空気室に入射する浅水波ソリトンの減衰 空気室を直列に2つ接続した場合
加地 渉*1,山本吉範*2
Da皿ping of the Shallow−Water Soliton incident upon the air pump roo皿 一 a case of that two air pu皿p roo皿s are connected in series 一
Wataru KAJI and Yoshinori YAMAMOTO
In this paper, dissipated vave energy, that i s, output energy of the wave power device of a shallow−water soliton runs into the two air pump rooms conneeted in series i s described. By assuming the attenuat ion power proportional to average speed of vertical direction of vave surface, the air pump rooms are replaced by three barriers. The basic equation in case of one air pump room i s established, and this basic equation is extended and is used for this research. The effeet of the width L of the air pump rooms, which is a parameter of this basic equation, is analyzed numericaliy,
and the dissipated energy characteristic curve of a shallow−water soliton i s p1otted.
Key ords二Wave, Potential Flow, Natural Energy, Shallow−Water Soliton, Damping, Ocean Engineering
1.はじめに
浅水波ソリトンを利用して波力発電を行い,環境 にやさしいクリーンなエネルギーを得ようとする研
究がある1).浅水波ソリトンは,代表波長に比べて短い水深で発生する非線形波であり,波の分散性と浅 いことによる非線形性がバランスすることにより形
成される.浜辺にうち寄せる波はこの種の波であり,特長として粒子性を有する非常に安定なエネルギー 集中波である.また,この波の存在は100年以上も
前に運河で観察されている.日本は海に囲まれた国であり,周辺には多くの浅 海域が存在する.その海域に存在する波は,周期的 な波であっても浅水波ソリトンの連なりとして表示
できるこζが知られていう2).ζのことから,沿岸部や浅海域における波力発電に於いて,浅水波ソリト
ンのエネルギー特性を知ることは有用であり,浅海 域波力発電の実用化を促進すると共に,非線形波動
現象の理解をさらに深めることができる.本論文では,浅水ソリトンのエネルギー利用に関
する考察1)を基本に,空気室を2つに増やした場合を考察した.前論文では,空気室が1つの場合のモデ ルの設定と数値解析を実行し,減衰エネルギーと空
気室の幅および減衰定数との関係を明らかにした.この結果より,外部に取り出すエネルギーの大きさ に伴い,空気室の幅をどの程度に設定すべきかとい う,最適設計上の問題に有用な示唆を得た.本論文
*1津山工業高等専門学校 機械・制御システム工学専攻 2年
*2津山工業高等専門学校 電子制御工学科
では,この結果を基に,その拡張として2つの空気 室を直列に並べた場合の減衰エネルギー特性につい
て考察したので報告する.2. 問題の定式化
浅海域の波の振る舞いについて考えるが,浅海域 を単位幅の水槽と見立て,水平方向に進行する前進 波と反射した後の後退波のみを取り扱えば,空間を
二次元として議論できる.本論で扱う流体は水であり,厳密には粘性を考慮 すべきであるが,本流体系では粘性の影響は水槽の 底近傍と空気室の側壁近傍でのみ出てくると考えら れる.底面と側壁の間隔が十分開いていれば粘性効 果を小さくする事が出来るD.よって底面と側壁の間 隔を十分開ける事によって流体の粘性を無視する事
にする.
Kl
π:円周率,
ρ:流体密度 妨
万:φの平均傾
E :位置エネルギー,ア
g:重力加速度,r:
1:代表波長,
κ:水平座標関数,
2・1使用記号
本論中に使用する主な記号を以下に示す.
α:非線形パラメータ, β:分散パラメータ ζ :減衰定数 防:j領域の波高 :edge−1ayer境界変数,λ:初期波の位相速度
a:代表波高
ノ領域の速度ポテンシャル
E,:運動エネルギー
k:一定水深水面からのバリアの無次元長さ
t:時間変数z:鉛直座標関数
一17一
津山高専紀要第44号 (2002)
峨tt ¢J,のtでの2階偏微分, c:減衰定数 f, ノ領域の最低次の速度ポテンシャル
2・2空気室の設定
振動水柱式波力発電装置の構成の概略を図1に示 す.この装置は,空気室に波が入射すると室内の空
Z Turbine generator
ォ 昆
Air pu皿P 窒盾盾香@1
Air pu皿P 窒盾庶M2
O
qegion工
ム ち κ
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iR。gユ。、2iR,gi。。3iR、g1。、4} 1 ;
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^// / /Fig. 1 Model of the wave power device 気が外に押し出されるため,空気の流れが発生する.
その空気流により,空気室上部に設けたタービンを 回転させ発電させる.この時,波は空気を圧縮して 仕事をしているので,波の持つエネルギーは減衰す る事になる.空気室内での減衰は,タービンの特性 などを考慮した場合,複雑であるため減衰定数が全 ての要因を含んでいるものとして導入する.よって 本研究ではバリアを3っ並べ,バリア間に鉛直方向 の平均速度に比例した減衰力を仮定する事で空気室 に見立てるのである.このバリアは厚さが無視でき る垂直な壁とし,水面から突き出て底面には隙間が
ある.なお,水深は無次元化されており,1である.2・3 浅水波領域の基礎方程式
まず,流体の特性は非圧縮,非粘性の完全流体と 仮定し,主なし二次元ポテンシャル流れについて考 える.前述のように空気室を設定し,減衰のある浅 水波を扱えるように,従来のBoussinesqの理論3)の 拡張を行うが,定式化に際して,バリア近傍では他 の領域と同等に扱う事が困難である事に注意が必要 である.それはバリア近傍では流れの急激な変化が 非常に狭い範囲(この領域をedge−1ayerと呼ぶ)で 起こるためである.そこで,edge−layer理論をここ
でも導入する1)・4).以下に各領域の基礎方程式及び境 界条件を示す.β鵜+幅=O,f・r−1<・<α防,
¢J・,. = O, at z =一1,
ny1・4+¢1・・,t+9[(¢…,・ア+去(A ・,・ア]一・・
at z=aql.4,
rp・・3+¢…,t+9[転ア+施
at z==any2.3,
¢」・,z−firpJ・,t−afi¢J・,.nyJ・,. :O, at z=arpJ・・
(1)
(2)
(3)
ア﹈
+ζφ2.,=0,
1霧
添字ノ(躍1,2,3,4)は式の属している領域を示して しており,ノ=1・4は空気室外.ノ=2・3は空気室内で
あることを意味している.山中のコンマのあとの変 数はその変数で偏微分している事を表す.また,こ
こで座標(X,z),時間t,速度ポテンシャルφ(X, Z,t)
及び波高η(x,t)は無次元化されており,その式を以 下に示す.
・÷÷照準ψ=φ嘉=砂
(9)
なお,星印(うは有次元量である.無次元化にともな って,減衰定数として,次のものを用いる.即ち,
clζ=
}莇・ (10)
パラメータのαとβは十分小さい無次元量で
α一号β=誓 (11)
である.なお,無次元化したLaplaceの方程式(1)の 解は
礁←βγ(z + 1)2n 02nfj , (12(2n)1 ox2n)
である3).
領域間の境界条件は,1っのバリアについて求めれ
ば十分なので,領域1と領域2での境界条件のみを示す1).即ち,
fi,. 一 f2,. =O(afii 2,fi3 2), (13)
ん一ん一β 12κ1ん+0傾112,β3 2).(14)
ここでん1は
である.
Kl一藻?j}
3. 系のエネルギーと計算結果
系の初期値として,杉本らのソリトン解
!一一右剛D(・+・at−C)1(15)
(16)
をバリアから十分離れた位置からの入射波として用
いる4).これは,計算結果の比較を行うためにも,文 献(1)と同じにしておく必要があるためである.ここ 一6・Z=1+α/2,D=レα/ 圃12であり,Cはt=0での波のピーク位置を与える.水槽の垂直壁は 反射波の影響を少なくするためにバリアから十分離 れたところに設ける.また,バリア近傍では波の挙 動が複雑になる事から,きざみ幅を他の部分よりも
小さく設定した.一18一
空気室に入射する浅水波ソリトンの減衰空気室を直列に2つ接続した場合 加地・山本
3・1系のエネルギー
この系の全エネルギーは運動エネルギー一一 E,とポ
テンシャルエネルギーEの和で表される.この系は 単位奥行きを考えているので,無次元化された運動
エネルギーとポテンシャルエネルギーはそれぞれ,E・一 ¥ぱ1蹟φ〔去¢z吻〕奴
E.=去丙ゲ1爵微
(17)
(18)
となる.波の散逸されたエネルギーは波の初期エネ
ルギーの減少分として求めることができる.また,バリアの深さによって波の反射が変わるが,ソリト ンが1つのバリアに入射するとき,バリアの深さが 水深の半分以内なら反射がほとんど起きないことが わかっている1)ので,以後数値計算はr=0.5で行
う.
→987654ヨ21000000ロ00 簡q電
D
i c=at + iζ昌05 一一 1 C=1.0 +
3・2計算結果
空気室の幅4,L2を変化させたときの減衰エネル ギーをそれぞれ図2と図3に示す.この2つの図と,
文献(1)の空気室が1っの時の空気室の幅に対する減
衰エネルギーの結果との比較から,空気室を2っ直 列に接続した方がエネルギーの取り出せる量が多く
なることがわかる.また,このような空気室を設計
する際に,問題となるのは空気室の幅4,L,であり,この2つのパラメータを小さくすることにより,よ りコンパクトにすることが必要である.4を固定し,
L2を変化させたもの(L2/L,)と,4を変化させ, L2 を固定したもの(ム/L2)を図4に示す.
,
09 F−
ee p一
[T
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討。.5
0.1
巳3
0.2
01 F
1 1 li:gg=
i 1 …
求≠奄潤@+
o
ロ ロる コる ユ
Ll/L2
Fig・ 2 Ratio EDζ of the dissipated energy to
the incident one against the width 4(α/β=9. 25,
α=0.1,r=0.5,L2 一1.0)
ロ ロお ぢ
L2/L隻
Fig・ 3 Ratio EDζ of the dissipated energy to the incident one against the widthゐ2(α/β;9.25,
α 一〇.1,r=0.5.4;LO)
1
og
DB O7 06 ぎ05
04
0ヨ
02 nt
o
i L且/五2一一一
l i L/L,一一O O.5 1 15 2
為 屯orら!恥
Fig 4 Ratio E.4 of the dissipated energy to
the incident one against the width L,, L, (〈1 =1.0,
a/!7 一9. 25, a 一〇. 1, r−O. 5, Li or L2 =1. 0)
図4より,L2を変化させ,ムを固定したものの方 が,ピークが左にずれていることがわかる.これは,L,
ではL2に比べ,取り出せるエネルギーがいく分か少 ないためであるからと考えられる.この結果から,
直列に接続する場合,L2は4に比べコンパクトに
した方が取り出せるエネルギーが大きいことがわか った.そのため,実際に設置する際に有利となると
考えられる.また,文献(1)の結果と図(3),図(4)を比較し,取り出せるエネルギーの比を表1,表2に示 す.なお,2つの空気室の幅を足したL,+L2と,1 っの場合の空気室の幅しが同じになるようにして比
較している.Table 1 Ratio of the dissipated energy of the width L and width (L2/Li)
L2/右=0.0
@,L=1,0
L2/ム=05,
@ L;15
五2/ム=1.0,
@L=2.0
ζ=0.1 1.00 1.38
L65ζ=0.5 1.00 1.51
L76ζ=1.0 1.00
L651.93
一19一
津山高専紀要第44号 (2002)
Table 2 Ratio of the dissipated energy of the
・idth L・nd・idth仏/L,)
ム/L2=0.0・
@L=1.0
ム/L2=05・
@ 五=L5
ム/五、=1.0・
@ゐ=2.0
ζ=0.1 1.00 1.38 1.65
ζ=0.5 1.00 1.51 1.76
ζ=1.0 1.00 1.62 1.93
この2つの表より,空気室が1つの場合と,2つの場
合の減衰エネルギーの比の値がわかる.ζ が大きい方が,また空気室の幅が大きい方が比の値が大きく なる.図4と表より,空気室の幅が変わり比の値が 大きく変わっても,減衰エネルギーの量そのものに は大きな違いがないことがわかる.また表より,
L2 IL, =O, L, /L2=0での各エネルギーの値の比 が1.00になり,文献(1)の結果と一致していること から本数値計算の正しさを立証することができる.
これまでは散逸エネルギーについて考えてきたが,
空気室周辺での浅水ソリトンの挙動を図5に示す.
図5において,バリアの位置はx=8とx=9と
x・=10である.この位置では波が不連続になってい ることがわかる.バリアを通過するたびに僅かな反 射が起きているが,安定して伝播しており,t=2.8
とt=6.4のときの波高のピークを比較することで,
浅水ソリトンの減衰を観察できる.
4.おわりに
固定された振動水柱形波力発電装置のモデルとし て,空気室を直列に2つ並べたときの浅水ソリトン
のエネルギー特性を調べた.そして文献(1)の結果と 比較した結果,(1)4が代表波長程度の幅があれば,L2は.L,よ
りもコンパクトに収めることができる.(2)空気室は2っ直列に並べた方が得られるエネ ルギーは大きく,空気室の幅が大きい方が減衰エネ
ルギーの比の値が大きくなる.が得られた.これらから,浅水ソリトンの性質をよ り有効に利用するには空気室を複数個並べた方がよ
いことが明確になった.参 考 文 献
(1)山本,鈴木,浅水波ソリトンのエネルギー利用に 関する考察,日本機械学会論文集B編,67,
(No.656), (2001), 948.
(2) Stiassinie M, Peregrine D. H., J. Fluid Mech.
97, (1980), 783.
(3) Whitham G. B., Linear and nonlinear waves,
Wiley−lnterscience, (1974) ,431−484.
(4)杉本信正,ながれ,6,(1987),319.
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ど ア む ロ れ
Fig. 5 Wave motion around the air pump roo皿
(α/β=9.25,α=0.1,r=0.5,ζ=0.5,ム=五2=1,0)
一20一