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高精度X型プローブ製作法の開発
渡部英昭
ANewMethodforMakingmoreaccurateX‑wirePrObes
HideakiWATANABE
(1999年11月30日受理)
InameasurementofHowfield,X‑wireprobesareusedforsimultaneousmeasurementof
twovelocitycomponents.TherearesomerequirementsfortheaccuracyofX‑wireprobes, andthetypicalaccuracyisthatonewireoftheX‑probesisatarightangletotheother.This reportproposedanewmethodtomakemoreaccurateX‑probeswithease,andevaluatedthe crossinganglebetweenthetwowiresofanX‑probethatmadebyusingthismethod.
β :プローブと主流の交差角度[。]
β:熱線間の交差角度[。]
その他の記号については本文中で定義する。
1. 緒
一一二宮
実験流体力学の世界で,流れ場の測定にもっとも 広く使用されているのは熱線流速計である(1)。この
計測法は,装置の取り扱いが容易であること,低速
流から高速流まで幅広い測定範囲を持っていること,平均値と変動値の分離が容易であること(2),時間
的分解能や空間的分解能が高いこと(3),周波数特性 がすぐ.れていること,時系列データを容易に, しか もリアルタイムで得られること,安価であること,自作も可能であることなど非常に優れた特長を有し
ている。
熱線流速計は,流速検知部であるう°ローブおよび 検知した流速を電圧として出力する流速計本体から
構成されている。そのため精度の高い測定を実現す るには,流速計本体の精度向上を図るだけでなく,
流速検知部としてのう°ローブにも高い精度が要求さ れる。特に2方向速度成分を同時に検出できるX型 プローブの場合,プローブの精度は熱線流速計の空
間的分解能を決定するだけでなく,検出される速度
成分の精度にも重大な影響を与える。 よって本研究では,精度の高いX型プローブを容易に製作できる 治具の開発と製作を目的としている。そして,完成
した治具を用いて実際にX型プローブを製作し,そ の精度を検定した。
3. プローブについて
3.1 プローブの構成
図1に示すように,プローブは通常,流j する熱線, それを支持する複数本の支持針,
図1に示すように,プローブは通常,流速を検知 する熱線, それを支持する複数本の支持針, リード
線,基板,およびそれらを保持する支持台(ステム)
から成っている。熱線として使用される金属線は,
直径の小さいものほど熱容量が小さいため周波数特 性がよく, また加熱電流も小さくて済むので理想的 であるが, その反面強度的に弱いため,通常直径1
〜5〃mの白金線やタングステン線などが用いらる
ことが多い(4)。支持針の材質としては,岡I性が高く,電気伝導度の良好な金属が適しており,流速がごく 低い流れ場の測定に使用される場合は, ごく細い縫
い針, もしくはドリルロッドやピアノ線の先端をオ イルストーン等で研磨して細くしたものなどが多く 用いられる(4)。支持針間の導通を避けるため,基板に は絶縁体が使用される。一方,支持台には加工性に 優れた材質が使用される。基板の場合と異なり,支 持台は絶縁体である必要はないが,後述するように 両支持針間が導通しないよう注意しなければならな
い。
2. 使用記号
3.2 プローブの種類
流れ場の測定に使用されるプローブは,現在まで α:熱線と主流の交差角度[。]
単な演算を行うことにより互いに直交する2方向の 速度成分を検知できる(1)。ここで,流れ場の測定を行 う際の両者に共通した注意点は,プローブ挿入によ って発生する流れ場の乱れを極力抑えることと,熱 線長さで決定される2次元的な空間的分解能を高く することである。このうち,乱れの発生を極力抑え
るにはう。ローブを小型化すればよく,空間的分解能 を2次元的に高くするには,熱線長さを短くすれば よい(1)。 よってI型(SN)プローブの場合, これら の点を考慮してプローブを製作し,熱線が主流方向 と直交するよう流れ場に設置すれば測定を行うこと ができる。
一方x型の場合は,この他にも注意すべき点がい くつかある。 X型は,図3に示したように, 2つの SYプローブから出力される電圧を演算することに よって2方向の速度を検知する。そのため, これら の熱線長さが異なる場合は,両熱線間における電気 的特性や空間的分解能に差異が生じ, その結果,精
度の高い測定力:できなくなる。 よって両熱線長さを
完全に等しくして同等の空間的分解能と電気的特性 を持たせる必要がある(')。また,演算式における各熱 線と主流の交差角度αは,演算を単純化するため通常士45.と設定されることが多い。そのため,少なく
とも両熱線が直交していないと演算結果に誤差を生 じることになる(')。前述したように,X型プローブは
背中合わせに組まれた2つのSYプローブにより構
熱
帥口
図1 1型(SN)プローブ
に多種多様にわたって考案されているが,最も広く 使用されているのは,図1のような,プローブ軸線 に直交する熱線を1本持つI型(SNプローブとも 呼ばれる(5)),および図2に示すような,軸線に対し 傾斜した熱線を1本持つI型(SYフ・ローブとも呼 ばれる(5))を2個組み合わせたようなX型である。
熱線は, それ自身に垂直な方向の流れしか検知でき
ない(6)ことから,前者の場合1方向の流速だけを検 知できる。一方後者の場合は,図3に示すような簡
J0、、執
U=(e!+ej/(2cosCM)
Y
,)/(2sind)
ウ I茨
図2 X型プローブ 図3 2方向速度成分の演算
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高精度X型プローブ製作法の開発
成されているため,X型プローブにおける両熱線の 直交を保証するためには, これらSYプローブが完 全に同形であり, しかもそれぞれの熱線がプローブ 軸線に対して厳密に45.を成していなければならな
い。
よって本研究では,これらの条件を満たすx型プ ローブ(もしくはSYプローブ)を容易に, しかも精 度良〈製作できる治具の開発と製作を行い, この治 具を用いてx型プローブを製作し,プローブ精度の 検定を行った。
定する手段が必要であるため,上下方向固定用およ び横方向固定用の押さえ板を治具上に取り付け, そ れぞれをナットで治具上に固定できるようにした。
また,ハンダ付けを行う際の熱対策として,横方向 押さえ板を耐熱性の良好な板厚1mmのマイカ(雲
母)板で製作した。また,ハンダ付けの際, こて先
が触れることによって支持針がプローブ軸線側にず れるのを防ぐため,すぐれた弾力性を持つ厚さ5 mm程度のスポンジゴムを上下方向固定用押さえ板 の下面に貼り付け, これを上方から2本の支持針に 押し付けることにより,支持針固定効果を高めた。次に条件②を満たすには,プローブ軸線に対し支持 針先端を正確に位置決めすることが必要である。そ のためには,治具上におけるプローブ軸線を規定し なければならない。 よって本研究では,プローブ軸 線規定用として,プローブを支持台に固定する際に 使用される2つのビス穴を利用することにした。す なわち, これらの穴に対応する治具上の位置にそれ ぞれ雄ネジを植え込み, 2本の雄ネジの中心を結ん だ直線をプローブ軸線と定めた。そして, この軸線 に対して45.で交差する壁面を治具上に形成し,この 壁面に2本の支持針の先端をそれぞれ突き当てるこ ととした。この結果,プローブ軸線と支持針先端間 とが成す角度を正確に45.に設定すること力:可能に なった。 さらに,条件③を満たすため,前述の横方 向押さえ板を可動式にし,支持針先端間の距離を任 意に設定できるようにした。そして先端間距離を設 4. プローブ製作
4.1 プローブ製作のプロセス
プローブを自作する場合の製作プロセスは以下の 通りである。まず,ガラスエポキシ等の絶縁体の表 面に,互いに導通しないよう2カ所に分離して銅箔 などの良導体を接着する。これがプローブの基板と なる。次にこれら銅箔の上に, それぞれ支持針およ びリード線をハンダ付けする。そしてこれを支持台 にネジ止めする。この時ネジを介して両方の支持針 が導通していないことを,テスター等で確認してお く必要がある。最後に支持針先端に熱線を溶接すれ ばプローブは完成する。
4.2従来の製作方法
従来のプローブ製作法は,方眼紙上に描いたプロ ーブの実寸図面上に基板を載せ, その上に2本の支 持針を図面に合わせて配置し, これらを指で押さえ てハンダ付けしていた。そのため製作精度は必ずし も良好ではなく,前述した条件を満足できるXプロ ーブを製作するのが非常に困難であった。また,支 持針を基板にハンダ付けする際,支持針および基板 を押さえる人間とハンダ付けを行う人間の2人が必 要であった。
)
4.3改善策
以上のような欠点を改善するための条件として考
えられるのは,①1人でプローブ製作を行うことが できること,②支持針先端をプローブ軸線に対して 正確に45.を成す位置に配置すること,③熱線長さを 自由に設定できること,④同一形状のSYプローブ を複数製作できること,などである。 よってこれら を考慮に入れ,治具の開発と製作を行った。完成し た治具を図4に示す。まず,条件①を満たすには,基板上に支持針を固
図4 X型プローブ製作用治具
は, 2本の熱線の交差角度が厳密に90.を成すことで ある。よって,今回製作したx型プローブの交差角 度を,以下の方法により検定し,今回開発した治具 の効果を調べた。
前述したように,熱線はそれ自身に垂直な速度成 分しか検知できないため,主流方向に対して熱線が 直交した時のみ出力電圧が最大値を示す。この角度 を仮にピーク位置と称する。そして両熱線のピーク 位置が分かれば,熱線間の交差角度を知ることがで きる。 よってそれらを調べるため,図6に示すよう な角度検定器を製作した。この検定器は,主流に対
してプローブ角度を任意に設定できる可動式アーム と, その角度を知るための分度器,およびプローブ からの出力を熱線流速計に伝えるためのリード線,
BNCコネクタなどから成っている。
角度検定の手順は次の通りである。まず,製作し たX型プローブを検定器の可動式アーム先端に取 り付ける。この時,各SYプローブの2本の支持針に より構成される2つの平面が, どちらも鉛直方向を 向くように注意する必要がある。次に流れ場の中に 検定器ごと入れ,両熱線の較正を行う。それからア ームを動かして主流に対するプローブ角度をO
〜180.まで5.毎に変化させ,各位置における両熱線 の出力電圧を測定する。その結果を図7に示す。横 軸は主流に対するプローブ角度:8.,縦軸は各位置 における熱線1, 2の出力電圧e1, e2をピーク位置 での電圧elmax,e2maxでそれぞれ無次元化している。
図から明らかなように両熱線のピーク位置は, それ ぞれ53.と142.5.であることが分かったため,両熱線 の交差角度は89.5.と算出された。この結果,今回製 作したX型う°ローブの熱線交差角度は,90.から0.5°
だけずれていることが分かった。これを図3に示し 定した後, これらの板をナットにより固定すれば,
支持針位置決め用のケージとしても使用できるた め,全く同形のSYプローブを複数製作することが 可能となった。この結果,条件④を満たすことがで きた。以上のような治具を用いて全く同形のSYプ ローブを2個製作し, これらを図2のように背中合 わせに組み合わせることによりx型プローブを構
成した。
4.4 X型プローブの精度検定
今回製作したX型プローブを図5に示す。熱線と しては直径5〃mのタングステンワイヤを使用し,
支持針としては,精度が均一であり入手もしやすい などの点から,市販されている直径0.51mm長さ 28.8mmの絹縫い用針を使用した。プローブ基板と しては電子回路用のガラスエポキシ製プリント基板
(厚さ1.5mm)を使用したが, このままでは厚すぎ るためエンドミルにて厚さ0.5mmまで切削した。
支持台は,加工のしやすさから真鐡製とした。プロ ーブの空間的分解能を2次元的に決定する熱線長さ は,いずれも0.9mmとした。これらのSYう°ローブ は2個のM1ネジおよびナットによって支持台に取 り付けられている。さらに, これらのネジにより両 熱線間距離の微調整も可能であるため,熱線間距離 を小さくすることにより,プローブの空間的分解能 を3次元的に高めることもできる。今回はこの間隔 を0.3mm程度に設定した。
以上のように,X型プローブにはいくつかの精度 が要求されるが, それらの中で最も重視すべき精度
ル Xプ
流汐
図5 製作したXプローブ 図6 角度検定器
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高精度X型プローブ製作法の開発
5. 結
一二自
42
●●
11
X型プローブを製作するための治具の開発と製 作を行い,以下の結果を得た。
(1)X型プローブの製作を1人で行うことが可能と
なった。
(2)高い空間的分解能と,高い精度の交差角度を持つ X型プローブを容易に製作することが可能とな
った。
I
1864 00O
xmE函の︑函の︽xmE−の一の
0.2
0
80 120 160
8(deg) 角度検定結果
0 40
6. 参考文献 図7
(1) 蒔田,流れの計測,Vol.12,No.16,pp3〜ppl7,
1995
(2)笠木他,流体実験ハンドブック,朝倉書店, pp
74〜pp91,1997(3)蒔田,実験洲本力学(EFD)流れの計測技術の 基礎と応用, 日本機械学会, 1993,pp21〜pp30
(4)谷ほか,洲本力学実験法,岩波書店, 1977,ppl4
pp29
(5) Brunn,H.H.,Hot‑wireanemometry,Oxford Univ.Press, 1995
(6) 日本流体力学会編,流体力学ハンドブック,丸
た演算式に当てはめて計算した結果, このずれは出力される流速に対して約0.8%の誤差を生じること が分かった。ここで,熱線流速計を用いて流れ場の 計測を行う場合,較正の精度は通常±0.5%程度の誤 差を含むことから,流速に対する0.8%の誤差はほと んど問題にならないことがわかる。 よって,今回開 発した治具により製作されたX型プローブは, 2本 の熱線の交差角度についても十分な精度を持ってい
ることが明らかとなった。
善, 1998,ppll71〜ppll77