスジェニックマウス,遺伝子ターゲッティング,家族性アミロイドポリニュー ロパチー,トランスサイレチン,血清アミロイドP成分 1.はじめに

 家族性アミロイドポリニューロパチー

(Familial Amy】oidotic Polyneuropathy;FAP)は, 中枢神経の実質を除く全身臓器にアミロイド沈 着をきたす常染色体性優性の遺伝性アミロイド ーシスである。アミロイドーシスとは,βシー ト構造をとる特異な線維蛋白質であるアミロイ ドが全身の臓器,組織の細胞外に沈着し,それ に伴って機能障害をきたす疾患群の総称であ る。アミロイド(類澱粉)という名称は,!854 年にRudoiph Virchowによって初めて用いら れた。現在では,アミロイドの主要成分は線維 蛋白質で,これに微量成分の血清アミロイドP 成分(serum am>・bid P componeat;SAP)や細 胞外マトリックス成分であるグリコサミノグリ カン等が結合していることが知られている。ア ミロイド命名の基となったアミロイドが呈する 〒409−3898 山梨県中巨摩郡玉穂町下河東1110 受イ寸:!998年!O月7日 受理:!998年10月7日 ヨード澱粉反応は,グリコサミノグリカンによ る。病理組織学的には,全てのアミロイドはヘ マトキシリン・エオシン染色でエオシンに淡染 し,コンゴー赤染色で榿赤色に一様に染まる。 また,コンゴー赤染色標本を偏光顕微鏡下で観 察すると緑色に強く輝く複屈折を呈する。電子       む 顕微鏡では,直径約75∼150A,長さは様々な 枝分かれのない線維構造として観察される。近 年,形態学的に同一にみえるこれらアミロイド の生化学的解析により,疾患によって,種々の 異なる蛋白質がアミロイドを形成して沈着する ことが明らかとなった。現在,アミロイドーシ スは,沈着するアミロイドの主要蛋白質成分に 基づいて分類されている。表!には,厚生省特 定疾患調査研究班によるアミロイドーシスの分 類に若干数の疾患を補足したものを掲載した。 今後も新たにアミロイド蛋白質が発見される可 能性があり,それに伴って,アミロイドーシス に分類される疾患数が増加していくものと予想 される。  1952年にポルトガル人のFAP症例が初めて

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108 前 田 秀一郎 報告されて以来,世界各国から同様の症例報告 がなされた。今日では,FAPは,臨床像から4 型に大別されており(表1),わが国のFAPは ポルトガル人やスウェーデン同型FAPととも に第1型に分類される。この第1型は世界で最 も症例数が多く,発症年齢は,ポルトガル人と EI本人は多くは30∼40歳台,スウェーデン人 は平均56歳で必ずしも一様ではない。日本で は,熊本県や長野県に患者の集積家系が見出さ れている。主要症状は,左右対称性に下肢末端 から上行する知覚障害優位の多発性神経炎と自 律:神経障害(交代性の下痢と便秘,発汗障害, 起立性低血圧,陰萎,排尿障害など)で,これ に全身のやせ,心伝導障害などが加わり,数年 ∼十数年を経て,心不全,尿毒症,肺炎などで 死亡する予後不良な疾患である。  !978年にFAPのアミロイドは血清タンパク 質,トランスサイレチン(transthyreti!】;TTR) から成ることが免疫学的に示されてからb,ア ミロイドの生化学的研究が進展し,日本人,ス 表! アミロイドーシスの分類(厚生省特定疾患調査研究班平成7年度新分類に基づき,∼部改変) アミロイドーシスの病型 1全身性アミロイドーシス  1.免疫グロブリン性アミロイドーシス   (多発性骨髄腫の有無を記載する)   !)ALアミロイドーシス 2)AHアミロイドーシス 2.反応性AAアミロイドーシス  (基礎疾患がある場合は記載する) 3.家族性アミロイドーシス  1)FAP I  2)EAP II  3)FAP m  4)FAp r▽  5)家族性地中海熱(FMF)  6)Muckie.Wells症候群  7)家族性非神経障害性全身性   アミロイドーシス  8)家族性腎アミロイドーシス 4.透析アミロイド∼シス 5.老人性TTRアミロイドーシス アミロイド線維蛋白  前駆体蛋白

AL

AH

ATTR

ATTR

AApoAI AGel

AA

AA

ALys AFil) Aβ2M

ATTR

免疫グロブリンL鎖 (κ,λ) 免疫グロブリンH鎖     IgG!(扱〉 アポSAA トランスサイレチン トランスサイレチン アポA三 ゲルソリン アポSAA アポSAA リゾチーム フィブリノーゲンα鎖 β2一ミクログロブリン トランスサイレチン II.限局性アミロイドーーシス  !.脳アミロイドーシス   1)アルツハイマー病      Aβ    (ダウン症候群)   2)脳血管アミロイドーシス       Aβ   3)遺伝性アミロイド性脳出血      Aβ    (オランダ型)   4)遺伝性アミロイド性脳出血      ACys    (アイスランド型)   5)クロイツフェルト・ヤコブ病    ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群  2.内分泌アミロイドーシス   !)甲状腺髄様癌      ACal   2>II型糖尿病・インスリノーマ      AIAPP   3)限局性心房性アミロイド       AANF  4)下垂体プロラクチノース  5)医原性限局性アミロイドーシス 3.皮膚アミロイドーシス 4.限局性結節性アミロイドーシス ASCr (A PrP・り APro Alns

AD

AL β前駆体蛋白 β前駆体蛋白 β前馬区イ本蛋白 シスタチンC スクレイピ∼前駆体蛋白 (プリオン) (プロ)カルシトニン IAPP (アミリン) 心房ナトリウム利尿 ペプチド フロフクチン インスリン ケラチン? L鎖(κ,λ)

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遺伝性アミロイドーシス発症の分子機構 !09 ウェーデン人,ポルトガル人の第1型FAPで沈 着するアミロイドは,30番目のバリンがメチ オニンに置換した異型TTRであることが明ら かとなった。そこで,筆者らは,TTRcDNAを 単離し2>,FAPの病因は,μγ遺伝子上のVa 130 −Met変異であることを見出した3)。しかし, 伽遺伝子の同一変異に起因しても,発症年齢 は,ポルトガル人と日本人の多くは30∼40歳 台,スウェーデン人は平均56歳で必ずしも一 様ではない。また,同一家系内でも,個人によ って発症年齢に20∼30年にわたる違いがある 例がしばしば見出されている。さらに,スウェ ーデンのFAP家系の人々がアメリカ合衆国に 移住して,数世代を経ると早く発症する傾向が 認められている。これらのことから,発症には, 主因となる醗遺伝子変異のほかに,環境因子 や他の蛋白質が関与することが予想される。現 在,FAPの治療法として, TTRの主要産生臓 器である患者の肝を切除し,正常肝を移植する 方法が行なわれている。肝移植により症状の進 行を止めることができ,現在,唯一の有効な治 療法である。しかし,肝移植後に神経障害がど れほど改善するかについては,今後,長期に亘 る検討が必要と考えられる。また,TTRは肝 の他,脳の脈絡叢や眼の網膜などで合成される ことから,肝移植後に硝子体にアミロイドが沈 着し,視力障害をきたす場合があること,移植 のためのドナーの確保が難しく,多大の費用を 要することなど問題点も多い。FAPの治療法や 発症を遅らせる手だてを開発するためには,実 験操作の容易なマウスで疾患モデルを作り,発 症に関与する因子を明らかにすることが必要と 考えられる。現在,特定の変異遣伝子を運ぶ遺 伝病の疾患モデルマウスを作製するには,以下 の二通りの方法が用いられる。

八受精卵へのDNAのマイクロインジェク

  ションによるトランスジェニックマウス   の作製法  この方法では,導入したい遺伝子DNAをマ ウス受精卵の雄性前核にマイクロマニピュレー ターをセットした倒立顕微鏡を用いて注入し, その受精卵を不妊手術をした雄と交尾した偽妊 娠雌マウス(仮親)の卵管に移入し,仔マウス を発生させる。仮親は,受精卵を採取するマウ スと同じ日に交尾したものを用いる。得られた 仔マウスの尻尾の先端部を切断し,DNAを抽 出して,注入した遺伝子DNAを染色体に組み 込んだトランスジェニックマウスを選択する。 外来遺伝子は,生殖細胞を通して子孫へと伝達 され,何世代にもわたって解析に利用すること ができる。この方法で外来遺伝子が組み込まれ る場合には,複数コピーが直列につながって染 色二上のどこか1箇所に組み込まれることが多 い。外来遺伝子がマウス染色体のどこに組み込 まれるかは,前もって予想できず,この方法に よって得られたトランスジェニックマウスの 5%以上に,外来遺伝子による挿入突然変異が 認められると報告されている。以上から明らか なように,この方法では外来遺伝子に対応する マウス内在性の一対の正常遺伝子が存在するた め,一般に,優性遺伝病の疾患モデルを作製す ることはできるが,劣性遺伝病のモデルをつく ることはi難iしい。  B.マウス胚幹細胞での遺伝子ターゲッティ    ングを用いる方法  胚幹(ES;embryonlc stem)細胞は,胚盤胞 期にある初期胚の内部細胞塊に由来し,種々の 体細胞にも生殖細胞にもなることが可能な未分 化状態を保ったまま培養増殖できる。ES細胞 を,胚盤胞期のマウス正常胚に注入すると,内 部細胞塊の一部となって,個体まで発生し,注 入された胚とES細胞との2種類の細胞からな るキメラマウスが誕生する。この際,ES細胞 が生殖細胞に分化すれば,キメラマウスと他の マウスとの交配によって,ES細胞の遺伝子型 を子孫に伝えることができる。そこで,遺伝子 ターゲッティング法を用いて,培養ES細胞の 特定遺伝子に変異を導入し,正常胚に注入する と,目的の遺伝子変異をもつキメラマウス,さ らにトランスジェニックマウスを得ることがで

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1!0 前 田 秀一郎 きる。この方法では,マウス内在性の正常遺伝 子に病因遺伝子変異を導入するため,優性,劣 性いずれの遺伝病のモデルマウスもつくること が可能である。  FAPは,常染色体性優性の遺伝性疾患である。 そこで筆者らは,FAPの病因となるヒト変異 伽遺伝子をマウス受精卵に導入し,ヒト変異 欝遺伝子を運ぶトランスジェニックマウスを 作製した。このトランスジェニックマウスでは, FAP剖検例と同様の種々の組織で,ヒトTTR から成るアミロイドが沈着した。この疾患モデ ルマウスは,FAPにおけるアミロイドの沈着機 構の解析や沈着を遅らせる手だての開発に有用 と考えられる。しかし,このマウスでは,内在 性の一対の艀遺伝子の機能は正常のままで, 恥Pに特徴的な末梢神経へのアミロイド沈着は 見出せず,神経障害も認められなかった轍。 そこで筆者らは,遺伝子ターゲッティング法を 用いて,よりFAPに近似、した疾患モデルマウ ス株や特定の遺伝子に目的の変異をもつマウス 株を作製し,これらマウスを用いて神経障害を 含めたFAPの発症機構を明らかにし,治療法 を確立することを目指して,研究を遂行してい る。本稿では,筆者らのこのような研究を報告 する。 皿.無TTRマウス株の作製  TTRは肝の他,脳の脈絡叢や眼の網膜など 神経に関連の深い組織で多量に合成されること から,神経系で重要な役割を果たしている可能 性がある。そこで,TTRの機能を明らかにし, FAPの発症機構の解明に役立てることを目的 に,遺伝子ターゲッティング法を用いて,マウ ス胚;幹(ES)細胞の艀遺伝子に挿入変異を導 入し,TTRを完全に欠損した無TTRマウス株 を作製した。この結果,予期に反して,TTR を完全に欠損しても,形態形成や神経系に何ら 異常をきたさないことが明らかとなった。TTR は,127アミノ酸残基から成る単量体が重合し た四量体として血中に存在し,甲状腺ホルモン やレチノールを運搬する。これら無TTRマウ スでは,血中の甲状腺ホルモン・チロキシンは 正常量の約3分の1に低下し,血中レチノール は,6%に低下していた。しかし,無TTRマ ウスは甲状腺ホルモンやレチノールの欠乏症状 を示さない9>。これは,微量で生理活性の高い 遊離型の甲状腺ホルモンの血中量は,無TTR マウスと対照野生型マウスとで差異がなくlo), また,無TTRマウスの種々の臓器中に貯蔵さ れているレチノール量も正常で,微量で生理活 性の高い全トランスーレチノイン酸の血中量は 対照野生型マウスの約2.3倍に増加しているた めであるll>。今後の解析で,無TTRマウスが 健康に異常を来さないと確認できれば,FAPの 発症を予防したり,アミロイドの沈着時期を遅 らせる手だてとして,血中の全TrRを除去す る方法の検討が必要となるであろう。また,疾 患モデルマウスの肝にアンティセンスTTRmR−

NAを産生させ,血中TTRを低語に保つこと

で発症が予防できるかどうかを検討することも 可能である。また,この無TTRマウスにFAP の原因となるヒト変異伽遺伝子を導入すれば, ヒト変異TTRのみを産生するホモ接合体FAP 症例のモデルマウスを作製することが可能と考 えられる。これらマウスと,内在性のマウス TTR.とヒト異型TTRの双方を産生する対照モ デルマウスのアミロイド沈着を比較すれば,内 在性のマウス正常TTRがヒト異型TTRから成 るアミロイドの沈着にどう影響するかを明らか にできるであろう。また,このマウスは,ヒト 異型TTRの構造や機能を調べる上で有用と考 えられる。そこで,以下のように実験を進め た。 皿.FAPホモ接合体症例に近似した疾患モデ   ルマウスの作製  遺伝子ターゲッティング法で作製した無 TTRマウスと本来の5’上流領域6kbを含むヒ ト変異艀遺伝子を運ぶFAPのトランスジェニ ックマウスモデルとの交配により,マウス正常

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遺伝性アミロイドーシス発症の分子機構 l!! TTRを完全に欠損し, FAPの病因となるヒト 異型TTRのみを産生するマウス株を確立した。 これらトランスジェニックマウス血清中の TTR量は,ほぼヒト血清中のTTR量に等しか った。これらマウスでは,月齢!!カ月頃から 消化管を中心にアミロイドが沈着し始め,月齢 を増すにつれ,沈着臓器の拡大傾向が見出され た。これらマウスと内在性の正常TTRとヒト 異型TTRの双方を産生する同月齢の対照マウ スとについて,長期にわたってアミロイドの沈 着程度や沈着臓器を比較解析したところ,差異 を認めなかった。この結果,マウス内在性の正 常TTRはヒト異型TTRから成るアミロイドの 沈着に影響しないこと,ヒト異型TTRは,チ ロキシンやレチノールを運搬する能力を有する ことなどが明らかとなった12)。しかし,この モデルマウスにも,末梢神経へのアミロイド沈 着が無く,神経障害を認めない。マウス末梢神 経へのアミロイド沈着には,マウスの異型 TTRによるアミロイド形成が必要かもしれな い。そこで,遺伝子型,表現型ともにFAPに より近似した疾患モデルを作製するため,マウ ス内在性の6オγ遺伝子にFAPの病因となる点変 異のみを導入する手法の確立を目指した。特定 の遺伝子に目的の変異のみをもったマウスを任 意に作製することが可能となれば,種々の疾患 モデルマウスを作製することが容易となる。既 に遺伝子ターゲッティング法を用いて,特定の 遺伝子に任意の変異のみを導入する種々の興味 深い方法が報告されている13}19)。しかし,効率 や労力等に関し,改善すべき問題点が残されて いる。そこで,筆者らも独自の方法を試みた (図!)。 lV.マウスのオfr遺伝子にFAPの病因となる点   変異のみを導入するための遺伝子ターゲッ   ティング法の確立  内在性の艀遺伝子にFAPの病因となる点変 異(Va130→Met)のみをもつマウス株の作製 を目指して,先に挿入変異の導入に用いたと同 じ伽遺伝子領域から成る次のような点変異導 入の為の置換ベクターを構築した(図!)。マ ウス伽遺伝子の5’一Hanking region;第!エク ソン〈e1);第1イントロン;目的の点変異 (*)を導入した第2エクソン(e2);第2イ ントロン(i2)の∼部;選択マーカー{ES細

胞で発現するMCプロモーターに接続した

G418耐性遣伝子(neo)及びMCプロモータ

ーに接続した単純ヘルペス放遺伝子(tk)};第 2エクソンの一部門含む第2イントロン;第3 エクソン;第3イントロンの一部をこの順に接 続したもの。この点変異導入用のベクターを取 り込み,G4!8に耐性となったES細胞の中から, 相同DNA間の組換えで変異が導入されたもの をPCR法で選択する。 FAPの原因となる!ア ミノ酸置換の導入のために3塩基を遣換してい るので,変異アレル特異的なPCR法(ASO− PCR法)でスクリーニングが可能である。こ うして選択したG418耐性細胞株のもつ変異艀 遺伝子のイントロン内には,選択用のマーカー 遣伝子が挿入されている。そこで,このマーカ ー遺伝子を欠失させ,点変異部のみが正常遺伝 子と異なる変異遺伝子としたい。この為,マー カーの両端に作製した第2エクソンと第2イン トロンの一部による順向きの繰り返し配列間の 組換えによってマーカー遺伝子を欠失し, GANC又はFIAUに耐性となった細胞を選択す る。そして,選択した細胞がG4!8感受性であ ることを確認する20)。  上記の置換ベクターを取り込んだ約400個の G4!8耐性株をASO−PCR法で調べ,相同DNA 間の組換えで点変異が導入された3個のクロー ンを見出した。これら3個のクローンから選択 した27個のFIAU耐性株の内,2個がマーカー を欠失し,目的の点変異のみをもつクローンで あった。そこで,これら変異ES細胞クローン をC57BL/6のブラストシストに注入し,キメ ラマウスさらに一対の醗遺伝子の一方のアレ ルに点変異が導入されたヘテロ接合体マウス株 を得た。今後,これらヘテロ接合体マウス株を 多数そろえ,月齢をおって,アミロイド沈着の

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112 置換ベクター     前 田 秀一郎    *      neo  tk el e2   i2      (e2》i2(繰り返し》e3 マウス漉 遺伝子領域 変異πア遺伝子     *     el  e2     董2     e3      e4

        1遺伝融融え

       e4  el e2   韮2         (e2)i2(繰り返し)e3 訊●HOP2〈アレル特異的PCRプライマー)G418耐性、

FIAU感受性

      [Va130・Met変異導入のための3塩基置換]       Va韮       一       正常遺伝子    5響・・ACGTGGCTGTAAAAGTG−3’       変異遺伝子     一劇一一一一剛CA国G謹幽一一一一       一       Met       *       neo  tk    el e2  董2        e4(e2>韮2(repeat)e3

  G418耐性、

RAU感受性

       1遺伝子内欄換え

変異漉遺伝子          *          el  e2     i2      e3      e4       G418感受性、FIAU耐性 図1 マウス内在性のttr遺:伝子に第1型FAPの病因となる点変異のみを導入するための遣伝子ターゲ    ツティング法蹄 有無を解析する計画である。本法は,特定の遺 伝子に目的の変異をもったマウスを作製するた めの,簡便で効率の良い方法として,種々の疾 患モデルマウスの作製に広く応用可能と考えら れる。

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遺伝性アミロイドーシス発症の分子機構 113 肱アミロイド沈着への血清アミロイドP成分   (SAP)の関与一遺伝子ターゲッティング  法で作製した無SAPマウス株による解析  種々のアミロイドーシスで沈着する異なるア ミロイドに共通の微量構戒成分,血清アミロイ ドP成分(SAP)がアミロイド沈着を促進する ことを示唆する知見が報告されているが,漁 マ伽。での実験的裏付けは無い。そこで,SAPが アミロイドーシスの発症にどう関与するかを明 らかにするために,遣伝子ターゲッティング法 を用いて,SAPを完全に欠損した変異マウス株 を作製した。これら無SAPマウス株の形態, 行動や繁殖能力には異常を認めなかった。そこ で,この無SAPマウスに対照野生型マウスと 同様にAAアミロイドーシスを惹起し得るかど うかを調べた。AAアミロイドーシスは, l ml のFreund’s complete a(導uvant, l mlのPBS及 び25mgの加熱殺菌したM∂?zりγ26鴛祝面体から 成るエマルジョンをマウスの腹腔内に体重10g あたり0.!mJ注射して惹起した。エマルジョン を投与すると野生型マウス血中のSAP濃度は, 2日後に投与前の約!9倍弱増加し,ll日後で も,約14倍の高値であった。エマルジョン投 与により野生型及び無SAPマウス血中の血清 アミロイドA蛋白(SAA)濃度は,2EI後に共 に,投与前の約200倍弱増加し,!l日後でも, 約150倍の高値であった。この結果はSAPの 欠損はマウスSAAの急性期反応に影響しない ことを示している。9週齢の野生型及び無SAP マウス各5匹にエマルジョンを投与後,18日 目の脾アミロイドの沈着を調べた。この結果, 野生型及び無SAPマウス共に4匹にAAアミロ イドの沈着を認めた。この結果は,SAPを完全 に欠損してもAAアミロイドが沈着することを 示している,,そこで,SAPがAAアミロイドの 沈着を促進するか否かを明らかにするために, エマルジョン投与後の脾アミロイドの沈着を野 生型及びホモ接合体マウスについて経時的に比 較解析した。この結果,無SAPマウスでは, 対照野生型マウスに比べAAアミロイドーシス が有意に遅れて惹起されることを見出した21}。 英国のPepys博士らも,筆者らとは,独立に無 SAPマウス株を作製し いる22)。 同様の結果を報告して VI.おわりに  FAPにできるだけ近似、した疾患モデルマウス の作製を目指し,遺伝子ターゲッティング法を 用いて,以下のような変異マウス株を作製し た。  (1)μγ遣伝子に挿入変異をもち,TTRを完 全に欠損した無TTRマウス株を作製した。予 期に反して,無TTRマウスは神経系に何ら異 常を来さず,その成長や形態形成にも異常を認 めなかった。  (2)上記の無TTRマウスに, FAPの病因と なるヒト変異酢遺伝子を導入することによっ て,ヒトの異型TTRのみを産生するマウスを 作製した。この結果,マウス内在性の正常 TTRは,ヒト異型TTRから成るアミロイドの 沈着時期,進行や組織分布に影響しないことを 見出した。  (3)マウス内在性の而選:伝子にFAPの病因 となる点変異のみを導入する新しい手法を確立 した。  既に作製したFAPのトランスジェニックマ ウスモデルは,ヒトの異型TTRから成るアミ ロイドをFAP剖検例と同様の種々の臓器に沈 着する。しかし,末梢神経へのアミロイド沈着 を来さず,神経障害も来さない。神経へのアミ ロイド沈着には,異型TTRと神経の構戒成分 とが結合することが必要かも知れない。この点 に関して,末梢神経の構成成分であるミエリン P2蛋白質が,異型TTRから成るアミロイドに 結合しているという報告があり,興味深い23),, 今後,ヒトのミエリンP2蛋白質とヒトの異型 TTRの双方を産生するトランスジェニックマ ウス株を作製し,末梢神経へのアミロイド沈着 の有無を調べたり,既に作製している内在性の 艀遺伝子にFAPの病因となる点変異をもつマ

(8)

!!4 前 田 秀一郎 ウス株での末梢神経へのアミロイド沈着の有無 を調べることで,ミエリンP2蛋白質が神経へ のアミロイド沈着にどう関与するかを明らかに することができるかも知れない。さらに,遺伝 子ターゲッティング法を用いて作製した無SAP マウスでは,対照野生型マウスに比べ,AAア ミロイドーシスが有意に遅れて惹、起される。今 後,上記のFAPの疾患モデルマウスとこの無 SAPマウスとの交配により,マウスSAPを完 全に欠損し,FAPの病因となるヒト異型TTR を産生するマウス株を確立し,これらトランス

ジェニックマウスとマウスSAPとヒト異型

TTRとの双方を産生する対照トランスジェニ ックマウスとについて,アミロイド沈着の時期, 程度や沈着臓器を比較解析し,SAPがFAPに おけるアミロイド沈着にどう関与するかを明ら かにしたいと考えている(図2)QSAPのリガ ンドの一種であるガラクトースの誘導体を腕 痂70でアミロイドに作用させると,アミロイド

無SAPマウス

  一ノー

saρ

X・←▼

からSAPが除去され,分解されやすくなるこ とが報告されている24)。SAPがFAPの発症時 期の決定に関与することが明らかとなれば,疾 患モデルマウスを用いて,癖蜘。でアミロイド からSAPを除去する方策を検討し,アミロイ ド沈着への影響を調べることができるであろ う。このように今後,上記のFAPの疾患モデ ルマウスや種々の変異マウスを用いて,FAPの 発症機構を明らかにし,治療法の開発へと研究 を進めたいと考えている。 文  献 1) Costa PP, Flguelra A, Bravo F:Amyloid Hl)!・il pro−  tcim’elated to Prealbumin h漁milial amy1・id・t−  lc polyneu蓋て)path》へP監Dc Natl Acad Sci USA,75:  4499−4、503,1978. 2)Mita S, Maeda S, Shlmada K, Araki S:Clolling  and sequcllce analysis ofcl)NA fbr human preaレ  1)umin. Blochem Biophys Res.Commun,124:  558−564,1984. 3)玉de M, Mita S, Ikegawa S, Maeda S, Sllimada K,

X

FAPの病因となるヒト変異ttr遺伝子

(hmオtr)を運ぶFAPのトランスジェ

ニックマウスモデル

  十1

溜〃

      1一

  saρ

hmπ’

 十1

論ア

図2 FAPにおけるアミロイド沈着にSAPがどう関与するか一無SAPマウスとFAPのトランスジェニ    ックマウスモデルとを用いた解析

(9)

igeflXl:Il i7 <- u .it l" --- iit X l9{:illE Ofi-i]:-mag l15

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