条約に対する留保及び解釈宣言に関する法的研究
著者
Daw Mar Lar Aung
号
35
発行年
1998
ド マ ー ラー ア ウ ン
DawMarLarAung
学 位 の 種 類
学 位 記 番 号
学位授与年月 日
学位授与の要件
研 究 科 ・専 攻
学 位 論 文 題 目
論 文 審 査 委 員
博
士(法
学)
法 博 第35号
平成11年3月25日
学位規則第4条 第1項 該 当
東北大学大学院法学研究科
(博士課程後期3年 の課程)公 法学専攻
条約 に対 す る留保及 び解釈宣言 に関す る法的研究
(主査)
教
授
藤
田
宙
靖
助教授
植
木
俊
哉
論 文 内 容 の 要
旨
本 論 文 は、 多 数 国 間条 約 に 対 して 国 家 が参 加 す る 際 に付 さ れ る留 保 及 び 解 釈 宣 言 と呼 ば れ る二 つ の 種 類 の表 明 に関 す る法 的 諸 問 題 にっ い て、 国 際 社 会 に お け る数 多 くの 国 家 実 行 や 国 際 判 例 、 条 約 規 定 及 び そ の 起 草 過 程 等 を 含 む 多 角 的 な視 座 か ら実 証 的 な 検 討 を加 え た 研 究 で あ る。 国 際 社 会 に お け る 法 の存 在 形 態 と して、 成 文 法 で あ り か つ 当 事 国 関 係 が 明 確 で あ る条 約 が 最 も 望 ま しい もの で あ る こ と は言 う ま で もな い。 しか し、 国 際 法 の 法 的 拘 束 力 の 基 礎 が 国 家 間 の 合 意 に求 め られ る以 上 、 国 家 問 の 条 約 関 係 に お い て は 「合 意 な く して拘 束 な し」 と い う原 則 が 厳 格 に 妥 当 す る。 そ の 結 果 と して、 多 数 国 間 条 約 が 国 際 社 会 に お い て そ の 適 用 の一 般 性 を確 保 す る た め に は、 可 能 な 限 り条 約 へ の参 加 国 を 増 や して 当 該 条 約 の 普 遍 性 を 高 め る必 要 が あ る。 そ の た め の 方 策 と して、 条 約 に参 加 す る国 家 が 当 該 条 約 中 の 特 定 の 規 定 に っ い て そ の 拘 束 を免 れ る こ と を 認 め る 「留 保 」 とい う制 度 が 従 来 利 用 さ れ て きた 。 他 方 で 、 留 保 を あ ま り に広 く許 容 す る こ と は 、 多 数 国 間 条 約 の適 用 の 一 体 性 を 損 な う危 険 性 が あ る た め 、 留 保 は一 定 の条 件 及 び手 続 の 下 で の み 認 め られ る も の と解 さ れ て き た 。 この よ うな 留 保 の条 件 及 び手 続 か ら逃 れ る た め、 あ る 多 数 国 間 条 約 に参 加 す る こ とを 希 望 しな が ら当 該 条 約 中 の 特 定 の 条 項 又 は義 務 に従 う こ と を 回 避 した い 国 家 が 、 当 該 条 項 の 「解 釈 」 を 示 す 「解 釈 宣 言 」 と い う名 称 の下 で 、 実 質 的 に は 「留 保 」 に 相 当 す る宣 言 を 行 う と い う事 例 が 、 現 実 の 国 際 社 会 に お い て しば しば 発 生 して き た。 そ の 結 果 、 条 約 に 対 す る 「留 保 」 と 「解 釈 宣 言 」 の 区 別 と い う問 題 が 、 国 際 社 会 の実 行 上 非 常 に重 要 な 実 質 的 意 義 一60一を 有 す る 問 題 と して認 識 さ れ る よ う に な っ た。 同 時 に、 こ の 問 題 は 、 条 約 の 法 的 拘 束 力 の 淵 源 、 条 約 の 当 事 国 に よ る 「解 釈 」 が 許 容 さ れ る範 囲 と い った 国 際 法 の根 本 的 な 理 論 的 諸 問 題 に も 関 係 し、 極 め て 困 難 な 国 際 法 理 論 上 の 問 題 を提 起 す る もの で もあ る。 本 論 文 は、 この よ う に国 際 法 理 論 の上 で も、 ま た 国 際 社 会 に お け る実 行 上 も、 極 め て 重 要 な意 義 を もち か っ 難 解 な 問 題 で あ る 多 数 国 間 条 約 に対 す る 「留 保 」 と 「解 釈 宣 言 」 の 区 別 及 び そ の た め の 基 準 と方 法 に 関 して 、 正 面 か ら探 究 を試 み た 意 欲 的 な研 究 で あ る。 本 論 文 の 構 成 は、 次 の通 りで あ る。 ま ず 第 一 章 で は、 国 際 社 会 に お け る多 数 国 間 の 条 約 関 係 の 中 で 諸 国 に よ っ て実 際 に 条 約 に対 して付 さ れ る諸 宣 言 を、 そ の 内 容 に照 ら して整 理 し、 これ ら国 家 実 行 上 の 表 明 の法 的 性 質 を 、 特 に解 釈 宣 言 及 び 留 保 に該 当 す る か否 か と い う観 点 か ら綿 密 に検 討 して い る。 第 二 章 で は、 今 日国 際 法 上 の条 約 に対 す る留 保 の 問 題 を考 察 す る上 で そ の 出発 点 と され るべ き条 約 法 に関 す る ウ ィー ン条 約 第 二 条 一 項(d)に 規 定 され た 「留 保 」 の 実 定 法 上 の 定 義 に関 して、 そ の定 義 の 内 容 を詳 細 に分 析 して い る。 そ の 際 に は、 一 九 六 九 年 の 条 約 法 条 約 の 採 択 に 至 る ま で の 国 連 国 際 法 委 員 会(ILC)に お け る同 条 約 の起 草 過 程 に お け る 議 論 が 、ILCの 一 次 資 料 等 に基 づ き入 念 に分 析 され て い る。 次 に、 第 三 章 で は、 本 論 文 の 直 接 的 な 考 察 対 象 で あ る 多 数 国 間 条 約 に対 す る留 保 と解 釈 宣 言 の 区 別 の 基 準 に関 す る学 説 を、 解 釈 宣 言 と留 保 の 関 係 に つ い て の理 解 の 相 違 に基 づ い て三 っ の 見 解 に分 類 し、 そ の 各 見 解 を 前 提 と した 場 合 の この 二 っ の 概 念 の 相 互 関 係 に っ き考 察 を 加 え て い る。 そ の 上 で 、 一 九 六 九 年 の条 約 法 条 約 に お い て 最 終 的 に 採 ら れ た こ の二 っ の 概 念 の 区 別 に関 す る理 解 を検 討 し、 そ の結 論 が後 に 積 み残 した 問 題 に っ き指 摘 し て い る。 第 四 章 で は、 留 保 と解 釈 宣 言 の 区 別 及 び そ の た め の 方 法 に関 す る筆 者 自身 の 考 察 が 展 開 さ れ て い る。 そ こで は、 解 釈 宣 言 を 「単 な る解 釈 宣 言 」 と 「条 件 付 き の 解 釈 宣 言 」 に 二 分 す る と い う従 来 有 力 で あ っ た見 解 や 、 当 該 宣 言 に付 され た 「名 称 」 を 両 者 の 区別 の た あ の 一 応 の 手 が か り とす る と い う 「名 称 主 義 」 の 考 え 方 な ど が検 討 され 、 そ れ ぞ れ の長 所 と問 題 点 とが指 摘 され る。 そ の上 で、 著 者 は、 この 二 っ の概 念 を 区 別 す る た め の 具 体 的 方 法 と して、 四 つ の段 階 に分 け た 段 階 的 方 式 に よ る検 討 と い う方 法 を 提 示 し、 これ を 留 保 に あ た る か解 釈 宣 言 に あ た る か が 実 際 に 争 わ れ て き た これ ま で の 具 体 的 事 例 に あて は め て検 討 を 行 って い る。 最 後 の第 五 章 で は 、一 九 六 九 年 の条 約 法 条 約 採 択 時 に未 解 決 の ま ま残 さ れ た 留 保 と解 釈 宣 言 に関 す る諸 問 題 にっ き、 一 九 九 二 年 以 降 新 た に 立 法 化 作 業 を 開 始 したILCに お け る現 在 の 段 階 で の 議 論 を 紹 介 し、 こ の 新 た な 立 法 化 作 業 が 留 保 と解 釈 宣 言 の 問 題 に 関 す る国 際社 会 に お け る有 益 な 指 針 を 提 示 し う る た め の 一 定 の方 向 性 につ き示 唆 を与 え て い る。 一61一