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(1)

研 究

英国の書籍の貸与・貸出の構造

─貸与権,貸出権と公貸権について─

Rental and Lending of Constitution about Book on U.K.:

Rental Right, Lending Right and Public Lending Right

稲 垣 行 子

    目   次  Ⅰ は じ め に

 Ⅱ Rental right(貸与権)

 Ⅲ Lending right(貸出権)

 Ⅳ Public lending right(公貸権)

 Ⅴ Rental right と Lending right の関係  Ⅵ 貸与と貸出・公貸権の関係

 Ⅶ The Digital Economy Act 2010 (c. 24) と公貸権

I は じ め に

 本稿では,英国の書籍の貸与に関する著作権法の権利と図書館の貸出に 関する公貸権制度について扱う。公貸権制度とは,公立図書館が行う図書 の貸出による経済的損失に対して「作家」が図書館に補償を要求する制度 である。公貸権は公共貸与権を示すが,これは報酬請求権であり,著作物 利用の許諾権ではないため,著作権法上の権利ではない。日本には,まだ この制度は導入されていない。

 英国は,貸与権(rental right)・貸出権(lending right)の戧設を加盟国

 嘱託研究所員・中央大学通信教育部インストラクター

(2)

に求めた1992年の EC 指令(貸与権等に関する指令)

1)

を順守するために,

1996年規則(S.I. 1996/2967)

2)

を制定して著作権法を改正した。

 1992年の貸与権等に関する指令(以下,本指令とする。)では,貸与を

rental と lending に分けて扱い, 両概念を定義する必要が示されている

(前文12)

3)

。」本指令を受けて,rental とは「直接又は間接の経済的又は商 業的利益を目的として, 限定された期間, 使用に供すること

4)

」 つまり

「営利目的の貸与」をいい,lending とは「公共の施設を通して,直接又は 間接の経済的又は商業的利益を目的とせず,限定された期間,使用に供す ること

5)

」つまり「非営利目的の貸与のこと」をいう。このように外国法 では,貸与の目的を鑑みながら,rental と lending を訳し分ける必要があ るが,「日本語ではこのような区別はなく,どちらも「貸与」という概念 で一括して取り扱われている

6)

」のである。

 また日本著作権法の貸与権には,貸与権を制限する規定が別に設けられ ている。法38条 ₄ 項において貸与権を制限している。この規定には制限す る際の要件が ₂ つ示されている。その要件とは「公表された著作物は営利 を目的とせず」,かつ,「その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない 場合」である。この条文により,日本法では営利を目的としない「無償の 貸与」の存する余地が示されている。また,図書館の書籍等の貸出行為に

1) Council Directive 92/100/EEC of 19 November 1992 on rental and lending right related to copyright in the field of intellectual property.

2) 1996年著作権及び関連する権利の規則(The Copyright and Related Rights Regulations 1996)。 通称1996年規則と呼ばれる委任命令(Statutory Instru- ments)。

3) 斉藤博「第 ₁ 章 公貸権とわが国著作権法の定める貸与権」(公貸権委員会

『sarah 共通目的事業(平成16年度)公貸権制度に関する調査・研究』社団法 人 著作権情報センター附属研究所,2005年)1頁。

4) 本指令 ₁ 条 ₂ 項。

5) 本指令 ₁ 条 ₃ 項。

6) 南亮一 「「公貸権」 に関する考察」(『現代の図書館』,Vol. 40 No. 4, 2002)

217頁。

(3)

ついて,「貸与」という概念が相当する。無料を基本とする公立図書館の 書籍の貸出については,貸与権を制限する規定(法38条 ₄ 項)が適用され ているため,無料で行われる貸出の権利に該当する基本概念は定まってい ない。

 このように,日本法では「商業的貸与(rental)」と「営利を目的としな い貸与(lending)」を区別する的確な用語が存在していないので,公立図 書館の書籍の貸出など営利を目的としない貸与については「非営利目的の 貸与」と称して「商業的貸与」と区別している。そのため,本稿では「商 業的貸与」を示すときは「貸与」とし,「非営利目的の貸与」を示すとき は「貸出」という用語を用いることにする。

II Rental right(貸与権)

 英国の著作権法は意匠法および特許法と一緒になっており,Copyright, Designs and Patents Act 1988 (c. 48) と呼ばれている。本稿では以後 CDPA と呼ぶことにする。

 貸与と貸出について,CDPA 18条 A において「言語,演劇,又は音楽 の著作物,建築又は応用美術の著作物以外の美術の著作物,映画及び録音 物の『貸与』又は『貸出』は,著作権者の同意なく行われた場合に,侵害 行為となる」と著作権の一権利であると規定されている。

 また「貸与」とは,CDPA 18A ⑵ ⒜により「著作物の複製物が返却さ れること又は返却され得ることを条件として直接又は間接の経済的又は商 業的利益を目的として,著作物の利用を可能にすること」と規定されてい る

7)

 著作物が返却され「得る」という条件への言及については,次の通りで ある。それは,「ある著作物の ₁ つの複製物が購買者に販売されるという 7) 「貸与権」については,CDPA 178条の小定義にて規定されている。条文につ

いては,本稿Ⅵ─ ₃ で後述している。

(4)

取り決めを含むが,これは複製物が返却されるか,かなりの部分のお金を 払い戻されるか,あるいは他の著作物と交換されるかということを条件と する取り決めをも含むということである。立法当時の CDPA に規定され た条文によれば,貸与とは,ビジネスの過程において,お金が支払われる サービスや娯楽の部分について著作物の利用可能を含むことをより明らか にした。これは,明らかにホテルで客がビデオの複製物の利用をできるよ うにすることが狙いである。現行法の規定では,明快にされていない。し かし,『間接的で経済的あるいは商業的な利益

8)

』という言葉が,そのよ うな貸与について理解するであろうと暗示している。欧州裁判所は,次の ことを示している。それは,貸与権とは,著作物の複製物の循環の中で,

販売やその他の発売という行動により使い果たされるのでもなく,貸与と いうようなその他の行動によるものでもない。

9)

」著作物が返却されるこ とという条件については,立法当時はビジネスの課程の中に含まれると考 えられていたが,一定の状況の下で著作者に「公平な報酬(equitable re- muneration)」の権利を付与するという制度(貸与権が譲渡される場合の 公平な報酬請求権)を,1996年規則(S.I. 1996/2967)により導入したこ とによる

10)

III Lending right(貸出権)

 「貸出」とは,「著作物の複製物が返却されること又は返却され得ること 8) CDPA 18A 条⑵⒜の規定では,「直接的あるいは間接的な経済的又は商業的 利益」 となっている。 また, 本指令の ₁ 条 ₂ 項でも同様の規定である。Wil- liam Cornish, Intellectual Property: Patents, Copyright, Trade Marks and Allied Rights, 5

th

ed., London, Sweet & Maxwell, 2003, para. 11─28. にも同様の記載が見 られる。

9) Copinger and Skone James on Copyright, 17

th

ed., Vol. 1 (2016), para. 7─151 (Rental right), London, Sweet & Maxwell.

10) Flint, Michael, Nicholas Fitzpatrick and Clive Thorne, Userʼs Guide to Copy-

right, 6

th

ed., Tottel Publishing, 2006, para10.28 (p. 187).

(5)

を条件として,料金の支払いを求められることがない施設を通じて複製物 の利用が許可される(CDPA 18A 条⑵ ⒝)」取り決めのことをいう。「貸 与」と「貸出」には公の実演,上演,演奏又は公衆送信に関して利用可能 にすることなどは含まれていない

11)

 「『施設(establishment)』という言葉は,著作権法条文上あるいは本指 令ともに定義されていない。この表現は,明らかに公立図書館を含んでい るが,公立図書館に限定しているわけではない。制限される行為とは,公 衆への図書館の貸出に限られているが,本指令と著作権法はそれにもかか わらず,公衆が利用できる施設間,例えばある図書館から別の図書館へと いう意味での貸出は,制限される行為ではない(18条 A ⑷)と,明記し ている。

 (貸出に

12)

)直接的あるいは間接的で経済的あるいは商業的利益を制定 することについて,本指令と著作権法は次のように明らかにしている。

(貸出による

13)

)施設の運営コストを賄うのに必要な額を超えない単なる 支払いについては,そのような利益(商業的な利益

14)

)とはならない(18 条 A ⑸)」としている

15)

IV Public lending right(公貸権)

 “Public lending right” という用語は,英国が生み出したものであるが,

今や世界共通語になっている。“Public lending right” が戧設された経緯は 次の通りである。英国の最初の公貸権の法案(1959─60 (Bill145)

16)

)が,

11) Hart, Tina and Linda Fazzani, Intellectual Property Law, 5

th

ed., Hampshire, Palgrave Macmillan, 2009, p. 178.

12) 筆者が加筆。

13) 筆者が加筆。

14) 筆者が加筆。

15) Copinger and Skone James, op. cit., para. 7─152 (Lending Right).

16) House of Commons Parliament Papers Online. より調査。

(6)

1960年 ₇ 月21日に下院議員の Mr. Woodrow Wyatt により下院議院に提出 された

17)

ときに,著作権法(Copyright Act, 1956 4&5 Eliz. 2 CH. 74

18)

)を 拡張解釈して,公衆への演奏権(公演権)を類推して公共貸与権=公貸権

(Public Lending Right)なるものを戧設

19)

した。この公貸権は公立図書館 当局や商業図書館の経営者に貸出された書籍に支払いを求める

20)

ものであ る。公貸権という用語は,Sir Alan P. Herbert が戧設した

21)

のであった。

しかし,公貸権という用語は,国際的な調整をする条約の中で戧設された わけではないので,統一した見解がもたれておらず,他国の人々や団体な どが様々な解釈をしている。

 英国を含めて “Public lending right” を定義・解釈した説がいくつかある。

その中で,妥当と思われるアメリカの Daniel Y. Mayer

22)

の定義

23)

を紹介

17) Parliamentary Debates (Hansard) House of Commons Official Report, Vol. 627, c732.

18) http://www.legislation.gov.uk/ukpga/1956/74/pdfs/ukpga_19560074_en.pdf 19) 清水一嘉『作家への道』日本エディタースクール出版部,1982年。263頁よ

り引用。「1960年の ₃ 月にはすでに『公共貸出権─作家協会に提出せる予備的 覚書』と題するパンフレットを世に送った。このパンフレットの表題に使われ た『公共貸出権』が以後正式の名称として用いられるようになるが,その名付 け親はハーバートであった。『1960年 ₃ 月以前には聞いたこともなかった『公 共貸出権』という呼び名は,いまや充分に理解され,多くの人に受け入れられ ている』とかれ自身 The Author, 1961年春季号にいくぶん誇らしげに書いてい るように,いち早くこの呼び名は一般に普及し,その略称 PLR は,どこへ出 しても通用するようになった。(略)この『覚書』をもとにしてハーバートが 起草した公貸権法案は,1960年 ₇ 月21日に下院議員のウッドロー・ワイアット により下院議院に提出された。」

20) Raymond Astbury “The Situation in the United Kingdom” Library Trend, Sum- mer 1981., p. 669.

21) W. J. Murison, The Public Library: its origins, purpose and significance, 3

rd

ed.

London, Clive Bingley Limited, 1988, p. 220.

22) Case Western Reserve University(アメリカ,オハイオ州クリブランド) の J.D. Candidate(法学博士論文提出資格者)である。

23) Daniel Y. Mayer, “Literary Copyright and Public Lending Right”, Case Western

(7)

する。Mayer の定義は,次の通りである。「『公貸権』を定義することは 難しい。なぜなら,公貸権は,概念を異なって表現したり,衝突したりす る混合の用語だからである。公貸権は,著作権に似ている。しかし,公貸 権は著作者にだけ影響を与え,私的な侵害からだけではなく,著作者の著 作物を公立図書館から借りることからも著作者を保護する。

 大まかにいうと,世界の10カ国

24)

で,公貸権は現在適用中である。公貸 権の適用により,かれらの著作物が図書館の利用者に貸出されたときに,

著作者に対して,補償される。

 公貸権は,ほとんどの国の著作権法の中に組み入れられていないが,自 国の著作者により自動的に主張できる権利でもない。

 公貸権の法律は ₂ つの目的がある。 ₁ つ目は,著作者の著作物が図書館 の貸出により引き起こされた収入源の損失に対して報酬を著作者に与える 権利を認めることである。

  ₂ つ目は,国の中で文学と原作者を支援する要望である。この ₂ つの目 的の両方とも,どんな公貸権法の主唱者からも,とても注意深く考慮さ れ,発展されるべきである」という内容である。

 この定義は,公貸権を導入していないアメリカの研究者が行った「公貸 権」の定義である。しかし,公貸権の考え方をよくとらえていると思われ る。またアメリカが英国の公貸権制度の導入に影響を受けて検討していた 時期の研究論文なので,英国の公貸権制度を基に考察している。

 Mayer の「公貸権は,著作権に似ている。しかし,公貸権は著作者に だけ影響を与え,私的な侵害からだけではなく,著作者の著作物を公立図 書館から借りることからも著作者を保護する」という考え方は,公貸権を 著作権法とは別枠で立法化している他国でも,明確化されていない

25)

よう に思われる。公貸権を著作権法と別枠に立法していても,公衆への「貸与

Reserve Journal of International Law, Vol. 18, 1986.

24) これは,1986年当時の数字である。

25) 研究者の論文で「公貸権」を定義しているものは,この論文だけであるた

め。

(8)

権」の延長の権利とか著作権法の中の権利のような曖昧な考え方をされて いる場合が多いように感じられる。しかし,Mayer の定義は,公貸権を

「著作者」からの視点を切り口として明確に行われ,「公貸権」を「報酬請 求権」と位置付けている。

V Rental right と Lending right の関係

 「貸与(rental right)」 と「貸出(lending right)」 は, 本指令に基づき CDPA を改正して,1996年に戧設した権利

26)

である。「貸与」 と「貸出」

は,すべての言語,演劇および音楽の著作物並びにすべての映画および録 音物に適用される。美術の著作物にも適用されるが建築物又は建築物用の 模型としての建築の著作物あるいは応用美術の著作物には例外規定があ る

27)

 「貸与」と「図書館の貸出」に関しては,改正前の18条

28)

に規定されて いた頒布権(issue of copies to the public)の⑵ ⒝条文中に見られ,CDPA 制定当時は侵害行為ではなかった

29)

26) S.I. 1996/2967.

27) Flint et al., op. cit., para 7.05 (p. 106).

28) Infringement by issue of copies to the public

 “(1) The issue to the public of copies of the work is an act restricted by the copy- right in every description of copyright work.

 (2) References in this Part to the issue to the public of copies of a work are to the act of putting into circulation copies not previously put into circulation, in the United Kingdom or elsewhere, and not to ─

 (a) any subsequent distribution, sale, hiring or loan of those copies, or  (b) any subsequent importation of those copies into the United Kingdom;

 except that in relation to sound recordings, films and computer programs the re- stricted act of issuing copies to the public includes any rental of copies to the pub- lic.”

29) 改正後の頒布権の内容は, 本指令を実施した1996年規則(S.I. 1996/2967)

によるので,複雑であるが,条文の内容を要約すると次のようになる。「 ₁ .

(9)

 改正前の18条の頒布権の中には,「貸与」が規定されていたが,「貸与」

の規定が及ぶ著作物は,「録音物,映画とコンピュータ・プログラム」だ けであった。これらの著作物は,制作に時間やお金がかかるので,それら を回収するために「貸与」を付与した。したがって,「録音物,映画とコ ンピュータ・プログラム」などの著作物を著作権者に無断で貸与すると,

著作権に基づく侵害行為となった。しかし1996年の CDPA 改正後は,18 条 A により,すべての著作物に貸与権が付与されることになり,著作者 の許諾を得ないで貸与を行うと,侵害行為とみなされるようになった。

 1979年公貸権法(Public Lending Right Act 1979 (c. 10)) の ₁ 条に基づ いて,「主務大臣(Secretary of State)によって作成されかつ実施される

『公貸権実施要綱(Scheme)』に従って,著作者に対して,『公貸権』とし て知られる権利すなわち連合王国内の地方図書館当局(local library au- thority)によって公衆に貸出されるその書籍に関して,随時,中央基金か ら給与を受ける権利が付与される」のである。

 コンピュータ・プログラム,録音物と映画の公立図書館への貸出は,

「公貸権実施要綱(Scheme)」の範囲には入らなかったが,18条に基づい て貸与として扱われた(CDPA の附則 ₇ の ₈ 段落

30)

により)。したがって,

著作権者の承諾(consent)を得て,既に EEA 国で流通している複製物は,著 作権者の許諾(authorization)なしに英国や他の EEA 国で頒布,販売,貸与 又は貸出あるいは輸入をすることができる。 ₂ .既に EEA 国外で流通してい るが,EEA 国では流通していない複製物は,著作権者の許諾(authorization)

を得た場合のみ EEA 国において販売,頒布等をすることができる。 ₃ .EEA 国において著作権者の承諾(consent)を得ないで既に流通している複製物(例 えば,著作権の保護期間が既に消滅した加盟国で複製物が市場に出された場 合)は,著作権者の許諾(authorization)を得ないで,英国に輸入等をするこ とはできない。」Flint et al., op. cit., para 7.04 (p. 106) より引用。

30) 附則 ₇ において,次のように規定されている。

 Schedule 7 Consequential Amendments: General Section 303(1)    Public Libraries and Museums Act 1964(c. 75)

  8 In section 8 of the Public Libraries and Museums Act 1964 (restrictions on

charges for library facilities), after subsection (5) add︙

(10)

公立図書館がこれらの複製物を貸出すると利用者から料金を徴収すること ができるようになった

31)

 本指令の施行は,EC 加盟国である英国に, 上記に引用している種類

(録音物,映画とコンピュータ・プログラム

32)

)の著作物に関して,貸与 と貸出の排他的権利の許諾を要求した。加盟国には,明らかに,上記の著 作物(録音物,映画とコンピュータ・プログラム

33)

)に関する排他的な貸 出権を規定するように要求されていたにもかかわらず,著作者が「公共貸 出(public lending)」から報酬を得ている場合には,加盟国は「公共貸出

(public lending)」に関する権利の価値を制限することを許されていた

34)

。 英国は,この権利(公共貸出権)を制限して行使することを選択し,上記 の報酬については, 修正された「公貸権実施要綱(Scheme)」 に基づい て,今日規定されている。CDPA に必要な修正が行われ,1996年12月 ₁ 日 から効力を有している。

 「CDPA の仕組みは修正され,公衆への著作物の複製物を貸与すること と貸出することの両方が,今日では制限される行為となっている。すなわ

  “(6) The provisions of Part I of the Copyright, Designs and Patents Act 1988 (copyright) relating to the rental of copies of sound records, films and comput- er programs apply to any lending by a library authority of copies of such works, whether or not a charge is made for that facility.”

 (和訳)公立図書館と博物館法1964年(図書館機構のための義務の制限)の ₈ 条において,小区分⑸に追加して─,「⑹録音物,映画,コンピュータ・プロ グラムの複製物の貸与に関する1988年著作権法の第 ₁ 部の規定は,利用に対し て料金の有無にかかわらず,そのような著作物の複製物の図書館当局によるい ずれかの貸出しにも適用される。」

31) Public Library Statistics 2008─09 Estimates and 2007─08 Actuals, CIPFA, p. 11.

AV 資料(CD,ビデオ資料)の貸出料金の収入は,予約手数料及び部屋貸し料 金並びに OPAC などの図書館サービスの中で,一番多い。全体の ₂ 割程度の 収入である。

32) 筆者が加筆。

33) 筆者が加筆。

34) 本指令 ₅ 条 ₁ 項。

(11)

ち,貸与と貸出は著作権者が有する排他的な ₂ つの権利であるが,もし書 籍の貸出が公立図書館による公貸権実施計画内の場合であるか,あるいは 指定図書館又は記録保持所による書籍の貸出の場合であるならば,結果的 に許諾された行為となり,それゆえに侵害行為ではないことになる。

 また,国務大臣が定義している範疇の著作物の公衆への貸出について

(66条:法定の貸出権

35)

),合理的な許諾料の支払いを前提として,許諾さ れたものとして扱えるように規定されている

36)

。」

 英国の対応は上記の通りであるが,この対応の中で,英国著作権法の研

究書 Copinger に書かれている「この権利を制限して行使することを選択

し」に関する英国の対応は,本指令 ₅ 条 ₁ 項の例外規定を適用したもので ある。本指令の ₅ 条 ₁ 項は,「加盟国は,公共の貸出に関しては第 ₁ 条に 規定された排他的権利について,少なくとも著作者がそのような貸出につ いて補償を得られることを条件に例外を設けることができる。(略)」と規 定している。つまり本指令は,折角貸出権の制定を求める指令を加盟国に 出しながら,「貸出権は排他的許諾権として規定されているものの,報酬 請求権として規定することも認められている。(略)著作者に報酬を確保 することを条件に許諾権の適用除外ができること

37)

」として,最初から例 外を設けてしまったのである。

 「貸出」が行われる「施設(establishment)」の定義が,改正後の CDPA に規定されていないことと,改正前の条文で図書館の貸出については,明 らかに「図書館の貸出」を指す “loan” という言葉を用いていることから,

次のようなことが考えられる。

 改正前の CDPA18条では,図書館の貸出を示す “loan” という言葉を用い て,図書館の貸出については,侵害行為ではないと規定していた。しか し, 本指令に基づいて, 図書館の貸出については,“loan” ではなく,

35) 筆者が加筆。

36) Copinger and Skone James, op. cit., para. 7─146.

37) 山中伸一 「貸与権,貸出権,隣接権に関する EC 指令について」(『横浜国

際経済法学』第 ₂ 巻第 ₁ 号,1993年)84頁。

(12)

“lending” を新たに戧設し, この用語を用いるようになった。 そして,

“lending” を行う場所を「図書館」という言葉を用いずに,本指令で使用 されている「施設(establishment)」 を用いて規定した。 さらに,「貸出 による施設の運営コストを賄うのに必要な額を超えない支払いについて は,利益とはならない(18条 A ⑸)」としている。公立図書館又は,公立 図書館以外の貸出施設において,貸出の料金が施設の運用費を埋め合わせ るだけの料金設定になっていれば,「貸出」が「貸与」に代わることはな い

38)

。したがって,有料の貸出が存在し得るということになる。

 本指令に基づいて「貸与」と「貸出」が戧設されたために,1996年改正 著作権法は本指令で規定された内容をほぼそのまま踏襲している。しかし 英国の考え方は,「すでに,指摘しているように,著作物の最初の貸与と 貸出は,貸与権と貸出権により制限される行為というより,頒布権により 制限される行為のようである

39)

」というものである。

VI 貸与と貸出・公貸権の関係

 CDPA の制定当時の18条では,録音物や映画,コンピュータ・プログラ ム以外の貸与や貸出については侵害行為ではないと規定されている。そこ で,貸与と貸出や,別の法律で規定されている公立図書館での書籍の貸出 に対する公共貸与権(公貸権)などが権利化されてきた経過を100年前ま での法律までさかのぼって検討していく。

 次に100年間の経緯を ₈ つの期間に分け,わかりやすくするために図式 化した。 ₈ つの期間を基に,その後検討に入る。

38) Flint et al., op. cit., para. 7.05 (p. 107).

39) Copinger and Skone James, op. cit., para. 7─146.

(13)

表 書籍の貸与等の権利関係の経緯

期間 貸与 貸出 公貸権 該当著作権法等

①1911~1955 規定なし 規定なし 規定なし Copyright Act, 1911.

[1 & 2 Geo. 5. Ch.

46]

②1956~1978 規定なし 規定なし 規定なし Copyright Act, 1956 4 & 5 Eliz. 2 CH. 74

③1979~1987 規定なし 規定なし 1979年に立法 Public Lending Right Act 1979 (c. 10)

④1988~1991 侵害ではない

(録音・映画 等には貸与権 付与)

規定なし 規定あり Copyright, Designs

and Patents Act 1988 (c. 48), s18 (2)(a) で 書籍は除外された。

⑤1992~

 1996.11.30

導入を検討 導入を検討 規定あり Council Directive 92/100/EEC of 19 November 1992 on rental and lending right related to copyright in the field of intellectual property

⑥1996.12.1~

 2010.4.7

96年改正 規定される

96年改正 規定される

規定あり S.I. 1996/2967によ

り,1988年著作権法 を改正した。

⑦2010.4.8~

 2017.4.26

変更なし 43条より CDPA の40A ⑴改正

(S.I. 2014/1659)

e-book 導入 Digital Economy Act 2010 (c. 24).

S.I. 2014/1659

⑧2017.4.27~ 変更なし 同上のように,

40A ⑴改正後は,

貸出に公貸権を 組み入れる

e-book 施行

(2018.6.30)

Digital Economy Act 2017 (c. 30).

S.I. 2018/690

 筆者作成

(14)

1 .Copyright Act, 1911. [1 & 2 Geo. 5. Ch. 46](①の期間)と Copyright Act, 1956 4 & 5 Eliz. 2 CH. 74(②の期間)の時代  この両期間共に著作権法において規定されている権利は,ベルヌ条約に 基づき複製, 出版, 上演, 放送, 翻案などであり,「貸与(rental)」 と

「貸出(lending)」は,「権利化」されていなかった。そのため,著作権者 に無許諾で「貸与」や「貸出」行為を行っても侵害行為とはならなかっ た。したがって,社会生活において「貸与」や「貸出」という行為は存在 しているが,著作権の権利とは関係ない行為であった。この期間,図書館 の公貸権制度はまだ導入されていない。

 本稿は「言語の著作物」を主に論じているので,貸与と貸出の全体を検 討していく際に,言語の著作物とそれ以外を分けて検討する。

⑴ 侵害行為ではない「貸与(rental)という行為」

 言語の著作物以外で考えられる貸与行為は,①の期間ではレコード(録 音物)などの貸与が相当する。②の期間で考えられる貸与行為は,レコー ドに加えてビデオ(映像)などの貸与が相当する。

 言語の著作物で考えられる貸与行為は,有料の貸本屋等での書籍の貸与 が相当する。

⑵ 侵害行為ではない「貸出(lending)という行為」

 両期間とも言語の著作物以外で考えられる貸出行為は,図書館でのビデ オ,レコードなどの貸出が相当する。

 両期間とも言語の著作物で考えられる貸出行為は,図書館での図書館で の書籍の貸出が相当する。

2 .Public Lending Right Act 1979 (c. 10) の時代(③の期間)

 1979年に公貸権法(Public Lending Right Act 1979 (c. 10)) が成立した ので,公貸権計画実施中の著作物の書籍には,公貸権が適用される。著作 者は,公貸権計画実施中の著作物の書籍の貸出について,報酬請求権を有 することになった。

 この期間の著作権法は, 前期間(②の期間) と同様に Copyright Act,

(15)

1956 4&5 Eliz. 2 CH. 74が適用されている。著作権法により制限される行 為は,前期間と同様に複製,出版,上演,放送,翻案などであり,「貸与」

と「貸出」については,まだ権利化されていない。

⑴ 侵害行為ではない「貸与(rental)という行為」

 言語の著作物以外で考えられる貸与行為は,レコード及びビデオなどの 貸与が相当する。

 言語の著作物では,有料の貸本屋等で行われる書籍の貸与行為が相当す る。

⑵ 侵害行為ではない「貸出(lending)という行為」

 言語の著作物以外で考えられる貸出行為は,図書館でのビデオ,レコー ドなどの貸出などが相当する。

 言語の著作物で考えられる貸出行為は,図書館での公貸権登録以外の書 籍の貸出が相当する。

⑶ 公貸権(Public lending right)による貸出

 図書館における公貸権計画実施中の書籍の貸出について,著作者(当時 の権利者:原作者とイラストレーター)は報酬請求権を有する。

3 .Copyright, Designs and Patents Act 1988 (c. 48)(④の期間)と 92年 EC 指令(貸与権等に関する指令)(⑤の期間)の時代  ④の期間は,Copyright, Designs and Patents Act 1988 (c. 48)(以下,

CDPA とする)が制定され,規定が大きく改正された。

 ⑤の期間は,EC から1992年に「貸与権及び公貸権並びに知的財産権の

分野における著作隣接権に関する閣僚理事会指令」(Council Directive

92/100/EEC of 19 November 1992 on rental and lending right related to

copyright in the field of intellectual property)という指令(以下,本指令

とする)が出されたが,英国ではすぐに1988年の著作権法を改正して条文

に反映することは出来なかった。そのため,「貸与」と「貸出」に関する

本指令が発令されていたにもかかわらず,④の期間と比べて英国の制度の

変更はない。本指令は,EU が統合するにあたり,知的財産について共通

(16)

の認識をもつためのものである。ベルヌ条約に規定のない「貸与」と「貸 出」については,規定を制定するように加盟国に求めた。

 CDPA の成立当時の小定義178条では,貸与(rental)について次のよう に定義している。それは,「貸与(rental)とは,返却されること又は返却 されることが出来ることを条件として,⒜(金銭又は金銭に相当する価値 があるもので)支払いをすること,又は,⒝営業の過程において,支払い を行われるサービス又は娯楽の一部として,著作物の複製物を提供する取 りきめ(arrangement)をいう」である。貸与を定義したのは,18条とし て初めて規定された頒布の中で,貸与が規定されたことによるものであ る。

 「複製物の公衆への頒布による侵害」 として,18条「頒布権(issue of copies to the public)」が規定された。 ₁ 項で「著作物の複製物の公衆への 頒布は,著作物の種類を問わず著作権により制限される行為である」とさ れた。さらに ₂ 項で「この部における著作物の複製物の公衆への頒布への 言及は,連合王国や他の場所において以前流通に置かれなかった複製物を 流通に置く行為を言い,⒜と⒝には言及しないものとする。⒜それらの複 製物の以後のいずれかの配布(distribution),販売(sale),賃貸(hiring)

又は図書館の貸出(loan

40)

),⒝それらの複製物の連合王国への以後のい ずれかの輸入。ただし,公衆への複製物の頒布の制限行為として録音物,

映画フィルム,コンピュータ・プログラムの貸与(rental)を除く

41)

」と された。

 18条 ₂ 項により「録音物,映画フィルム,コンピュータ・プログラム」

に,貸与(rental)が初めて付与されたのである。録音物・映画・コンピ

40) 立法紹介・イギリス「1988年著作権,意匠及び特許権に関する法律(その

₁ )」(『外国の立法』29巻 ₂ 号,1990年)60頁。『外国の立法』では,“loan” を

「貸与」と翻訳しているが,英国の「公貸権」の年報(Scheme)では,公立図 書館の「貸出」のことを,“loan” としている。この18条の条文の “loan” は,公 立図書館の貸出のことを意味すると思われる。

41) 原文は,前掲注28)を参照。

(17)

ュータ・プログラム以外の著作物については,すでに「書籍」にのみ「公 貸権法」により,作家,翻訳家,イラストレーター,写真家,翻訳家,編 集者(以上は,1988年当時の権利者)などについて公貸権が認められてい る。ただし,作曲家と実演家には認められていない。

⑴ 侵害行為ではない「貸与(rental)という行為」

 著作権法の条文中では,hiring という用語で規定されているものが相当 する。録音物,映画フィルム,コンピュータ・プログラムを除く言語以外 の著作物の貸与行為が相当する。

 言語の著作物では,有料の貸本屋等で行われる書籍の貸与行為が相当す る。

⑵ 侵害行為ではない「貸出(lending)という行為」

 本指令は発令されているが,英国著作権法は改正されておらず,次の行 為は侵害行為ではない。録音物,映画フィルム,コンピュータ・プログラ ムを除く言語以外の著作物の貸与行為が相当する。

 著作権法の条文中では,loan という用語で規定されているものが相当 する。言語の著作物では,図書館での公貸権登録以外の書籍の貸出行為が 相当する。

⑶ 貸与(rental)と公貸権(Public lending right)について

 178条の貸与サービスという取り決め(Arrangement for Rental Service)

の定義により,貸与(rental)行為が新設された。したがって,録音物,

映画フィルム,コンピュータ・プログラムを図書館で貸出す行為について 制限行為とされた。

 図書館の貸出サービスについては,1979年の公貸権法により戧設された

Public Lending Right により公貸権登録書籍のみ,報酬請求権が発生する

ことになった。

4 .CDPA の改正(⑥の期間)

⑴ 貸与と貸出

 1992年 に 出 さ れ た 本 指 令 を 受 け て,1996年 に CDPA が 改 正(S.I.

(18)

1996/2967)された。この改正により「貸与」と「貸出」が,「著作権に より制限される行為(16条)」 の中の「排他的許諾権(16条⑴(ba))」 の

₁ つとして新設された。

 また,「貸与」と「貸出」の規定の具体的内容については,18条 A とし て新設された。18条 A については,前の項「Ⅱ Rental right」, 「Ⅲ Lend- ing right」,「Ⅴ Rental right と Lending right の関係」にて,すでに述べ ているのでここでは省略する。

 178条(小定義)では,「貸与」を「貸与権とは,著作物の複製物の貸与

(18条 A を参照)を許諾し,又は禁止する著作権者の権利をいう」と改正 して規定された。したがって,「貸与」も「貸出」も原著作物を貸出すこ とは出来ない。

⑵ 公共の貸出

 40条 A で,公立図書館が書籍を貸出しても,その書籍が「公貸権の規 定内」であれば,いかなる種類の著作物の著作権をも侵害することにはな らないと規定を新設した。「いかなる種類の著作物」と規定していること で,ここでの書籍には,「言語の著作物だけでなく,美術,演劇及び音楽 の著作物」が含まれることを明確にしている。しかし,40条 A ⑵で,公 立図書館を除く指定図書館(prescribed library)

42)

や記録保存所は,いか なる種類の著作物の複製物を貸出しても著作権侵害にならないと規定して いる

43)

。これは,公立図書館でいかなる種類の著作物の複製物を著作者に 許諾を得ないで貸出をすると侵害行為の対象となるが,公立図書館以外の 指定図書館や記録保持所では,著作者に許諾を得ないで貸出をしても侵害 行為の対象とならないのである。

42) S.I. 1989/1212, reg. 3 (1)(2)(3). 学校,大学,継続教育のための機関の図書館,

議会図書館,政府の省庁の図書館。図書館学・教育・美術・歴史・言語・法 律・文学・医学・音楽・哲学・宗教・科学・技術の研究を促進する目的で運営 される図書館などである。公立図書館は,一般的には記録保存所に入るが,著 作権法40条 A ⑵の規定により適用除外とされている。

43) Flint et al., op. cit., para. 20.16 (p. 341).

(19)

⑶ 録音物・映画の貸出

 公立図書館は,「録音物や映画」の貸与に関しては,他の団体と区別し て扱われるわけでない。しかし公立図書館が使用料金を取らないとして も,貸出の際に著作者に許諾を取らないで録音物や映画を貸出したら,そ れは「侵害の対象となる行為」に当たる

44)

⑷ 著作権法改正により制限される行為

 1996年改正の CDPA は,著作権により制限される行為は従来の行為(複 製,複製物を頒布,実演・上演・演奏,放送・翻案)に加えて,貸与する 行為と貸出する行為が加わった。

 本稿で述べてきたことをまとめると,著作物の複製物の公衆への貸与す る行為と貸出する行為は,すべての言語,演劇および音楽の著作物並びに すべての映画および録音物の著作権により制限されるものとなった。改正 前は,録音物,映画およびコンピュータ・プログラムの貸与などの頒布行 為が制限されていた。改正後は,すべての著作物の複製物の貸与および貸 出する行為が制限されることになり,今まで不要だった図書館の録音物又 は映画,地図,楽譜,ビデオレコード,CD-ROM やコンピュータ・ソフ トなどの貸出にも著作者の許諾が必要となった。

 一方で,指定図書館(prescribed library)や記録保存所(公立図書館を 除く)は,いかなる種類の著作物の複製物を貸出しても著作権侵害になら ない

 さらに,公貸権法に基づく公貸権は,書籍(言語の著作物の複製物)が

「公貸権の規定内」のものであれば,著作権を侵害することにはならない。

 表の⑦と⑧の期間については,e-book に関する事項なので,別項目Ⅶ として検討する。

44) Flint et al., op. cit., para. 20.17 (p. 342).

(20)

VII The Digital Economy Act 2010 (c. 24) と公貸権

1  公立図書館の図書資料のデジタル化の背景

 文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media & Sport:

DCMS) が,2010年 ₃ 月に公立図書館に対する政策文書 The modernisa-

tion review of public libraries: A policy statement

45)

(以下,本政策文書とする)

を発表した。本政策文書は,2003年 ₂ 月10日に発表された Framework for

the Future

46)

を基礎に,公立図書館の業務内容を最大限に行うことを目標

としている

47)

。そのため,本政策文書には ₆ つの目標が掲げられている。

₅ 番目の目標に「電子化により与えられた機会を図書館はどのように理解 しているのか」を上げ,「政府は全ての図書館が電子化の使命を図書館の 不可欠な役割として受け入れなければならないと思う

48)

」と述べている。

 これは,EU の他国の公貸権制度に対象著作物に「電子書籍」が含まれ ている国も出現し

49)

,英国の公貸権制度の対象著作物に「電子書籍」が含 まれていないことが問題になってきたため,電子書籍を公貸権の対象とす ることが目標として掲げられたからである。

 これと並行して政府は,「デジタル・ブリテン最終報告書(Digital Brit-

ain Final Report

50)

)」によるデジタル経済の実施計画を策定した。この実

施計画には公貸権の対象を非印刷体書籍(e-book)に拡大することが盛り

45) https://assets.publishing.ser vice.gov.uk/government/uploads/system/

uploads/attachment_data/file/228855/7821.pdf

46) Framework for the Future, DCMS, 2003.2.10. https://webarchive.nationalar chives.gov.uk/20060715164523/ http://www.culture.gov.uk/global/publications/

archive_2003/framework_future.htm

47) The modernisation review of public libraries: A policy statement, p. 4.

48) The modernisation review of public libraries: A policy statement, p. 38.

49) https://plrinternational.com/established

50) Department for Business, Innovation and Skills & DCMS, Digital Britain Final

Report, 2009.6.

(21)

込まれている。

2  Digital Economy Act 2010 (c. 24) における公貸権の規定(⑦の期間)

 公貸権に関する「デジタル経済法(Digital Economy Act 2010 c. 24)」の 条文は43条のみである。

 43条

51)

の内容と構成が分かりにくいので,まとめると次のようになる。

「 ₁ .公貸権の対象者『著作者・イラストレーター・写真家・翻訳家・編 集者・要約者等』に,録音された著作物のプロデューサーあるいはナレー ターを含める。 ₂ .従来の印刷体の図書(book)に,⒜音声による表現 がメインの録音著作物(オーディオ・ブックのこと),及び⒝それ以外の 電子的に記録された著作物で,書かれた文字及び声による表現及び静止画

(あるいはそれらを組み合わせたもの)などを主とする著作物(電子書籍 のこと)を含める。 ₃ .貸出の定義は,⒜公衆が一定の期間,図書館から 離れた場所で図書を利用できるようにすることであるが,⒝図書が図書館 以外の場所に電子的な手段で送付される場合(これは遠隔地からのダウン ロードを意味する)は含まれない。 ₄ .著作権法40条 A の公貸権実施計 画中の書籍に対する制限規定を『オーディオ・ブック(audio-book)』と

『電子書籍(e-book)』まで対象を広げる」という内容である。

 英国出版社協会(Publishers Association)は,図書館による電子書籍の 無料・無制限の貸出を認めることは,電子書籍の市場全体を損なうことに つながるものであるとし,著作者も出版社も受け入れられないと主張し,

電子書籍の貸出について要望を出した

52)

。そのため,公立図書館での電子 関係の著作物の貸出はオーディオ・ブック及び電子書籍と言った「物」に 固定されている電子的著作物について,貸出の対象とするが,電子ファイ ルの送信は見送られた。

51) http://www.legislation.gov.uk/ukpga/2010/24/notes/division/5/11/2 52) カレントアウェネス・ポータル E1119 (No. 183 2010.11.18)「英国出版社協会

が図書館による電子書籍貸出の基本方針を公表」。http://current.ndl.go.jp/

e1119

(22)

 CDPA の40条 A ⑴は,Digital Economy Act 2010 (c. 24) の規定を盛り込 み(S.I. 2014/1659), 次の ₂ 項を変更している。 ⒜公貸権計画の図書

(book)と,公貸権計画の図書でないものの貸出を “lending the book” で 統一した。⒝図書に,audio-book と e-book が含まれるとした。

 また Public Lending Right Act 1979 (c. 10) の ₅ 条にも,登録できる図書

(book)に audio-book と e-book が含まれる条文が追加された。これらの 変更により両法に audio-book と e-book が,対象図書として条文化された が,施行はまだであった。

3  Digital Economy Act 2017 (c. 30) の制定と施行(⑧の期間)

 Digital Economy Act 2010 (c. 24) は,2017年に全面改正された

53)

。公貸 権は Part 4 Intellectual Property の中に統合され,条文は43条から31条に 変更になっている。DEA2010の43条の内容は,Public Lending Right Act 1979 (c. 10) の条文に組み込まれたため,DEA2017の31条の目的は,Public Lending Right Act 1979 (c. 10) の ₅ ⑵と CDPA の40A 条の条文を具体的に 改正することである。CDPA の40A 条では,e-book と audio-book につい ては,図書館により適法に入手された図書(book)の貸出と同様に扱う 旨を規定した。

 また固定物ではない e-book と audio-book の「貸出」 について,「貸出 概念」 を “lent out” として Public Lending Right Act 1979 (c. 10) の ₅ ⑵と

CDPA40A の31条⑴において,引用又は定義として規定されている。

 Digital Economy Act 2010 (c. 24) が制定された当時から, 図書館での

e-book と audio-book の「貸出」に対する補償金の支払いが懸案事項であ

ったが,Digital Economy Act 2017 (c. 30) により,e-book と audio-book に 図書の規定を適用することで,解決することになった。Digital Economy Act 2017 (c. 30) の施行を命令する2018年の規則(S.I. 2018/690)が,イン グランドとウェールズ,そしてスコットランドのみ,2018年 ₆ 月30日に出

53) 2017年 ₄ 月27日に,女王陛下の裁可を受ける。

(23)

された。この規則と同時に2018年度の「公貸権実施要綱(Scheme)」

54)

が 定められ(S.I. 2018/691),2018年 ₇ 月 ₁ 日からの公貸権計画の図書・

e-book などの貸出の補償金の支払いが,2020年 ₂ 月に支払われることと

なった

55)

 2018年の規則(S.I. 2018/690)の施行により,公貸権計画の対象図書に

e-book と audio-book が加わり,電子書籍等を公貸権の対象とする2010年

来の目標が達成された。

 (付記)本稿記載の URL は,2019年 ₁ 月24日にアクセスしたものである。

54) The Public Lending Right Scheme 1982 (Commencement of Variations) (No. 2) Order 2018.

55) PLR International, International Updates.

  https://plrinternational.com/post/international-updates

  “In the U.K. public library ebook and audiobook loans will qualify for PLR from 1 July this year. Authors will receive their first payments in February 2020.”

  公貸権の実施年度は,当年 ₇ 月 ₁ 日より次年の ₆ 月30日としている。

  なお,英国は,PLR International を主宰し,他国の PLR の普及に努めてい る。(Jim Parker, Public Lending Right in the UK, PLR Ofiice, 2009.03, p. 7)   2019年 ₁ 月現在,PLR 制度を有し PLR International に加盟している国は33

カ国である。

表 書籍の貸与等の権利関係の経緯 期間 貸与 貸出 公貸権 該当著作権法等 ①1911~1955 規定なし 規定なし 規定なし Copyright Act, 1911.  [1 & 2 Geo

参照

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