中国自動車強制保険の賠償責任に 関する一考察
李 黎 明
*
.はじめに
.保険市場と保険法制の背景
.自動車強制保険法制の概要
.事案例から見る問題の所在
.自動車強制保険の賠償責任
( )強制保険条例における賠償責任について
( )公平責任原則の強制保険への適用について
.むすび
.はじめに
現在、世界有数の自動車メーカーが殆ど中国に進出している。人気の日本 車も道ある道を走行している。古来から「車到山前必有路、船到橋頭自然直」
(和訳:車が山に到れば必ずや道路あり、船が橋に到れば自然と直なり)と いう諺 がある。しかしいまは、「車到山前必有路、有路必有豊田車」(和訳:
車が山に到れば必ずや道路あり、道路があれば必ずや豊田の車あり)と言う
*福岡大学法学部教授
諺の意味は、事前に心配せず、その時になったら、問題は自然に解決されるという。
のであろう。豊田が中国に入った当初、このような替え玉で作った上記宣伝 文句が、毎日テレビのコマーシャルで流されていたため、人々はもともとの 諺より、豊田の宣伝文句のほうがピンと来るようになったわけである。
中国では、自動車の増加につれ交通事故も増え続け社会問題となっている。
その対策の一つとして、日本の自賠責保険に当る「自動車交通事故責任強制 保険」(略称 交強険 又は 強制保険 、以下 強制保険 という)が、国 務院制定の「自動車交通事故責任強制保険条例」(以下 強制保険条例 と いう)とともに、 年 月 日から施行され、すでに十年経った。
現在、日系損保 社 を含む十数社の外資系保険会社も、自動車強制保険 の販売許可を取得し、この強制保険を取り扱っている。
年度の統計によると、中国自動車強制保険契約車数は ・ 億台、契 約率は %に達している と保険監督委員会(以下 保監会 と略称)は公 告しているが、他の統計によると、 年末まで、中国の自動車総数は ・ 億台、この数字で計算すると、契約率は違ってくる 。とにかく、この巨 大な強制保険市場の延長線に、更に巨大な自動車任意保険市場がある。
というのは、中国も日本と同様に自動車保険は「強制保険」と「任意保険」
の二階建てとなっているが、日本のような両方の保険金を一括して請求する 制度がないため、別々の保険会社と契約してしまうと保険金支払い請求に二 重の手間がかかるから、同じ保険会社の「強制保険」と「任意保険」に入る のが普通である。この意味では、日系損保会社は中国自動車強制保険市場へ の参入によりはじめて本格的に中国損保市場に進出したと言えよう。
損保ジャパン日本興亜ホールディングスの現地法人 日本財産保険中国有限会社 、東京海 上ホールディングスの現地法人 東京海上日動火災保険中国有限会社 、それに 年 月、
三井住友海上火災保険株式会社の現地法人 三井住友海上火災保険中国有限会社 の 社であ る。
保監会 HP、http://www.circ.gov.cn/web/site0/ 年第 号公告による。
中国では、正確な統計を把握するのが至難の業。
注意すべきなのは、自動車市場や自動車経済のグローバル化と異なり、自 動車関連法制乃至社会の法システムが各国の近代化の進み方により差がある ことである。後述するように、もともと中国保険制度の基礎が脆く、其の上 に立つ自動車強制保険にはハンディがあるわけである。日本の自賠責保険と 異なる制度規定や適用実態については、中国進出保険会社のみでなく、すべ ての中国進出企業がそれを知る必要があるのではないかと考える。
.保険市場と保険法制の背景
年英国人により広州保険会社が設立されてからの約 年間、中国保 険市場における外国保険会社による独占的支配が続いていた。中華民国時期 の資料( 年の中国保険年鑑)によると、当時約 社の保険会社の内、
中国系保険会社が僅か 社(民営 社、国営 社)だった。これら中国系保 険会社は、いずれも小規模で、競争力もないため、中国保険史においては、
この時期を保険市場の外資独占期と言えよう。
年 月 日より、中国のことが中華民国から中華人民共和国に変わっ たため、すべての外資系保険会社は、余儀なく国外退去させられた。中華民 国当時の保険会社も殆ど社会主義革命の波に潰され、ごく一部が中華民国政 府と一緒に台湾に渡ったのである。
同年 月 日、中華人民共和国政府により、中国人民保険会社(PICC)(国 営)が設立され、保険市場の一社独占となった。実は、この中国人民保険会 社(PICC)も、中国人民銀行国外業務管理局保険処として、わずかな渉外 保険しか取り扱わなかった。 年〜 年の 年間、国内の保険事業が皆無 状態であったため、この時期を保険市場の空白期と言えよう。
年代に入って、改革開放路線に乗り出した中国では、保険業務も徐々に 再開された。 年に中国人民保険会社 PICC が、中国人民銀行から独立し、
国務院直轄の国営保険会社となった。
年、中華人民共和国初の「保険法」が施行され、その 年後に自動車 強制保険条例が制定・施行された。しかしながら、約 年の外資独占期と 年余りの空白期を経て、中国では保険に関する実務経験も理論研究も欠如 し、保険人材や専門家等が不足している背景があるから、保険法であれ、強 制保険条例であれ、立法理論又は立法技術の未熟さが顕在し、法規制の問題 点も散在している。保険実務においても、司法実務においても混乱さえ見ら れ、課題も山積している。本稿は、自動車強制保険における賠償責任に焦点 を当て検討することにする。
.自動車強制保険法制の概要
前世紀 年代に入ってから、自動車強制保険の意義が、徐々に中国社会に も意識され、政府の呼びかけもあり、一部の地方では実験的に自動車強制保 険を実施しはじめた。 年から、国務院主管の下、「自動車責任法定保険 暫定条例」(原語:暫行条例)の研究・起草がスタートした。
年に「道路交通安全法」が公布され、その第 条では、「国家は自動 車第三者責任強制保険 制度を実行し、道路交通事故社会救助基金を設立す る。具体的な規定は国務院により定める。」と規定された。
これを受けて、国務院は上記暫定条例草案を「自動車交通事故第三者責任 強制保険条例」と名づけ、幅広く意見を募集するため公開した。その後、 第 三者責任強制保険 という概念が一般大衆にとって分かり難いとの意見によ り、「自動車交通事故責任強制保険条例」という名称に変更され、 年に 公布・施行されたわけである。
本強制保険条例は、中国保険法と同じ構造で、即ち保険契約関係の規定と 保険業関係の規定からなっている。全 条の内、契約法関係は 条、業法関
この「自動車第三者責任強制保険」が即ち「自動車交通事故責任強制保険」(略称「交強険」
又は「強制保険」)のこと。
係は 条がある。本節では、重要と思われるいくつかの規定内容を紹介する ことに止まる。
強制保険条例施行された当初、自国資本の保険会社にしか自動車強制保険 業務を認めなかった(第 条規定)が、 年の改正により、外資系損保会 社も中国系損保会社と同様に、保監会の許可を受け販売できるようになった。
年まで、中国自動車強制保険を取り扱う損保会社 社のうち、外資系損 保会社(欧米、韓国、台湾勢)が 社含まれる。 年 月、損保ジャパン 日本興亜ホールディングスの現地法人 日本財産保険中国有限会社 、東京 海上ホールディングスの現地法人 東京海上日動火災保険中国有限会社 、 それに 年 月、三井住友海上火災保険株式会社の現地法人 三井住友海 上火災保険中国有限会社 の日系損保 社も、自動車強制保険の販売許可を 取得し、中国の自動車強制保険及び自動車任意保険を取り扱うようになった のである。
強制保険条例第六条では、「自動車交通事故責任強制保険が統一的な保険 約款と基礎保険料率を採用する。保監会により、ノーロス・ノープロフィッ トの原則に基づいて料率を決めるものとする。」と定められた。
なお、同条例第八条では、被保険者の交通規則違反歴および事故歴に応じ、
基本料率を基準にして、 年ごとに適用料率が決まる仕組みとなっている。
具体的な基本料率は、保監会の規定により、 元(約 円 )/年であ る。この基本料率に対応する賠償限度額も、保監会の規定によるものであり、
本稿 節で紹介する。
本稿は 人民元= 円の為替レートにより換算したものを表示。
.事案例 から見る問題の所在
事案一
Y の運転する車が横倒しになった瞬間、近くにいる X が巻き込まれ怪我 した。交通部門(交通警察のこと)の事故認定書によると、この事故は双方 当事者のいずれにも過失がない。その後、双方当事者間の協議が失敗し、X が損害賠償を求め提訴した。
X は、Y の運転する車が横倒しになったせいで自分が怪我したのだから、
Y が強制保険の賠償限度額を超えた損害について、すべて賠償すべきだと主 張した。
これに対し、Y は事故の発生に関して自分には過失がなかったので、強制 保険の賠償限度額を超えた損害について、 %を超えない賠償責任を負うべ きだと反論した。
Y 保険会社も、強制保険の被保険者には過失がないのだから、 %を超え ない賠償責任を負う。つまり過失ない賠償限度額で賠償することを主張した。
争点:双方当事者のいずれにも過失がない場合、Y 被保険者と Y 保険会 社が、どのように賠償責任を負うのかが争点である。
一審:双方当事者のいずれにも過失がないため、Y 保険会社は強制保険の 過失ない賠償限度額内で、X に 元を賠償する。X の怪我が Y の運転す る車の横倒しによるものだから、公平責任原則に基づき、強制保険賠償限度 額を超えた損害については、Y が賠償するものとする。よって、Y が X に 対し、 . 元を賠償する。
二審:Y が自分の無過失を証明できなければ、事故の全責任を負わなけれ
中国では「判例時報」のような刊行物がないため、HP(原語:網)、マスコミの報道及び一 般書物に散在する裁判例を収集するのが一般的である。その書き方や言語の表現乃至書く人の 立場がまちまちである。本稿はできるだけ裁判所(原語:法院)の HP か出版物から裁判例を 採り、原文を保ちながら整理短縮したものを判例と言わずに事案として使用する。
http://www.gzcourt.org.cn/index.html 広州市黄埔区法院網 年 月 日
ばならない。よって、Y 保険会社が強制保険の過失ある賠償限度額で賠償す べく、X に 元を賠償する。残りの賠償金額 . 元については、Y が全額支払うよう命じたのである。
上記事案の実損額 ・ 元については、一審、二審ともに同じく認め た。但し、その賠償責任についての認定方法が異なるため、判決の結果も大 きく異なったわけである。
一審判決では、本件事故についての交通部門の事故認定書に基づき、Y に は過失がないと認め、Y 保険会社が強制保険の過失ない賠償限度額(後述の 強制保険賠償限度額の %以下)で賠償すると判決したのである。また、中 国民法上の公平責任原則に基づき、Y は過失がないものの、強制保険の賠償 限度額を超えた損害について、全額賠償するとの判断である。
これに対し、二審判決では、交通部門の事故認定書を根拠にせず、過失推 定責任原則に基づいて、Y が自分の無過失を立証できなければ、事故の全責 任を有すると判断したのである。よって、まず Y 保険会社が強制保険の賠 償限度額で賠償するものとし、残りの損害額について、Y が全額賠償すると 判断したわけである。
皮肉にも、加害者(被保険者)Y には過失がないと判定した一審判決によ る賠償金が多いのに対し、過失があると判定した二審判決では、かえって Y の支払う賠償金が少ない結果となる。これは、後述の強制保険条例に規定さ れた賠償責任の特徴と関係している。
事案二
Y (会社)所有の車を同所属の授業員が運転し、工事現場を出て近くの道 路に乗りあげた瞬間、石をはね飛ばし、歩行者の X を怪我させた。交通部
国家法官学院案例開発研究センター編「中国法院 年度案例」中国法制出版社 頁
門の事故認定書には、意外な事故であり、双方のいずれにも過失がないと記 載されている。X がその後の治療費並びに車椅子代金や通院費など、合計損 害額 . 元の損害賠償を求め提訴した。
一審:本件交通事故は意外な原因により生じた事故であり、双方のいずれ にも過失がないとの交通部門の認定書がある。しかし、Y が工事現場を出る とき、注意義務を怠ったため、石をはね飛ばし、歩行者を怪我させたと判断 できる。
従って、道路交通安全法第 条に基づき、まず Y 保険会社から強制保険 の賠償限度額で賠償する。不足部分について、自動車と歩行者の過失割合に より責任を負うものとする。本件では、Y には過失があり、強制保険の賠償 限度額を超えた損害の %を X に賠償しなければならない。
よって、Y 保険会社が強制保険の賠償限度額内で . 元を賠償する。
Y が残りの . 元の %の . 元を賠償する。
二審:Y 保険会社の上訴棄却、一審支持。
本事案の判決について、裁判官評論欄には下記のような解釈が掲載されて いる。
被害者への損害賠償は強制保険制度の主要目的である。被保険者の過失 は保険会社による損害賠償の前提要件となっていない。よって、保険会社の 賠償責任と加害行為における過失の有無とは無関係である。即ち、わが国の 強制保険は、被害者への損害填補を重視する基本保障型である。上訴人 Y は、被保険者には過失がなければ、賠償限度額の %以下で賠償する、つま り過失ない賠償限度額で賠償すべきと主張したが、実はこのような規定は、
被保険者には過失がなく、被害者には過失があり全責任を有する場合を指す ものであり、本件のような被害者にも全く過失のない場合を定めたものでは ない。
この強制保険の賠償責任についての無過失責任に近い判決と解釈は、一応 納得できる。但し、本件被害者には過失がないなら、なぜ残りの損害額 . 元について、Y と X に分担させたのかについては疑問であるが、関連の説 明がなかった。
前述両事案の判旨と裁判官の解釈を合わせると、過失責任、過失推定責任、
無過失責任、公平責任という四つの帰責原則が見えてきた。所謂中国民法に おける四大賠償責任である。次の 節で、二つに分けて、中国自動車強制保 険の賠償責任はどういう帰責原則で、どのように定められているのか、その 在り方を探ってみること、また中国民法上の公平責任原則の強制保険への適 用が妥当かどうかについて検討することにする。
.自動車強制保険の賠償責任
( )強制保険条例における賠償責任について
日本自賠責保険法の過失推定責任に対し、台湾強制自動車責任保険法(以 下 台湾強制保険法 という)には無過失責任を採用している。但し、史的 に考察すると、台湾強制保険法も過失責任、過失推定責任、無過失責任のよ うに進化してきた ものである。現行台湾強制保険法について、日本の学者 より称賛され、以下のような特徴が纏められている 。
①強制保険に関する限り、完全な無過失責任が採用された結果、加害者で ある自動車所有者が免責されることは皆無であり、その分被害者・遺族の救 済は完璧である。②強制保険に関する限り、被害者の過失は一切不問であり、
その分保険金の支払いは迅速・確実である。③ 年の発足時には、 万 台湾ドル(約 万円。 台湾ドル= ・ 円で計算した場合)であった強制
王明智 著 「現代汽車保険理論 実務」華泰文化事業公司 年 〜 頁。
鈴木辰紀 編著 「日台中の自動車保険」成文堂 年 頁。
保険の死亡・後遺障害保険金限度額は 度の増額改定により、現在は 万 ドル(約 万円)となっている 。④自動車事故被害者の迅速・確実・網羅 的な救済の点で、台湾の強制自動車保険は模範的といえる。
中国の強制保険条例は、日本の自賠責保険法は勿論のこと、台湾の自動車 強制保険法よりも十年遅れて作られたものだけに、法整備途上国にとっての 有利な一面があろう。即ち、先進国の多様な立法モデルもあるし、積み重な る司法経験も参照できるわけである。にもかかわらず、 年自動車強制保 険がスタートして以来、この強制保険条例を批判する意見が絶えず、賠償責 任をめぐる訴訟も急増した。強制保険条例こそ立法事故だというこえもある。
とにかく裁判内外の論争が激しく一向にまとまらないのが現状である。結局、
強制保険条例はどういう賠償責任を定めているのか、その基準となる強制保 険条例 条の規定を見てみる。
条:「自動車交通事故責任強制保険は、全国的に統一な責任限度額を設 定する。責任限度額は、死亡傷残賠償限度額、医療費用賠償限度額、財産損 失賠償限度額及び被保険者には責任がない場合の賠償限度額に分けられる。
自動車交通事故責任強制保険責任限度額については、保監会が国務院の公 安部門 、衛生主管部門、農業主管部門と協議し定めるものとする。」
これを受けて、保監会が国務院の諸部門と協議した上、強制保険の具体的 な損害賠償限度額を公告した。
右記図表で、強制保険条例 条の内容と保監会公告の限度額をまとめて表 示する。
現在、 万台湾ドル(約 万円)と増額された。
中国の公安部門は警察部門のことである。
被保険者過失有り 保険金法定限度額
(一事故)
損害賠償責任形態
対人賠償 対物賠償
死亡・障害
(11万元)
(188万円)
医療費用
(1万元)
(17万円)
(2000元)
(3.4万円)
被保険者過失無し
対人賠償 対物賠償
死亡・障害
(1.1万元)
(19万円)
医療費用
(1000元)
(1.7万円)
(100元)
(1700円)
上記強制保険条例の定めと保監会公告の内容に基づく限り、中国自動車強 制保険における賠償責任は、被保険者過失有りの賠償限度額と被保険者過失 無しの賠償限度額に分けられることから、 %の無過失賠償があっても、中 国自動車強制保険は無過失責任を採用されているとは言えないと考える。
現在、保険実務においても、司法実務においても、上記図表のような賠償 責任と賠償限度額の組合せが、強制保険による損害賠償の基準となり、幅広 く使われている。
これに対して、強制保険の賠償責任が無過失責任だと主張する学説 は、
次の二つの条文を根拠に論争している。一つは強制保険条例 条である。
条:「被保険自動車により道路交通事故が生じ、車内の人員と被保険者 以外の被害者に死傷、財産損害を齎す場合、保険会社が法に基づき自動車交 通事故責任強制保険の責任限度額で賠償するものとする。
道路交通事故の損害は、被害者の故意による場合、保険会社は賠償しな い。」
この 条は、強制保険の賠償範囲を定める条文で、無過失責任を明確に示
岳衛「中国法における道路交通事故による人身損害賠償」 立命館法学 年 号 頁 子路「交強険賠償問題探析」 大慶法院訴訟服務網 http:// hljdgzy.susong51.com/
す文言がない。無過失責任説は、本条 項における被害者の故意が唯一の免 責条件であって、故意以外はすべて保険会社により賠償しなければならない のが 条の主旨だから、強制保険の賠償責任は無過失責任だと主張するので ある。
もう一つの条文とは、強制保険条例の法的根拠たる「道路交通安全法」第 条である。
条:「自動車交通事故により人身傷害・死亡・財産損失が生じた場合、
保険会社が自動車第三者責任強制保険責任限度額で賠償するものとする。不 足部分については、下記規定に基づき、賠償責任を負うものとする。
(一)自動車の間に生じた交通事故について、過失のある当事者が賠償責任 を負担し、両方とも過失を有する場合、過失割合により責任を分担するもの とする。
(二)自動車と非自動車運転者、歩行者との間に生じた交通事故について、
非自動車運転者、歩行者側に過失がなければ、自動車側が賠償責任を負うも のとする。証拠により非自動車運転者、歩行者の過失が存在することを証明 できれば、その過失の程度により自動車側の賠償責任を適当に軽減するもの とする。自動車側に過失がなければ、 %を超えない賠償責任を負うものと する。
交通事故の損害は、非自動車運転者、歩行者の故意に自動車を当てる行為 により生じた場合、自動車側は賠償責任を負わないものとする。」
無過失責任説は、上記 条 項前段の内容を持ち出し、交通事故による強 制保険の損害賠償責任について、無過失責任主義を主張している。
前述した無過失責任の模範的存在とされる台湾強制保険法は、その第 条 をもって、「自動車事故により、被害者が受傷又は死亡した場合、加害者の 過失の有無にかかわらず、請求権者は本法に従い保険者に保険金の支払いを
請求すること、または財団法人自動車事故特別補償基金に対し補償を請求す ることができる。」と無過失責任を定めている。
これに対し、道路交通安全法 条 項前段においては、台湾法上の「加害 者の過失の有無にかかわらず」のような文言はないものの、台湾法同様に過 失を責任負担の要件とはしていない。ただ損害が生じた場合、強制保険から 賠償するという内容である。
更に、無過失責任説は、道路交通安全法の上位法である「民法通則」の 条「高所、高圧、燃焼、爆破、劇薬、放射能、高速運転など、危険性の高い 作業で、他人に損害を与えた場合には、民事責任を負わなければならない。
損害が被害者自身の故意によるものと証明できる場合は、民事責任が免れ る。」という危険責任を定める条文を取り上げ、これは高速運送機関たる自 動車の事故による賠償責任が無過失責任だと裏付ける法的根拠ではないかと 主張する。
条 項前段については、無過失責任として理解するか、それとも交通事 故が生じたら、まず強制保険による損害賠償をするという賠償の順序を示す 条文なのか、或いは後に制定される強制保険条例にそのすべてを委ねる意味 の一般的条文なのか。立法者の立場からの説明が見当たらない。
しかし、当該 条 項の前段と後段を一緒に見てみると、後段は、強制保 険により損害賠償をした後の不足分についての責任配分であることが分かる。
後段では、不足分については、三つの場合を設定し、それぞれ相応な帰責原 則が定められている。まず自動車間の事故の場合は過失責任である。次は自 動車と非自動車運転者、歩行者との事故の場合は過失推定責任である。更に、
自動車側に過失のない事故の場合は %以下の無過失責任である。
鈴木辰紀 編著 「日台中の自動車保険」成文堂 年 頁
前述のように、 条 項後段では、強制保険からの賠償が完了した後の 不 足部分 の賠償責任について定められたことは、やはり前段の 強制保険責 任限度額で賠償する ときの賠償責任と区別するという立法主旨であろう。
ひいては強制保険による損害賠償は、過失の所在を問わず賠償する、所謂無 過失責任が意味されているのかもしれない。
でも、なぜ 条の前段においては、無過失責任を定める文言としての 過 失の有無に関わらず の文言が置かなかったのか。その必要もないと立法者 が思うのか、それとも、強制保険のことについては、もともと道路交通安全 法にて定めるつもりがなく、後で制定される強制保険条例に任せるとの意図 があったのか、当時の立法者に聞きたいところである。
道路交通安全法の立法作業を率いる全国人民代表大会常務委員会法制工作 委員会の王勝明副主任が、中国人民大学民商事法律科学研究センターにおけ る講演の中で、道路交通安全法第 条に定めた交通事故による損害賠償責任 について、 自動車間の交通事故が発生した場合は過失責任、自動車と非自 動車運転者、歩行者の間に交通事故が発生した場合は、自動車側が過失推定 責任を負う。自動車側には過失がなければ、 %以下の賠償責任を負う。
と説明したのちに、過失推定責任か無過失責任かの選択理由について、以下 のように述べた。
過失推定責任とは、過失の立証責任の転換であり、自動車側の過失の有 無を考慮するものである。これに対し、無過失責任とは、自動車側の過失の 有無を考慮しないものである。両者の帰責原理と文言が違うが、責任の結果 がそれほど違いがないように考える。 更に、王氏が曰く、 無過失責任の帰 責原理には、危険責任からの説が多いが、現在の立法は二十一世紀の立法だ から、果たして車の運転が危険な作業であろうか。日常生活では老若男女み んな車を運転しているから、車運転を危険作業とすると、納得されないであ
ろう。車の安全性も強化され、道路などのインフラ整備もよくなったいま現 在では、自動車運転行為には危険責任を被せ、無過失責任を負わせるのが妥 当とは言えない。それに、自動車事故の原因が複雑な場合が多い。もちろん 単なる自動車側の原因もあるが、すべて被害者側の原因によるものもある。
また、第三者の過失によるものもある。交通事故の多くは混合過失によるも のである。だから、無過失責任ではなく、過失推定責任を設定したわけであ る。結局、道路交通安全法に定めた損害賠償責任は、 %の過失推定責任と
%の無過失責任である。
王氏はここで、道路交通安全法上の交通事故による損害賠償責任、つまり 条 項後段の 不足部分 の賠償責任について、 %+ %のように説明 したのであって、強制保険の帰責原則を説明したものではないと理解してい る。
条 項前段は、強制保険の帰責原則に言及せず、交通事故による損害賠 償はまず強制保険から行うことを定めたのである。前述王氏の説明した賠償 責任は、つまり 条 項後段における強制保険より賠償しきれない不足部分 についての賠償責任である。こうして、交通事故の賠償責任を区別して定め たことから、少なくとも強制保険の賠償責任が別にあるはずだとわかる。そ れを強制保険条例において、特別に定めるべきだと考える。
にもかかわらず、強制保険条例も保監会公告も、不足分についての責任規 定、つまり王氏の言う %+ %という二重構造の賠償パターンを強制保険 の賠償責任規定として、そのまま採用したのが、道路交通安全法 条 項前 段と後段の意味あい及び立法主旨を正確に把握しなかった結果ではないかと 考えせざるをえない。
( )公平責任原則の強制保険への適用について
公平責任原則が前述した事案にも出たが、更にこの帰責原則のみ適用され た交通事故の損害賠償訴訟の事案も見てみる。
事案三
貨物を満載したトラックが、夜 時ごろ走行中、道路上方の電線をこすり 落としたが、そのまま走り去った。 分後、別のトラックが、路面に落ちた 電線を巻き起こし、複数の歩行者をまき倒した。結果として、 人死亡 人 怪我の大惨事となった。二台目のトラックもそのまま去っていき所在不明と なった。(上記事情が証人の証言による)
その後、死亡した四人の遺族と怪我した二人が、二台のトラックと電線管 理会社に損害賠償を求め提訴した。
裁判所の調べによると、事故当時、街路灯が点っていなかったが、これは 日常の状態である。電線の設置には許可あり、しかも数日前の定期点検にも 異常がなかった。
判決の結果として、二台のトラックについてはもう探せないし、電線管理 会社には過失も責任もないが、本件交通事故の損害に対し、公平責任原則に 基づき、電線管理会社が一定の補償をするよう命じられたのである。
本事案では、二台のトラックがともに行方不明となり、電線管理会社には 過失がない。しかし、死傷者が出たから、損害賠償はどうするかが問題であ る。前述した道路交通安全法 条の 道路交通事故社会救助基金を設立する との規定を受けて、強制保険条例 条は具体的に定めている。
条:「国家は、道路交通事故社会救助基金(以下 救助基金 と略称)
を設立する。下記いずれの場合においては、道路交通事故被害者の葬儀費用
曹険峰・「 」判解研究 年第 期
及び救急費用の一部か全部について、救助基金から建て替えるものとする。
(一)自動車交通事故責任強制保険限度額を超えた救急費用
(二)事故車は自動車交通事故責任強制保険に未加入の場合
(三)事故車が轢き逃げた場合
救助基金管理機構には、道路交通事故加害者に対する求償権を有する。」
結局、上記社会救助基金は、日本の政府保障事業とは違って、損害賠償金 がなく、ただひき逃げ事故、無保険事故などの場合、被害者の救急費用と葬 儀費用への立替に支払うもので、本件のような轢逃げによる損害填補・事故 保障するものではない。
本事案には、二台のトラックの共同不法行為による事故の可能性が高いに もかかわらず、裁判においては、事故原因・真相および轢き逃げトラックの 所在がすべて不明のまま、直ちに民法上の公平責任原則を持ち出して、金目 のありそうな関係者から適当に補償金を取れば済むように感じざるを得ない。
結局、本裁判が自動車強制保険を離れ、民法上の帰責原則に基づいて判断し たわけである。
事案四
X が駐車場を通りかかるとき、歩きスマホをしていたため、自ら駐車中の トラックにぶつかった。その結果、右目が失明した。その後、X はトラック の所有者 Y と保険会社 Y に対し、損害賠償を求め提訴した。
裁判所の調査によると、トラックの駐車には何の問題もなく、トラック所 有者の Y にも過失がない。但し、公平責任原則に基づき、保険会社 Y が自 動車強制保険の過失無き賠償限度額で補償するよう命じられたのである。
本事案例の編著者(現役裁判官)は、 公平責任原則は中国民法上の四大
何竜 編著「交通事故紛争 案例と実務」清華大学出版社 年 − 頁
帰責原則の一つとして、すべての民事紛争処理におき、公平の観念をもって 適用するものである。「道路交通安全法」 条 項(二)の自動車側には過 失のない場合、 %超えない賠償責任を負うとの規定は、まさに公平責任原 則の現れであり、人道主義や倫理道徳に合致するものである。車が強制保険 に加入した場合、この %の過失なき賠償は、強制保険から支払われる。
のように解釈されている。
これはまた道路交通安全法 条 項後段の賠償責任と同条 項前段の強制 保険による賠償責任を混同した判断であろう。また、本件事故はそもそも交 通事故とは言えないのではないかと思う。道路交通安全法 条によると、「交 通事故とは、車両が道路上において過失又は意外により人身傷害・死亡又は 財産損失を齎した事件のことである」と定義されている。同法 条では、「車 両の道路以外の場所走行中に生じた事故について、公安交通管理部門が通報 を受けたら、本法の規定を参考に処理するものとする。」また、強制保険条 例 条では、「自動車が道路以外の場所走行中に生じた事故による人身傷害・
死亡又は財産損失の賠償について、本条例を準用するものとする。」
上記規定のいずれも事故発生時の車両の走行状態が交通事故の要件とされ ている。事案四のような駐車中のトラックに自らの不注意でぶつかった事故 は、そこにある柱や壁に不注意でぶつかったと同じ類の事故であり、交通事 故ではないのが明白である。よって、本件裁判が強制保険から賠償するとの 判断は、一般事故と交通事故、不法行為による賠償と自動車強制保険による 賠償を混同し、強制保険からの賠償命令が不当だと言わざるを得ない。
公平責任原則とは、当事者双方のいずれにも過失がなく、無過失責任の法 規定もない場合、裁判所が公平観念に基づき、被害者の損害と双方当事者の 財産状況及び他の関連事情を考慮した上、加害者に対し、被害者の財産損害
への適当な補償を命じることができる原則のことである 。また公平原則と もいう。中国民事司法実務においては、二つの場合に使用する。一つは、損 害賠償事案においては、公平に賠償額を確定すること。もう一つは、損害の 発生についてすべての当事者には民事責任がない場合、公平に責任を分担す ること 。その特徴としては、公平責任は最終責任で代位求償権がない、免 責事由がない、慰謝料の賠償がない、などと挙げられる。
中国では、公平責任原則に賛成するのが多数説・通説であり、 本原則は、
倫理道徳と法規範の融合で、また矯正の手段として不公平な現状を調整し、個 人と社会、個人と他人の公平を保障するものである。 とか がその主な理由 である。
一方、代表的な反対意見としては、 公平責任原則を幅広く適用されると、
過失責任原則と無過失責任原則のもともと持っている規範機能が発揮できな くなり、不法行為法の仕組み全体を弱体化することになる 。 また 裁判例 から見ると、成立要件を厳格に解さず、公平責任原則の適用の不当な拡大に つながる 。 のような意見がある。
更に、 中国の現状に鑑み、一定期間においては、公平責任原則の適用が 特殊な法的価値を持っている。つまり、過失責任と無過失責任の規定不足を 解消することができる。但し、公平責任原則の帰責原理には、曖昧なところ があるため、司法実務においては、濫用されることになり易い 。 という折 衷意見もある。
王利明・「侵権責任法研究」上巻 頁 中国人民大学出版社 年 法律出版社 年第 版 頁
http://www.zazhimulu.com/3924-1.html 「民法的公平原則與倫理研究」 警官学院 ら 年 月 日
中国政法大学出版社 年第 頁 http://erlang.cocolog-nifty.com/blog/ 若手弁護士の中国法・企業法研究室
http://www.gwyoo.com/lunwen/faxuelunwen/201602/621052.html 上海大学法学院 余佳 楽 「浅談民法的公平原則」 年 月 日
また一部の賛成論者が「台湾民法」 条を取り上げて公平責任原則の根 拠として説明されている。
台湾民法 条:「行為無能力者又は制限行為能力者が不法に他人の権利 を侵害した場合は、行為の当時識別能力があったときに限り、その法定代理 人と連帯して損害賠償責任を負う。行為の当時識別能力がなかったときは、
その法定代理人が、損害賠償の責任を負う。②前項の場合に、法定代理人は その監督について怠ることがなかったとき、又はたとえ相当の監督をしても なお損害の発生を免れることができなかったときは、賠償の責任を負うこと はない。③前二項の規定によって、損害賠償を受けることができないとき、
法院は、被害者の申し立てによって、行為者と被害者との経済情況を斟酌し、
行為者に全部又は一部の損害を賠償させることができる。④前項の規定は、
その他の者が無意識又は精神錯乱中にした行為によって第三者に損害を及ぼ した場合に準用する。」
台湾では、この条文の帰責原則を衡平責任原則又は衡平原則と言われてい る。 衡平 も 公平 もいずれ英国の衡平法と関連するが、台湾民法にお ける衡平責任原則に基づく条文が、 条の法定代理人責任と 条の使用人 責任の二条しかない。所謂特別規定である。これに対し、中国民法上の公平 責任原則の定め方が、特定な事情に限定されることなく、一般的規定として 掲げられていることから問題となるのである。つまり中国法における公平責 任規定は、とても原則的、抽象的だから、様々な情況に使用されて、徐々に その使用範囲が拡大される傾向がある。
賠償原則としての衡平原則とは、損害賠償の範囲を確定する際、当事者 の経済状況等の諸要素を考慮しなければならないことを指す。この衡平原則 は公平責任原則とは異なる。後者は双方に過失がないときにも損失を分担し
小口彦太・田中信行著 「現代中国法」成文堂 年 頁
あうものであり、これに対して、衡平原則は一方または双方当事者に過失あ る場合の原則である 。 台湾民法の衡平原則と中国民法の公平原則について の研究も有益且つ必要であるが、本稿では、中国民法上の公平責任原則の強 制保険への適用は妥当かどうかを考察することに止めたい。
前述したように、強制保険の賠償責任規定がすでに二重構造となっており、
複雑で使いにくいと批判されている。それに問題多い公平責任原則が適用さ れると、ますます法的基準や賠償責任が曖昧となるのみでなく、真の問題や 問題の本質などが紛れる副作用もある。実は轢き逃げ車の掘り出しや事故原 因と責任の究明が、問題解決の前提要件であると同時に、今後の事故防止策、
道路改善策を構築する前提要件でもある。また日本の政府保障事業のような 被害者保障制度の整備も急務ではなかろうか。こういったことこそ、立法者 も裁判官も乃至政府関係者や専門家の最優先に取り組む仕事ではなかろうか。
従って、強制保険の賠償責任においては、民法上の公平責任原則を適用すべ きではないと結論づけるわけである。
.むすび
中国自動車強制保険の賠償責任に関する考察を通し、問題や課題が浮き彫 りになった。本稿最後に、問題についての私見を述べるとともに今後の課題 を指摘する。
まず、中国自動車強制保険の賠償責任のあり方についての私見である。
現行強制保険条例は、道路交通安全法 条 項後段の %の過失推定責 任+ %の無過失責任という二重構造の帰責原則をそのまま強制保険に取り 入れるのが誤解であり、即急に改正する必要があると考える。
中国の自動車強制保険こそ、台湾強制保険法のような完全無過失責任原則 を確立すべきだと考え、その主な理由は以下のようにまとめる。
①中国では、豊田車のような高級車がある一方で、様々な車が走行してい
る。特にトラックの場合、すでに廃車になったもの、或いは廃車の部品を使っ て無断に組み立てたものも使われている。
②経済的格差がかなり大きい。大半の家庭にとっては、突然な事故に対応 する経済的能力が皆無である。
③インフラ整備にも格差がある。無照明の道路や不合理な道路設計が至る 所に存在する。それに、自然環境の差も大きい。
④保険分野であれ、司法分野であれ、専門的な知識の水準にも格差がある。
それに道路管理などの行政執行力もまちまちである。
⑤当面の中国社会では、社会保障制度が普及されていないため、交通事故 の損害に対して、最大限に強制保険の役割を発揮させるべきである。
次は、中国民法上の公平責任原則の強制保険への適用は妥当ではないと考 え、とりあえず、国務院か保監会の行政指令又は最高裁の司法解釈で、明確 にその適用を制限するよう提案する。その主な理由は以下のようにまとめる。
①中国民法上の公平責任原則自体も、論争の的となっているため、司法実 務での使用拡大が慎むべきである。
②公平責任原則の包括的使用が、かえって法制備の妨げになったり、法治 主義を弱体化したりする副作用がある。
③強制保険制度が時代の進歩とともに進化してきた特別(特別の理念と使 命)且つ独立(私法からも公法からも)な領域として、特有な法理論と法技 術を有するものである。
④裁判官をはじめとする法曹のレベルにも格差がある中で、公平責任原則 に基づく裁判官の裁量が自動車強制保険実務の混乱を引き起こす恐れがある。
⑤強制保険における社会救助基金(日本自賠責保険における政府保障事 業・台湾強制保険法における特別補償基金)が、救助基金らしく整備しなけ れば、強制保険の機能がかなり低下・半減する。
以上の理由で、中国自動車強制保険条例を即急に改正し、無過失責任の導 入や社会救助基金の整備等がぜひとも必要だと考えるわけである。紙幅の都 合で、上述理由を展開せず、箇条書きにしておくが、別の機会で検討するこ とにする。
経済のグローバル化が進む中、事故や事件の発生も単なる一国の問題に止 まらず、その影響が国際的に及ぶものであろう。しかしながら、事故リスク への対処法や事故被害者への救済法等の法制度、法システムが、まだグロー バル化されていない。近い将来そうなるのが時代の要請であり、比較研究の 目標でもあろう。
今後日本や台湾の先導的研究と司法経験を中国に紹介しながら、自動車強 制保険法制の構築に建設的な意見を提案していくつもりである。