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[山梨大学工学部研究報告第50号1999年12月] 論 文 篠

階段昇降機の開発

篠剛 小尾誠 清水毅 (平成11年8月31日受理)

Development of Stair Climbing Machine

TsuyoshiSHINO MakotoOBI TsuyoshiSHIMIZU

      Abstract   This paper describes development of stairs climbing machine. Oil pressure cylinder is used for this mechanism The characteristic of this machine is that can go down stairs by self− respect. And in case going up stairs, reversible motor moves a cylinder because energy is necessary. And power of a person is necessary for horizontal movelnent of this machine. We experiment this machine going up and down stairs in the yard. As a result, it costs approximate− ly l minute by a one step when going up stairs. And it costs approximately 1.5 seconds by one step in a case of going down the stairs. 1.はじめに 2.開発条件  我が国では,急速な高齢化や交通事故の増加により 肢体不自由者,特に下肢不自由者の数が増加する傾向 にある.こうした下肢不自由者の多くは車椅子の生活 を余儀無くされている.車椅子は完成度が高く非常に 使いやすくなっているが,階段や段差の走行が極めて 困難であり車椅子利用者の行動範囲の妨げになってい る.今回,このような福祉分野で活用できる階段昇降 機の開発を行った.開発した機構には,油圧シリンダ が用いられており,特徴は,自重により階段を下るこ とができる点である.また,階段を上る際には,エネ ルギーを与えなければならないので,リバーシブルモ ータを用いて,シリンダを動作させる.なお,開発し た昇降機の水平移動は車椅子同様人力にて行うものと し,本稿ではこの機構の動作確認を行うことを目的と する.この機構を車椅子に適用することはこれ以降の 課題とする.  開発にあたって以下の条件を設定し開発を行った. (1) 階段昇降方法は脚伸縮式による垂直運動と,    車輪による水平運動の組み合わせによってお     こなう. (2) 脚伸縮に油圧シリンダを使うがポンプなどの     高価な制御機器や複雑な油圧回路は使わず単     純な機構とする. (3) 大きさは電動車椅子と同程度とする. (4) 階段1段の最大昇降高さ(蹴上げ)は200mm     とする.  以上を主な開発条件とした.  なお,階段1段の最大昇降高さは建築基準法の階段 寸法規制により決定した(1).表1に階段寸法規制を示 す. Table l Stairs measurement regulation 機械システムエ学科,Department of Mechanical Syst,em Engineering Step height:㎜ Ste width:㎜ Elementar school Under160 Over 260

Public)lace Under180 Over 260

(2)

平成11年12月 山梨大学工学部研究報告 第50号 バルブ  ラック・ピニオンヘッド

取。手油圧ホース

_  ↓  ・・⇔ブルモー・

       滑車部

cの

P  シリンダc シリンダB

@      接地スイヅチc 接地スイッチb 接地スイッチa   接地スイッチd \シリンダA

Step1

Step4

Step2

Step3

Step5

Step6

Step7

Step8

Fig.3 Stair going up method Fig.1 Structure of stair climbing machine r、 一:㌧ニー. 竺・q き1 ● ● ク・ピニオンとリバーシブルモータが外側部の上部に 固定されている.ラックの先端は内側部に接続され, この接続部は階段昇段時に接続され,降段時は切り離 される. 4.昇降方法 Fig.2 Structure of pulley 3.昇降機の構成  開発した階段昇降機は,全4本の油圧シリンダおよ び油圧シリンダを踏み面に垂直に当てるための本体中 央部の滑車機構による垂直運動と,車輪による水平運 動を交互に繰り返して階段昇降を行う.開発した階段 昇降機の構成を図1に,滑車部の構成を図2に示す. 内側シリンダ2本,外側シリンダ2本をそれぞれ前後 の脚部とした本体2組を,中央の滑車により垂直方向 に動くように組上げられている.内側シリンダ2本と 外側シリンダ2本は,それぞれ油圧ホースでつながれ ている.油圧ホースの中央にはバルブがあり,車輪に 付いた接地スイッチによってバルブの開閉がされる. バルブが閉まっていれば油の動きがなくシリンダに力 がかかっても伸縮せず,バルブが開いていればシリン ダに力がかかると伸縮する.また,内側シリンダ2本 が固定されている本体内側部と,外側シリンダ2本が 固定されている本体外側部を上下に動かすためのラッ 階段昇降は各段ごとに滑車部とシリンダの脚が上下す ることにより昇降する.  昇段時は,外側部のモータを動かし外側部,内側部 を上下させる.図3に昇段時の各部の動作図を示し, 以下その動作について述べる. 1. 外側シリンダAの車輪が階段蹴上げ面につく. 2. モータを動かし外側部全てを階段の蹴上げ高   さ以上に上げる.このときシリンダA,D両方   の接地スイッチが,車輪が接地してないのを感知 3. 4. 5. 6. し,外側部のバルブが開きシリンダA,Dに荷 重がかかると伸縮できる状態になる. 前進した後,内側シリンダBが蹴上げ面につく. モータを逆回転させ外側シリンダAに踏み面 があたり荷重がかかりシリンダAが縮みシリン ダDが伸びシリンダA,D両方が階段踏み面に 接地するまで下げる.A, D両方の接地スイッ チが接地したのを感知するとバルブが閉まりシ リンダA,Dが伸縮できない状態となる. さらにそのままモータの回転を続け,内側部全 ての車輪を階段の蹴上げ高さ以上に上げる.こ のときシリンダB,C両方の接地スイッチが車 輪が接地してないのを感知し,内側部のバルブ が開きシリンダB,Cに荷重がかかると伸縮で きる状態になる. 内側シリンダBが階段踏み面の上にくるまで

一82一

(3)

階段昇降機の開発

Step4

Step5

Fig.4 Stair going down method   前進する. 7. モータを回転させ内側シリンダB,C両方が階   段踏み面に接地するまで下げる.シリンダB,    C両方の接地スイッチが接地したのを感知する    とバルブが閉まりシリンダB,Cが伸縮できな    い状態となる. 8. これを交互に繰り返し昇る.階段昇降は各段ご    とに滑車部とシリンダの脚が上下することによ    り昇降する.  これに対し,降段時は,外側部のモータは使わず自 重により油圧シリンダが伸び縮みし外側部,内側部が 上下する.よって,連結棒で接続してある内側部とラ ックを切り離しリバーシブルモータを使用せずに階段 を降りる.昇るときとは逆にシリンダDが進行方向の 階段に向かって前となる.図4に降段時の各部の動作 図を示し, 以下各部の動作について述べる. 1.側シリンダDの車輪が階段の踏み面を越える.   このときシリンダDの接地スイヅチが,車輪が接   地してないのを感知し外側部のバルブが開きシリ   ンダA,Dは荷重がかかれば伸縮できる状態とな   る. 2.自重により外側シリンダAに荷重がかかり脚が   縮み,油圧により外側シリンダDの脚が伸び1段   下の階段踏み面に接地する.A, D両方の車輪が   接地したのを感知するとバルブが閉じシリンダに   荷重がかかっても伸縮しない状態となる.それと   同時に外側部が階段の蹴上げ高さの半分下がる. 3.前進の後,内側シリンダCの車輪が階段の踏み面   を越える.このときシリンダCの接地スイッチが   車輪が接地してないのを感知し外側部のバルブが   開きシリンダB,Cは荷重がかかれば伸縮できる   状態になる. 4.自重により内側シリンダBに荷重がかかり脚が縮   み,油圧により内側シリンダCの脚が伸び1段下   の階段踏み面に接地する.B, C両方の車輪が接   地したのを感知するとバルブが閉じシリンダに荷   重がかかっても伸縮しない状態となる.それと同

K

D

S  

H

W

X

X

Fig.5 Relation of Stairs and cylinder stroke   時に,内側部が階段の蹴上げ高さの半分下がる 5.これを交互に繰り返し降りる. 5.設計及び試作  この昇降方法は,階段とシリンダの関係に2つの条 件が満たされなければ正常な階段昇降をおこなわない. 階段とシリンダの関係を図5に示す.  1つ目の条件は,内側部のどちらかのシリンダと外 側部のどちらかのシリンダが階段を同時に降りる事が あってはならない.これは,X=2Wの時, Xが階段 2段分の踏み面の長さと等しいと,内側部と外側部が 同時に降りてしまい階段踏み面に対してシリンダが垂 直を保てなくなる.  2つ目の条件は,階段の高さ以上のシリンダストロ ークと滑車のガイドが必要である.これは,シリンダ ストロークSと滑車のガイドKが階段の高さHより長 くなければならない.  これらの条件をふまえ実際に試作した昇降機の外観 を図6に,仕様を表2に示す.骨組みは,重量を軽く するために,アルミ中空パイプを使用した.  内側部には内側シリンダ2本を両側のシリンダ支持 板に固定し,中央部に滑車としてガイドに沿ってスム ーズに動くように車輪が固定されている.外側部には 外側シリンダ2本を両側のシリンダ支持板に固定し, 中央部に滑車のガイドが固定されている.外側部の上 部に外側部と内側部を上下させる縦型ラック・ピニオ ンヘヅドを取付けたリバーシブルモータが上部支持板 に固定され,また右側上部に昇降機を押したり引いた りする取っ手がリバーシブルモータを動かすスイッチ と一緒に付いている.ラヅク・ピニオンヘッドのラッ クの先端には内側部と接続する連結棒が取付けてあり, この連結棒は簡単に内側部と切り離せるようになって いる.連結部を接続した時と切り離した時の図を図7 に示す.  4本の油圧シリンダは,内径32mm,ロヅド径1

6mm,ストローク320mmの3.5MPa用シン

一83一

(4)

平成11年12月 山梨大学工学部研究報告 第50号 f }   難 蒙 灘蓑i顯願鷺晶i Fig 6 The stair climbing machine Table2 Specification of stair climbing machine Hel ht

950mm

Wldth

400mm

Len th

800mm

Wei ht 85k Cylinder(×4)     φ32mm rtroke 320mm oressure 3.5MPa Motor(×1)     100V 90W cC−Reversible motor Wheel(×8)

d=70mm

グルロッド油圧シリンダを使用した.シリンダのスト

ロークは320mmであるがシリンダC, Dに320

mmの足をつける事によりシリンダAとD,シリンダ

BとCそれぞれで最大ストローク差を約600mm得

られるようにした.もちろんシリンダC,Dは,平坦 面では最も縮んだ状態となり,階段昇降時の最初のス テップは伸びる事しか出来ない.シリンダA,Bは平 坦面では最も伸びた状態となり階段昇降時の最初のス テヅプは縮む事しか出来ない.  内側シリンダ2本及び外側シリンダ2本はそれぞれ 油圧ホースでつながれている.各油圧ホースの中央部 に,車輪に付いた接地スイッチで開閉するバルブが付 いている.接地スイヅチを図8に示す.バルブは通電 時開形の直動式2ポート弁を使用し,接地スイッチは シリンダの車輪が接地していないとスイッチが入り通 電するようにした.接地スイッチは小さい車輪と押し ボタンスイッチ,そして小さい車輪上部に固定された 押ボタンスイッチを押す重りで構成されている.機構 は,スイヅチ用の小さい車輪が,シリンダ車輪と同じ 位置にあり,シリンダ車輪が接地面を離れると同時に 小さい車輪と重りが押しボタンスイヅチにかかりスイ ッチを押す仕組みになっている.内側シリンダB,C の接地スイッチb,cを内側シリンダ用バルブに,外

maewwii

ぷ (a)Connectlon

鍵蒙灘蜘麟

灘灘職灘鐡纏

(b)Separate

∼ぺ×ぺ、   痢㌔ヶ    ベ Fig 8 Switch reaching the ground 側シリンダA,Dの接地スイヅチa, dを外側シリン ダ用バルブにそれぞれ接続した. 6.階段昇降実験  今回の階段昇降実験は,試作した昇降機の動作確認 を行うことを主目的とした.階段は山梨大学内の1段 の蹴上げ高さ200mm,踏み面300mmの階段を使用 して昇降実験を行った.実験は,昇降機を人間が押し て前進させ,階段を昇る時はリバーシブルモータを手 動で制御し階段を昇段させた.動作実験の結果,1段 あたり,降段速度は平均1.5秒,昇段は1分であっ た.なお水平移動速度は人が押す速さに依存する. 7.おわりに  本研究では,油圧機構と滑車機構による垂直運動と 車輪による水平運動で階段を昇降する昇降機を試作し, 実験にて動作確認をした.システムの水平移動速度は 原理的に人が押す速さに依存し,降段する速度は平均 で1.5秒程度であった.昇段はリバーシブルモータの 性能に大きく左右されるが1段あたり1分程度であっ た.今後は,軽量化とともに昇段能力の向上および, 車椅構造への構成が課題である. (1)中田清兵偉著  理工図書 参 考 文 献 「図説 住宅設計の基礎から応用まで」

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参照

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