氏 名 村 尾 未 奈 学位(専攻分野の名称) 博 士(林学) 学 位 記 番 号 甲 第 670 号 学 位 授 与 の 日 付 平成 26 年 3 月 20 日 学 位 論 文 題 目 落葉広葉樹二次林の種特性に基づいた更新機構の解明 論 文 審 査 委 員 主査 教 授・農 学 博 士 佐 藤 明 教 授・理 学 博 士 中 村 幸 人 教 授・博士(理学) 武 生 雅 明 教 授・博士(農学) 上 原 巌 教 授・博士(林学) 菅 原 泉 博士(農学) 正 木 隆* 論 文 内 容 の 要 旨 第 1 章 はじめに,および研究の組み立て 日本国内に存在する人里近くの広葉樹林は,人間が生 活し,社会基盤を安定させるために必要不可欠な資材供 給源として,立木のみならず草本や落葉まで余す所無く 繰り返し利用されてきた。その結果,多くの広葉樹林は 継続的な攪乱を受けた林分として生育し,二次遷移の進 行が中断された,本来の自然植生とは異なった二次林を 形成している。その種組成や林分構造は立地や環境,攪 乱の頻度や種類によっても異なるが,東日本ではコナラ やクヌギを主体とした二次林が広く分布している(鈴 木,2001)。その中でもコナラは萠芽再生能力が高く, 薪炭材利用等による短伐期の施業に適していることが, 分布の拡大したひとつの要因と考えられている。一方, 近年になり,薪炭材利用の減少や,中山間地域の過疎化 なども相まって,森林資源の利用は低迷している。その ため,かつては繰り返し伐採利用された林分が放置さ れ,二次遷移は中断されずに進行する状況となってい る。コナラ林のように,人為的に改変されていった森林 では,どのような発達段階を経て,どのような森林へと 推移していくのかは明らかとなっていない。また,伐採 直後の森林では,コナラ以外にも多くの樹種が萠芽更新 を行い,さらに遷移先駆種の実生や高茎草本も一斉に成 長し,光や養分等を得るための競争が開始される。この ような萠芽更新が主となる二次遷移初期の群落におい て,種が入れ替わりながら進行する林分の発達段階は, 必ずしも十分明らかにされているとはいえない。そこ で,本研究では,利用伐採による攪乱を受けて成立した 落葉広葉樹二次林を対象に,伐採にともなう萠芽更新の 特性と,萠芽更新によって成立した群落の動態を明らか にし,遷移初期において更新群落が発達する過程を明ら かにすることを目的とした。 本論文は,第 1 章にはじめにを,第 2 章から第 5 章ま でがそれぞれの研究結果と考察を,最終章の第 6 章にま とめを掲げる組み立てにしている。本論文の調査対象で ある林分は,すべて過去に一度以上の伐採を経験してい る国有林とし,はじめに皆伐された林齢 23 年生の林分 について伐採直後から 6 年間にわたってモニタリングを 行った。そこでは,一斉に更新した個体の成長と生残に ついて主要な樹種ごとに解析を行った。更新初期群落で は優占種の偏りがみられ,それに起因すると考えられる 萠芽枝と実生の器官重量配分比の種間差を調べた。それ によって得られた器官重量配分様式と成長,生残の傾向 について解析を行った(第 2 章)。つぎに,遷移初期群 落に萠芽更新で優占する 2 種(コナラ Quercus serrata, カスミザクラ Prunus vercunda)を取り上げ,23 年生 の林分の伐採前後で,萠芽能力の指標となる地下貯蔵物 質(TNC : 全非構造性炭水化物)量における個体サイ ズや伐採による変動を調査した(第 3 章)。そして,こ れらの器官重量配分様式の違いによる種特性が,遷移初 期だけではなく,遷移の進行が進んだ林分においても存 在しているかを,伐採後 1 年から伐採後約 81 年までの 異なる発達段階の落葉広葉樹二次林で,群落レベルと種 レベルで明らかにすることにした(第 4 章)。最後に, 壮齢二次林で伐採を行った場合の事例として,約 70 年 生の落葉広葉樹二次林に群状伐採した試験地において, 更新木の 17 年後の再計測を行い,壮齢二次林での伐採 で始まる群落の更新状況について分析した(第 5 章)。 第 6 章では,萠芽更新を軸とした,利用伐採による攪乱 *森林総合研究所森林植生研究領域長
を受けた落葉広葉樹二次林の更新についてのまとめを 行った。以下に各章の概要を記述する。 第 2 章 伐採直後の更新個体の成長と生残 皆伐直後に更新する個体の多くは萠芽再生を行い,成 長の早い萠芽個体は早期に高密度な林分を形成する。こ のような林分に更新した樹木には,より有利に光を獲得 するために,種によって地下部の同化物質を支持器官, あるいは同化器官に優先的に配分し,生き残ろうとする 戦略をもっていると考えられる。本章では,伐採直後に 更新した個体の成長様式の違いから,地上部器官の器官 重量配分様式を見出し,それらが群落の初期遷移におけ る種の交代に与える影響を明らかにすることを目的とし た。はじめに,皆伐林分の 6 年間の成長をモニタリング した結果から,実生や萠芽の更新個体の成長および生残 様式を主要な樹種において解析を行った。更新群落には 実生個体も多く存在していたが,その成長は萠芽個体に 比べると遅く,更新初期に優占するのは萠芽由来の個体 であることを示した。 そこで主に萠芽で更新した稚幼樹の地上部形態におけ る種間差を調べるため,伐採跡地などに更新した萠芽枝 および実生(タラノキのみ)から 15 種をサンプリング した。これらの葉(同化器官)と枝・幹(支持器官)の 乾重量の相対成長関係を解析した結果,種によって器官 重量配分に偏りがあることを見出した。この 15 種は, 同化産物が支持器官に重点的に配分されるタイプ(支持 器官重視型 : ウワミズザクラ,カスミザクラ等)と葉に 重点的に配分されるタイプ(同化器官重視型 : コナラ, クリ等),およびその中間タイプ(中間型 : ヤマウルシ, エゴノキ等)に類型化された。これらの器官重量配分比 による成長の違いを検証するために,23 年生の林分の 伐採翌年に発生した更新木の 6 年間の生残と成長(樹高 および根元直径)を器官重量配分タイプ間で多重比較し た(Kruskal-Wallis 検定および Scheffé の一対比較法, 有意水準 5%)。その結果,調査群落で優占していた支 持器官重視型の平均個体サイズは他のタイプよりも有意 に大きかったが,観測から 6 年目の測定では,支持器官 重視型と同化器官重視型の個体サイズ間に有意な差はみ られなくなった。このことから,この群落では数年間は こうした種組成が続いた後に,サクラ属などの優占か ら,コナラやクリが優占する群落へと入れ替わることが 推察された。 第 3 章 地下貯蔵物質の動態と萠芽再生 前章より,萠芽によって更新した樹種には,同化物質 の配分比の種間差に起因する,成長や生残様式に違いが あることが明らかとなった。このことは,萠芽枝の成長 や生残には萠芽能力が影響している可能性があることを 示唆している。萠芽能力を規定する要因には萠芽原基と なる定芽の存在量や,植物ホルモンの作用などが知られ ているが,その中でも,地下部に貯蔵されている炭水化 物量(主にデンプン)が萠芽発生後の成長にも寄与して いることが知られている(苅住,1979)。そこで本章で は,萠芽能力の規定要因のひとつとなる地下貯蔵物質に ついて,伐採により更新した遷移初期群落を優占する2 樹種の違いを調べることを目的とした。調査は過去に伐 採され更新した 23 年生の林分において,コナラとカス ミザクラの伐採前後での地下貯蔵物質(TNC : 全非構 造性炭水化物)量の季節と個体サイズによる変動,およ び発生した萠芽枝との関係を解析した。調査方法は,各 樹種より陽樹冠を持つ単幹個体で大∼小(DBH 約 5 cm∼25cm)のサイズを選び,その粗根から形成層を除 く部分をドリルで採取し,ドライアイスで呼吸を止め, 研究室に持ち帰ったのち,乾燥,粉砕を行い,可溶性糖 分とデンプン(両者を足し合わせたものを TNC とす る)を抽出,定量した。対象木は伐採前の 7 月と 9 月に サンプルの採取を行い,11 月に伐採された後 12 月に採 取,その翌年は 4,7,9,12 月と年 4 回採取した。ま た,対照として,近隣の 23 年生の林分でも同様に未伐 採個体から採取を行った。未伐採木(対照木)の TNC の季節変化は,コナラでは 12 月にピークとなり,カス ミザクラは 9 月にピークとなった。個体サイズ(DBH) と TNC 濃度との関係から推定された線形モデルから, コナラは DBH の増加とともに地下 TNC 濃度が高くな る傾向が得られた。一方,カスミザクラでは小さい個体 サイズで TNC 濃度が高く,個体サイズの増加とともに 濃度が低下する傾向がみられた。ここで得られたモデル 式から,調査林分における伐採時の平均個体サイズでの TNC 濃度を推定すると,コナラよりカスミザクラの方 が高い TNC 濃度となることが示された。伐採個体でも 個体サイズと TNC 濃度との関係性は変わらなかった が,未伐採個体に比べ,その変化は顕著ではなかった。 未伐採個体と伐採個体の平均 TNC 濃度を季節ごとに比 較すると,カスミザクラでは 7 月に伐採個体の濃度が未 伐採個体を上回ったが,それ以外の季節では伐採個体の 濃度が未伐採個体より低下した。しかし,いずれの季節 でも伐採個体と未伐採個体間での有意な差は検出されな かった(Mann-Whitney U-test,有意水準 5%)。コナ ラでは全ての季節で伐採個体の平均 TNC 濃度が低下 し,9 月には未伐採個体との間に有意な差が検出され
た。また,発生した萠芽枝と推定地下部重量および地下 部 TNC 濃度との関係では,コナラもカスミザクラも推 定地下部重量が大きいほど萠芽枝数,萠芽枝材積ともに 増加する傾向が得られた。しかし地下部 TNC 濃度との 関係では,コナラではデンプン,TNC 濃度ともに萠芽 枝本数に有意に正の効果が認められたものの,カスミザ クラでは本数,材積ともに有意となる傾向は認められな かった。これらの結果から,カスミザクラはその年に再 生した萠芽枝が光合成を行うことで,コナラに比べて地 下貯蔵物質への依存傾向が少ない樹種であることが示唆 された。これらの結果は,萠芽能力の高い樹種間におい て,地下貯蔵物質含有量の季節や個体サイズによる変動 が萠芽能力の違いを示すひとつの指標となりうることを 示した。 第 4 章 攪乱からの経過年数にともなう群落構造と種組 成の変化 第 2 章では,伐採直後から 6 年の間に,萠芽個体の成 長特性の種間差から,優占種が交代する傾向が推察され た。また,第 3 章からは,萠芽能力の高い樹種間でも地 下貯蔵物質量の動態には違いがあり,それは萠芽枝の成 長特性として,遷移初期群落の種組成に影響を与えてい る可能性が示された。そこで,本章では,過去に伐採攪 乱を受けた落葉広葉樹二次林の発達過程における種の入 れ替わる傾向を把握することを目的とした。調査地は, 茨城県北部に位置する過去に一度以上の伐採履歴をも つ,伐採直後から林齢 81 年までの異なる発達段階の林 分(国有林)を対象とした。また,過去に人為攪乱を受 けた後 100 年以上,人手が入らなかったとされる小川群 落保護林を,老齢二次林として林分構造等の参考にし た。各対象林分では毎木調査を行い,各林分の林分構造 および種組成を解析した。林分の種組成は,第 2 章で類 型化された器官乾重量配分タイプによる区分を行い,ま た種ごとの胸高断面積合計および本数密度をもとに林分 間の優占種の違いを解析した。その結果,同化器官重視 型の種群が伐採直後から急増し,林齢 81 年まで高い胸 高断面積合計を維持したが,本数密度の増加傾向はみら れなかった。一方,支持器官重視型の種群の胸高断面積 合計は林齢 20 年頃までは同化器官重視型とともに微増 するが,それ以降は減少に転じた。しかし,支持器官重 視型の種群は小川群落保護林において本数密度の増加が 確認され,老齢二次林でのギャップ形成が支持器官重視 型の更新に寄与していると考えられた。さらに,各林齢 での主要な優占種を調べたところ,伐採直後ではウワミ ズザクラやカスミザクラが主に優占し,コナラやクリが 優占するのは林齢が 15 年程度からとなることが確認さ れた。このことから,第 3 章では優占種が支持器官重視 型から同化器官重視型へと移行する時期は,伐採直後か ら 15 年前後となることを見出した。 第 5 章 壮齢落葉広葉樹二次林に設けた群状伐採地内の 更新状況 これまでは慣習的な薪炭林施業を想定して 20∼30 年 生前後の林分を伐採した後に更新した林分を対象に更新 や再生機構の解析を行ってきたが,現在ではそのような 若い林分は減少している。繰り返し伐採されて成立し た,特に萠芽能力が低下するとされる壮齢化した二次林 については,伐採後の二次遷移がどのように進行してい くのかはまだ十分な情報はない。そこで,本研究では, 過去に攪乱を受けた林分が,60∼70 年と長期に放置さ れた後に伐採された場合,萠芽や実生がどのように更新 していくかを調べることを目的とした。調査地は,福島 県いわき市の薪炭林が利用されず放置されてきた,コナ ラを主要林冠木とする落葉広葉樹二次林の平坦な尾根部 で行った。ここでは 1991 年に一辺が 15m となる群状伐 採を行い,更新に関する試験を行っていた(Ishizuka et al. ; 2002)。群状伐採後 3 年目の 1994 年から数年間 は,伐採区内の光環境の測定と更新木の毎木調査が実施 されていたが,その後中断していたため,2008 年に再 度調査を実施し,林分構造と種組成について,伐採初期 と比較した。また,近隣の老齢二次林である小川群落保 護林での種特性(生活形,耐陰性)に基づき種を区分し て,解析を行った。その結果,伐採していない壮齢二次 林の胸高断面積合計ではコナラとミズナラが優占した種 組成となっていた。また,群状伐採前にはコナラの小径 木の個体も存在していた。そのような種組成の林分に群 状伐採を行った結果,伐採初期ではコナラの萠芽更新や 更新個体を確認することができた。伐採初期では実生更 新個体に比べ,萠芽更新個体の方が樹高および直径成長 とも良好であった。しかし,17 年後には伐採区内にコ ナラの更新個体は 2 本だけとなり,どちらも実生更新個 体であった。更新個体全てにおいても,実生個体の成長 および個体数が萠芽個体を上回っており,壮齢二次林の 伐採においては萠芽よりも実生が林分の更新に貢献して いることが明らかとなった。生活形と耐陰性の区分にお ける種多様性の解析では,閉鎖林冠下に群状伐採を行う ことで,種組成の多様度が老齢二次林の種組成の多様度 とほぼ類似したものとなり,壮齢二次林における伐採 は,林分の二次遷移を加速させる効果があることを示し た。これらの結果から,壮齢化したコナラを主体とする
落葉広葉樹二次林を伐採するとコナラの萠芽更新はうま く行われず,実生更新のみとなったことから,壮齢林で の伐採更新はこれまで調査をした林分の更新過程とは異 なることが予想された。 第 6 章 まとめ 最終章では,これまでの結果を整理しながら,伐採攪 乱から実生や萠芽により世代交代が行われる過程である 更新について,利用伐採による攪乱で成立した落葉広葉 樹二次林における二次遷移の特徴について考察した。ま た,最後に今後の課題と方向性についてまとめた。 はじめに,伐採攪乱を受けた二次林の更新には,成長 の早い萠芽個体が大きな影響を与えることを明らかにし た。皆伐直後の林分は,草本や萠芽更新個体が一斉に成 長するため,高さ 1∼2m ほどの低木からなる藪のよう な状態が 2∼3 年継続し,低い林冠で鬱閉されるため, 成長の早い萠芽更新の個体は光の獲得に有利であり,遷 移初期群落の形成に貢献するようになったと考えられ る。実生については,皆伐から 2 年目の林分において 行った消長調査では,発生する実生の多くは低木種で, 高木種も発生したが,タラノキやヌルデなどの先駆種が 多く,成長も全体的に良好ではなかった。 萠芽能力を規定する 1 要因となる地下貯蔵物質量を分 析した結果,萠芽更新を行う種の中にも,個体サイズや 伐採の時期によって地下部炭水化物量の増減が異なるこ とが明らかになった。また,萠芽再生における地下部炭 水化物量への依存傾向も樹種により異なることが示され た。今後,対象樹種や個体サイズの幅を広げることで, 萠芽能力が最大(除伐目的であれば最小)と予測される 個体サイズや伐採時期を絞り込める可能性があり,将来 的に広葉樹二次林の適切な管理手法に貢献できると考え られる。しかしながら,萠芽能力を規定する要因はこの 他にもあるため,これらの情報を統合し,提言していく ことが不可欠と言える。 これらの結果より,本研究では,過去に利用履歴のあ る林分が伐採されると,萠芽能力の高い種群が主体とな り,成長とともに種を入れ替えながら林分を成立させる ことを示した。本調査では,実生の役割について十分情 報を得るまでには至らなかったが,壮齢二次林の下層に は実生由来の個体が多数存在し,林冠の開放とともに一 斉に成長を開始していた。このような林冠の閉鎖した環 境でも生残,成長できる樹種には共通する種特性がある と考えられ,これらの生活史特性についても今後,研究 が必要であると思われる。 本研究で取り上げた利用伐採は,主に小班単位での皆 伐を行っており,2∼3ha 前後の面積で伐採による強度 な攪乱が 20∼30 年おきに繰り返されている。そのため, これらの断続的な強度の攪乱に適応できる種は限定され ると考えられる。老齢二次林で耐陰性の高い高木種の代 表となるブナやイヌブナは,伐採攪乱を受けた林分には わずかな個体数しか確認できなかった。このことは,ブ ナやイヌブナがコナラやクヌギのように,強度の伐採攪 乱に適応して成長できない特性であることを示唆してい る。こうしたことから,本調査地域における過去に利用 伐採を受けた林分の多くは,林冠層にはコナラやクリを 主体とし,ブナやイヌブナの代わりに,耐陰性の高いア カシデやカエデ類が混生するような林分へ収束していく のではないかと想定される。 近年,多様性の高い森林として里山が注目されている が,多くの里山は人間が種特性を利用し,収穫時期や伐 採などを考慮しつつ人手を加えることによって成立した 二次林である。こうした林分を遷移の進行に任せ,老齢 林や天然林へ移行させる考え方もあるが,森林内外の環 境変化や種間競争に伴う成長の推移は捉えがたく,資源 利用を視野に入れた目標林型への到達は容易でない。多 様な種組成から共通する種特性を見出し,それらを森林 の更新・再生に活かすことで,目標林型に向けた森づく りを展開することができれば,新たな里山利用の機会を 増やすことが可能になると考える。本研究をその一歩と したい。 【参考文献】
Ishizuka M, Ochiai Y and Utsugi G (2002) Micro-environment and growth in gaps. In : Nakashizuka, Matumoto (eds) Diversity and Interaction in a Tem-perate Forest Community : Ogawa Forest Reserve of Japan. Ecological Studies, p. 229-244
苅住昇(1979)樹木根系図説.1121p 誠文堂新光社. 鈴木伸一(2001)日本におけるコナラ林の群落体系.植
生学会誌,18(2),61-74.
審 査 報 告 概 要
り,その報告も多いが,燃材としての用途が途絶え,放 置状態が続いたこれらの林分は,その後どのように遷移 し,齡を重ねた林分では,伐採後どのように更新,成長 するのかの知見は乏しい。本論文は,人里近くで各種利 用のため伐採され攪乱を受けて成立した落葉広葉樹二次 林を対象に,初期成長に有利な萠芽能力という種特性を 軸に,成長,生残が更新に関わることを明らかにすると ともに,器官重量配分による類型化を試み,コナラを代 表とする同化器官への配分を重視する種群の優占が,伐 採直後の一時期を除き 80 年以上経過しても継続して成 長することを明らかにした。また,伐採からの経過年数 が増すにつれ耐陰性の高い樹種の個体数も増加するが, 林分の種組成は老齢二次林のそれとは異なること,壮齢 林分の伐採後においては萠芽よりも実生が林分の更新に 貢献していることなど,断続的に攪乱を受けた落葉広葉 樹二次林では過去の攪乱の頻度や種類の影響を受けて成 立していることを見出した。本論文は,かつて薪炭林で あったこうした林分の更新機構を明らかにし,今後の取 り扱いの指針ともなり得る成果を導き出している。 よって,審査員一同は博士(林学)の学位を授与する 価値があると判断した。