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ISSN 0386-5878

土木研究所資料 第4187号

土木研究所資料

平成 16 年新潟県中越地震により

発生した地すべりの実態調査

平成 22 年 12 月

独立行政法人土木研究所

土砂管理研究グループ

雪崩・地すべり研究センター

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土 木 研 究 所 資 料

第 4187 号 2010 年 12 月

平成 16 年新潟県中越地震により

発生した地すべりの実態調査

雪崩・地すべり研究センター 上 席 研 究 員 野 呂 智 之

前 上 席 研 究 員 石井靖雄

*)

専 門 研 究 員 ハスバートル

総括主任研究員 丸 山 清 輝

交 流 研 究 員 中 村 明

要旨

*:現在筑波大学

キーワード:地すべり、中越地震、実態調査

平成 16 年新潟県中越地震によって多数の地すべりが発生し、中山間地帯に深刻な 被害をもたらした。そこで、中越地震によって発生した地すべりの実態を把握する ため、芋川流域及びその周辺において空中写真判読、地形解析、現地調査によって 地震により発生した地すべりを抽出した。また、調査範囲において、地震による地 すべりの発生の特徴をまとめ、地すべりの発生と地形、地質的な特徴との関連性に ついて考察した。その他、各地すべりについて、その位置情報、地震前後の平面、 断面など諸元を調査表にまとめた。

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ま え が き

平成16年新潟県中越地震によって数多くの地すべりが発生し、道路やライフラインの寸断、 河道閉塞による天然ダムの形成など中山間地域に甚大な被害をもたらした。本資料では、中越 地震による地すべりの実態を明らかにすることを目的とし、地震によって地すべりが数多く発 生した芋川流域を中心に地すべりの規模、平面形状比(長さ/幅)、移動量などについて調査し、 地すべり斜面の地形・地質的特徴と地すべりの発生との関係などについて考察を行った。また、 各地すべりに対して、その位置情報、規模、地震発生前の地形的な特徴などを一覧表にまとめ、 地震前後の平面図や断面図を巻末に整理した。 本資料は、雪崩・地すべり研究センターが平成 17 年度から実施した調査、解析の結果をま とめたものである。本資料を、今後の地震による地すべりの研究資料として活用していただけ れば幸いである。 本調査の実施にあたり、国土交通省北陸地方整備局湯沢砂防事務所、新潟県土木部からは地 質調査報告書を提供していただいた。また、地震発生前の DEM データは、「文部科学省科学技 術振興調整費による委託を受けて行う研究開発(活褶曲地帯における地震被害データアーカイ ブスの構築と社会基盤施設の防災対策への活用法の提案、研究者代表:小長井一男)」を使用 した。関係各位に御礼申し上げます。 平成22 年 12 月

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目 次

まえがき 1. 調査目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2. 調査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2.1 調査範囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2.2 調査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 3. 調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 3.1 地すべりの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 3.2 地すべりの規模・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 3.3 地震による地すべりの移動量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 3.4 地震による地すべりの移動方向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 3.5 既存地すべり地形における地震による地すべりの移動範囲と発生位置・・・・・・・・・・・・・・12 3.6 地すべりの平面形状比・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 3.7 地すべり発生場の地形的特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 3.7.1 地すべり発生場の地形と地すべりの規模、移動量、平面形状比との関係・・・・・・・・・17 3.7.2 既存地すべり地形の地形条件と地すべり発生率との関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 3.8 地すべり発生場の地質的特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 3.8.1 基盤地質と地すべりの発生・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 3.8.2 基盤構造と地すべりの発生・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 3.8.3 地震による地すべりのすべり面の地質・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 4. まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 巻末資料 1 中越地震により発生した地すべり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 巻末資料 1.1 中越地震により発生した地すべり一覧表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 巻末資料 1.2 中越地震により発生した地すべりの位置、平面図、断面図・・・・・・・・・・・・・・・・・38 巻末資料 2 中越地震により発生した地すべりのすべり面に関する調査文献一覧表・・・・・・・・・・231

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1.調査目的

平成16年新潟県中越地震(M6.8; 以降中越地震と呼ぶ)によって数多くの地すべりが発生し た。これらの地すべりによってライフラインの寸断、河道閉塞(天然ダム)などが生じ、中山 間地域に深刻な被害をもたらした。これまでに、中越地震によって発生した地すべり(以降、 地震による地すべりと呼ぶ)についてさまざまな研究がなされている(大八木ほか, 2005; 千 木良, 2005 ; Sato et al., 2005; Chigira and Yagi, 2006; 関口・佐藤, 2006; 八木ほか, 2007;

Has et al., 2010)。これらの研究により、地震による地すべりの分類や地すべり発生場の地形・ 地質的な特徴、地すべりの分布と震度及び最大加速度との関係、地すべりの分布や規模と震央 及び震源断層との位置関係などが明らかになりつつある。しかし、地震による地すべりの長さ、 幅、面積など地すべりの規模の特徴、地震発生前から存在する地すべり地形(以降、既存地す べり地形と呼ぶ)に占める地震による地すべりの発生位置や移動範囲、地すべりの長さに対す る幅の比(以下、平面形状比と呼ぶ)の特徴、地震による地すべりの発生場の地形・地質と地す べりの規模や平面形状比との関係などについての報告はみられない。 そこで、本調査では地震による地すべりの規模、移動量の特徴及び既存地すべり地形におけ る発生位置と移動範囲の特徴を明らかにすることを目的とし、中越地震により発生した地すべ りの長さ、幅、面積、移動量と平面形状比を調査した。また、地震による地すべりの規模や平 面形状比を同一地域内の既存地すべり地形と比較した。さらに、地震による地すべりの規模、 平面形状比と地すべり発生場の地形・地質的特徴との関連性についても考察を行った。

2.調査方法

2.1 調査範囲 調査範囲は図-2-1-1 に示す範囲とした。調査範囲は東山丘陵の中南部に位置し、芋川流域と その周辺地域を含む。調査範囲の選定は、中越地震によって地すべりが集中したことや、地震 前後の数値標高データ(DEM)などの地形データの入手が可能なことを考慮して決定した。 東山丘陵は稜線標高が 300~700mの丘陵地帯である。調査地の地質は主に新第三紀から第四 紀の堆積岩からなり、地質構造は北北東-南南西方向の軸をもつ活褶曲によって特徴づけられ る(柳沢ほか, 1986; 小林ほか, 1991)。また、調査地周辺には既存地すべり地形が多数存在す る(防災科学技術研究所, 2010)。

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図-2-1-1 調査範囲 ★印は震央を示す

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2.2 調査方法 本調査では、地震発生前後の空中写真判読や現地調査によって地震による地すべり及び既存 地すべり地形を抽出した。ここで扱う「地すべり」は、移動体の層厚が比較的厚く、移動後も 移動体の原型がある程度保持されているもので、縮尺 1:20,000 程度の空中写真で判読できる ものとした。なお、明らかに表層崩壊と土石流と見られるものは調査対象外とした。 調査では、空中写真判読により抽出した地すべりブロックを GIS 上にポリゴン化し、その面 積を計算した。また、地震前の地形図は、土木学会 2mメッシュ DEM(1975、1976 年;図-3-1-1 に「2mDEM」として示した実線の範囲)、一部は北海道地図(株)の 10mメッシュ DEM(図-3-1-1 に「10mDEM」として示した破線の範囲)を使用した。地震後の地形図は、中日本航空の 2mメ ッシュ DEM(2004 年 10 月 24 日)を使用した。これらの DEM を用い、各地すべりブロックの地 震発生前後の平面図と主測線縦断面図を作成した。 本調査における調査項目は表-2-2-1 に示すとおりである。調査項目には地震による地すべり の規模(長さ、幅、面積)、移動量、移動方向などと、地すべり発生場の地震発生前の地形と地 質的な特徴を表す項目が含まれる。 表-2-2-1 に示した調査項目のうち、地すべりの長さ、幅、移動量、地すべり発生前後の斜面 勾配、地すべりの発生標高、地すべり発生前斜面比高は図-2-2-1 に示す定義により計測した。 地すべりの長さは、地すべり発生後の地すべり移動体の最大長さとし、幅は推定される移動方 向に垂直な方向の最大幅とした。また、地すべりの移動量は、斜面の地震前後の上端、下端に おける水平移動距離の平均値とした。地すべりの発生標高は地震による地すべりの冠頂の標高 とし、地すべり発生前斜面比高地震前斜面の上端と下端の標高差とした。その他、地すべり発 生前後の斜面勾配は、それぞれ地震前、後の斜面の下端と上端を結んだ直線が水平面となす角 度とした。ここでは、図-2-2-1 中の地震前上端は既存地すべり地形の頂点に相当し、地震後上 端は地震による地すべりの頂点、下端は地すべりの舌端部に相当する。 表-2-2-1 の調査項目は巻末資料 1.1 に示した。また、各地すべりの位置、平面図、断面図な どは巻末資料 1.2 に記載した。地すべりの位置を示した地形図は、国土地理院発行の1:25000 の地形図「片貝」、「半蔵金」、「小千谷」及び「小平尾」の一部を使用したものである。

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表-2-2-1 調査項目 説 明 長さ 地すべり移動体の最大長さ 幅 地すべり移動方向に垂直な最大幅 面積 地すべり移動体の面積 平面形状比 地すべりの長さ/幅 移動量 地震前後における下端、上端の水平移動距離の平均値 移動方向 地すべり移動体の移動方向 地すべり面積率 既存地すべり地形の面積に対する地震による地すべり の面積の割合 地すべり発生前斜面勾配 地震発生前斜面の下端と上端を結んだ直線が水平面と なす角度 地すべり発生前斜面比高 地震発生前斜面の上端と下端の標高差 下端勾配 既存地すべり地形下端と下部遷急点を結んだ直線が水 平面となす角度 侵食最大深 接峰面と既存地すべり地形との鉛直方向の差の最大値 縦断的凸度 既存地すべり地形の斜面中点の比高/下端と上端の比 高 縁辺侵食率 既存地すべり地形の縁辺長に占める侵食地形の長さの割合 発生標高 地震によって発生した地すべりの冠頂の標高 地すべり発生後斜面勾配 地震発生後斜面の下端と上端を結んだ直線が水平面となす角度 基盤地質 地震によって発生した地すべりの基盤岩の構成 基盤構造 地震によって発生した地すべりの基盤岩の傾斜と斜面 方位との差に基づく基盤構造分類(流れ盤、中間、受 け盤) すべり面の地質 地震による地すべりのすべり面形成地層 項 目 地 す べ り 発 生 場 の 地 質 地 震 後 地 震 前 地 震 に よ る 地 す べ り の 規 模、 そ の 他 地 す べ り 発 生 場 の 地 形

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図-2-2-1 地すべりの長さ、幅、移動量、斜面勾配、 発生標高及び斜面比高の算出方法の模式図

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3.調査結果

3.1 地すべりの概要 図-3-1-1 は、調査範囲における地震による地すべりと既存地すべり地形の分布図である。調 査範囲内では既存地すべり地形 1,050 箇所が判読された。地震による地すべりは 96 箇所あり、 その内 70 箇所が既存地すべり地形内で発生し、全体の約 73%を占めた(ハスバートルほか, 2009)。 3.2 地すべりの規模 地震による地すべりの規模の特徴を明らかにするため、地すべりの長さ、幅と面積の頻度分 布を調べた。また、地震による地すべりと既存地すべり地形の規模を比較した。 (1)地すべりの長さ 図-3-2-1 に地震による地すべりと既存地すべり地形の長さの頻度分布を示した。長さの平均 値は、地震による地すべり(EQ_L)が 139mであり、既存地すべり地形(PE_L)の 257mに比べ て小さい。 既存地すべり地形は、長さ 100~149mの相対度数が 21.7%と最も高く、200m未満のものが 全体の 51.2%であった。また、長さ 500m以上の大規模な地すべり地形が全体の 9.7%を占め た。これに対し、地震による地すべりでは、長さ 50~99mの相対度数が 37.5%と最も高く、次 いで 100~149mの 27.1%であった。長さが 200m未満の地すべりは全体の 81.3%を占め、調査 範囲における地震による地すべりの多くは長さが 200m以下の規模であった。 このように、地震による地すべりの長さは、既存地すべり地形の長さに比べて小さい傾向を 示した。 (2)地すべりの幅 図-3-2-2 に地震による地すべりと既存地すべり地形の幅の頻度分布を示した。幅の平均値は、 既存地すべり地形の 195mに対し、地震による地すべりは 117mと小さい。 既存地すべり地形と地震による地すべりはともに、幅 50~99mで相対度数が最も高く、それ ぞれ 29.0%と 43.8%であった。幅が 150m未満のものは、既存地すべり地形が 53.6%であるの に対し、地震による地すべりでは 77.1%であった。また、幅 500m以上の大規模なものは、既 存地すべり地形の 6.6%に対し、地震による地すべりにはなかった。 地すべりの長さと同様に、地震による地すべりの幅は既存地すべり地形のそれに比べ小さい 値を示した。 (3)地すべりの面積 図-3-2-3 に地震による地すべりと既存地すべり地形の面積の頻度分布を示した。地震による

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0 10 20 30 40 5049 5099 100149 150199 200249 250299 300399 400499 5000 20 40 60 80 100 EQ_L度数 PE_L度数 EQ_L累積度数 PE_L累積度数 相対 度数 ( % ) 地すべりの幅(m) 相対 累積 度数 ( % ) 平均値(m) E Q_ L:117 PE _ L:195 図-3-2-2 地すべりの幅の頻度分布 図-3-2-1 地すべりの長さの頻度分布 相対 度数 ( % ) 0 10 20 30 40 5049 5099 100149 150199 200249 250299 300399 400499 5000 20 40 60 80 100 EQ_L度数 PE_L度数 EQ_L累積度数 PE_L累積度数 地すべりの長さ(m) 相対 累積 頻度 ( % ) 平均値(m) E Q_ L:139 PE _ L:257 図-3-2-3 地すべりの面積の頻度分布 0 20 40 60 80 1001.9 2. 03.9 4. 05.9 6. 07.9 8. 09.9 10 .019.9 20.00 20 40 60 80 100 EQ_L度数 PE_L度数 EQ_L累積度数 PE_L累積度数 . 相対度数( %) 地すべりの面積(ha) 相対累積 度数( % ) 平均値( h a) EQ_L: 1 . 5 PE_L: 5 .6

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地すべりの平均値は 1.5ha で、既存地すべり地形の 5.6ha に比べて小さかった。地震による地 すべりと既存地すべり地形の面積の相対度数は類似し、いずれも 2.0ha 未満のものが最も高く、 前者が 76.0%、後者が 48.1%であった。面積が 10.0ha 以上の大規模なものは、既存地すべり 地形では 6.4%であるのに対し、地震による地すべりでは 1.0%であった。 このように、地震による地すべりの面積は既存地すべり地形に比べて小さい傾向を示した。 3.3 地震による地すべりの移動量 地震による地すべりの移動量の頻度分布は図 3-3-1 に示すとおりであった。地震による地す べりの移動量の平均値は 27.3mであった。 地すべりの移動量の相対度数は 11~20mのものが 29.2%と最も高く、次いで 21~30mの 18.8%であった。移動量が 30m以下の地すべりは全体の 63.5%を占めた。また、50mを超える 移動量があった地すべりは 8.3%あり、ほとんどの地震による地すべりの移動量は 50m以下で あった。 図-3-3-1 地すべりの移動量の頻度分布 18.8 2.1 2.1 29.2 10.4 17.7 1.0 15.6 3.1 93.8 91.7 81.3 94.8 96.9 96.9 100.0 63.5 44.8 15.6 0 10 20 30 4010 1120 2130 3140 4050 5160 6170 7180 8190 91100 0 20 40 60 80 100 相対度数 相対累積度数 相対 度数 ( % ) 相対 累積 度数 ( % ) 地すべりの移動量(m) 平均値: 2 7 . 3 m

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3.4 地震による地すべりの移動方向

地震による地すべりの移動方向と震源断層との関連性を検討するため、地すべりの移動方向 を調べ、調査範囲のメッシュ毎の斜面方位(地震前の DEM より算出)に占める地すべりブロッ クの方位メッシュ数の割合(地すべり発生率)を調べた。

中越地震の震源断層は N36°E の走向、北西傾斜の逆断層で、断層の下盤に対する上盤のす

べり方向は 92°である(Hikima and Koketsu, 2005)。そのため、断層すべりの断層走向に垂

直な成分の方位は 126°になる(図-3—4-1)。この断層走向に垂直な方位 126°を基準に、地震 によって地すべりが発生した斜面の方位を表-3-4-1 のように区切り、地すべりの発生率を求め、 図-3-4-2 にそのヒストグラムを示した。地すべり発生率は、方位が 148.5~193.5°で 1.67% と最も高く、次いで 58.5~148.5°の 1.47~1.48%であった。方位が 58.5~193.5°の地すべ り発生率は 1.55%で、その他の方位の発生率 0.98%に比べて高い。地震による地すべりの発生 は、震源断層の上盤側のすべり方向の断層走向に垂直な成分である方位 126°を中心とした区 間 58.5~193.5°の範囲で高いことが示された。 上盤のすべり方向 図-3-4-1 震源断層の走向と上盤のすべり方向

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図-3-4-2 地すべりの発生方位と地すべり発生率 円グラフ中の数字は地すべり発生率を、円の外側の 数字は方位を示す。矢印は震源断層の上盤側のすべり 方向の断層走向に垂直な成分を示す 表-3-4-1 地すべり発生方位と地すべり発生率 区分 328.5~ 13.5 13.5~ 58.5 58.5~ 103.5 103.5~ 148.5 148.5~ 193.5 193.5~ 238.5 238.5~ 283.5 283.5~ 328.5 地すべり 発 生率(%) 0.65 0.59 1.48 1.47 1.67 0.88 1.40 1.13

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3.5 既存地すべり地形における地震による地すべりの移動範囲と発生位置 本節では地震による地すべりの既存地すべり地形における移動範囲と発生位置を調査した 結果について述べる。地すべりの移動範囲は、既存地すべり地形内の地震による移動範囲面積 の割合を求め、調査した。 (1)地すべりの移動範囲 地すべり発生面積率の頻度分布は図-3-5-1 に示すとおりであった。地すべり発生面積率が 100%以下のものは 58 箇所で、全体の 82.9%であった。この内、地すべり発生面積率が 10.0% 以下のものは 17 箇所と最も多く全体の 24.3%を占めた。次いで地すべり発生面積率が 10.0~ 20.0%の箇所は 11 で、全体の 15.7%を占めた。一方、地すべり発生面積率が 100%以上のも の(地震によって既存地すべり地形のほぼ全体が移動もしくは拡大して移動したもの)は 12 箇所(全体の 17.1%)あり、このうち 4 箇所が 150%以上で、最大値は 181.0%であった。 このように、地震による地すべりの多くは既存地すべり地形の一部が移動したもので、小規 模なものが多かった。一方、既存地すべり地形が拡大して移動した地すべりも認められた。 図-3-5-1 地すべり発生面積率の頻度分布 17 11 3 5 2 2 5 1 6 1 3 2 2 2 1 1 6 98.6 97.1 94.3 94.3 94.3 91.4 24.3 40.0 48.6 84.3 82.9 74.3 72.9 65.7 52.9 60.0 62.9 88.6 0 5 10 15 2010 .0 20 .030 .0 40 .050 .0 60 .070 .0 80 .090 .0 100.0110 .0 120.0130 .0 140.0150 .0 160.0170 .0 180. 00 20 40 60 80 100 相対度数(%) 相対累積度数(%) 地す べり 箇所数 相対累積 度数 ( % ) 地すべり発生面積率(%)

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(2)地すべりの発生位置 前節で、地震による地すべりの多くは既存地すべり地形の一部が移動したものであることが 示された。そこで、既存地すべり地形に関連する地震による地すべりは、既存地すべり地形の どの位置で発生したのかを調べた。図-3-5-2 に、既存地すべり地形における地震による地すべ りの位置を模式的に示した。ここでは、地震によって既存地すべり地形の面積の 75%以上が移 動したものを、既存地すべり地形の大部分が移動したものと見なし「75%以上」と区分した。 この区分には、既存地すべり地形よりも広い範囲が移動したものも含めている。面積が 75%以 下の地すべりについては、その発生位置に基づき「上部」、「下部」、「側部」と区分し、地すべ り地形の境界と接しておらず既存地すべり地形内に位置するものは「その他」とした。 図-3-5-3 に既存地すべり地形内で発生した 70 箇所を区分した結果と河道閉塞を生じさせた 地すべりの箇所数も示した。既存地すべり地形の「下部」で発生したものが 32 箇所と最も多 く 45.7%を占めた。次いで「75%以上」の 23 箇所で 32.9%であった。「下部」と「75%以上」 に区分された地すべりの割合は 78.5%で、「側部」、「上部」や「その他」に区分された地すべ りと比べて多かった。 調査対象範囲内で河道閉塞(地すべりによって河川が堰き止められたことを指す)を起こし た地すべりは 25 箇所あり、その内 22 箇所が既存地すべり地形内で発生した地すべりによるも のであった。それらは、図-3-5-3 に示したように、既存地すべりの「下部」が移動した地すべ りで 12 箇所、「75%以上」が移動した地すべりで 10 箇所となっていた。

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図-3-5-2 既存地すべり地形における地震による地すべりの位置 実線範囲は既存地すべり地形を、矢印付きの陰影部分は地震による地すべりを 示す。図中数字は、既存地すべり地形における地震による地すべりの発生位置を 示す:①75%以上;②上部;③下部;④側部;⑤その他 図-3-5-3 既存地すべり地形の各部位における 地震による地すべりの割合 32.9 5.7 45.7 11.4 4.3 10 12 0 10 20 30 40 50 「75%以上」 上部 下部 側部 その他 発生位置相対度数 河道閉塞を起こした地すべりの数 相対 度数 ( % )、 箇所 数 地すべりの発生位置

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3.6 地すべりの平面形状比 地震による地すべりの長さと幅の関係を調査し、調査範囲内の既存地すべり地形と比較した 結果を図-3-6-1 に示す。既存地すべり地形の平面形状比は 0.17~7.22 の範囲にあるのに対し、 地震による地すべりの平面形状比は 0.37~5.06 の範囲にある。地震による地すべりの平面形状 比は、既存地すべり地形のそれよりやや狭い範囲を示した。 図-3-6-2 に地震による地すべりと既存地すべり地形の平面形状比の頻度分布を示した。平面 形状比の平均値は、既存地すべり地形の 1.59 に対し、地震による地すべりは 1.37 であった。 地震による地すべりと既存地すべり地形の相対度数は、ともに 1.01~1.50 で最も高くそれぞれ 27.6%と 32.2%で、次いで 0.51~1.00 の 24.9%と 30.2%と類似した傾向を示した。平面形状 比が 1.01 以上のものは、既存地すべり地形では 71.7%であったのに対し、地震による地すべ りでは 62.5%を占めた。長さが幅の 2 倍以上の細長い地すべりは、既存地すべり地形で 25.2% であったのに対し、地震による地すべりでは 14.6%であった。 以上のように、地震による地すべりの平面形状比の頻度分布は既存地すべり地形と類似し、 多くの地すべりは長さが幅に対し大きい傾向が認められた。また、平面形状比が 1.50~2.50 の地すべりは既存地すべり地形の 30.2%に比べて、地震による地すべりでは 18.7%とやや少な かったものの、その差は 10%程度であった。このように、地震による地すべりの平面形状比は、 既存地すべり地形のそれと概ね一致する傾向を示した。

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図-3-6-2 地震による地すべりと既存地すべりの平面形状比の頻度分布 0 10 20 30 40 500.5 0.511.00 1.011.50 1.512.00 2.012.50 2.513.00 3.013.50 3.514.00 4.010 20 40 60 80 100 EQ_L度数 PE_L度数 EQ_L累積度数 PE_L累積度数 平面形状比(地すべりの長さ/幅) 平均値 E Q_ L:1.37 PE _ L:1.59 L W 相 対累積 度数 ( % ) 相対 度数 ( % ) 図-3-6-1 地すべりの長さと幅の関係 0 300 600 900 1200 1500 0 300 600 900 1200 1500 PE_L EQ_L 地 す べりの幅( m) 地すべりの長さ(m) L'/W'=7.22 L'/W'=0.17 L/W=5.06 L/W=0.37

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3.7 地すべり発生場の地形的特徴 3.7.1 地すべり発生場の地形と地すべりの規模、移動量、平面形状比との関係 地震による地すべりの発生は、その発生場の地形と関連を有することが考えられる。そこで、 地震発生前の地形として、斜面比高、斜面勾配、地すべりの発生標高と地すべりの規模、移動 量と平面形状比との関係を調べた。 図-3-7-1 には地すべり発生前の斜面比高と地震による地すべりの面積との関係を示した。両 者には明瞭な相関性が認められなかった。しかし、面積が 2.0ha 以上の大規模な 20 箇所すべて が斜面比高が 50m以上で発生した。 同様に、地すべり発生前斜面の比高と地震による地すべりの平面形状比との関係を調べ、そ の結果を図-3-7-2 に示した。両者の間には明瞭な相関性が認められなかったものの長さが幅の 2 倍以上の細長い地すべりについては、比高が 40m以上の斜面で発生した。 また、地すべり発生前斜面の比高と地震による地すべりの移動量との関係(図-3-7-3)では、 両者の間には明瞭な相関性が認められなかった。しかし、移動量が 40mを超える地すべりは全 て比高が 50m以上の斜面で発生した。 図-3-7-4 に斜面比高と地震による地すべりの平均面積、平均平面形状比を示した。斜面比高 が大きくなるにつれ、地震による地すべりの平均面積や平均平面形状比が大きくなる傾向が認 められる。 なお、地すべり斜面の勾配、地すべり発生標高と地すべりの規模、平面形状比を同様に調べ たが、それらの間に明瞭な相関性が認められなかった。 2 4 6 8 10 地す べ り の面 積( h a) 20

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図-3-7-2 地すべり発生前斜面比高と地すべりの平面形状比 0 1 2 3 4 5 6 0 20 40 60 80 100 120 140 160 地すべり発生前斜面比高(m) 平面 形状 比( 長 さ / 幅 ) 図-3-7-3 地すべり発生前斜面比高と地すべりの移動量 0 20 40 60 80 100 120 0 20 40 60 80 100 120 140 160 地す べ り の移 動量 ( m ) 地すべり発生前斜面比高(m) 図-3-7-4 地すべり発生前の斜面比高と地すべりの 平均面積、平均平面形状比との関係 0.72 1.72 2.88 5.77 1.19 1.42 1.80 1.84 0 1 2 3 4 5 6 7 <60 60~90 90~120 >120 平均面積 平均平面形状比 平 均 面 積 (h a) , 平均 平面 形状 比 地すべり発生前斜面の比高(m)

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3.7.2 既存地すべり地形の地形条件と地すべり発生率との関係 調査範囲では既存地すべり地形内で多くの地すべりが発生したことを踏まえ、既存地すべり 地形を対象とした地震による地すべりの危険度評価手法を検討している(Has et al., 2008; ハ スバートルほか, 2009)。地震による地すべりの発生場としての既存地すべり地形において、そ の斜面勾配、凹凸の程度、侵食の状況などの特徴が地震による地すべりの発生を影響すること が推定される。ハスバートルほか(2009)は、既存地すべり地形の下端勾配、縦断的凸度、侵 食最大深と地震による地すべりの発生率との関係を検討している。また、Suzuki et al.,(2010) は、既存地すべり地形縁辺の侵食の程度が地震による地すべりの発生要因として指摘している。 そこで、本調査では、これらの文献の方法に基づき、調査範囲における既存地すべり地形の下 端勾配、縦断的凸度や侵食最大深、縁辺侵食率と地すべり発生率との関係を検討した。 ここでは、既存地すべり地形の縦断的凸度、下端勾配は図-3-7-5 の模式図に示す方法とおり である。縦断的凸度は、既存地すべり地形下端から上端までの水平距離の中点の比高(y2)/ 下端から上端までの比高(y1)とした。また、下端勾配は既存地すべり地形の下端から遷急点 までの勾配とした。侵食最大深は、既存の地すべり地形内における侵食深の最大値とした。侵 食深は、地震前 DEM データから 30mメッシュ範囲における最高標高を用いて作成した接峰面と 地震前の地形との差とした。 また、既存地すべり地形の縁辺侵食率は地すべり地形周辺の侵食の度合いを示す指標で、地 すべり地形の縁辺長に占める侵食地形長の割合と定義し、(1)式により求めた。 E= ℓ/L×100(%) (1) ここで、E:縁辺侵食率(%) ℓ:侵食地形長(m) L:地すべり縁辺長(m) 図-3-7-6 には、地すべり縁辺長と侵食地形長を示した。侵食地形長は、地すべり斜面末端が 河川や谷に面する部分の縁辺長と、側部が侵食谷などの谷地形を呈する谷線の長さを合計した ものである。この谷線の長さは、土石流危険渓流抽出の際の1次谷の判定基準(建設省河川局 砂防部砂防課, 1999)と同様に開口幅より奥行きの方が大きくなっている範囲とした。 地すべり発生率は、地震発生前の既存地すべり地形数に占める地震による地すべりの発生箇 所数の割合とし、既存地すべり地形の下端勾配、縦断的凸度、侵食最大深、縁辺侵食率との関 係を調査した。

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図-3-7-5 地震発生前斜面の縦断的凸度、下端勾配

0

100

200

300m

100

200

300

標高(m)

遷急点 中点 X1 X2 地震発生前の地表面 y1 y2 θ ① ② ①縦断的凸度=y2/y1 ②下端勾配=θ 図-3-7-6 地すべり地形の縁辺長と侵食地形長

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下端勾配と地すべりの発生率との関係を調べた結果を図-3-7-7 に示すとおりである。図 -3-7-7 によれば、既存地すべり地形の下端勾配が 20°以上になると、地すべり発生率が下端 勾配の値の増加に伴い上昇する傾向が認められる。既存地すべり地形の下端勾配は急なほど侵 食や人工的な改変により地すべり斜面が不安定な状態になりやすい状態が考えられる。図 -3-7-7 より、地すべり斜面の下端勾配が地震による地すべり発生の地形要因として用いられる ことが示唆された。 図-3-7-8 には既存地すべり地形の侵食最大深と地すべり発生率との関係を示した。地すべり ブロック内における侵食最大深は地すべり斜面の侵食の度合いを表し、それが大きいほど侵食 が進んだことを表す。地すべり発生率は、侵食最大深の増加に伴い上昇する傾向を示した。ま た、地すべり発生率は侵食最大深が 60m以上では 5%以上、80m以上では 10%以上の値を示し た。 図-3-7-9 には既存地すべり地形の縦断的凸度と地すべりの発生率との関係を示した。縦断的 凸度が大きいほど地震動により斜面に作用する加速度が大きくなり、地すべり斜面が不安定に なることが推定される。図-3-7-9 によれば、地すべり発生率のばらつきが大きいものの、縦断 的凸度が 0.8 以上では縦断的凸度とともに上昇する傾向が認められた。 図-3-7-10 には既存地すべり地形の縁辺侵食率と地すべり発生率との関係を示した。既存地 すべり地形の縁辺が侵食されると地すべりブロックがより不安定な状態にあることが推定され る。図-3-7-10 によれば、地すべり発生率は、縁辺侵食率が 80%までは、概ね縁辺侵食率の増 加に伴い上昇する傾向を示した。縁辺侵食率が 80%以降では、地すべり発生率がやや低くなる ものの、14%以上であった。縁辺侵食率が 40%以上となると、地すべり発生率は 10%以上の値 を示した。 このように、縦断的凸度以外は、地形要因がある値以上となると値の増加とともに地すべり 発生率が上昇する傾向が認められた。本節で取り上げた地形要因は、地震による地すべりの発 生危険度評価の要因として用いることできるものと考えられる。

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41 60 157 47 80 160 205 213 6 2 11 14 12 12 18 12 0 50 100 150 200 250 30050 5060 6070 7080 8090 90100 100110 110 ~ 発生 非発生 3.2 3.7 5.3 5.5 10.1 13.0 19.0 25.5 0 10 20 30 40 地すべり 発生率 (% ) 地 す べり箇所数 侵食最大深(m) 図-3-7-8 地すべり斜面最大侵食深と地すべり発生率 39 28 123 56 126 183 228 180 9 1 9 9 17 11 18 13 0 50 100 150 200 250 30010 1015 1520 2025 2530 3035 3540 40 ~ 発生 非発生 3.4 6.8 8.6 4.6 9.0 9.4 13.8 18.8 0 10 20 30 地すべり 発生率( %) 地すべり箇所数 下端勾配(°) 図-3-7-7 地すべり斜面下端勾配と地すべり発生率

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22 71 155 24 51 138 226 276 14 6 2 5 16 26 15 3 0 50 100 150 200 250 300 3500.4 0.40.5 0.50.6 0.60.7 0.70.8 0.80.9 0.90.10 1.0 ~ 発生 非発生 7.8 8.3 5.5 10.3 9.8 5.6 7.7 18.5 0 10 20 30 地すべり 発生率( %) 地すべり箇所数 縦断的凸度 図-3-7-9 地すべり斜面縦断的凸度と地すべり発生率 6 31 157 147 16 34 70 130 185 187 1 5 4 3 13 12 11 9 16 13 0 50 100 150 200 250 10 20 30 40 50 60 70 80 90 発生 非発生 14.3 2.5 3.3 5.6 4.6 11.0 15.7 27.7 27.9 15.8 0 10 20 30 40 地すべり 発生率 (%) 地 す べり 箇所 数

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3.8 地すべり発生場の地質的特徴 3.8.1 基盤地質と地すべりの発生 調査範囲の地質を、柳沢ほか(1986)と小林ほか(1991)に基づき砂岩、泥岩、砂岩・泥岩互 層と砂質シルト岩に区分した。表-3-8-1 に基盤岩の地質と地震による地すべりの発生状況を示 した。 調査範囲においては、地すべりの箇所数では基盤岩が泥岩の 40 箇所(41.7%)が最も多く、 次いでは砂岩・泥岩互層の 25 箇所(26.0%)であった。地質面積毎の地すべり箇所数は、基盤 岩が泥岩の 0.011 箇所/ha が最も多く、次いで砂岩・泥岩互層の 0.010 箇所/ha であった。地質 面積毎の地すべり面積(地すべり面積率)では、砂岩・泥岩互層基盤の 2.2%が最も高く、次い で砂質シルト岩基盤の 1.6%であった。 調査範囲における基盤地質毎の地すべり面積の頻度分布を図-3-8-1 に示した。相対累積度数 に着目をすると、面積が 1.0ha 以下では砂質シルト岩の割合が高く、砂岩の割合は少ない。一 方、面積が 2.5ha 以上のものが砂岩には含まれておらず、他の基盤岩で発生した地すべりに比 べて小規模なものが多かった。また、基盤が砂質シルト岩と砂岩・泥岩互層の地すべりは、砂岩 と泥岩の地すべりに比べて大規模なものが含まれていたことが特徴としてあげられる。 図-3-8-2 に、地質毎の地すべり移動量の頻度分布を示した。移動量が 20m以下の地すべりに は、泥岩の地すべりが最も高い相対度数 60.5%だったのに対し、砂岩は最も低い 27.3%を示し た。また、砂岩の地すべりは泥岩の地すべりに比べ、移動量が大きい傾向を示した。一方、移 動量が 50m以上の地すべりについてみると、砂質シルト岩地すべりが他に比べてやや高い割合 を示した。 図-3-8-3 に基盤地質毎の平面形状比の頻度分布を示した。相対累積度数の基盤地質による差 は明瞭ではなく、平面形状比が 1.50 以下では類似した傾向を示した。一方、平面形状比 2.00 以上の地すべりは、基盤が泥岩と砂岩の地すべりは砂質シルト岩と砂岩・泥岩互層に比べてやや 多かったものの、顕著な差は認められなかった。 表-3-8-1 基盤地質と地震による地すべりの発生状況

箇所数NL NL/A 面積AL(ha) AEL/A  (%)

シルト、砂、礫 1362.6 3 0.002 4.1 0.3 砂岩 1151.7 9 0.008 10.5 0.9 砂質シルト岩 1805.9 17 0.009 29.6 1.6 砂岩・泥岩互層 2512.7 25 0.010 55.4 2.2 泥岩 3658.5 40 0.011 45.3 1.2 その他 2220.8 2 0.001 0.3 0.0 計(または平均) 12712.1 96 0.008 145.2 1.1 NL:地震による地すべり箇所数 基盤岩質 面積A(ha) 地震による地すべり A:地層の分布面積

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図-3-8-1 地質構成毎の地すべり面積の頻度分布 0 10 20 30 40 500.49 0.500.99 1.001.49 1.501.99 2.02.49 2.502.99 3.003.49 3.503.99 4.004.49 4.504.99 5.000 20 40 60 80 100 泥岩 砂岩 シルト岩 砂岩・泥岩互層 累積度数(泥岩) 累積度数(砂岩) 累積度数(シルト岩) 累積度数(砂岩・泥岩互層) 相対度 数( % ) 相 対累積 度数 ( % ) 地すべりの面積(ha) 図-3-8-2 基盤地質毎の地すべり移動量の頻度分布 0 10 20 30 40 50 6010 1120 2130 3140 4150 510 20 40 60 80 100 泥岩 砂岩 シルト岩 砂岩・泥岩互層 累積度数(泥岩) 累積度数(砂岩) 累積度数(シルト岩) 累積度数(砂岩・泥岩互層) 相対度数( %) 相対累積度数( %) 地すべりの移動量(m) 20 30 40 50 40 60 80 100 泥岩 砂岩 シルト岩 砂岩・泥岩互層 累積度数(泥岩) 累積度数(砂岩) 累積度数(シルト岩) 累積度数(砂岩・泥岩互層) 相対度数( %) %)

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3.8.2 基盤構造と地すべりの発生 地すべり斜面の基盤構造と地震による地すべり発生との関係を調べた。基盤構造は、水平面 における地すべりの移動方向と地層の傾斜方向との成す角度(θ)が 0°≦θ<45°を流れ盤、 45°≦θ<135°を中間、135°≦θ<180°を受け盤とした。 図-3-8-4 は、基盤構造別の地すべり発生割合を示したものである。地震による地すべり 96 箇所のうち、流れ盤構造のものは 49 箇所(51%)と最も多く、受け盤構造の 7 箇所(7%)に 比較して多い。なお、「中間」構造は 40 箇所(42%)と流れ盤に次ぐ高い値を示した。 流れ盤 49箇所(51%) 受け盤 7箇所(7%) 中間 40箇所(42%) 図-3-8-4 基盤構造と地すべりの発生状況

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調査範囲における地すべりが発生した斜面の、基盤構造毎の地すべり面積の頻度分布を図 -3-8-5 に示した。これによれば、受け盤構造の地すべりの全て及び中間の 80.0%が 1.5ha 以下 であったのに対し、流れ盤構造の地すべりの割合は 65.3%であった。流れ盤構造の地すべりは 中間や受け盤構造のものに対し、規模が大きい傾向が示された。 同様に、地すべりが発生した斜面の基盤構造毎における地すべり移動量の分布を調べた(図 -3-8-6)。地震による地すべりの移動量が 20m以下の相対度数は、受け盤では 71.4%と最もた かったのに対し、流れ盤では 44.9%と最も低かった。地震による地すべりでは、流れ盤構造の 地すべりの中には受け盤構造の地すべりよりも移動量が大きいものが多く含まれていた。 また、地すべりが発生した斜面の基盤構造と地すべりの平面形状比の分布を調べ、その結果 を図-3-8-7 に示した。平面形状比が 1.00 以下では、受け盤の地すべりは 57.1%あるのに対し、 流れ盤と中間では 36.7%と 35.0%であった。しかし、相対累積度数を見ると、長さが幅の 2 倍以上のものは類似した傾向を示した。受け盤の地すべりは、幅が長さより大きいものの割合 がやや高かったが明瞭な差は認められない。 以上のように、地すべりの規模は基盤地質と基盤構造に影響されることが示された。また、 平面形状比については、基盤地質による差は明瞭ではないが、基盤構造では受け盤の斜面で発 生した地すべりは幅が長さより大きいものの割合がやや大きかった。 図-3-8-8 には基盤地質、基盤構造と地すべりの平均面積との関係を示した。基盤構造に着目 すると、流れ盤構造の斜面で発生した地すべりは基盤地質によらず面積の平均値が大きい。さ らに、流れ盤斜面で発生し地すべりについてみると、砂質シルト岩と砂岩・泥岩互層で平均面積 が大きい傾向が認められる。この特徴は、図-3-5-1 に示した地すべり発生面積率が 100%以上 の地すべりでも同様に認められた。地すべり発生面積率が 100%以上の地すべり 12 箇所のうち、 6 箇所が砂質シルト岩と砂岩・泥岩互層の分布域、6 箇所が泥岩の分布域にあった。泥岩の地す べりの平均面積が 2.27ha であったのに対し、砂質シルト岩と砂岩・泥岩互層の地すべりはそれ ぞれ 6.38ha と 7.26ha と大規模であった(図-3-8-9)。また、基盤構造別にみると、9 箇所が流 れ盤構造で、3 箇所が中間であった。流れ盤構造の地すべりの平均面積は 5.27ha で、中間の平 均値 2.65ha に比べて大規模であった(図-3-8-10)。同様に、地すべり発生面積率が 100%以下 の地すべりについても調査すると、泥岩で発生した地すべりの平均面積 1.01ha であったのに対 し、砂質シルト岩は 1.76ha、砂岩・泥岩互層は 1.36ha と大きい値を示した(図-3-8-9)。地す べり発生面積率が 100%以下の地すべりの基盤構造別にみると、流れ盤構造は 28 箇所でその平

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図-3-8-5 基盤構造毎の地すべり面積の頻度分布 0 10 20 30 40 500. 4 9 0. 500. 9 9 1. 001. 4 9 1. 501. 9 9 2. 02. 4 9 2. 502. 9 9 3. 003. 4 9 3. 503. 9 9 4. 004. 4 9 4. 504. 9 9 5. 000 20 40 60 80 100 流れ盤 中間 受け盤 流れ盤累積 中間累積 受け盤累積 相対度数( %) 地すべりの面積(ha) 相対累積度数( %) 図-3-8-6 基盤構造毎の地すべり移動量の頻度分布 0 10 20 30 40 50 6010 1120 2130 3140 4150 500 20 40 60 80 100 流れ盤 中間 受け盤 流れ盤累積 中間累積 受け盤累積 相対度数( %) 地すべりの移動量(m) 相対累積度数( %) 0 10 20 30 40 500.5 0. 511. 0 0 1. 011. 5 0 1. 512. 0 0 2. 012. 5 0 2. 513. 0 0 3. 013. 5 0 3. 514. 0 0 4. 010 20 40 60 80 100 流れ盤 中間 受け盤 流れ盤累積 中間累積 受け盤累積 相対度数( %) 平面形状比(長さ/幅) 相対累積 度数( %) 図-3-8-7 基盤構造毎の地すべり平面形状比の頻度分布

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4.0 6.0 面積率100%以上 面積率100%以下 面積 ( h a) 図-3-8-8 基盤地質、基盤構造と地すべりの平均面積 砂岩 泥岩 砂質 シ ル ト 岩 砂岩 ・泥 岩互 層 受け 盤 中間 流れ 盤 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 平均 面積 ( h a) 図-3-8-9 基盤地質と地すべりの平均面積 平均 面積 ( h a) 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 泥岩 砂岩 砂質 シ ル ト 岩 砂岩 ・泥 岩互 層 面積率100%以上 面積率100%以下 平 均 面 積 (ha )

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3.8.3 地震による地すべりのすべり面の地質 地震による地すべりのすべり面の地質状況を把握するため、文献調査を実施した。ここでは、 新潟県が実施した災害関連事業地質調査報告書、国土交通省北陸地方整備局湯沢砂防事務所が 実施したボーリング調査報告書、これまでに公表された学会誌、学会研究発表会などの資料を 参考し、61 箇所の地すべりについてすべり面の地質状況について調査した。地震による地すべ りのすべり面の地質についての記載、出典などは巻末資料 2 にまとめた。これらの地すべりの 多くは本調査の対象範囲(図-3-1-1)に含まれるが、範囲外のものも含まれている。また、す べり面の地質は、調査ボーリングのコア観察によるもので、計測機器によるものではない。 調査の結果、中越地震によって発生した地すべりのすべり面は次のようなところで多く形成 されたことが分かった。 ① 地質境界:礫混じり粘土などと強風化岩との境界、風化岩と基盤岩との境界 ② 風化岩中:強風化岩中に存在する軟弱化した部分 ③ 亀裂など弱線:基盤岩中の亀裂沿い ④ 基盤岩中:新鮮な岩盤中または層理面沿い また、地震による地すべりのすべり面の地質状況を図-3-8-11 に示した。これによれば、す べり面の地質は粘土状のものが 28 箇所と最も多く、全体の 47%を占め、次いで砂状のすべり 面の 16 箇所で全体の 26%であった。これは、中越地震では基盤が泥岩からなる地すべりが多 く発生したこと(表-3-8-1)によると考えられる。 図-3-8-11 地震による地すべりのすべり面の地質状況 粘土状 28箇所(47%) 砂状 16箇所(26%) 礫状 10箇所(16%) 亀裂 7箇所(11%)

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4.まとめ

調査範囲における中越地震による地すべりの調査結果・分析結果から、中越地震によって 発生した地すべりには次のような特徴が認められた。 (1) 地すべり地形内で発生した地すべりは全体の約 70%を占めた。地震による地すべ りの多くは既存地すべり地形の一部で発生した。 (2) 地震による地すべりの発生率は、震源断層の走向に垂直方向の成分とその周辺で高 い傾向を示した。 (3) 地震による地すべりの長さは 200m以下のものが 81.3%、幅は 150m以下のものが 77.1%であった。面積が 2.0ha 以下の地すべりは全体の 76%を占めた。地震によ る地すべりの規模は既存地すべり地形に比べて小さい傾向が認められた。 (4) 地震による地すべりの平面形状比は 0.37~5.06 の範囲にあり、既存地すべり地形 に比べて細長い地すべりが少ない傾向を示した。 (5) 地すべりの長さ、幅、移動量は、地すべり発生斜面比高と相関性が認められるもの の、斜面勾配や地すべりの発生標高と明瞭な相関性が認められなかった。 (6) 地すべり発生率は既存地すべり地形の下端勾配、侵食最大深、縁辺侵食率がある値 以上になるとそれらの値の増加に伴い上昇する傾向が認められた。 (7) 基盤が砂質シルト岩や砂岩・泥岩互層の地すべりは砂岩や泥岩の地すべりに比べて 規模が大きく、長さが幅より大きいものも多く含まれた。また、流れ盤の地すべり は受け盤の地すべりに比べて規模が大きく、移動量も大きい傾向を示した。地震に よる地すべりは地すべり斜面の基盤地質と基盤構造に影響される可能性が示され た。 (8) 文献調査から、地震による地すべりのすべり面は地質境界または風化境界に位置す るものが多く、粘土状のものが多いことが示された。

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参照

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