01-はじめに山野先生 Page 1 17/06/12 18:20 v3.30 わが国で単行法としての保険法が施行されてから⚖年を迎えた。本大会の 法律セクションの個別報告に見られるように,保険法の規定の解釈運用が問 題とされる一方,ドイツ法,アメリカ法,フランス法を対象とする比較法的 研究成果も報告されている。法律学の世界において,比較法的アプローチが 重要であることはいうまでもないが,保険法のように経済合理性に基づく保 険制度を扱う学問領域では,各国共通の土俵の上で議論を展開することが比 較的容易であるから1),このアプローチが不可欠と言っても過言ではなかろ う。
本共通論題は,⽛保険法の国際比較⽜であるが,これは,保険先進国であ るアメリカ,イギリス,ドイツ,フランス(ベルギーも含む)の保険法の現 状を紹介することによって,保険法分析の新たな知見を得ようとするもので ある。このような内容を共通論題とすることは,本学会としても初めての試 みである。
わが国の保険法改正に際しても,海外の保険立法が参照されているが,今 回,改めて諸外国の立法動向に目を向け,わが国の保険法の国際的位置づけ を確認することにはそれなりの意義が認められよう。
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【平成28年度日本保険学会大会】共通論題⽛保険法の国際比較⽜
保険法の国際比較:はじめに
平成28年度大会共通論題
総合司会 山 野 嘉 朗
1) 五十嵐清⽝比較法ハンドブック⽞18頁(勁草書房,2010)は,⽛従来好んで 比較法の対象とされたのは,私法,その中でも合理性と普遍性を有する民法債 権(契約と不法行為)法と商法である。⽜と指摘する。保険契約は債権契約で あり,わが国の保険契約の規定は,保険法制定前は商法典の中に置かれていた。
このように,保険法は債権法にも商法にも関わるので,比較法に特に親しむも のといえよう。
01-はじめに山野先生 Page 2 17/06/12 18:20 v3.30 比較法的アプローチとしては,たとえば告知義務制度といった特定のテー マに的を絞り,各国の状況を紹介しつつ,日本法と比較し,何らかの示唆が 得られるか探るというのが一般的ではある。しかし,本共通論題では,あえ てそのような方法を避け,それぞれの国の保険法に関するホットイシューを 取り上げ,紹介・検討することにした。これにより主要先進国の保険法学界 で,今まさに何が論じられているのかを知ることができるであろう。それに よって,少しでも保険法に対する視野を広げることができれば幸いである。
本共通論題においては,アメリカ法については梅津教授,イギリス法につ いては中出教授,ドイツ法については潘教授に報告をお願いし,司会者はフ ランス・ベルギー法を担当している。司会者についてはともかく,各報告者 はそれぞれの担当国の保険法のエキスパートである。また,米山教授には,
保険論の立場から,最近の保険実務と保険法の対応についてご報告をお願い している。同教授は,わが国の保険法立案過程にも深く関わっているが,保 険論と保険法を連結させた研究成果を示していただけるものと期待するとこ ろである。
まず,梅津教授は⽛アメリカ法における保険証券解釈ルールの動向⽜とい うテーマを取り上げる。現在アメリカでは責任保険法リステイトメントの公 表が企画されているが,これに関する暫定草案(2016年⚔月)の保険契約の 解釈部分をクローズアップする。
中出教授は⽛イギリスの保険契約法からの示唆⽜というテーマで,2015年 に制定された保険法の中から重要な規律を抽出して解説を加える。
潘教授は⽛ドイツ保険契約法上の告知義務違反とプロ・ラタ主義⽜という テーマで,2008年に施行された保険契約法の中から告知義務違反とプロ・ラ タ主義の問題に的を絞り,最近の判例動向も踏まえつつ,議論を展開する。
司会者は,⽛フランス・ベルギー保険契約法 憲法規範・条約規範の影響⽜
というテーマを取り上げているが,憲法規範のような上位規範が保険契約法 に大きな影響を与えているフランスとベルギーの判例・法改正の動向を紹介 する。
保険法の国際比較:はじめに
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01-はじめに山野先生 Page 3 17/06/12 18:20 v3.30 米山教授は⽛マイナスのモラルハザード⽜というわが国おける保険実務の 新潮流を取り上げ,リスク,モラルハザードと保険法の関係を論じる。
繰り返すが,各国のテーマに統一性は見られない。そこで,本共通論題が 総花的でまとまりのないものに終わらないよう,各国法制度に横串を通すべ く,各報告の中心テーマについて,それぞれの国の法制度や法解釈がどのよ うに対応しているのかを,パネルディスカッションにおいて分析・検討した い。
なお,各国のホットイシュー検討の前提として,当該国の保険契約法の仕 組みと基本構造の理解が不可欠であるので,以下に参考資料として掲げるこ ととする。
(筆者は愛知学院大学教授) 保険学雑誌 第 637 号