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インフレ圧力下の高成長,経済主導の国際協調 : 2007年のアジア

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Academic year: 2021

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インフレ圧力下の高成長,経済主導の国際協調 :

2007年のアジア

著者

佐藤 百合

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

シリーズタイトル

アジア動向年報

雑誌名

アジア動向年報 2008年版

ページ

[2]-5

発行年

2008

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00002598

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カザフスタン モンゴル 朝鮮民主主義 人民共和国 ウズベキスタン キルギスタン 大韓民国 トルクメニスタン タジキスタン アフガニスタン (カシミール) 中  国 パキスタン ネパー ル ブータン 香港特別 行政区 台湾 フィリピン イ ン ド バングラデシュ ミャンマー ラオス タイ カンボジア ベ ト ナ ム スリランカ マ ア シンガポール ブルネイ インドネシア ティモール・レステ

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インフレ圧力下の高成長,

経済主導の国際協調

佐 藤 百 合 

  アジアへ向かう投資資金  中国とインドを牽引車として2003年頃から成長の波に乗ったアジア経済は, 2007年も高成長を記録した。成長を続けるアジアは世界の投資資金を引きつけ, 株高と通貨高が進み,貿易黒字の国からは政府系ファンドが台頭してきた。  2007年に過去最高の実質成長率を記録したのは,中国(11.4%),ベトナム(8.5 %)である。インドも減速ぎみとはいえ8.7%の高成長であった。30年ぶりの7.3 %成長となったフィリピンをはじめ,ASEAN 諸国もタイを除いて好調である。 政治的に不安定なパキスタン,スリランカ,バングラデシュでさえ,軒並み6.5 ∼ 7.0%の成長を達成した。  好調な実体経済を背景に,中国とインドでは株価指数が年初の約 2 倍に,イン ドネシアも1.5倍に急上昇した。アジアへの資金流入は,多くの国で通貨高をも たらしている。なかでもフィリピンは,海外出稼ぎ送金の増加も相俟って,16% ものペソ高となった。数年来の好況下で各国は外貨準備を積み増し,シンガポー ル,中国,マレーシアの外貨準備は名目 GDP の 5 ∼ 10割にまで膨らんだ。ロシ アや中東の資源国と並び,これら 3 国の政府系ファンドは,国際金融市場や欧米 諸国への資金還流の担い手としてにわかに存在感を増してきた。   問題はインフレの進行  高成長の一方,2007年は各国ともインフレ圧力に直面した。インフレは,バレ ル当たり100㌦を突破した原油を筆頭とする燃料・鉱物資源,食料品,工業素材, 不動産の各分野で進行している。国際商品価格の高騰に加え,災害や疫病による 一次産品の減産といった国内要因もインフレを進行させた。中国の豚肉,南アジ アのコメ・小麦など,特定の必需品の価格急騰がインフレを牽引した国もある。 食料品と燃料の価格上昇は国民生活を直撃し,政治社会不安にもつながるため, 各国政府は対応を迫られた。

2007年のアジア

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 中国とインドは,金融引き締め政策を発動した。中国は結局インフレ進行を抑 えきれなかったが,インドは政策が功を奏して 5 年ぶりの低インフレを実現した。 インドやフィリピンなどで進んだ通貨高は,輸入インフレを抑制する効果を持っ た。逆に,ベトナムは輸出競争力を維持するためにドル買い介入で通貨高を抑え たため,その政策が国内流動性を膨らませ 2 桁インフレの一因となった。アジア 各国に共通するのは,インフレ抑制策が金融措置だけでなく財政支出をも伴うこ とである。ベトナム,インド,バングラデシュは重要品目の輸入関税を引き下げ, スリランカやモンゴルは公務員給与の引き上げで不満の解消を図った。中国,東 南・南アジアの多くの国は燃料や食糧への補助金政策を採っており,補助金の膨 張が政府・国営企業の財政を圧迫している。  このように各国政府は,高成長ゆえの過剰流動性や高騰する国際商品市況のも とで,インフレ抑制と成長維持との間の舵取りに苦慮している。 7 月にアメリカ のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題が表面化し,金融不 安が世界に広がったが,アジアへの影響は軽微であった。しかし,アジア各国に とっての今後の懸念は,株式市場への影響もさることながら,インフレが進行し ながら世界経済の成長減速がアジアに波及する事態であろう。   経済に牽引された国際協調の進展  2007年のアジアでは,前年に引き続いて中国とロシアが資源外交を積極化する など,経済主導の国際協調が進んだ。  2007年に新たな進展がみられたのは南アジアと ASEAN である。 4 月にイン ドで開催された南アジア地域協力連合(SAARC)首脳会議には,日本,中国,韓国, アメリカ,EU が初めてオブザーバーとして参加し,日中韓 3 カ国は外相を派遣 した。SAARC が域外に開かれた外交の場へと進化した背景には,近年のインド 経済の急成長,それに伴う南アジア諸国の経済発展と平和構築に対する世界的な 関心の高まりがある。2007年にはインドとパキスタン,インドとバングラデシュ, 印中ロ 3 カ国など,インドを軸とした外交関係の改善・強化も進んだ。  他方,ASEAN は近年,中国とインドの躍進の陰で存在感が薄れがちであった。 し か し11月,ASEAN 日 本 包 括 的 経 済 連 携 協 定 が 合 意 さ れ,ASEAN 中 国, ASEAN 韓国と合わせて東アジアの ASEAN プラス 1 自由貿易協定(FTA)が出 揃い,ASEAN は東アジア協力の中軸として浮上してきた。11月の ASEAN 首脳 会議は,結成40周年にして念願の ASEAN 憲章を採択した。加盟国間に立場の

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5 2007年のアジア 違いを抱えつつも,ASEAN は共同体構築に向けて制度的に一歩前進した。  内向き志向を強めるアメリカ・ブッシュ政権は,アジア外交への関心を低下さ せている。しかし,北朝鮮問題では任期中に成果をあげるべく強硬路線から交渉 優先に転じ, 2 月の 6 カ国協議での合意を経てマカオの北朝鮮資金の凍結を解除 した。韓国との FTA は,両国首脳の政治判断によって 4 月に妥結した。また, 7 年ぶりに行われた南北朝鮮首脳会談は,経済協力事業の積極的推進で合意した。   揺れる内政,混迷する地域紛争  成長を続ける経済に支えられてアジアの国際関係は融和基調にあるとはいえ, 各国の内政に目を転ずると不安定要素は少なくない。  2007年に世界の耳目を集めたのは,ミャンマーの動乱であった。 9 月,燃料値 上げや食料品の高騰を背景に僧侶・市民による10万人規模の反政府デモが発生し たが,政府はこれを武力で弾圧した。国連安保理は,中国とロシアが折れる形で 初めてミャンマー軍政に民主化を促す議長声明を採択した。マレーシアでは11月, インド系住民が 1 万人規模のデモを実施した。マレー系住民を優遇する民族政策 への批判と受け止めた政府は,異例の強硬手段でデモを鎮圧した。ネパールでは, 前年に民主化勢力が国王政治に終止符を打ったものの,政党間抗争と政情不安か ら制憲議会選挙を実施できなかった。前年のクーデタで軍が政権を握ったタイで は,新憲法は制定されたが,総選挙で前首相派が勝利し,政局不安は解消されて いない。  民意の表出や権力をめぐる混乱だけでなく,テロを伴う紛争も深刻化している。 アフガニスタンとパキスタン北西部ではターリバーンが勢いを増し,テロ行為が 激化した。パキスタンでは,治安悪化のなか,亡命先から帰国したブットー前首 相が暗殺された。スリランカでは,政府とタミル反政府組織の武力衝突が続いて いる。  多くのアジア諸国にとって,民主化と政治的安定の確保とは,いまだ両立の難 しい課題である。それでも,バングラデシュでは,非常事態宣言下の暫定政権が, 政党の腐敗と汚職に対する改革に着手した。ティモール・レステは,独立後初の 大統領選挙と議会選挙を平穏裡に乗り越えた。香港は,返還後10周年にして初め て複数候補者による行政長官選挙を実施した。こうした政治改革や民主的な選挙 へ向けた努力が,曲折を経ながらも続けられている。 (地域研究センター専任調査役)

参照

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