日本 管 理会計学 会誌
管 理 会 計 学 2012 年 第20巻 第2号
研究ノー ト
コ ン トロ ー ル ・ パ ッ ケー ジ概 念 の 検 討
福 嶋 誠 宣
〈研 究ノート要 旨〉
本 研 究ノー トの 目的は,パ ッケージξし ての マ ネジ メン ト・コ ン トロ ール ・シ ス テ ムにっ い
て,今後の実証研 究 が 首 尾一
貫 した 知 見 を 蓄 積 して い く た め に, 現状の研 究 動 向 を 整理す るこ と にある.マ ネジ メン ト・コ ン トロ ール ・シ ス テ ム の 構 成 要 素が相互 に関 連しな が ら機 能 する
とい う現 象は, コ ン トロ ール ・パ ソケージと 呼ばれ,近年研 究 関 心の高 ま りを 見せ る 分 野 と な
っ てい る.し か し, や み くも に 構成要素 間の 関 係 を 分 析し て も,断 片 的な癸 見 事 実を積み重 ね るだ けで首 尾一貫した 知見の蓄積に結びつ かない 恐 れが ある.そこ で,本 研 究ノー ト で は
, 文
献サーベ イ を 通 じ て
, これ までの コ ン トロ ール ・パ ッケージ 研究の 系譜をた どり, 現 状の課 題
と今 後の研 究 展望 を検 討 する.
〈キーワード〉
コ ン トロール ・パ ッ ケージ,マ ネジ メン ト ・コ ン トロ ール ・シス テ ム,文 献サーベ イ
Examining the Concept of Control Package
Masanobu Fukushima
Abstrac‘
The purpose ofthis paper is to show the status quo ofresearch on management control systems as a package in order that future empirical research can deve正op oonsistent knowledge. The phenomenon that the components of management control systems operate relating reoiprocally is referred to as control package. This phenomenon is the matter of concem in recent research on manage 皿ent control
systems . However , reckless analysis on the re!ations among those components may Iead to collecting
fragmental findings rather than developing consistent knowledge . Then this paper traces the history of
research on control package and examines remaining issues and research directions through a literature
survey ・
Key Words Control package, Management control systems , Literature survey
2011年 12月 5日 受付
2011年12月24日 受 理
神 戸 大 学 大 学 院経 営学研究 科博士 課 程 後 期 課程
Submitted 5 December 2011 Accepted 24 December 2011
Doctoral Student, Graduate SchoQI of Business Administrationa
管理会 計学 第20巻 第2号
1.は じめに
近 年の研 究に お け るマ ネ ジメン ト ・コ ン トロ ール 概 念は, 例 え ば 組 織文化 などの非公 式 かっ 非会計 的 なコ ン トロ ール 手段 を含む傾 向に あ る とい う意 味で,Anthony (1965)の頃の よ うな 研 究の 初期段階に 比べ る と多様 化 して い る (Chenhall, 2007).し か も, マ ネ ジメン ト・コ ン ト
ロ ール ・シス テ ム (以 下,MCS ):に 含 ま れる コ ン トn 一ル 手 段 は そ れ ぞ れ独 立 し て機 能 する の で はな く 相互 に関 連し てい る た め, これ らの コ ン トロ ール 手 段 をパ ッ ケージ とし て
分析する
こ との 必 要 性 がこれ まで も 主 張 されて きた (Otley, 1980).
し か し な が ら,パ ッケージ とし ての MCS ,すな わちコ ン トロ ール ・パ ッ ケージ2とい う概 念 につ いての研究蓄積はい ま だ不 十 分で あり,今 後 さ ら なる実証 的 な研究の進展 が 望 まれ る分 野
で ある とい う (Malmi and Brown , 2008 ).こ うし た問 題 意 識か ら, MCS をパ ッケージ と し て 分 析 す る とい うこ とにつ い て の 研究 関心 が 高 ま っ て お り,例 え ば 2008 年 に は Management Account 三ng Research誌にお い て その特集号 (Volume 19, Issue 4)が発 行 されて い る3.
それでは,こ の よ うな 研 究 関 心の 高ま りを 見せ るコ ン トロ ール ・パ ッ ケージ とい う概念は,
どの よ うな研 究の系 譜か ら浮上 し て き たのであろ うか.そ して ,そ れ ら一連の研 究が も た ら
し た意 義 と は一
体 どの よ うなも の だっ たのだ ろ うか.さ らには,これ までの研 究 成果に は どの よ うな 限 界があるの だろ う か。本 研 究 ノー ト は ,こ れ らの 論点を整理 するこ とで , コ ン トm 一
ル ・パ
ッ ケージに 関する今 後の実 証 研 究の進 展
に貢 献 する こ と を 目的 と してい る.なぜ な ら,
これ らの 論点に整理 をつ け ず, や みくもに MCS の構 成 要 素 間の 関係 を 分 析 し て も, 断片的な 発 見 事 実 を 積み重 ねるだ けで 首 尾一
貫し た 知見の構 築に結びっ か ない 恐 れがある か らで ある. 上 記の 研 究目的に 基 づき,本 研 究ノー トで は, 文献サーベ イを通 じて4,マ ネジメ ン ト・コ
ン トロ ール
研 究の進 展 過 程 を た ど り, コ ン トU 一ル ・パ ッ ケージとい う概 念が創起さ れ る に 至
っ た経 緯 を 明 らか にする.さ ら に は,近 年の 研 究 を 概 観 し, これ まで の研 究 成 果 と その限 界,
な ら び に現 状の 課 題 と今 後の研 究展望を述べ る.な お,文 献 サーベ イ を 行 う際の 分 析 視 角 とし ては,MCS の範 疇 を 規 定 するフ レーム ワークに着 目する.これ は, そ の フ レーム ワーク に起 因 する体 系化の 功罪がマ ネジ メン ト・コ ン トロ ール 研 究の進 展 と限界を もた らすとい う構 図が, 事前の 調査段 階で見て取 れ たか らである.
2.パ ッ ケー ジ として の MCS 概念の創 成
学術的 な研 究におい てマ ネジ メン ト ・コ ン トロ ール を 独立の トピッ ク として最初に議 論 した
のは, お そ ら くAnthony (1965)であろ う (伊丹,1986;Merchant and Otley,2007).本 節で は,
その Anthony (1965)を議論 の 出 発点 と し, 彼の 提 示 した フ レ ーム ワーク に 対する その
後の批 判を問 題 意 識 として MCS 概 念の 拡張 を図っ た研 究 をレ ビュ ーする こ と に よ り,コ ン トロ ー
ル ・パ ッ ケージ とい う概 念が創 起 さ れ
る に 至 っ た経緯を明 らか にす る.
2.1 伝 統的マ ネジメン ト ・コ ン トロ ール 概念の 定着と批 判
組 織の マ ネジメン ト・プ ロ セス に おい て計画 とコ ン トロール は 不 可 欠の機 能であり, その研 究の源 流 は 20 世 紀 初 頭に ま で さかの ぼ ること がで きる (Giglioni and Bedeian, 1974).そ れに もかか わ らず, 20 世 紀の 中 葉になっ て も 実 務で活 用で き る ような原 則が形 成 される に は 至 ら なかっ た (Rowe , 1960).む しろ, 様々 な 論 者が異 なる文 脈の なかで多 様 な 定 義を 与 えて い る
コ ン トロ ール ・パ ッ ケージ 概 念の検 討
とい う状 況であっ た5.Anthony (1965)は,当時この ように混 沌 とし ていた 計 画 とコ ン トロ ー
ル のシス テ ム の設計 問 題に対し て 1つ の フ レーム ワーク を 提 供 する た め に刊行 さ れ たもの で あ
るこ と がその 冒 頭で 述べ ら れてい る.この フ レーム ワーク に関し て は,わ が国で も多 くの文 献
で取 り上 げ られ,解 説 や 検 討が行 わ れて い るが (例え ば,近藤,1977,工978;門田,197 1976b,
1976c;豊 島, 1972,1994など), 本研究ノー トで も議 論の出 発 点 とし て その要 点 を確 認 す る.
Anthony (1965 )の フ レーム ワークは,その提 示 にあたっ て 2 つ の 前 提 が 置かれてい る.第
1に,公 式的 なシス テ ムに着目すること.第 2 に,対 象 を 大 きな入 的 組 織に限 定 する こ と.彼 は, これ らの前 提 を 置い た 上で , 計 画 とコ ン トロ ール の シス テム に対し て ,「戦 略 計 画」, 「マ
ネ ジメン ト ・コ ン トロール 」,「オペ レ ーシ ョ ナル ・コ ン トロ ー
ル ] とい う3 つ の プ n セ ス か ら なるフ レーム ワーク を提示 し た.そ れ ぞ れ の 定 義は次の とお り で ある.
戦 略 計 画
組 織の 目標,これ らの 目標の変 更,これ らの 目標 達成の た め に用い られ る資 源,お よ びこれ らの 資源の 取得 ・使用 ・処分に際 し て準 拠 すべ き 方 針 につ い て,意 思 決 定を行 うプ ロ セ ス
(P.16).
マ ネジ メン ト・コ ン トロ・・一ル マ ネジ ャーが
, 組織の 目標を達 成 する た め に, 効 果 的かつ 効 率 的に資 源を取 得 し て使 用する
こ と を確実にする ため の プ ロ セ ス (p.17).
オペ tz・一シ
ョナル ・コ ン トロ ール
特 定の課 業が, 効 果 的かつ 効 率 的に実 行さ れ るこ とを確 実にするプ ロ セ ス (p,18>.
これ らの 定 義は, 現 実に行 わ れ る活 動に着 目して階 層 的な分類を行っ てい る点に特 徴がある.
た し か に計 画 や コ ン トa 一ル は概念と し て は独立 し て定 義できる かもし れ ない が, 現実 に は一 連の 活 動 とし て 実 施 され る場合が あ る.こ の ことを Anth。ny (1965)は予 算 統 制を例に説 明 し てい る。す な わ ち,コ ン トロ ール の基 礎 として 用い ら れ る 予算統制のサ イ クル は その編 成 と承 認か ら始まるが,予算の 編成や 承認は 明 らか に計 画 活 動で あ る (p.11).そ こ で彼 は, 各プ ロ
セ ス の なか に計 画 とコ ン トロ ールを内 包する階層 的 なフ レーム ワーク を 構 築し たの で ある. こ の よ うに し て, マ ネジ メン ト・コ ン トロ ールは その他の プロ セス か ら独 立した 概 念 とし て 分 離 されるに至っ た.この こ と に よっ て, 1) 組 織ごとに固 有な 目標 設 定 ・戦略策 定に 関する 問 題 や,2 ) 特 定の 産 業に見られる多様で特 殊 なコ ン トロ ール 実 践の 問 題 を 考 慮 する 必要 性を 回 避 し, マ ネ ジメ ン ト ・コ ン トロ ール 研 究 を 不 要な複雑性 か ら解放 したこ とが Anthony
(1965 )の功 績とい え る (Otley,1994).
し か しな が ら, こ の フ レーム ワーク に 基づ くマ ネ ジメン ト・コ ン トロ ール 概 念は,深 刻な問 題 を 内 包 して い る こ と が その後の研 究で指 摘 さ れて い る,第 1 に, MCS を戦略か ら分 離 した
ことで , それ らの 関 係につ い ての 論点 が 捨 象 さ れて しまっ た (Langfield−Smith,2007).第 2 に,
組織の 上 位 階 層の み に着 目した ため,オペ レーシ
ョナル ・コ ン トロ ール ・レベ ル にお け る 多 様 なコ ン トu 一ル 実践を考 慮の 外に追い やっ て しまっ た (Otley,1999).こ れ らの帰 結 と して, 第 3 に,マ ネジ メン ト・コ ン トールの 定義は狭い範囲 に限 定 され,その後の研 究に おい て会 計
ベ ース の コ ン トロ ール が伝 統 的マ ネジ メ ン ト ・コ ン トロ ール 概 念 として定 着 して し ま っ た
(Machin and Lowe, 1983;Otley, 1994).第4 に, 組織を 取 り巻く外部環境の 影響を 考 慮してい ない (Lowe and Puxty,1989 ).
これ らの批 判が指 摘 し た こ と は, た し か に Anthony (1965)の フ レーム ワーク に起因する問