LGBTの当事者と家族の自己形成における心理的支援に関する研究-ナラティブ・アプローチの視点から-
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(2) 当事者の語りは,r現在」に焦点を当てたものが多. (4)インタビュー回数を重ねることの意味:アイデ. い。語りから,当事者達はr現在」を見据えて生活. ンティティ発達プロセスの理解ではなく,今,目の. していることが分かる。当事者の家族からは,過去. 前のインタビュイーを理解しようとする本研究の試. を振り返り,過去があっての現在があるという認識. みは,臨床場面においてクライエントの理解に活用. をもち,職業,家庭,子育て,社会活動に意欲的に. できる。クライエントとセラピストに一よる繰り返し. 関わろうとする語りが得られた。当事者の「今」の. のナラティブ生成は,過去や現在,時には未来を往. 語りとの違いは,観世代の「過去」のもつ歴史の長. 来することで,その後の自覚的な変容を見出せる。. さである。またLGBT当事者,家族であっても,イ. (5)LGBT支援について:LGBTは社会的な不可視性. ンタビュアーとの関係によって得られるナラティブ. (invisibi1ity)の状態にある。LGBTの支援を考え. は異なり,インタビュイーの語りの気づきにおいて. る前にLGBTの立場を知ることは,非当事者にとっ. も個人差がみられた。. ても新しい知見を得られる。①学校教育現場におけ. 【総合考察】. るLGBT支援…教師や養護教諭,スクールカウンセ. 8名のナラティブを体系的整理し,語る行為が当. ラーなど当事者の周りの専門家は,当事者が自己決. 事者や家族にとってどのような意味があるのか明ら. 定できるようになるまで見守る力量と自己決定に基. かにし,到こ心理的支援の方法を考察した。. づいた個々に応じた支援が求められる。多様な性に. (1)自分自身について語ることの意味=語りはそれま. 対する知識を持ち得ていると,児童・生徒の理解や. での経験を振り返りながら自己を統合していく行為. 見立てがより多面的に行われる。また,多様な性の. である。また自分が作り出した物語を,他者と自分. 知識の伝搬は,柔軟な視点をもつことで様々な教科. とに語ることは,過去に紡ぎ出した物語を検証する. に盛り込むことは可能であり.,当事者の間接的支援. ことにもなる。自己の語り直しは自己認識を変え,. にも非当事者への可視化にもなる。②心理臨床家に. 自己のアイデンティティを再認識するものとなる。. よるLGBT支援…カウンセラーは肯定的,支持的に. (2)語ることによるインタビュイーの気づきと変化:自己の. 接するのは勿論だが,敏感な感覚(SenSitiVity)が求. 内面を表現することは,新たな気づきや自己の考え. められる。また,心理臨床家から地域に働きかけて. を再確認できる。それは自己を統合することへつな. いくなど,アウトリーチする視点も必要である。③. がり,語り手のこれまでの,これからのライフサイ. 医療現場での心理臨床家としてのLGBT支援 心理. クルの中での自己の位置を確認していく力となり得. 臨床学的に考察すると,当事者を診断の枠組みで捉. る。語りによってこれまでの人生を一つの達成と捉. えるのではなく,当事者の生や性のあり様を全人的. え,自分の人生を納得し,現在の自己・過去の自己. に捉える必要がある。④社会におけるLGBT支援…. が整理された時,これからどうしたいのかという未. LGBTの支援は個人を支えるだけでなく,環境を個. 来志向のナラティブが生み出される。. 人に合うように変えるという考え方も必要である。. (3)インタビュアー・インタビュイーとの関係性:両. LGBT当事者がいかに自己形成していき,それをど. 者の親密さの程度によって,語りの展開は変わる。. のように支援するのか方策を講じるだけではなく,. 語りの内容を分析するだけでなく,.両者はどのよう. 環境との相互作用という視点の援助も必要である。. に相手や相手の語りを解釈し,それがどのように語. 主任指導教員 冨永良喜. りに影響を及ぼしたのかを考える必要がある。. 指道勘昌 斗河昌啓 」口r庁^^ 一L』■1 一一 目』. 117一.
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