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鶏骨による小腸穿通に対し腹腔鏡アプローチを行った一手術例

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Academic year: 2021

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鶏骨による小腸穿通に対し腹腔鏡アプローチを行った一手術例

, 岩 崎

茂, 堀 井 吉 雄

室 谷

研, 高 橋 憲

, 塚 越 浩 志

吉 成 大 介, 小 川 博 臣, 竹 吉

要 旨 症例は 52歳, 男性. 右下腹部痛で当院を受診し, 急性虫垂炎の疑いで入院となった. 血液検査では軽度の炎 症所見のみであったが, 腹部 CT で小腸内に high densityな線状の異物を認めた.小腸異物による穿通と診断 し手術を行った. 腹腔鏡で腹腔内の検索を行うと回腸の一部に発赤を認めた. 発赤部位の直上で小開腹を行 い小腸を切開し異物を摘出した. 異物は V字型の骨様であり形状と本人の食事歴より鶏骨と判断した. 術後 経過は良好で術後 6日目に退院した. 消化管異物の症例に対する腹腔鏡アプローチは広範囲に腹腔内の観察 が行え,最小限の で処置が可能である.病状に応じてはファーストチョイスになりうると えられる. (Kita-kanto Med J 2009;59:165∼169) キーワード:鶏骨, 小腸穿通, 腹腔鏡手術 は じ め に 消化管異物は幼児や老人などの誤飲によるものが多 く, 大きさや形状によっては自然排泄を期待できること が多い. しかし, 魚骨などの異物は本人の自覚無しに嚥 下され, 消化管穿孔, 膿瘍, 肉芽腫形成などの合併症を起 こす可能性がある. また食道から直腸までどの部位でも 合併症が起こっても不思議はなく症状も多様である. 今回, 虫垂炎様の症状を契機に発見された小腸異物に 対して腹腔鏡アプローチを行った症例を報告する. 症 例 患 者:52歳, 男性 主 訴:右下腹部痛 既往歴:平成 16年 腸閉塞で入院 (原因不明) 現病歴:2007年 6月, 朝より右下腹部痛が出現し, 当院 を受診した. 診察の結果, 急性虫垂炎疑いで入院となっ た. 入院時現症:意識清明, 体温 36.8℃ 脈拍 70回/ 整 血圧 133/90mmHg 腹部は平坦, 軟で右下腹部に限局す る圧痛, 反跳痛を認めた. 1 群馬県館林市成島町262-1 館林厚生病院外科 2 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学大学院臓器病態外科 平成21年2月12日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学大学院臓器病態外科 竹吉 泉 図1 腹部単純 X 線写真 少量の小腸ガス像および右側腹部に V字型の異物影 を認めた.

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入院時検査所見:白血球 9810/ l,CRP 0.25mg/mlと軽 度の炎症反応を認めた. 肝・腎機能, 凝固系の異常はな かった. 腹部単純 X線所見:小腸ガス像を軽度認め, 右側腹部に V字型の異物影を確認した (図 1). 腹部CT所見:free air, 腹水はなかった. 右側腹部の小 腸内に先端が鋭利な high densityの線状異物を認め, 腸 管壁の貫通が疑われる所見があった (図 2a). また回盲部 に浮腫性の変化があり, 虫垂炎の存在も否定できなかっ た (図 2b). 以上より小腸異物による穿通と診断し, 翌日 待機的に手術を行った. 手術所見:臍下部にカメラ用 12mmポート, 左下腹部, 下腹部正中にそれぞれ 10mm, 5 mmポートを留置し腹腔 内を観察した. 術前の CT で回盲部に浮腫性の変化があ り虫垂炎の存在も疑った. しかし虫垂自体には炎症所見 はなかった. 術前に本人への説明の際に虫垂炎の可能性 も話してあり, 予防的切除も希望されていたため虫垂切 除を行った. 虫垂摘出後, 小腸を鉗子でたどりながら慎 重に観察していくと白苔の付着を伴う発赤部位を認めた (図 3). 腸管外への異物の露出はなかった. 周囲の小腸, 腸間膜には損傷なく, 腸内容の流出, 膿瘍形成などはな かった. 同部位を鉗子で把持し, その直上で約 4 cmの小 図2 腹部造影 CT 検査所見

a:右側腹部の小腸内に先端が鋭利な high densityの線状異物を認め, 腸管壁の貫通が疑われる所見を認めた. b:回盲部に浮腫性の変化を認めた. 図3 手術所見 1 回腸に白苔の付着を伴う発赤部位を認めた. 図4 手術所見 2 約 4cmの小開腹をおき腸管を体外へ誘導し, 小 切開をおいて約 5cmの V字型異物を摘出した. 図5 摘出異物写真 5.5cmと 3.5cmの先端鋭な物で構成される V字型の骨様の異物であった.

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開腹をおき腸管を体外へ誘導した. 小腸に小切開をおい て約 5 cmの V字型異物を摘出した (図 4). 手術時間は 2 時間, 出血は少量であった. 摘出物肉眼的所見:5.5cmと 3.5cmの先端鋭な物で構成 される V字型の骨様の異物であった (図 5). 術後経過:術後経過は良好で感染を来すことなく術後 6 日目に退院した. 本人に食事歴を聞いたところ, それほ ど大きな骨を持つ魚を食べたことはなく, 数日前にフラ イドチキンを食べ, その際に軟骨ごと摂取したかもしれ ないとのことであり骨様異物は鶏骨と判断した. 察 消化管異物は 貨, ボタン電池などの誤飲によるもの から魚骨など食事に関連する物まで多様である. 消化管 穿孔など合併症を起こす鋭的異物は本邦では魚骨による ものが多く, 欧米では食事習慣の違いからか鶏骨による ものの報告が多い. 本邦の鳥骨による小腸穿孔の報告 は 5例と稀ではある が魚骨と同様に鋭的異物であり 重症合併症を起こす可能性がある. MD-CT に代表される画像技術の進歩により消化管異 物の穿孔例における正診率は向上していると えられ る. CT 検査において魚骨は線状の高吸収域として描出 され, CT 診断の有用性は高い. 異物が症状を起こすほ どの長さ, 太さであり, 魚の摂取歴が得られれば診断が つく可能性が高い. しかし骨の長軸に対し垂直方向の断 面しか得られない場合は水平断での診断は困難である. マルチスライスによる多角的画像構築を駆 すれば異物 の立体像やより詳細な部位の同定も可能であろう. 葉ら は 1990-1999 年までの魚骨による穿孔症例 229 例を集計 し, 術前の正診率は 22.3%と報告している. 中でも腹膜 炎型は急性虫垂炎もしくは消化管穿孔として緊急手術と なることが多いため正診率が低いとしている. 問診によ り診断がつく可能性もあるが本人の自覚無しに嚥下され ていることが多い. 本症例では CT 検査で鋭的な小腸異 物との予想はついたが, 大きさや形状より骨との確診は 得られなかった. 摘出物の成 析は行っておらず, 解 剖学的な同定も行っていないが, 術後に念入りに問診を 行い, 魚骨は否定的であり, 食事歴より鶏骨と判断した. 人工物の誤飲と異なり骨系の異物は本人の自覚に乏しい ため画像診断で疑われた場合, 術前の入念な問診が肝要 である. 近年腹腔鏡手術の普及に伴い消化管異物に対する腹腔 鏡下手術の報告が見られるようになった. 腹腔鏡下 手術の利点として小さい からの広範囲な腹腔内の観察 が可能な点が挙げられる. 小腸自体は可動性があり小切 開 からでも比較的広範囲の部 を引き出して処置が可 能であるが, 小腸異物の穿通や穿孔の場合, 近傍の臓器 損傷の確認も重要になってくる. この点腹腔鏡を用いた 検索では腹腔内全体の観察が可能であり, 病変部を大き く移動させずに隣接臓器の損傷の有無などを確認でき る. さらに穿孔など腹膜炎症例の場合, 腹腔内洗浄を行 うことが多いと思われる. この際小切開 からの洗浄で は不十 と えられるが腹腔鏡下手術の場合, 局所だけ ではなく広範囲の洗浄, 吸引を行うことが可能であり遺 残膿瘍の発生の低下にもつながると える. 本症例では症状が急性虫垂炎に類似しており術前の CT でも回盲部が浮腫状で, 虫垂炎の存在を否定できな かった. 画像上の異物周囲の炎症所見も軽度であり, 症 状は虫垂炎からきている可能性もあった. 腹腔鏡下観察 ではこのような他部位の検索も術 を拡大することなく 可能である. 仮に今回, 異物存在部位が上部空腸であっ た場合, 上部空腸と虫垂周囲の観察にはある程度大きな 開腹 を要したと思われるが, 腹腔鏡下手術の場合, 拡大の必要性がなく優位性は高いと思われる. 予防的虫 垂切除には賛否両論があると思われるが本症例では術前 の十 な説明の上で本人の希望により虫垂切除を行っ た. 他の消化器手術においても無症候胆石の手術の併施 を患者が希望されることもあり, 腹腔鏡の利点を生かし たこのような付加手術が増えてくるかもしれない. 永井らは魚骨の胃穿通による肝膿瘍症例に完全鏡視下 での魚骨摘出を報告している. 本症例の場合, 異物が 5 cmと比較的大きく, V字型の特殊な形状であったため 腹腔鏡下での摘出は困難と え小開腹下での処置を選択 した. 魚骨など単針様のものであれば完全鏡視下の処置 も可能と える. ま と め 鶏骨と思われる小腸異物の穿通症例に対し, 腹腔鏡下 の観察を行い小開腹により摘出した手術例を報告した. 術前診断には CT 検査が有用であり, 小腸異物症例に対 する腹腔鏡アプローチは第一選択になりうると えられ る. 文 献 1. 葉 李久雄, 井上 , 渡辺靖夫, 他 : 術前に診断し得た 魚骨による回腸穿孔の 1治験例―過去 10年間の魚骨に よる消化管穿孔 271例の 析―. 日消外会誌 34(11): 1640-1644, 2001.

2. Gokhan Y,Sadettin C,Turgut T : Perforation of Meckel s diverticulum by a chicken bone, a rare complication : report of a case. Surg Today 34: 606-608, 2004. 3. Akhtar S, McElvanna N, Gardiner KR : Bowel

perfora-tion caused by swallowed chicken bones -a case series. UMJ 76(1): 37-38, 2007.

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の 1例. 日臨外医会誌 69(11): 2897-2899, 2008. 5. 野村 , 豊田哲鏑, 中村有希, 他 : 鳥骨によって生じた 小腸穿通の一例. 日腹部救急医会誌 28(2): 380, 2008. 6. 神 寛之, 笠島浩行, 石澤義也, 他 : 鳥骨によって遅発性 に生じた小腸穿孔の一例. 日腹部救急医会誌 26(2): 375, 2006. 7. 清田正之, 柚木靖弘, 万代康弘, 他 : 術前に診断し得た鳥 骨による小腸穿孔・汎発性腹膜炎の一例. 岡山医会誌 117(2): 172, 2005. 8. 藤田正広,大道寺浩一,大山 仁 : 鶏骨による小腸穿孔の 1例. 函館医学誌 22(1): 69-72, 1998. 9. 上山 聴, 上川康明, 小林達則, 他 : CT にて術前診断し 得 た 魚 骨 に よ る 小 腸 穿 孔 の 1例. 臨 外 56(9): 1273-1276, 2001. 10. 永井 一, 村田幸平, 瀬下 巌, 他 : 魚骨の胃穿通に対し て腹腔 鏡 下 異 物 除 去 術 を 施 行 し た 1例. 日鏡外会誌 12(4): 391-395, 2007. 11. 熊野 束, 佐藤 功, 水谷 真, 他 : 魚骨穿通による腹壁 膿瘍に対して腹腔鏡補助下異物除去術を施行した 1例. 臨外 63(5): 737-740, 2008. 12. 伴登宏行 : 腹腔鏡下手術が有用であった嚥下魚骨による 小腸穿孔の 1例. 日腹部救急医会誌 21(8): 1405-1408, 2001.

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Laparoscopic Approach for A Small Intestinal

Penetration Caused by a Chicken Bone:

A Case Report

Hirofumi Tsutsumi,

Shigeru Iwazaki,

Yoshio Horii,

Ken Muroya,

Norifumi Takahashi,

Hiroshi Tsukagoshi,

Daisuke Yoshinari,

Hiroomi Ogawa

and Izumi Takeyoshi

1 Department of Surgery, Tatebayashi Kosei Hospital

2 Department of Thoracic Visceral Organ Surgery, Gunma University Graduate School of Medicine

A 52-year-old man presented with right lower abdominal pain and was hospitalized on suspicion of acute appendicitis. Inflammatory markers were elevated slightly on laboratory examination. Comput-ed tomography of the abdomen showComput-ed a high-density linear foreign body in the small intestine.

An emergency operation was performed with a diagnosis of small bowel penetration of a foreign body. On laparoscopic examination, part of the ileum was red. The injured ileum was taken out through a minimal incision, and a V-shaped foreign body was removed from the ileum. Based on the patients dietary history, we believe that the foreign object was a chicken bone.

The laparoscopic approach for foreign bodies in the digestive tract can observe the abdominal cavity extensively and remove the object with a minimal incision. This could become the first-choice treatment for removing foreign objects in the digestive tract depending on the patients condition.(Kitakanto Med J 2009;59:165∼169)

参照

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