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Tilted disc syndrome associated with serous retinal detachment : long-term prognosis. A retrospective multicenter survey(傾斜乳頭症候群に伴う漿液性網膜剥離の長期予後に関する多施設後ろ向き観察研究)<内容の要旨及び審査結果の要旨>

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Academic year: 2021

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Nagoya City University Academic Repository

学 位 の 種 類 博士 (医学) 報 告 番 号 乙第1904号 学 位 記 番 号 論第1666号 氏 名 久保田 文洋 授 与 年 月 日 令和 2 年 3 月 25 日 学位論文の題名

Tilted disc syndrome associated with serous retinal detachment: long-term prognosis. A retrospective multicenter survey

(傾斜乳頭症候群に伴う漿液性網膜剥離の長期予後に関する多施設後ろ向き観 察研究)

Am J Ophthalmol 207: 313-318, 2019.

論文審査担当者 主査: 間瀬 光人

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傾 斜 乳 頭 症 候 群 ( T D S ) は 視 神 経 乳 頭 の 傾 斜 ( t i l t e d d i s c ) と 下 方 ぶ ど う 腫 を 特 徴 と す る 先 天 性 構 造 異 常 で 、 片 眼 性 が 多 く 、 高 度 近 視 で な い 場 合 が 多 い 。 合 併 症 は 上 耳 側 視 野 欠 損 、 網 脈 絡 膜 萎 縮 、 脈 絡 膜 新 生 血 管 ( C N V ) な ど が あ る 。 光 干 渉 断 層 計 が 普 及 し 網 膜 の 詳 細 構 造 の 観 察 が 可 能 と な る と 、 漿 液 性 網 膜 剥 離 ( s R D ) の 合 併 が 報 告 さ れ る 様 に な っ た 。 C N V の 併 発 の 可 能 性 が 考 え ら れ る 他 、 s R D を 伴 う 類 似 疾 患 で あ る 中 心 性 漿 液 性 脈 絡 網 膜 症 の 治 療 を 参 考 に 、 抗 血 管 内 皮 増 殖 因 子 ( V E G F ) 療 法 や 光 線 力 学 的 療 法 ( P D T ) の 有 効 性 の 報 告 が 散 見 さ れ る が 、 臨 床 経 験 で は 無 効 例 も 多 い と 考 え ら れ て い た 。 論 文 報 告 も 少 数 で あ り 、 T D S 合 併 s R D に 対 す る 治 療 の 有 効 性 や 長 期 予 後 は 不 明 で あ る 。 そ こ で 、 我 々 は 国 内 の 8 施 設 で 多 施 設 後 ろ 向 き 研 究 を 行 っ た 。 6 5 眼 の 全 症 例 か ら 、 C N V を 合 併 す る も の 、 - 8 D 以 上 の 強 度 近 視 、 眼 軸 長 2 6 . 5 m m 以 上 は 除 外 し た 。 さ ら に 3 か 月 以 上 s R D が 遷 延 し 、 1 年 以 上 経 過 観 察 が 可 能 で あ っ た 4 1 例 4 8 眼( 男 性 1 4 例 、女 性 2 7 例 ) に つ い て 調 査 し た 。 片 眼 性 3 4 例 ( 8 3 % )、 平 均 年 齢 6 4 . 2 歳 、 平 均 観 察 期 間 3 . 3 年 、 平 均 透 過 球 面 度 数 - 1 . 5 D 、 平 均 眼 軸 長 2 4 . 6 m m 、 網 膜 色 素 上 皮 ( R P E ) 萎 縮 を 伴 う も の 7 0 % 、フ ル オ レ セ イ ン 蛍 光 眼 底 造 影 で 過 蛍 光 を 認 め た も の 9 1 % 、 イ ン ド シ ア ニ ン グ リ ー ン 蛍 光 眼 底 造 影 で 低 蛍 光 を 認 め た も の 6 1 % で あ っ た 。 治 療 内 容 は 、 抗 血 管 内 皮 増 殖 因 子 ( V E G F ) 薬 硝 子 体 内 注 射 の み 3 5 % 、 光 線 力 学 的 療 法 ( P D T ) の み 2 1 % 、 P D T と 抗 V E G F 薬 の 併 用 療 法 1 0 % 、 無 治 療 3 3 % で あ っ た 。 解 析 の 結 果 、 ベ ー ス ラ イ ン ( B L ) の 平 均 視 力 と 平 均 最 終 視 力 に 有 意 差 を 認 め な い 。 平 均 中 心 窩 網 膜 厚 ( C R T ) は B L よ り 最 終 で 有 意 に 減 少 し た 。 次 に 最 終 的 に s R D が 残 存 し た 2 7 眼 ( 5 6 % ) と 消 退 し た 2 1 眼 ( 4 4 % ) で 比 較 し た 。s R D が 残 存 し た 群 で は B L よ り 平 均 最 終 視 力 で 軽 度 悪 化 し た が 有 意 差 は 認 め な い 。C R T は B L よ り 最 終 で 軽 度 減 少 し た が 有 意 差 は 認 め な い 。 一 方 、 s R D が 消 退 し た 群 で は B L よ り 最 終 で 有 意 に 平 均 視 力 お よ び C R T が 改 善 し た 。 次 に 治 療 介 入 し た 群 と し な か っ た 群 で 比 較 し た 。 治 療 介 入 し な か っ た 群 で は 、B L と 最 終 を 比 較 す る と 視 力 も C R T も 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 治 療 介 入 し た 群 で も 、 B L と 最 終 で 視 力 に 有 意 差 を 認 め な か っ た が 、 C R T で は 最 終 で 有 意 な 減 少 を 認 め た 。

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最 終 で s R D を 認 め な い 症 例 は 、s R D 遷 延 症 例 よ り 視 力 は 有 意 に 良 か っ た 。抗 V E G F 療 法 や P D T は s R D を 減 少 さ せ た が 、自 然 治 癒 も 認 め 、 治 療 介 入 に よ る 視 力 改 善 効 果 は 認 め な か っ た 。 本 研 究 結 果 か ら 、 最 終 的 に s R D の な い 眼 で 、 最 初 の 視 力 が ( 0 . 5 ) だ と 最 終 視 力 ( 0 . 7 ) 以 上 が 3 3 . 3 % で あ る が 、 最 初 の 視 力 が ( 0 . 6 ) だ と 最 終 視 力 ( 0 . 7 ) 以 上 が 7 5 . 0 % と な る 。 つ ま り 最 初 の 視 力 が ( 0 . 5 ) 以 下 だ と 予 後 不 良 に な る 。 一 方 、 最 終 観 察 時 に s R D 消 退 し て い る に も 関 わ ら ず 視 力 ( 0 . 6 ) 以 下 の 眼 は 全 て B L 視 力 は ( 0 . 6 ) 以 下 で あ っ た 、 最 終 観 察 時 に s R D を 認 め る 群 の 最 初 の 視 力 は ( 0 . 9 ) 以 下 で あ っ た 。 つ ま り 最 初 の 視 力 が ( 0 . 9 ) 以 下 の 眼 は s R D が 治 ら な い と ( 0 . 6 ) 以 下 に 下 が る 可 能 性 が あ る 。 以 上 か ら 、 最 初 の 視 力 が ( 1 . 0 ) 以 上 の 場 合 、 s R D が 遷 延 し て い て も 最 終 視 力 は ( 0 . 6 ) 以 下 に な っ て い な い の で 経 過 観 察 で 良 い 。 最 初 の 視 力 が ( 0 . 9 ) 以 下 で あ れ ば 適 宜 、 P D T か 抗 V E G F 療 法 を 行 う と 良 い が 、 特 に 、 途 中 経 過 の 視 力 が ( 0 . 5 ) 以 下 に な る と 、 最 終 視 力 ( 0 . 7 ) 以 上 へ の 改 善 の 期 待 値 が 減 る た め 治 療 の 介 入 が 望 ま し い 。 一 般 的 に 中 心 窩 網 膜 厚 が 3 0 0 µ m 以 上 あ れ ば 、 s R D 治 癒 が 期 待 で き や す い 。 平 野 ら ( O p h t h a l m i c S u r g e r y , L a s e r s a n d I m a g i n g R e t i n a . 2 0 1 5 ; 4 6 ( 3 ) : 3 8 4 - 3 8 6) は 、 脈 絡 膜 の 血 管 透 過 性 亢 進 や R P E の 機 能 障 害 が T D S の あ る 眼 に s R D を 生 じ さ せ る 可 能 性 が あ る と 報 告 し て い る 。 我 々 の 考 察 は 以 下 の よ う で あ る 。 下 方 ぶ ど う 腫 の 縁 の 部 分 で は 強 膜 が 内 陥 し 物 理 的 に 脈 絡 膜 が 薄 く な り 、 循 環 障 害 と 内 陥 に よ る R P E の 伸 展 の た め に R P E の 萎 縮 が 併 発 す る 。R P E は 生 理 的 に V E G F を 産 生 し て い る た め 、 萎 縮 部 位 の V E G F 産 生 の 低 下 が お こ り 、 脈 絡 毛 細 血 管 を 萎 縮 さ せ 、 網 膜 外 層 の 虚 血 を 代 償 す る た め 周 囲 の R P E か ら V E G F 産 生 亢 進 が お こ り 脈 絡 膜 血 管 透 過 性 が 起 こ る 。 結 果 、 萎 縮 し た R P E を 通 し て 網 膜 下 に s R D を 生 じ る と 考 え る 。 本 研 究 の 問 題 点 と し て 、 治 療 の 基 準 を 統 一 で き て い な い こ と や C R T が 薄 い 症 例 に 対 す る 治 療 効 果 が 不 明 で あ る こ と が あ る 。 結 論 と し て 、 本 研 究 に よ り 、 s R D を 伴 う T D S の 治 療 指 針 を 示 す こ と が で き た 。 今 後 は 治 療 の 基 準 を 統 一 し て 前 向 き 研 究 を す る こ と が 望 ま れ る 。

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論文審査の結果の要旨 【背景と研究目的】 傾斜乳頭症候群は、傾斜乳頭と下方ぶどう腫を特徴とする先天性構造異常である。合併症には上耳側 視野欠損(19%)、網脈絡膜萎縮(3-5%)、脈絡膜新生血管(CNV)(2%)などがある。光干渉断層計(OCT) の発明後は、漿液性網膜剥離の合併報告が増加したが、少数例の症例報告が多く、視力の長期予後は 不明であった。そのため、漿液性網膜剥離を合併する傾斜乳頭症候群の長期的な視力予後を調べる目 的で、最終受診時の漿液性網膜剥離の有無と視力の関係、さらに治療介入の有無と視力の関係を検討 した。 【方法】 8施設から集められた 65 眼のうち、名古屋市立大学病院の網膜専門医2名が漿液性網膜剥離を合併 した傾斜乳頭症候群と診断した症例 41 例 48 眼(男 14 例、女 27 例)に対して、後ろ向き多施設共同 研究を行った。漿液性網膜剥離が3ヶ月以上遷延した症例で、1年以上経過観察が可能であった症例 に限定した。強度近視(− 8D 以上または眼軸長 26.5mm 以上)、脈絡膜新生血管(CNV)やポリープ状 脈絡膜血管症(PCV)を伴うものは除外した。患者の特徴は以下の通りである。片眼性 34 例、両眼性 7 例、平均年齢 64.2 歳、平均観察期間 3.3 年、有水晶体眼 72.9%、平均透過球面度数 -1.5D、 平均眼軸長 24.6mm、平均眼圧 14.9mmHg、緑内障治療中の眼 22.9%、RPE 萎縮を伴うもの 79.2%、 抗 VEGF 療法を行ったもの 35.4%、PDT 療法を行ったもの 20.8%、併用療法を行ったもの 10.4%、無治 療のもの 33.3%、フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)とインドシアニン蛍光眼底造形検査(ICGA)を 施行した眼 89.5%、FA で過蛍光を認めたもの 90.7%、ICGA で低蛍光を認めたもの 60.5%であった。 【結果】最終受診時に漿液性網膜剥離を認めなかったもの 43.8%であった。 全症例でみたとき、ベースラインの視力と比べると、最高視力で有意に改善しているが、最終の視力 では有意差がなかった。中心窩網膜厚に関しては、ベースラインと比べると、最終で有意に改善し た。次に、最終受診時に漿液性網膜剥離がなかった群とあった群に分けて検討した。最終で漿液性網 膜剥離がなかった群の視力は、ベースラインと比べて最終で有意に改善していた。一方、最終で漿液 性網膜剥離があった群は、ベースラインと比べて最終で有意差はなかった。最終で漿液性網膜剥離が なかった群の中心窩網膜厚は、ベースラインと比べて最終で有意に減少していたが、最終で漿液性網 膜剥離があった群では、最終でやや減少したものの有意差はなかった。最後に治療介入の有無につい て検討した。治療介入の有無にかかわらず、ベースラインの視力と比べて最高視力は有意に改善した が、最終では有意差を認めなかった。治療介入した群の中心窩網膜厚は、ベースラインと比べると最 終で有意に改善した。治療介入しなかった群の中心窩網膜厚は、ベースラインでは正常に近い薄めの 網膜厚であり、最終でも有意差を認めずほぼ変化はなかった。 【考察】 今回の研究で考えた傾斜乳頭症候群に漿液性網膜剥離が生じる機序を考察した。まず下方ぶどう腫の 上端の部分では強膜が内陥しているため、物理的に脈絡膜が薄くなり、循環障害と内陥による網膜色 素上皮の伸展のため網膜色素上皮の萎縮が併発する。網膜色素上皮は生理的に VEGF を産生している ため、萎縮部位の VEGF 産生低下が起こり、脈絡膜血管を萎縮させ網膜外層の虚血をもたらす。それ を代償するために周囲の網膜色素上皮からの VEGF の産生が亢進し、脈絡膜血管透過性亢進が起き る。その結果、脈絡膜間質の静水圧が亢進し、萎縮した網膜色素上皮を通して網膜下に漿液性網膜剥

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離を生じさせると考えた。 次に治療のタイミングについて考察した。最終受診時に漿液性網膜剥離が消退していた眼において、 最初の視力が(0.5)だと最終視力(0.7)以上が 33.3%、最初の視力が(0.6)だと最終視力(0.7)以上が 75.0%であった。つまり最初の視力が(0.5)以下だと予後不良になってくる。一方、最終視力が(0.6) 以下の眼では、最終受診時に漿液性網膜剥離が消退した群の最初の視力は(0.6)以下、最終受診時に 漿液性網膜剥離が残存していた群の最初の視力は(0.9)以下であった。つまり最初の視力が(0.9)以下 の眼は漿液性網膜剥離が治らないと(0.6)以下に低下する可能性があることがわかる。 以上から、最初の視力が(1.0)以上の場合、漿液性網膜剥離が残存していても最終視力は(0.6)以下に なっていないので経過観察でも良いと思われる。最初の視力が (0.5)以下になると、最終視力(0.7) 以上への改善の期待値が減るため、視力が(0.6)から(0.9)の間で抗 VEGF 療法や PDT 療を行って視力 が(0.5)以下に低下しないようにすることが望ましい。 【結語】 最終観察時に漿液性網膜剥離を認めない 21 眼(44%)は、漿液性網膜剥離が遷延する症例より視力は有 意に良かった。抗 VEGF 療法や PDT 療法は漿液性網膜剥離を減少させたが、自然治癒も含め、治療介 入による視力改善効果は認めなかった。ベースラインの矯正視力が(1.0)なら予後良好のため経過観 察で良いが、矯正視力が(0.5)以下になると予後不良のため、矯正視力が(0.9)から(0.6)の間に治療 介入することが望ましい。 【審査の内容】 約 20 分間のプレゼンテーションの後に,主査:間瀬光人教授より、スタディデザイン,傾斜乳頭症 候群の発症頻度、危険因子などについて計 5 項目の、また第 1 副査:松川則之教授より傾斜乳頭症候 群の病態、原因遺伝子、光線力学的療法の作用機序などについて計 8 項目の、第 2 副査:鵜川眞也教 授より漿液性網膜剥離の発生メカニズム、VGEF の発現機序などについて計 4 項目の質問があった。 これらの質問に対して、申請者からはおおむね適切な回答が得られ、学位論文の内容に対する理解も 十分であると判断した。したがって、本申請者は博士(医学)の学位を授与するに値すると判定され た。 論文審査担当者 主査 間瀬 光人 副査 松川 則之 鵜川 眞也

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