奈良教育大学学術リポジトリNEAR
α−ジケトンの電解還元
著者 池尾 和子, 新居 敏男, 北沢 千和
雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学
巻 17
号 2
ページ 37‑48
発行年 1969‑01‑31
その他のタイトル Electrolytic Reduction of α‑Diketones.
URL http://hdl.handle.net/10105/3155
3t&&W:*: %17§$2^CS#) fflti44ff
Bull. Nara U. Educ, Vol. 17, No. 2, (Nat.), 1969
a- i? fr h y <D « 7C
m m m =?*•E§f m & j§* å % n =r- ft**
(33^43^ 6 M29Bg®)
Electrolytic Reduction of a-Diketones.
Kazuko IKEO*, Toshio ARAI* and Chikazu KlTAZAWA**
(*Nara University of Education, Nara, Japan) (**University of Electro-Communications, Tokyo, Japan)
(Received June 29, 1968)
Benzil, diacetyl, and acetylbenzoyl have been reduced stepwise at a dropping mercury electrode in aqueous solution and anhydrous dimethylformamide.
Large-scale electrolytic reduction has been carried out on diacetyl and acetylbenzoyl in aqueous solution. Benzil gives two waves in DMF; the first wave has a wave height of one electron reduction and corresponds to the formation of benzil anion radical, and the second wave has a wave height of one electron and corresponds to the formation of endiol dianion, which is fast to rearrange to benzoin in a presence o£ phenol. This agreed with the data in aqueous solution.
Diacetyl gives one electron reduction wave both in aqueous solutions and DMF, however, the second wave is observed only in aqueous solution of tetraethylammonium perchlorate. In the presence of phenol the wave in DMF grows to nearly twice the previous height. Acetylbenzoyl shows one electron reduction wave in buffer solution. In acidic solution at pH 3.1, however, it gives a new wave which is about 0.65V more negative than the first wave. In DMF, acetylbenzoyl shows two waves and the initial step is a reversible one and corresponds to the formation of anion radical. However, three waves can be observed on addition of phenol in DMF, the first and the second waves have a wave height of one electron reduction and the third one has a wave height of two electrons. Large-scale electrolytic reduction of acetylbenzoyl produced a mixture of acetylbenzoyl pinacol and phenylacetyl- carbinol in aqueous solution. Phenylacetylcarbinol formed is reduced to phenylacetone in aqueous solution, that is, the secondary hydroxyl group was reduced to methylene group. These results for reduction of acetylbenzoyl are consistent with the view obtained by polarographic reduction in DMF.
37
.38 池島和子・新居敏男・北沢千和
1.序 論
α‑ジケトンのポーラログラフ的挙動については,芳香族α‑ジケトンであるベンジルについて
iサ:
多くの報告がなされている.すなわち,ベンジルは非緩衝溶液中では2段波を与えるが,緩衝溶
2)
液中では1段波または2段波であって,その還元機構は次式のように,まず
CeH5‑C‑C‑CeH* CeHa‑C‑C‑CaHE2e
ムA 頂声→ OHOH
ォs
→ CaHs‑C‑C‑CeHs CeHs‑C‑CH‑C8HB
I I II I
OHOH O OH (H) (M)
3)
ラジカルIに還元きれ,ついでⅡとなる. Pasternakによれば, pH 1.3および8.6の緩衝溶液 蹄で定電位電解により定量的にベンゾインが得られたのは, Ⅲが分子内転位をおこしてⅢとなる
L:)
と考えられている.ジメチルホルムアミド(DMF)のような非プロトン性溶媒中においては, 2段波を与え,次式のように第1波は可逆的な還元波でアニオンラジカルを生成し第2波はその ラジカルのエンジオールジア二オンへの還元波である.しかし塩化リチウムを支持電解質とすれ ば2電子1段波となり,これはLi十 とイオン対を作るためと推定されている.
e e
C6Hs ‑C‑CaH: → C6H5‑C‑C‑C6H」 → CaHs‑C‑'C‑CsHs i1 1! ‑ l H I I
o 0 ‑0 0 ̲OIO (I) (1)
また定電位電解でDMF中にプロトン供与体を加えると,エンジオールジアニオンはプロトン付 加をおこしてベンゾインとなることはESRによっても確認されているがポーラログラフ的には 明らかにきれていない.また,このエンジオールのプロトン付加体であるスチルベンジオールは
.い
シス型とトランス型の異性体がありStapelfeldt は水溶液中における定電位電解液の吸収スペ クトルからトランス型のスチルベンジオ‑ルとベンゾインが生成すること認めシス型とトランス 型のベンゾインへの転位速度を検討している.
脂肪族ジケトンであるジアセテルは,バターなどの香料として用いられるので,求‑ラログラ フによる分析が多く報告され,ジアセテルは一段の還元渡を与え限界電流はpH6‑8で最高で5)
酸性およびアルカリ性では減少するがアルカリ性での減少はジアセテルの分解と考えられた.
7)
またLeonardらは脂肪族α‑ジケトンの水溶液中におけるポーラログラフ渡について検討し, 拡散電流定数の1‑1.5は,ジケトンの拡散電流定数から1電子還元であると報告している.し かしそれらの還元機構については殆んど報告されていない.また,混合ジケトンであるアセテル ペンゾイルは,そのポ‑ラログラフ的挙動などについてほとんど報告されていない.
著者らはケトン類の水溶液および非水溶媒におけるポーラログラフィーおよびそれにもとずく 定電位電解を行なってきたが,この報告では芳香族ジケトンであるベンジル,脂肪族ジケトンの ジアセテルおよび混合ジケトンであるアセテルペンゾイルについて,水溶液およびDMF中にお けるポーラログラフ的挙動および定電位電解から,これらジケトンの還元機構を明らかにしよう
α‑ジ ケト ン の電解還元 39
と試みた.アセテルペンゾイルの水溶液中におけるポーラログラムと定電位電解についてはすで
;E
に一部報告したが,それらも併せて報告する.
2.実 験 法
2. 1. ポーラログラフィー
ポ‑ラログラフは柳本製ポ‑ラログラフ101型を用い,電解槽は市販の志方型(水銀対極の 場合)とH型(飽和カロメル対極の場合)を用いた.滴下電極は水銀だめの高さ64cmで0.1N KCl水溶液中においてはt ‑4.76sec, m‑0.839mg/sec, m^‑ ll/8‑1.155 (開回路)であ
aa
O.lmol/1ヨウ化テトラブテルアンモニウム(TBI)を含むDMF中ではt‑4.402sec.r m‑0.8193mg‑/sec, m2^・tie‑1.049 (OV vs.Hg pool)であった.
DMFを溶媒とし陽極に水銀池対極を用いた場合は,その電位は飽和カロメル電極(SCE>
に対してEa‑‑0.50Vであったので, DMF中における測定値はすべてSCE対極に補正し た値を示した.
9)
その他の測定法については,既報と同様である.
2.2.定電位電解
ill*
電解槽は既報のものを用いた.つぎに電解終了後の生成物の処理法についてのべる.まずア セテルペンゾイルの電解生成物の処理法を次に示す.
水洗乾燥
アセテルペンゾイル 電 解 液一一
由 秤量
至些与,i
・:
希釈(40‑100倍)
アセテルペンゾイルビナコール m.p.118.50C
ポーラログラム
0.8M (NH4)℡S04を含むBritton‑
Robinson buHer jろ F主;'l,ll
l‑i‑チオセミカルパゾーンm.p.216‑C
:抽出(定量)
ガスクロマトゲラム シリコンDC550(150‑C)
次にフェニルアセテルカルビノールの電解生成物は,電解終了後,電解液をェ‑テルで抽出 し,還元生成物であるフェニルアセトンは,ガスクロマトグラム(シリコンDC550, 150‑C) で定量し,また2,4‑ジニトロフユニルヒドラゾン(m.p. 156‑C)として定性を行なった.ガ スクロマトグラフは柳本製GCGII型を用いた.
2.3.試薬
ベンジル,ベンゾイン,アセトインおよびジアセテルは,市販品を精製して用いたが,アセ
ill
テルペンゾイルは プロピオフェノンから合成したもので,またその還元生成物であるフユニ ルアセテルカルビノ‑ルは大日本製薬株式会社から寄贈きれたものを用いた.
那
その他の試薬については,既報と同様である.
40 池尾和子・新居敏男・北沢千和
3.結 果 と 考 察
3. 1. ベンジル
まずDMF中におけるベンジルの還元波とDMFに加えたフェノールおよびLi+の効果を検 討した.ベンジルおよびベンゾインのDMF中におけるポーラログラム特性は表1のようで
表1.ベンジルのDMF中におけるポーラログラム特性 加えたフェノールの濃度
mmol/1
渡波 波渡 波渡波 渡波渡 波渡波
H N t
‑ H C M r
⊥ C M C i H N r t h n m
第第 第第 第第第 第第第 第第第
{ { i I I
直 流 波
s ffl^JMJmWfflmk
‑El/2 a) I"J
^H tH ^Hi‑H i‑1T"HOJ t‑HtHC^J t‑H tHCM oo oo oo lo oo in to w*Tfn3C‑‑ O h nU73 nU74737SIS m"
1.6 1.4 1.8 1.8 1.9 1.9 2.6 2.2 1.9 3.0
問丸rww>.
毎日ZMSr.
交 流 波 項点電位
‑Esり
1.09
‑d)
9
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3
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1
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O
O
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‑ r‑1r‑H iH t‑I i‑H I‑I 川=
波 高 muc>
0.5
d)
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<M i nC O 二
〇
〇
〇 八 U O 爪 U
ォI I0
注 a) ‑Ei/:盟, ‑EsはSCEに対する値である。以後の半波電位の値はすべてSCEに対する値で ある。
b) I‑ia/c 宮 11/6 (ftA. mmol'l‑1, mg‑巳'3.sec.‑1/6)
C)試料癖贋mmol/1で測定した値である.
d)交流波高が極めて低いことを示す.
表2.ベンゾインのDMF中におけるポーラログラム特性 加えたフェノ‑ルの濃度
m mol/1
o I薯 5 (慕 10 (葺
披渡 波波 渡波
H f l i
‑ 1 C M H N
直 流 波 半渡電位 拡散電流定数
‑ Ei/2
CO IO CT)fO
C
^ I O
<
﹂
>
0 0 ご U 3 1 2 1 ウ 山 1 2
iH?
0.8 2.1 2.2 2.3 2.8
交 流 波 頂点電位 波 高
‑Es mu
1.74 0.4
1.71 0.2
ll)
DMF中のDC波はPhilipらの報告値とよく一致した値である.また第1波のみ高いAC 波を与え,安定なアこオンラジカルを生成すると考えられるが,第2波はほとんどAC波を示
さない.しかし,プロトン供与体としてのフェノールの濃度を増加してゆくと10mmol/1 の濃度附近から第3渡を与えるようになり,第1波および第2波のDC波高はいずれも増加す る.第2波のAC波は,フェノール濃度が5‑‑lOmmol,,ノ1で高い波を示すが,さらにその濃 度を増加させると逆に低くなることがわかる.
したがって,すでに明らかにきれているように, DMF中では第2波でエンジオールジアニ
α‑ジ ケト ン の電解還元 m
オンとなるが,これがフェノールの存在でプロトン付加をうけて速かに転位してベンゾインと なり生成したベンゾインがさらに還元をうけるので,第3波を与えるようになり,また,第2 波のAC波も高くなると考えられる.
すなわち,フェノールの存在におけるベンジルの第2波,第3波はそれぞれベンゾインの第 1波および第2波に対応することがわかる.これはESRによって示された結果とも一致す る.
またフェノールの存在で第1波のDC波高が増大するのは,第1波で生成するアニオンラジ カルがプロトン付加して還元されやすくなり,さらに一部還元をうけるのではないかと推定さ れる.
2)
また, PhilipらはDMF中でLiClを支持電解質に用いると2電子1段波となるとのべてい る.そこでTBIを支持電解質に用いて,塩化リチウムの濃度をベンジルのそれと等モルから その濃度を増加させると図1のようになる.
2‑5 ‑V(iS.SCE) 0,1,2,‑‑‑はLi+の濃度(mmol/1)を示す
図1. DMF中におけるLi+ (LiCIO4)の濃度変化に対するベンジルの還元波
すなわち,ベンジルは,まず1電子還元をうけてアニオンラジカルとなるが,このラジカル がLi÷ とイオン対を作るため,そのイオン対は還元されやすくなり第2波は正電位へ移行す
る.
42 池尾和子.新居敏男・北沢千和
しかし,ベンジルとLi十 とが等モル濃度ではすべてのアニオンラジカルがイオン対を作ら ず第2波はイオン対とアニオンラジカルの二つの還元波にわかれる.
Li+の濃度を増加させていくと,もとのベンジルの第2波は正電位へ移行し,イオン対を作 らないLi+が第3波として‑2.30Vに還元波を表わす. Li+のみの濃度と波高のDMF中に打 ける検量線は,図2のようになる.この‑2.30Vの波高と対応するLiTの波高とを比較すれ
PA
図2. Li十(LiCIO*)のDMF中における検量線
ば,ベンジル1分子とイオン対を作るLi+は約2であることがわかる.すなわちLi十の濃度が 高い場合,ペンジルのアニオンラジカルは2個のLi+とイオン作を作ることが明らかとなっ
fz.
3. 2. ジアセテル
まず水溶液および非水溶液中におけるジアセテルの還元波を測定した・
表3.ジアセテルの水溶液中におけるポーラログラム特性 溶 液 親 成
0.1N H2SO4
HAG‑NaAc buffer且)
t>H 4.4 リン酸 buffer
pH 6.8 0.1N KCl 0.1N TEPC
半波電位 ‑El/2 直流波高I
第1波 0.85 第2波 2.14 a)醇酸一博酸ナトリウム緩衝板
α‑ジ ケト ン の電解還元 43
ジアセテルは緩衝溶液中では1段波を与えられるのみであるが,テトラェテルアンモニウム 過塩素酸(TEPC)を支持電解質に用いると‑2.14Vに第2波を与える.拡散電流定数(I)
ft
は中性および非緩衝溶液中では1.4であり酸性では減少する LeonardはジアセテルのIは pH5.6で1.5で1電子波高であると報告しているのとよく一致している.さらにTEPCを 支持電解質に用いると,第1波と等波高の第2渡を与えるので,ジアセテルは1電子の2段波
で,アセトインまで還元されるのではないかと推定きれる.
またジベンジルは緩衝溶液中で2電子還元波とされており,ジアセテルと同一条件で,ポー ラログラムをとるとIは2.5となった.上れからもジアセテルの第1波は1電子還元と考えて よい.
つぎにDMF中におけるポーラログラフ的挙動を表4に示した.
表4.ジアセテルのDMF中におけるポーラログラム特性 加えたフェノ‑ルの濃度
m mol/1
一 画̲̲革 渡.̲̲ー ̲ 半波電位 拡散電流定数
‑Ei/2
0.78 1.1 0.78 2.2
交 流 波 ]瓦点電位 波 高
‑Es mu
0.78 0.1 0.78 0.15
すなわちDMF申においても1段波を与えるのみであるが,その波高は低い値を示す.フェノ ールの存在ではその波高は2倍となり, DMF中での波高を1電子還元波とすると,プロトン 供与体の存在では2電子還元をうけて水溶液中におけると同様にアセトインに還元されるので あろう.また交流波はかなり低いので可逆度は小さいと考えられる.アセトインは緩衝溶液お よびDMF中で還元波を測定したが,波を示さなかった.したがってジアセテルの還元は次式 のように進むと推定される.
e . e
CH3‑C‑C‑CH3 → CHs C C CH< CH<‑CH‑C‑CH:
o o ‑O O OH O2H+
またジアセテルは水溶液およびDMF中では比較的不安定で, 10‑20mmol/lのストック溶 液中においても分解すると考えられ,ストック溶液調製後,時間の経過にしたがって還元波が 低くなることが明らかとなった.これはアセテルペンゾイルの場合についても同様でその経時 変化については次に詳細にのべる.したがって,これらケトンは試料溶液調整後できまるだけ 速かに測定する必要があると考えられる.
3 . 3.アセテルペンゾイル
3. 3.i.水溶液中におけるポーラログラフ的挙動 それらを表5に示す.
すなわち酸性穎域においては2段波を与え,第1波は1電子還元と推定きれるが,第2波の 波高は極めて低くpH3.80よりも塩基性側ではその波は消失する.またpHIO以上では還元波を 与えないが,これはアルカリによりアセテルペンゾイルが分解するためと考えられる.
アセテルペンゾイルの濃度に対する波高の変化を表6に示したが1mmol/1以下では,濃度 と第1波の波高は比例関係を示しているが,それ以上の濃度では波高は濃度の増加に比例せ ず,その値はやゝ低くなり,また第2波の波高も濃度の増加にともなって高くなるが,比例関
係はみられなかった.
ZE 池尾和子・新居敏男・北沢千和
表5.アセテルペンゾイルのMcllvaine緩衝溶液中におけるポーラログラム特性 半波電位 ‑ El/2
第1波 l 第2波
波 高 工
第1波 l 第2波
またpH3.1における水銀溜の高さに対する波高の変化を表7に示したが両波ともほゞ比例関 係がみられた.したがって,第1波は拡散支配と考えられるが,第2波は反応電流を含むので
はないかと考えられる.
つぎにアセテルペンゾイルの溶液中での安定性を調べるため1mmol/1に希釈した5%お よび50%エタノールを含む水溶液の波高と半波電位の変動を表8に示した.
表6.アセテルペンゾイルの濃度と波高の関係 表7.アセチルベンゾイルの水銀櫓の高さと波高の関係 pH3.10 5‑Aェタノール水溶液 pH 3.10 1.5×10‑3M 5%ェタノール水溶液 アセテルペンゾイル
の墳度 mmol/1
第2波 水銀潜の高さh
5C^l LO O Lfl O
O O i
‑ 1
<
M
<
M
<
7 i
<
N ご U t O
<
N 蝣
* C O C T I
O H N c O
!
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>
0 0 O O O U O o O
2
3
5
史
U
6
n U 0 0 n U 1
cm ヽ/首 54 7.35 64 8.00
m i 波
〝A
3.00(7.35×4.08 3.32(8.00×4.15 81 9.00 3.58(9.00×3.98
第 2 波
〝A 0.812(7.35×0.ll) 0.85(8.00×0.ll) .00(9.00×0.ll)
表8.アセテルペンゾイルの測定溶液の安定性(時間の経過に対する半波電位と波高の変化) pH 5.09 10‑3M溶液
すなわち褐色瓶中では長時間放置しても波高と半波電位にあまり変化はなく,わずかに波高 が低くなるのがみられた.しかし白色瓶中においては,放置時間の経過と共に波高は徐々に減 少し,また半波電位の値にも変動がみられ,特に50%エタノール中では波高の減少は速かであ
α‑ ジ ケト ン の電解還元 45
り,また ‑1.0V付近に第2波が急速に成長するのがみられた.したがってアセテルペンゾイ ルはエタノール溶液中では,光により分解あるいは縮合などを起すと考えられる.
3. 3. 2.水溶液中における定電位電解
表9.アセテルペンゾイルの水溶液中における定電位電解
電 解 液 組 成]) ̲讃禦SCE)鍔'=L霊ゾ1‑訂霊チ完
5%H2SO4 (EtOH 40%)
1)アセチルペンゾイルの潰度は5×10‑2mol/lである
アセチルベンゾイルの定電位電解の結果を表9に示す.すなわち酸性領域においては‑0.6
‑‑0.75Vで還元を行なうと,アセテルペンゾイルビナコール(ピナコール)が生成するの で,ポーラログラムの第1波は‑電子還元波でラジカルを生成し,それが次式のように二量化 すると考えられる.
汁0
汁0
2e 2H十
2 CeH5‑C‑ L‑rl」 2 C8H5‑C‑C‑CH.
II II I II
o o ‑O O
5撹
CDC
CHa
5= .
E I J
C C
I I
‑ 0
‑ 0
‑ 0 rj ル
‑ 0
‑ 0
‑
‑ 0 ナ 一 l ピ
しかし‑0.9‑‑l.OVの電位における還元ではピナコールの収量が減少し,それに対応して フェ二ルアセチルカルビノ‑ル(α‑ケト‑ル)の収量が増加する.またpHが小さくなると, α‑・ケトールの収量が同様に増加することがわかる.つぎにケトン濃度の還元生成物に対する 関係は次の図3のようになる.
H 2e I
CaH:‑C‑C‑CH」 ‑ C6H5‑C‑C‑CH<
2H十 i LE
o o OH O
in 池尾和子・新居敏男・北沢千和
2.5S川 5 MO
‑x一 ピナコール ‑㊨‑ α‑ケトール
電解溶液 pH 2.4 Britton‑Robinson buffer (EtOH 40%) 12(W 電解電位 ‑0.75V (SCE)
図3.定電位電解におけるアセチルベンゾイルの濃度と還元生成物の収量との関係
すなわち,電位とpHが等しい条件で電解還元を行なっても,アセテルペンゾイルの濃度が 高い場合は,流れる還元電流値も大となりピナコ‑ルの生成率は大きくなる.したがって‑電 子還元をうけて生成するラジカル濃度が高くなると,ピナコールを生成しやすくなり,ピナコ
ールは溶液から析出して以後の還元を受けないと考えられる.
ll)
α‑ケトールの水溶夜中におけるポ‑ラログラフ的挙動については, Fedoronkoが
(NH.),S04を含む緩衝溶液中における還元波について報告しているが,その還元機構につい・
ては明らかではない,そこでα‑ケトールの定電位電解を行った.その結果を表10に示す.
表10. 7ェニルアセテルカルビノールの水溶液における定電位電解
電 解 液 組 成 電 解 電 位
‑V (vs. SCE) o・8モル(NH高SO,」#fr
Britton‑Robinsonbuffer
5%H8SO4 (ェタノール30%)
フェニルアセトンの収量
%
次の式のように主生成物は α‑ケ‑トルの水酸基が還元されたフェ二ルアセトンでその他の 還元生成物は確認出来なかった.このようにフェニール基とカルポニル基に隣接する水酸基は 容易に還元されることが明らかとなった.
α‑ジ ケト ン の電解還元 47
2 e
CHs‑CH‑C‑CH. CeHs LHi C O王子3
。rH占 2H+ ム
13)
このような水敢基の還元については辻がα‑オキシイソプチルアルデヒドとストレプトマイ シンの還元を行ない還元電位と電解液のpHにより,次式のように水酸基が隣接bJレポニル基 よりも先に,または,少なくとも同時に還元きれることを明らかにしている.
2H++2e
‑C‑CHO > ‑C‑CHO → ‑C‑CHzOH
I I I
OH H H
この水酸基は第三級水酸基がカルポニル基に隣接しているが,フェニルアセテルカルビノ‑
ルの場合は第二級水車基であるにも拘らず,カルポニル墓およびフェニル基の両者に隣接して いるため還元されると考えられる.したがってアセテルペンゾイルの還元は次式に示す過程で 進むと考えてよい.
CォHE‑C‑C‑CH3‑
II ll
O 0
e+H‑
一一一一 > ピナコ‑ル
2e+2H+ 2e+H+
C8H*‑CH‑C‑CH3
I l1
0H 0
CbHe‑CH>‑C‑CH;
"
0
3.3. 3. DMF中におけるポーラログラフ的挙動
DMFおよびフェノールを含むDMF中におけるポーラログラム特性を表11に示した.
表11.アセテルペンゾイルのDMF中におけるポーラログラム特性 加えたフェノールの濃度
mmol/1
o‡葺去漂 5(mim
¥M2S
n 流 波 宰轟雇位 拡散電流定叡
‑ El/2
c o c t i
<
m
^ r ハ U i
‑ 1 i
‑ 1 r i ゥ l D
iH<M ri H N <T>r‑i OO CT) CO
l
て
⊥
2
0
4
交 流 波 頭貢電位 波 高
‑Es mU
1.14 0.5
1.14 0.4
すなわち,アセテルペンゾイルはDMF申において,まず1電子還元をうけて安定なラジカ ルを生成し,第2波でさらにそのラジカルが還元きれてフェニルアセテルカルビノールとな る.フェノールの存在では第1波の波高が増大するが,第1波と第2波の合波高は2電子と考 えられるので,第2渡でα‑ケト‑ルとなり,第3渡でフェこルアセトンまで還元されると推 定できる.したがって,水溶液中における挙動と同様な過程で還元され,フェニルアセトンと なるが,フェニルアセトンはアセトンなどと同様に難還元性で還元波を示さないことがわか
義.
4.結 論
・α‑ジケトンのうち,ベンジルはポーラログラフ的還元により,まず1電子還元をうけてアニ
48 池尾和子・新居敏男・北沢干和
オンラジかレとなり,さらに還元きれてエンジオールジアニオンとなるが,プロトン供与体の存 在では容易にベンゾインに転位する.ジアセテルは緩衝溶液では1電子還元波を与えるが, TEPCを含む非緩衝溶液ではさらに負電位に1電子波を示す.またフェノ‑ルを含むDMF中 では, 2電子波高の1段波となった.
アセテルペンゾイルは水溶液中では1電子還元をうけてラジカルとなり二量化してピナコール となるか,さらに還元きれて,フユニルアセテルカルビノ‑ルとなる.後者は,その第二級の水 酸基が,酸性または硫酸アンモニウムを含む水溶液で還元され,フェニルアセトンを与える.ま た非水溶媒中での還元は,水溶液中での挙動と同様に進むことが明らかとなった.したがって, ベンジルはその二つのカルポニル基が互に共役し,また,ともにフェニル基と共役しているため 両者が還元される.アセテルペンゾイルは,フェニル基に隣るカルポニル基のみが,メチレン基
まで還元されるが,アセテル基のそれは還元きれない.ジアセテルは,二つのカルポニル基が共 役しているので一電子還元波を与えるが,その結果生成するラジカルは難還元性で緩衝溶液中で は第2波を示さないと考えられる.
終りにのぞみ,フェこルアセテルカルビノールを寄贈された大日本製薬株式会社に厚く感謝し ます.
この研究費の一部は文部省科学研究費によるもので,ここに謝意を表明します.
この研究の一部は,信州大学に在職中,新居敏男と北沢干和が行ったものである. (日本化学 会 第18年会1965年4月および電気化学会第29大会1963年4月で講演)
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1) M.I. Bubrova, B.S Tikhomirova, Zhur. Obshchei. Khim., 22, 2098 (1952)
2) R.H. Philip jr., R.L. Flurry, R.A. Day Jr., J. Electrochem. Soc.,111, 328 (1964) 3) R. Pasternak, Helv. Chim. Acta., 31, 753 (1948)
4) H.E. Stapelfeldt, S.P. Perone, Anal. Chem., 40, 815 (1968) 5) G. Proske, Z.Unters. Lebensmittel, 71, 385 (1936)
6) S. Harrison, Collection Czechoslov. Chem. Communs., 15, 818 (1950)
7) N.J. Leonard, H.A. Laitinen, E.H. Mottus, J.Am. Chem. Soc, 75, 3300 (1953) 8)新居敏男,電気化学, 30,175 (1962)
9) a)藤永太一郎,新居敏男,北沢千和,日化, 85, 811 (1964) b)池尾和子,新居敏男,奈良教育大学紀要自然科学16, 9 (1968) 10)新居敏男,電気化学, 30,31 (1962)
ll) Organic Symtheses Vol. 23, 1, Vol.16, 44
12) M. Fedoronko, Chemick色Zvesti, 12, 17 1958, Chemia Analityczna 3, 573 (1958)
13) K. Tsuji, Agr. Biol. Chem., 25, 432 (1961) , ibid., 25 915 (1961)