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「市街地再開発事業の初動期における権利者合意と資金調達について」

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Academic year: 2021

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市街地再開発事業の初動期における権利者合意と資金調達について

要旨 市街地再開発事業の実施において、権利者の合意形成と資金調達が課題としてあげられ る。権利者はどのような建築物ができ、補償等の内容が明確になる前から事業への協力、 同意を求められる。施行者も権利者が事業や補償をどのように考えているか最初は分から ない。よって、初期の交渉は、権利者と施行者が互いにそれら事業に関する必要な情報を 知らずに行われるために、難航することがある。つまり、事業初動期には、施行者と権利 者の間に情報の非対称が存在する。そこで、組合施行の第一種市街地再開発事業に着目を し、事業期間のうち準備組合設立から都市計画決定まで、及び権利変換計画認可までにか かる期間について、権利者等の権利形態や土地の利用状況がどのように影響を与えている か分析を行った。事業の遅延の原因とされる権利者合意の難航について、権利者等の権利 形態、土地の利用状況等の違いにより事業期間にも差が出ることを導き出すことで、事業 初動期に存在する権利者とディベロッパー等実質的な施行者の間の情報の非対称を確認し、 それを解消することが事業の迅速化に繋がることを提言する。それと併せ、他の社会調査 で判明している組合施行の事業における初動期の資金調達の困難性について、市町村施 行の事業と比較をすることで客観的な考察を行った。 キーワード 市街地再開発事業 事業期間 権利者 資金調達 組合施行

2013 年(平成 25 年)2 月

政策研究大学院大学

まちづくりプログラム

MJU12606 小山洋輔

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1. はじめに... 3 2. 市街地再開事業の現状と権利者の合意について... 5 2.1 市街再開発事業の現状について... 5 2.2 権利者の合意について... 5 3. 研究の構成... 8 4. フェーズⅠの実証分析... 8 4.1 分析の方法... 8 4.2 データ... 8 4.3 時間ダミー... 9 4.4 実証モデル... 10 4.5 推定結果...11 5. フェーズⅡの実証分析... 13 5.1 実証モデル... 13 5.2 推定結果... 15 6. 初動期の資金調達について... 17 6.1 現状について... 17 6.2 データ... 18 6.3 分析... 18 7. 考察... 20 8. おわりに... 22

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1. はじめに 市街地再開発事業は、時代の変化とともに実情に合わなくなった既存市街地を望ましい 形に作り替える都市計画の一つの手法として多くの実績を上げている。都市機能、防災性 の向上のみならず、時には疲弊した中心市街地の活性化の起爆剤になることもあり、全国 各地で多く実施されている。また、経済・社会が成熟し、人口増加が止まり、都市を拡大 する「都市化社会」から「都市型社会」への移行が求められており、市街地における住環 境、生活環境等の改善、コンパクトシティ等に見らえる都心回帰の流れに対応すべく、今 後も市街地再開発事業を活用した都市の更新は重要になると考えられる。 しかしながら、日本経済を取り巻く環境は依然厳しく、1990 年代のバブル経済崩壊以降、 右肩上がりの地価上昇は終わりその後20 年間下落傾向が続いている。それにより、地価上 昇によるキャピタルゲインに覆い隠されていた市街地再開発事業のリスクが顕在化し、事 業計画の練り直し、事業の停滞・頓挫を余儀なくされる市街地再開発事業も多々出ている。 市街地再開発事業における調査1によると、事業推進上の課題として「関係権利者の合意形 成、転出者対応」、「保留床処分先」、「資金調達」が挙げられており、特に上位 2 項目は回 答地区の5割以上で挙げられている。また、滝田(2002)らも事業の進捗とリスクの関係を図 1の通り分析をし、合意形成リスクの発生確率の高さ、影響度の大きさを分析している。 図1 事業者サイドの主なリスク 各段階に共通するリスク ・制度リスク ・競合リスク ・経済環境変動リスク ・物価変動リスク ・金利変動リスク ・行政リスク ・参加組合員/ゼネコンデフォルトリスク 準備段階のリスク 事業計画段階の リスク 施工段階のリスク 清算段階のリスク 発生確率《高》 影響度《大》 発生確率《低》 影響度《小》 ・合意形成リスク ・資金調達リスク ・調整(自治体・ 周辺住民)リスク ・権利者間対応 リスク ・ノウハウ不足 リスク ・環境アセスメント リスク ・資金調達リスク (補償費) ・調整、測量、設計 リスク ・資金調達リスク ・工事費増大リスク ・完工遅延リスク 工事関係 マネジメント関係 ・埋蔵文化財リスク ・第三者賠償リスク ・保留床処分リスク ・清算リスク 市街地再開発事業においては、再開発組合設立の際に権利者(土地所有者及び借地人) 1 公益社団法人全国市街地再開発協会「初動期における市街再開発事業の推進実態調査」(2002 年)

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の3分の2以上の同意が必要2であり、また、権利変換計画の認可にあたっては同計画(案) が縦覧3され、従前の土地、借地、建物の価額概算額、新しい建築施設の価額、地代、借家 代の概算額、地区外に転出する者に対するその権利及び建築物の価額が示されることから、 土地所有者、借地人、借家人等地区内の権利者全員の理解、協力が必要となる。よって、 権利者数の増加は関係者の合意形成の長期化につながると考えられ易い。事業期間に関す る先行研究は、水谷(2012)、鷲見(2009)、前田・日端(1993)、吉原・河野・頃安・山 本(1993)があり、水谷は従前権利者数(土地所有者、借地人、使用貸借による建物所有 者、借家人)が多いほど事業期間が長くなるがその影響は微々たるものとしている。 本稿は、権利者数の増加は事業への不同意者の発生確率を上げ、権利者の合意形成期間 を長くするとまず考える。権利者等がそれぞれに付け値をする権利変換、補償以上の対応 が施行者によりなされていれば不同意は発生せず、期間の長期化は発生しにくい。しかし ながら、施行者は権利者の個々の付け値を当初から知ることはできず、交渉で徐々に把握 していく。権利者も事業の正確なスケジュール、建築施設の設計、テナント、自らの権利 床や補償額、移転のスケジュール等、事業への参加を考慮するうえで重要な情報を事業の 進捗とともに知ることになる。そのため、施行者と権利者等との間には情報の非対称があ り、協議が難航することが多い。よって、権利者の現在置かれている経済状況、土地の利 用状況等の違いにより事業期間への影響が異なると考えた。そして、その分析を行うとと もに、それ以外に事業初動期における長期化の要因となる事由を考察し、今後の市街地再 開発事業の検討、実施に当たり、その基礎資料となることを目的とする。 また、図 1 にある通り、資金調達リスクも市街地再開発事業の大きな問題として位置づ けられている。特に初動期は権利者合意の不確実性により、事業期間の長期化の懸念、履 行の不確実性があり、銀行等金融機関からの融資による資金調達が難しくなっていること が、社会調査4でも明らかになっている。しかしながら、このらの調査は施行者へのアンケ ート調査であり、その回答は主観的である。よって、本稿においては、組合施行の市街地 再開発事業と起債等による自ら資金調達を行うことが比較的容易な自治体施行の事業の資 金計画を比較することによって、初動期の資金調達の困難性について客観的な評価を行う ことを目的とする。 本稿の構成は次の通りである。第2章において、市街地再開発事業の事業期間等の現状 を整理するとともに、権利者合意について経済学的視点から考察を加える。第3章で研究 の実施方針を示したうえで、第4章では市街地再開発事業における再開発準備組合の設立 から都市計画決定までの事業期間を、第5章で都市計画決定から権利変換計画認可までの 事業期間をそれぞれ分析する。第6章では東京都で行われた組合施行の市街地再開発事業 の資金計画について分析を行った上で、第7章、第8章で事業の早期化、迅速化に関する 政策提言と今後の課題について示す。 2 都市再開発法第14 条 3 都市再開発法第83 条 4 公益社団法人全国市街地再開発協会「市街地再開発事業における資金計画関する調査」(2001 年)

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2. 市街地再開事業の現状と権利者の合意について 2.1 市街再開発事業の現状について 1999 年4月から 2009 年3月末までに完了した組合施行の第一種市街地再開発事業の概 要は表1の通りである5 表1 組合施行の第一種市街地再開発事業完了地区の概要 準備組合 設立時期 地区数 地区面積 (㎡) 土地所 有者数 借地 人数 借家 人数 建物 棟数 全 体 213 12,280 33.8 12.4 23.2 40.9 1989 年以前 56 13,951 42.6 20.6 31.6 65.4 1994 年以前 72 14,484 39.0 10.8 26.1 42.0 1999 年以前 61 9,403 24.4 8.7 14.8 23.9 2000 年以降 24 9,082 21.3 7.9 16.0 23.5 2.2 権利者の合意について 組合施行の市街地再開発事業は、権利 者によって組織された組合が中心となり 進められる事業である。しかしながら、 事業推進に関するノウハウ・人材不足等 からディベロッパーやゼネコン等が助言 を行う中で事業が進む。彼らが実質的な 施行者となり、進捗に応じて権利者等は 事業への同意等の意思表明を行う。事業 の流れを図2に示す。 権利者等は、その事業に参加、協力す るかを自らが得る便益(権利床、補償等) と費用(従前の資産、移転の手間等)を 比較して決定をする。その便益が、費用 を上回れば事業に賛成するし、費用が上 回れば事業の実施に反対をする。 ①施行者が権利者等の情報を正確に知り、 ②権利者等が事業の内容を正確に知り、③それらに基づき適切な補償等がなされていれば、 取引は正常に行われ、事業の遅延は少なくなる。しかしながら実際には、施行者の持つ地 権者に関する情報は少なく、権利者等が知る事業の情報も調査、設計等が行われ、事業の 進捗とともに増えていくものであり、そこには常に情報の非対称が存在する。 権利者等の事業へ参加を図3のように考える。簡略化をするため、以下の前提で考える。 5 公益社団法人全国市街地再開発協会「日本の都市再開発」第6 巻(2006 年)及び第 7 巻(2011 年) 各種調査 ・基本計画作成 住民周知 ・事業計画作成 土地・物件調書の作成 権利変換を希望しない旨の ・再開発組合設立 申し出等 土地所有者、借地人の ・権利変換計画作成 3分の2以上の同意 従前土地、建物の概算価額 建築施設、地代等の ・施設設計 概算価額 関係権利者への個別説明 移転、建物撤去 清算・運営 図2 市街地再開発事業の流れ( 組合施行) 協議会・研究会等 再開発準備組合設立 都市計画決定 権利変換計画認可 着工 竣工

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地区内の権利者がすべて土地所有者であるとして、みな同じ財産を持ち、施行者から同 じ権利床等を受けるとする。 便益:施行者から受ける権利床、移転に対する補償 等 費用:従前資産、移転に関する手間、再開発事業から受けるメリット (マイナスの費用として考える)等 この場合、移転に関する手間、再開発事 業から受けるメリットは個々の価値観によ って異なるため、権利者費用曲線は地区、 計画内容、権利者の考え等によりシフトす る。 再開発組合設立に際しては、権利者(土 地所有者、借地人)の3分の2以上の同意 があれば十分である。その後事業を進み、 権利変換計画の認可に際しては関係権利者 全員への説明が必要となる。その理解を得 なければ事業が頓挫することから、都市計 画決定の時点から高い合意率が必要となっ ている。水谷によると、都市計画決定時の 権利者同意率は 175 地区中 111 地区が 100%となっており、その平均は 94.5%であ った。現状の市街地再開発事業においては当初から地区内ほぼ全員の同意で行われている ものと考える。 市街地再開発事業から受けるメリットが小さい権利者等が増えると費用曲線が右にシフ トし不同意者の確率が増える。事業実施において、現状ではほぼ全員の協力が必要である から、施行者は不同意者との協議に時間を割くことになり、合意形成に時間を要する。そ のメリットが大きければ、ほとんどの権利者等との取引が順調に進み、合意形成に要する 期間が短くなる。施行者がその費用曲線のシフトに要因を知ることが出来れば、権利変換 や補償での対応、早期の交渉等により、不同意者を減らす、もしくはその協議にかかる時 間を当初より事業に織り込める。同じ権利者等と一括りにしても土地所有者と借家人では 事業で影響を受ける財産の金額は違うし、商売をしている人、住宅で生活する人では再開 発により街がにぎやかになった時に受ける恩恵、もしくは弊害が異なる。よって、権利形 態や土地・建物の利用状況は権利者等の費用曲線をシフトさせる要因として考えることが できる。また、地区内の権利者数が増えれば、事業に不同意な人が増える可能性が増すた め、同様に調整に時間を要し事業の長期化に影響するはずである。よって、権利者数等の 増は合意形成期間の延長に繋がるはずだ。この2つのことから、権利者数にかかる指標と 地区の現状を表す指標として建物棟数等を用い、権利者合意にかかる期間について分析を 行う。 先に述べた通り、事業の進捗とともに情報の非対称は徐々に解消する。そこで本研究に 図3 権利者の再開発事業への参加基準 便益 不同意 同意 権利者便益 経費として受ける補償 権利変換により受ける権利 権利者費用 0 地権者数 地 区 内 地 権 者

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おいても事業進捗段階に応じた分析を行う。市街地再開発事業における先行研究をみると 多少差があるものの、以下の4つのフェーズに分けて分析をしているものが多い。 フェーズⅠ:準備組合設立から都市計画決定まで 地元等から再開発の機運が高まり、まちづくり協議会等の設置を経て再開発 準備組合が設置される。これが事業の推進力となり必要な計画、資料の作成、 住民への周知を行うこととなる。 フェーズⅡ:都市計画決定から権利変換計画認可まで 都市計画決定を踏まえて、再開発組合の設立、事業計画の作成、権利変換計 画の作成などが行われ、計画に具体性が増すとともに個々の財産に関する評 価等が行われるなど個別の説明が行われるようになる。 フェーズⅢ:権利変換計画認可から建築施設竣工まで 権利者移転等の問題は残るものの、建築施設の建設工事がスケジュール通り、 予定額通り行われるかということが重要になり、権利者合意に関する問題は 前2フェーズに比べると大幅に減る。 フェーズⅣ:建築施設の竣工から施設経営期間 区分所有者として権利者が施設経営に大きな影響を及ぼすこともあるが、市 街地再開発事業としては完了している。 本稿においては、事業初動期の権利者等の合意期間に着目するため、フェーズⅠ、Ⅱに 着目をする。 ①フェーズⅠ:準備組合設立から都市計画決定まで この段階では、建物調査等も実際の建築施設の設計も行われていないため、 市街地再開発事業の概要で説明をされることとなる。よって都市計画決定 時に権利者等に知らされる情報は、施行地区、公共施設の配置及び規模並 びに建築物及び建築敷地の整備に関する計画であり、これを基に事業への 参加を考える。そして、都市計画決定されることにより建築制限等の規制 を受けることとなる。よって、権利者は個々の財産、及び移転に対する具 体的な負担や不安よりも再開発事業自体の印象及び事業後のまちのイメー ジから判断を行うと考えられる。また施行者との取引も個別対応ではなく、 説明会などを通じて権利者等全体で行われることが多い。 ②フェーズⅡ:都市計画決定から権利変換計画認可まで この段階ではフェーズⅠに比べ、それぞれの計画が具体性を有する。特に

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事業計画の認可後30 日以内に土地所有者、借地人は権利床への変換を受け ず、金銭による給付を受ける旨、借家人も借家権の取得を望まない旨を施 行者に申し出る必要があり、地区に残って事業に参加するか転出するかを 判断している。また権利変換計画においては個人の従前資産の評価、建築 施設の評価が行われる。それらについて個別説明を受けるため、事業への 協力の判断はその具体的な提示によるものが多くになり、個人により判断 に差が多く出てくる。 3. 研究の構成 本研究の実施フローを図4に示す。本 研究は、2つの事業期間に関する分析と 資金計画に関する研究に分類される。前 者は権利形態や土地の利用状況が事業 期間に与える影響を実証分析により明 らかにするものであり、後者は今まで社 会調査により指摘されていた組合施行 の市街地再開発事業の初動期の資金調 達の困難性を、市町村施行の事業と比較 することで客観的にそれを示すもので ある。 4. フェーズⅠの実証分析 本章は、再開発準備組合の設立から都 市計画決定までの期間について実証分 析を行う。まず使用するデータについて 整理をし、次に推定式を設定する。最後 に同期間に影響する要因の分析を行う。 4.1 分析の方法 分析の方法は、再開発準備組合の設立から都市計画決定までの期間の重回帰分析を構築 し、最小二乗法を用いた回帰分析を行う。解析ソフトはSTATA ver1236を用いる。なお、 本節以降で分析に使用する解析ソフトはすべて同じなため、以下、説明は省略する。 4.2 データ 分析に使用するデータは、公益社団法人全国市街地再開発協会が取りまとめている市街 6 STATAは株式会社ラインストーンが開発したデータの分析プログラムである 権利者合意の経済分析、市街 地事業におけるリスクについ て 資金調達の現状 分析① 準備組合設立から都市計画 決定までの期間に関する分析 分析③ 組合施行の資金計画の分析 分析② 都市計画決定から権利変換 計画認可までの期間に関する 分析 資金調達に関する考察 事業期間に関する考察 研究の目的、背景、構成等 まとめ 政策提言 図4 研究方針の実施フロー

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地再開発事業のデータ7のうち、組合施行による第一種市街地再開発事業を対象とする。完 了地区データを用いることで、事業の実施を所与とした下でどのような要因が事業期間に 変化を与えるかを確認する8。組合施行に限定した理由は、施行者別で実績が一番多いこと と、自治体、公社、UR都市機構施行となるとステークホルダーが増え、考慮すべき事項 が増えるためこれらを対象外とした。対象期間については、1999 年4月から 2009 年3月 末までに完了した地区を対象としたが、これは協会所有のデータで収録されていないデー タを保管する際に認可権者である地方公共団体から情報提供を受けるため、公共団体の一 般的な文書保存期間である事業完了から概ね10 年であることを考慮して設定した。同期間 に完了した組合施行の市街地再開発事業 215 地区のうち、分析に必要な項目が欠落してい ない 192 地区を対象とする。また、本節以降で分析に使用するデータも同様であるため、 以下、説明は省略する。 4.3 時間ダミー 市街地再開発事業は単なる施設建設に比べ、事業期間が長期にわたることが特徴でもあ り、大きな問題とされる。そしてその間の景気変動は保留床の処分を含めた事業計画に大 きな影響を与え、事業期間に影響をするものと考えられる。戦後右肩上がりだった日本経 済においてバブル崩壊の影響は大きく、地価の上昇も局面も終わり、その20 年は下落傾向 が続いている。それは少なからず市街地再開発事業に影響を与えている。特に上昇傾向や、 下落傾向等一定の傾向がある時以上に、上昇を予測して地価が下落した時の影響が大きい はずである。 図5 商業地の市街地価格指数(1981 年~2010 年、2000 年 3 月末を 100 とする) 7公益社団法人全国市街地再開発協会「日本の都市再開発」第6 巻(2006 年)及び第 7 巻(2011 年) 8 今回使用するデータは完了した地区のデータであり、本来日本各地に再開発事業が物理的に可能な地区があり、その 一部が検討され、実施されという形にその一部が抽出されており、完了地区特有のサンプルセレクションバイアスがか かっている可能性は否定できない。

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市街地価格指数9における商業地の変動は図5のようになる。六大都市圏、それ以外の両 エリアとも1991 年をピークに 1992 年より下落に転じている。よって、1992 年を基準とし て、バブル崩壊の影響を今回の分析にどのように反映させるか考える。 1992 年の影響をどのように受けているかを、市街地再開発事業のどのタイミングで 1992 年を迎えているかで考え、時間ダミーとしてコントロールをする(図6)。ただし、バブル 崩壊の影響のタイミングを明確化することは難しいため、前後の1991 年、1993 年もコン トロール変数として扱い、分析するものとする。 これらタイプA、B、Cの事業期間に関する基本統計量を見ると表2のようになってい る。 表2 フェーズⅠの期間について 全体 A B C 地区数 188 25 53 110 平均値(日) 1,551 1,290 2,410 1,197 標準偏差(日) 1,091 793 1,199 847 ※192 地区中残り4地区は権利変換計画認可から竣工までの間に 1992 年を迎えている。 準備組合設立から都市計画決定までの期間を分析するに当たり、同期間にバブルの崩壊 がある場合(タイプB)、他に比べてやはり期間が長くなる傾向が強いようである。それ以 外(タイプA、C)は大きな違いがみられない。本研究においては、1992 年をフェーズⅠ に含むのを時間ダミー①=1、含まない場合を0として取り扱うとともに、1991 年を基準 とするものを時間ダミー②、1993 年を基準とするものを時間ダミー③とする。 4.4 実証モデル 事業期間の推定式は、水谷で示されたものをベースとし、加除を行い構築した。 事業期間(フェーズⅠ) 9 一般財団法人日本不動産研究所HPより引用 準備組合 都市計画 権利変換 竣工 A 設立 決定 計画認可 フェーズⅠ フェーズⅡ 準備組合 都市計画 権利変換 竣工 B 設立 決定 計画認可 フェーズⅠ フェーズⅡ 準備組合 都市計画 権利変換 竣工 C 設立 決定 計画認可 フェーズⅠ フェーズⅡ 1992年 図6 準備組合設立時期による分類について

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=α0+α1都市人口+α2東京23 区ダミー+α3従前平均価格+α4土地所有者数 +α5借地人数+α6借家人数+α7使用貸借人数+α8店舗棟数+α9店舗兼住宅棟数 +α10住宅棟数+α11業務施設棟数+α12工場施設棟数+α13その他施設棟数 +α14従前公共用地面積+α15従前空地面積+α16法第111 条ダミー +α17時間ダミー①(又は時間ダミー②or 時間ダミー③)+誤差項 被説明変数は、事業期間(フェーズⅠ)として準備組合設立から都市計画決定までの事 業期間(単位:日)とする。都市再開発データ10に記載される準備組合設立等年月をもとに、 すべて同年月1日を設立等年月日として事業期間を日数にて算出する。事業期間を及ぼす 影響としては、各種調整に要する時間の積み重ねと一番長く事業に反対をする人の合意に かかる時間の影響が大きいと考えられる。前者の影響があれば、権利形態、土地・建物の 利用状況等により何らかの差が見られるはずであり、後者であれば権利形態等の差異によ る事業期間の差は有意に表れないはずである。そこで権利者・関係者について、土地所有 者、借地人、借家人、使用貸借による建物所有者等に分けて影響を見る。使用貸借による 建物所有者等については実際の権利形態が明確ではないため、今回の分析の対象外とする。 権利形態のごとに協議量が異なり、事業期間に影響が出るのであれば、本分析において何 らかの有意な数字が出るはずである。同様に地区内の建物についても、利用目的に応じた 建物棟数を説明変数とおくことでその違いを見る。また、従前公共用地は「公共用地の再 配置」を行う土地であり、高度利用を目的とする再開発事業の目的と違うため事業遅延の 要素になりえると考えたため、同面積を変数として加えた。空地面積については、低利用 地の代表的な状態であり、障害物が少なく開発への問題が小さい土地と考え、実質的な事 業者の開発意欲を増し、かつ、地元住民からしても町を良くすることを考える際にその活 用をまず考え、事業の推進力になると考えた。そして、4.3より時間ダミーを採用した。 事業期間の分析に使用する変数の基本統計量は表3の通りである。 4.5 推定結果 事業期間の推定結果を表4に示す。以下、主要な説明変数について考察する。 フェーズⅠにおいて、権利者数の増加と期間の関係性は見られず、土地所有者、借地人、 借家人の間で事業期間への影響に大きな差は見られない。この段階では補償等個別対応が 少なく、権利者等が増えることでの調整量がさほど増えていないと考えらえる。所有、賃 借による対応にも差がつきにくいことから権利形態による差も小さいと思われる。使用貸 借による建物所有者等については頑健な値が出ているため、内容を精査したうえで別途検 討が必要と考える。 10公益社団法人全国市街地再開発協会「日本の都市再開発」第6 巻(2006 年)及び第 7 巻(2011 年)

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表3 基本統計量 表4 推計結果 データー数 平均 標準偏差 最小値 最大値 事業期間(フェーズⅠ) 192 1544.979 1088.827 92 4810 都市人口(千人)[東京23区を除く] 192 607.510 825.470 0 3635 東京23区ダミー 192 0.188 0.391 0 1 従前平均価格(千円) 192 846.276 1214.025 15 8450 所有者数(人) 192 33.688 45.556 1 440 借地人数(人) 192 12.359 27.733 0 234 借家人数(人) 192 23.245 30.916 0 262 使用貸借人(人) 192 2.078 5.502 0 41 店舗棟数(棟) 192 6.328 10.566 0 99 店舗兼住宅棟数(棟) 192 10.964 14.049 0 97 住宅棟数(棟) 192 13.297 19.391 0 148 業務施設棟数(棟) 192 2.479 3.827 0 22 工場施設棟数(棟) 192 0.875 3.375 0 34 その他施設棟数(棟) 192 5.938 12.262 0 128 従前公共用地面積(㎡) 192 2872.043 2588.485 0 15291 従前空地面積(㎡) 192 5835.843 7525.449 77 62942 時間ダミー① 192 0.286 0.453 0 1 時間ダミー② 192 0.250 0.434 0 1 時間ダミー③ 192 0.365 0.483 0 1 (注)従前空地面積=宅地面積(公有地も含む)-建物敷地面積 都市人口(千人)[東京23区を除く] 0.171 ** 0.178 ** 0.059 東京23区ダミー 432.760 * 444.416 * 361.021 従前平均価格(千円) -0.090 -0.196 *** -0.051 所有者数(人) -1.905 -2.410 -2.590 借地人数(人) -3.667 -2.866 -2.358 借家人数(人) -3.317 -2.415 -3.348 使用貸借人(人) 32.280 ** 24.448 * 32.950 *** 店舗棟数(棟) 5.843 5.658 7.182 店舗兼住宅棟数(棟) -9.616 -8.089 -11.528 * 住宅棟数(棟) 6.915 6.587 8.140 業務施設棟数(棟) 52.619 *** 55.731 *** 33.741 * 工場施設棟数(棟) -36.375 * -23.876 -16.359 その他施設棟数(棟) -0.344 -0.878 -3.108 従前公共用地面積(㎡) 0.087 *** 0.084 ** 0.070 ** 従前空地面積(㎡)(注) -0.030 ** -0.027 ** -0.025 ** 時間ダミー① 1,179.082 *** 時間ダミー② 1,138.486 *** 時間ダミー③ 1,233.466 *** 定数項 1,021.085 *** 1,123.119 *** 1,028.411 *** 自由度調整済み決定係数 0.3468 0.2974 0.3787 サンプル数 192 192 192 (注)***,**,*はそれぞれ有意水準1,5,10%に対応する。 ケース① ケース② ケース③ 説明変数 推定値 推定値 推定値

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土地利用状況をみると、建物棟数が増えると、その調整に時間を要し事業の長期化の影 響が出ているが、店舗、工場等用途の違いにより差が出ている。建物の種類は、土地所有 者、借地人が保有している資産であり、その用途の違いは個人の置かれている状況の差の 一部を表していると言える。どのような利用用途であろうと、お互いに情報を知っていれ ば取引はスムーズに進むはずであり、事業期間への影響に差は出ない。本分析結果の通り、 有意な差が出てくるもの、有意でないまでも符号も含め値に大きな差があるということは、 権利者は置かれている状況により再開発事業の便益、費用が異なり、それを施行者が正確 に把握していないことにより、取引が円滑に進まず、事業期間への影響の違いという形で 表れていると考えられる。 また、個別に見てみると工場施設は事業期間を短くする傾向、業務施設は長期化する傾 向が見られた。市街地で操業する工場にとって、今後もそのまま操業することが厳しい場 合、事業に参加し、撤去費、移転費が事業から支弁されることに大きく便益を感じるため、 他の利用に比べ、事業期間を短縮する傾向があるのではないか。業務施設については、職 場がそこにたまたま在り、経済活動(取引相手等)や生活はその他の地域で行い、地区周 辺ではあまり生活、経済活動をしているとは限らず、街のにぎわいに影響を受けにくい存 在で、再開発の便益が小さいことが考えられる。店舗等では有意な値が見られないものの、 それぞれに差があることは注目すべき点であり、今後何らかの考察のいるところである。 従前公共用地面積はやはり高度化利用という再開発事業の中で公共施設の再配置が目的 であり、時間リスクの少ない地権者(自治体)がかかわるため、その面積の増加に伴い、 事業の長期化傾向が見られる。空地は建物等権利、財産がなく調整要因が少ないこと、空 地活用の意識が地元でも高まり易いことなどの理由から、期間短縮要因として表れている と思われる。水谷の研究において地区面積の影響が有意に出なかった理由の一つとして、 利用状況等により事業期間への影響が異なることが示された。 5. フェーズⅡの実証分析 本章は、都市計画決定から権利変換計画認可までの期間について実証分析を行う。使用 するデータは「4.フェーズⅠの実証分析」と同じとして推定式を設定する。そして同期 間に影響する要因の分析を行う。 5.1 実証モデル ケース①、② 事業期間(フェーズⅡ) =β0+β1都市人口+β2東京23 区ダミー+β3従前平均価格対数+β4土地所有者数 +β5借地人数+β6借家人数+β7使用貸借人数+β16店舗棟数+β17店舗兼住宅棟数 +β18住宅棟数+β19業務施設棟数+β20工場施設棟数+β21その他施設棟数 +β22従後公共用地面積+β23新設公益施設床面積+β24法第111 条ダミー+誤差項 基本的な考え方は4.4と同じである。公共団体との関わりについては、今後整備され

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る公共用地、公益施設が協議の量、時間を増やすと考え変数として採用した。また、水谷 の研究から全員同意型の権利変換の方が同意期間を短くするとの見解が示されているため、 権利変換の違いをダミー変数によりコントロールをした(ケース①:法第 111 条ダミーな し、ケース②:法第111 条ダミー使用)。 また、市街地再開発事業において権利者等は、事業計画認可後30 日以内に地区に残留す るか、転出するかを決め、施行者に申し出なくてはいけない11。しかしその判断の大きな指 標となる従前財産の価値については。事業計画が認可されてから建物調査等が行わるため、 この時点で権利者等に詳細な補償額等は示されず、残留と転出の経済的損得を正確に把握 することはできない。阿部(2009)は土地収用事業におけるごね得を指摘し、瀬下ら(2007) も共同化事業において転出によるごね得を権利者等が図る傾向があるとしている。権利者 等がゴネ得を行うケースを表5のように考えられる。 ※ウ、エでごね得が発生する可能性がある ごね得が実際に発生するのであれば、収用事業であり共同化でもある再開発事業も同様 の傾向が見らえるはずであり、残留者数、転出者数を変数として加え、ケース③及び④の 推計式を以下のように考えた。先に述べた通り、転出の申し出は事業計画認可後30 日以内 に行うこととなっていることから、この判断自体が事業期間と内生性の問題は有していな い。 ケース③ 事業期間(フェーズⅡ) =β0+β1都市人口+β2東京23 区ダミー+β3従前平均価格対数+β8残留者数 +β12転出者数+β16店舗棟数+β17店舗兼住宅棟数+β18住宅棟数 +β19業務施設棟数+β20工場施設棟数+β21その他施設棟数 +β22従後公共用地面積+β23新設公益施設床面積+誤差項 ケース④ 事業期間(フェーズⅡ) =β0+β1都市人口+β2東京23 区ダミー+β3従前平均価格対数 11 都市再開発法第71 条 表5 再開発事業における権利者の行動 ア 使用 権利床 竣工時 大 大 イ 自らは不使用 権利床を賃貸 竣工時 大 大 ウ 〃 転出 転出時 小 小 長期化しても自分の損失は小さい エ 不要 転出 転出時 小 小 長期化しても自分の損失は小さい オ 〃 事業反対 再開発ビル 最終行動 利益の実現 時間リスク 事業採算性の影響

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+β9残留者数(土地所有者)+β10残留者数(借地人)+β11残留者数(借家人) +β13転出者数(土地所有者)+β14転出者数(借地人)+β15転出者数(借家人) +β16店舗棟数+β17店舗兼住宅棟数+β18住宅棟数+β19業務施設棟数 +β20工場施設棟数+β21その他施設棟数+β22従後公共用地面積 +β23新設公益施設床面積+誤差項 分析に用いるデータの基本統計量は表6の通りである。 表6 基本統計量 5.2 推定結果 推定結果を表7にまとめる。借地人が他の権利者に比べ、事業を長期化させる傾向が出 ている。瀬下(2003)は、賃借権を所有者より利用権と収用権の移転を保証する権利と位置付 け、賃借人は所有者よりも効率的な利用主体としている。それが、原則の権利変換により 所有権に変換されてしまえば「所有」の権利が増える分だけその効率性が落ちる。土地所 有者、借家人は従前の権利通り所有権、借家権で変換を受ける。他の権利に変換され、か つ、それにより利用の効率性が落ちることから借地人が他の権利者等に比べ、調整に時間 がかかることが考えられる。また、本来の機能を越えた権利を賃借人は付与されていると データー数 平均 標準偏差 最小値 最大値 事業期間(フェーズⅡ) 192 1346.323 1224.553 122 6057 都市人口(千人)[東京23区を除く] 192 607.5104 825.4699 0 3635 東京23区ダミー 192 0.1875 0.3913328 0 1 従前平均価格(千円)対数 192 2.684938 0.4423054 1.176091 3.926857 所有者数(人) 192 33.6875 45.55609 1 440 借地人数(人) 192 12.35938 27.73323 0 234 借家人数(人) 192 23.24479 30.91616 0 262 使用貸借人(人) 192 2.078125 5.501941 0 41 残留者数(人) 192 33.0625 43.94959 1 376 うち土地所有者数(人) 192 22.02604 34.48597 1 359 借地人数(人) 192 6.364583 12.58531 0 95 借家人(数) 192 3.651042 8.680971 0 55 転出者数(人) 192 38.30729 46.776 0 338 うち土地所有者数(人) 192 11.66146 15.33824 0 83 借地人数(人) 192 5.994792 20.01217 0 198 借家人(数) 192 19.59375 28.23187 0 257 店舗棟数(棟) 192 6.328125 10.56625 0 99 店舗兼住宅棟数(棟) 192 10.96354 14.04867 0 97 住宅棟数(棟) 192 13.29688 19.39127 0 148 業務施設棟数(棟) 192 2.479167 3.827372 0 22 工場施設棟数(棟) 192 0.875 3.374527 0 34 その他施設棟数(棟) 192 5.9375 12.26181 0 128 従後公共施設面積(㎡) 192 4362.438 4020.462 94 25500 新設公益施設床面積(㎡) 192 3499.117 6121.702 0 40923 法第111条ダミー 192 0.4166667 0.4942956 0 1

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いう「立法の失敗」を瀬下は指摘しており、その面からも借地権から所有権への権利変換 は、その権利の縮小になり、協議を難航させ事業期間を長くする要因となっているのでは ないか。全員同意を得ることで自由な権利変換はできるものの、従来型に比べ、権利者全 員の同意を必要とする分、取引費用は高くなる。 表7 推定結果 残留者と転出者の関係をみると、想定した通り、転出者が事業期間を長くする傾向が見 られる。瀬下はごね得を「規制の失敗」によるものとし、現在の土地収用法の下では、対 象となる不動産保有者には十分補償する必要があるが、個別に対応するため、ごね得を得 ようとする行動を誘発し、問題を生じさせると指摘している。また、浅見ら(2012)はマンシ ョン建て替えにおいて権利を取得せずに転出する者への補償金に開発利益が含まれやすい ことにより、反対奨励(転出)の効果があると指摘する。それは建替え決議の成立を困難 にし、仮に成立するとしても時期を遅らせるとしている。転出者の増が事業期間の長期化 に影響すること見られたことで、ごね得等が再開発事業でも発生している可能性が示され 都市人口(千人)[東京23区を除く] -0.324 *** -0.343 *** -0.265 ** -0.273 ** 東京23区ダミー -393.733 -401.610 -341.968 -248.804 従前平均価格(千円)対数 562.728 ** 559.307 ** 636.490 *** 565.316 ** 所有者数(人) -2.158 -2.555 借地人数(人) 10.518 *** 10.552 *** 借家人数(人) -1.044 -1.325 使用貸借人数(人) -1.119 -2.381 0.482 残留者数(人) -6.792 ** うち土地所有者数(人) -4.389 借地人数(人) -1.852 借家人(数) -12.497 転出者数(人) 8.637 *** うち土地所有者数(人) 3.505 借地人数(人) 16.258 *** 借家人(数) 3.470 店舗棟数(棟) 19.440 * 19.298 ** 11.868 17.311 * 店舗兼住宅棟数(棟) 3.091 1.840 7.868 3.465 住宅棟数(棟) 8.943 9.147 4.381 6.048 業務施設棟数(棟) 48.686 ** 44.970 * 38.592 * 39.400 * 工場施設棟数(棟) -20.682 -18.658 -14.986 -20.134 その他施設棟数(棟) -0.588 -0.835 6.054 1.373 従後公共施設面積(㎡) -0.015 -0.015 -0.028 -0.018 新設公益施設床面積(㎡) 0.025 * 0.025 * 0.020 0.023 法第111条ダミー 168.306 定数項 -323.529 -326.731 -532.810 -326.985 自由度調整済み決定係数 0.1928 0.1918 0.2065 0.2139 サンプル数 192 192 192 192 (注)***,**,*はそれぞれ有意水準1,5,10%に対応する。 ケース④ 推定値 説明変数 ケース① 推定値 ケース② 推定値 ケース③ 推定値

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た。権利者等は最初に述べた通り、受ける便益と支払う費用を比較して行動を決めるが、 従前、従後の価格が示されるまえに転出、残留の判断を権利者等が行うことは、適切な経 済判断を不可能にし、少しでも自らが得になるようにごね得をするようになるのではない か。 建物の利用目的による違いもフェーズⅠ同様に事業期間に影響をするとの結果が得られ た。有意ではないものの、やはり店舗のほうが住宅に比べ、顧客喪失等営業上の問題が大 きく、補償などの調整に時間を要することなどから長期化の傾向が出ている。しかしなが ら、同じ店舗でも店舗付住宅の場合は、店舗ほど長期化の傾向が今回は出ていないため、 一概に店舗の場合、住宅に比べ事業を長期化させるとまでは言い切れない。 新設される公益施設床面積が長期化に寄与するのは、建築物の施設計画と併せて自治体 等との調整を要するからであろう。水谷はダミー変数を用いコントロールしていたが、交 番等定型的な施設から大型で特殊な施設まで公益施設にも内容は多々あり、大規模になる ほど調整に時間を要するとの結果を得た。 6. 初動期の資金調達について 冒頭でも述べた通り、市街地再開発事業においては初動期の資金調達が問題となってい る。事業協力者の負担等で多くの事業が完了しており、施行者へのアンケート調査の結果 だけでは実際にどの程度資金が不足しているのか客観的判断が難しい。そこで、組合施行 と自治体が同じ第一種市街地再開発事業を行った場合の資金計画を比較し分析を行う。 6.1 現状について 全国市街地再開発協会の調べ12によると権利変換計画認可年度までの資金計画は表8の ような内訳になっている。 都市計画決定までは補助金収入と事業協力者からの協力金がメインとなっている。本来、 12公益社団法人全国市街地再開発協会「市街地再開発事業における資金計画に関する調査」(2001 年) 表8 事業途中段階での収入・支出 (1999,2000年完了地区、2000年8月31日時点権利変換計画認可済み地区 78地区) 都市計画決 定年度まで 組合設立年 度まで 権利変換計 画認可年度 まで 都市計画決 定年度まで 組合設立年 度まで 権利変換計 画認可年度 まで 266,682 6,328,258 4,356,149 累計支出 266,623 621,522 3,946,175 一会補助 32% 36% 14% 調査設計 70% 62% 14% 他補助 2% 4% 5% 補償 1% 14% 61% 公管金 0% 8% 7% 事務 22% 14% 14% 参組負担 2% 4% 29% 利息 2% 2% 2% 他補助 13% 2% 7% その他 7% 8% 8% 市中融資 10% 18% 25% (単位:千円) 事業協力 39% 23% 1% その他 2% 5% 12% 借 入 金 実 収 入 累計収入

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履行確実性を金融等外部機関が事業について情報を得ていれば、それを基に融資をするこ ととなる。しかしながら、事業の履行確実性の高まる権利変換計画の認可が行われるまで は外部での資金調達は難しくなっている。通常の土地開発であれば、土地所有者等が土地 等を担保に自ら資金を調達する。一部組合役員等が自らの財産を担保に資金を提供するこ とはあるが、地権者全員で資金調達を行うことはない。市街地再開発事業は投資的要素が 強いとしても、公共施設整備と外部性を根拠に政府の介入が行われ、積極的に事業への参 加をしない地権者も事業に巻き込まれている。その場合、自らの土地の活用であっても、 自らの負担を負わず、再開発もメリットを享受する権利者等が発現する。その負担がない ため、資金調達が十分に行えていないという側面もあるとも考えられる。そして現状は、 その資金不足を事業協力者からの協力金に頼る構造となっている。 6.2 データ 分析に使用するデータは、全国市街地再開発協会が取りまとめている市街地再開発事業 のデータ13のうち、1999 年4月から 2009 年3月末までに完了した東京都内で行われた組合 施行による第一種市街地再開発事業と自治体施行で行われた第一種市街地再開発事業を対 象とした。組合施行地区は全49 地区のうち 43 地区、自治体施行は 15 地区のうち9地区の 情報提供を受け、事業計画書の使用が可能であったため、これらを対象とした。事業計画 書は自治体等で保存されていたもののうち、最新のデータを使用した。 データを加工するに当たり、事業計画書の資金計画の形式が、事業計画が認可される前、 後でわかれている地区が多かったため、これを一つの区切りとし、権利変換計画の認可を 2つ目の区切りとして期間を三分割して行った。事業計画認可、権利変換計画認可につい ては年月までわかるため、それを基に年度の支出を四半期に均等分割をし、それぞれの期 間に支出を振り分けた。集計は各地区の支出金額を合計したうえで、各期間の支出割合を 示した金額平均と地区ごとに各期間の支出割合を算出し、それを集計して一地区あたりの 支出割合を算出した割合平均でおこなった。今回は地区による事業費の大小の影響が反映 されない割合平均にて分析を行う。 6.3 分析 組合施行と自治体施行の資金計画の集計、および両者の差を表9、10、11 にてまとめる。 事業進捗のために必要な調査設計費等と事務費については組合施行においても初動期よ り積極的に支出されている。しかしながら、本工事費、補償費についてはその執行が少な く、自治体の資金計画を詳細にみると公共施設整備費としての執行が多いことから、自治 体施行においては自らの責任において同施設の整備が行えるため、当初より支出が行われ、 この工事に伴う補償も行われていると考えられる。 13公益社団法人全国市街地再開発協会「日本の都市再開発」第6 巻(2006 年)及び第 7 巻(2011 年)

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表9 組合施行事業の資金計画 表10 自治体施行事業の資金計画 金額平均 割合平均 金額平均 割合平均 金額平均 割合平均 工事費 3.6% 3.4% 10.3% 12.2% 86.1% 84.4% 本工事費 0.0% 0.0% 2.0% 2.0% 98.0% 97.9% 付帯工事費 1.4% 1.3% 3.8% 3.7% 94.7% 95.0% 調査設計費等 23.3% 27.3% 25.4% 29.7% 51.2% 43.0% 用地費 11.5% 6.5% 38.8% 46.7% 49.7% 46.8% 補償費 10.5% 5.3% 41.0% 39.3% 48.5% 55.4% 借入利息 0.7% 6.3% 6.4% 19.1% 92.9% 74.6% 事務費 10.5% 16.0% 14.9% 20.6% 74.6% 63.5% 小計 3.8% 3.8% 10.3% 12.5% 85.9% 83.7% 市街地再開発事業補助金 4.7% 5.9% 12.0% 12.7% 83.3% 81.5% 公共施設管理者負担金 2.8% 4.7% 23.5% 19.9% 73.7% 75.4% 保留床処分金 0.0% 0.0% 4.5% 2.8% 95.5% 97.2% 参加組合員負担金 3.4% 1.5% 11.0% 29.3% 85.6% 69.2% 優先分譲負担金 0.3% 1.7% 0.3% 3.1% 99.4% 95.2% 預金利子・使用料等 4.1% 11.6% 4.6% 3.8% 91.3% 84.7% 小計 2.5% 2.4% 8.8% 10.0% 88.8% 87.6% 歳 出 歳 入 組合施行43地区 事業計画認可前 権変認可前 完了まで 費 目 金額平均 割合平均 金額平均 割合平均 金額平均 割合平均 工事費 17.6% 16.7% 17.4% 15.0% 64.9% 68.3% 本工事費 5.4% 3.6% 2.1% 3.6% 92.4% 92.9% 付帯工事費 1.3% 1.8% 5.2% 6.8% 93.4% 91.4% 調査設計費等 31.2% 34.8% 21.6% 20.1% 47.2% 45.1% 用地費 0.2% 0.2% 75.4% 20.0% 24.5% 79.9% 補償費 36.1% 35.5% 36.8% 34.0% 27.1% 30.5% 借入利息 1.4% 4.4% 7.4% 4.4% 91.1% 91.2% 事務費 7.2% 10.6% 19.1% 13.0% 73.7% 76.3% 小計 16.8% 16.3% 17.1% 14.5% 66.0% 69.2% 市街地再開発事業補助金 16.0% 16.5% 6.2% 7.2% 77.8% 76.3% 公共施設管理者負担金 28.5% 24.1% 22.6% 16.5% 48.9% 59.4% 地方道路整備臨時交付金 1.3% 8.3% 32.9% 11.8% 65.8% 79.9% 保留床処分金 4.6% 3.6% 0.2% 0.2% 95.2% 96.2% 市単独費 12.7% 15.2% 22.3% 7.4% 65.0% 77.5% 前年度繰越金 0.0% 0.0% 33.3% 3.7% 66.7% 96.3% 預金利子・使用料等 1.9% 1.5% 3.7% 2.9% 94.4% 95.6% 小計 12.4% 11.3% 9.3% 7.9% 78.3% 80.8% 市町村施行9地区 事業計画認可前 権変認可前 完了まで 費 目 歳 出 歳 入

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表11 組合施行事業の資金計画-自治体施行事業の資金計画 収入を見ると明らかに補助金収入の時期に差があり、自治体施行と組合施行で初期の資 金需要が同じだった場合、この分が資金不足として表れている。また、歳出小計と歳入小 計を比べると、自治体は歳入以上の歳出を行っている。自治体は履行確実性が高く、かつ、 自ら資金調達ができることから、潤沢に資金執行が出来ていると言える。またそれは、資 金を供給する自治体と事業を施行する自治体が同一のため、履行確実性の情報を有してい るからこそ、資金調達が出来ていると言える。それに対し、組合施行においては歳出と歳 入の差が小さい。組合は金融機関等外部機関から借り入れにより資金調達を行う必要があ るが、外部機関が事業の履行確実性を判断するのは難しく、権利者合意という定量的な分 析が難しいリスクがあるため過少に判断する傾向があると考える。このように施行主体に よる資金調達力の差が、組合の資金調達の困難性として言われている部分ではなかろうか。 そしてそこには履行に関する情報の非対称があるともいえる。 これらを見ると、組合施行における資金調達の困難性は初期の補助金収入の少なさと自 治体に比べ借り入れができないために、その収入に合わせた支出しかできないことと言え る。しかしながら、支出費目だけ見ると初動期に運営に必要な執行資金、事務費と調査設 計費は現時点で足りているようにも見えるため、何の資金が不足しているのか更なる精査 が必要である。 7. 考察 市街地再開発事業において、権利者等との協議は履行の不確実性、遅延、事業費増など の様々なリスクのもととなる。実証分析が示す通り、権利者等の数では一概にその事業の 遅延の影響は図れず、権利形態や土地、建物の利用状況によって事業期間への影響は異な っている。施行者と権利者等が交渉するに当たり、お互いの情報を知り、適切な補償がな されれば、正常に取引が行われ、事業の遅延は少なくなる。その場合、権利形態等の違い 金額平均 割合平均 金額平均 割合平均 金額平均 割合平均 工事費 -14.0% -13.3% -7.2% -2.7% 21.2% 16.1% 本工事費 -5.4% -3.5% -0.2% -1.5% 5.6% 5.1% 付帯工事費 0.1% -0.5% -1.4% -3.1% 1.3% 3.7% 調査設計費等 -7.8% -7.5% 3.8% 9.6% 4.0% -2.1% 用地費 11.3% 6.3% -36.5% 26.7% 25.2% -33.0% 補償費 -25.6% -30.2% 4.2% 5.3% 21.4% 24.9% 借入利息 -0.7% 1.9% -1.0% 14.7% 1.8% -16.6% 事務費 3.3% 5.3% -4.2% 7.6% 0.9% -12.9% 小計 -13.0% -12.5% -6.8% -2.0% 19.8% 14.5% 市街地再開発事業補助金 -11.3% -10.6% 5.9% 5.5% 5.5% 5.1% 公共施設管理者負担金 -25.8% -19.4% 0.9% 3.4% 24.9% 16.0% 保留床処分金 -1.1% -2.0% 10.8% 29.1% -9.6% -27.1% 預金利子・使用料等 2.2% 10.1% 0.9% 0.9% -3.2% -11.0% 小計 -10.0% -8.9% -0.5% 2.0% 10.5% 6.9% 事業計画認可前 権変認可前 完了まで 費 目 歳 出 歳 入 組合施行-市町村施行

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による事業期間への影響の差はほとんど見られないはずである。本研究により、実際の市 街地再開発事業の現場では、権利形態や土地・建物の利用状況の違いにより、事業期間に 異なる影響が出ていることが確認された。施行者と権利者がお互いの情報を知らないこと により影響の違いが見られていると思われ、両者の間には情報の非対称の問題があると考 えられる。よって、現制度以上に施行者、権利者等が情報を正確に知ることが出来れば、 交渉は円滑に進むようになるはずである。権利者の立場からすれば、所有財産の評価、権 利床等の評価、事業スケジュール等を早く知る必要があり、そのためには建物調査、各種 設計を今以上に早期に実施すべきである。そして、それを実現するには準備組合、再開発 組合ともにその執行力を強化することが不可欠であると考える。行政も外部性の観点から 補助金等を投入している地区が多くあることから、事業の早期化を一緒に目指さなくては ならない。例えば、現在、事業計画の認可後に実施される建物調査を都市計画決定後、自 治体が施行予定者に代わり建物調査を行い、施行者決定後補助金等から回収する方法も考 えられるのではないか。また、現状以上に組合施行で初動期より調査等業務が行える環境 が整えば、それに伴う事業に関する情報は増え、履行確実性も上がる。それにより、今よ りも資金調達の困難性は改善すると考える。 借地権の問題は、そもそも土地所有者と借地人との間でそもそも片づけるべきとの主張 もあるが、そこの議論をすると再開発の議論ではなくなるため、ここでは事業でどのよう な対応が可能かを考える。同じ借地借家法に守られた借地人、借家人であっても権利変換 計画までの事業期間への影響度が異なる。違いは従前権利と同じ権利に変換されるか、さ れないかという点であると考えられる。賃借権である借地権が原則所有権に変換されてし まう現行の権利変換計画の手法に問題がありそうで、自由度の高い権利変換計画策定を行 うことで改善が見込めるのではないだろうか。現在でも全員同意型で自由度のある権利変 換計画がつくれるが、そもそも等価交換により権利変換を行っているのだから、権利変換 形態に縛りをかける意味はさほどないと考える。権利者の望む権利変換が通常の手続きで できるようになれば、協議量が多少減るのではないか。また、瀬下の指摘する通り、借地 借家法に「立法の失敗」あり、それが本人の希望ではなく、事業実施により問題として顕 在化するのであれば、行政による支援も考えられる。一定期間以上借地契約が履行されて いる場合、増床のための費用を無利子融資など行うことも検討する必要があるのではない か。 転出者の問題については、浅見ら(2012)が指摘する通り、反対奨励につながる現行の転出 者への補償をやめ、事業計画認可時点等の従前価額での買い取りや、ごね得を発生させな いよう施行者の強制力の強化し、転出者に対する補償等対応を厳粛に行わなくてはならな い。また、転出等の一番の判断基準なる従前価額、従後価額、買い取り価額については明 確にする必要があり、かつ、転出者が開発利益を得て、事業で苦労を伴う残留者よりも得 をすることのないようにしなくてはならない。価額の決定をわかりやすくするには、既存 の公式な価格を使用することであり、一つは固定資産税評価額が使用できるのではないか。 それをそのまま使うのではなく、事業特性、地域制をかんがみそれを基に従前価額を作成 し、転出時の補償もそれを基に行う。権利床については等価交換の原則に縛られず、開発

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利益(不利益)に見合った権利床変換を行う。これにより、残留者は権利床価格変動のリ スクとともに開発利益をうけ、反対者は早期に現在価値の補償を受け退場する。当初の財 産評価については転出しても残留しても差がなく、明確化する(表12)。 ただし、事業参加者全員が再開発事業への積極的参加とは限らないとすれば、従後の価 格変動リスクを軽減する別途仕組みを考える必要があるだろう。その場合には、その見返 りとして事業への反対権の放棄(権利変換計画への意見の禁止、土地引渡しの強制力強化) があるのではないか。また、既存財産に比べ過小評価にならない必要があることと、補助 金等が投入される公共性の高い事業であるが為に財産評価が実際より高くなることへの批 判があるかもしれない。前者については別途チェック方法や救済措置を考えることで対応 すればよい。後者については再開発事業への政府の介入が正の外部性によるのであれば、 事業によりその外部性が実現すれば効果があったと言える。極端な権利者等への利益供与 は問題ではあるが、事業参加へのインセンティブを与える意味でも等価交換にとらわれな い権利変換方式を導入してもよいと考える。 8. おわりに 本研究では、権利者等の権利形態、土地、建物利用状況が事業期間にどのように影響を 与えるか、それと併せて、事業の長期化においてなにがボトルネックとなるか検証してき た。一般的に権利者が多い地区、建物が密集している地区での権利者合意が難しいと思わ れている。今回、建物と長期化の関係性はある程度見ることができたが、権利者数につい ては必ずしも正の関係ではなく、借地人と転出者での対応で特に長期化するなど、権利形 態や状況により異なることが示された。実業においては、それ以外にも施行者、行政等の 執行能力など様々な要素がリンクし、権利者以外にも多数のステークホルダーがいること から、市街地再開発事業の事業期間、リスク等を定量的に分析することは難しいだろう。 しかしながら、権利者合意という言葉ひとつにまとめられていた問題も、一部は分解し 解析することができることを今回示せたと思う。今後も完了地区のみならず、中断地区や 検討で断念した地区の情報を収集、精査し、事業の迅速に向けた手法の検討を続ける必要 があると考える。 謝辞 本稿の作成に際し、福井秀夫教授(プログラム・ディレクター、副査)、北野泰樹助教授 (主査)、植松丘教授(副査)、まちづくりプログラム並びに知財プログラムの先生方から 丁寧かつ熱心なご指導と大変貴重なご意見を賜りましたことを心より御礼申し上げます。 表12 従前価額等の評価の考え方(イメージ) 固定資産税 評価額 従前の価額 補償額 受ける権利 床の価額 残留者 A A×1.2 - A×1.3 権利床に変換、景気変動リスクを負う 転出者 B B×1.2 B×1.2 - 景気変動リスクを負わない

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また、各種データ、資料の提供のご協力を頂きました全国の地方公共団体、公益社団法人 全国市街地再開発協会並びに学生生活を支えていただいた各プログラムの学生に感謝の意 を表します。 参考文献 ・浅見泰司・福井秀夫・山口幹幸[編著](2012 年)「マンション建替え―老朽化に化にどう備 えるか-」日本評論社 ・阿部泰隆(2009 年)「行政法解釈学Ⅱ」有揖斐 ・伊丹亮二(1993 年)「権利変換形態が再開発事業に与える影響の考察」日本建築学会 ・鷲見育男(2009 年)「市町村都市計画審議会の効率的な運営に関する研究」政策研究大学 院大学 ・太田道春・堀内善仁(2003 年)「SPC を保留床取得者とする市街地再開発事業の問題点に 関する考察」再開発研究NO.20 ・北村幸定(2003 年)「経済変動を考慮した市街地再開発事業のフィジビリティに関する研 究」京都大学 ・公益社団法人全国市街地再開発協会「日本の都市再開発」第6 巻(2006 年)、第 7 巻(2011 年) ・公益社団法人全国市街地再開発協会(2001 年)「市街地再開発事業における資金計画に関 する調査」 ・公益社団法人全国市街地再開発協会(2005 年)「市街地再開発事業における資金調達の実 態調査」 ・公益社団法人全国市街地再開発協会(2002 年)「初動期における市街地再開発事業の推進 実態調査」 ・公益社団法人全国市街地再開発協会(1999 年)「再開発の事業迅速化に関する研究」 ・公益社団帆人全国市街地再開発協会(2003 年)「市街地再開発事業の参画者リスクに関す る調査」 ・再開発コーディネーター協会(2003 年)「新たな再開発のあり方に関する提言」 ・再開発コーディネーター(2000 年)「再開発で使えるか不動産証券化Ⅰ」NO.87 ・再開発コーディネーター協会(2003 年)「再開発事業への資金調達-現状の課題と今後」 再開発コーディネーターNO.102 ・再開発コーディネーター協会(2003 年)「再開発事業の主体と事業リスクについて」再開 発コーディネーターNO.103 ・瀬下博之・山崎福寿(2007 年)「権利対立の法と経済学」一般社団法人東京大学出版会 ・滝田克彦・富谷隆太郎・鈴木裕明・春山陽宏(2002 年)「ファイナンスから見た再開発事 業に関する考察」再開発研究NO.18 ・都市開発事業における効果的なPPP手法の検討委員会(2012 年)「都市開発事業におけ る効果的なPPP手法の検討委員会報告書」(2012 年) ・都市開発ファイナンス研究会「(2005 年)都市開発ファイナンスのいま」ぎょうせい

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・中野学・大川正則(2012 年)「市街地再開発事業における SPC 参加組合員の参画に伴う課 題について-虎ノ門・六本木地区の事例から-」再開発研究NO.28 ・福井秀夫(2007 年)「-ケースから始めよう-法と経済学」日本評論社 ・前田仁・日端康雄 日本建築学会(1993 年)「市街地再開発プロジェクトの事業期間の分 析」 ・水谷圭司(2012 年)「市街地再開発事業における権利者合意水準が事業期間に与える影響」 政策研究大学院大学 ・宮本幸司 (2002 年)「市街地整備事業における公民パートナーシップと新たな資金調達に 関する調査研究」調査研究時報NO.130 ・山崎福寿(2001 年)「経済学で読み解く土地・住宅問題―都市再生はこう進めよ―」東洋 経済 ・山崎福寿(1999 年)「土地と住宅市場の経済分析」一般社団法人東京大学出版会 ・山崎福寿・浅田義久(2003 年)「都市再生の経済分析」東洋経済新報社 ・簗瀬範彦(2001 年)「市街地整備事業における公民パートナーシップと新たな資金調達手 法に関する調査研究 調査研究時報) NO.128 ・吉原信哉・河野勝・頃安りゅう・山本明 (1993 年)「市街地再開発事業における事業期 間-市街地再開発事業に関する研究(その1)-」日本建築学会 ・吉原信哉・河野勝・頃安りゅう・山本明(1993 年)「市街地再開発事業における権利者残 留率-市街地再開発事業に関する研究(その2)-」日本建築学会

表 11 組合施行事業の資金計画-自治体施行事業の資金計画 収入を見ると明らかに補助金収入の時期に差があり、自治体施行と組合施行で初期の資 金需要が同じだった場合、この分が資金不足として表れている。また、歳出小計と歳入小 計を比べると、自治体は歳入以上の歳出を行っている。自治体は履行確実性が高く、かつ、 自ら資金調達ができることから、潤沢に資金執行が出来ていると言える。またそれは、資 金を供給する自治体と事業を施行する自治体が同一のため、履行確実性の情報を有してい るからこそ、資金調達が出来ていると言える。

参照

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