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ビデオ教材の利用方法と効果 利用統計を見る

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論 文

ビデオ教材の利用方法と効果

坂本忠明 藤巻みどり 関口芳廣

       (平成3年8月31日受理)

Using Methods and Effects of Video Teaching Materials

TadaakiSAKAMOTO MidoriFUJIMAKI YoshihiroSEKIGUCHI

      Ab8tract   Video teaching materials at the research on teaching and learning are known as the most effective and popular. But there are few reports written from real experiences. In this paper, we consider the using methods and their effects of video teaching materials. First, we investigate practical use of video teaching materials on electricity companies. Next, we make some teaching and learning experiments with video teaching materials. In results, the following facts are known, ①It is most effective that video teaching materials are used with teacher’s comments in his  lecture. ②The number of students who write original reports increases by using video teaching  materialS. ③The loss time at the beginning of student’s exercise decreases by using video teaching  materials. 1.はじめに  一般に,ビデオ教材を工夫して使えば学習者により よい学習環境を提供できるといわれている1)2).この ビデオ教材の利用方法には,補助教材として用いる場 合と,主教材として用いる場合がある.前者は,教師 の説明と併用してビデオ教材を用いる方法で,たとえ ば学習内容を教師が説明し,ビデオ教材で説明内容を 画像や図,文字,音声を使い視覚化,聴覚化してより 深く理解させる方法である.後者はビデオ教材のみで 学習させる方法である.何れの場合も教師の説明だけ より学習者がイメージを捉えやすいため,効果的な学 習がなされると考えられる.しかしビデオ教材に対す る批判,弊害も多い.たとえば,教師が手を抜く手段 として使用する場合,学習者の長時間の拘束,目の疲 れ等心身の疲労等が上げられる.  一方,ビデオ教材の利用方法およびその効果にっい ての研究は近年盛んになりっっあるが,実際の場面で *電子情報工学科,Department of Electrical Engineering&  Computer Science. 役立っものは比較的少ないと思われる.つまり,大学 教育におけるビデオ教材は補助教材として用いられる 場合が多いが,その実用性と結びついた研究はあまり ないS).例えば,実際には多くの大学において,ビデ オ教材が様々な方法で利用されており,その効果はす でに認められているが,そこでは教師が講義に際して ビデオ教材の提示を経験的に判断し,学生に視聴させ ているのみである.  本論文では,実習を伴う授業にビデオ教材を用いた 場合の効果を組織的に検討する.まず,その手段とし てビデオ教材の利用方法を調査し,その結果得られた 様々な利用方法に沿って実験を行う.次に各実験をレ ポートの評価,実習中の学生の行動観察等から評価, 検討する. 2.授業とビデオ教材  ビデオ教材を授業で利用する場合について考えてみ る.そのために,実際の授業でビデオ教材を利用して

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評価を行うことにした.授業には講義のみのものと実 習を伴うものとがあるが,この研究ではより具体的な 分析がしやすい後者に注目することにした.具体的に は筆者らが開講している授業(計算機器実験第一:通 年,2単位)を利用する.ビデオ教材は,半導体回路 関連企業で初任者研修で使用されているビデオ教材の うち最もよく利用されているものを使用する.  計算機器実験第一は,計算機の内部構成,特にハー ドゥェァを理解させることが目的である.授業は①教 師の説明,②実習実施の順に行う.教師は,指導要項 に沿った説明を行い(このときビデオ教材を利用する 場合がある),学生はあらかじめ与えられた指導書を 参考にその学習目的を理解する.学習はトランジスタ 回路から出発し,様々なICの利用,応用回路へと進 んでいく.具体的には同じ機能を持つ回路を異なる半 導体で構成し,その比較,検討を繰り返し理解を促す ようになっている.たとえば,トランジスタ回路,D TL(ダイオード・トランジスタ・ロジック),TT L(トランジスタ・トランジスタ・ロジック)等でN OT回路をそれぞれ作成し,比較,検討している4).  使用するビデオ教材は,DEC社市販の「Applied Digital Logic」5)であり,計算機器実験第一の内容 の3分の1ほどに利用できる.このビデオ教材の内容 は,デジタル回路を構成するための基本を5っの単元 にまとめ,各単元毎に関連をもった数種類の回路を細 かく説明している.説明は各回路の必要性,その利用, 応用,回路の内部の解説へとっついている.その後, 実際作成する実習課題,様々な注意点,問題点等を説 明している.そしてビデオ画像でキーワードを列挙し, そのキーワードを巧みな色変化等を用いてわかりやす く解説している.最後に同社が販売しているッールキ ットを用いて実習課題を作成していく手順が示されて いる.注意点,問題点にっいては,CG(コンピュー タ・グラフィックス)を用いて,シミュレーションし た結果等をアニメーションで表現している. 3.ビデオ教材の利用方法の調査  この研究はビデオ教材を教師の説明と併用して用い る場合を対象にしている.この場合教師がどのように ビデオ教材を用いるか(説明側)が一っのポイントで ある.もう一っのポイントは,実習はグループ毎に行 う場合と各自で行う場合がある(学習側)ことである. これらの点に注目して,半導体関連企業の初任者研修 を行っている担当者にビデオ教材の利用に対するアン ケート調査(42社)を行った.その結果,初任者研 修で前述のDEC社のビデオ教材を利用している企業 が最も多く,8社であった.この8社についての調査 結果を以下に示す. 3−1.説明側  説明側のビデオ教材の利用方法は,  B型:講義の前に利用する  M型:講義の途中に利用する  A型:講義の後に利用する の3っの型となった(表1).B型は,一通りビデオ 教材を視聴し,次に講師が説明する方法である.M型 は,講師が補足説明しながらビデオを視聴させる方法 である.A型は,一通り講師が説明した後,ビデオの 視聴を行う方法である. 3−2.学習側  学習側の分類は,  G型:グループで実習をする  P型:各自で実習をする の2っの型となった(表1).G型は,学習者が学習 後,数人で1グループを構成し,各グループ毎に一っ の課題を実習する方法である.P型は, G型と同様な 学習後,各自が一っの課題を実習する方法である. 表1.ビデオ教材の使用調査結果 調査企業 B 説明側の型

l

A

学習側

フ型

f  P a 2 5 3 7 3 b 3 7 5 5 5 C 4 3 3 4 6 d 3 6 6 7 7 e 7 3 2 3 4 f 9 4 8 6 9 9 5 3 4 6 5 h 2 2 3 7 0 注1:数値はこの研究で使用するビデオ教材を用い    た課題の件数. 注2:説明側と学習側の数が一致しないのは実習を    伴わない課題があるため. 3−3.ビデオ教材の妥当性  ビデオ教材は内容によっては説明側が3種類の型を 全てとれない場合あり,必ずグループで作成しなけれ ばならないような実習もある.前者の例として,ビデ オ教材中の解説が貧弱である場合,後者の例として実 習課題の回路構成が多い場合や複雑な場合が上げられ

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る.アンケート結果からこの研究で使うビデオ教材 (DEC社製)は何れの利用方法に対する実験も行う ことができることがわかる. 4.実験計画  一般に実験を通してあるものの効果等を調べるため には,何らかの操作を行った実験群と,何の操作も行 わない対照群を用意し,これらを比較する必要がある 6)7)D前述のようにビデオ教材の利用方法は,説明側 で3種類,学習側で2種類の型があることがわか1った, 各型でどのような問題が生ずるかを分析し,その原因 を求めるためには,様々な型を組み合わせた実験を行 う(実験群)必要がある.さらにビデオ教材を用いな い場合の状況(対照群)をも求めておく必要がある. 表2.実験の名称と対象とするその内容  対象 シ称 ビデオ教材の @利用の有無 B 説明側の型 @ M A 学習側 @の型 f  P ビデオ視 @聴時間 @(分) 説明時間 @(分) 実験1 無 一 一 一 * 一 0 4 5 実験2 無 一 一 一 一 * 0 50 実験3 有 * 一 一 * 一 4 0 4 0 実験4 有 * 一 一 一 * 4 5 3 5 実験5 有 一 * 一 * 一 3 5 4 5 実験6 有 一 * 一 一 * 40 4 5 実験7 有 一 一 * *   5 0 15 実験8 有 一 一 * 一 * 4 5 2 0 注:”*’が対象とする型で”一“は対象としない型であ   る.  全実験で学生にレポートの提出を義務づける.レポ ートの内容の分析は,1レポートにつき4名の採点者 の採点結果(評価基準4)は予め提示してある)の平均 をとり,5の整数倍に丸めた評価で行う.また実習結 果の種類,レポート内容の類似数の整理を行う.実習 結果の種類については,提出されたレポートの「結果」 の項目についてのみ注目し,レポートを分類し,その 数を数える.内容の類似数にっいては,文の表現を無 視し,レポート内容の類似点に注目して,記述され内 容が他の者と同じであるか否かを各項目(レPt 一一トの 記述項目は授業の指導書に提示してあり,少なくとも この内容を記述するよう指示してある)毎に評価する 全体の4分の3以上が一致した場合,類似レポートと する. 5.レポート内容の分析とその検討 5−1.ビデオ教材を用いない場合(対照群)  表3はビデオ教材を用いない場合のレポート内容の 分析結果である.グループで行う課題は,グルー一・・プ内 で作業を分担し,さらに問題点等を議論しながら実行 するようになっている.このためグループで行う実験 1の実習結果は,少なくともグループ数(ここでは1 5グループ)となるはずであるが,表3ではグループ 数以下になっている.各自が行う実験2においては, 実習の結果はほぼ学生の総数であるべきだが,およそ その半数しかない.また類似レポート数は実験1で 65%,実験2においては59%であった. 表3.レポート内容の分析      (ビデオ教材を用いない場合のレポート数) 実習結果の種類

類似数

提出総数 実験1

ll

38

58

実験2

26

34

58

 具体的には,ビデオ教材を用いない授業と用いた授 業を計画する.ビデオ教材を用いない授業では学習側 の2種類の型に対する実験を行う(実験1,2).ビ デオ教材を用いた授業では,説明側と学習側の型を組 にし,重複しないようにすべての組み合わせ(実験3 ∼8)を行う(表2).実際には教師は,説明側の3 種類の型に沿って授業を進め,学生は,学習側の各型 に沿って,グループ(4名で1グループ)で一っの課 題を行うか,各自一っの課題を行うかの指示を教師よ り受ける. 5−2.ビデオ教材を用いた場合(実験群)  表4はビデオ教材を用いた場合のレポート内容の分 析結果である.奇数の実験番号(実験3,5,7)が グループで行う実習で,実習結果の種類はグループ数 (15)より多い.類似レポートの数は30∼40% ほどである.各自が実習する場合(実験4,6,8) は,実習結果の種類は32∼36個(全体のほぼ60 %)である.類似レポートの数は27%∼46%であ る.

(4)

表4.レポート内容の分析       (ビデオ教材を用いた場合のレポート数) 実習結果の種類

類似数

提出総数 実験3

20

23

58

実験4

32

27

57

実験5

18

20

58

実験6

36

16

58

実験7

16

19

58

実験8

33

22

58

5−3.考察  まずビデオ教材を用いない場合にっいて,結果を実 習中の学生の行動観察と照らし合わせて考察する.実 験1(実習結果の種類が少なく,類似レポートが多い) での原因は,学生同士でグループの再編成を無意識に 行っている点が大きい.学生は所属するグループ内で 問題が生じると,他のグループに問い合わせにいく, または説明にきてもらう.このグループ間の相互扶助 (交流)が深まるにっれ,他のグループとともにいっ の間にか一緒に実習を行ってしまう.問い合わせに来 られるグループには実習内容に詳しい者または仲良し グループの何れかがおり,彼らが核となる.この核と なる学生が中心になって実習が行われ,中でも仲良し グループはレポート作成まで共同作業を行う.これに より類似レポート数が増す.実験2の場合も同様であ るが,この場合,特に実習内容に詳しい学生に他の学 生が集中する.内容に詳しい学生は数人であるため, 集中した学生の中ではじき出された学生と自分で実習 を行いたい学生とが各自で実習をする.レポート作成 の段階になると仲良しグループ同士で互いに参照しあ うことが多くなる.これにより実習結果が歪められて オリジナルなレポートが少なくなったり,類似なレポ ートが増加する.  ビデオ教材を用いた場合,実習初期にグループ内で 簡単な問題点を議論する場面や他のグループと情報交 換する場合がビデオ教材を用いない場合より極めて少 なくなり,実習に取りかかるまでの時間が短くなって いる.このことからビデオ教材の利用により実習内容 の理解が促進され,課題解決の糸口が短時間に求めら れるようになったと考えられる.実習結果の種類にっ いてはビデオ教材を用いない場合より用いた場合の方 が種類が多くなっている.このようにビデオ教材の利 用により授業の効率は上がっているが,問題点も若干 みられる.例えば,ビデオ利用の学習後は,グループ で行うべき実習を個人で行うことも目にっき,この授 業の教育目的の一つである共同作業の実践ができない 場合もある.類似レポートの数にっいてもビデオ教材 を用いることで減少してはいるが,まだ内容に詳しい 学生,または仲良しグループが中心となって類似レポ ートを作成する場合も見うけられる. 6.レポート評価点の分析  対照群の結果を基準にレポートの評価点を使って実 験群の結果を分析する. 6−1.ビデオ教材を用いない場合(対照群)  レポートの評価点の分布を図1に示す.図の実線は 実験1,点線は実験2の結果である.  18 11 :: Q,  2 :一   田   69   65   76   75   80   85   90   %   1田       レポートの評価点       一一実験1(対照群}・・…実験2(対照群)  図1.実験1,2のレポート評価点の分布 6−2.ビデオ教材を用いた場合(実験群)  グループで実習を行った場合のレポートの評価点の 分布は,対照群と合わせて図2のようになる.各自で 実習を行ったレポートの評価点の分布は,対照群と合 わせて図3のようになる,また対照群と比較した各実 験群の分布の様子をまとめると表5のようになる,  18 1i :l

Q

㌔ゴs、    田  65  70  75  80  85  96  95         レポートの評価点   一実験1(対照群)一一実験3 ・・t実験5 −一実験7 図2.グループで実習した場合のレポート    評価点の分布

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:: 1; £’1 .〔ジへ\ \一・ペー\   1.∵N”−T’ 2 9  56   60   65   70   75   80   85   90   96   1田          レrt・一トの評価点    一実験2(対照群)一実験4 −・実験6 −一一一実験8 図3.各自実習した場合のレポート評価点の分布 6−3.考察  ビデオ教材を用いない学習の場合(対照群),グル ープで行う実習と各自で行う実習のレポートの評価は, 成績の分布が大きく異なる.グループで実習を行う場 合は一っの山で末広がりになるが,各自で実習を行う 場合は二っの山になる.この対照群の分布は実験群で あるビデオ教材を用いる場合にも同様な傾向があるが, 若干の違いもみられる(表5) 表5.対照群を基準にした実験群のレポート評価点の       分布の様子 実験番号 学習側のG型の分布傾向 実験番号 学習側のP型の分布傾向 説の 実験3 対照群の成績の低い側が高い 実験4 特に低い成績がなくなる. 明B 方に移動した形をとる. 対照群の二っの山を上方に引 側型 っばった形をとる. 説の 実験5 実験3をさらに申央付近で上 実験6 低い方の成績が高い方に移動 明M 方に引っ張り上げた形をとる し,さらに一つの山になる方 側型 向へ変化している. 説の 実験7 対照群の成績の低い方が高い 実験8 対照群の成績の低い方が高い 明A 方に移動している. 方に移動している. 側型 対照群のピークが平坦になる 二っの山が一つになるよう変 化している.  レポートの評価点の平均値を表6に示す.この平均 値で実験群を考察すると,まず各自で実習を行う場合 には明らかに実験6が最も高く,ビデオ教材の適した 利用方法とみることができる.グループで実習を行う 場合にはたいして差はないが,実験5が高く,次いで 実験7,実験3とつづく. 表6.各実験のレポート評価点の平均値 実験1 実験2 実験3 実験4 実験5 実験6 実験7 実験8 76.1 77.4 79.5 80.8 81.6 85.7 80.6 81.2 7.研究のまとめと考察  ビデオ教材には様々な利用方法がある.この利用方 法は実習を伴う授業と伴わない授業で異なる.この研 究では実習を伴う授業でビデオ教材を利用する方法に っいて検討した.まず実際に企業が初任者教育に用い ているビデオ教材の利用方法を調査し,実験用のビデ オ教材の利用方法を検討した.その結果説明側で3種 類の提示形態,学習側で2種類の実習形態があること がわかった.そしてこの研究で用いるビデオ教材は何 れの利用方法にも適用できることが確かめられた.次 いで実験計画をたて,レポートの評価点等によりビデ オ利用の実際の効果を測定し,学生の行動観察等でそ の背景等を検討した.その結果として,第1にレポー ト評価点の平均点がビデオ教材を利用すると上がるこ とがわかった.またビデオ教材の利用方法によりレポ ートの評価点に差がでることもわかった.次ぎにレポ ートの内容はビデオ教材を用いることで独自性が現れ, ユニークさが出やすいことがわかった.これは学生が ビデオ教材で授業内容をより深く理解でき,それに伴 う実習課題の理解も容易になった結果と考えられる. また実習に取りかかる時間がビデオ教材を用いると, それを用いない場合に較べ極端に早くなる傾向も見ら れた.さらに実習を伴う授業で問題となる仲良しグル ープでの共同作業による実験結果の歪み,レポート内 容の類似化といったものの減少も見られた.教師側の 再認識として,グループで実習を行う場合と各自が実 習を行う場合共通した評価基準では成績の分布に差が 出ることを知っていなければならないと思われる.一 方,ビデオ教材を的確に使用すれば成績の分布の差を 縮めることができる(対照群:実験2,実験群:実験 6,8:図1,図3)ことも頭に入れておく必要があ る.以上のことから各目で実習を行う場合とグループ で実習を行う場合の評価は常に気をっけなければなら ないだろう.  また,ビデオ教材を利用することで講義時間が長引 く傾向がある(表2).それに伴い1回の全授業時間 も長くなる.さらに授業の説明と合わせてビデオ内容 の選択等教師の準備時間がビデオ教材を用いない場合 より極端に増す問題点もある.何れの場合も授業内容 をよりよく説明するためには必要なことであるが,時 間に追われる教師にとっては大きな問題でもある.準 備時間,講義時間,実習時間の何れも縮小できるビデ オ教材の利用方法は今後の課題である.また本論文で は扱わなかった実習を伴わない授業に対するビデオ教 材の利用方法についても今後の検討課題である.さら

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にビデオ教材の作成およびその評価についても今後検 討する必要があろう. 8.おわりに  筆者らは,1973年以来,計算機のハードウェア に関する実験の指導を行ってきた.その間,常に内容 の充実と学生の理解の向上を目指して,授業の改善を 続けている.授業内容の充実と並行して,①共同作業 の方法,②新しい技術の紹介S),③報告書の書き方, 等の指導にも力を入れてきた.一方,常に卒業生等の 意見を聞き,それを授業に反映させるようにしている. これらの意見の中で,授業に対する批判として多いも のは,①資料を多くもらうが,自分で読むだけでは理 解しにくいものもある.②友達とレポートを書いてい ると,自分の結果を修正して他の人に合わせてしまう 傾向がある.③実習にどこからとりかかってよいか迷 う場合が多い,④グループでの実習と個人での実習で はレポートの評価基準に差があるような気がする.等 である.これらの批判に対処するため,授業内容,方 法等の点検を行った結果,ビデオ教材の利用を検討す ることにした.ビデオ教材は今までも時々利用しては いたが,今回系統的に調査研究することにより,次の ことがわかった. ①学生が授業内容を理解するのに,ビデオ教材が確実  に役立っことが確かめられた. ②教師が補足説明しながらビデオ教材を利用する方法  が最も効果的である. ③無理な結果の修正等がなくなって,個々の学生がオ  リジナルなレポートを書くようになった. ④実習にとりかかるのが,早くなった. ⑤グループでの実習と個人での実習では,レポートに  差がでることを教師側が認識しながら,指導する必  要がある.  この論文では,授業でビデオ教材を利用する方法と その効果についての実験,検討について述べてきたが, この種の研究は,すぐに結論が得られる場合は少なく, これからも研究を続ける必要がある.例えば,実験の 内容は十分か,講義時間の長さとレポートの内容の関 係はどうか,レポートの内容の類似性の評価はよいか 等残された問題は多い.今後は教育工学的な視点から の検討も含め,計算機のハードウェア関連の実習を, ビデオ教材を利用したよりよい授業へ発展させたいと 考えている. 謝辞  本研究を行うに当たり,教育工学の立場から御指導 いただいた本学教育学部教育学教室の毛利陽太郎教授 に感謝します.またレポートの評価,分析等を助けて いただいた大学院生,神座尚武,西田広司両君,計算 機器実験第一の授業に対する意見を提出して下さった 学生,卒業生の皆様に感謝します.さらにアンケート 調査に協力していただいた各企業の初任者研修担当の 皆様に感謝します. 参考文献 1) Krendl K. A. :Media influence on learning:  Examining the role of preconceptions,  Educational Communication and Technology  Journal, Vo1. 34, pp.223−234, 1986. 2) Alvarado M., Gutch R. and Wollen T.:  Learning the Media, Learning Media,  pp.94−99, 1986. 3)坂元昴:教師教育における映像教材,放送教育  開発センター紀要,Vol.7, pp.1−8,1990. 4)関口芳廣,坂本忠明:計算機器実験第一指導要項,  1990. 5)日本DEC社:Applied Digital Logic,1987.

6)肥田野直:心理・教育における測定法,

 日本放送出版協会,1989. 7)宮代彰一,他:科学と実験,日本放送出版協会,  1989. 8)関口芳廣,坂本忠明,二木弘:実験で学ぶ  パソコンインタフェース,エレクトロニクスライフ,  Vol. 6, pp.11−50, 1985.

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