温泉地域(1)らしさからみた街路景観の評価
:長崎県小浜温泉地域を事例として
安達可菜*・宗邦彦*・高村文人*・永山一樹**・渡達貴史***
TheAssessmentofStreetscapeswhichEvoketheSenseofBeinglnaHotSpringLocale
:ACaseStudyofStreetscapesinObamaHotSpringAreas,
NagasakiPrefbcture,Japan
KanaADACHI,KunihikoSOU,AyatoTAKAMURA,KazukiNAGAYAMAandTakashiⅥ旗JANABE
Abstract
Thisresearchassessesstreetscapeswhichevokethesenseofbeinginahotsprmglocale.ThemainfindingsareaS
fo1lows.1)TodevelopthephysicalcharaCteristicindextoassessstreetscapeswhichevokethesenseofbeinginahot SPringlocale,tWOfactorsareidentifiedthroughaliteraturereviewandaninterview((1)asignofthepresenceofahot SPring,(2)asignofpeople spresence).ToassessasignofhotspringandasignofpeopleTspresenceinastreetscape,4
PhysicalcharaCteristicindicesweredeveloped.AphysicalcharaCteristicindexusedtoassessaslgnOfthepresenceofa hotspringisthedensityofpointsgivingoffsteamWhichcomesfromhotwaterrumingalongthestreet.Theindexof
thepresenceofpeopleis(a)thedensityofbuildingdoorwaysalongthestreet(Thehigherthedensityofbuilding
doorwaysalongthestreet,thehigherthescoreforthepresenceofpeople),(b)thewidthofthestreet(ThenarrOWerthe StreetS,thehigherthescoreforthepresenceofpeople)and(c)theratioofthewidthofthestreetandtheheightofthe
building(D−Hratio).ThelowerD−Hratio(narrOWStreet,highbuilding),thehigherthescoreforthepresenceofpeople.
2)Inacasestudy,WeaSkedpeopletoratethestreetscapesinObamahotspringareaS,NagasakiPrefbcture,uSingthe PhysicalcharaCteristicindiceswedeveloped.Streetscapeswhichwerehigh1y−ratedweretheoldercentralareaS.Based
Onthesefindings,WePrOPOSealistofconsiderationsforreviewlngthemanagementtOmakefu11useofstreetscapes
WhichevokethesenseofbeinglnahotsprlnglocaleinObamahotsprlngareaS.
KeyWords:Streetscapes,Thesenseofbeinglnahotsprmglocale,Signofhotsprmg,Signofpeople spresence
1.はじめに
我が国には,温泉を有する数多くの温泉地域があ る。旅行客を誘致するために温泉を活用した温泉地 域は,その数の多さにおいて,我が国の観光地域の 形成に,大きな役割を果たしてきた。こうした温泉 地域に対する国民の人気は高く,多くの国民が温泉 への入湯を旅行目的に挙げている(吉田ら,2006)4)。
しかし近年,集客面における温泉地域の二極分化 が進んでいる。すなわちそれは,上記に示した強い
支持のもと利用者数を維持・増加させている温泉地 域がある一方で,支持を受けず利用者数を減少させ ている温泉地域が数多く存在することである(吉田
ら,2006)4)。
これら利用者数が減少した温泉地域の多くでは,
利用者数を増やすために,旅行者が温泉地域に求め るものを踏まえた振興策を検討することが重要な課 題となっている。
利用者が温泉地域に求めるものについて,山村
(2005)6)は,価値観の多様化が進む現在においても,
年齢・性別を問わず,「自然環境」,「温泉情緒」「温 泉資源のよさ」に集約されるとしている。これら3 宋 長崎大学環境科学部・学生
柚 長崎大学大学院生産科学研究科・大学院生
☆☆☆長崎大学環境科学部
(受理年月日 2009年3月31日)
つの要素は,景観を通じて認識されることが多い。
つまり,旅行者を誘致する上で,この3つの要素を 兼ね備えた温泉地域らしい景観を整備することが重 要であるといえる。
実際に,良好な温泉地域らしい景観の維持・整備 を図ることで集客に成功した温泉地域が存在する。
たとえば,兵庫県城崎温泉や熊本県黒川温泉では,
旅館経営者が中心となって,利用者が温泉街に出か けたいと感じられる優れた景観を保全することによ
り,利用者の維持・増加に成功し,地域の経済発展 を実現させている(山村,2005)6)。こうした成功事例 と2007年に景観法が施行されたことなどを受けて,
景観を活かすことを温泉地域のまちづくりの目標と する自治体が増えてきている(松村・西,2007)10)。
上記で 述べられた温泉地域らしい良好な景観を 維持・整備するための方針を検討するためには,
温泉地域らしさという観点から景観を評価し,景 観形成の方策との関連を解析することで,方策の 効果と問題点を検討する必要がある。
景観を活用した温泉地域の成功を受け,温泉地 域の景観に関わる研究は数多くなされている。今 回参考にした既存研究は大きく2つに分類される。
1つ目は,温泉地域全体の景観に着目したもの である。松村・西(2007)10)は温泉地域の発達と衰 退の歴史が,地域の生活環境によって作り出され
る景観「生活景」を変化させてきたと述べている。
関・三島(1998)8)は温泉街本通り地域における景観の
現状を通じて,道路の新設・建造物の変化を与えた 影響を明らかにし,都市軸を形成する歴史的価値の 高い温泉街本通り景観の修景の必要を指摘した。
2つ目は,温泉地域を特徴づける景観構成要素の
一つである湯煙に着目したものである。姫野ら
(2003)2)は温泉地域の湯煙の分布状況・種類の調査と,
湯煙への注視行動実験の結果とを照合し,湯煙景観 整備の方針を導出した。柿木ら(2007)9)は住民を交え たワークショップを実施し,住民が望む温泉地域の 景観整備の方向性を検討した。その結果,住民は湯 煙を高く評価しており,建築物の高さを「湯煙が見 える高さ」とするために高さ規制を実施する必要を 論じている。
しかし,これまでの研究において,人々の目に良 く触れる点において温泉地域の景観形成に重要な位 置を占めると考えられる街路景観に着目したものは 少ない。
そこで本研究では,小浜温泉地域を対象に,温泉 地域らしさという観点から,街路景観を評価した。
そして景観形成の方策との関連を明らかにすること で,同地域における景観形成の方針を検討した。
2.温泉地域らしい街路景観の捉え方 2.1.用語の定義
2.1.1.景観
本研究では,景観を中村(1977)13)の定義,すなわ ち「景観とは人間をとりまく環境のながめにほかな
らない」にしたがい,可視できるものに限るとした。
2.1.2.街路景観(図−1)
街路景観は,大きく,道路,沿道,遠景,人間活
動,地下部,変動要素(天気など)から構成されるとしている(土木学会,198512))。本研究では,これら の要素のうち道路と沿道から街路景観を評価した。
ヒ′二二ゝ
遠景\\、/一
変動要因
(天気など)
襲忘 ㌧、
. ・:・∴
ヽ ココ 三
こj;町ワニ靴こコぎ冒三 嘉虹〒[引コ調
蟄些コニ封昔
亡±≡型\\−、地下部 図−1街路景観の捉え方 2.2.温泉地域らしい街路景観の捉え方
街路景観が山村(2005)6)によって提示された「温泉 情緒」すなわち「温泉地域らしさ」を有するには,人々 が温泉地域と認識できる「気配」が漂っていることが 必要と考えた。図−2は,本研究の温泉地域の気配の 捉え方をまとめたものである。本研究では,温泉地 域らしさを醸し出す主要な気配として,「温泉の気 配」と温泉地域を含む観光地域に必要な賑わいを表 す「人の気配」に注目した。
具体的に,「温泉の気配」については「湯の存在」に 代表させ,それに関係する街路景観構成要素として
「湯煙」を設定した。すなわち湯煙が多い街路景観で あるほど「温泉地域らしい」街路景観と考えた。それ に対して,「人の気配」に関しては,「人が建物から出 てくる気配」,「歩行者間の距離」,「建物による囲ま れ感」から捉え,それぞれに関係する街路景観構成要 素として,「人が建物から出てくる気配」に対しては
「戸口の数」を,「歩行者間の距離」に対しては歩行者 の接触状況と関係する「道路幅貞」を,そして「建物に よる囲まれ感」に対しては「D(道路幅員)/H(建物の高 さ)比」を設定した。すなわち,「戸口の数」が多く(人
11,571人,世帯数:4,117世帯である(図−3)。そのう ち,本研究の対象地域である小浜温泉地域は,旅館 の集積状況から,北本町と南本町とした。
小浜温泉は雲仙天草国立公園の西部に位置し,橘 湾に面する海浜温泉である。泉質はナトリウム塩化 物泉であり,高温・湯量豊富なために,全国一の放 熱量を誇る。
表−1は,地形と水系から温泉地域の立地を分類し たものである。/ト浜温泉は,背後に「半楕円形」の山 地,前面に海がある「平地」に立地する。類似の立地 環境に有る温泉地域として,地形に着目すると,愛 媛県道後温泉,佐賀県武雄温泉,長野県渋温泉,神 奈川県箱根温泉,熊本県日奈久温泉が,水系に着目 すると熊本県日奈久温泉,静岡県熱海温泉,和歌山 県白浜温泉がある。「地形」・「水系」とともに類似す
る立地環境にある温泉地域は,熊本県日奈久温泉の みである。「地形」・「水系」両側面において類似する 立地環境にある温泉地域は少ないものの,いずれか の側面に類似する立地環境にある温泉地域は多い。
図−2温泉地域の「気配」の捉え方
が建物から出てくる可能性が高い),「道路幅貞」が狭 く(歩行者の距離が狭まり,人の気配が感じられやす くなる),D/H比が低い(道路の幅に対して建物の高 さが高く,建物に囲まれている感を人々に強く与え る)街路景観であるほど,「人の気配」が感じられやす い街路景観と考えた。
3.方法
3.1.調査対象地域の概要
小浜温泉地域を擁する長崎県雲仙市小浜町は,長 崎県本土の北東部に位置する。面積:5km2,人口:
小浜温泉地域を調査対象地域とすることは,こ
うした類似する立地環境のもとにある温泉地域
の街路景観の形成に関わる基礎的知見が得られ る点で妥当と考えた。
以降では,本研究の結果を考察する上での基 礎情報となる小浜温泉地域の土地利用の変化を 説明する。これに関連して,昭和52(1977)年か
ら平成7(1995)年にかけての同地域の土地利用
を示した(図−4)。以下,昭和52年以前も含め,
小浜温泉地域の土地利用の変化について簡潔に 述べる。
明治年間の小浜温泉地域の温泉は,浴用また は飲用に使用されていた。しかし第二次世界大
図−3調査対象地域(小浜温泉地域)の位置 表−1温泉地空間の立地タイプ分類
甲・地
「醐 室 ■‡・ ㌔嘩転 封Jlユ1⊥止・41 妻 篭 ‡」1■E 少II根占弛¢
i超牡 山†1: 男宰宕蒙 零一個ね
:武士髭
温泉妄箋ト 野沢 j繊_∃三
ほ間 耳a!
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コ己≡≡:≡!±巳芸壬 横山 = 室■ ̄
■−トLコ び巳推さ租
中西=l 三壬≡進
彗至彗萱 f岳l毎、渋 l⊥l中 」出i堀
=大:i司=ヨIl 1⊂昌_三朋
顔逗塗 捕手陳謝お 延勺フ盲 千丁規
・良一蘭■点
ノト豪耗 蝕添 仁l裏毛
l∃荊久
誇 出典:下村(1991)11)
昭和52(1977)年 昭和59(1984)年
平成7(1995)年
図−4小浜温泉地域の土地利用の変遷(昭和52(1977)年一平成13(2001)年)
出典:国土地理院2万5千分の1地形図「肥前小浜」をもとに作成
戦中である昭和16(1941)年からは,国内の食塩不 足を受けて,温泉水を用いた製塩事業が始まり 全国製塩量の約2%を占める小浜温泉最大の産業
となった。だが,製塩による多量の温泉水の消費 は,浴用・飲用用途の温泉水を減少させた。
浴用・飲用用途の温泉水の確保に向けて,84本 存在した製塩用源泉は24本に減らされた。さらに 昭和34(1959)年に台風に14号の高波,高潮により 甚大な被害を受けた結果,昭和36(1961)年に製塩 事業が廃止されている(長崎県衛生公害研究所,
1988)14)。昭和34(1959)年の台風14号の被害は,
製塩事業の廃止に止まらず,海岸沿いの多くの旅 館と県営バスの営業所にまで被害をもたらした。
その後,災害復旧のなかで現在の国道251号線が 開通した。これ以降は,高度経済成長に伴うマス ツーリズムの発達等の影響を受けて,小浜温泉地 域は,旅館の増築等の高層・鉄筋化が進行した。
昭和52(1977)年から昭和59(1984)年までの土地
利用の大きな変化としては,小浜町役場(現雲仙市役 所小浜総合支所)の海側への移転と近辺の漁業協同 組合本所や小浜温泉観光協会等の大型施設の建設が 挙げられる。昭和59(1984)年から平成7(1995)年にか
けての主要な変化としては,埋立地の大幅な拡充と 警察署の埋立地への移転が挙げられる。平成7(1995)
年から平成13(2002)年にかけての主要な変化として
は埋立地内の整備の進行と小浜町北部海沿いの特 別養護老人ホーム湯楽苑や南本町の小浜町民体育 館の建設が挙げられる。
これら3期の土地利用変化の傾向は,埋立地に 伴う陸域の海側への拡充と埋立地への大型施設の
移転(小浜町役場や雲仙警察署)や建設にまとめら
れる。こうした変化は,小浜温泉地域の中心を山 側から海側に移行させたとともに,旧来の中心、を 海岸から遠ざけたといえる。このような変化がも たらされた主要な要因として,海岸沿いに国道 251号線に開設されたことが挙げられるだろう。
開設された国道251号線は,同地域の主要な幹線道 路となり,それに連携することによって,開発や事 業が海沿いに集中したものと考えられる。
3.2.調査対象街路の設定
本研究では,小浜温泉観光地域の主要街路と考え られる北本町と南本町を縦断する国道251号線と国 道251号線に並行するかつての主要街路を,調査対 象街路とした。以後,本研究では,国道251号線を「国 道」,かつての主要街路を「旧道」と称する(図−5)。
3.3.データの取得
図−5調査対象街路
データは,国土基本図(1/2500)を用いた図上計測と
ゼンリン住宅地図(1/1500)をベースマップとした現
地踏査により取得した。なお現地踏査を行った期間 は,2008年9月10〜12日と12月1日である。
取得の対象となった街路構成要素である1)湯煙,
2)戸口,3)道路幅貞,4)D/H比の定義および計測方 法は,表−2の通りである。
表−2景観構成要素の定義と計測方法
景観構成要素 定義 計測方法 湯煙 調査対象街路の両端から約5
m圏域内に存在するもの
調査対象街路沿いに建築され 戸口 た建物の戸口のうち,開口部
が街路に直接接しているもの
道路幅員 歩道十車道 ・現地での視認
・図上計測 D佃比=(歩道十車道(m))÷(建 ・現地での視認 D(道路幅員)Ⅲ(建物高さ)比 物階数×3(m/1階)) ・図上計測
3.4データの解析 3.41.データの集計
集計されたデータは,街路同士の接点(ノード)で 区切られた区間(リンク)単位で集計した(図−6)。集計
されたデータを用いて表−3に示す各リンクの特徴を
記述する指標を算出した。
3.4.2.目標にもとづく街路景観構成要素の評価 算出された指標は,四分位にもとづき分類し,表
−4のようなランク付けを行った。同表に示されてい る太線に囲まれたセルは評価が高い,つまり「温泉地
域」らしい街路景観構成要素であることを意味する。 (ESRI社製,ArcGIS9.2)を用いて,評価結果の空 間布置を示した。こうして定性的に把握された傾向 を定量的に把握するために,調査対象地域を「北本 町国道側」「南本町国道側」「北本町旧道側」「南本町 旧道側」の4つの地域に分け(図4),各地域について あるランクと評価された街路数を総街路数で除した 構成比率を求め,地域間で比較した。
4.結果および考察
4.1.街路景観構成要素からみた街路景観の評価 4.1.1.湯煙
図−7は湯煙からみた街路景観評価結果の布置,図
−8は湯煙の評価結果に関する地域別の構成比率を表 したものである。評価が高いランク1,2の構成比率
図−6集計単位
表−3計測した景観構成要素に関わる指標と算出方法 を合計した値を比べると,北
本町国道側が58%,南本町国 道側が57%,南本町旧道側が 67%と平均構成比率(52%)
よりも高く,北本町旧道側は 27%と低かった。このことは,
北本町国道側,南本町旧道側,
南本町旧道側が評価の高い街 計測した景観構成要素 指標の算出方法
湯煙 湯煙密度(件血a)=湯煙発生源の数(件)÷リンク長(m)
戸口 戸口密度(個血1)=街路両端の戸口の数(個)÷(リンク長×2)
道路幅員 平均道路幅貞(m)=計測点の道路幅貞(m)÷計測地点数 D(道路幅員)佃(建物の高さ)比 D/H比=リンク内の建造物の最大高さ÷リンク内の最大道路幅員
表−4街路景観構成要素のランク付け
路が多いのに対して,北本町旧道側 が少ないことを表しているものとい える。北本町国道側,南本町国道側,
南本町旧道側に評価の高い街路が多 いのは,湯煙を誘導する施設の設備 等,湯煙を意識した整備が行われて
いること(北本町・南本町国道側)や 計測した景観構成要素 ランク1 ランク2 ランク3 ランク4
湯煙(件血a) 0.03以上0.089以下 0.007′)0.02 0〜0.00(;
戸口(個/m) 0.064〜0.366 0.04/・、一0.063 0.015〜0.039 0〜0.014 道路幅貞(m) 2.70′)4.40 4.30′)6.00 6.01〜11.25 11.26′)30.00
D(道路幅員)朋(建物の高さ)比 0.180〜0.728 0.729〜0.97 0.975〜2.668 2.669〜8.444 補註:太線で囲まれたセルは.評価が高いと判断したランクを表す.
3.4.3.評価の総合化
評価の総合化にあたり,ランク付けされた評価結 果のうち,中央値より大きい上位2位までのランク を評価が高い街路景観構成要素とした。評価の総合 化は,評価が高いと判断された街路景観構成要素を 数えることによって行った。その結果,総合評価は,
評価の高い街路景観構成要素が0から4に応じて計 5段階(ランクA〜E)にわかれた(表−5)。
表−5総合評価のランク付け
評価が高いと判断された 総合評価 の 街路景観構成要素数
4 ランクA
3 ランクB
2 ランクC
ランクD
0 ランクE
3.4.4.評価の分布傾向の把握
街路景観構成要素及び総合評価の評価結果の地
理的分布を把握するために,地理情報解析ソフト 図−7湯煙の評価結果の空間布置
T _ 「 −− 1 一 口ー■ :::::::=コ 7−√、
Il=12 n=7 1l=15n=6 北本町国道側
南本町国道側
北本町旧道1
北本町国道側
南本町国道側
北本町旧道側
南本町旧道側
1 ■■n=6
南本町旧凱
[
0% 40% 60% SO% 100%
_ランク1■ランク2 ■ランク3
図−8湯煙評価の地域別の構成要素 元々,源泉が多く存在していた(南本町旧道側)から
と考えられる。その一方で,北本町旧道側に高い評 価の街路が少ないのは,国道と異なり湯煙を意識し
た整備が行われていないからと考えられる。
4.1.2.戸口
図−9は戸口の数からみた街路景観の評価結果の布 置,図−10は戸口の数の評価結果に関する地域別の 構成比率を表したものである。
評価の高いランク1,2の構成比率を合計した値を 比べると,北本町旧道側が77%,南本町旧道側が 100%と,街路全体の平均構成比率(54%)よりも高 く,北本町国道側が25%,南本町国道側が22%と低 かった。このことは,北本町旧道側,南本町旧道側 が評価の高い街路が多いのに対して,北本町国道側,
南本町国道側が少ないことを表しているものといえ る。北本町旧道側,南本町旧道側に高い評価の街路 が多いのは,住宅や商店といった比較的小規模な建 物が密集しているからと考えられる。それに対して,
0% 20% 40% 60% $0% 100%
■ランク1■ランク2■ランク3■ランク4
図−10戸口評価の地域別の構成要素 北本町国道側と南本町国道側に評価の高い街路が少 ない理由は,3.1.調査対象地域の概要において示し たように,集客数の上昇に伴い建造された比較的大 規模な宿泊施設が多いこと,公園,駐車場,空地と いったそもそも建物が建っていない区域が多く存在 するからと考えられる。
4.1.3.道路幅員
図−11は道路幅員からみた街路景観の評価結果の 布置,図−12は道路幅員の評価結果に関する地域別 の構成比率を表したものである。
評価が高いランク1,2の構成比率を合計した値を 比べると,北本町旧道側が86%,南本町旧道側が 100%と,街路全体の平均構成比率(47%)よりも高
く,北本町国道側が0%,南本町国道側が0%と低か った。
このことは,北本町旧道側,南本町旧道側が高い 評価の街路が多いのに対して,北本町国道側,南本 町国道側には少ないことを表しているものといえる。
図−9戸口の評価結果の空間布置 図−11道路幅員の評価結果の空間布置
l・
、くいぃJミい■
0% 20% 40% 60% 80% 100%
■ランク1■ランク2■ランク3■ランク4
図−12道路幅鼻評価の地域別の構成要素
北本町旧道側,南本町旧道側に高い評価の街路が多 いのは,自動車交通への対応を考える必要が少なか った時代に整備されたからと考えられる。そのため,
自動車が通りづらい狭幅員の道路が形成されたと考 えられる。その一方で,北本町国道,南本町国道に 評価の高い街路が存在しない理由は,自動車交通に 対応するために整備された広幅員の国道があるため
と考えられる。
4.1.4.D/H比
図−13はD/H比からみた街路景観の評価結果の布 置,図−14はD/H比の評価結果に関する地域別の構 成比率を表したものである。
評価が高いランク1,2の構成比率を合計した値を 比べると,北本町旧道側が72%,南本町旧道側が 86%と,街路全体の平均構成比率(47%)よりも高く,
北本町国道側が16%,南本町旧道側が14%である。
このことは北本町旧道,南本町旧道が高い評価の街
0% 20% 40% 60% 80% 100%
■ランク1■ランク2■ランク3■ランク4
図−14D/H比評価の地域別の構成要素
路が多いのに対して,北本町国道側,南本町国道側 が少ないことを表しているものといえる。北本町旧 道側,南本町旧道側に高い評価の街路が多いのは,
前述の考察で述べたように自動車交通への対応を考 える必要が少なかった時代に整備された狭幅員の道 路と集客数の上昇に伴い建造された高層の宿泊施設 があるからと考えられる。一方,北本町国道側,南 本町国道側に評価の高い街路が少ないのは,自動車 交通に対応するために整備された広幅貞の国道があ ることに加えて,公園,駐車場,空地など建物が存 在しない土地が多いからと考えられる。
4.2.評価の総合化
評価の総合化にあたり,3.3.データの解析におい て説明したように,ノードごとに,評価が高いと判 断された街路がいくつあるかによってランクAから ランクEと5段階評価し,評価が高いと判断された 景観構成要素との組み合わせから,街路景観の類型 化を行った。その結果,12タイプの街路景観に分け
られた(表−6)。
評価結果の傾向を把握するにあたっては,12タイ プの街路景観を評価のランクに着目して,5タイプ に集約し,解析を行った。
図−15は,総合評価の空間布置である。同図から,
低い評価を表す青系の色で示された街路が国道側に 集中しているのに対し,高い評価を表す赤系の色で 示された街路が旧道側に集中していることがわかる。
なかでも南本町旧道側に最も高い評価を表す濃い赤 色の街路が集中している。図−16の地域間の構成比 率を見ても,北本町旧道側はランクAが13%,ラン
クBが60%であるのに対して,南本町旧道側はラン クAが50%,ランクBが50%であり,南本町旧道 側が最も評価の高い街路が多い地域であるというこ
とを表している。このことは,南本町旧道側が最も 温泉地域らしい街路景観を有する地域であることを 表しているといえる。
図−13D/H比の評価結果の空間布置
表−6総合評価結果にもとづく街路景観の類型化 このような結果となった主な要因として,
南本町旧道側に,大規模な区画整備や旅館,
体育館等の大型施設の増築・建設が行われな かったことが挙げられる。その結果,古くか
らの町並みが多く残ったといえる。
5.結論 5.1.まとめ
表−7は,本研究の結果をまとめたものであ る。表に即しつつ,本研究の結果をまとめる と,下記の通りである。
(1)街路景観構成要素からみた街路景観評価 温泉地域らしい街路景観を特徴付けると考 えられる4指標(「湯煙の数」,「戸口の数」,「道 路幅員」,「D/H比」)から街路を評価した。評 価結果は4地域(北・南本町国道,北・南本町 評価が高いと判断された景観構成要素 該当する
評価のランク
湯煙 戸口 道路幅員 D/H比 街路数
ランクA 4 ● ● ● ● 5 13%
3−a ● ● ● 3%
3−b ● ● ● 3%
ランクB
3−C ● ● ● 2 5%
3−d ● ● ● 8 20%
2−a ● ● 4 10%
ランクC 2−b ● ● 2 5%
2−C ● ● 3%
1−a ● 3 8%
ランクD 1−b ● 3%
1−C ● 3 8%
ランクE 0 9 23%
総計 40 100%
旧道)にて集計し,各地域の特徴を把握した。
その結果,1)湯煙からみた評価の高い街路を多く含 む地域は北本町国道側,南本町国道側,2)戸口の数 からみた評価の高い街路を多く含む地域は北本町旧 道側,南本町旧道側,3)道路幅員からみた評価の高 い街路を多く含む地域は北本町旧道側,南本町旧道 側,4)D/H比からみた評価の街路を多く含む地域は 北本町旧道側,南本町旧道側であった。
(2)評価の総合化
(1)をもとに街路ごとに総合評価をおこなった。評 価結果は,先ほどと同じく4地域にて集計し,各地 域の特徴を把握した。その結果,小浜温泉地域にお いて,本研究の捉え方における,もっとも温泉地域
らしい街路景観を有する地域は南本町旧道側であっ た。
表−7本研究のまとめ 総合評価
+ランウA(○が4個)
= ランウB(○が3個)
= ランウC(○が2個)
ランウD(○が1個)
+ランウE(○が0個)
北本町国道 南本町国道 北本町旧 南本町旧道
湯煙 ● ● ●
戸口の数 ● ●
道路幅員 ● ●
道幅/高さ比 ● ●
●の合計 3 4
図−15総合評価の空間布置
I l l
」 n=12
北本町国道側l
南本町国道側l 補註:●は,評価が高い街路が多いことを表す
5.2.温泉地域らしい街路景観の形成に向けて 小浜温泉地域における景観形成に関わる主 な取り組みとして,散歩地図の作成・配布が 挙げられる。図−17(「女将おすすめロード湯 町編」)のような地図の作成・配布は,利用客 を温泉地域らしい街路景観に誘導し,地域全 体のイメージの向上に大きく寄与することが
北本町旧道側
0% 20% 40% 80% 100%
JランクA TランクB■ランクCJランクD■ランクE
国−16総合評価の地域別の構成要素
期待される。
こうした散歩地図が温泉地域らしい街路景観を含
めているかを検証するために,総合評価のマップ上 に,散歩地図を重ね合わせた(図−18).同図にみられ るように,本研究における総合評価は高いものの,
散歩地図には載っていない地域(南本町旧道側)があ
った(オレンジ色の部分が該当)。このことは,南本 町旧道側のような,総合評価が高い,つまり温泉地 域らしい街路景観を多く有する地域が散策ルートに 取り上げられていないことを意味する。
温泉地域らしい街路景観を形成するためには,温 泉地域らしい街路景観を整備するとともに,南本町
旧道側のような総合評価が高い街路景観を有する地 域を先の地図へ掲載するなど,既存の温泉地域らし い街路景観を活用することが必要と考えられる。
地図に掲載されていないことは,地域住民が南本 町旧道側を,中心から外れているために,利用客が 散策するに相応しくない温泉地域らしくない街路景 観と認識していた可能性がある。そうした認識を変 えるためには,同地域の街路景観の価値を普及・啓 発することが必要と考えられる。それとともに,地 域住民の意見などをもとに,自動車交通への対応,
休憩所の整備など歩行者が散策しやすい街路整備の 検討も必要と考えられる。
我が国の温泉地域には,先に述べた温泉地域らし さを有しているものの,温泉地域の中心から外れて いる,観光関連の事業所が少ない等の理由から,地 域住民から温泉地域らしいと認識されていない街路 景観が多く存在すると考えられる。このような温泉 地域らしさを有し,かつ観光関連の事業所が少ない ために,地域の生活が感じられることが多い街路景 観を活用することは,多様な景観を体験できる温泉 地域らしい街路景観を形成するために,重要なこと と考えられる。こうした景観を活用していくために は,まず本研究のような調査を行い,その結果を地 域住民に理解してもらうことによって,街路景観の 価値を共有することが必要と考えられる。
謝辞
本研究を進めるにあたり,現地踏査等にご協力い ただいた雲仙市小浜町の方々に深甚の謝意を表する。
註
(1)本研究では,温泉を,温泉法第2条を踏まえ,2
つの条件(①温泉源からの採取時の温度が摂氏25
度以上,②ある特定の物質を含んでいる)のうち,
ひとつを満たす地中から湧出する温水,鉱水およ び水蒸気その他のガス(ただし炭化水素を主成分
金持・制作小浜濾泉旅館組合女性部 小浜温泉観光協会TE」.D957−74−2672
図−17小浜温泉 女将マップ 総合評価
− ランクA
− ランクB
∴ ランクC
+ ランクD
 ̄ラン
詣 査対象地域内に
る図−17の掲載範
評価は高いものの,図−17
とする天然ガスを除く)と定義する。
また,「温泉地域」に関して,本研究では,上記
の温泉に関与する人やものがある空間的広がりと
定義する。
参考文献
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