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重障児の心拍変動を用いたコミュニケーションの基礎的能力に関するアセスメント法の検討

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重障児 の心拍変動 を用 い た コ ミ ユニ ケ ー シ ヨ ンの

基礎的能力 に関す る アセス メ ン ト 法の検討

秀 島 圭 和*

石 倉 健 二**

特別支援学校 (肢体不自由) では、 重複障害学級の在籍率が高 く 、 そこ に在籍す る重度重複障害のあ る児童生徒 (重障 児) の中には表出がほと ん どない者 も少 な く ない。 そ う し た重症児 の コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ンに関 し て、 日常の授業場面で利 用 で き る ア セ ス メ ン ト 法が求 め ら れてい る。 本研究では、 児童生徒が日常的 に使用 し てい るパルス オキ シ メ ー タ 一 を用い て、 持続性心拍変動 と 一過性心拍変動の分析 と授業エ ピ ソ ー ド を加え た検討 を行 っ た。 その結果、 学習内容の違いに よ る 心拍変動の違いが観察 さ れ、 持続性心拍変動におけ る定位反応が認め ら れた。 ま た聴覚や体性感覚の剌激に応 じ た一過性 心拍反応の変動が観察 さ れ、 授業エ ピ ソ ー ド と の関連性から定位反応 を示す も のであ る と 考察 さ れた。 こ う し た結果から 、 表出 がほ と ん どな い重障児 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン学習 の ア セ ス メ ン ト に、 パ ルス オキ シ メ ー タ 一 を用 い た心拍反応が利用 可能で あ る こ と が示唆 さ れた。 キ ーワ ー ド : 肢体不自由, 重度 ・ 重複化, コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ンの基礎的能力 , アセ ス メ ン ト , 心拍変動

I

問題 と 目的

特別支援学校 (小 ・ 中学部) におけ る重複障害学級在 籍率は全体で38.2% 、 肢体不自由では58.0% である (文 部科学省, 2014) 。 本研究では、 こ のよ う な特別支援学 校 (肢体不自由) の重複障害学級に在籍する児童生徒 を 重障児 と す る。 こ う し た重障児の中には、 身体の動 きが 微弱 なために、 相互交渉 を見出すこ と が困難 (岡澤 ・ 川 住, 2005) な児童生徒が在籍 し ており 、 何を手掛かり に 関わり を持 つた ら よ いのかに困惑す る教師は少 な く ない。 そのために、 こ う し た重症児の微弱 な表出行動 を捉え よ う と す る試み も多 く 、 「目の動 き 、 表情、 発声、 手の 活動、 姿勢 ・ 運動、 その他 (自傷, 他傷, 情動行動)」 と い っ た表出行動 のチ ェ ッ ク リ ス ト の作成 ( 蘆田 ・ 石倉, 2013) や、 働き かけ に対す る 「快の反応 ・ 行動で示す」 こ と に関す る ア セ ス メ ン ト シー ト の作成 (秀島 ・ 石倉, 2014) な どの試みが行 われてい る。 し か し なが ら 、 こ う し た微弱 な表出行動 を捉え よ う と す る試みは、 評価者の 主観に陥 る危険性 と 、 他者への説得力 に欠け る場合があ る (保坂, 2003) こ と も 指摘 さ れてい る。 そ こ で、 よ り 信頼性の高い ア セ ス メ ン ト を行 う ために、 表出行動以外 の客観的 な指標 を用 い た ア セ ス メ ン ト 法が求 め ら れる。 「反応が乏 し い」 と い われる重障児の心的活動 を明 ら かにす る方法 と し て定位反応があ る (川住, 1999) 。 定 位反応 と は、 外的 な刺激に対 し て注意 を向け る よ う な反 応の総称 であり 、 外部の刺激の取 り 込みを促進す る適応 的 な機能 を有 し 、 人間 と 環境の関わり におい て、 最 も 早 期に出現す る選択的、 能動的反応で ある (片桐, 1995) 。 定位反応には、 脳活動 と し て脳波等、 眼球運動 と し て注 目点の移動、 瞬目 と 瞳孔反応のデータ、 自律神経系の活 動と し て心拍や精神性発汗のデータがある (片桐, 1995) 。 こ う し た定位反応の中で も、 重障児 で心拍 を用い た研究 は伝統的 に多 く 行われてい る。 心臓の活動は自律神経系の制御下にあり 、 交感系の促 進作用によ っ て心拍は上昇 し、 副交感系 の促進は心拍 を 降下 させる (後藤 ・ 松尾 ・ 佐藤, 1987 ; 保坂, 2003) 。 心 拍反応は他の生理心理学的反応にはない方法論的利点 を も っ てい る。 そ れは、 どんな に重度の障害 を有 し よ う と も 生命活動 を営む限り 、 全 ての事例におい て こ の反応 を 測定 ・ 記録す るこ と が可能であ る (片桐, 1995) と いう 点 で あ る。 ま た、 表出がほと んどない よ う な重障児 では、 日 常 的 に医 療 用 パ ル ス オ キ シ メ ー タ 一 を 用 い て sP0 2 (酸素飽和濃度) や心拍数 を計測 し てい る こ と も多 い。 こ のパ ル ス オ キ シ メ ー タ 一 を ア セ ス メ ン ト の手法 と し て 用い る こ と は、 重障児の学習環境に特別 な統制 を加えず に、 日常的 な学習場面での測定が可能であ る と い う 利点 も あ る。 本研究におい ては、 表出がほと ん どない重障児の コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン学習 におけ る定位反応 に つい て、 心拍 に よ る ア セ ス メ ン ト を試みる。 その上で、 心拍変動 と 授業エ ピ ソ ー ドの関連 を分析 し、 授業実践上での心拍変動 を活 用す る こ と の可能性につい て検討す る も ので あ る。 II 対象 と な る生従 と 授業 対象児は、 B 県内 c 特別支援学校 (肢体不自由) 中 学部の重複障害学級に在籍する生徒である (14歳 3 ケ月)。 超重障児ス コ ア (江草, 2005) は19点で、 刺激作用に対 す る行動上の変化はほと んどない。 遠城寺式 ・ 乳幼児分 析的発達検査法 (遠城寺 ・ 合屋, 2009) の対人関係 ・ 発 語 ・ 言語理解の検査結果は全 て月齢2.0 ケ月程度で あ る

(2012年 5 月 9 日実施) 。

授業中の対象児の行動記述の裏付け と な る数量的資料 の収集 を目的 と し て、 3 台の VTR を用い て記録 し た。 対象児 の心拍数は、 パ ルス オキ シ メ ー タ 一 (山形 カ シ オ, FOシ リ ー ズ, Ox -001) を用 い 、 表示 さ れ る 心 拍数 を VTR1 で撮影 し た。 VTR2 は対象児の表情 を、 VTR3では 授業の全景 を撮影 し た。 * 佐賀県立唐津特別支援学校 * * 兵庫教育大学大学院特別支援教育学専攻 平成26年10月14 日受理

(2)

記録 し た心拍変動 を授業エ ピ ソ ー ド と と も に記録 し、 心拍変動 と 比較 ・ 分析 を行 う 。 こ のと き の授業エ ピ ソ ー ド と は、 教師の行動 と 教師の行動以外の教室内の出来事 を さ す。 教師の行動 につい ては、 教師の行動 カ テ ゴリ ー (田中 ・ 乾 ・ 久米 ら , 2000) を参考に し た。 授業は臥位の状態で行 っ た。 2013年 2 月21 日に実施し た 「楽器の授業」 ( 7 分10秒間) と同年 2 月27 日に実施 し た 「医療的ケアと 担任の声学習」 (16分 5 秒間) の授 業 を記録 し た。 「楽器の授業」 におけ る活動内容は ト ー ン チ ャ イ ム、 マ ッ サ ー ジか ら 構成 さ れた。 「医 療的 ケ ア と担任の声学習」 の活動内容は、 医療的ケア、 担任の声 かけ 、 睡 眠、 足 を触 る、 で あ る。 対象児 のべ一 ス ラ イ ンの心拍 を臥位の姿勢で 2 分50秒 間測定 し た (2013年 3 月 4 日実施) 。 測定は、 相対的に 各種刺激作用が少 ない場面で、 大人から の働き かけや接 近 な どな く 、 暗騒音 レ ベルも 低い覚醒安静時 と し た。 v TR1で撮影 し た心拍数 を 5 秒 ごと に測定 し 、 その数 値 を グラ フ化す る。 そ こ に授業エ ピ ソ ー ド を書 き加え る こ と で心拍反応 と 授業エ ピ ソ ー ドの関連で定位反応の発 生を分析する。 保護者と 担任には事前に研究の趣旨 と 方法 を文書 と口 頭で説明 し、 保護者か ら は承諾書 にサイ ンを得 た。 2 一過性心拍変動 心拍の加速反応 (一過性の増加) は防御反応成分 を、 心拍の減速反応 (一過性の減少) は定位反応成分 を反映 し てい る言われる (片桐 ・ 小池 ・ 北島, 2000) 。 そ し て、 心拍の連続変動 を授業エ ピ ソ ー ド と 照合す る こ と によ っ て、 環境条件の変化や刺激作用、 そ し て大人の働き かけ な どが心拍 の変動 に どのよ う な影響 を及ぼす か を具体的 に見るこ と ができ る (片桐, 1995) 。 そのため、 授業エ ピ ソ ー ド を心拍変動 の グラ フ内 に記 述 し、 授業エ ピ ソ ー ド に対す る一過性心拍変動 (加速反 応, 減速反応) が どのよ う に出現 し たかについ て検討 を 加え る。

m 結果 と 考察

1 楽器の学習 (1 ) 持続性心拍変動 につい て 「楽器の授業」 の02 : 20から07 : 10におけ る各活動 ( ト ー ン チ ャ イ ム、 マ ッ サ ー ジ) と ベ ー ス 期 に お け る 平 均心拍、 標準偏差、 心拍変動率 を Tablet と Fig.1に示す。 Tab l e t 「楽器の学習」 における心拍変動 活動 平均心拍 標準偏差 心拍変動率

m 分析方法

本研究の分析には、 持続性心拍変動 と 一過性心拍変動 を用 い る。 1 持続性心拍変動 持続性心拍変動は、 あ る場面におけ る持続的 な心拍変 動 を捉え る も のであ る。 その測定方法は、 片桐 (1995) に従 う も のと す る。 まず、 対象者のべ一 ス期 におけ る平均心拍 (HR) と 心拍変動率 (HRv ) を算出 し 、 こ れを心拍活動のべ一 ス ラ イ ン と す る。 こ のベ ース ラ イ ン を基準 と し て、 授業 の各活動場面 におけ る平均心拍数の減少が認め ら れた と き に、 そ れは刺激 に対 す る定位反応があ っ た も の と 判断 す る。 し か し ながら 、 心拍数そのも のは個人差が著 し い ため、 こ の心拍数のみを指標 と し て用い る こ と は困難で あ り 、 作業の性質 を明 ら かにす るこ と ので き る指標は、 平均心 拍よ り も心拍変動率 と 考え ら れてい る (古谷野, 1980) 。 心拍変動率は、 その時の心拍の安定性 を示す指標であり 、 こ れが大きい場合には落ち着かない な どの過剰 な反応が、 心拍変動率が小 さい場合には落ち着い て活動に取 り 組ん でい る可能性があ る と 判断で き る。 心拍変動率の求め方は、 一定時間内の心拍数の変動の 標準偏差 を用い る方法 (sD 法) や、 こ の標準偏差 を平 均心拍数で除 し100倍す る方法 (変動率法) な どが報告 さ れてい る (後藤 ・ 松尾 ・ 佐藤, 1987) 。 平均値が大 で あ れば分散 も大 と な る こ と か ら 、 心拍数の変動 を相互に 比較す るには心拍の変動率は 「心拍の標準偏差 (SD) / 平均心拍 (HR) 」 を用い るのが適切であ る言われてい る (古谷野, 1980) 。 そこ で、 本研究におけ る心拍変動率は、 HRV=(SD/HR) X100によ っ て求めるこ と と す る。 ベース期 80. 0 5. 7 7. 1 ト ー ンチ ャイ ム 74. 1 3. 5 4. 8 マ ッ サー ジ 68. 0 6. 4 9. 4 授業全体 69. 9 3. 5 5. 1 ベ ース期 に比べて 「楽器の授業」 全体の平均心拍は10 拍程度少 ない (Tablet ) 。 こ のこ と から対象児は、 本授 業場面 について全体的 に定位 し てい るこ と が推測 さ れる。 ま た、 マ ッ サ ー ジ場面 の平均心拍 の方が、 ト ー ンチ ャイ ムを用い た場面の平均心拍 よ り も低い。 こ のこ と か ら 、 ト ー ンチ ャイ ムを用 い た関わり よ り も 身体 に触 れら れる 活動の方 に、 よ り 定位 し てい る こ と がう かがえ る。 一方 で、 ト ー ンチ ャイ ムを用 い た活動は、 マ ッ サ ー ジ場面 に 比べ て心拍変動率が4.8 と 比較的低い値 を示 し てい る。 こ れは心拍の変動が小 さ い こ と を示 し てお り 、 落ち着い た活動 で あ っ た と 考え ら れる。 (2) 一過性心拍変動について 「楽器の学習」 におけ る一過性心拍変動 と授業エ ピソ ー ド を Fig 2 に示す。 一過性心拍変動のう ち加速反応 と授業エ ピ ソ ー ドが一 致 し たのは、 ド アの開閉場面 で あ る。 こ の教室の ド アの 開閉音は比較的大き く 、 臥位で姿勢保持 し てい る対象児 には、 よ り 大 き く 感 じ ら れた可能性があ る。 ま た、 担任 と 看護師か ら の聞 き取 り によ る と 、 対象児は ド アの開閉 音 を、 嫌い な医療的 ケ ア を行 う 看護師の来室 と し て捉え てい る よ う で あ る こ と で あ っ た。 こ う し た こ と か ら ド ア の音刺激に対 し ては、 対象児 が驚愕反応 を示 し てい る こ と が推察 さ れる。

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ま た、 太鼓の始 ま り と 終わり 、 非担任の声かけ と ト ー ンチ ャイ ム、 非担任の声かけ と マ ッ サー ジ始ま り の場面 では心拍の減少が確認 さ れた。 こ れは、 対象児 が楽器や 声かけ に対 す る定位 し てい る こ と を示す も の と 考え ら れ る。 3 医療的ケア と 担任の声学習 (1 ) 持続性心拍変動について 「医療的ケアと担任の声学習」 におけ る各活動 (医療 的 ケ ア、 担任 の声 かけ、 睡眠、 足 を触 る) と ベ ース期の

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ト ーンチャ イム 時間 (分秒) マ ッサージ F i g. 1 「楽器の学習」 における持続性心拍変動 平均心拍、 標準偏差、 変動率 を Table2 と Fig 3 に示す。 べ一 ス期の平均心拍に比べ 「医療的 ケ ア と担任の声学 習」 全 体 の平均 心拍 は、 10拍程度少 な く な っ て い る (Table2) 。 こ のこ と から、 対象児は本授業に対 し て全体 的 に定位 し てい た と 推察 さ れる。 ま た、 医療的 ケ アや足 を触 る場面の平均心拍は、 担任の声かけ よ り も低い こ と か ら 、 身体 に触 れる活動 の方 に よ り 定位 し てい た こ と が う かがえ る。 一方、 担任の声かけ活動では心拍変動率が 4.8で あ り 、 医療的 ケ アや足 を触 る場面 に比べ て比較的 低い値 を示 し てい た。 こ のこ と は、 身体 に触 れる活動 よ fL

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時間 (分秒)

F i g 3 「医療的ケ ア と 担任の声学習」 に おけ る持続性心拍変動 り も担任の声かけ によ る関わり が、 よ り 落ち着い た活動 で あ っ た と 考え ら れる。 本授業中では眠 っ て し ま う こ と があ っ たが、 こ の場面 の平均心拍は67.1 と 最も低 く 、 ま た心拍変動率 も1.1 と 極 め て小 さ か っ た。 こ のこ と か ら 、 心拍反応 を用 い た ア セ ス メ ン ト におい ては、 覚醒状態が維持 さ れ、 運動 や姿勢 変換によ る心拍変動がない状態で測定す る と い っ た配慮 が必要で あ る と 言え る。 Tab l e 2 医療的ケ ア と 担任の声学習におけ る心拍変動 IV ま と め 持続性心拍変動 につい て、 「楽器の授業」 と 「医 ケ ア と担任の声学習」 の分析結果から、 どち ら の授業 も楽器 や担任の声かけ と い っ た聴覚的刺激と 、 医療的ケアやマ ッ サ ー ジ、 足 に触 れる な どの体性感覚刺激に定位 し てい る と 考え ら れる。 ま た二つの授業 に共通 し て、 身体に触 れ ら れる体性感覚的刺激によ る関わり の方が、 楽器や教師 の声かけ な どの聴覚刺激 を用い た関わり よ り も 定位 し て い た と 考え ら れる。 ま た、 一過性心拍変動の結果か ら、 担任の声かけ やそ の後の楽器やマ ッ サ ー ジ と い っ た刺激行為 に対 し ての定 位反応がみら れた。 こ のこ と は、 持続性心拍変動の分析 結果 と一致す る。 し か し こ う し た心拍変化の読み取 り につい ては、 幾つ かの留 意点 があ る。 一 つは、 医療的 ケ アの刺激に応 じ て 重障児の心拍数が大 き く 変化す る場合があ る (岡澤 ・ 川 住, 2005) こ と である。 今回の対象児の医療的ケアは胃 ろ う の管理に関す る も ので あ っ たが、 疾の吸引 な どの身 体的 な刺激が強い も のでは、 大 き な変動 も予 想 さ れる た め、 測定値 を読 み取 る際には注意が必要で あ る。 ま た重障児 の中 には、 健常乳児 と 比較 し て反応時間が 遅 れる こ と も 考慮 し てお く 必要があ る (飯野, 2007) 。 あ るいはま た、 覚醒水準の維持が困難な こ と によ る反応 性の急速な低下 も考え ら れる (川住, 1999) 。 こ のよ う な定位反応の不安定 さ は、 重障児 に と っ て刺激や働 き か け の受け入 れやすい時 と そ う で ない時があ る こ と を示 し てお り 、 働 き かけ と 測定値の読 み取 り には注意が必要で あ る o 今回実施 し た授業は、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン学習 の一環 と し て行 っ た も ので あ る。 仮 に、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの 定義 を、 子 ども と 大人の双方向のやり と り の上に成り 立 っ てい る も の (川住, 1999) と す る な ら ば、 刺激に対す る 定位反応は子 ど も か ら大人ま たは外界への志向性の表 れ で あ り 、 双方向のやり と り と 言 う よ り は、 そ れに至 る前 活動 平均心拍 標準偏差 心拍変動率 ベース期 80. 0 5. 7 7. 1 医療的ケア 68. 4 4. 2 6. 2 担任の声かけ 74. 0 3. 5 4. 8 睡眠 67. 1 0. 7 1. 1 足 を触る 70. 6 4. 2 6. 0 授業全体 70. 8 2. 8 4. 0 (2) 一過性心拍変動のアセス メ ン ト 「医療的ケア と担任の声学習」 におけ る心拍変動 と授 業エ ピソ ー ド を Fig4 に示す。 ド アの音が し た 2 つ場面 では、 い ず れも その直後に心 拍が増加す る加速反応が見 ら れてお り 、 驚愕反応が示 さ れた と 考え ら れる。 同様の反応は、 「楽器の学習」 場面 で も観察 さ れてい る。 こ の授業で加速反応と授業エ ピソ ー ド が一致 し たのは こ の場面 だけ で あ る。 対象児 は、 ド ア の音に つい て、 そ れを他の音 と 弁別 し て、 その意味 を理 解 し てい る も の と 考え ら れる。 ま た、 医療的ケ アの開始、 残渣を胃 に戻す、 担任の声 かけ、 担任が足 を触 る場面 で減速反応 を示 し てい る。 こ のこ と か ら 、 対象児 が、 身体 に触 れら れる こ と や担任の 言葉かけ に定位 し てい たこ と が推測 さ れる。

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医ケア

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究, 38(1) , 1-12.

時間 (分秒)

F i g 4 「医療ケ ア と 担任の声学習」 に おけ る一過性心拍変動 と 授業 エ ピ ソ ー ド 段階の も の と 言え る。 そのため本研究 で行 っ たよ う な定 位反応 の測定は、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの ア セ ス メ ン ト 法 と 言 う よ り は、 コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ンの基礎的能力 に つい て の ア セ ス メ ン ト 法 と 考 え る方 が妥当 で あ る。 そ し て そ れ を ア セ ス メ ン ト す る た め の方 法 と し て 、 パ ル ス オ キ シ メ ー タ 一 を利用 す る こ と が可能 で あ る こ と が今回の研究 で示唆 さ れた。 さ ら に重要な こ と は、 こ う し た定位反応の結果 を教師 が適切に把握 し、 自 ら の働き かけ を児童生徒が定位 し や すいやり 方 に変え る こ と で あ る。 そ れがで き る こ と で、 教師の一方的な働き かけ ではな く 、 児童生徒の能動的 な 注意 を促 し 、 児童生徒の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの基礎的能 力 の獲得 を期待す る こ と がで き る。 そ れが将来的 には、 双方向性のあるやり 取り へ発展す る可能性 も期待でき る。 そ の た めは、 パ ル ス オ キ シ メ ー タ 一 で の定位反 応 の ア セ ス メ ン ト を糸口 と し なが ら、 教師が重障児への関わり 方 を変化 さ せてい く 過程に関す る研究 も必要に な る と 考え る。

引用文献

蘆田圭 ・ 石倉健二 (2013) 重症心身障害児の表出カ テ ゴ リ ー表の作成. 兵庫教育大学学校教育学研究紀要, 25,

75-82.

江草安彦 (1998) 重症心身障害療育マニ ュ アル第 2 版. 医歯薬出版株式会社. 遠城寺宗徳 ・ 合屋長英 (2009) 遠城寺式 ・ 乳幼児分析的 発達検査法一 九州大学小児科改訂版. 慶応通信. 後藤吉夫 ・ 松尾 裕 ・ 佐藤昭夫 (編) (1987) 自律神経

参照

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