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共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺--最高裁平成30年10月19日第二小法廷判決民集72巻5号900頁を読んで--

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(1)

北九州市立大学法政論集第四七巻第 一 ・ 二合併号︵二 ○ 一九年一二月︶抜刷

  野

  憲

  昭

  

共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺

最高裁平成三〇年一〇月一九日第二小法廷判決民集七二巻五号九〇〇頁を読んで

ONO Noriaki

Cession gratuite par un héritier de sa part

de succession à un des

cohéritiers peut être réduite

Reprinted from

KITAKYUSHU SHIRITSU DAIGAKU HOU-SEI RONSHU

Journal of Law and Political Science. Vol. XLVII No.1 2/

(2)

— 151 — (2) (1) — 152 — 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野)       一   は じ め に       二   事 実 の 概 要       三   判 決 理 由       四   判 例 理 論 の 検 討       五   今 後 の 課 題      

  は

  最 高 裁 平 成 三 〇 年 一 〇 月 一 九 日 第 二 小 法 廷 判 決 は 、 共 同 相 続 人 間 に お い て な さ れ た 無 償 に よ る 相 続 分 の 譲 渡 は 、 譲 渡 者 の 相 続 に お い て 、 民 法 九 〇 三 条 一 項 に 規 定 す る 持 戻 し の 対 象 と な る 「 贈 与 」 に 当 た り 、 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 と な り 、 遺 留 分 減 殺 の 対 象 と な る 贈 与 と い え る と 判 断 し た 初 め て の 最 高 裁 判 決 で あ る ( 以 下 、 本 判 決 と い う )。 共 同 相 続 人 間 の 相 続 分 譲 渡 が 遺 留 分 減 殺 の 対 象 と な る か ど う か と い う 問 題 が 裁 判 例 に 登 場 し 始 め た の は 、 平 成 一 〇 年 代 の 半 ば を 過 ぎ て か ら の こ と の よ う で あ る が 、 裁 判 例 は 積 極 消 極 両 見 解 に 分 か れ 対 立 し て い た か ら 、 問 題 を 積 極 的 に 解 す る 判 断 を も っ て こ の 問 題 に 解 答 し 、 裁 判 実 務 を 統 一 し た 本 判 決 の 意 義 は 大 き い 。   他 方 、 学 説 に お い て は 、 こ れ ま で こ の 問 題 を 正 面 か ら 論 じ た 文 献 は 見 当 た ら な い よ う で あ り 、 本 判 決 を 契 機 と し て 、 こ れ か ら 更 に 議 論 が 重 ね ら れ な け れ ば な ら な い 問 題 で あ る と 私 は 思 う 。 そ の た め 、 本 稿 で は 、 本 判 決 の 採 っ た 理 論 を 検 討 す る と と も に 、 判 例 理 論 を 前 提 と し た 今 後 の 実 務 上 の 課 題 を い く つ か 指 摘 す る こ と を 通 し て 、 共 同 相 続 人 間 の 相 続 分 譲 渡 と 遺 留 分 減 殺 と い う 問 題 に つ い て 問 題 解 明 の 手 が か り を え よ う と 思 っ た 。 こ れ が 本 稿 の 目 的 で あ る 。 註 ( 1)  本 件 最 高 裁 判 決 に つ い て は 、 青 竹 美 佳 「 判 批 」 ジ ュ リ ス ト 臨 時 増 刊 平 成 三 〇 年 度 重 要 判 例 解 説 七 九 頁 以 下   有 斐 閣 二 〇 一 九 年 、 川 淳 一 「 判 批 」 新 ・ 判 例 解 説 Watch 二 四 号   一 〇 三 頁 以 下   日 本 評 論 社   二 〇 一 九 年 、 及 び 土 井 文 美 調 査 官 の 「 解 説 」 ジ ュ リ ス ト 一 五 三 四 号 九 四 頁 以 下   有 斐 閣 二 〇 一 九 年 が あ る 。 ( 2)  本 件 最 高 裁 判 決 を 紹 介 す る 無 記 名 「 解 説 」 家 庭 の 法 と 裁 判 一 九 号 三 三 頁   日 本 加 除 出 版   二 〇 一 九 年 に よ れ ば 、 消 極 判 例 と し て 東 京 地 判 平 成 一 六 年 一 一 月 一 日 ( 判 例 秘 書 )、 本 件 の 原 々 審 で あ る さ い た ま 地 判 平 成 二 八 年 一 二 月 二 一 日 、 及 び 本 件 原 審 の 東 京 高 判 平 成 二 九 年 六 月 二 二 日 が あ り 、 積 極 判 例 と し て は 、 東 京 地 判 平 成 二 四 年 一 〇 月 二 四 日 ( 判 例 秘 書 )、 甲 府 地 裁 都 留 支 部 平 成 二 八 年 一 二 月 六 日 判 決 ( 判 時 二 三 七 〇 号 三 四 頁 )、 及 び そ の 控 訴 審 で あ る 東 京 高 裁 平 成 二 九 年 七 月 六 日 判 決 ( 判 時 二 三 七 〇 号 三 一 頁 ) が あ る と い う 。 土 井 ・ 前 掲 解 説 九 五 頁 も 参 照 。 ( 3)  な お 、 最 高 裁 第 二 小 法 廷 は 、 本 判 決 と 同 日 に 、 同 旨 の 事 案 の 別 件 訴 訟 に お い て 、 本 判 決 と 同 じ 結 論 を 採 用 し た 前

小  野  憲  昭

北九州市立大学法政論集第47巻第 1・2合併号 (2019年12月)

  説

共同相続人間の相続分譲渡

遺留分減殺

――

高裁平

三〇年一〇月一九日

二小法廷判決民集七二巻五号九〇〇頁

――

( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 )

(3)

— 151 — (2) (1) — 152 — 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野)       一   は じ め に       二   事 実 の 概 要       三   判 決 理 由       四   判 例 理 論 の 検 討       五   今 後 の 課 題      

  は

  最 高 裁 平 成 三 〇 年 一 〇 月 一 九 日 第 二 小 法 廷 判 決 は 、 共 同 相 続 人 間 に お い て な さ れ た 無 償 に よ る 相 続 分 の 譲 渡 は 、 譲 渡 者 の 相 続 に お い て 、 民 法 九 〇 三 条 一 項 に 規 定 す る 持 戻 し の 対 象 と な る 「 贈 与 」 に 当 た り 、 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 と な り 、 遺 留 分 減 殺 の 対 象 と な る 贈 与 と い え る と 判 断 し た 初 め て の 最 高 裁 判 決 で あ る ( 以 下 、 本 判 決 と い う )。 共 同 相 続 人 間 の 相 続 分 譲 渡 が 遺 留 分 減 殺 の 対 象 と な る か ど う か と い う 問 題 が 裁 判 例 に 登 場 し 始 め た の は 、 平 成 一 〇 年 代 の 半 ば を 過 ぎ て か ら の こ と の よ う で あ る が 、 裁 判 例 は 積 極 消 極 両 見 解 に 分 か れ 対 立 し て い た か ら 、 問 題 を 積 極 的 に 解 す る 判 断 を も っ て こ の 問 題 に 解 答 し 、 裁 判 実 務 を 統 一 し た 本 判 決 の 意 義 は 大 き い 。   他 方 、 学 説 に お い て は 、 こ れ ま で こ の 問 題 を 正 面 か ら 論 じ た 文 献 は 見 当 た ら な い よ う で あ り 、 本 判 決 を 契 機 と し て 、 こ れ か ら 更 に 議 論 が 重 ね ら れ な け れ ば な ら な い 問 題 で あ る と 私 は 思 う 。 そ の た め 、 本 稿 で は 、 本 判 決 の 採 っ た 理 論 を 検 討 す る と と も に 、 判 例 理 論 を 前 提 と し た 今 後 の 実 務 上 の 課 題 を い く つ か 指 摘 す る こ と を 通 し て 、 共 同 相 続 人 間 の 相 続 分 譲 渡 と 遺 留 分 減 殺 と い う 問 題 に つ い て 問 題 解 明 の 手 が か り を え よ う と 思 っ た 。 こ れ が 本 稿 の 目 的 で あ る 。 註 ( 1)  本 件 最 高 裁 判 決 に つ い て は 、 青 竹 美 佳 「 判 批 」 ジ ュ リ ス ト 臨 時 増 刊 平 成 三 〇 年 度 重 要 判 例 解 説 七 九 頁 以 下   有 斐 閣 二 〇 一 九 年 、 川 淳 一 「 判 批 」 新 ・ 判 例 解 説 Watch 二 四 号   一 〇 三 頁 以 下   日 本 評 論 社   二 〇 一 九 年 、 及 び 土 井 文 美 調 査 官 の 「 解 説 」 ジ ュ リ ス ト 一 五 三 四 号 九 四 頁 以 下   有 斐 閣 二 〇 一 九 年 が あ る 。 ( 2)  本 件 最 高 裁 判 決 を 紹 介 す る 無 記 名 「 解 説 」 家 庭 の 法 と 裁 判 一 九 号 三 三 頁   日 本 加 除 出 版   二 〇 一 九 年 に よ れ ば 、 消 極 判 例 と し て 東 京 地 判 平 成 一 六 年 一 一 月 一 日 ( 判 例 秘 書 )、 本 件 の 原 々 審 で あ る さ い た ま 地 判 平 成 二 八 年 一 二 月 二 一 日 、 及 び 本 件 原 審 の 東 京 高 判 平 成 二 九 年 六 月 二 二 日 が あ り 、 積 極 判 例 と し て は 、 東 京 地 判 平 成 二 四 年 一 〇 月 二 四 日 ( 判 例 秘 書 )、 甲 府 地 裁 都 留 支 部 平 成 二 八 年 一 二 月 六 日 判 決 ( 判 時 二 三 七 〇 号 三 四 頁 )、 及 び そ の 控 訴 審 で あ る 東 京 高 裁 平 成 二 九 年 七 月 六 日 判 決 ( 判 時 二 三 七 〇 号 三 一 頁 ) が あ る と い う 。 土 井 ・ 前 掲 解 説 九 五 頁 も 参 照 。 ( 3)  な お 、 最 高 裁 第 二 小 法 廷 は 、 本 判 決 と 同 日 に 、 同 旨 の 事 案 の 別 件 訴 訟 に お い て 、 本 判 決 と 同 じ 結 論 を 採 用 し た 前

小  野  憲  昭

北九州市立大学法政論集第47巻第 1・2合併号 (2019年12月)

  説

共同相続人間の相続分譲渡

遺留分減殺

――

高裁平

三〇年一〇月一九日

二小法廷判決民集七二巻五号九〇〇頁

――

( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 )

(4)

— 149 — (4) (3) — 150 — 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野)     掲 注 ( 2) 東 京 高 裁 平 成 二 九 年 七 月 六 日 判 決 に 対 す る 上 告 を 棄 却 し た 判 決 ( 最 高 裁 第 二 小 法 廷 平 成 三 〇 年 一 〇 月 一 九 日 判 決 ( 平 成 二 九 年 ( 受 ) 第 一 七 〇 八 号 ) で あ る 。) を 下 し て い る と の こ と で あ る 。 前 掲 無 記 名 「 解 説 」 三 三 頁 、土 井 ・ 前 掲 解 説 九 五 頁 参 照 。 ( 4)  本 稿 は 、 二 〇 一 九 年 五 月 三 〇 日 に 開 催 さ れ た 、 福 岡 地 方 裁 判 所 小 倉 支 部 、 福 岡 県 弁 護 士 会 北 九 州 支 部 、 及 び 北 九 州 市 立 大 学 の 三 者 に よ る 民 事 判 例 研 究 会 に お い て 報 告 さ せ てい た だ い た 内 容 に 大 幅 な 加 筆 修 正 を 加 え た も の で あ る 。 研 究 会 の 席 上 、 参 加 者 の 方 々 か ら 多 く の ご 教 示 、 参 考 資 料 を い た だ き 、 心 よ り 御 礼 を 申 し 上 げ る 。    

  事

  被 相 続 人 Aは 、 先 に 死 亡 し た 亡 Bの 妻 で あ り 、 X ( 原 告 ・ 控 訴 人 ・ 上 告 人 ) 及 び Y ( 被 告 ・ 被 控 訴 人 ・ 被 上 告 人 ) は 、 亡 Bと 被 相 続 人 Aと の 間 の 長 女 及 び 二 男 で あ る 。 亡 Bと 被 相 続 人 Aと の 間 に は 、 X、 Yの ほ か 、 三 男 C及 び 養 女 D( Yの 妻 ) が い る ( 長 男 亡 Eは 既 に 昭 和 二 八 年 一 二 月 に 死 亡 し て い る )。 不 動 産 を 多 数 所 有 し て い た 亡 Bは 、 平 成 二 〇 年 一 二 月 に 死 亡 し 、 Xの 申 立 て に よ り 行 わ れ た 遺 産 分 割 調 停 事 件 の 継 続 中 に 被 相 続 人 A及 び Dは Yに そ れ ぞ れ 相 続 分 全 部 を 譲 渡 し た こ と に よ り 、 平 成 二 二 年 一 二 月 一 九 日 、 相 続 分 の 割 合 を X及 び Cが 各 八 分 の 一 、 Yが 四分の三 と し て 、 亡 Bの遺産 を 分 割 す る調 停 が 成 立した 。 被相続 人 Aは 、 上記調 停成 立に先立つ同年八月 二 五 日 に 、 被 相 続 人 Aの 全 財 産 を Yに 相 続 さ せ る 旨 の 公 正 証 書 遺 言 ( 以 下 「 本 件 遺 言 」 と い う 。) を し て い た 。   被 相 続 人 Aは 平 成 二 六 年 七 月 に 死 亡 し た が 、 死 亡 時 に お け る 被 相 続 人 Aの 財 産 は 、 預 金 三 五 万 二 五 五 七 円 ( 以 下 「 本 件 預 金 」 と い う 。) だ け で 、 債 務 と し て 未 払 い の 介 護 施 設 利 用 料 金 等 三 六 万 七 九 三 七 円 が あ っ た 。   そ こ で 、 Xは 、 Yに 対 し 、 被 相 続 人 Aが Yに 譲 渡 し た 相 続 分 ( 以 下 「 本 件 相 続 分 」 と い う 。) も 遺 留 分 算 定 の 基 礎 と な る 財 産 に 含 ま れ る か ら 、 本 件 遺 言 に よ っ て 遺 留 分 を 侵 害 さ れ た と 主 張 し て 、 遺 留 分 減 殺 請 求 権 に 基 づ き 、 Yが 亡 Bか ら 相 続 し た 土 地 建 物 の 共 有 持 分 一 六 分 の 一 に つ き 、 遺 留 分 減 殺 を 原 因 と す る 持 分 一 部 移 転 登 記 手 続 き を 求 め る と と も に 、 既 に 処 分 済 み の 不 動 産 、 債 権 、 現 金 、 預 貯 金 お よ び そ の 他 の 財 産 ( 出 資 金 、 簡 易 生 命 保 険 、 住 宅 建 物 総 合 保 険 、 電 話 加 入 権 ) 並 び に 本 件 預 貯 金 の 各 遺 留 分 額 の 合 計 一 二 二 一 万 九 三 九 九 円 の 支 払 い を 求 め た 。   第 一 審( さ い た ま 地 方 裁 判 所 )、 第 二 審 ( 東 京 高 等 裁 判 所 ) と も に 本 件 相 続 分 の 譲 渡 は 民 法 九 〇 三 条 所 定 の「 贈 与 」 に は 当 た ら な い と し た 。 東 京 高 裁 の 判 断 は 「 共 同 相 続 人 間 で 相 続 分 の 譲 渡 が さ れ た と き は 、 積 極 財 産 と 消 極 財 産 と を 包 括 し た 遺 産 全 体 に 対 す る 譲 渡 人 の 割 合 的 持 分 が 譲 受 人 に 移 転 し 、 譲 受 人 は 従 前 か ら 有 し て い た 相 続 分 と 新 た に 取 得 し た 相 続 分 と を 合 計 し た 相 続 分 を 有 す る も の と し て 遺 産 分 割 に 加 わ る こ と に な る 。 そ し て 、 遺 産 分 割 が さ れ る ま で の 間 は 、 共 同 相 続 人 が そ れ ぞ れ の 持 分 割 合 に よ り 相 続 財 産 を 共 有 す る こ と に な る と こ ろ 、 上 記 相 続 分 の 譲 渡 に 伴 っ て 個 々 の 相 続 財 産 に つ い て 共 有 持 分 の 移 転 も 生 ず る も の と 解 さ れ る 。 し か し な が ら 、 相 続 分 譲 渡 に 伴 う 個 々 の 相 続 財 産 に つ い て の 共 有 持 分 の 移 転 は そ の 後 に 予 定 さ れ て い る 遺 産 分 割 に よ る 権 利 移 転 が 確 定 的 に 生 ず る ま で の 暫 定 的 な も の で あ り 、 遺 産 分 割 が さ れ れ ば 、 そ の 結 果 に 従 い 相 続 開 始 の 時 に 遡 っ て 被 相 続 人 か ら 直 接 的 な 権 利 移 転 が 生 ず る ( 最 高 裁 判 所 平 成 一 三 年 七 月 一 〇 日 第 三 小 法 廷 ・ 民 集 五 五 巻 五 号 九 五 五 頁 )。   本 件 に お い て 、 平 成 二 二 年 一 二 月 ○ 日 に 亡 Bの 相 続 人 間 に 遺 産 分 割 調 停 が 成 立 し て い る か ら 、 そ の 結 果 に 従 い 、 相 続 開 始 の 時 に さ か の ぼ っ て 亡 Bか ら X、 Y及 び Dに 対 す る 直 接 的 な 権 利 移 転 が 生 じ 、 被 相 続 人 は 、 亡 Bの 個 々 の 相 続 財 産 に つ い て の 共 有 持 分 を 有 し な か っ た こ と に な る 。 そ う で あ る か ら 、 本 件 相 続 分 譲 渡 が 被 相 続 人 の Yに 対 す る 財 産 の 贈 与 と し て 、 本 件 相 続 分 譲 渡 に よ り Yの 取 得 し た 被 相 続 人 の 相 続 分 が 被 相 続 人 の 相 続 に お け る 遺 留 分 算 定 の 基 礎 と な る 財 産 に な る と い う こ と は で き な い 。 X引 用 の 判 例 ( 最 高 裁 平 成 一 六 年 ( 受 ) 第 一 二 二 二 号 同 一 七 年 九 月 八 日 第 一 小 法 廷 判 決 ・ 民 集 五 九 巻 七 号 一 九 三 一 頁 ) は 各 共 同 相 続 人 が そ の 相 続 分 に 応 じ て 分 割 単 独 債

(5)

— 149 — (4) (3) — 150 — 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野)     掲 注 ( 2) 東 京 高 裁 平 成 二 九 年 七 月 六 日 判 決 に 対 す る 上 告 を 棄 却 し た 判 決 ( 最 高 裁 第 二 小 法 廷 平 成 三 〇 年 一 〇 月 一 九 日 判 決 ( 平 成 二 九 年 ( 受 ) 第 一 七 〇 八 号 ) で あ る 。) を 下 し て い る と の こ と で あ る 。 前 掲 無 記 名 「 解 説 」 三 三 頁 、土 井 ・ 前 掲 解 説 九 五 頁 参 照 。 ( 4)  本 稿 は 、 二 〇 一 九 年 五 月 三 〇 日 に 開 催 さ れ た 、 福 岡 地 方 裁 判 所 小 倉 支 部 、 福 岡 県 弁 護 士 会 北 九 州 支 部 、 及 び 北 九 州 市 立 大 学 の 三 者 に よ る 民 事 判 例 研 究 会 に お い て 報 告 さ せ てい た だ い た 内 容 に 大 幅 な 加 筆 修 正 を 加 え た も の で あ る 。 研 究 会 の 席 上 、 参 加 者 の 方 々 か ら 多 く の ご 教 示 、 参 考 資 料 を い た だ き 、 心 よ り 御 礼 を 申 し 上 げ る 。    

  事

  被 相 続 人 Aは 、 先 に 死 亡 し た 亡 Bの 妻 で あ り 、 X( 原 告 ・ 控 訴 人 ・ 上 告 人 ) 及 び Y( 被 告 ・ 被 控 訴 人 ・ 被 上 告 人 ) は 、 亡 Bと 被 相 続 人 Aと の 間 の 長 女 及 び 二 男 で あ る 。 亡 Bと 被 相 続 人 Aと の 間 に は 、 X、 Yの ほ か 、 三 男 C及 び 養 女 D( Yの 妻 ) が い る ( 長 男 亡 Eは 既 に 昭 和 二 八 年 一 二 月 に 死 亡 し て い る )。 不 動 産 を 多 数 所 有 し て い た 亡 Bは 、 平 成 二 〇 年 一 二 月 に 死 亡 し 、 Xの 申 立 て に よ り 行 わ れ た 遺 産 分 割 調 停 事 件 の 継 続 中 に 被 相 続 人 A及 び Dは Yに そ れ ぞ れ 相 続 分 全 部 を 譲 渡 し た こ と に よ り 、 平 成 二 二 年 一 二 月 一 九 日 、 相 続 分 の 割 合 を X及 び Cが 各 八 分 の 一 、 Yが 四分の三 と し て 、 亡 Bの遺産 を 分 割 す る調 停 が 成 立した 。 被相続 人 Aは 、 上記調 停成 立に先立つ同年八月 二 五 日 に 、 被 相 続 人 Aの 全 財 産 を Yに 相 続 さ せ る 旨 の 公 正 証 書 遺 言 ( 以 下 「 本 件 遺 言 」 と い う 。) を し て い た 。   被 相 続 人 Aは 平 成 二 六 年 七 月 に 死 亡 し た が 、 死 亡 時 に お け る 被 相 続 人 Aの 財 産 は 、 預 金 三 五 万 二 五 五 七 円 ( 以 下 「 本 件 預 金 」 と い う 。) だ け で 、 債 務 と し て 未 払 い の 介 護 施 設 利 用 料 金 等 三 六 万 七 九 三 七 円 が あ っ た 。   そ こ で 、 Xは 、 Yに 対 し 、 被 相 続 人 Aが Yに 譲 渡 し た 相 続 分 ( 以 下 「 本 件 相 続 分 」 と い う 。) も 遺 留 分 算 定 の 基 礎 と な る 財 産 に 含 ま れ る か ら 、 本 件 遺 言 に よ っ て 遺 留 分 を 侵 害 さ れ た と 主 張 し て 、 遺 留 分 減 殺 請 求 権 に 基 づ き 、 Yが 亡 Bか ら 相 続 し た 土 地 建 物 の 共 有 持 分 一 六 分 の 一 に つ き 、 遺 留 分 減 殺 を 原 因 と す る 持 分 一 部 移 転 登 記 手 続 き を 求 め る と と も に 、 既 に 処 分 済 み の 不 動 産 、 債 権 、 現 金 、 預 貯 金 お よ び そ の 他 の 財 産 ( 出 資 金 、 簡 易 生 命 保 険 、 住 宅 建 物 総 合 保 険 、 電 話 加 入 権 ) 並 び に 本 件 預 貯 金 の 各 遺 留 分 額 の 合 計 一 二 二 一 万 九 三 九 九 円 の 支 払 い を 求 め た 。   第 一 審( さ い た ま 地 方 裁 判 所 )、 第 二 審 ( 東 京 高 等 裁 判 所 ) と も に 本 件 相 続 分 の 譲 渡 は 民 法 九 〇 三 条 所 定 の「 贈 与 」 に は 当 た ら な い と し た 。 東 京 高 裁 の 判 断 は 「 共 同 相 続 人 間 で 相 続 分 の 譲 渡 が さ れ た と き は 、 積 極 財 産 と 消 極 財 産 と を 包 括 し た 遺 産 全 体 に 対 す る 譲 渡 人 の 割 合 的 持 分 が 譲 受 人 に 移 転 し 、 譲 受 人 は 従 前 か ら 有 し て い た 相 続 分 と 新 た に 取 得 し た 相 続 分 と を 合 計 し た 相 続 分 を 有 す る も の と し て 遺 産 分 割 に 加 わ る こ と に な る 。 そ し て 、 遺 産 分 割 が さ れ る ま で の 間 は 、 共 同 相 続 人 が そ れ ぞ れ の 持 分 割 合 に よ り 相 続 財 産 を 共 有 す る こ と に な る と こ ろ 、 上 記 相 続 分 の 譲 渡 に 伴 っ て 個 々 の 相 続 財 産 に つ い て 共 有 持 分 の 移 転 も 生 ず る も の と 解 さ れ る 。 し か し な が ら 、 相 続 分 譲 渡 に 伴 う 個 々 の 相 続 財 産 に つ い て の 共 有 持 分 の 移 転 は そ の 後 に 予 定 さ れ て い る 遺 産 分 割 に よ る 権 利 移 転 が 確 定 的 に 生 ず る ま で の 暫 定 的 な も の で あ り 、 遺 産 分 割 が さ れ れ ば 、 そ の 結 果 に 従 い 相 続 開 始 の 時 に 遡 っ て 被 相 続 人 か ら 直 接 的 な 権 利 移 転 が 生 ず る ( 最 高 裁 判 所 平 成 一 三 年 七 月 一 〇 日 第 三 小 法 廷 ・ 民 集 五 五 巻 五 号 九 五 五 頁 )。   本 件 に お い て 、 平 成 二 二 年 一 二 月 ○ 日 に 亡 Bの 相 続 人 間 に 遺 産 分 割 調 停 が 成 立 し て い る か ら 、 そ の 結 果 に 従 い 、 相 続 開 始 の 時 に さ か の ぼ っ て 亡 Bか ら X、 Y及 び Dに 対 す る 直 接 的 な 権 利 移 転 が 生 じ 、 被 相 続 人 は 、 亡 Bの 個 々 の 相 続 財 産 に つ い て の 共 有 持 分 を 有 し な か っ た こ と に な る 。 そ う で あ る か ら 、 本 件 相 続 分 譲 渡 が 被 相 続 人 の Yに 対 す る 財 産 の 贈 与 と し て 、 本 件 相 続 分 譲 渡 に よ り Yの 取 得 し た 被 相 続 人 の 相 続 分 が 被 相 続 人 の 相 続 に お け る 遺 留 分 算 定 の 基 礎 と な る 財 産 に な る と い う こ と は で き な い 。 X引 用 の 判 例 ( 最 高 裁 平 成 一 六 年 ( 受 ) 第 一 二 二 二 号 同 一 七 年 九 月 八 日 第 一 小 法 廷 判 決 ・ 民 集 五 九 巻 七 号 一 九 三 一 頁 ) は 各 共 同 相 続 人 が そ の 相 続 分 に 応 じ て 分 割 単 独 債

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— 147 — (6) (5) — 148 — 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 権 と し て 確 定 的 に 取 得 し た 上 記 賃 料 債 権 の 帰 属 は 、 後 に さ れ た 遺 産 分 割 の 影 響 を 受 け な い と い う も の で あ り 、 事 案 を 異 に し 、 本 件 に 適 切 で な い 。 ……   被 相 続 人 が 相 続 開 始 の 時 に 有 し て い た 財 産 の 価 額 は 三 五 万 二 五 五 七 円 で あ り 、 前 記 の と お り 、 本 件 相 続 分 譲 渡 は 被 相 続 人 Aの Yに 対 す る 財 産 の 贈 与 で は な く 、 他 に 被 相 続 人 の 贈 与 し た 財 産 が あ る こ と を 認 め る に 足 り る 証 拠 は な い 。 そ し て 、 証 拠 ( 乙 3な い し 5) に よ れ ば 、 被 相 続 人 Aに は 、 相 続 開 始 時 に お い て 、 平 成 二 六 年 六 月 分 二 二 万 三 六 〇 九 円 及 び 七 月 分 一 四 万 四 三 二 九 円 合 計 三 六 万 七 九 三 八 円 の 介 護 施 設 利 用 料 金 の 未 払 い 等 が あ る こ と が 認 め ら れ る 。   そ う す る と 、 遺 留 分 算 定 の 基 礎 と な る 財 産 の 額 は 〇 円 に な り 、 被 相 続 人 Aの 相 続 に つ い て 、 Xの 遺 留 分 の 侵 害 は な い 。」  「 ま た 、 Xは 、 相 続 分 が 経 済 的 な 価 値 を 有 す る 財 産 で あ り 、 そ の 譲 渡 は 生 前 贈 与 に 当 た る も の と 主 張 す る 〔 が 〕、 相 続 分 の 譲 渡 に よ っ て 、 包 括 的 な 相 続 財 産 の 持 分 と と も に 、 譲 渡 人 が 有 し て い た 遺 産 に 関 わ る 法 的 地 位 も 承 継 さ れ る こ と に な り 、 譲 渡 人 に 特 別 受 益 が あ っ て そ の 法 定 相 続 分 を 超 過 し て い る 場 合 に は 、 譲 り 受 け た 相 続 分 の 取 得 額 が 零 に な る こ と も あ る か ら 、 相 続 分 の 譲 渡 が 必 ず し も 経 済 的 な 利 益 の 増 加 を も た ら す わ け で は な い 。 民 法 一 〇 二 九 条 及 び 一 〇 三 〇 条 に 定 め る 贈 与 に つ い て は 、 全 て の 無 償 処 分 を 意 味 し 、 債 務 免 除 や 無 償 の 人 的 物 的 担 保 の 供 与 を 含 む な ど 、 実 質 的 な 見 地 か ら の 経 済 的 な 利 益 の 供 与 ま で 広 く 含 ん で い る と 解 さ れ て い る が 、 相 続 分 に つ い て は 、 積 極 財 産 及 び 消 極 財 産 や 特 別 受 益 、 寄 与 分 等 の 調 整 要 素 を 含 ん だ 包 括 的 地 位 で あ る か ら 、 そ の 利 益 性 の 判 断 に つ い て は 総 合 的 な 評 価 を 要 す る も の で あ っ て 、 直 ち に そ の 経 済 的 な 利 益 を 図 る こ と は で き な い 。 そ し て 、 遺 産 分 割 は 、 遺 産 に 属 す る 物 ま た は 権 利 の 種 類 及 び 性 質 、 各 相 続 人 の 年 齢 、 職 業 、 心 身 の 状 態 及 び 生 活 の 状 況 そ の 他 一 切 の 事 情 を 考 慮 し て 行 い ( 民 法 九 〇 六 条 ) 、 共 同 相 続 人 の 協 議 に よ っ て 、 定 め ら れ た 相 続 分 と は 異 な る 内 容 の 遺 産 分 割 を 取 り 決 め る こ と も 許 さ れ 、 最 終 的 に ど れ だ け の 遺 産 を 取 得 で き る か は 、 遺 産 分 割 に 参 加 す る 地 位 と 遺 産 を 取 得 で き る 枠 を 譲 り 渡 す も の で あ り 、 共 同 相 続 人 が 譲 り 受 け た 場 合 、 遺 産 の 取 得 枠 が 広 が る も の の 、 最 終 的 な 遺 産 の 帰 属 は 遺 産 分 割 協 議 を 待 た な け れ ば な ら な い の で あ る か ら 、 単 純 に 相 続 財 産 の 贈 与 が あ っ た も の と 同 視 す る こ と は で き な い 。」 と い う も の で あ っ た 。   Xは 上 告 受 理 の 申 立 て を し て 、 次 の よ う に 主 張 し た 。「 民 法 は 、 明 確 な 意 図 を も っ て 、 生 前 に 対 価 な く 流 出 し た 被 相 続 人 の 財 産 に つ い て は 遺 留 分 算 定 の 基 礎 に 加 え る と い う 枠 組 み を 採 用 し て い る も の で あ る 。 そ の 法 意 は 明 ら か で あ り 、 民 法 は 、 相 続 開 始 時 に 存 在 し た 財 産 の み を 遺 留 分 の 対 象 に し た の で は 生 前 贈 与 に よ っ て 遺 留 分 権 利 者 に 相 続 さ せ な い こ と が 可 能 と な っ て し ま い 、 そ の よ う な 事 態 と な っ て し ま っ て は 遺 留 分 権 利 者 の 生 計 の 資 本 等 の た め に 相 続 財 産 の 一 定 割 合 を 留 保 し よ う と し た 遺 留 分 制 度 の 趣 旨 が 没 却 さ れ て し ま う た め 、 生 前 に 流 出 さ せ た 財 産 を も 遺 留 分 算 定 の 基 礎 に 加 え る こ と と し た も の で あ る 。 ……   そ し て 、 民 法 が 懸 念 し た 上 記 事 態 は 、 ま さ に 相 続 分 の 譲 渡 に お い て も 生 じ る も の で あ る 。   す な わ ち 、 相 続 分 は 、 相 続 財 産 全 体 に 対 し て 各 共 同 相 続 人 が 有 す る 割 合 的 な 持 分 あ る い は 法 律 上 の 地 位 で あ る と 解 さ れ て い る と こ ろ 、 そ れ が 譲 渡 さ れ れ ば 、 全 て の 相 続 財 産 の 一 定 割 合 を 取 得 で き る 権 限 が 譲 受 人 に 移 転 し て し ま う こ と に な る 。 こ れ は 、 財 産 が 個 別 に 生 前 贈 与 さ れ る 場 合 よ り も 更 に 大 規 模 な 財 産 の 流 出 と な り 得 る 事 態 で あ る 。 こ の 点 、 原 判 決 は 、 後 述 の と お り 、 特 別 受 益 の 存 在 な ど に よ っ て は 相 続 分 の 価 値 が 零 に な る 可 能 性 が あ る と 指 摘 し て い る が 、 そ の よ う な 例 外 的 場 面 を 指 摘 し て 上 記 懸 念 を 無 視 す る こ と に 正 当 性 は 一 切 な い 。 む し ろ 、 極 め て 大 き な 経 済 的 価 値 の 移 転 と な り 得 る こ と こ そ 重 要 で あ り 、 そ も そ も 経 済 的 価 値 が あ る か ら こ そ 譲 渡 が な さ れ る の で あ っ て 、 相 続 分 の 譲 渡 は 、 明 ら か に 、 民 法 が 懸 念 す る 上 記 事 態 を 生 じ さ せ る 事 態 で あ る 。 ……   民 法 上 、 相 続 分 を 遺 留 分 の 対 象 か ら 除 外 す る と し た 明 文 規 定 は 存 在 し な い 。 に も か か わ ら ず 、 原 判 決 は 、 民 法

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— 147 — (6) (5) — 148 — 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 権 と し て 確 定 的 に 取 得 し た 上 記 賃 料 債 権 の 帰 属 は 、 後 に さ れ た 遺 産 分 割 の 影 響 を 受 け な い と い う も の で あ り 、 事 案 を 異 に し 、 本 件 に 適 切 で な い 。 ……   被 相 続 人 が 相 続 開 始 の 時 に 有 し て い た 財 産 の 価 額 は 三 五 万 二 五 五 七 円 で あ り 、 前 記 の と お り 、 本 件 相 続 分 譲 渡 は 被 相 続 人 Aの Yに 対 す る 財 産 の 贈 与 で は な く 、 他 に 被 相 続 人 の 贈 与 し た 財 産 が あ る こ と を 認 め る に 足 り る 証 拠 は な い 。 そ し て 、 証 拠 ( 乙 3な い し 5) に よ れ ば 、 被 相 続 人 Aに は 、 相 続 開 始 時 に お い て 、 平 成 二 六 年 六 月 分 二 二 万 三 六 〇 九 円 及 び 七 月 分 一 四 万 四 三 二 九 円 合 計 三 六 万 七 九 三 八 円 の 介 護 施 設 利 用 料 金 の 未 払 い 等 が あ る こ と が 認 め ら れ る 。   そ う す る と 、 遺 留 分 算 定 の 基 礎 と な る 財 産 の 額 は 〇 円 に な り 、 被 相 続 人 Aの 相 続 に つ い て 、 Xの 遺 留 分 の 侵 害 は な い 。」  「 ま た 、 Xは 、 相 続 分 が 経 済 的 な 価 値 を 有 す る 財 産 で あ り 、 そ の 譲 渡 は 生 前 贈 与 に 当 た る も の と 主 張 す る 〔 が 〕、 相 続 分 の 譲 渡 に よ っ て 、 包 括 的 な 相 続 財 産 の 持 分 と と も に 、 譲 渡 人 が 有 し て い た 遺 産 に 関 わ る 法 的 地 位 も 承 継 さ れ る こ と に な り 、 譲 渡 人 に 特 別 受 益 が あ っ て そ の 法 定 相 続 分 を 超 過 し て い る 場 合 に は 、 譲 り 受 け た 相 続 分 の 取 得 額 が 零 に な る こ と も あ る か ら 、 相 続 分 の 譲 渡 が 必 ず し も 経 済 的 な 利 益 の 増 加 を も た ら す わ け で は な い 。 民 法 一 〇 二 九 条 及 び 一 〇 三 〇 条 に 定 め る 贈 与 に つ い て は 、 全 て の 無 償 処 分 を 意 味 し 、 債 務 免 除 や 無 償 の 人 的 物 的 担 保 の 供 与 を 含 む な ど 、 実 質 的 な 見 地 か ら の 経 済 的 な 利 益 の 供 与 ま で 広 く 含 ん で い る と 解 さ れ て い る が 、 相 続 分 に つ い て は 、 積 極 財 産 及 び 消 極 財 産 や 特 別 受 益 、 寄 与 分 等 の 調 整 要 素 を 含 ん だ 包 括 的 地 位 で あ る か ら 、 そ の 利 益 性 の 判 断 に つ い て は 総 合 的 な 評 価 を 要 す る も の で あ っ て 、 直 ち に そ の 経 済 的 な 利 益 を 図 る こ と は で き な い 。 そ し て 、 遺 産 分 割 は 、 遺 産 に 属 す る 物 ま た は 権 利 の 種 類 及 び 性 質 、 各 相 続 人 の 年 齢 、 職 業 、 心 身 の 状 態 及 び 生 活 の 状 況 そ の 他 一 切 の 事 情 を 考 慮 し て 行 い ( 民 法 九 〇 六 条 ) 、 共 同 相 続 人 の 協 議 に よ っ て 、 定 め ら れ た 相 続 分 と は 異 な る 内 容 の 遺 産 分 割 を 取 り 決 め る こ と も 許 さ れ 、 最 終 的 に ど れ だ け の 遺 産 を 取 得 で き る か は 、 遺 産 分 割 に 参 加 す る 地 位 と 遺 産 を 取 得 で き る 枠 を 譲 り 渡 す も の で あ り 、 共 同 相 続 人 が 譲 り 受 け た 場 合 、 遺 産 の 取 得 枠 が 広 が る も の の 、 最 終 的 な 遺 産 の 帰 属 は 遺 産 分 割 協 議 を 待 た な け れ ば な ら な い の で あ る か ら 、 単 純 に 相 続 財 産 の 贈 与 が あ っ た も の と 同 視 す る こ と は で き な い 。」 と い う も の で あ っ た 。   Xは 上 告 受 理 の 申 立 て を し て 、 次 の よ う に 主 張 し た 。「 民 法 は 、 明 確 な 意 図 を も っ て 、 生 前 に 対 価 な く 流 出 し た 被 相 続 人 の 財 産 に つ い て は 遺 留 分 算 定 の 基 礎 に 加 え る と い う 枠 組 み を 採 用 し て い る も の で あ る 。 そ の 法 意 は 明 ら か で あ り 、 民 法 は 、 相 続 開 始 時 に 存 在 し た 財 産 の み を 遺 留 分 の 対 象 に し た の で は 生 前 贈 与 に よ っ て 遺 留 分 権 利 者 に 相 続 さ せ な い こ と が 可 能 と な っ て し ま い 、 そ の よ う な 事 態 と な っ て し ま っ て は 遺 留 分 権 利 者 の 生 計 の 資 本 等 の た め に 相 続 財 産 の 一 定 割 合 を 留 保 し よ う と し た 遺 留 分 制 度 の 趣 旨 が 没 却 さ れ て し ま う た め 、 生 前 に 流 出 さ せ た 財 産 を も 遺 留 分 算 定 の 基 礎 に 加 え る こ と と し た も の で あ る 。 ……   そ し て 、 民 法 が 懸 念 し た 上 記 事 態 は 、 ま さ に 相 続 分 の 譲 渡 に お い て も 生 じ る も の で あ る 。   す な わ ち 、 相 続 分 は 、 相 続 財 産 全 体 に 対 し て 各 共 同 相 続 人 が 有 す る 割 合 的 な 持 分 あ る い は 法 律 上 の 地 位 で あ る と 解 さ れ て い る と こ ろ 、 そ れ が 譲 渡 さ れ れ ば 、 全 て の 相 続 財 産 の 一 定 割 合 を 取 得 で き る 権 限 が 譲 受 人 に 移 転 し て し ま う こ と に な る 。 こ れ は 、 財 産 が 個 別 に 生 前 贈 与 さ れ る 場 合 よ り も 更 に 大 規 模 な 財 産 の 流 出 と な り 得 る 事 態 で あ る 。 こ の 点 、 原 判 決 は 、 後 述 の と お り 、 特 別 受 益 の 存 在 な ど に よ っ て は 相 続 分 の 価 値 が 零 に な る 可 能 性 が あ る と 指 摘 し て い る が 、 そ の よ う な 例 外 的 場 面 を 指 摘 し て 上 記 懸 念 を 無 視 す る こ と に 正 当 性 は 一 切 な い 。 む し ろ 、 極 め て 大 き な 経 済 的 価 値 の 移 転 と な り 得 る こ と こ そ 重 要 で あ り 、 そ も そ も 経 済 的 価 値 が あ る か ら こ そ 譲 渡 が な さ れ る の で あ っ て 、 相 続 分 の 譲 渡 は 、 明 ら か に 、 民 法 が 懸 念 す る 上 記 事 態 を 生 じ さ せ る 事 態 で あ る 。 ……   民 法 上 、 相 続 分 を 遺 留 分 の 対 象 か ら 除 外 す る と し た 明 文 規 定 は 存 在 し な い 。 に も か か わ ら ず 、 原 判 決 は 、 民 法

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— 145 — (8) (7) — 146 — 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 九 〇 九 条 本 文 を 根 拠 に 本 件 請 求 を 棄 却 し て い る の で あ る が 、 …… 同 条 が 存 在 す る か ら と い っ て 原 判 決 の よ う な 結 論 に は な ら な い 。 む し ろ 、 上 述 し た 法 意 を 前 提 と す れ ば 、 同 条 は 、 相 続 分 の 財 産 性 を 否 定 す る も の で は な い と 解 釈 さ れ る べ き で あ っ て 、 こ れ に 反 す る 原 判 決 は 甚 だ 不 当 で あ る 。」        

 

 「 共 同 相 続 人 間 で 相 続 分 の 譲 渡 が さ れ た と き は 、 積 極 財 産 と 消 極 財 産 と を 包 括 し た 遺 産 全 体 に 対 す る 譲 渡 人 の 割 合 的 な 持 分 が 譲 受 人 に 移 転 し 、 相 続 分 の 譲 渡 に 伴 っ て 個 々 の 相 続 財 産 に つ い て の 共 有 持 分 の 移 転 も 生 ず る も の と 解 さ れ る 。   そ し て 、 相 続 分 の 譲 渡 を 受 け た 共 同 相 続 人 は 、 従 前 か ら 有 し て い た 相 続 分 と 上 記 譲 渡 に 係 る 相 続 分 と を 合 計 し た 相 続 分 を 有 す る も の と し て 遺 産 分 割 手 続 等 に 加 わ り 、 当 該 遺 産 分 割 手 続 等 に お い て 、 他 の 共 同 相 続 人 に 対 し 、 従 前 か ら 有 し て い た 相 続 分 と 上 記 譲 渡 に 係 る 相 続 分 と の 合 計 に 相 当 す る 価 額 の 相 続 財 産 の 分 配 を 求 め る こ と が で き る こ と と な る 。   こ の よ う に 、 相 続 分 の 譲 渡 は 、 譲 渡 に 係 る 相 続 分 に 含 ま れ る 積 極 財 産 及 び 消 極 財 産 の 価 額 等 を 考 慮 し て 算 定 し た 当 該 相 続 分 に 財 産 的 価 値 が あ る と は い え な い 場 合 を 除 き 、 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 に 対 し 経 済 的 利 益 を 合 意 に よ っ て 移 転 す る も の と い う こ と が で き る 。 遺 産 の 分 割 が 相 続 開 始 の 時 に 遡 っ て そ の 効 力 を 生 ず る ( 民 法 九 〇 九 条 本 文 ) と さ れ て い る こ と は 、 以 上 の よ う に 解 す る こ と の 妨 げ と な る も の で は な い 。   し た が っ て 、 共 同 相 続 人 間 に お い て さ れ た 無 償 に よ る 相 続 分 の 譲 渡 は 、 譲 渡 に 係 る 相 続 分 に 含 ま れ る 積 極 財 産 及 び 消 極 財 産 の 価 額 等 を 考 慮 し て 算 定 し た 当 該 相 続 分 に 財 産 的 価 値 が あ る と は い え な い 場 合 を 除 き 、 上 記 譲 渡 を し た 者 の 相 続 に お い て 、 民 法 九 〇 三 条 一 項 に 規 定 す る 『 贈 与 』 に 当 た る 。   以 上 と 異 な る 見 解 に 基 づ き 、 本 件 相 続 分 譲 渡 は そ の 価 額 を 遺 留 分 算 定 の 基 礎 と な る 財 産 額 に 算 入 す べ き 贈 与 に 当 た ら な い と し て Xの 請 求 を 棄 却 す べ き も の と し た 原 審 の 判 断 に は 、 判 決 に 影 響 を 及 ぼ す こ と が 明 ら か な 法 令 の 違 反 が あ る 。 論 旨 は 理 由 が あ り 、 原 判 決 は 破 棄 を 免 れ な い 。 そ し て 、 さ ら に 審 理 を 尽 く さ せ る た め 、 本 件 を 原 審 に 差 戻 す こ と と す る 。」 ( 破 棄 差 戻 )    

 

  本 判 決 は 、 共 同 相 続 人 間 に お け る 無 償 の 相 続 分 譲 渡 は 、 譲 渡 者 の 相 続 に お い て 民 法 九 〇 三 条 一 項 に 規 定 す る 贈 与 に 該 当 す る と し た 初 め て の 最 高 裁 判 例 で あ る 。 民 法 九 〇 三 条 一 項 に 規 定 す る 贈 与 に 該 当 す る 以 上 、 民 法 一 〇 四 四 条 に よ っ て 、 共 同 相 続 人 間 に お け る 無 償 の 相 続 分 譲 渡 は 、 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 と な り 、 遺 留 分 減 殺 の 対 象 と な る 贈 与 で あ る と い う の で あ る 。   遺 留 分 減 殺 の 対 象 と な る の は 、 遺 留 分 算 定 の 基 礎 と な る 財 産 で あ り 、 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 に は 、 民 法 一 〇 四 四 条 に よ る 九 〇 三 条 の 準 用 に よ り 、 遺 贈 の 他 に い わ ゆ る 持 戻 し 贈 与 も 算 入 さ れ る か ら 、 相 続 分 の 譲 渡 が 民 法 九 〇 三 条 所 定 の 特 別 受 益 に 該 当 す る 贈 与 と い え る か ど う か が 本 判 決 で は 問 題 と な っ た の で あ る 。 最 高 裁 は 、 相 続 分 の 譲 渡 は 、「 積 極 財 産 と 消 極 財 産 と を 包 括 し た 遺 産 全 体 に 対 す る 譲 渡 人 の 割 合 的 な 持 分 」 を 譲 受 人 に 移 転 さ せ 、 そ れ に 伴 っ て 「 個 々 の 相 続 財 産 に つ い て の 共 有 持 分 の 移 転 も 」 譲 受 人 に 生 じ さ せ る も の で あ り 、「 相 続 分 の 譲 渡 を

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— 145 — (8) (7) — 146 — 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 九 〇 九 条 本 文 を 根 拠 に 本 件 請 求 を 棄 却 し て い る の で あ る が 、 …… 同 条 が 存 在 す る か ら と い っ て 原 判 決 の よ う な 結 論 に は な ら な い 。 む し ろ 、 上 述 し た 法 意 を 前 提 と す れ ば 、 同 条 は 、 相 続 分 の 財 産 性 を 否 定 す る も の で は な い と 解 釈 さ れ る べ き で あ っ て 、 こ れ に 反 す る 原 判 決 は 甚 だ 不 当 で あ る 。」        

 

 「 共 同 相 続 人 間 で 相 続 分 の 譲 渡 が さ れ た と き は 、 積 極 財 産 と 消 極 財 産 と を 包 括 し た 遺 産 全 体 に 対 す る 譲 渡 人 の 割 合 的 な 持 分 が 譲 受 人 に 移 転 し 、 相 続 分 の 譲 渡 に 伴 っ て 個 々 の 相 続 財 産 に つ い て の 共 有 持 分 の 移 転 も 生 ず る も の と 解 さ れ る 。   そ し て 、 相 続 分 の 譲 渡 を 受 け た 共 同 相 続 人 は 、 従 前 か ら 有 し て い た 相 続 分 と 上 記 譲 渡 に 係 る 相 続 分 と を 合 計 し た 相 続 分 を 有 す る も の と し て 遺 産 分 割 手 続 等 に 加 わ り 、 当 該 遺 産 分 割 手 続 等 に お い て 、 他 の 共 同 相 続 人 に 対 し 、 従 前 か ら 有 し て い た 相 続 分 と 上 記 譲 渡 に 係 る 相 続 分 と の 合 計 に 相 当 す る 価 額 の 相 続 財 産 の 分 配 を 求 め る こ と が で き る こ と と な る 。   こ の よ う に 、 相 続 分 の 譲 渡 は 、 譲 渡 に 係 る 相 続 分 に 含 ま れ る 積 極 財 産 及 び 消 極 財 産 の 価 額 等 を 考 慮 し て 算 定 し た 当 該 相 続 分 に 財 産 的 価 値 が あ る と は い え な い 場 合 を 除 き 、 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 に 対 し 経 済 的 利 益 を 合 意 に よ っ て 移 転 す る も の と い う こ と が で き る 。 遺 産 の 分 割 が 相 続 開 始 の 時 に 遡 っ て そ の 効 力 を 生 ず る ( 民 法 九 〇 九 条 本 文 ) と さ れ て い る こ と は 、 以 上 の よ う に 解 す る こ と の 妨 げ と な る も の で は な い 。   し た が っ て 、 共 同 相 続 人 間 に お い て さ れ た 無 償 に よ る 相 続 分 の 譲 渡 は 、 譲 渡 に 係 る 相 続 分 に 含 ま れ る 積 極 財 産 及 び 消 極 財 産 の 価 額 等 を 考 慮 し て 算 定 し た 当 該 相 続 分 に 財 産 的 価 値 が あ る と は い え な い 場 合 を 除 き 、 上 記 譲 渡 を し た 者 の 相 続 に お い て 、 民 法 九 〇 三 条 一 項 に 規 定 す る 『 贈 与 』 に 当 た る 。   以 上 と 異 な る 見 解 に 基 づ き 、 本 件 相 続 分 譲 渡 は そ の 価 額 を 遺 留 分 算 定 の 基 礎 と な る 財 産 額 に 算 入 す べ き 贈 与 に 当 た ら な い と し て Xの 請 求 を 棄 却 す べ き も の と し た 原 審 の 判 断 に は 、 判 決 に 影 響 を 及 ぼ す こ と が 明 ら か な 法 令 の 違 反 が あ る 。 論 旨 は 理 由 が あ り 、 原 判 決 は 破 棄 を 免 れ な い 。 そ し て 、 さ ら に 審 理 を 尽 く さ せ る た め 、 本 件 を 原 審 に 差 戻 す こ と と す る 。」 ( 破 棄 差 戻 )    

 

  本 判 決 は 、 共 同 相 続 人 間 に お け る 無 償 の 相 続 分 譲 渡 は 、 譲 渡 者 の 相 続 に お い て 民 法 九 〇 三 条 一 項 に 規 定 す る 贈 与 に 該 当 す る と し た 初 め て の 最 高 裁 判 例 で あ る 。 民 法 九 〇 三 条 一 項 に 規 定 す る 贈 与 に 該 当 す る 以 上 、 民 法 一 〇 四 四 条 に よ っ て 、 共 同 相 続 人 間 に お け る 無 償 の 相 続 分 譲 渡 は 、 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 と な り 、 遺 留 分 減 殺 の 対 象 と な る 贈 与 で あ る と い う の で あ る 。   遺 留 分 減 殺 の 対 象 と な る の は 、 遺 留 分 算 定 の 基 礎 と な る 財 産 で あ り 、 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 に は 、 民 法 一 〇 四 四 条 に よ る 九 〇 三 条 の 準 用 に よ り 、 遺 贈 の 他 に い わ ゆ る 持 戻 し 贈 与 も 算 入 さ れ る か ら 、 相 続 分 の 譲 渡 が 民 法 九 〇 三 条 所 定 の 特 別 受 益 に 該 当 す る 贈 与 と い え る か ど う か が 本 判 決 で は 問 題 と な っ た の で あ る 。 最 高 裁 は 、 相 続 分 の 譲 渡 は 、「 積 極 財 産 と 消 極 財 産 と を 包 括 し た 遺 産 全 体 に 対 す る 譲 渡 人 の 割 合 的 な 持 分 」 を 譲 受 人 に 移 転 さ せ 、 そ れ に 伴 っ て 「 個 々 の 相 続 財 産 に つ い て の 共 有 持 分 の 移 転 も 」 譲 受 人 に 生 じ さ せ る も の で あ り 、「 相 続 分 の 譲 渡 を

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— 143 — (10) (9) — 144 — 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 受 け た 共 同 相 続 人 は 、 従 前 か ら 有 し て い た 相 続 分 と 上 記 譲 渡 に 係 る 相 続 分 と を 合 計 し た 相 続 分 を 有 す る も の と し て 遺 産 分 割 手 続 等 に 加 わ り 、 当 該 遺 産 分 割 手 続 等 に お い て 、 他 の 共 同 相 続 人 に 対 し 、 従 前 か ら 有 し て い た 相 続 分 と 上 記 譲 渡 に 係 る 相 続 分 と の 合 計 に 相 当 す る 価 額 の 相 続 財 産 の 分 配 を 求 め る こ と が で き る こ と と な る 」 の で あ る か ら 、「 相 続 分 の 譲 渡 は 、 譲 渡 に 係 る 相 続 分 に 含 ま れ る 積 極 財 産 及 び 消 極 財 産 の 価 額 等 を 考 慮 し て 算 定 し た 当 該 相 続 分 に 財 産 的 価 値 が あ る と は い え な い 場 合 を 除 き 、 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 に 対 し 経 済 的 利 益 を 合 意 に よ っ て 移 転 す る も の と い う こ と が で き る 」 と 判 示 し た 。   判 旨 の 意 味 を 明 ら か に す る た め に 、 関 連 判 例 を 通 覧 し て み る と 、 本 判 決 が 、 こ れ ま で に な さ れ た い く つ か の 最 高 裁 の 判 断 を 確 認 し 踏 襲 し た 上 で 構 成 さ れ た も の で あ る こ と を 見 て 取 る こ と が で き る 。   ( 一 ) ま ず 、 相 続 分 譲 渡 の 法 的 性 質 に つ い て で あ る が 、 す で に 、 最 高 裁 は 、 個 々 の 相 続 財 産 に 対 す る 共 同 相 続 人 の 持 分 の ほ か に 、 積 極 財 産 と 消 極 財 産 と を 包 括 し た 遺 産 全 体 に 対 す る 共 同 相 続 人 の 割 合 的 な 持 分 を 観 念 で き る し 、 こ れ を 相 続 人 外 の 第 三 者 だ け で な く 共 同 相 続 人 に も 譲 渡 す る こ と が で き る と し て 、 共 同 相 続 人 間 に 対 す る 相 続 分 の 譲 渡 に は 農 地 法 三 条 一 項 所 定 の 知 事 の 許 可 は い ら な い と 判 断 し て い た し 、 共 同 相 続 人 の う ち 自 己 の 相 続 分 の 全 部 を 譲 渡 し た 者 は 、 遺 産 分 割 を 求 め る こ と は で き な い か ら 、 遺 産 確 認 の 訴 え の 当 事 者 に は な れ な い と い っ て い た 。   す な わ ち 、 最 判 平 成 一 三 年 七 月 一 〇 日 民 集 五 五 巻 五 号 九 五 五 頁 は 、「 共 同 相 続 人 間 で相 続 分 の 譲 渡 が さ れ た と き は 、 積 極 財 産 と 消 極 財 産 と を 包 括 し た 遺 産 全 体 に 対 す る 譲 渡 人 の 割 合 的 な 持 分 が 譲 受 人 に 移 転 し 、 譲 受 人 は 従 前 か ら 有 し て い た 相 続 分 と 新 た に 取 得 し た 相 続 分 と を 合 計 し た 相 続 分 を 有 す る も の と し て 遺 産 分 割 に 加 わ る こ と と な り 、 分 割 が 実 行 さ れ れ ば 、 そ の 結 果 に 従 っ て 相 続 開 始 の 時 に さ か の ぼ っ て 被 相 続 人 か ら の 直 接 的 な 権 利 移 転 が 生 ず る こ と に な る 。 こ の よ う に 、 相 続 分 の 譲 受 人 た る 共 同 相 続 人 間 の 遺 産 分 割 前 に お け る 地 位 は 、 持 分 割 合 の 数 値 が 異 な る だ け で 、 相 続 に よ っ て 取 得 し た 地 位 と 本 質 的 に 異 な る も の で は な い 。 …… ま た 、 相 続 分 の 譲 渡 に よ る 権 利 移 転 は 、 そ の 後 に 予 定 さ れ て い る 遺 産 分 割 に よ り 権 利 移 転 が 確 定 的 に 生 ず る ま で の 暫 定 的 な も の で あ っ て 、 遺 産 分 割 に よ る 農 地 に つ い て の 確 定 的 な 権 利 移 転 に つ い て は 許 可 を 要 し な い 。」 と し て い る 。 そ し て 、 最 判 平 成 二 六 年 二 月 一 四 日 民 集 六 八 巻 二 号 一 一 三 頁 は 、「 遺 産 確 認 の 訴 え は 、 そ の 確 定 判 決 に よ り 特 定 の 財 産 が 遺 産 分 割 の 対 象 で あ る 財 産 で あ る か 否 か を 既 判 力 を も っ て 確 定 し 、 こ れ に 続 く 遺 産 分 割 審 判 の 手 続 等 に お い て 、 当 該 財 産 の 遺 産 帰 属 性 を 争 う こ と を 許 さ な い と す る こ と に よ っ て 共 同 相 続 人 間 の 紛 争 の 解 決 に 資 す る こ と を 目 的 と す る 訴 え で あ り 、 そ の た め 、 共 同 相 続 人 全 員 が 当 事 者 と し て 関 与 し 、 そ の 間 で 合 一 に の み 確 定 す る こ と を 要 す る 固 有 必 要 的 共 同 訴 訟 と 解 さ れ て い る も の で あ る ( …… )。 し か し 、共 同 相 続 人 の う ち 自 己 の 相 続 分 の 全 部 を 譲 渡 し た 者 は 、 積 極 財 産 と 消 極 財 産 と を 包 括 し た 遺 産 全 体 に 対 す る 割 合 的 な 持 分 を 全 て 失 う こ と に な り 、 遺 産 分 割 審 判 の 手 続 等 に お い て 遺 産 に 属 す る 財 産 に つ き そ の 分 割 を 求 め る こ と は で き な い の で あ る か ら 、 そ の 者 と の 間 で 遺 産 分 割 の 前 提 問 題 で あ る 当 該 財 産 の 遺 産 帰 属 性 を 確 定 す べ き 必 要 性 は な い と い う べ き で あ る 。 そ う す る と 、 共 同 相 続 人 の う ち 自 己 の 相 続 分 の 全 部 を 譲 渡 し た 者 は 、 遺 産 確 認 の 訴 え の 当 事 者 適 格 を 有 し な い と 解 す る の が 相 当 で あ る 。」 と い っ た の で あ る 。   ( 二 ) 次 に 、 本 件 事 案 に お け る 相 続 分 の 譲 渡 者 で あ る 被 相 続 人 Aの 死 亡 は 、 譲 渡 の 時 か ら 四 年 以 上 経 過 後 の よ う で あ る か ら 、 本 件 相 続 分 譲 渡 を 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 に 算 入 す る た め に は 、 民 法 一 〇 四 四 条 に よ っ て 九 〇 三 条 が 準 用 さ れ る 際 に 、 民 法 一 〇 三 〇 条 が 適 用 さ れ 、 共 同 相 続 人 に 対 す る 持 戻 し 「 贈 与 」 が 、 遺 留 分 権 利 者 に 損 害 を 加 え る こ と を 知 っ て な さ れ た 場 合 を 除 い て 、 一 年 以 内 の 贈 与 に 限 ら れ る の か ど う か と い う こ と も 問 題 に な る が 、 こ の 問 題 に つ い て も 、 す で に 最 高 裁 の 判 断 が あ る 。 す な わ ち 、 最 判 平 成 一 〇 年 三 月 二 四 日 民 集 五 二 巻 二 号 四 三 三 頁 は 、 共 同 相 続 人 間 に 対 す る 持 戻 し 贈 与 に は 原 則 と し て 民 法 一 〇 三 〇 条 の 適 用 が な い と し て い た 。「 民 法 九 〇 三 ( 5) ( 6)

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— 143 — (10) (9) — 144 — 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 受 け た 共 同 相 続 人 は 、 従 前 か ら 有 し て い た 相 続 分 と 上 記 譲 渡 に 係 る 相 続 分 と を 合 計 し た 相 続 分 を 有 す る も の と し て 遺 産 分 割 手 続 等 に 加 わ り 、 当 該 遺 産 分 割 手 続 等 に お い て 、 他 の 共 同 相 続 人 に 対 し 、 従 前 か ら 有 し て い た 相 続 分 と 上 記 譲 渡 に 係 る 相 続 分 と の 合 計 に 相 当 す る 価 額 の 相 続 財 産 の 分 配 を 求 め る こ と が で き る こ と と な る 」 の で あ る か ら 、「 相 続 分 の 譲 渡 は 、 譲 渡 に 係 る 相 続 分 に 含 ま れ る 積 極 財 産 及 び 消 極 財 産 の 価 額 等 を 考 慮 し て 算 定 し た 当 該 相 続 分 に 財 産 的 価 値 が あ る と は い え な い 場 合 を 除 き 、 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 に 対 し 経 済 的 利 益 を 合 意 に よ っ て 移 転 す る も の と い う こ と が で き る 」 と 判 示 し た 。   判 旨 の 意 味 を 明 ら か に す る た め に 、 関 連 判 例 を 通 覧 し て み る と 、 本 判 決 が 、 こ れ ま で に な さ れ た い く つ か の 最 高 裁 の 判 断 を 確 認 し 踏 襲 し た 上 で 構 成 さ れ た も の で あ る こ と を 見 て 取 る こ と が で き る 。   ( 一 ) ま ず 、 相 続 分 譲 渡 の 法 的 性 質 に つ い て で あ る が 、 す で に 、 最 高 裁 は 、 個 々 の 相 続 財 産 に 対 す る 共 同 相 続 人 の 持 分 の ほ か に 、 積 極 財 産 と 消 極 財 産 と を 包 括 し た 遺 産 全 体 に 対 す る 共 同 相 続 人 の 割 合 的 な 持 分 を 観 念 で き る し 、 こ れ を 相 続 人 外 の 第 三 者 だ け で な く 共 同 相 続 人 に も 譲 渡 す る こ と が で き る と し て 、 共 同 相 続 人 間 に 対 す る 相 続 分 の 譲 渡 に は 農 地 法 三 条 一 項 所 定 の 知 事 の 許 可 は い ら な い と 判 断 し て い た し 、 共 同 相 続 人 の う ち 自 己 の 相 続 分 の 全 部 を 譲 渡 し た 者 は 、 遺 産 分 割 を 求 め る こ と は で き な い か ら 、 遺 産 確 認 の 訴 え の 当 事 者 に は な れ な い と い っ て い た 。   す な わ ち 、 最 判 平 成 一 三 年 七 月 一 〇 日 民 集 五 五 巻 五 号 九 五 五 頁 は 、「 共 同 相 続 人 間 で相 続 分 の 譲 渡 が さ れ た と き は 、 積 極 財 産 と 消 極 財 産 と を 包 括 し た 遺 産 全 体 に 対 す る 譲 渡 人 の 割 合 的 な 持 分 が 譲 受 人 に 移 転 し 、 譲 受 人 は 従 前 か ら 有 し て い た 相 続 分 と 新 た に 取 得 し た 相 続 分 と を 合 計 し た 相 続 分 を 有 す る も の と し て 遺 産 分 割 に 加 わ る こ と と な り 、 分 割 が 実 行 さ れ れ ば 、 そ の 結 果 に 従 っ て 相 続 開 始 の 時 に さ か の ぼ っ て 被 相 続 人 か ら の 直 接 的 な 権 利 移 転 が 生 ず る こ と に な る 。 こ の よ う に 、 相 続 分 の 譲 受 人 た る 共 同 相 続 人 間 の 遺 産 分 割 前 に お け る 地 位 は 、 持 分 割 合 の 数 値 が 異 な る だ け で 、 相 続 に よ っ て 取 得 し た 地 位 と 本 質 的 に 異 な る も の で は な い 。 …… ま た 、 相 続 分 の 譲 渡 に よ る 権 利 移 転 は 、 そ の 後 に 予 定 さ れ て い る 遺 産 分 割 に よ り 権 利 移 転 が 確 定 的 に 生 ず る ま で の 暫 定 的 な も の で あ っ て 、 遺 産 分 割 に よ る 農 地 に つ い て の 確 定 的 な 権 利 移 転 に つ い て は 許 可 を 要 し な い 。」 と し て い る 。 そ し て 、 最 判 平 成 二 六 年 二 月 一 四 日 民 集 六 八 巻 二 号 一 一 三 頁 は 、「 遺 産 確 認 の 訴 え は 、 そ の 確 定 判 決 に よ り 特 定 の 財 産 が 遺 産 分 割 の 対 象 で あ る 財 産 で あ る か 否 か を 既 判 力 を も っ て 確 定 し 、 こ れ に 続 く 遺 産 分 割 審 判 の 手 続 等 に お い て 、 当 該 財 産 の 遺 産 帰 属 性 を 争 う こ と を 許 さ な い と す る こ と に よ っ て 共 同 相 続 人 間 の 紛 争 の 解 決 に 資 す る こ と を 目 的 と す る 訴 え で あ り 、 そ の た め 、 共 同 相 続 人 全 員 が 当 事 者 と し て 関 与 し 、 そ の 間 で 合 一 に の み 確 定 す る こ と を 要 す る 固 有 必 要 的 共 同 訴 訟 と 解 さ れ て い る も の で あ る ( …… )。 し か し 、共 同 相 続 人 の う ち 自 己 の 相 続 分 の 全 部 を 譲 渡 し た 者 は 、 積 極 財 産 と 消 極 財 産 と を 包 括 し た 遺 産 全 体 に 対 す る 割 合 的 な 持 分 を 全 て 失 う こ と に な り 、 遺 産 分 割 審 判 の 手 続 等 に お い て 遺 産 に 属 す る 財 産 に つ き そ の 分 割 を 求 め る こ と は で き な い の で あ る か ら 、 そ の 者 と の 間 で 遺 産 分 割 の 前 提 問 題 で あ る 当 該 財 産 の 遺 産 帰 属 性 を 確 定 す べ き 必 要 性 は な い と い う べ き で あ る 。 そ う す る と 、 共 同 相 続 人 の う ち 自 己 の 相 続 分 の 全 部 を 譲 渡 し た 者 は 、 遺 産 確 認 の 訴 え の 当 事 者 適 格 を 有 し な い と 解 す る の が 相 当 で あ る 。」 と い っ た の で あ る 。   ( 二 ) 次 に 、 本 件 事 案 に お け る 相 続 分 の 譲 渡 者 で あ る 被 相 続 人 Aの 死 亡 は 、 譲 渡 の 時 か ら 四 年 以 上 経 過 後 の よ う で あ る か ら 、 本 件 相 続 分 譲 渡 を 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 に 算 入 す る た め に は 、 民 法 一 〇 四 四 条 に よ っ て 九 〇 三 条 が 準 用 さ れ る 際 に 、 民 法 一 〇 三 〇 条 が 適 用 さ れ 、 共 同 相 続 人 に 対 す る 持 戻 し 「 贈 与 」 が 、 遺 留 分 権 利 者 に 損 害 を 加 え る こ と を 知 っ て な さ れ た 場 合 を 除 い て 、 一 年 以 内 の 贈 与 に 限 ら れ る の か ど う か と い う こ と も 問 題 に な る が 、 こ の 問 題 に つ い て も 、 す で に 最 高 裁 の 判 断 が あ る 。 す な わ ち 、 最 判 平 成 一 〇 年 三 月 二 四 日 民 集 五 二 巻 二 号 四 三 三 頁 は 、 共 同 相 続 人 間 に 対 す る 持 戻 し 贈 与 に は 原 則 と し て 民 法 一 〇 三 〇 条 の 適 用 が な い と し て い た 。「 民 法 九 〇 三 ( 5) ( 6)

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— 141 — (12) (11) — 142 — 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 共同相続人間の相続分譲渡と遺留分減殺(小野) 条 一 項 の 定 め る 相 続 人 に 対 す る 贈 与 は 、 右 贈 与 が 相 続 開 始 よ り も 相 当 以 前 に さ れ た も の で あ っ て 、 そ の 後 の 時 の 経 過 に 伴 う 社 会 事 情 や 相 続 人 な ど 関 係 人 の 個 人 的 事 情 の 変 化 を も 考 慮 す る と き 、 減 殺 請 求 を 認 め る こ と が 右 相 続 人 に 酷 で あ る な ど の 特 段 の 事 情 の な い 限 り 、 民 法 一 〇 三 〇 条 の 定 め る 要 件 を 充 た さ な い も の で あ っ て も 、 遺 留 分 減 殺 の 対 象 と な る も の と 解 す る の が 相 当 で あ る 。 け だ し 、 民 法 九 〇 三 条 一 項 の 定 め る 相 続 人 に 対 す る 贈 与 は 、 す べ て 民 法 一 〇 四 四 条 、 九 〇 三 条 一 項 の 定 め る 要 件 を 満 た さ な い も の で あ っ て も 、 遺 留 分 減 殺 の 対 象 と な る も の と 解 す る の が 相 当 で あ る 。 け だ し 、 民 法 九 〇 三 条 一 項 の 定 め る 相 続 人 に 対 す る 贈 与 は 、 す べ て 民 法 一 〇 四 四 条 、 九 〇 三 条 の 規 定 に よ り 遺 留 分 減 殺 の 基 礎 と な る 財 産 に さ れ る と こ ろ 、 右 贈 与 の う ち 民 法 一 〇 三 〇 条 の 定 め る 要 件 を 満 た さ な い も の が 遺 留 分 減 殺 の 対 象 と な ら な い と す る と 、 遺 留 分 を 侵 害 さ れ た 相 続 人 が 存 在 す る に も か か わ ら ず 、 減 殺 の 対 象 と な る べ き 遺 贈 、 贈 与 が な い た め に 右 の 者 が 遺 留 分 相 当 額 を 確 保 で き な い こ と が 起 こ り 得 る が 、 こ の こ と は 遺 留 分 制 度 の 趣 旨 を 没 却 す る も の と い う べ き で あ る か ら で あ る 。」 と い っ て い た の で あ る 。   ( 三 )「 相 続 分 の 譲 渡 に 伴 っ て 個 々 の 相 続 財 産 に つ い て の 共 有 持 分 の 移 転 も 生 ず る 」 と い う の は 、 新 た に 説 示 さ れ た 内 容 で あ り 、 相 続 分 の 譲 渡 が 持 戻 し 贈 与 に あ た る と 説 く そ の 理 由 の 一 部 で あ る が 、 遺 産 分 割 前 の い わ ゆ る 遺 産 共 有 を 民 法 二 四 九 条 以 下 に 規 定 す る 通 常 の 共 有 で あ る と 解 す る 判 例 の 立 場 に 立 つ と 当 然 の 説 示 で あ る と い え よ う 。 例 え ば 、 最 判 昭 和 三 〇 年 五 月 三 一 日 民 集 九 巻 六 号 七 九 三 頁 は 、「 相 続 財 産 の 共 有 ( 民 法 八 九 八 条 、 旧 法 一 〇 〇 二 条 ) は 、 民 法 改 正 の 前 後 を 通 じ 、 民 法 二 四 九 条 以 下 に 規 定 す る 『 共 有 』 と そ の 性 質 を 異 に す る も の で は な い と 解 す べ き で あ る 。 … … そ れ 故 に 、 遺 産 の 共 有 及 び 分 割 に 関 し て は 、 共 有 に 関 す る 民 法 二 五 六 条 以 下 の 規 定 が 第 一 次 的 に 適 用 せ ら れ 、 遺 産 の 分 割 は 現 物 分 割 を 原 則 と し 、 分 割 に よ っ て 著 し く そ の 価 格 を 損 す る 虞 が あ る と き は 、 そ の 競 売 を 命 じ て 価 格 分 割 を 行 う こ と に な る の で あ っ て 、 民 法 九 〇 六 条 は そ の 場 合 に と る べ き 方 針 を 明 ら か に し た も の に 外 な ら な い 」 と い っ て い た し 、 最 判 昭 和 三 八 年 二 月 二 二 日 民 集 一 七 巻 一 号 二 三 五 頁 は 、 各 相 続 人 は 個 々 の 相 続 財 産 の 持 分 権 を 自 由 に 処 分 で き る と い う 前 提 に 立 っ て 、 相 続 人 の 一 人 が 勝 手 に 相 続 不 動 産 に 単 独 名 義 の 相 続 登 記 を し て 、 そ の 上 に 第 三 者 が 売 買 予 約 に 基 づ く 所 有 権 移 転 請 求 権 保 全 の 仮 登 記 を し て い る 場 合 に は 、「 相 続 財 産 に 属 す る 不 動 産 に つ き 単 独 所 有 権 移 転 の 登 記 を し た 共 同 相 続 人 中 の 乙 な ら び に 乙 か ら 単 独 所 有 権 移 転 の 登 記 を 受 け た 第 三 取 得 者 丙 に 対 し 、 他 の 共 同 訴 続 人 甲 は 自 己 の 持 分 を 登 記 な く し て 対 抗 し う る も の と 解 す べ き で あ る 。 け だ し 乙 の 登 記 は 甲 の 持 分 に 関 す る 限 り 無 権 利 の 登 記 で あ り 、 登 記 に 公 信 力 な き 結 果 丙 も 甲 の 持 分 に 関 す る 限 り そ の 権 利 を 取 得 す る に 由 な い か ら で あ る 」 と 判 示 し 、 そ の 他 の 相 続 人 は 、 各 自 の 有 す る 持 分 に 適 合 す る 更 正 登 記 手 続 き を 求 め る こ と が で き る も の と し た 。 ま た 、 最 判 昭 和 五 〇 年 一 一 月 七 日 民 集 二 九 巻 一 〇 号 一 五 二 五 頁 も 、 「 共 同 相 続 人 が 分 割 前 の 遺 産 を 共 同 所 有 す る 法 律 関 係 は 、 基 本 的 に は 民 法 二 四 九 条 以 下 に 規 定 す る 共 有 と し て の 性 質 を 有 す る と 解 す る の が 相 当 で あ っ て ( …… )、 共 同 相 続 人 の 一 人 か ら 遺 産 を 構 成 す る 特 定 不 動 産 に つ い て 同 人 の 有 す る 共 有 持 分 権 を 譲 り 受 け た 第 三 者 は 、 適 法 に そ の 権 利 を 取 得 す る こ と が で き ( …… )、 他 の 共 同 相 続 人 と と も に 右 不 動 産 を 共 同 所 有 す る 関 係 に 立 つ が 、 右 共 同 所 有 関 係 が 民 法 二 四 九 条 以 下 の 共 有 と し て の 性 質 を 有 す る も の で あ る こ と は い う ま で も な い 。 そ し て 、 第 三 者 が 右 共 同 所 有 関 係 の 解 消 を 求 め る 方 法 と し て 裁 判 上 と る べ き 手 続 は 、 民 法 九 〇 七 条 に 基 づ く 遺 産 分 割 審 判 で は な く 、 民 法 二 五 八 条 に 基 づ く 共 有 物 分 割 訴 訟 で あ る と 解 す る の が 相 当 で あ る 。」 と い っ て い る の で あ る 。   ( 四 ) 注 目 す べ き 新 た な 判 断 は 、 最 高 裁 が 、 相 続 分 譲 渡 は 「 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 に 対 し 経 済 的 利 益 を 合 意 に よ っ て 移 転 す る も の と い う こ と が で き る 」 か ら 、「 共 同 相 続 人 間 に お い て さ れ た 無 償 に よ る 相 続 分 の 譲 渡 は 、 譲 渡 に 係 る 相 続 分 に 含 ま れ る 積 極 財 産 及 び 消 極 財 産 の 価 額 等 を 考 慮 し て 算 定 し た 当 該 相 続 分 に 財 産 的 価 値 が あ る と は い え な い 場 合 を 除 き 、 上 記 譲 渡 を し た 者 の 相 続 に お い て 、 民 法 九 〇 三 条 一 項 に 規 定 す る 『 贈 与 』 に 当 た る 。」 と 判 断 し た こ と で あ る 。 そ し て 、「 遺 産 の 分 割 が 相 続 開 始 の 時 に 遡 っ て そ の 効 力 を 生 ず る ( 民 法 九 〇 九 条 本 文 ) と さ ( 7) ( 8) ( 9) ( 10)

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