補償法によるアントラセン紫外吸光光度定量法 利用統計を見る

補償法によるアントラセンの紫外吸光光度定量法

古沢源久

武内次夫

Compensative Ultraviolet Spectrophotometric

Determination of Anthracene

MotohisaFURUSAWA TsugioTAKEUCHI

Synopsis

  Acompensative ultraviolet spectrophotornetric method for the determination of anthra− cene is studied． Benzene or xylene is used as the solvent， and the absorbance is measured at 378 mpa． The optimum concentration of the compensative solution is 20∼25γ／ml， and anthracene can be determined more precisely by using its compensative soluticn．

1緒

言  アントラセンは375∼380m，・Lに吸収の極大を示すこ とが知られており、この吸収を利用してアンbラセン を定量することが出来る。アン1・ラセンの吸収を測定 するのに使用する溶媒はアントラセンの溶解度が大き いベンゼンあるいはキシレンを使用するのが好都合で ある。ベンゼンあるいはキシレンを使用した場合378 mμに吸収の極大を示す。箸者らはアントラセンを精 度よく定量するためにベンゼンおよびキシレンを溶煤 として使用し、補償法による定量法を検討したので、 この結果について報告する。

2 基礎実験

 2．1 装置および使用試薬  装置は島津光電分光光度計QB−50型、光電子増倍 管は1p28，キュベットは10mmの厚さのものを使用 した。  本実験に使用した主な試薬は次のようである。  キシレン：市販1級品を濃硫酸、水酸化ナトリウム 水溶液で洗浄した後、水洗、乾燥を行ない、蒸留によ り精製したものを使用した。  ベンゼン：キシレンと同様にして精製したものを使 用した。  アントラセン：キシレンを溶媒として再結晶により 精製し、更に昇華して精製したものを使用した。m．P． 218．OOC．

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 2．2補償溶液の最適濃度の検討  アントラセンの特性波長378r叩における吸収を使用 して補償法により定量を行なう場合の最適濃度を知る 為に次のようにして実験を行なった。キシレンを溶媒 として使用し、補償溶液のアントラセンの濃度を0∼ 50γ／mlまで変え、試料溶液には補償溶液に含まれて いると同量のアントラセンと更にアントラセンが一定 量（10．3γ／ml）含まれている溶液を使用して、378mμ における吸光度を測定した。この結果はFig・1に示 すようであった。Fig．1の結果から見ると吸光度は補

q5

0．4 巴0．3 § ￡ o

且02

_＜ 0．1        10    20    30    40    50      Concentration、 of anthracene（γ／ml） Fig．1 Effect of concentration of compensative     solution on absorbance of anthracene

昭和38年12月

_{山梨大学工学部研究報告}

第14号

償溶液の濃度の増加と共に減少しており、アントラセ ンを最も精度よく定量し得る濃度は25∼30γ／mlであ り、それ以上濃くしても分析精度向上の効果は期待す ることが出来ない。ベンゼンを溶媒として使用した場 合にもほ剖司様の結果が得られた。  2．3検量線  キシレンを溶媒として使用し、補償溶液としてアン トラセン21．2γ／mlを含む溶液を使用して378 mμに おけるアントラセンの量と吸光度との関係を求めた。 この結果はFig．2に示すようであった。アントラ センの濃度が高くなるにつれてBeerの法則から離反 するがアントラセンの定量は可能である。ベンゼンを 溶媒として使用した場合にもほ剰司様の検量線が得ら れた。 γ／mlになるように適当に稀釈する。補償溶液として アントラセン20∼25γ／mlの濃度既知の溶液を使用し て試料溶液の吸光度を測定する。同じ濃度の補償溶液 を使用して作成した検量線と比較することによりアン トラセンを定量する。

  4 調合試料についての測定

 アントラセンにカノレバゾール、フエナントレン、フ ノレオレン、アセナフテン、ジフエニレンオキシドを混 合して調合試料を作り、定量操作法にしたがってアン トラセンの定量を行なった。この結果はTable 1に示 すようであった。この結果よりこの方法によりアント ラセンを定量し得ることが判明した。 Table 1． Determination of anthracene in mixed sample． 0．6 80．4 § 廿 2 迫 く  O．2 Antbracene  taken    Substances added  （mg） Found Differ−     ence （mg）  （mg） 118．0  混合物ee 20mg      〃  40mg 100．4      カノレバゾーノレ20mg 117．7   〃  30mg 61．5   〃  60mg 66・・ ；，。，▽㌣．，。m、 117．6 99．6 117．2 61．3 65．6 一〇．4 −0．8 −0，5 −0．2 −0．4   0      5     10     15     20    Concentration of anthracene（γ／ml）   Fig．2 Calibration curve of anthracene Concentration of compensative solution：21．2γ／ml

  3 定 量 法

 試料50∼100mgを正確に秤取し、キシレン或いは ベンゼンに溶解する。アン1一ラセンの濃度が25∼30 esカノ1ノバゾ・一ル、フエナントレン、アセナフテン、  フルオレン、ジフエニレンオキシドの等重量混合  物である。          総  ．括  補償法によるアントラセンの定量法を検討した。補 償法により定量する際のアントラセンの濃度は25∼30 7／mlが最適であり、この濃度の補償溶液を使用する ことによりアントラセンの定量が可能である。        （昭和38年8月31日受理）

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