長野盆地の地盤の振動特性(その1)
― 浅 川 扇 状 地 の 微 動 観 測 ―
服 部 秀 人
1. ま え が き
長野盆地は中央部に犀川 ・千曲川が流れている.そ して盆地の東側に河東山地,西側に河 西山地がある.盆地は,犀川 ・千曲川両河川による後背湿地ならびに自然堤防,そ して東西 両山地により形成 された数多 くの扇状地か ら成 る.筆者 らは盆地のこのような地形区分につ いて,地盤の振動特性を知 るために常時徽動観測を行っている.これまで,当盆地に関 して 金井 ・田中 ら(1)が広範な常時徴動観測を行い,地盤種別を明らかにしてお り,良(2)は常時微 動の卓越周期 と地盤の表層厚 との関係を調べている.
本報文は,上記 目的の第一段階として,扇状地の常時微動 と表層地盤のS波速度の関連に ついて調べた ものである.対象 とし
た扇状地は,当盆地を形成 している 代表的な,浅川扇状地である. ここ でボー リング柱状図の得 られている 地点を選び,地表面において常時微 動の3成分観測を行った.そ して徽 動か ら得 られた卓越周期 とポー リソ
グ柱状図から読み取 った地盤の表層 厚およびⅣ値 とか ら,表層内のS波 速度を求めた.なお, 1観測地点に おいてポ‑ 1)ソグ孔を利用 してS波 速度を実測できたので, ここにあわ せて報告する.
2. 常時微動額測
図1に微動の観測地点を示す.令 計15地点で観測 した.これ らの地点 には 3階あるいは 4階建てビルが建 設 され,それに先立ち深 さ10‑35m
(・らいのポ‑ 1)ング調査がなされて 図1 観 blTJ地点
*昭和55年2月土木学会中部支部研究発表会において発表
** 土木工学科 講師
原稿受付 昭和55年9月30日
62 長野工業高等専門学校紀要 ・第11号
い る.ポー リング孔のす ぐそばで観測できたのはNo.1,2の2地点だけで,他は建物が建 設 されてお り,ポー リング位置か ら数 メー トル離れた位置で観測 した.記録へ の風の影響を 避け るため主 として午前中に観測を行 った.常時微動観測は昼間 より夜間に行 う方が望まし いのか も知れないが,当扇状地あた りでは夜間における倣動の振幅がかな り小 さくなる場合 があ り,観測の精度が悪 くなる恐れがあるため昼間観測を行った.観測地点が道路に近い場 合は,車両の交通が と絶えるのを待って観測 した.
観測に用いた振動計は固有周期2secの電磁式 (東京測振 SM121,122型)で2sec以下 の 帯域で平坦な応答特性を有する.振動計の増幅器か ら微動の速度波形を出力 し, しゃ断周波 数 20Hzの p‑パスフィルターを通 して データレコーダーに記録 した. 記録の総合周波数 特性は0.5‑10Hzではば平坦である.
なお観測は,水平動 (NS,EW)2成分,上下動1成分の3成分で行 った.
3. S波 速 度 の測 定
S波速度を測定 した場所はNo.1地点である. ここは 本校の5年生用の教室棟がある所 で,建設に先立ち深 さ20mのポー リング調査が行われた.図5のNo.1,2がその柱状図で あ る.N0.1のポー 1)ソグ孔を利用 してS波速度を測定 した.
測定は板たたき法(3)に よった.板たたき法 とは,地表に固定 した板を水平にたたいてS波 振源 とし, これに より発生 したS波をボー リング孔内の所定の深 さに固定 した受振器でとら ち,その伝播時間を測定 し,.走時曲線か らS波速度を求める方法である.ノ
孔中受振器 (OYO3310塾)を深さ1mと と官こ固定 して測定 した.13m以深は,孔 中が閉 そ くしそ受振器を降下できなかった.図2に測定結果 Time(ズ0・01sec)
0 5 10 15
1234LL76789伯.‖ー(uJ)占daQ
Swavelogglngrecords atNo.1point
図2 校たたき法によるS波記録
を示す.走時曲線の傾きか ら, β波速度は170m/see との値を得た.
4.表 層 地 盤 のS波 速 度 4・1表層厚と平均 Ⅳ 値
ボー リング柱状図の〃値に着 目して表層厚を決定 し た.すなわち,Ⅳ≧50となる深 さを基盤面 と考 え,そ の上層を表層 とみな した.そ して表層内の平均〃値を 次式に より算出 した.ただ し,〝は柱状図で表層内に
平均Ⅳ値
‑
(1)記入されているⅣ値の総数である.平均Ⅳ値を求める のに単なる加算平均式を用いると,表層内の平均的代 表値 らしくない値 となる場合が多い こと, また表層内 に数多 く存在する小 さいⅣ値が表層の卓越周期を支配 するであろ うと考え られ るため(1)式を用いるこ と に
長野盆地の地盤の振動特性 (その1)
表 1
63
(注) 平均 〟値の*印は加算平均を示す.
した.ただ し,表層内に大小のⅣ値が混在する2例, No.5,7については,単なる加算平 均式を用いた.N0.8は, 柱状図か ら表層厚を判断するのは 問題があると思われ るので, 12m とみな した.以上の表層厚 と平均Ⅳ値を表1に示す.
4・2表層厚と卓越周期
単位の振幅を もつ正弦波形のS波が基盤内を上昇 して,表層内で反射透過を重ね ると地表 面に生ず る振動の振幅は次式で示 され る(4).ただ し,♪は正弦波の円振動数,Hは表層厚,
欝 ・ k2sin菅 (2)
Vsは表層内のS波速度,k2は表層 と基盤 との振動イ ンピーダンスの比である.一般に表層 は基盤 より軟弱なので kは1より小 さ く,表層内でS波は増幅 され る.そ して,
・‑% (3)
なる周期の波動に対 して(2)式は最大 となる.(3)式は,いわゆる1/4波長別である.
実際の地表面で観測された常時微動の卓越周期 と(3)式 のTとを対応 させて考察を進める.
観測 した徽動の7‑ リエスペ ク トルを図5に示す.スペ ク トルは, 40sec間の記録波形につ いて,時間刻み 0.02secでデ ィジタル計算を 行 った ものである. 図5のNS,EW2成分 か ら求めた卓越振動数,それ らの平均値および卓越周期をそれぞれ表1に示す.No.11は
長野工業高等専門学校紀要 ・第11号
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1 2 5 10 20 N Value 図4 N値 とS波速度
vs‑89.8NO・341
NS,EW で異 るピーク値を有するが, 平均値 にはEW成分の値を採用 した.
表1に示 した表層厚 と微動の卓越周期 との関 係を図3に示す.図中の実線は(3)式を示す.
4・3 表層内の β波速度の推定
図3に見 られ るように,表層厚 と卓越周期 と の関係は,(3)式において1㌔‑130m/sec〜200m
/secとした範囲におおむね 収 まっている. そ こで(3)式を用いて, 表1の表層厚, 卓越周期 より,表層内のS波速度を求め,表1の右欄に 示 した.No・1におけ る実測S波速度の170m/
sec と比べ ると, ここで 推 定 した 値 (166m/
see)と良 く近似 している.
徴動の卓越周期 と表層厚の関係は,単なる1/4 波長別は当てはまらない とい う島らの報告(2)が ある.確かに,地表での振動にはS波の重複反 射では説明し得ない要因が多 く含 まれるであろ うが, ここで対象 とした周波数帯域に関 しては 図3が示す傾向を も考慮 して, 一応(3)式でS 波速度を推定 してみ ることに した.
5.N値 とS波速度の関係
今井 らは,国内約200ヶ所,250孔についてp
‑S検層を行い,地盤の弾性波速度 と力学的性 質 との関係を明らかに している(a). その中で, N値 とS波速度の関係を次式で示 している.
(4) 前節で推定 したS波速度 と表層内の平均N値 との関係を図4に示す.プロッ トされた値は (4)式の直線の近 くに良 く分布 している.
6.あ と が き
浅州 扇状地で観測 した常時微動について.表層地盤のS波速度を推定 した. そ し{'p‑S
検層によるVsIN 関係 と比較的良 く一致する結果を得た.今回は微動の上下動成分につい ては考察 しなかったが,今後更に常時微動の3成分観測を重ね,上下動を含めて微動の特性 を調べ,地盤の振動特性を研究 していきたい.
末筆ながら,本テーマの共同研究者であ り, 日ごろ御指導いただいている東京都立大学工 学部国井隆弘助教授に御礼申 し上げる.また,観測 と解析 とに御指導 ・御協力いただいた大 林組技術研究所菊地敏男氏,観測に御協力いただいた本校卒業生小林義行氏 (現在名工建設
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長野盆地の地盤の振動特性 (その 1) 71
株式会社),渡辺正彦氏 (現在甲府市),ポー リング質料の閲覧にお世話いただいた長野市建 築課関係各位,ならびにS波速度測定に便宜をお計 りいただいた本校会計課関係各位に感謝
申し上げる.
参 考 文 献
(1)Kanai他,BulletinoftheEarthquakeResearchlnstituteγol.44(1966)pp.1297‑1333 (2)長野県建築士会,「長野市地盤図」1977,p.41‑53
(3)今井他,第4回 日本地罷工学シンポジウム 講演集,1975,p.89‑95 (4)岡本,「耐震工学」オーム社,昭和46年,p.118
(5)蘇,土木学会年次学術試訴会概要集Ⅲ,1978,p.172(Ⅲ‑93) (6)Kobayashi他,Proc.ofthe5thJEES,1978,p.305‑312 (7) 多賀他,第5回 日本他宗工学シンポジウム 講演集,1978,p.313‑320