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厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)

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(1)

厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)

発達障害児者等の地域特性に応じた支援ニーズとサービス利用の実態の把握と支援内容に関 する研究

平成29年度 分担研究報告書

福岡市における発達障害児者の支援ニーズと地域特性に応じた 支援体制に関する研究

研究分担者 清水 康夫(横浜市総合リハビリテーションセンター)

研究協力者 佐竹 宏之(福岡市立東部療育センター)

      宮崎 千明(福岡市立心身障がい福祉センター)

      小川 弓子(福岡市立西部療育センター)

      相部 美由紀(福岡市立あゆみ学園)

      森 孝一(福岡市教育委員会・福岡市発達教育センター)

      宮崎 仁(福岡市立こども病院こころの診療科)

      鶴澤 礼実(福岡大学筑紫病院小児科)

      井上 貴仁(福岡大学医学部小児科)

      小川 厚(福岡大学筑紫病院小児科)

A.研究目的

 発達障害児の早期発見や早期支援は、自治 体によって体制が異なっている。その体制は 自治体の財政状況、人口構成、医療資源、民 間の福祉施設など、各自治体のこれまでの取 り組みの経緯をふまえた様々な地域事情が要

因となり形づくられている。本研究班は、地 方自治体の規模による発達障害児の支援ニー ズの実態把握と支援システムの現状調査を通 して、それぞれの地域特性に合わせた支援の 在り方について検討するための支援システム のモデルを示すことを目的としている。平成 研究要旨 :福岡市東区(人口約31万人)において、その地域に居住する小学 1 年生(小 1 群)

と小学 5 年生(小 5 群)を対象として、発達障害に関する疫学調査を医療機関と学校に対し て行った。医療機関調査での発達障害の有病率は小 1 群9.2%、小 5 群6.1%で、学校調査では、

発達に何らかの遅れや偏りがあると把握された児は小 1 群9.2%、小 5 群8.3%だった。医療に おいては広汎性発達障害を、教育においては多動性障害や学習障害の特性を多く把握する傾 向がみられた。医療機関では学習障害の診断が殆どなされていなかった。また療育、医療、

教育の各機関で発達障害児の支援がなされているが、評価や支援の情報は十分にはつながっ

ていない現状が示唆された。増大し多様化する支援ニーズに対して、児の状態にあわせた幅

広い支援の提供が求められるが、各機関の位置づけや機能、評価や支援の情報のつながりに

ついて現体制を検証や検討の必要性が生じている。

(2)

25年度から27年度で実施された研究班「発達 障害児とその家族に対する地域特性に応じた 継続的な支援の実施と評価」(障害者対策総 合研究事業H25-身体・知的-一般-008)

では福岡市の発達障害児支援の地域特性、発 達障害の支援ニーズに関する疫学調査、福岡 市と横浜市、広島市の 3 政令指定都市間の支 援体制の比較研究を実施し、発達障害児の支 援システムについての提言が示された

1)

。平 成28年度からの本研究班においては、平成28 年度は福岡市の地域特性に関する調査をあら ためて実施した。本年度は、平成26年度、27 年度と同様の疫学調査を医療機関と学校に対 して実施した。本稿では本年度の疫学調査結 果について報告し、支援における現状と今後 の検討の方向性について考察する。

 なお、福岡市では平成17年から公文書やパ ンフレット等において「障害」の表記を「障 がい」としているが、本稿は研究論文である ため他の研究報告との一貫性を考慮し、固有 名詞以外は「障害」の表記を用いている。ま た、福岡市には診療所機能や相談支援機能を 持つ総合的な療育機関として、心身障がい福 祉センター、西部療育センター、東部療育セ ンターの 3 センターがあるが、本稿ではそれ らを総称して「療育拠点施設」としている。

B.研究方法

 福岡市の行政区の中で最も人口が多い東区

(約31万人)の児童を対象に、発達障害児の 有病率を把握するための医療機関調査と学校 調査を行った。対象となる児童は平成29年度 の小学 1 年生(平成22年 4 月 2 日~平成23年 4 月 1 日生まれ: 「小 1 群」)、小学 5 年生(平 成18年 4 月 2 日~平成19年 4 月 1 日生まれ:

「小 5 群」)とした。小 5 群は、前研究班にお ける調査とともに平成26, 27, 29年度の経年

的調査となった。

1 .発達障害の有病率調査(医療機関調査)

 福岡市内の 3 つの療育拠点施設および福岡 市内で発達障害児の診療を行っている主な小 児科および精神科医療機関(九州大学病院子 どものこころの診療部、福岡大学病院小児科、

福岡大学筑紫病院小児科、福岡市立こども病 院こころの診療科、その他の民間の医療機関)

17か所の計20か所に対して調査を行った。調 査対象児の氏名のイニシャル、性別、生年月 日、診断名と診断年齢、知能検査による知的 水準の判定を調査内容とした。診断名は( 1 ) 広汎性発達障害、( 2 )多動性障害、( 3 )会 話および言語の特異的発達障害(構音障害, 吃音を含む)、( 4 )学力の特異的発達障害、

( 5 )精神遅滞、( 6 )その他の順に優先をつ け、複数の診断がつく場合はケースの重複を 避けるために優先順位の高い診断名に分類を した。主病名が脳性麻痺、二分脊椎、筋疾患 や神経変性疾患などの運動障害、聴覚障害、

視覚障害、精神疾患(統合失調症など)とな る児童については、調査対象から除外した。

 複数の医療機関や療育拠点施設を重複受診

した児については、リストから氏名のイニ

シャル、性別、生年月日を照合し、複数の機

関での症例の重複を避ける形とした。重複

データの整理において複数の医療機関で知的

水準の評価や診断名が異なる場合には、後に

評価した医療機関の診断を優先した。調査時

点は平成29年 4 月 2 日とし、住民基本台帳

データから同年 3 月末時点の福岡市東区在住

の 6 歳児人口3091人、10歳児人口2949人を有

病率算出の際の母集団とした。発生率につい

ては、対象児の出生地の全例把握が困難で

あったため算出ができなかった。

(3)

2 .学校における発達障害の調査(学校調査)

 本研究班共通の調査書式を用いて、学校で 把握している発達障害児(疑いを含む)につ いてのアンケート調査を行った。対象とした 学校は、福岡市東区在住の児童が在籍する小 学校30校(福岡市東区の公立29校、東区外の 私立 1 校)、知的障害特別支援学校 1 校の計 31校とし、平成29年 4 月 2 日を調査時点とし た。アンケートは平成26年度、27年度に実施 した調査と同じもので、調査項目は発達に何 らかの遅れや偏りのある生徒数とその困難の 種類、医療機関受診の有無、未受診の理由、

特別支援教育を受けている生徒数、不登校状 態にある生徒数とした。発達の遅れや偏りに ついては、医療機関調査の診断名と同様の 6 種類とし、ケースの重複を避けるために優先 順位をつけて分類した。不登校については、

文部科学省の定義に準じ「年間30日以上欠席 した児童のうち、病気や経済的な理由を除き、

何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは 社会的要因・背景により、児童生徒が登校し ないあるいはしたくてもできない状況にある もの」とした。

(倫理面への配慮)

 以上の調査の実施においては、福岡市立社 会福祉事業団、各大学病院および福岡市立こ ども病院における倫理審査委員会審査の承認 を得た。データはすべて集計の後に数的な情 報のみを解析し、個人が特定されることのな いようにした。

C.研究結果

1 . 医療機関調査および学校調査におけるア ンケートの回答状況

( 1 )医療機関調査

 福岡市内の 3 つの療育拠点施設および福岡 市内で発達障害児の診療を行っている主な小

児科および精神科医療機関17か所の計20か所 にアンケート調査を依頼し、医療機関 2 か所 を除く18か所から回答が得られ、回収率は 90%だった。

( 2 )学校調査

 福岡市東区在住の児童が在籍する小学校30 校と知的障害特別支援学校 1 校の計31校にア ンケート調査を依頼し、30校から回答が得ら れ、回収率は97%だった。在籍する東区在住 の児童生徒数の合計は小 1 群で2941人、小 5 群で2854人だった。

2 . 発達障害の支援ニーズに関する疫学調査 の結果

( 1 )小 1 群の調査結果

 医療機関調査における発達障害全体(精神 遅滞を含む)の有病率は9.2%だった。学校調 査においては発達に何らかの遅れや偏りがあ ると把握された児(疑い児)の割合は9.2%で、

受診を把握している児(受診把握児)の割合 は4.6%とその約半数だった。発達障害の内訳 では広汎性発達障害が最も多く、医療機関調 査での有病率は7.7%で、そのうちIQ70以上 の例は63%(150/273)だった。学校調査で は広汎性発達障害の疑い児の割合は4.5%で、

受診把握児の割合は3.1%だった。医療機関調 査では次いで精神遅滞、言語障害の順に多 かったが、学校調査の疑い児では次いで多動 性障害、精神遅滞、学習障害の特性を多く把 握していた。

 医療機関調査と学校調査の比較では、発達 障害全体でみると医療機関調査での有病率 は、学校調査での受診把握児の割合よりも有 意に高かった(p<0.001)が、疑い児の割合 と比較するとほぼ同じ割合だった。内訳では、

広汎性発達障害の医療機関調査での有病率

は、学校調査での受診把握児や疑い児の割合

(4)

( 2 )小 5 群の調査結果

 医療機関調査における発達障害全体の有病 率は6.1%だった。学校調査における疑い児の 割合は8.3%で、受診把握児の割合は3.4%だっ た。内訳では広汎性発達障害が最も多く、医 療機関調査での有病率は4.0%で、そのうち IQ70以上の例は79%(93/117)だった。学校 調査では広汎性発達障害の疑い児の割合は 2.8%で、受診把握児の割合は1.5%だった。医 療機関調査では次いで多動性障害、言語障害、

精神遅滞の順に多く、学校調査の疑い児では、

次いで学習障害、精神遅滞、多動性障害の特 徴を多く把握しており、小 1 群の結果と異な る傾向がみられた。

 医療機関調査と学校調査の比較では、発達 障害全体でみると医療機関調査での有病率 は、学校調査での受診把握児の割合よりも有 よりも有意に高かった(p<0.001)。一方、多 動性障害については、学校調査における受診 把握児や疑い児の割合の方が医療機関調査で の有病率よりも有意に高く(p<0.001)、学習

障害については、学校調査での疑い児の割合 の方が医療機関調査での有病率よりも有意に 高かった(p<0.001)(表 1 )。

表 1  小学校 1 年生における発達障害および発達に問題がある児童の有病率 医療機関(n=3091) 学校(n=2941)

a.診断例 b.受診把握数 c.疑い含む総数

発達障害全体 283(9.2%) 135(4.6%) 271(9.2%) a>b

※※

 PDD 237(7.7%) 92(3.1%) 131(4.5%) a>b,c

※※

 多動性障害 1 (0.0%) 15(0.5%) 70(2.4%) a<b,c

※※

 会話・言語 17(0.5%) 6 (0.2%) 14(0.5%)

 学力 0 (0.0%) 2 (0.1%) 25(0.9%) a<c

※※

 精神遅滞 20(0.6%) 19(0.6%) 27(0.9%)

 その他 8 (0.3%) 1 (0.0%) 4 (0.1%)

平成29年 3 月31日在住 6 歳児数 3091人  調査時点:平成29年 4 月 2 日

学校調査・有効回答児童数 2941人    

※※

p<0.001,

p<0.01:Fisherの直接確率法

意に高かった(p<0.001)が、疑い児の割合 と比較すると有意に低かった(p<0.001)。内 訳では、広汎性発達障害や言語障害の医療機 関調査での有病率が学校調査での受診把握児 の割合よりも有意に高かった(p<0.001)。一 方、多動性障害については、学校調査におけ る疑い児の割合の方が医療機関調査での有病 率よりも有意に高かった(p<0.01)。学習障害、

精神遅滞についても、学校調査での疑い児の

割合の方が医療機関調査での有病率よりも有

意に高かった(p<0.001)(表 2 )。また小 1

群と小 5 群を比較すると、学校調査の疑い児

において小 5 群の方が小 1 群よりも広汎性発

達障害の特性を認める児の割合が有意に低

く、学習障害の特性を認める児の割合が有意

に高かった(p<0.01, Fisherの直接確率法)。

(5)

( 3 )広汎性発達障害における併存診断  本研究では発達障害の診断に優先順位をつ け、複数の診断がつく場合はケースの重複を 避けるために優先順位の高い診断に分類をし た。広汎性発達障害の優先度を最も高くして おり、前述の表 1 、 2 には併存診断は含まれ ていない。そこで、医療機関調査のデータか ら広汎性発達障害における併存診断について 分析をした。

表 2  小学校 5 年生における発達障害および発達に問題がある児童の有病率 医療機関(n=2949) 学校(n=2854)

a.診断例 b.受診把握数 c.疑い含む総数

発達障害全体 179(6.1%) 96(3.4%) 238(8.3%) a>b

※※

,a<c

※※

 PDD 117(4.0%) 43(1.5%) 81(2.8%) a>b

※※

 多動性障害 19(0.6%) 20(0.7%) 43(1.5%) a<c

 会話・言語 18(0.6%) 2 (0.1%) 8 (0.3%) a>b

※※

 学力 2 (0.1%) 3 (0.1%) 52(1.8%) a<c

※※

 精神遅滞 15(0.5%) 24(0.8%) 44(1.5%) a<c

※※

 その他 8 (0.3%) 4 (0.1%) 10(0.4%)

平成29年 3 月31日在住 10歳児数 2949人  調査時点:平成29年 4 月 2 日

学校調査・有効回答児童数 2854人    

※※

p<0.001,

p<0.01:Fisherの直接確率法

 小 1 群では51.5%、小 5 群では48.7%に何ら かの併存診断がみられた。二診断の併存が小 1 群で49.8%、小 5 群で44.4%にみられ、三診 断の併存が小 1 群で1.7%、小 5 群で4.3%にみ られた(表 3 )。小 1 群、小 5 群ともに最も 多い併存診断は精神遅滞で、次いで多動性障 害、言語障害となっていた。その他には学習 障害、発達性協調運動障害、不安障害が含ま れていた。

表 3  広汎性発達障害における併存診断

小 1 群 広汎性発達障害 237

二診断例の併存診断

精神遅滞 85 35.9%

多動性障害 14 5.9%

言語障害 15 6.3%

その他 4 1.7%

三診断例 4 1.7%

併存診断例の合計 122 51.5%

小 5 群 広汎性発達障害 117

二診断例の併存診断

精神遅滞 22 18.8%

多動性障害 19 16.2%

言語障害 9 7.7%

その他 2 1.7%

三診断例 5 4.3%

併存診断例の合計 57 48.7%

(6)

( 5 )発達障害児への特別な教育的配慮  学校調査では、特別な教育的配慮の状況を 尋ねた。発達障害の疑いを含めた児童への教 育的配慮については、小 1 群、小 5 群いずれ も「学級担任による配慮のみ」が最も多く、

それぞれ60%(163/271)、58%(138/238)だっ

「必要性を感じない」という回答が最も多かっ た。次いで受診への抵抗や家族の理解が得ら れないことが挙げられており、両群ともに同 様の傾向がみられた。(図 1 )。

( 4 )医療機関未受診の理由

 学校調査では、発達障害が疑われる児で医 療機関を受診していない児童が未受診である 理由について尋ねた。小 1 群、小 5 群ともに、

図 1   発達に何らかの遅れや偏りのある児童が医療機関を受診しない理由

0 10 20 30 40

受診に抵抗 必要性を感じない 家族の理解不足 他に相談機関 宗教的理由 明確な理由なし

小1群 小5群

た。次いで「知的障害特別支援学級」での配 慮 が 多 く、 そ れ ぞ れ23%(61/271)、26%

(62/238)だった(表 4 )。小 1 群、小 5 群で 何らかの教育的配慮を受けている児の割合に は有意な差がみられなかった。

表 4  発達に何らかの遅れや偏りのある児童への特別な教育的配慮 小学 1 年 小学 5 年

男 女 計 男 女 計

知的障害特別支援学校 23 6 29 11 7 18

特別支援 学級

知的障害特別支援学級 46 9 55 34 20 54

自閉症・情緒障害特別支援学級 6 0 6 5 1 6

その他の特別支援学級 0 0 0 1 1 2

小計 52 9 61 40 22 62

通常学級

情緒障害通級指導教室 9 2 11 8 1 9

難聴・言語障害通級 3 1 4 3 1 4

その他の通級指導教室 0 1 1 0 0 0

適応指導教室 0 0 0 0 1 1

小計 12 4 16 11 3 14

その他の支援 2 0 2 3 3 6

学級担任による配慮のみ 129 34 163 101 37 138

合計 218 53 271 165 71 238

(7)

におけるスクリーニングからのつながりや専 門機関へのケースの集積などが反映されてい ることが推察される。

 医療機関と学校との比較では、学校で受診 が把握された発達障害児の割合は、小 1 群、

小 5 群いずれも医療機関受診児の有病率より も有意に低くなっており、医療機関における 診断が、学校に十分には引き継がれていない 可能性が示された。一方で、学校における疑 い例を含めた割合をみると、小 1 群では9.2%、

小 5 群では8.3%と高くなっていた。平成24年 度の文部科学省の全国調査では、学習面や行 動面で著しい困難を示す児童生徒の割合は小 学 1 年生9.8%、小学 5 年生6.7%だった

4)

。こ D.考察

 医療機関調査における発達障害全体の有病 率は、小 1 群9.2%、小 5 群6.1%だった。内訳 では広汎性発達障害が最も多く、小 1 群で 7.7%、小 5 群で4.0%だった。これは米国の近 年の疫学研究

2)

で示された 3 から17歳児の有 病率2.47%より非常に高い結果だった。一方 で、平成27年度の前研究班の報告

3)

では、広 汎性発達障害の有病率は横浜市や広島市で約 6 %(小学 3 年)と今回の福岡市の調査と同 様に高い結果を示していた。研究班では各地 域において発達障害児の療育や医療を担って いる医療機関が実施主体となっており、発達 障害児支援に対する意識の高さ、乳幼児健診

( 6 )発達の問題と不登校

 学校調査では、発達に何らかの遅れや偏り のある児童生徒における不登校について尋ね た。小 1 群では0.37%、小 5 群では5.0%に不 登校がみられた。これらはいずれも平成28年 度の福岡市における不登校児の割合(小学 1

年0.02%、小学 5 年0.25%)よりも有意に高かっ た。(p<0.001, Fisherの直接確率法)。発達特 性の分類で見ると、広汎性発達障害の特性の みられる児童生徒における不登校が多かった

(表 5 )。

表 5  発達の問題と不登校

小学 1 年 小学 5 年 不登校児数 発達障害 疑い児 不登校児数 発達障害 疑い児

( 1 )対人関係・こだわり 1 131 4 81

( 2 )多動 0 70 2 43

( 3 )言語 0 14 1 8

( 4 )学力 0 25 1 52

( 5 )全体の遅れ 0 27 1 44

( 6 )その他 0 4 3 10

合計 1 271 12 238

不登校児割合 0.37%( 1 /271) 5.04%(12/238)

不登校児割合(福岡市)

 H28年 5 月 1 日時点

0.02%( 3 /13787) 0.25%(30/12183)

小学生全体:0.19%(148/78730)

不登校児割合(全国)

 H28年 5 月 1 日時点

0.15% 0.72%

小学生全体:0.48%

(8)

の調査は通常学級に在籍する児童を対象とし ており、今回の結果と単純に比較はできない が、ほぼ同程度の割合となっていた。疑い児 のうちで受診が把握されている児の割合は、

小 1 群で約半数、小 5 群で約 4 割だった。医 療機関を受診していない理由としては、小 1 群、小 5 群ともに必要性を感じないとする回 答が最も多く、学校現場では受診や診断に関 わらず発達障害の特性を把握し支援が行われ ていることが示唆された。また小 1 群、小 5 群いずれも把握された児の約 6 割が通常学級 のみで支援を受けていた。

 福岡市では、療育拠点施設での新規受診や 支援を幼児期までとしている。今回の医療機 関調査で、療育拠点施設と他の医療機関との 重複ケースを考慮すると、幼児期に療育拠点 施設を受診したケースのうち学齢期に他の医 療機関でのフォローアップを受けていた割合 は、 小 1 群 で10%(28/276)、 小 5 群 で20%

(29/143)だった。療育拠点施設を受診した 児の多くが、学齢期に他の医療機関でのフォ ローアップを受けていないことが分かった。

先述のように学校における受診把握が疑い児 の半数程度であることも含めて、療育、医療、

教育のそれぞれの評価や支援内容の情報が十 分につながらない状況で支援が行われている 現状もみえてくる。

 発達障害の内訳をみると、医療機関と学校 のいずれも広汎性発達障害の割合が最も高 かったが、医療機関の有病率の方が学校で広 汎性発達障害の特性を把握した児の割合より 高く、小 1 群では有意な差がみられた。一方 で多動性障害や学習障害については学校で特 性が把握された割合の方が、医療機関での有 病率より小 1 群、小 5 群ともに有意に高かっ た。医療機関では対人関係やコミュニケー ション面の障害特性に注目する傾向があり、

学校では集団の規律に影響するような多動性 や学習面に影響するような障害特性に注目す る傾向があることが示唆された。特に学習障 害については、医療機関で診断された例が小 5 群の 2 例のみだった。先述の文部科学省の 全国調査では学習面で著しい困難を示す児童 生徒は4.5%で、本研究と同様に障害間の重複 を省いても2.9%であり

4)

、また米国の研究で も知的発達の遅れがない学習障害児の有病率 は5.4%と示されている

5)

。本研究では広汎性 発達障害の診断を優先させているが、併存診 断においても学習障害の診断を受けた例はみ られなかった。医療機関が、学習障害の評価 や診断を行う機関として位置づけられていな い現状が推察された。

 学校調査での小 1 群と小 5 群の比較では、

小 5 群の方が学習に関連する障害特性(学習 障害、精神遅滞)を多く把握しており、学年 があがることで学習面での困難を生じるケー スが増えていることが示唆された。また多動 性障害の特性を把握された児の割合は小 5 群 で小 1 群より低い傾向がみられ、経年的に多 動性が軽減することが示唆された。

 広汎性発達障害の併存診断については精神 遅滞が最も多かったが、その割合は小 1 群で 約36%、小 5 群で約19%と小 5 群で低い傾向 がみられ、多動性障害の併存は小 1 群で約 6 %、小 5 群で約16%と小 5 群で高い傾向が みられた。三診断の併存については小 5 群で 高い傾向がみられた。広汎性発達障害につい ては、経年的に知的に伸びるとともに行動面 の問題や併存する問題が増えてくる可能性が 示唆された。

 不登校については、今回の学校調査で把握

された発達障害疑い児において、一般児童生

徒を対象とした福岡市の調査よりも有意に高

い割合でみられた。これまでの報告と同様

(9)

6)

、発達障害が不適応のリスクとなりうる ことが示された。また一般児童生徒の調査と 同様に学年があがるとともに不登校の割合が 高くなる傾向もみられた。

 本研究の限界として、療育拠点施設のデー タについて、殆どが幼児期までのものであり 調査時点までの人口の流入出が反映されてい ないことがあげられる。これは福岡市におい て療育拠点施設での新規受診や支援を幼児期 までとしているためで、小 1 群では年度当初 を調査時点としたためその影響は少ないと思 われるが、小 5 群においては医療機関の有病 率は近似的なものととらえられる。

E.結論

 福岡市における発達障害の支援ニーズに関 する調査として、医療機関と学校に対しての 疫学調査を行った。発達障害の有病率はこれ までの報告よりも高く、特に広汎性発達障害 が幼児期から多く把握されていることがあき らかとなった。知的な遅れのない児を含めて、

幅広い発達特性の児が把握されるようにな り、支援の内容も多様化している。

 今回の調査では、発達障害の特性が不適応 のリスクになりうることや、医療と教育にお いて発達障害の特性をみる視点の違い、療育、

医療、教育における評価や支援のつながりに おける課題があきらかとなった。

 早期に把握する療育の拠点施設から教育、

医療、福祉などの各機関まで、増大する支援 ニーズにそれぞれが対応をしている。各機関 の位置づけや機能、評価や支援の情報のつな がりについて現体制を検証し、改めて検討す る必要性が生じている。

F.研究発表 1 .論文発表 なし

2 .学会発表 

宮﨑 千明:自閉症スペクトラムの早期診断 と療育の抱える課題.第16回日本自閉症スペ クトラム学会、2017.9.2.福岡市

G.知的財産権の出願・登録状況(予定を含む)

1 .特許取得 なし 2 .実用新案登録 なし 3 .その他 なし

H.参考文献

1 )清水康夫、大澤多美子、佐竹宏之:提言

「政令指定都市」編, 厚生労働科学研究費 補助金(障害者対策総合研究事業)発達 障害児とその家族に対する地域特性に応 じた継続的な支援の実施と評価-平成25

~27年度総合研究報告書(H25-身体・

知的-一般-008), p.108-125, 2016 2 )Xu G, Strathearn L, Liu B, Bao W:Prev-

alence of Autism Spectrum Disorder Among US Children and Adolescents, 2014-2016., JAMA, 2 ;319(1):81-82, 2018 3 )本田秀夫: 総括研究報告書, 厚生労働科学

研究費補助金(障害者対策総合研究事業)

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課: 通常の学級に在籍する発達障害の可 能性のある特別な教育的支援を必要とす る児童生徒に関する調査結果について, 2012

5 )Altarac M, Saroha E: Lifetime preva-

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2007

(10)

6 )Kurita H: School refusal in pervasive

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参照

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