由梨医大誌7(3),97∼107,!992
アトピー性皮膚炎に認められる免疫学的異常とその背景
一最近の知見一
古 江 増 隆
由梨医科大学皮膚科 抄録:lgE産生は, lgEの産生を充進させるようなサイトカイン(インターロイキン4など)を産 生するヘルパーT細胞(Th2細胞)と, IgEの産生を低下させるようなサイトカイン(インターフェ ロンγなど)を産生するヘルパー丁細胞(Th1細胞)のバランスの上に調節されていることがマウス の実験系から明らかとなった。ヒトにおいてもTh 1様細胞とTh2様細胞の存在が想定され,歪自L中 至gE値が高値を示すアトピー性皮膚炎ではTh2様細胞が増加していることが証明されてきている。 本稿ではアトピー性皮膚炎における高IgE lず亘症の発症病態についてサイトカインの而から現在ま での知見をまとめ,さらにアトピー性皮膚炎病巣部における免疫学的所見について概説した。 キーワード アトピー性皮膚炎,サイトカイン,IgE,好酸球,ランゲルハンス細胞 はじめに アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis, AD) は慢性再発性の皮膚炎と皮膚の乾燥症状を主症 状とする疾患であり,およそ80%∼90%の患者 ではダニ抗原,家塵抗原,卵白抗原などの環境抗原や食物抗原に対する特異的IgE抗体が検
出される。また多くの患者では喘息やアレル
ギー性鼻炎などの他のアトピー性疾患を併発
し,家族内にもこれらのアトピー疾患を認める場合が多い。更にADでは病勢と一致して血
中の好酸球増多を認めることも多い。ADの病
因は不明であるが,皮膚炎の発症にはlgEを
介したあるいはT細胞を介した免疫学的反応が 混在して関与するのではないかと考えられてい る。最近種々のサイトカインの機能解析が進むにつれ,B細胞によるIgEの産生は丁細胞が
産生するいろいろなサイトカインによって調節 予409−38山梨県中巨摩郡牽穂町下河東1110 受付:1992年7月21日 受理:1992年7月22日されていることが明らかとなった。岡時にAD
において認められる血中IgE値の高値もこれ
らのサイトカインが関与していることを示唆する実験結果が数多く報告されるようになっ
たD。一方皮膚が包含する様々な免疫担当細胞 の解析も進められ,表皮内に存在するランゲル ハンス細胞(Langerha駐s ce11, LC)の役割も改めて注目されるようになった。本稿では,ADに
認められる免疫学的異常とその背景について, 我々の行った臨床的なあるいは実験的な知見を まじえて総説を試みたい。 アトピー性皮膚炎に認められる臨床検査値異常 a)血中IgE値と末梢血好酸球数値100例のAD患者(年齢:4∼59歳,2L9±
9.4歳)と37例の葦麻疹患者(年齢:20∼62歳, 42.0±13.0歳)で比較してみると,AD群の1f江 中更gE値(IU/m∠)は4570.7±6762で毒麻疹群 のそれ(208.7±34.2)に比べて有意な高値を示 した。末梢血好酸球数値(/mm3)もAD群では 494.0±37.9,葦麻疹群では182.9±22.0,また表1.ADの重症度とlgE値及び好酸球数値 IgE(IU/m♂) 女子酉菱球数イ直 軽症鯨=19) 二等症(n=44) 重症(n=37)
§嚢1響警「当還i熱㌔ず
* :p<0.001 N51:有意差なし 表2.IgE値と好酸球数値との関係 IgE(IU/m♂) 好酸球数値(/mm3)∼249
250∼999 1000∼4999 5000∼9999 10000∼ (n霊27) (n謹21) (n=20) (n=17) (n謹15) 1諺圭1き1竺t纏 583±118 − 563±73 − 531±59 * :p〈0.00! 表3.AD患者における治療前後の罹患部位の広さ,好酸球数値, 及びlgE値(n=22) 治療前 治療後 体表面積に占める 罹患部位の広さ(%) 好酸球数値(/mm3) IgE値αU/mZ) 63.1±4.0 957,1±127.6 4387.3±904.3 18.3±2。0来* 486.4±57.9** 2697.5=ヒ612.3** 巌崇:p<0.001 健常人47例(年齢:4∼69歳,29.8士17.8歳)で は187.5±17.7で,AD群では葦麻疹群および健常人群に比べて有意な高値を認めた。ADの
重症度とIgE値,好酸球数との相関をみてみ
ると,重症になるほどIgE値も好酸球数値も
上昇している(表1)。またAD群でIgE値の
グループ別好酸球値をみてみると,IgE値が
2491U/m∠以下の低IgE群では, IgE値が2501U/m∠以上の高IgE群に比べてその好酸球数
値は有意に低下していた(表2)。更に少なくとも1年半以上経過を観察しえた22例のAD患
者で,その治療に伴う臨床症状,血中IgE値, 末梢血好酸球数値の推移をみてみると,臨床症状が軽快するとともにIgE値,好酸球数とも
に有意な低下傾向を示すことが分かる(表3)。b)各種抗原に対するRAST値
175例のAD患者(年齢:2∼59歳,21.8±
9。4歳)と上記奪麻疹患者で,卵白,牛乳,ダニ (DF, DP),繊塵(HD1, HD2),スギ,大豆, 小麦,米,カンジダの11種の抗原に対する特異IgE抗体を, RAST法で測定しスコアー化し
た(スコアー1:RAST値:0.35∼0.69,スコ アー2:0.7∼3.49,スコアー3:3.5∼17.4, スコアー4:17.5∼49.9,スコアー5:50.0∼ 99.9,スコアー6:100.0以上)。AD群におい て問診で本人に気道アレルギー(鼻炎・喘息)のアトピー性皮膚炎における免疫学的異常 99
合併あるいは既往があると答えたものは
57.7%,家族内に皮膚炎・気道アレルギーのい ずれかがあると答えたものは59.4%であった。表4のごとく,AD群では種々の抗原に対して
RAST値陽性率が高く,特にスコアー3以上
の強陽性RAST値はダニ,家塵,スギ,カン
ジダ,穀物抗原において顕著に認められ,なか でもダニ抗原の陽性率およびスコアー値はとも に高かった(表4)。対象とした患者のほとんど は思春期以降の成人例であるため,卵白,牛乳 に対する陽性率は極めて低かった。このことは卵白や牛乳に対するRAST陽性率は乳児期に
は高いが,幼児期以降では急速に低下し,かわ りにダニや家塵抗原に対する陽性率が上昇する という諸家の報告と一致していた2>。奪麻疹群における各種抗原のRAST陽性率・スコアー
値はともにADに比べ,スギを除き塗壁に低
かった(表4)。一方,同一患者におけるRAST陽性の抗原
回数を検討してみると,AD群では複数種の抗
原に対してRAST陽性を示す患者が多ぐ,た
とえば4種以上の抗原にRAST陽性を示す患
者はAD全体の44.5%を占めた(表5)。この
ようにADでは,検査する抗原種数を増やせ
ば増やすほど,RAST陽性を示す抗原種数は
増加することが予想され,異常高値を示すダニ 抗原は別格としても抗原除去療法や抗原特異的減感作療法の際にtargetとする抗原種の決定
法などを考えると,その施行法・有用性の判定 は極めて困難であると思われる。また自験175例のAD患者には抗原除去療法や減感作療法
は全く施行していないが,外用療法によって皮疹がうまくコントロールされるとlgE値,好
酸球数だけでなく,各種RASTスコアー値も
ほとんどの症例で低下傾向を示した。このことは少なくとも成人型ADでは,皮疹の悪化そ
のものがIgE産生系を全体的に賦活化し,そ
表5。RAST陽性を示す抗原数 抗原数 アトピー性皮膚炎 專麻疹012345678
1443374464178835743
1窪⊥1161474
7855250200
43
* % 表4. スコアー ︵︶像三2004︹ひ£︶ 各種抗原に対するRAST陽性率(%) アトピー性皮膚炎 卵白 牛乳 DF DP HD l HD 2 スギ 大豆 麦 米 カンジダ ρ0﹃QQゾ4りσりσ ﹁D3︵︾0099θ0 2 0乙9σ −︵︶149ρ7rOOO9907ハ041
1 三三り乙 9白 綴︶に﹂環︶11︵︶9廓 り乙37げり0004£U 2 り49勧 − ︵︶73 0武︶つQOO︵︶︵︶ 9 ◎︾Ωり77 ︵︶2﹁DOOO︵︶OO−
4461ρO
ρO11
Q︶172︵︶︵︶O719自O
Qゾ ︵︶ρ0ρ014︵︶0 4 9翻2 0に︶り0り乙0σ ︵乙7801︵︶0 00 9山3 44.6 38.3 25.0 21.7 28.6 36.7 1.8 3.3 0 0 0 0 0 0
07ご3729臼
7818り乙りる︵︶ りQ 4 スコアー ︵︶12り04rQハ0 暮麻疹 卵白 牛乳 DF I)P HD l HD 2 スギ 大豆 麦 米 カンジダ 100 0 0 0 0 0 0 只︶8 7げ 戻︶︵︶︵︾9臼︵∪︵︶︵︶81
4只︶ 4︹﹂︵UO︵︶00 9 97.3 0 2.7 0 0 0 0 97.1 2.9 0 0 0 0 0 100 0 0 0 0 0 0 武︶4 81︵︶︵︶00︵∪OO1
9Ω79自﹃σ4 29鼻R︶90﹃0︵︶0 只︶!1
91.4 87.9 8.6 12.1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 9自8 Fb4︵︶∩VO︵︶0 9れにともなって種々の抗原に対する特異IgE
抗体も検出されるようになるのではないかと考 えられた。 アトピー性皮膚炎に認められる免疫学的異常と その背景 a)インターロイキン4(IL−4)とAD分子生物学の進歩にともなって,それまで
B−cell stimulatory factor 1(BSF−1)と呼称されていたIL遜には, B細胞のIgE産生能を充溢
される作用があることが判明し,IgE産生調節 におけるkey factorとして,特にアトピー疾患の発症病態との関与が注目をあびるように
なった3) 6)。IL−4にはlgE産生充進作用のほかに,Bリンパ球(一部Tリンパ球)膜上に
CD23抗原(type II IgE−Fc receptor, FcεRII) を発現させる作用がある7)。また抗原提供細胞である表皮内LCや単球,マクロファージの膜
上にもCD23抗原を発現させることが証明され
ている8)。更に1レ4はT細胞増殖因子として, あるいは肥満細胞増殖因子(マウスでのみ?)と しても作用することが報告されている砿6)。一方AD患者において報告されている免疫
学的異常をあげてみると,高IgE血症をはじ
めとして,例えば健常人に比べてAD患者の
末梢血単核球場にはCD23抗原陽性細胞数が増
加しており9>’玉。),その中でもCD23抗原はT 細胞群(CD3抗原陽性)よりも, B細胞群(CD20 抗原陽性)や非丁非B細胞群(ほとんどは単球 群)に有意に高く発現されている(表6)10)。またAD患者の病巣部表皮内には実際にIgEが
結合したLCが多数認められる11)。さらにAD
患者及び健常人の末梢血単核球にT細胞増殖因子として働く1レ2やIL−4を加え,末梢血単
核球の増殖能(応答性)を調べてみると,1レ2に対する応答性はAD患者と健常人の間に有
意差を認めないが,AD患者の末梢血単核球の
1レ4に対する応答性は健常人群のそれに比べ
有意に二進している(図1)12’13)。またADの 皮膚病変部における肥満細胞数の変化について は意見が分かれているが,特に慢性化し苔癬化 .扁.oooりの縦霧固︾繭ω竃O匹ω固配寸一d幽 鮭.S、 P<0.05 Pく0.05 7 6 5 4 3 2 葉 ●● ● ●● 8 鷺:回忌蠕
●8 ●: ●●● ●・⋮ 闘εA口目Y (ロ論19} CONτ霞OL o O三
門壬・一26・醸
o o了鋒ER SKI撲 (騰驕=7) 91SE盈SES x Xx 閧燥撃P5・ x美 図1.AD患者,他の皮膚疾患患者,及び健常人の 末梢血単核球のIL−4に対する応答性. 表6.アトピー性皮膚炎患者及び健;常人における末梢血CD23抗原陽性リンパ外数とその分画
Total CD23牽(%) CD23牽CD3+(%> CD23+CD20+(%> CD23+CD3−CD20一(%)AD
(R瓢11) Healthy (n罵10) 6.5±1.0*崇 1.3±0.2 O.3±0.1 0.1±0.1 4.0±0.9崇来 1.1±0.3 2。2=kO.7* 0,!±:0.1 崇*:p<0.01, 崇:茎)<0.05.アトピー一性皮膚炎における免疫学的異常 !0画 した病変部では肥満細胞数が増加しているとす る報告もある14)。
このようにAD患者において認められる
様々な免疫学的異常は1レ4によって誘導され
る免疫学的特微ととても良く一致するわけであり,このような事実からIL−4がADの発症機
序特に高IgE血症に関わっているのではない
かと考えられるようになってきた。b)TM細胞とTh2細胞
1レ4はヘルパーT細胞(Th細胞)が産生する サイトカインの一つであるが,マウスの実験系からTh細胞はその産生するサイトカインの種
類によって,2つの細胞群すなわちTh1細胞
とTh2細胞に大別されることが分かった4)115)。Th!細胞はIL−2やINF一γを産生するが,
IL−4, IL−5, IL−10は産生しない。逆にTh2 細胞はIL−4,猛一5, IL−10を産生するが, 1レ2やIFN一γは産生しない。 IL−4による王gEの産生二進作用やCD23抗原発現作用はTh1
細胞から産生されるIFN一γによって抑制され る3)。またIL−2もIFN一γとは異なった形式で IL−4によるIgEの産生充進作用を抑制する5>。逆にTh2細胞から産生されるIL−10はTh1細
胞によるIFN一γ, IL−2の産生を抑制する15)。このようにIgEの産生は, IgEの産生を高め
るサイトカインを産生するTh2細胞とIgEの
産生を抑制するサイトカインを産生するThl
細胞のバランスの上に成り立っているわけであ る(図2)。またTh2細胞から産生されている1レ5が強力な好酸球の分化,増殖作用を有し
ていること,更にIL−5はIL−4によるIgE産
生充進作用を増強させる作用があることも報告 されている6>。こうしてヒトにおいてもマウスと同様にThl様細胞とTh2様細胞の存在が想
定され,血清1gE値や血中好酸球数が増加す
るADの病態形成にはTh2様細胞数の増加や
機能漸進,あるいはTh 1様細胞数の減少や機 能低下が関与しているのではないかと推定され るようになった4)。c)AD患者におけるTh2様細胞
マウスにおいては前述したようなTh1細胞
Th1㊥
↑h2 1レ10 1FN一γ lL−4 1し5回、こ
』\・嵐8cell
・十・ 十 FcεR琵 lgE 牽 Eosinoph甜 図2.Th1細胞及びTh2細胞によるIgE1の産生調節 機序.およびTh2細胞ははっきりと区別しうるので
あるが,ヒトでは同じTh細胞がIL−2, IFN一γ, IL−4, IL−5を同時に産生することが多いこと が報告された16)’17)。しかしながらヒトのTh 細胞においてもIL−4よりもIF聾γをより多く 産生するTh1様細胞群とINF一γよりもIL−4,IL−5をより多く産生するTh2様細胞群が存在
することは事実である16)’17)。こうして高IgE血症を伴うAD患者においては果たしてTh2
様細胞群が優位を示すものかどうか,AD患者
のTh細胞の各種サイトカイン産生能が検討さ れるようになった。 W三erengaらはやケヒョウヒダニ(Dp)抗原に反応する丁細胞クローンをAD患者および健
常者の末梢血から樹立し,その丁細胞クローンがDp抗原によって刺激された時のIL−4産生
能を検討した。その結果,AD患者のDp特異
的T細胞クローンはDp抗原を添加すると
IL−4を産生するが,健常者から得られたDp
特異的T細胞クローンはほとんどあるいは全く IL−4を産生しないことを報告した18)。更に彼らはこのT細胞クローンから産生された1レ4
が実際に正常のB細胞に作用してIgEを産生
させることも確かめた18)。このようなWierengaらの報告とほぼ同じ様
な実験結果を0’Hehirらがコナヒョウヒダニ
抗原に対するT細胞クローンを用いて19),さらにRomagnaniらはphytohemagglu宅inin刺激
により樹立したT細胞クローンを用いて報告し た20)。またKapsenbergらはAD患者よりDp特異
的T細胞クローン,破傷風毒素特異的T細胞ク
ローン,カンジダ特異的丁細胞クローンを作成 した。興味あることにDp特異的丁細胞クロー ンはIFN一γは産生せず, IL−4やIL−5を産生するTh2様細胞であり,破傷風毒素特異的T
細胞クローンやカンジダ特異的T細胞クローン は同一AD患者より得られたにもかかわらず, IFN一γを産生し, IL−4やIL−5は産生しない Th1様細胞であることを示した17)。上記の所見はこのAD患者の血中にDpに対する特異
IgE抗体は検出されるが,破傷風毒素やカンジダに対する特異IgE抗体は検出されないとい
う事実とよく合致していた17)。こうしてある抗原に特異1gE抗体を有するAD患者におい
ては,その抗原に特異的に反応するT細胞が
1レ4を産生するTh2様細胞群であり, IL−4の 産生量が運N一γの産生量よりも優位になり特異IgE抗体が出現してくる可能性が示唆され
た。一方,ADにおけるTh1様細胞の機能に関
しても既に数多く検討されている。AD患者の 末梢血単核球をレクチンでポリクローナルに刺 激しそのサイトカイン産生能を検討した結果で はIL−2やIFN一γの産生能が低下していること も報告され21>『24>,ADでは前述のごとくTh2様細胞群の機能充進とともにT鼠様細胞群の
機能低下も生じている可能性が指摘されてい
る。このことはニッケルアレルギー患者及び健常人から作成されたニッケル特異的T細胞ク
ローンのほとんど全てが,IFN一γやIL−2を産生しIL−4やIL−5を産生しないTh1様細胞で
あることを考えると対照的である17>。d)Th1細胞とTh2細胞のprecursor
Th 1細胞とTh2細胞はかなりの合目的性を
担って,異なるサイトカインを分泌するように分化したTh細胞である。しかしTh1細胞と
Th2細胞は互いにその由来が全く異なる細胞
群ではなく,2つの細胞群のprecursorは同一
であり,抗原の種類,それを提示する抗原提供 細胞の種類及びその抗原提供の様式によって,Th1細胞あるいはTh2細胞へと機能分化する
可能性が高いことが推定されている15>’25)。しかし抗原提供の過程で,抗原提供細胞とTh細
胞との問にかわされるどのようなシグナルが,Th!細胞あるいはTh2細胞への分化を誘導す
るのかは現在のところ全く不明である。e)アトピー性皮膚炎の皮膚病変部における
Th2様細胞
上述したように高IgE血症を伴うAD患者
では抗原特異的(例えばDp抗原特異的)なTh2 様細胞が増凹していることが推定されるわけであるが,実際のADの皮膚病変歴におけるこ
れらの細胞の動態についてはまだほとんど解明されていない。しかしながらAD皮膚病管内
の浸潤細胞のほとんどは活性化されたTh細胞
であること,またIgEを結合したLCが出現
していることなどから病変局所においても
1レ4が関与していることが推定される。 van der Heijdenらは, Dpにアレルギーを有する2例のAD患者の皮膚病変部より,無作
為にT細胞クローンを作成しその抗原特異性を 検討したところ,得られたT細胞クローンのう ちそれぞれ47%あるいは10%の丁細胞クローンがDp特異的T細胞クローンであったこと,ま
た同じAD患者の末梢血から無作為に得られ
たT細胞クローンのうち,Dp特異的であった
ものはそれぞれ0%あるいは3%であったことから,皮膚病変部にはDp特異的T細胞が末梢
血に比べ,高頻度に集積していることを報告しアトピー性皮膚炎における免疫学的異常 103 た26)。更に彼らは皮膚病変部より得られたす
べてのDp特異的T細胞クローンがIL−4を産
生し,IFN一γはほとんどあるいは全く産生しないT細胞クローンであったと述べ,ADの皮
膚病変部においてもTh2様細胞の関与を強く
示唆している26>。このことは実際にダニ抗原 が皮膚を介して侵入し,LCに補捉されている という事実を考えると実に興味深い27)。 アトピー性皮膚炎の皮膚病変部における好酸球前述したようにADでは末梢血中の好酸球
数値は高値を示し,病勢と一致して推移する傾 向にある。また好酸球の分泌三門蛋白である MBP(major basic protein), ECP(eosinophil cationic protein), EDN (eosinophil.derived neurotoxin)などの血中濃度が増加しているこ とが報告されている28)。しかし皮膚病変部の 組織像ではむしろリンパ球の細胞浸潤が主体を なし,好酸球の浸潤はあっても極めて少ないこ とが多いことも良く知られている28)。一方, Leifermanらは, MBP, ECP, EDNに対する モノクロナル抗体を用いて,AD皮膚病変部を 免疫染色した結果,組織像では好酸球の浸潤は 全く認められない症例でも,これらの好酸球分 泌蛋白の沈着像が真皮の血管周囲あるいは膠原 線維間に認められると報告し,皮膚病変の形成 における好酸球の役割を強調した28)。皮膚病 変部組織像で好酸球浸潤を認めない自験4例に おいても抗ECP抗体を用いた免疫染色では,血管周囲性にあるいは一部膠原線維間にECP
の沈着を認めた(図3)。 アトピー性皮膚炎とランゲルハンス細胞 a)ランゲルハンス細胞数の変化Uno&Hani丘nはADの苔癬化病巣部では,
LC数の増加を認め,また急性期の紅斑性皮疹
では,LC細胞数の変化は認められないけれど
も,LCとリンパ球の接着が観察されると指摘庵嘗 5烈卸;一
生. 議二 丈鷲 鷺,・灘1菰夕蝉 織
驚・二二
R1)藩満
癒
D’ 顛
図3.AD皮膚病変部の抗EG2抗体(分泌型ECPに対するモノクロナル抗体)による免疫組 織染色.AとB, CとDは同一患者のもの。 AとCの矢頭は陽性像. BとDはその 拡大像.した29)。同様にRochaらは, CDIa陽性のLC 数が1曼性病薗部で増加していることを報告して いる30)。
b)IgE陽性ランゲルハンス細胞の出現とその
機能Bruynzeel−Koomenらは1986年AD患者の表
皮内にIgEが結合したLCが出現しているこ
とをはじめて記載した11)(図4)。その後,IgE−LCとIgE+LCの抗原提供能力に差が認められ
るかどうかが注目されていたが,Muddeらは
ハウスダスト及びカンジダ抗原に対して特異
IgE抗体を有するAD患者において, IgE一LC
とIgE+LCのハウスダスト抗原に対する抗原
提供能力を比較したところ,IgE+LCのみが
ハウスダスト抗原を提供することが可能であっ たと報告している31)。同時に彼らは,カンジ ダ抗原に対する抗原提供能力を検討しているが,カンジダ抗原はIgE+LCもIgE−Cも同
じ程度に抗原提供することが可能であったこと より,抗原の種類によってLCの抗原提供能力 には差があり,ハウスダスト抗原などのある種の抗原は,その抗原に対する特異IgE抗体を
膜上に保有しているLCの方が,強い抗原提供
を行なうことが可能なのではないかと推定して いる31)。また田中らは,AD患者のダニ抗原パッチテスト陽性部位で,実際にIgE+LCがダニ
抗原をその膜上に保有していることを証明して いる27)。IgE+LCの出現する過程はまだ充分に解明
されていないが,BieberらはIL−4やIFN一γ
がヒトのLCにtype II IgE−Fcリセプター(FcεRII)であるCD23抗原を発現させることを報
告した8)。その後,WangらはヒトLCには
high af丘nityのtype l lgE−Fcリセプター(Fcε RI)も発現されており, LCへのIgEの結合は FcεRIIに対するモノクロナール抗体では抑制できず,FcεRIに対するモノクロナール抗体
でのみ完全に抑制されることより,FcεRIが
しCのIgE結合能に直接的に関与するのではな
いかと報告している。更に彼らはPCR法を用
いて,実際にFcεRIのα,β,γchainのm−
RNAがLCに発現されていることも報告して
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・㌔ワ蕩β竃螢饗擁、憾貯
1、11∵嘉極 磯
バ ロドか の ミァマ ロ ド饗 爵・
壷醜傷:灘
胤』 図4.AD皮膚病変部の抗IgEモノクロナル抗体による免疫組織染色. IgE陽性の樹枝状細 胞が真皮内のみならず(黒矢印)表皮内にも(白抜き矢印)認められる.アトピー性皮膚炎における免疫学的異常 105 いる32)。
このようにIgE+LCの出現はADの病態形
成に関与している可能性が示唆されるわけであるが,かならずしもADに特異的な所見では
ない。Bieberらは,血中lgE値が100王U/m/
以上の他の皮膚疾患患者(例えば,尋常性乾癬, 扁平苔癬,円板状紅斑性狼瘡,菌状息肉症など)においても19E÷LCが検出されることを明ら
かにしている33)。 c)表皮細胞・リンパ球混合培養における丁細 胞の高反応性とランゲルハンス細胞Taylorらは表皮細胞と自己の末梢血中のT
細胞との混合培養(autologous mixed
epidermal cemymphocyte reaction, AMELR) を,AD患者,健常人群,他の皮膚疾患患者で比較すると,AD患者のT細胞は有意に高い反
応性(増殖能)を示すこと,またADで病変部
表皮と健常部表皮でAMELRを比べてみると,
病変部表皮は健:常部表皮に比較して有意に高い T細胞の反応性を誘導することを見出した34)。この実験系で,表皮細胞からHLA−DR陽性細
胞あるいはCDla陽性細胞を除去すると, T細 胞の反応性は消失すること,電顕的に表皮細胞内のHLA−DR陽性細胞あるいはCDIa陽性細
胞は,Birbeck穎粒を有するLCないしはBir−
beck穎粒は持たないがしC群に属するindeter− minate cellであることより, AMELRで認められるT細胞の高反応性にはLCが重要な役割
を果していると考えられた。更にAD病変部
表皮内のHLA−DR+CDIa+LCの表面マーカー
を詳しく検討してみると,CD36の発現を40% に,CD!bの発現を60%に認めた。正常ヒト皮 膚の表皮内:LCには, CD36, CDlbの発現を全く認めないことからAD表皮内のLCは機能
的にもまた表面マーカーの上でも特異な性質を 有していることが明らかとなった34。また抗体を用いたblocking試験の結果, AMELRは抗
HLA−DR抗体で完全に,抗CDla抗体では部
分的に抑制されること,一方抗CDlb抗体で
はむしろAMELRの増強が認められることを
報告した34)。 おわりに以上ADの臨床的あるいは実験的背景につ
いて概括した。ADの病因は不明であるが,そ の病態の形成に免疫学的な機序が大きく関与し ていることは疑いようのない事実である。皮膚 炎病巣部に浸潤している細胞のほとんどが,活性化されたCD4÷T細胞であることを考える
と36),皮膚局所における免疫反応,特に抗原 提供についての研究も今後益々重要であると思 われる。 文 献 1)古江増戸,大槻マミ太郎,中村晃一郎.サイト カインとアトピー性皮膚炎.臨床免疫1992; 24:1021−1027. 2)小田島安平,勝沼俊雄,赤沢 晃.小児アレル ギー疾患における卵白,牛乳,大豆,ダニ特異 Ig£lg£抗体の年令別推移,アレルギー1988; 37:419−426. 3>Pene J. Rousset F, Briere F, chrαien 1, Paliard x, Banchereau J, splts H, de vries JE・IgE production by normal human B cdls lnduced by alloreactive T cell clones is medi− ated by IL−4, and suppressed by INF一}孔JIm− munol 1988;141:1218−1224. 4,) Yokota T, Arai N, de Vries JE, Spits H, Ban− chereau J, zlomik A, Rennlck D, Howard M, Takebe Y, Miyatake S, Lee F, Arai K. Molecular biology of interleuk量n 4・an(玉i1}ter− Ieukin 5 genes and biology of their products that stimulate B cells, T cells and hemopoietic cells. Irnmunol Rev I988;102:137−187. 5)Mi胸ima H, Hirano T,}{irose S, Karasuyama H,Okumura K, Ovary Z. Suppression by Iレ 20f IgE production by B cells stimulated by IL−4. J Irnmunol l991;146:457−462. 6) Yokota T, Arai N, Arai KI, Zlotnik A. Interleukin−4. Handbook of ExperimentaI Pharrnacology, VoL 95/1, Peptide growth fac− tors and their receptors I・ノ,2: Sporn MB, Roberts AB, eds. Springer−Verlag,13erlhl 1990;577−607. 7) 1)efrance T, Aubry JP, Rosset f, vanbervliet B,Bonnefoy JY, Arai K, de vries JE. Human rec・mblnant夏L4 induces Fc recept・rs (cD23)on normal B lymphocytes. J Exp Med l987;16:1459−1467. 8) Bieber T, Rieger A, Neuchrist c, Prinz Jc,Rieber EP, Boltz-Nitulescu G, Scheiner C,
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Atopic Dermatitis: Imrnunolegical Abnormality and Its Backgreund
DePartment
Masutaka Furue MD
qfDe7'matology, Yamanash,i Mecticctl College
The production of lgE is mainly regulated by cognate ancllor non-cognate interaction between B cells and I" ce}ls. Two types of helper T (Th) cells are recognized in murine system, Thl and Th2, on the basis of which kind of cytokines they produce. Th2 cells produce IL-4 and IL-5 that augments the synthesis ofIgE by B cel}s. IFN-Y and IL-2 secreted by Thl cells, in contrast, inhibits the IgE synthesis. Several lines of evidence disclosecl that unbalanced generation of Th21Thl-like cel}s occurs in atopic disorders such as atopic derinatitis, in which hlgli level of serum IgE is found in the majority of patients.
The recent progress in imrnunologicai aspects of atopic dermatitis is revSewed.