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目   次 1.欧州経済の現状 (1)ユーロ圏 (2)イギリス 2.今後の欧州経済をみるうえでのポイント (1)雇用・所得環境と個人消費 (2)設備投資を取り巻く環境 (3)ドイツの輸出構造の変化 (4)ユーロ圏の物価と金融政策の行方 (5)イギリスの賃金の伸びの行方 3.2015~2016年の欧州経済見通し (1)ユーロ圏 (2)イギリス 4.リスクシナリオ

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1.ユーロ圏経済は、原油安、ユーロ安等を追い風に、2014年半ばの踊り場を脱し、緩やかな回復基調 へ復帰している。国別にみると、ドイツの「独り勝ち」色が薄まるとともに、ドイツ以外の国にも景 気回復の裾野が広がりつつある。 2.家計部門では、雇用のミスマッチ拡大やパートタイム従事者の増加といった構造的要因から、雇 用・所得環境の改善ペースは緩やかにとどまると予想され、原油安効果一巡後の個人消費の回復テン ポは緩慢なものとなる見込みである。また、企業部門では、資金調達環境は改善しているものの、設 備投資に対する慎重姿勢は根強く、設備投資の本格回復にはなお時間を要する見込みである。ユーロ 圏の域外輸出の約4割を占めるドイツでは、先行き、ユーロ安による輸出数量の押し上げ効果は限ら れる可能性があるものの、新興国景気の減速が緩和してくれば、輸出の増加ペースは緩やかながらも 加速していくことが期待される。  金融政策については、インフレ率がECBの中期的な物価目標に整合的な経路に戻るのに時間を要 するとみられるなか、ECBは2016年9月以降も暫く量的緩和を継続する見通しである。  イギリスでは、今後、労働需給のタイト化や労働生産性の持ち直しにより、緩やかに賃金上昇率が 高まる見込みである。 3.以上を踏まえ、2015年後半から2016年のユーロ圏経済を展望すると、個人消費などの回復に下支え され、緩やかな景気回復が続く見込みである。もっとも、構造的な成長抑制要因が残るなか、2016年 にかけて1%台前半から半ば程度の低成長が続く見通しである。  一方、2015年後半から2016年のイギリス経済は、雇用・所得環境の一段の改善や政府の住宅購入支 援策に下支えされた住宅需要の持ち直しが見込まれるなか、個人消費が堅調に推移し、2%台での成 長が続く見通しである。 4.上記メインシナリオに対するリスクとしては、欧州での政治リスクの高まり等が想定される。欧州 では、反緊縮・反EUなどを掲げるポピュリズム政党が急速に台頭している。こうしたなか、2015年 後半から2016年には、各国で国政選挙・地方選挙の実施が予定されており、こうした政党が躍進すれ ば、政治の先行き不透明感の強まりが景気の下押し要因となる恐れがある。 要  約

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1.欧州経済の現状 (1)ユーロ圏  ユーロ圏景気は、原油安、ユーロ安等を追い風に、2014年半ばの踊り場を脱し、緩やかな回復基調へ 復帰している。2015年1~3月期の実質GDPは、前期比年率+1.5%と、2014年4~6月期の同+0.4% を底に、3四半期連続で緩やかながら伸びが高まっている(図表1)。需要項目別にみると、個人消費 が景気回復をけん引しているほか、金融危機以降、低迷が続いてきた総固定資本形成に持ち直しの兆し がみられる。一方、金融危機以降、景気の下支え役を担ってきた輸出は伸び悩んでいる。仕向地別にみ ると、中国・ロシアなどの新興国向け輸出が大幅に減少し、輸出全体を下押ししている(図表2)。  主要国では、外需が低迷したドイツが減速した ものの、労働市場改革の成果が出ているスペイン が一段と加速したほか、景気の低迷が続いていた フランス、イタリアでも回復の動きが強まってい る(図表3)。ドイツの「独り勝ち」色が薄まる 一方で、景気回復の裾野が広がりつつあるといえ る。 (2)イギリス  イギリスでは、2015年1~3月期の実質GDP が前期比年率+1.5%と、2014年4~6月期の同 +3.7%をピークに景気の拡大ペースが鈍化傾向 にある(図表4)。とくに2015年1~3月期は、輸出が伸び悩む一方、輸入が急増し、純輸出のマイナ スの寄与度が拡大したことが大きな下押し要因となっている。一方、個人消費は引き続き堅調に推移し ▲8 ▲6 ▲4 ▲2 0 2 4 6 8 10 12 輸 入 輸 出 在庫投資 総固定資本形成 政府消費 個人消費 2015 2014 2013 2012 2011 2010 実質GDP (図表1)ユーロ圏の需要項目別実質GDP(前期比年率) (資料)Eurostat (%) (年/期) 70 80 90 100 110 120 130 140 2015 2014 2013 2012 2011 2010 域外向け合計 域外欧州<36.1> アメリカ<12.4> 中国<6.8> 中国除くアジア<17.0> 中南米<4.9> ロシア<4.1> (図表2)ユーロ圏の仕向地別輸出数量 (資料)Eurostatを基に日本総合研究所作成 (注)季節調整値の3カ月移動平均。< >は2014年のシェア。 (2010年 =100) (年/月) ▲6 ▲4 ▲2 0 2 4 6 8 10 2015 2014 2013 2012 2011 2010 ユーロ圏 スペイン イタリア フランス ドイツ (図表3)ユーロ圏全体と主要国の実質GDP (前期比年率) (資料)Eurostat (%) (年/期)

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ているほか、設備投資も緩やかな持ち直しに転じ ており、内需は底堅さを増している。 2.今後の欧州経済をみるうえでのポイント  ユーロ圏景気の先行きを展望するうえでは、原 油安、ユーロ安等の追い風が吹いている間に、持 続的かつ自律的な景気回復に移行できるかがカギ となる。そこで以下では、その際にポイントにな るとみられる、①個人消費回復の原動力として期 待される雇用・所得環境の改善は続くのか、②企 業の設備投資は勢いを取り戻すのか、③ドイツの 輸出は、これまでのようにユーロ圏景気の下支え 役になり続けることができるのか、について考察 し、あわせて、ユーロ圏の物価と金融政策の行方について検討したい。  また、イギリス景気の先行きを展望するうえでは、引き続き個人消費の動向が重要となる。足許のイ ギリス景気は、雇用環境の改善が続き、賃金の伸びも徐々に高まりつつあるなど、消費を取り巻く環境 は明確に改善してきている。今後、原油安効果の一巡により、インフレ率の緩やかな持ち直しが見込ま れるなか、インフレ率を上回るペースで名目賃金の上昇が続き、個人消費を下支えできるか否かがカギ となる。 (1)雇用・所得環境と個人消費  足許でユーロ圏景気のけん引役になっている個 人消費の回復を後押ししているのは、原油安を主 因としたインフレ率の低下と雇用環境の改善を受 けた実質所得の増加である(図表5)。今後、原 油安の一巡を受け、インフレ率の緩やかな持ち直 しが見込まれるなか、個人消費の増勢が加速する には、さらなる雇用・所得環境の改善が不可欠と いえる。  もっとも、以下2点の労働市場の構造的要因か ら、先行き、雇用・所得環境の改善ペースは緩や かにとどまる見込みである。  第1に、雇用のミスマッチが拡大していること である。企業の人手不足度合いを示す欠員率と失 業率の関係を欧州債務危機が本格化した前後で比較すると、近年は欠員率の水準に比べて失業率が高止 まりしており、雇用のミスマッチが拡大していることを示唆している(図表6)。この背景の一つとし ▲8 ▲6 ▲4 ▲2 0 2 4 6 8 10 輸 入 輸 出 在庫投資 政府消費 総固定資本形成 個人消費 2015 2014 2013 2012 2011 2010 実質GDP (図表4)イギリスの実質GDP(前期比年率) (資料)ONS (%) (年/期) ▲3 ▲2 ▲1 0 1 2 3 4 5 実質雇用者報酬(前年比、左目盛) 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 一人当たり名目雇用者報酬(前年比、左目盛) 雇用者数(前年比、左目盛) ▲2 ▲1 0 1 2 3 個人消費デフレーター(前年比、右逆目盛) (図表5)ユーロ圏の雇用・所得関連指標 (資料)Eurostat (%) (%) (年/期)

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て、リーマン・ショック、欧州債務危機と、短期間に二度の景気後退に見舞われたことにより、長期失 業者が増加したことが指摘できる(図表7)。失業期間の長期化が保有スキルの低下を招き、雇用のミ スマッチを固定化している可能性がある。  第2に、パートタイム従事者が増加しているこ とである。リーマン・ショックや欧州債務危機を 経て、フルタイムの職が見つからないパートタイ ム従事者がドイツ以外の国で大幅に増加している (図表8)。パートタイム従事者の増加が雇用創出 に果たす役割は無視できないものの、フルタイム 従事者に比べ、相対的に賃金が低いパートタイム 従事者の増加が続けば、先行きも賃金の伸びが抑 制される可能性がある。  以上のように、雇用・所得環境の改善ペースが 緩やかにとどまることが予想されるなか、原油安 効果一巡後の個人消費の回復テンポは緩慢となる見込みである。個人消費が堅調さを持続するためには、 構造的な高失業の解消に向け、職業訓練プログラムの拡充によるスキル向上の支援など、政策面のサポ ートが必要となる。 (2)設備投資を取り巻く環境  個人消費の回復ペースが雇用・所得環境の改善に見合った緩やかなものになると見込まれるなか、金 融危機以降低迷が続いてきた企業の設備投資が勢いを取り戻していかなければ、ユーロ圏の力強い成長 は期待し難い状況にある。もっとも、設備投資を取り巻く環境にも、なお厳しさが残っている。 6 7 8 9 10 11 12 13 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 (図表6)ユーロ圏の欠員率と失業率 (資料)Eurostat 欠 員 率 ︵ % ︶ 失業率(%) 2007年 1∼3月期 ミスマッチ拡大 2015年 1∼3月期 2010年4∼6月期 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 24カ月以上 6カ月∼24カ月未満 ∼6カ月未満 2014 2012 2010 2008 2006 2004 2002 2000 (図表7)ユーロ圏の長期失業者 (資料)Eurostat (万人) (年) 0 2 4 6 8 10 12 ユーロ圏 ドイツ フランス イタリア スペイン 2014 2012 2010 2008 2006 2004 2002 2000 (図表8)ユーロ圏のパートタイム従事者の割合 (%) (年) (資料)Eurostat (注1)フルタイムの職が見つからないパートタイム従事者数の就 業者数に対する割合。 (注2)ユーロ圏の2005年のデータはなし。

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 企業の資金調達環境は、ECBによる2014年6 月以降の金融緩和の強化や、同年11月の銀行監督 一元化に際して実施された域内銀行の包括査定が 完了したこと等により、改善がみられる。ECB が実施している銀行貸出サーベイでは、足許にか けて民間銀行の非金融企業向け貸出基準が緩和傾 向にある(図表9)。一方、企業の資金需要も総 じて高まってきており、企業向け貸出にはようや く持ち直しの兆しがみられるものの、設備投資関 連の資金需要に限ってみれば、引き続き弱さがみ られる(前掲図表9)。  欧州委員会が2015年3~4月に実施したユーロ 圏製造業の設備投資計画調査では、2015年の実質 設備投資計画が前回調査(2014年10~11月時点)の前年比+2.9%から同+4.1%に上方修正されたもの の、修正幅は小幅にとどまっている(図表10)。この間、ユーロ圏景気の回復ペースが小幅ながら加速 したことや、ECBによる量的緩和が開始されたこと等を踏まえると、企業の設備投資に対する慎重姿 勢が根強いことがうかがわれる。この背景の一つとして、ユーロ圏では、生産の回復ペースが緩慢にと どまるなか、設備稼働率が依然として金融危機前の長期平均を下回っており、設備過剰感が残っている ことを指摘できる(図表11)。加えて、南欧諸国を中心に企業のバランスシート調整圧力が残っている こと等も投資抑制要因となっている公算が大きい。  次に、設備投資と資本ストックの動向を示す資本ストック循環図をみると、設備投資は、欧州債務危 機以降の低迷を抜け出し、今後暫くは循環的な回復局面が続く可能性があることを示唆している(図表 12)。一方、同図から観測される企業の期待成長率は、リーマン・ショック、欧州債務危機を経て、足 ▲40 ▲20 0 20 40 60 80 100 銀行の貸出態度(先行き3カ月、左目盛) 銀行の貸出態度(過去3カ月、左目盛) 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 ▲50 ▲40 ▲30 ▲20 ▲10 0 10 20 固定投資向け借入需要(過去3カ月、右逆目盛) (図表9)ユーロ圏銀行の企業向け貸出態度と   企業の固定投資向け借入需要

(資料)ECB “Bank lending survey”

(%ポイント) (%ポイント) (年/期) 貸出態度厳格化 借入需要減 貸出態度緩和 借入需要増 ▲25 ▲20 ▲15 ▲10 ▲5 0 5 10 15 実 績 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 当年10・11月時点 当年3・4月時点 前年10・11月時点 (図表10)ユーロ圏製造業の設備投資計画(前年比)

(資料)DG ECFIN “Investment survey” (%) (年) 85 90 95 100 105 110 115 120 生産(左目盛) 68 70 72 74 76 78 80 82 84 86 設備稼働率の 金融危機前の長期平均 (1999─2007年) 設備稼働率(右目盛) 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 (図表11)ユーロ圏の生産と設備稼働率 (資料)Eurostat (注)設備稼働率・生産は、製造業。 (2010年 =100) (%) (年/月・期)

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許でゼロ%近辺まで低下している。先行き、緩や かながらも景気回復の動きが続くなかで、期待成 長率も徐々に持ち直していくと期待されるものの、 当面はリーマン・ショック後の2009~2011年の水 準を下回るとみられ、大幅かつ持続的な設備投資 の拡大は期待しにくい。  なお、欧州委員会は、EU域内の投資不足の問 題を認識しており、2014年11月には同問題への対 策として3年間で3,150億ユーロの官民投資計画 を発表した。民間投資の呼び水となることが期待 されているものの、即効性や資金規模の面で過度 な期待はできず、企業の設備投資に対する慎重姿 勢を転換できるかどうかは不透明である。 (3)ドイツの輸出構造の変化  前述の通り、ユーロ圏では、足許で個人消 費が景気のけん引となる一方で、これまでユ ーロ圏景気を下支えしてきた輸出は伸び悩ん でいる。先行きを展望しても、個人消費や設 備投資といった内需の持ち直しが緩やかにと どまると予想されるなか、輸出が一段と減速 すれば、ユーロ圏景気の下振れ要因となりか ねない。とりわけ、域外向け輸出の約4割を 占めるドイツの輸出動向を注視する必要があ る。ドイツの輸出は、2014年半ば以降に進行 した大幅なユーロ安による輸出数量の押し上 げ効果が期待されるなかでも、力強さを欠い た状況が続いている(図表13)。  この背景として、新興国景気の減速が指摘できる。域外向け輸出に占める仕向先のウエートの変化幅 (2000年から2014年)をみると、これまで大きなウエートを占めていたアメリカ・イギリスといった先 進国向けの割合が低下する一方、中国やロシア・東欧といった新興国向けの割合が上昇している(図表 14)。すなわち、ドイツの輸出は、域外需要のなかでもとくに新興国の需要に左右されやすい構造に変 化しつつあるといえる。また、ドイツでは、輸出品の高付加価値化が進んでいる(図表15)。輸出品の 非価格競争力の高まりを背景に、為替変動にかかわらず安定的な輸出を維持することが可能となる一方、 ユーロ安によってドイツが数量面で得られるメリットが小さくなっていると推測される。  以上を踏まえると、先行きも、ユーロ安による輸出数量の押し上げ効果は限られるとみられるものの、 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 ▲15 ▲10 ▲5 0 5 10 (図表12)ユーロ圏の資本ストック循環図 (資料)DG ECFIN を基に日本総研作成 (注1)2015∼2016年はDG ECFINの予測値。 (注2)期待成長率の双曲線の算出には、資本ストック係数の変化 率・除却率の2000∼2011年の平均値を利用。 固 定 資 本 形 成 ︵ 前 年 比 、 % ︶ 前年の固定資本形成/前年の資本ストック(%) 2000年 2006年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 期待成長率:0% 1% 2% ▲25 ▲20 ▲15 ▲10 ▲5 0 5 10 15 20 25 実質輸出(左目盛) 2014 2012 2010 2008 2006 2004 2002 2000 ▲25 ▲20 ▲15 ▲10 ▲5 0 5 10 15 20 25 ユーロ実質実効為替レート (2カ月先行、右逆目盛) (図表13)ドイツの実質輸出と為替レート(前年比) (%) ユーロ安 (%) (年/月) (資料)ECB “Monthly Bulletin”、 Bundesbank “Balance of payments

statistics”

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先行き、新興国景気の減速が緩和してくれば、輸 出の増加ペースは緩やかながらも加速してくるこ とが期待される。  ちなみに、近年、ドイツ景気は域外景気に左右 されやすい構造になっている。実際、ドイツの名 目GDPに対する域外向け輸出の割合は足許で20 %台半ばまで上昇しているほか、ドイツ製造業が 国内で生産した財に占める海外向け売上の割合も、 域外向けがけん引するかたちで5割近くまで上昇 している(図表16)。域外景気の動向は、ユーロ 圏GDPの約3割を占めるドイツ経済の先行きを みるうえでも重要性を増しているといえる。 (4)ユーロ圏の物価と金融政策の行方  この間のユーロ圏の消費者物価上昇率(HICP、 前年比)をみると、2014年半ばにかけての景気低 迷を受け、緩やかな低下基調が続き、年末にかけ ては原油価格の急落もあり、一時マイナスに転じ、 デフレ懸念が強まった(図表17)。ECBは、2014 年秋以降、カバードボンド(CB)や資産担保証 券(ABS)の買い入れを開始していたものの、 デフレ懸念が強まるなかで、1月22日には、資産 買い入れ対象として新たに国債等の公的資産を加 ▲6 ▲4 ▲2 0 2 4 6 8 中東 <5.0> アメリカ <13.5> 東南 アジア <6.8> 中国 <10.5> ロシア <4.1> スイス <6.5> ポー ランド <6.7> イギリス <11.8> (図表14)ドイツ域外向け輸出のウエート変化幅 (%ポイント)

(資料)Bundesbank“Balance of payments statistics”

(注1)各国の2014年のウエートから2000年のウエートを引いた数 値。 (注2)< >内は2014年の域外向け輸出に占めるウエート。 80 85 90 95 100 105 110 115 2014 2012 2010 2008 2006 2004 2002 2000 (図表15)ドイツの輸出高付加価値度 (資料)ドイツ連邦統計局、Bundesbankを基に日本総合研究所作 成 (注)高付加価値度=(輸出金額/輸出数量)╱輸出物価指数、にて 算出。 (2010年=100) 高付加価値化 (年/月) 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (図表16)ドイツ製造業の海外向け売上と域外向け輸出 (資料)ドイツ連邦統計局、Bundesbankを基に日本総合研究所作 成 (注)輸出依存度は、名目GDPに対する域外向け輸出の割合。 (%) 域外向け輸出依存度 (右目盛) ドイツの製造業が国内で生産 した財のうち海外で売り上げ た財の割合(左目盛) (%) (年/期、月) ▲1.5 ▲1.0 ▲0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 エネルギー(左目盛) 食料品(左目盛) コア(左目盛) 2015 2014 2013 2012 2011 2010 HICP(左目盛) ▲5 0 5 10 15 20 25 30 35 家計の物価見通し(先行き12カ月、右目盛) (図表17)ユーロ圏のHICP(前年比)と家計の物価見通し (%) (「上昇」−「下落」、%) ECBの目標上限 (年/月) (資料)Eurostat

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えた「拡大資産買い入れプログラム(APP、以下では量的緩和)を導入し、資産買い入れ規模を月600 億ユーロ程度に拡大することを決定した。3月6日には、国債等の「公的資産買い入れプログラム (PSPP)」の詳細を発表し、同9日から国債等の買い入れを開始した。ECBは量的緩和を「2016年9月 まで、ないしは、インフレ率が2%を小幅下回る水準という中期的な目標に整合的なパスに調整される まで」継続する方針を示している。  足許にかけては、原油安の一服やECBの大胆な金融緩和の効果もあり、ユーロ圏のデフレ懸念はひ とまず後退している。2014年12月以降マイナス圏での推移が続いた消費者物価上昇率(HICP、前年比) は、エネルギー価格の下押し圧力の緩和を主因に、5月にはプラス圏へ浮上している(前掲図表17)。 また、2015年1月にECBが量的緩和の導入を決定して以降、家計・企業の物価見通しや市場参加者の 中期的な物価見通しの低下に歯止めがかかっており、インフレ期待の低下が消費や投資の先送りを招き、 それが更なるインフレ期待の低下につながるという悪循環に陥るリスクは後退している(図表18)。先 行き、2016年初めにかけて前年比でみた原油安による物価下押し圧力が減衰する一方、ユーロ安による 物価押し上げ圧力が続くことが予想され、ユーロ圏のインフレ率は徐々にプラス幅が拡大していく見込 みである(図表19)。  もっとも、コア・インフレ率の上昇ペースは緩やかにとどまる公算が大きい。ユーロ圏では、景気が 持ち直してはいるものの、南欧諸国を中心に大幅な需給ギャップが残っているほか、労働コストが依然 高止まりし、先行きの労働コストの圧縮が不可避な情勢にあるなど、デフレ圧力が残存している(図表 20、21)。この結果、ユーロ圏のインフレ率は、ECBが中期的な目標とする2%弱を大きく下回る水準 で推移し、ディスインフレ傾向が長期化する公算が大きい。ユーロ圏のインフレ率がECBの中期的な 物価目標に整合的な経路に戻るのに時間を要するとみられるなか、ECBは2016年9月末以降も暫く量 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 5年先5年ブレーク・イーブン・ スワップ・フォワード・レート 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 ▲20 ▲10 0 10 20 30 製造業企業の販売価格予想DI(左目盛) 1.6 1.7 1.8 1.9 2.0 2.1 ECBの専門家予測調査における 5年先の予想インフレ率(右目盛) (図表18)ユーロ圏の期待インフレ率指標 (「上昇」−「下落」、%) (%) (%) (年/月) (資料)DG ECFIN、ECB、Bloomberg L.P.を基に日本総合研究所 作成 (図表19)原油価格とユーロ相場(前年比) (資料)Eurostat (ドル/バレル) ↑原油高 ↑ユーロ高 (ユーロ/ドル) 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 北海ブレント原油価格(ドル建、左目盛) 2015 2014 2013 2012 2011 2010 (年/月) ↓原油安 ↓ユーロ安 1.05 1.10 1.15 1.20 1.25 1.30 1.35 1.40 1.45 1.50 ユーロの対ドル相場(右目盛)

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的緩和の継続を余儀なくされる見込みである。ユーロ圏の投資不足の解消を後押しするため、あるいは、 一部の国でみられる労働コストの高止まりを背景とする競争力低下などの問題を解決する過程で生じる 人件費圧縮などの痛みを和らげるためにも、ECBが緩和的な金融環境を提供し続けることが必要とな るだろう。 (5)イギリスの賃金の伸びの行方  このように、ユーロ圏では、景気回復にもたつきがみられていたのに対し、イギリスでは、堅調な景 気拡大が続いてきた。イギリスでは、2015年1~3月期はGDP成長率こそ低下したものの、堅調な個 人消費に下支えされ、景気の底堅い推移が続いて いる。失業率の低下が続くなか、インフレ率を上 回るペースで名目賃金が上昇しており、実質所得 の増加が個人消費の押し上げに寄与している(図 表22)。今後は、インフレ率の緩やかな持ち直し が見込まれるなか、個人消費の行方は、賃金の伸 びが一段と高まり、実質所得が増加基調を維持で きるか否かに大きく左右されるとみられる。以下 では、今後のイギリスの賃金上昇の持続性につい て、失業率および労働生産性との関係から検討し たい。  まず、失業率との関係をみると、イギリスの失 業率は5%台半ばまで低下し、BOEが実質的に インフレ・賃金上昇の加速の分岐点とみなす水準 需給ギャップ(左目盛) 2016 2014 2012 2010 2008 2006 2004 2002 2000 ドイツ フランス イタリア スペイン その他 ▲4,000 ▲3,000 ▲2,000 ▲1,000 0 1,000 2,000 3,000 4,000 0.0 0.4 0.8 1.2 1.6 2.0 2.4 予測 コア消費者物価 (HICP、右目盛) (図表20)ユーロ圏の需給ギャップとインフレ率 (資料)DG ECFIN、Eurostat (注)需給ギャップの予測は、欧州委員会予測を基に日本総合研究 所作成。 (億ユーロ) (%) (年) 90 95 100 105 110 115 120 125 130 135 140 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 (図表21)ユーロ圏主要国の単位労働コストの推移 (2000年 =100) ドイツ フランス イタリア スペイン (年/期) (資料)Eurostat (注)後方4四半期移動平均。 (図表22)イギリスの個人消費を取り巻く環境 (資料)ONS (注)小売売上高は数量ベース、名目賃金は賞与を除く、失業率 は、ILO基準。 (%) (%) ▲4 ▲2 0 2 4 6 8 名目賃金(前年比、左目盛) 小売売上高(前年比、左目盛) 消費者物価(前年比、左目盛) 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 3 4 5 6 7 8 9 失業率(右目盛) (年/月)

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(5%程度)に近づきつつあり、名目賃金の上昇圧力が徐々に高まりつつあると推察される(図表23)。 もっとも、近年では、失業率の水準に比べて、賃金上昇率が低位にとどまっている。この背景の一つと して、雇用者の就業形態の変化が指摘できる。2010年初めにかけてフルタイム従事者が大幅に減少した 一方、相対的に賃金水準の低いパートタイム従事者の増加が続いた結果、パート比率が上昇した(図表 24)。2012年以降、パート比率の上昇は頭打ちとなっているものの、依然として高水準で推移している。 これらを踏まえると、賃金上昇ペースは緩やかにとどまるだろう。  次に、金融危機以降、総じて労働生産性の低迷が続いていることが実質ベースでの賃金上昇の抑制要 因となる可能性がある(図表25)。労働生産性が低迷してきた背景としては、金融危機以降の設備投資 低迷による資本装備率の低下のほか、低スキル労働者の増加が指摘できる(図表26)。今後、労働需給 4 5 6 7 8 9 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 (図表23)イギリスの失業率と賃金上昇率の関係 (資料)ONS (注)名目賃金は、週平均賃金(賞与除く)。 2010∼2012年 2015年3∼5月 失業率(%) 名 目 賃 金 上 昇 率 ︵ 前 年 比 、 % ︶ リーマン・ショック前 (2005/1∼2008/9) リーマン・ショック後 (2008/10∼) 25 26 27 28 パート比率(右目盛) (図表24)イギリスの就業形態別雇用者数 (2008年Q1からの累計) (資料)ONS (注)期限付契約の労働者や季節労働者等が臨時雇用者に分類。 (年/月) (%) (万人) ▲100 ▲80 ▲60 ▲40 ▲20 0 20 40 60 80 100 パートタイム(左目盛) 臨時雇用(左目盛) フルタイム(左目盛) 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 (図表25)イギリスの労働生産性と賃金上昇率の関係 (資料)ONS (注)実質賃金上昇率は、「名目賃金上昇率−CPI上昇率」で算出。 労働生産性上昇率(%) リーマン・ショック前(2005年Q1∼2008年Q3) リーマン・ショック後(2008年Q4∼2015年Q1) 実 質 賃 金 上 昇 率 ︵ 前 年 比 、 % ︶ ▲4 ▲3 ▲2 ▲1 0 1 2 3 4 ▲5 ▲4 ▲3 ▲2 ▲1 0 1 2 3 4 2015年Q1 2005年Q1 2014 2013 2012 2011 2010 ▲50 0 50 100 150 200 低スキル 中スキル 高スキル (図表26)イギリスのスキル度別の雇用者数の増減 (2010年Q1からの累計) (資料)ONS、BOE (万人) (年/期) 計

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のタイト化により名目賃金上昇率が高まったとしても、労働生産性の低迷が続けば、賃金上昇分が価格 に転嫁されてインフレを引き起こし、実質賃金の抑制要因となる、あるいは、人件費の上昇が企業収益 の減少につながり、賃上げの持続性を損なう可能性がある。一方で、足許では、設備投資が緩やかなが らも回復に転じるなど、労働生産性の低下傾向に歯止めがかかる兆しも出始めている。今後、原油安等 によるインフレ率の低下が実質賃金を押し上げる効果は減衰していくとみられるものの、設備投資の回 復に伴い、労働生産性が緩やかに持ち直していけば、実質ベースでも賃金が底堅く推移する、すなわち、 物価と名目賃金の緩やかな伸びが両立すると予想している。  賃金の動向は、景気の行方のみならず、BOEの金融政策の先行きを展望するうえでもカギとなる。 2014年末から2015年初にかけてBOEの利上げ観測が大きく後退したのは、インフレ率の低下だけでは なく、名目賃金の伸びが低迷した影響も大きい。今後、インフレ率を上回るペースで名目賃金の上昇が 続けば、BOE内で利上げに向けた議論が徐々に強まってくるだろう。 3.2015~2016年の欧州経済見通し  以上の分析を踏まえたうえで、2015年後半から2016年の欧州経済を展望する。 (1)ユーロ圏  ユーロ圏全体では、個人消費の拡大などに下支えされ、緩やかな景気の回復が続く見込みながら、構 造的な成長抑制要因が残るなか、2016年にかけて1%台前半から半ば程度の低成長が続く見通しである (図表27)。ユーロ圏景気が持続的かつ自律的な景気回復軌道に乗るには、ECBが緩和的な金融環境を 提供し続けるなかで、構造的な高失業の削減や、投資拡大、域内の競争力格差の是正などに取り組むこ とが不可欠である。  主要国のうち、ドイツでは、良好な雇用・所得環境を背景に、個人消費が底堅さを維持し、景気の拡 大が続く見込みである。もっとも、域内外景気の持ち直しが緩慢ななか、輸出の大幅な増加は見込み難 く、景気拡大ペースは緩やかにとどまる見込みである。一方、ドイツ以外では、労働市場改革の成果が 出ているスペインなどで、堅調な景気回復が続く公算であるものの、フランスやイタリアでは、雇用・ (図表27)ユーロ圏経済見通し (前年比、実質GDPの四半期は季節調整済前期比年率、%) 2015年 2016年 2014年 2015年 2016年 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 (予測) (予測) 実質GDP 1.5 1.3 1.4 1.5 1.6 1.6 1.6 1.7 0.8 1.3 1.6 個人消費 1.9 1.6 1.5 1.5 1.4 1.4 1.5 1.6 1.0 1.7 1.5 政府消費 2.2 0.0 0.2 0.2 0.3 0.3 0.3 0.3 0.6 0.9 0.3 総固定資本形成 3.1 1.2 1.2 1.6 2.0 2.0 2.2 2.4 1.2 1.5 1.8 在庫投資 0.3 0.0 0.1 0.0 0.1 0.1 0.0 0.0 ▲0.1 0.1 0.1 純輸出 ▲0.9 0.2 0.2 0.3 0.2 0.3 0.3 0.3 0.0 ▲0.1 0.3 輸 出 2.4 2.9 3.0 3.3 3.3 3.4 3.4 3.5 3.8 3.2 3.2 輸 入 4.9 2.7 2.8 2.8 3.0 3.0 3.1 3.1 4.1 3.9 2.9 (資料)Eurostatなどを基に日本総合研究所作成 (注)在庫投資、純輸出の年間値は前年比寄与度、四半期値は前期比年率寄与度。

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所得環境に厳しさが残るなか、回復ペースの一段の加速にはなお時間を要するとみられる。  ユーロ圏のインフレ率は、原油価格下落の影響が一巡するにつれて、徐々にプラス幅が拡大していく 見込みである。もっとも、需給ギャップの解消に時間を要するとみられるなか、ECBの物価目標を大 きく下回る水準で、ディスインフレ傾向が長期化する公算が大きい。 (2)イギリス  イギリスでは、雇用・所得環境の一段の改善や政府の住宅購入支援策に下支えされた住宅需要の持ち 直しが見込まれるなか、個人消費が堅調に推移し、2%台での成長が続く見通しである(図表28)。  イギリスのインフレ率は、原油価格下落の影響が一巡し、かつ、需給ギャップの解消が進むなかで、 プラス幅が拡大していく見込みである。BOEは、インフレ率が物価目標に整合的な経路に戻ると予想 される2016年入り後に利上げに着手すると予想される。 4.リスクシナリオ  これまでに述べてきたメインシナリオに対するリスクとして、以下の3点を指摘したい。  第1が欧州での政治リスクの高まりである。欧州では、2015年1月に実施されたギリシャの総選挙で 緊縮財政に消極的な急進左派連合(SYRIZA)が勝利し、同党党首のチプラス氏が首相に就任して以降、 ギリシャ政府とEUなど債権団との間で、今後のギリシャ向け金融支援策やその前提となる緊縮財政策 を巡る交渉が本格化した。もっとも、両者の主張は溝が埋まらない状況が続き、6月末近くには、ギリ シャ政府がEUの求める財政緊縮案の受け入れ是非を問う国民投票を7月5日に実施すると表明し、そ れまでの支援延長を要請したのに対し、ユーロ圏財務相会合が同提案を拒否したことから、交渉が事実 上決裂した。その結果、ギリシャ政府は銀行休業と資本規制の導入に踏み切らざるを得なくなったほか、 6月末には、ギリシャの第2次支援プログラムが失効し、返済期日となっていたIMF融資は「延滞」状 態となった。7月5日に実施された国民投票では、緊縮策の受け入れ反対が賛成を大きく上回ったもの の、ドイツは、その後の交渉過程で、ギリシャが速やかにより厳しい改革案を示すか、さもなければ一 時的にユーロ圏を離脱するかの提案を行ったとされる。結論は7月12~13日のユーロ圏首脳会議に持ち 込され、ギリシャが付加価値税改革や年金改革を法制化すること等を条件に、ギリシャ向け第3次支援 (図表28)主要国別経済成長率・物価見通し (前年比、実質GDPの四半期は季節調整済前期比年率、%) 2015年 2016年 2014年 2015年 2016年 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 (予測) (予測) ユーロ圏 実質GDP 1.5 1.3 1.4 1.5 1.6 1.6 1.6 1.7 0.8 1.3 1.6 消費者物価指数 ▲0.3 0.2 0.3 0.7 1.2 1.3 1.4 1.5 0.4 0.2 1.4 ドイツ 実質GDP 1.1 1.3 1.5 1.6 1.6 1.6 1.7 1.7 1.6 1.4 1.6 消費者物価指数 ▲0.2 0.4 0.5 0.9 1.5 1.5 1.6 1.7 0.8 0.4 1.6 フランス 実質GDP 2.5 1.0 1.0 1.1 1.2 1.2 1.3 1.3 0.2 1.2 1.2 消費者物価指数 ▲0.2 0.3 0.2 0.6 1.0 1.1 1.1 1.2 0.6 0.2 1.1 イギリス 実質GDP 1.5 2.6 2.5 2.5 2.5 2.4 2.3 2.2 3.0 2.5 2.5 消費者物価指数 0.1 0.0 0.4 0.9 1.5 1.6 1.7 1.7 1.5 0.4 1.6 (資料)Eurostat、ONSなどを基に日本総合研究所作成

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策の交渉を開始することが基本合意された。これにより、ギリシャのユーロ離脱(Grexit)はひとまず 回避された。もっとも、ギリシャ情勢の先行きには引き続き注視が必要である。ギリシャ経済は疲弊し ており、緊縮財政が継続されることにより再び政局が不安定化するリスクを抱えている。同国の景気回 復と財政健全化の両立には大幅な債務再編が必要となる可能性があるものの、最大支援国のドイツがそ れに消極的な姿勢を示しており、このまま債務問題が安定化に向かうかどうかは予断を許さない状況に ある。  ギリシャ以外の欧州でも、長引く景気低迷等から、国民の既存政党・EUへの不満が高まっており、 反緊縮・反EUなどを掲げるポピュリズム政党が急速に台頭している。こうしたなか、2015年後半から 2016年には、ポルトガル、スペインをはじめ、ユーロ圏各国で国政選挙・地方選挙の実施が予定されて いる。今回のギリシャでの混乱を踏まえ、反緊縮を掲げる政党の支持拡大には歯止めがかかる可能性が あるものの、厳しい雇用環境におかれてい る若年層の不満がくすぶっており、こうし た政党が躍進すれば、政治の先行き不透明 感の強まりが景気の下押し要因となる恐れ がある(図表29)。また、イギリスでは、 2017年末までに実施されるEU離脱の是非 を問う国民投票を前に、EU加盟条件の見 直しを巡る交渉が本格化する見込みである。 交渉が難航すると、EU離脱の懸念が高ま り、金融市場の不安定化や企業の投資抑制 を招くリスクがある。  第2が新興国景気の下振れである。中国やブラジルをはじめ、新興国では景気の減速傾向が鮮明にな っている。景気減速に伴う資金流出に加え、アメリカ金利の上昇を受けた高金利通貨の相対的な魅力の 低下などを背景に、新興国では総じて通貨が軟調に推移している。先行き、米FRBの利上げを契機に 通貨安が加速し、新興国景気が一段と減速すれば、海外景気の影響を受けやすくなっているドイツ景気 にとって大きな下振れリスクになるとみられる。  第3が地政学リスクの高まりである。イラクやリビア、イランなど中東産油国では、国内紛争に加え、 過激派組織「イスラム国」の台頭など、地政学リスクがくすぶっている。これらの産油国では、先行き 原油の増産が見込まれているものの、紛争の激化などから原油生産や輸出に支障が生じれば、原油価格 が再び急騰し、ユーロ圏、イギリスで景気回復のけん引役になっている個人消費の腰折れを招くリスク がある。また、欧州では、ウクライナ問題をめぐるロシアとの対立が長期化するなか、天然ガス供給途 絶への懸念がくすぶり続けており、今後も注視が必要だろう。 研究員 井上 肇 (2015. 7. 17) (図表29)2015、2016年の欧州の主な選挙日程 日 程 選 挙 争点・展望 2015年 9~10月頃 ポルトガル総選挙 反緊縮政党の躍進 〃 ポーランド議会選挙 市 場 重 視・ 親EUか ら の転換 9月27日 スペイン・カタルーニャ州議会選挙 独立を巡る動き 11~12月 スペイン総選挙 反緊縮政党の躍進 2016年 春 アイルランド総選挙 ポピュリズム左派政党の躍進 5月 スコットランド議会選挙 独立を巡る動き ~2017年末 イギリス国民投票 EU離脱の是非 (資料)各種報道を基に日本総合研究所作成

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