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Global COE Program-Kyushu University Education and Research Hub for Mathematics-for-Industry NEWSLETTER javaview IMI Study Group (SG) SG mm IMI IMI Fr

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Global COE Program-Kyushu University

Education and Research Hub for Mathematics-for-Industry

NEWSLETTER

2013.2 Vol.

8

Global COE Program-Kyushu University

Education and Research Hub for Mathematics-for-Industry

NEWSLETTER

九州大学グローバル COE プログラム

マス・フォア・インダストリ教育研究拠点 ニュースレター

ワークショップ

「多変数多項式システムの求解とその周辺」

■開催日:2013年3月2日(土)∼3月3日(日) ■場所:福岡市早良区百道浜SRPセンタービル2F     研修室1または研修室2 ■URL:http://www.isit.or.jp/lab2/2013/01/11/ ■主催:九州大学グローバルCOEプログラム「マス・フォア・インダストリ教 育研究拠点」 ■共催:(財)九州先端科学技術研究所 情報セキュリティ研究室

市民講演会

「回転運動の力学

∼ふしぎなおもちゃから自然の脅威まで∼

■開催日:2013年3月9日(土) ■場所:九州大学西新プラザ ■URL:http://stl-www.aero.kyushu-u.ac.jp/     pub-lecture/index.html ■主催:九州大学グローバルCOEプログラム「マス・フォア・インダストリ教 育研究拠点」 ■共催:九州工業大学情報工学部 ■後援:(独)日本万国博覧会記念機構、福岡県教育委員会、福岡市教育 委員会、日本物理学会、日本物理教育学会、日本流体力学会

IUTAM Symposium on Vortex Dynamics: Formation,

Structure and Function

■開催日:2013年3月10日(日)∼3月14日(木) ■場所:九州大学医学部百年講堂 ■URL:http://www.iutam2013vortex.jp/ ■後援:九州大学グローバルCOEプログラム「マス・フォア・インダストリ」 教育研究拠点、(独)日本万国博覧会記念機構、戦略的創造研究推進事 業 CREST、九州大学 応用力学研究所

研究集会

活動予定

編集・発行: 九州大学グローバルCOEプログラム「マス・フォア・インダストリ教育研究拠点」

〒819-0395 福岡市西区元岡744 九州大学伊都キャンパス数理学研究教育棟GCOE事務室 TEL:092-802-4404 FAX:092-802-4405  E-mail:coe@math.kyushu-u.ac.jp URL:http://gcoe-mi.jp/ 印刷:城島印刷株式会社    〒810-0012 福岡市中央区白金2-9-6    TEL: 092-531-7102 FAX: 092-524-4411    URL: http://www.kijima-p.co.jp

Journal of Math-for-Industry

投稿論文随時受付中

http://j-mi.org/

出版物

4

01

06

05

 本ワークショップは、2012年10月5日 に九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 において、本グローバルCOEプログラムと文 部科学省 数学・数理科学と諸科学・産業との 連携研究ワークショップの共催として開催 された。昨年度に文科省連携ワークショップ の共催で開催された"Secret Sharing and Cloud Computing"に引き続 いて、クラウドコン ピューティングで利用される暗号技術を テーマとしている。今年度のワークショップ では参加者は26名となり、現状のクラウド サービスの安全性問題と暗号技術を利用し た解決策などが議論された。今回のワーク ショップでは、Yvo Desmedt 教授(テキサス大学)によ る効率的な秘密分散計算 (マルチパーティ計算)に 関する基調講演の後に、 高島克幸(三菱電機)、安田雅哉(富士通研 究所)、山本剛(NTT研究所)、林良太郎(東 芝研究開発センター)、吉野雅之(日立製作 所横浜研究所)から最新の暗号技術に関す る発表および活発な質疑応答が行われた。 特に、内積述語暗号、自己訂正暗号技術、 (完全)準同型暗号、対称型検索可能暗号、 プロキシ再暗号化などの暗号プロトコルと それらの安全性に関する数学モデルや効率 的な実装方法に関して意見交換が行われ た。暗号技術を用いた安全なクラウドコン ピューティングによる医療データや個人情 報等の保護なども話題に上り、今後の暗号 技術の更なる応用発展も期待される。  文部科学省連携ワークショップ(WS)「非 可換調和振動子のスペクトルと量子デバイ スの数理」を九大数理・IMIで2012年11月 26日-27日にGCOE共催で開催させていた だきました。私が2012年に同じような主 題の研究会の世話人をさせていただくの は、3月、7月、そしてこの11月で3度目に なります。山中伸弥教授のノーベル医学生 理学賞受賞で日本中が湧いた日の翌日、ノ ルウエィーのノーベル賞委員会が2012年 ノーベル物理学賞を、この研究分野の先駆 者であるHaroche教授とWineland教授に授与 すると発表したときは手が震えました。同時 に、この発表直前に投稿した自分の拙論文 に彼らの論文を引用しておいてよかったと 安堵もしました。  このWSには海外からの2名を含む約30 名の、企業、大学、研究所所属の方々が参加 し、13の講演がありました。各講演時間は 60分(一部20分)で、 若山教授(九大IMI)と ともに非可換調和振動子の生みの親であ るParmeggiani教授(ボローニャ大学)にも講 演していただきました。この研究会では、講 演者の所属をご覧いただければお分かりの ように純粋数学と物理実験の専門家が境界 を越えて議論する場となり、数学からは、表 現論、スペクトル解析、調和解析、数論、数値 計算の専門家が講演し、実験系からは量子 デバイス、cavity QEDの専門家が講演しまし た。全ての講演が非常に興味深く、最先端 を突っ走っている研究成果であることがひ しひしと伝わってくるものばかりで、企画さ せていただいた側からすれば喜ばしい限り でした。  このWSのキーワードである「スペクトル」 の捉え方は数学の各分野でも相当異なりま すが、実験系の専門家のいう「スペクトル」 は、数学のそれとは全く異質なものです。し かし、そこには数学的な真理がたくさん埋 まっているような予感がしています。これか らまた機会があれば、境界を越えたわくわく するような研究会を企画したいと考えてい ます。

数理学研究院・教授

廣島 文生

マス・フォア・インダストリ研究所 教授

高木 剛

Workshop "Cryptographic Technologies suitable for Cloud Computing"

文部科学省連携ワークショップ

「非可換調和振動子のスペクトルと量子デバイスの数理」報告

 12月19日、文部科学省数学・数理科学と諸 科学・産業との連携研究ワークショップの一環 として、東京内幸町富国生命ビルで標記研究 会を開催しました。今回は初回という位置づけ で、農業環境技術研究所、JAMSTEC、IMIを中心 に背景の異なる研究者が約25名集って、互い の研究テーマを紹介し合い、共同研究につな がる芽を探しました。  数学と農業分野とは接点が少ないように 思われがちですが、統計学の歴史を紐解くと すぐわかる様に、統計学の巨人R. A. Fisher は穀 物収量を研究対象としたStudies in Crop Variation を著した後、革新的な業績を数多く生み出し た事で良く知られています。今回のこの話が 来た時、佐久間は最近始めた気候変動予測 を利用した農作物の“収量予測”の研究を取り 上げようと決断しました。連携のテーマは、気 候変動予測情報を広域(世界域)農作物収量 予測に繋げるための新たな農作物モデルの 開発です。モデルパラメータの決定の為にベ イズ推定を使用するという基本的な路線は あるものの、まだ道半ばです。「色々と未知な る問題を数学的に検討する中から面白い テーマが見つかれば」という期待もあります。 JAMSTECの研究グループの仕事は、大気・海洋 の力学がベースとなっていますが、佐久間は 個人的には統計的手法に将来性を感じます。 大気・海洋分野の先人たちが一世紀前に抱い た“予測の夢”がほぼ実現された今、「次なる 応用」の段階に入る時期に来ているのではと 感じています。  次回からは徐々に、食料生産システムに関 する数学的な問題意識を明確にし、より具体 的な課題を数学・気象学・農作物学が連携する 勉強会のテーマとして行きたいと思います。 (独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)・横浜研究所

佐久間 弘文

九州大学マス・フォア・インダストリ研究所

福本 康秀

ワークショップ「気候モデルの農業への応用」報告

−数学を基礎に置いたNext Applicationsを目指して−

(本ワークショップホームページ: http://www.imi.kyushu-u.ac.jp/eng/events/view/478) 佐久間 弘文氏  

GCOE

プログラム「マス・フォア・インダ ストリ教育研究拠点」終了にあたり、事 業推進担当者を代表して、お礼を申し上 げます。  関係各位の親身なサポートとご協力、 学生たちの不断の努力とチャレンジン グな心意気、そして大学からの支援なく しては、5年間の本事業が順調に進んだ とは考えられません。心より感謝申し上 げる次第です。マス・フォア・インダストリ なる旗を立て、本拠点では産業界との連 携を重点におき研究と博士課程人材育 成を進めてまいりました。主な活動は、 博士課程学生の企業長期研究インター ンシップ、産業界から提示していただい た数理的課題を1週間の会期で解決せ んと共同で励むスタディーグループ (

SG

),広がるテーマを定めての大学・産業 界 の 研 究 者 が 集う国 際 会 議

F o r u m

“Math-for-Industry”

、学生・若手研究者が 中心となり開催するチュートリアルセミ ナーやワークショップ、学生等の海外大 学・国際会議等への派遣、そして、応用数 学・純粋数学・統計学の知見を垣根なく 取り入れた産業界との共同研究などで す。これらの活動を通じて、それまでは お目にかかることがなかった方々とも出 会え、新しい交流が始まり、それが深まり ました。これらは大きな財産です。  さて、マス・フォア・インダストリと銘 打った本拠点活動推進の動機は、以下 の不可分な関係にある二つです。  一つ目は、数学の発展には良質の問 題が欠かせないことです。しかも、社会、 とくに産業界はそのような良質な問題 の宝庫です。数学の内部にある興味深 い問題を体系化しつつ解決せんとする のがいわば純粋数学と呼ばれている研 究です。歴史、たとえば19世紀に目を向 ければ明らかですが、数学の問題の多く は、その内部のみならず、社会や自然科 学・技術のなかから現れたものでした。 20世紀は、たしかに、ブルバキに象徴さ れるような数学の抽象化・体系化が進 み、純粋数学が著しく高度に発展した時 代です。もちろんこの時代も、工学等の ユーザー側の必要から発達した数学も 多く、数学が生み出したといってもよい 計算機の出現は、それらを加速させまし た。計算機の出現は、社会の一部に、役 に立てるための数学はもはや不要だと の勘違いを起こさせた時代もあったよ うです。同様に、“情報”というキーワード が表舞台に躍り出て(情報学が生まれ)、 かつては困難を伴ったデータ収集や整 理・解析なども恰も簡単にできると誤解 され、統計学も不要なのではといわれた 時期があったようです。しかし実際にお こったことは逆であり、計算機が発達し それを通した科学や技術が進むに連れ、 優れた計算機シミュレーション、数理モ デルの構築、原理の解明や記述にと、数 学・統計学がますます必要となり、さらに そこから新たな理論や概念も生まれま した。数学・統計学の新しい研究テーマ が格段に増加している所以です。  もう一つは、広い意味での数学ある いは数理科学の研究者を目指している 学生たちの大学教員とは限らないキャ リアパスを拓こうと考えたことです。わ が国ではあまり顕在化していなくとも、 欧米先進国の状況からは、必ずや多く の需要が産業界の研究開発現場に存 在しているはずだと考えました。  2011年4月にマス・フォア・インダス トリ研究所(

IMI

)が創設されましたことも 本活動の果実の一つです。これにより、 わが国に初めての産業数学を標榜する 研究組織ができたわけですが、高度なテ クノロジーを一つの屋台骨とするわが 国の国力や人口に鑑みれば、最低あと 数か所は、このような人材育成機能をも もった研究拠点が必要であろうと考え ている次第です。また、本

GCOE

は終了致 しますが、上述の

Forum

SG

は、

IMI

を核 として、他大学や産業界・関係省庁の協 力を得ながら今後も継続し発展させて 行く所存です。皆様には、今後もマス・ フォア・インダストリ活動に対しまして、ご 支援とご協力を賜りますようお願い申し 上げます。

拠点リーダー

若山 正人

巻頭言 お礼とご報告

(マス・フォア・インダストリ研究所長、副学長)

(2)

Education and Research Hub for Mathematics-for-Industry

NEWSLETTER

I am in the second year of the Functional Mathematics Course of the Doctoral Course, Graduate School of Mathematics, Kyushu University. Last year, by the invitation from Prof. Monique Chyba, I had an opportu-nity to experience the study and research at the University of Hawaii in Honolulu, from Oct.17 to Dec.22. I enjoyed the study, the research, the laboratory life, and made a lot of friends there.

It was the time when Japan entered autumn and was getting cold, but oppositely Hawaii was very warm all the time. I was living there in a dormitory where students from different countries gathered. We shared the same bathroom and kitchen. We sometimes had parties and went to the beach, so we were able to have a good communication, which enriched my life and refreshed me a lot after the work and study at the University. As a bonus, I exercised my English much with them. A trip to Maui Island to attend a conference is an unforgettable experience. Also, I enjoyed the math event for primary school students. I was impressed by the enthusiasm of Prof. Chyba to try to encourage young children. I was supervised by Prof. Chyba. She is very kind and planned for me to study and do some research on modeling fractone-controlled cell-mitosis process that

is one of her research interests. There are two main works I did, the mathematical and the biological side. On the mathematical side, I discussed the model with Prof. Chyba and Aaron Tamura-Sato, a student of Prof. Chyba (see the photo). It is a disturbed diffusion model influenced by the fractone, a kind of membrane in the brain supposed to transfer the growth factor to the cell to stimulate it to undergo mitosis. This is the doctoral research for Aaron, and he constructed the main model already. What we did new is to add meninges, an important membrane around the brain which is supposed to be a rich source of the growth factor, and to add another negative growth factor which prevents the cell from undergoing mitosis, into the code. Laboratory working was very interesting. I worked with Aaron and Doc. Mercier, who is a professor in the Biology and taught me a lot about the brain biology and the experiment. We dyed the cut mouse brain, and counted the number of fractones and compared it between normal mouse and autistic mouse.

On Dec.23, it was sunny in Honolulu, but was snowing in Fukuoka. I finished a fruitful trip and could continue my study at Kyushu University.

 当拠点の重要行事であるForum “Math-for-Industry” を、今年度は、10月22日∼26日の 日程で、博多埠頭にある福岡国際会議場で開 催しました。2008年3月に東京で開催した 第0回のフォーラム以来、企業の研究者と大 学・国公立研究機関の研究者、そして大学院 生が一堂に会して、産業数学の先端的話題を 中心にオープンな議論を行うこのフォーラム も6回を数えます。参加者は総勢116名、う ち、国内企業から10名、大学院生60名、海 外の企業や大学・国立研究所からも13名が 参 加してくれました 。今 回 の テ ー マ は 、 “Information Recovery and Discovery”です。ネット 社会が発達するにつれて「ビッグ・データ」や 「情報爆発」が大きな問題として頭をもたげ てきましたが、これはもちろん 、ここでの “Information”はコンピュータ・アーキテクチャー やプロトコルなどの革新にかかわる数学・数 理科学上のテーマを広く含みます。情報セ キュリティ、可視化、逆問題を主要3テーマと して「最適化」が通奏低音をなすという過去2 年のフォーラムの流れを受け継ぐものです。 今年もバラエティに富んだ面白い話題が並 びましたが、スマート・グリッド、交通流、バイオ メトリックなどネットワーク・トポロジーとその 上の流れの最適化に関して特色のある講演 が目立ちました。  昨年に続いて、大学院生によるポスター セッションを実施しました。九州大学大学院数 理学府・システム情報科学府、神戸大学大学 院理学研究科数学専攻から29名のエントリ がありました。2日目の午後、英語でのポス ターの紹介(short talk)と質疑応答を行いました が、Bob Anderssen博士(CSIRO、オーストラリア) の見事なリードで盛り上がりを見せました。 参加者全員の投票によって、ベスト・ポスター 賞2件、エクセレント・ポスター賞5件を選定し ました。写真は受賞者たちと関係教員です。 また、Anderssen博士の計らいで、質疑応答の 際に質問した大学院生3名に特別賞が授与 されました。ポスター賞受賞者には奨学金が 与えられ、希望する海外の大学・研究機関で 短期間研究滞在ができます。受賞者のほぼ全 員がこの副賞を有効利用して、貴重な経験を 積んでくれています。  ここ数年のフォーラム活動により、国内は もとより海外にも応援団が徐々に増えて、マ ス・フォア・インダストリの輪がグローバルに拡 がりつつあります。GCOEプログラムは本年度 で終了しますが、フォーラムは来年度以降も 続けていく予定です。今後ともご協力のほど よろしくお願いいたします。  この立体模型は、11月の半ばごろから数 理学研究教育棟3階の談話室に置かれてい るものです。数百のピースをひとつひとつ 手で組み上げたもので、作成の指導は、本 学のコンラッド・ポルチエ教授(写真中央) が、実際の作成は数学科の学生と数理学府 の大学院生が2日間にわたって行いました。 この巨大なオブジェクトは、素朴に種々の対 称性を持った多面体と見なせるものである と同時に、三次元ユークリッド空間内に埋め 込まれた離散曲面の例と考えることもでき ます。離散曲面は、離散微分幾何学の一つ の主要な研究対象であり、連続曲面の有限 的な近似であるという素朴な解釈を越え て、独自の興味深い理論展開がなされると 同時にコンピュータ・グラフィックスに直結 するなど、理論と応用の両面からその重要 性が高まっています。例えば、建築物にも 様々なタイプの離散曲面が応用されていま すが、今回、模型を組み立てる際にも、安定 性、剛性、可展性、たわみ、自己交差など、さ まざまな幾何学的特性を自然に認識するよ うな工夫がなされていました。今回のこの 実習は、ポルチエ教授の特別講義「ビジュア ライゼーション・マスマティックス」の課外活 動として行われたもので、講義の中では、 javaviewというソフトウェアを用いて、ノート パソコンの中に種々の離散曲面を実現し、 その運動や変形を行ったり、離散ベクトル解 析(例えばホッジ分解)を実習したりしまし た。ユニークで有意義なものであったと思 います。

マス・フォア・インダストリ研究所 教授

落合 啓之

談話室の幾何学模型

My experience of two-month stay at the University of Hawaii

Forum“Math-for-Industry”2012 “Information Recovery and Discovery”

ZOU Rong

 マス・フォア・インダストリ研究所(IMI)は 企業との連携を活性化し研究活動を奨励す るためにIMI所長賞を新設しました。研究活 動において、特に顕著な業績を挙げ、かつ 学界または産業界から高い評価をうけた 方、あるいは本研究所の発展に功労のあっ た方、学生においては、国際会議、研究集 会、スタディグループワークショップ等で著 しい活躍のあった方を顕彰するものです。 その最初の受賞者として井元佑介さんが選 ばれました。その受賞理由について解説し ます。  Study Group (SG) では企業等から提供され た数理的課題を、興味を持った専門家や学 生 が 一 緒に解 法を考 える研 究 会 です 。 2012年7月に開催されたSGには、鉄道総 研の神山雅子氏から提示された「一定の長 さの弦を線路にあてて、弦と線路とのギャッ プをmm単位で計測することを一定間隔で 繰り返し、その計測値から線路の曲線を復 元せよ」という課題がありました。これには 幾何の専門家を含む多くの方が興味を持ち ました。懇親会の席で、落合啓之氏(IMI教授) から斉藤新悟氏(IMI学術研究員)に「曲線と 曲率の間の関係を示すFrenet-Serret formula」 の利用についてコメントがあり、斉藤氏はこ れをヒントに復元の理論計算を行いました。 この理論を用いた井元氏による数値計算結 果は実際の線路図に近いこと、また時間遅 れがあることがわかりました。 この遅れを調 整することで決定係数が0.989と完全な復 元が得られました。短期間に理論的にも数 値的にも満足すべき結果を得たことに対し て、神山さんから高い評価を得ました。本成 果は共同研究によるものですが。とくに井元 氏は積極的に数値計算に取り組み、与えら れた曲線からギャップを得る面倒な計算を 行ったことは評価に値します。今後の井元氏 の成果に期待します。

マス・フォア・インダストリ研究所 教授

西井 龍映

井元佑介さん(数理学府修士課程2年)が

IMI所長賞を受賞

 このたび第1回藤原洋数理科学賞(奨 励賞)を受賞させて頂きました。以下に簡 単にではありますが、受賞タイトル「トポ ロジーと力学系理論の情報通信・生命科 学等への応用」に関して、最近の研究業 績の紹介をさせて頂きます。  情報通信分野では符号理論に関する 研究を主に進めています。ご存知の方も 多いと思いますが、符号理論はこれまで 数学と工学の双方の視点から深く研究が 進められてきた分野です。数学的研究と しては、符号化に関わる代数的符号理論 の立場から主に研究が進められており、 群論・組合せ論・代数幾何など様々な分野 と関係を持ちながら発展しています。一 方工学的な研究としては近年確率的な 復号法が注目されており、それをもとに シャノン限界と呼ばれる理論極限を達成 する誤り訂正符号が提案されています。 私の興味は一言で述べると「確率的な復 号法を代数的に調べる」ことです。ここで いう確率的な復号法とは最尤推定復号 を指します。この最尤推定復号は復号誤 り確率を最小にする復号法なのですが、 (そのまま計算すると)計算量が符号長に 関して指数的に増大します。よって最尤 推定復号を低計算・高精度に近似するこ とは実用的な高性能誤り訂正符号を開 発する上で非常に重要になってきます。  この研究では(1)最尤推定復号を有 理写像として定式化し、(2)有理写像力学 系の構造(不動点やその安定性)を調べ、 (3)その情報から近似有理写像を導き近 似最尤推定復号を提案し、(4)その近似 最尤推定復号に最適な符号化を代数的 に定式化する、というものです。特にこの 有理写像の中に符号/復号の双対構造 が含まれていることに気づいたことが大 きな契機となり、符号化における代数的 な性質や手法が最尤推定復号の研究に 応用できることになりました。最近では不 変式論を用いた最尤推定復号の特徴付 け、可換環論的手法を用いた近似最尤推 定復号の具体的構成法などを調べてい ます。  生命科学関係では、トポロジカルな手 法をタンパク質の構造解析へ応用するこ とに興味があります。タンパク質は生命 活動を営む上で必須の物質であり、細胞 内で繰り広げられている様々な働きはタ ンパク質を基本ユニットとして展開され ています。特にタンパク質の立体構造と その働きの関係を調べることは生命科学 の大切なテーマの一つであり、立体構造 に関してはX線結晶解析を用いて巨大な データベースが構築され一般公開され ています(例えばProtein Data Bank)。一方で 近年の計算・応用トポロジーの発展によ り、単体複体や方体複体のホモロジー群 やパーシステントホモロジー群(位相空 間のフィルトレーション内でホモロジー 群の生成元の生成/消滅を代数的に取 り扱う道具)の高速アルゴリズムが開発 されました。これによりタンパク質の立体 構造をトポロジカルな視点から調べるこ とが可能になります。私が最近興味を 持っていることは、タンパク質の物性と立 体構造の関係を、データベースに蓄えら れているデータにトポロジカルな解析を 行うことで明らかにすることです。具体的 には圧縮率と呼ばれるタンパク質の柔ら かさを測る物性値と相関を持つデータ解 析手法を、パーシステントホモロジー群 を用いて開発しました。

マス・フォア・インダストリ研究所 准教授

平岡 裕章

第1回藤原洋数理科学賞受賞報告

図1:ヘモグロビンの単体複体フィルトレーション 図2:ヘモグロビンのパーシステント図 (FMI2012のホームページ: http://fmi2012.imi.kyushu-u.ac.jp/)

福本 康秀

(マス・フォア・インダストリ研究所 教授)

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Global COE Program-Kyushu University

Education and Research Hub for Mathematics-for-Industry

NEWSLETTER

I am in the second year of the Functional Mathematics Course of the Doctoral Course, Graduate School of Mathematics, Kyushu University. Last year, by the invitation from Prof. Monique Chyba, I had an opportu-nity to experience the study and research at the University of Hawaii in Honolulu, from Oct.17 to Dec.22. I enjoyed the study, the research, the laboratory life, and made a lot of friends there.

It was the time when Japan entered autumn and was getting cold, but oppositely Hawaii was very warm all the time. I was living there in a dormitory where students from different countries gathered. We shared the same bathroom and kitchen. We sometimes had parties and went to the beach, so we were able to have a good communication, which enriched my life and refreshed me a lot after the work and study at the University. As a bonus, I exercised my English much with them. A trip to Maui Island to attend a conference is an unforgettable experience. Also, I enjoyed the math event for primary school students. I was impressed by the enthusiasm of Prof. Chyba to try to encourage young children. I was supervised by Prof. Chyba. She is very kind and planned for me to study and do some research on modeling fractone-controlled cell-mitosis process that

is one of her research interests. There are two main works I did, the mathematical and the biological side. On the mathematical side, I discussed the model with Prof. Chyba and Aaron Tamura-Sato, a student of Prof. Chyba (see the photo). It is a disturbed diffusion model influenced by the fractone, a kind of membrane in the brain supposed to transfer the growth factor to the cell to stimulate it to undergo mitosis. This is the doctoral research for Aaron, and he constructed the main model already. What we did new is to add meninges, an important membrane around the brain which is supposed to be a rich source of the growth factor, and to add another negative growth factor which prevents the cell from undergoing mitosis, into the code. Laboratory working was very interesting. I worked with Aaron and Doc. Mercier, who is a professor in the Biology and taught me a lot about the brain biology and the experiment. We dyed the cut mouse brain, and counted the number of fractones and compared it between normal mouse and autistic mouse.

On Dec.23, it was sunny in Honolulu, but was snowing in Fukuoka. I finished a fruitful trip and could continue my study at Kyushu University.

 当拠点の重要行事であるForum “Math-for-Industry” を、今年度は、10月22日∼26日の 日程で、博多埠頭にある福岡国際会議場で開 催しました。2008年3月に東京で開催した 第0回のフォーラム以来、企業の研究者と大 学・国公立研究機関の研究者、そして大学院 生が一堂に会して、産業数学の先端的話題を 中心にオープンな議論を行うこのフォーラム も6回を数えます。参加者は総勢116名、う ち、国内企業から10名、大学院生60名、海 外の企業や大学・国立研究所からも13名が 参 加してくれました 。今 回 の テ ー マ は 、 “Information Recovery and Discovery”です。ネット 社会が発達するにつれて「ビッグ・データ」や 「情報爆発」が大きな問題として頭をもたげ てきましたが、これはもちろん 、ここでの “Information”はコンピュータ・アーキテクチャー やプロトコルなどの革新にかかわる数学・数 理科学上のテーマを広く含みます。情報セ キュリティ、可視化、逆問題を主要3テーマと して「最適化」が通奏低音をなすという過去2 年のフォーラムの流れを受け継ぐものです。 今年もバラエティに富んだ面白い話題が並 びましたが、スマート・グリッド、交通流、バイオ メトリックなどネットワーク・トポロジーとその 上の流れの最適化に関して特色のある講演 が目立ちました。  昨年に続いて、大学院生によるポスター セッションを実施しました。九州大学大学院数 理学府・システム情報科学府、神戸大学大学 院理学研究科数学専攻から29名のエントリ がありました。2日目の午後、英語でのポス ターの紹介(short talk)と質疑応答を行いました が、Bob Anderssen博士(CSIRO、オーストラリア) の見事なリードで盛り上がりを見せました。 参加者全員の投票によって、ベスト・ポスター 賞2件、エクセレント・ポスター賞5件を選定し ました。写真は受賞者たちと関係教員です。 また、Anderssen博士の計らいで、質疑応答の 際に質問した大学院生3名に特別賞が授与 されました。ポスター賞受賞者には奨学金が 与えられ、希望する海外の大学・研究機関で 短期間研究滞在ができます。受賞者のほぼ全 員がこの副賞を有効利用して、貴重な経験を 積んでくれています。  ここ数年のフォーラム活動により、国内は もとより海外にも応援団が徐々に増えて、マ ス・フォア・インダストリの輪がグローバルに拡 がりつつあります。GCOEプログラムは本年度 で終了しますが、フォーラムは来年度以降も 続けていく予定です。今後ともご協力のほど よろしくお願いいたします。  この立体模型は、11月の半ばごろから数 理学研究教育棟3階の談話室に置かれてい るものです。数百のピースをひとつひとつ 手で組み上げたもので、作成の指導は、本 学のコンラッド・ポルチエ教授(写真中央) が、実際の作成は数学科の学生と数理学府 の大学院生が2日間にわたって行いました。 この巨大なオブジェクトは、素朴に種々の対 称性を持った多面体と見なせるものである と同時に、三次元ユークリッド空間内に埋め 込まれた離散曲面の例と考えることもでき ます。離散曲面は、離散微分幾何学の一つ の主要な研究対象であり、連続曲面の有限 的な近似であるという素朴な解釈を越え て、独自の興味深い理論展開がなされると 同時にコンピュータ・グラフィックスに直結 するなど、理論と応用の両面からその重要 性が高まっています。例えば、建築物にも 様々なタイプの離散曲面が応用されていま すが、今回、模型を組み立てる際にも、安定 性、剛性、可展性、たわみ、自己交差など、さ まざまな幾何学的特性を自然に認識するよ うな工夫がなされていました。今回のこの 実習は、ポルチエ教授の特別講義「ビジュア ライゼーション・マスマティックス」の課外活 動として行われたもので、講義の中では、 javaviewというソフトウェアを用いて、ノート パソコンの中に種々の離散曲面を実現し、 その運動や変形を行ったり、離散ベクトル解 析(例えばホッジ分解)を実習したりしまし た。ユニークで有意義なものであったと思 います。

マス・フォア・インダストリ研究所 教授

落合 啓之

談話室の幾何学模型

My experience of two-month stay at the University of Hawaii

Forum“Math-for-Industry”2012 “Information Recovery and Discovery”

ZOU Rong

 マス・フォア・インダストリ研究所(IMI)は 企業との連携を活性化し研究活動を奨励す るためにIMI所長賞を新設しました。研究活 動において、特に顕著な業績を挙げ、かつ 学界または産業界から高い評価をうけた 方、あるいは本研究所の発展に功労のあっ た方、学生においては、国際会議、研究集 会、スタディグループワークショップ等で著 しい活躍のあった方を顕彰するものです。 その最初の受賞者として井元佑介さんが選 ばれました。その受賞理由について解説し ます。  Study Group (SG) では企業等から提供され た数理的課題を、興味を持った専門家や学 生 が 一 緒に解 法を考 える研 究 会 です 。 2012年7月に開催されたSGには、鉄道総 研の神山雅子氏から提示された「一定の長 さの弦を線路にあてて、弦と線路とのギャッ プをmm単位で計測することを一定間隔で 繰り返し、その計測値から線路の曲線を復 元せよ」という課題がありました。これには 幾何の専門家を含む多くの方が興味を持ち ました。懇親会の席で、落合啓之氏(IMI教授) から斉藤新悟氏(IMI学術研究員)に「曲線と 曲率の間の関係を示すFrenet-Serret formula」 の利用についてコメントがあり、斉藤氏はこ れをヒントに復元の理論計算を行いました。 この理論を用いた井元氏による数値計算結 果は実際の線路図に近いこと、また時間遅 れがあることがわかりました。 この遅れを調 整することで決定係数が0.989と完全な復 元が得られました。短期間に理論的にも数 値的にも満足すべき結果を得たことに対し て、神山さんから高い評価を得ました。本成 果は共同研究によるものですが。とくに井元 氏は積極的に数値計算に取り組み、与えら れた曲線からギャップを得る面倒な計算を 行ったことは評価に値します。今後の井元氏 の成果に期待します。

マス・フォア・インダストリ研究所 教授

西井 龍映

井元佑介さん(数理学府修士課程2年)が

IMI所長賞を受賞

 このたび第1回藤原洋数理科学賞(奨 励賞)を受賞させて頂きました。以下に簡 単にではありますが、受賞タイトル「トポ ロジーと力学系理論の情報通信・生命科 学等への応用」に関して、最近の研究業 績の紹介をさせて頂きます。  情報通信分野では符号理論に関する 研究を主に進めています。ご存知の方も 多いと思いますが、符号理論はこれまで 数学と工学の双方の視点から深く研究が 進められてきた分野です。数学的研究と しては、符号化に関わる代数的符号理論 の立場から主に研究が進められており、 群論・組合せ論・代数幾何など様々な分野 と関係を持ちながら発展しています。一 方工学的な研究としては近年確率的な 復号法が注目されており、それをもとに シャノン限界と呼ばれる理論極限を達成 する誤り訂正符号が提案されています。 私の興味は一言で述べると「確率的な復 号法を代数的に調べる」ことです。ここで いう確率的な復号法とは最尤推定復号 を指します。この最尤推定復号は復号誤 り確率を最小にする復号法なのですが、 (そのまま計算すると)計算量が符号長に 関して指数的に増大します。よって最尤 推定復号を低計算・高精度に近似するこ とは実用的な高性能誤り訂正符号を開 発する上で非常に重要になってきます。  この研究では(1)最尤推定復号を有 理写像として定式化し、(2)有理写像力学 系の構造(不動点やその安定性)を調べ、 (3)その情報から近似有理写像を導き近 似最尤推定復号を提案し、(4)その近似 最尤推定復号に最適な符号化を代数的 に定式化する、というものです。特にこの 有理写像の中に符号/復号の双対構造 が含まれていることに気づいたことが大 きな契機となり、符号化における代数的 な性質や手法が最尤推定復号の研究に 応用できることになりました。最近では不 変式論を用いた最尤推定復号の特徴付 け、可換環論的手法を用いた近似最尤推 定復号の具体的構成法などを調べてい ます。  生命科学関係では、トポロジカルな手 法をタンパク質の構造解析へ応用するこ とに興味があります。タンパク質は生命 活動を営む上で必須の物質であり、細胞 内で繰り広げられている様々な働きはタ ンパク質を基本ユニットとして展開され ています。特にタンパク質の立体構造と その働きの関係を調べることは生命科学 の大切なテーマの一つであり、立体構造 に関してはX線結晶解析を用いて巨大な データベースが構築され一般公開され ています(例えばProtein Data Bank)。一方で 近年の計算・応用トポロジーの発展によ り、単体複体や方体複体のホモロジー群 やパーシステントホモロジー群(位相空 間のフィルトレーション内でホモロジー 群の生成元の生成/消滅を代数的に取 り扱う道具)の高速アルゴリズムが開発 されました。これによりタンパク質の立体 構造をトポロジカルな視点から調べるこ とが可能になります。私が最近興味を 持っていることは、タンパク質の物性と立 体構造の関係を、データベースに蓄えら れているデータにトポロジカルな解析を 行うことで明らかにすることです。具体的 には圧縮率と呼ばれるタンパク質の柔ら かさを測る物性値と相関を持つデータ解 析手法を、パーシステントホモロジー群 を用いて開発しました。

マス・フォア・インダストリ研究所 准教授

平岡 裕章

第1回藤原洋数理科学賞受賞報告

03

図1:ヘモグロビンの単体複体フィルトレーション 図2:ヘモグロビンのパーシステント図 (FMI2012のホームページ: http://fmi2012.imi.kyushu-u.ac.jp/)

福本 康秀

(マス・フォア・インダストリ研究所 教授)

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Education and Research Hub for Mathematics-for-Industry

NEWSLETTER

I am in the second year of the Functional Mathematics Course of the Doctoral Course, Graduate School of Mathematics, Kyushu University. Last year, by the invitation from Prof. Monique Chyba, I had an opportu-nity to experience the study and research at the University of Hawaii in Honolulu, from Oct.17 to Dec.22. I enjoyed the study, the research, the laboratory life, and made a lot of friends there.

It was the time when Japan entered autumn and was getting cold, but oppositely Hawaii was very warm all the time. I was living there in a dormitory where students from different countries gathered. We shared the same bathroom and kitchen. We sometimes had parties and went to the beach, so we were able to have a good communication, which enriched my life and refreshed me a lot after the work and study at the University. As a bonus, I exercised my English much with them. A trip to Maui Island to attend a conference is an unforgettable experience. Also, I enjoyed the math event for primary school students. I was impressed by the enthusiasm of Prof. Chyba to try to encourage young children. I was supervised by Prof. Chyba. She is very kind and planned for me to study and do some research on modeling fractone-controlled cell-mitosis process that

is one of her research interests. There are two main works I did, the mathematical and the biological side. On the mathematical side, I discussed the model with Prof. Chyba and Aaron Tamura-Sato, a student of Prof. Chyba (see the photo). It is a disturbed diffusion model influenced by the fractone, a kind of membrane in the brain supposed to transfer the growth factor to the cell to stimulate it to undergo mitosis. This is the doctoral research for Aaron, and he constructed the main model already. What we did new is to add meninges, an important membrane around the brain which is supposed to be a rich source of the growth factor, and to add another negative growth factor which prevents the cell from undergoing mitosis, into the code. Laboratory working was very interesting. I worked with Aaron and Doc. Mercier, who is a professor in the Biology and taught me a lot about the brain biology and the experiment. We dyed the cut mouse brain, and counted the number of fractones and compared it between normal mouse and autistic mouse.

On Dec.23, it was sunny in Honolulu, but was snowing in Fukuoka. I finished a fruitful trip and could continue my study at Kyushu University.

 当拠点の重要行事であるForum “Math-for-Industry” を、今年度は、10月22日∼26日の 日程で、博多埠頭にある福岡国際会議場で開 催しました。2008年3月に東京で開催した 第0回のフォーラム以来、企業の研究者と大 学・国公立研究機関の研究者、そして大学院 生が一堂に会して、産業数学の先端的話題を 中心にオープンな議論を行うこのフォーラム も6回を数えます。参加者は総勢116名、う ち、国内企業から10名、大学院生60名、海 外の企業や大学・国立研究所からも13名が 参 加してくれました 。今 回 の テ ー マ は 、 “Information Recovery and Discovery”です。ネット 社会が発達するにつれて「ビッグ・データ」や 「情報爆発」が大きな問題として頭をもたげ てきましたが、これはもちろん 、ここでの “Information”はコンピュータ・アーキテクチャー やプロトコルなどの革新にかかわる数学・数 理科学上のテーマを広く含みます。情報セ キュリティ、可視化、逆問題を主要3テーマと して「最適化」が通奏低音をなすという過去2 年のフォーラムの流れを受け継ぐものです。 今年もバラエティに富んだ面白い話題が並 びましたが、スマート・グリッド、交通流、バイオ メトリックなどネットワーク・トポロジーとその 上の流れの最適化に関して特色のある講演 が目立ちました。  昨年に続いて、大学院生によるポスター セッションを実施しました。九州大学大学院数 理学府・システム情報科学府、神戸大学大学 院理学研究科数学専攻から29名のエントリ がありました。2日目の午後、英語でのポス ターの紹介(short talk)と質疑応答を行いました が、Bob Anderssen博士(CSIRO、オーストラリア) の見事なリードで盛り上がりを見せました。 参加者全員の投票によって、ベスト・ポスター 賞2件、エクセレント・ポスター賞5件を選定し ました。写真は受賞者たちと関係教員です。 また、Anderssen博士の計らいで、質疑応答の 際に質問した大学院生3名に特別賞が授与 されました。ポスター賞受賞者には奨学金が 与えられ、希望する海外の大学・研究機関で 短期間研究滞在ができます。受賞者のほぼ全 員がこの副賞を有効利用して、貴重な経験を 積んでくれています。  ここ数年のフォーラム活動により、国内は もとより海外にも応援団が徐々に増えて、マ ス・フォア・インダストリの輪がグローバルに拡 がりつつあります。GCOEプログラムは本年度 で終了しますが、フォーラムは来年度以降も 続けていく予定です。今後ともご協力のほど よろしくお願いいたします。  この立体模型は、11月の半ばごろから数 理学研究教育棟3階の談話室に置かれてい るものです。数百のピースをひとつひとつ 手で組み上げたもので、作成の指導は、本 学のコンラッド・ポルチエ教授(写真中央) が、実際の作成は数学科の学生と数理学府 の大学院生が2日間にわたって行いました。 この巨大なオブジェクトは、素朴に種々の対 称性を持った多面体と見なせるものである と同時に、三次元ユークリッド空間内に埋め 込まれた離散曲面の例と考えることもでき ます。離散曲面は、離散微分幾何学の一つ の主要な研究対象であり、連続曲面の有限 的な近似であるという素朴な解釈を越え て、独自の興味深い理論展開がなされると 同時にコンピュータ・グラフィックスに直結 するなど、理論と応用の両面からその重要 性が高まっています。例えば、建築物にも 様々なタイプの離散曲面が応用されていま すが、今回、模型を組み立てる際にも、安定 性、剛性、可展性、たわみ、自己交差など、さ まざまな幾何学的特性を自然に認識するよ うな工夫がなされていました。今回のこの 実習は、ポルチエ教授の特別講義「ビジュア ライゼーション・マスマティックス」の課外活 動として行われたもので、講義の中では、 javaviewというソフトウェアを用いて、ノート パソコンの中に種々の離散曲面を実現し、 その運動や変形を行ったり、離散ベクトル解 析(例えばホッジ分解)を実習したりしまし た。ユニークで有意義なものであったと思 います。

マス・フォア・インダストリ研究所 教授

落合 啓之

談話室の幾何学模型

My experience of two-month stay at the University of Hawaii

Forum“Math-for-Industry”2012 “Information Recovery and Discovery”

ZOU Rong

 マス・フォア・インダストリ研究所(IMI)は 企業との連携を活性化し研究活動を奨励す るためにIMI所長賞を新設しました。研究活 動において、特に顕著な業績を挙げ、かつ 学界または産業界から高い評価をうけた 方、あるいは本研究所の発展に功労のあっ た方、学生においては、国際会議、研究集 会、スタディグループワークショップ等で著 しい活躍のあった方を顕彰するものです。 その最初の受賞者として井元佑介さんが選 ばれました。その受賞理由について解説し ます。  Study Group (SG) では企業等から提供され た数理的課題を、興味を持った専門家や学 生 が 一 緒に解 法を考 える研 究 会 です 。 2012年7月に開催されたSGには、鉄道総 研の神山雅子氏から提示された「一定の長 さの弦を線路にあてて、弦と線路とのギャッ プをmm単位で計測することを一定間隔で 繰り返し、その計測値から線路の曲線を復 元せよ」という課題がありました。これには 幾何の専門家を含む多くの方が興味を持ち ました。懇親会の席で、落合啓之氏(IMI教授) から斉藤新悟氏(IMI学術研究員)に「曲線と 曲率の間の関係を示すFrenet-Serret formula」 の利用についてコメントがあり、斉藤氏はこ れをヒントに復元の理論計算を行いました。 この理論を用いた井元氏による数値計算結 果は実際の線路図に近いこと、また時間遅 れがあることがわかりました。 この遅れを調 整することで決定係数が0.989と完全な復 元が得られました。短期間に理論的にも数 値的にも満足すべき結果を得たことに対し て、神山さんから高い評価を得ました。本成 果は共同研究によるものですが。とくに井元 氏は積極的に数値計算に取り組み、与えら れた曲線からギャップを得る面倒な計算を 行ったことは評価に値します。今後の井元氏 の成果に期待します。

マス・フォア・インダストリ研究所 教授

西井 龍映

井元佑介さん(数理学府修士課程2年)が

IMI所長賞を受賞

 このたび第1回藤原洋数理科学賞(奨 励賞)を受賞させて頂きました。以下に簡 単にではありますが、受賞タイトル「トポ ロジーと力学系理論の情報通信・生命科 学等への応用」に関して、最近の研究業 績の紹介をさせて頂きます。  情報通信分野では符号理論に関する 研究を主に進めています。ご存知の方も 多いと思いますが、符号理論はこれまで 数学と工学の双方の視点から深く研究が 進められてきた分野です。数学的研究と しては、符号化に関わる代数的符号理論 の立場から主に研究が進められており、 群論・組合せ論・代数幾何など様々な分野 と関係を持ちながら発展しています。一 方工学的な研究としては近年確率的な 復号法が注目されており、それをもとに シャノン限界と呼ばれる理論極限を達成 する誤り訂正符号が提案されています。 私の興味は一言で述べると「確率的な復 号法を代数的に調べる」ことです。ここで いう確率的な復号法とは最尤推定復号 を指します。この最尤推定復号は復号誤 り確率を最小にする復号法なのですが、 (そのまま計算すると)計算量が符号長に 関して指数的に増大します。よって最尤 推定復号を低計算・高精度に近似するこ とは実用的な高性能誤り訂正符号を開 発する上で非常に重要になってきます。  この研究では(1)最尤推定復号を有 理写像として定式化し、(2)有理写像力学 系の構造(不動点やその安定性)を調べ、 (3)その情報から近似有理写像を導き近 似最尤推定復号を提案し、(4)その近似 最尤推定復号に最適な符号化を代数的 に定式化する、というものです。特にこの 有理写像の中に符号/復号の双対構造 が含まれていることに気づいたことが大 きな契機となり、符号化における代数的 な性質や手法が最尤推定復号の研究に 応用できることになりました。最近では不 変式論を用いた最尤推定復号の特徴付 け、可換環論的手法を用いた近似最尤推 定復号の具体的構成法などを調べてい ます。  生命科学関係では、トポロジカルな手 法をタンパク質の構造解析へ応用するこ とに興味があります。タンパク質は生命 活動を営む上で必須の物質であり、細胞 内で繰り広げられている様々な働きはタ ンパク質を基本ユニットとして展開され ています。特にタンパク質の立体構造と その働きの関係を調べることは生命科学 の大切なテーマの一つであり、立体構造 に関してはX線結晶解析を用いて巨大な データベースが構築され一般公開され ています(例えばProtein Data Bank)。一方で 近年の計算・応用トポロジーの発展によ り、単体複体や方体複体のホモロジー群 やパーシステントホモロジー群(位相空 間のフィルトレーション内でホモロジー 群の生成元の生成/消滅を代数的に取 り扱う道具)の高速アルゴリズムが開発 されました。これによりタンパク質の立体 構造をトポロジカルな視点から調べるこ とが可能になります。私が最近興味を 持っていることは、タンパク質の物性と立 体構造の関係を、データベースに蓄えら れているデータにトポロジカルな解析を 行うことで明らかにすることです。具体的 には圧縮率と呼ばれるタンパク質の柔ら かさを測る物性値と相関を持つデータ解 析手法を、パーシステントホモロジー群 を用いて開発しました。

マス・フォア・インダストリ研究所 准教授

平岡 裕章

第1回藤原洋数理科学賞受賞報告

図1:ヘモグロビンの単体複体フィルトレーション 図2:ヘモグロビンのパーシステント図 (FMI2012のホームページ: http://fmi2012.imi.kyushu-u.ac.jp/)

福本 康秀

(マス・フォア・インダストリ研究所 教授)

(5)

Global COE Program-Kyushu University

Education and Research Hub for Mathematics-for-Industry

NEWSLETTER

2013.2 Vol.

8

Global COE Program-Kyushu University

Education and Research Hub for Mathematics-for-Industry

NEWSLETTER

九州大学グローバル COE プログラム

マス・フォア・インダストリ教育研究拠点 ニュースレター

ワークショップ

「多変数多項式システムの求解とその周辺」

■開催日:2013年3月2日(土)∼3月3日(日) ■場所:福岡市早良区百道浜SRPセンタービル2F     研修室1または研修室2 ■URL:http://www.isit.or.jp/lab2/2013/01/11/ ■主催:九州大学グローバルCOEプログラム「マス・フォア・インダストリ教 育研究拠点」 ■共催:(財)九州先端科学技術研究所 情報セキュリティ研究室

市民講演会

「回転運動の力学

∼ふしぎなおもちゃから自然の脅威まで∼

■開催日:2013年3月9日(土) ■場所:九州大学西新プラザ ■URL:http://stl-www.aero.kyushu-u.ac.jp/     pub-lecture/index.html ■主催:九州大学グローバルCOEプログラム「マス・フォア・インダストリ教 育研究拠点」 ■共催:九州工業大学情報工学部 ■後援:(独)日本万国博覧会記念機構、福岡県教育委員会、福岡市教育 委員会、日本物理学会、日本物理教育学会、日本流体力学会

IUTAM Symposium on Vortex Dynamics: Formation,

Structure and Function

■開催日:2013年3月10日(日)∼3月14日(木) ■場所:九州大学医学部百年講堂 ■URL:http://www.iutam2013vortex.jp/ ■後援:九州大学グローバルCOEプログラム「マス・フォア・インダストリ」 教育研究拠点、(独)日本万国博覧会記念機構、戦略的創造研究推進事 業 CREST、九州大学 応用力学研究所

研究集会

活動予定

編集・発行: 九州大学グローバルCOEプログラム「マス・フォア・インダストリ教育研究拠点」

〒819-0395 福岡市西区元岡744 九州大学伊都キャンパス数理学研究教育棟GCOE事務室 TEL:092-802-4404 FAX:092-802-4405  E-mail:coe@math.kyushu-u.ac.jp URL:http://gcoe-mi.jp/ 印刷:城島印刷株式会社    〒810-0012 福岡市中央区白金2-9-6    TEL: 092-531-7102 FAX: 092-524-4411    URL: http://www.kijima-p.co.jp

Journal of Math-for-Industry

投稿論文随時受付中

http://j-mi.org/

出版物

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 本ワークショップは、2012年10月5日 に九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 において、本グローバルCOEプログラムと文 部科学省 数学・数理科学と諸科学・産業との 連携研究ワークショップの共催として開催 された。昨年度に文科省連携ワークショップ の共催で開催された"Secret Sharing and Cloud Computing"に引き続 いて、クラウドコン ピューティングで利用される暗号技術を テーマとしている。今年度のワークショップ では参加者は26名となり、現状のクラウド サービスの安全性問題と暗号技術を利用し た解決策などが議論された。今回のワーク ショップでは、Yvo Desmedt 教授(テキサス大学)によ る効率的な秘密分散計算 (マルチパーティ計算)に 関する基調講演の後に、 高島克幸(三菱電機)、安田雅哉(富士通研 究所)、山本剛(NTT研究所)、林良太郎(東 芝研究開発センター)、吉野雅之(日立製作 所横浜研究所)から最新の暗号技術に関す る発表および活発な質疑応答が行われた。 特に、内積述語暗号、自己訂正暗号技術、 (完全)準同型暗号、対称型検索可能暗号、 プロキシ再暗号化などの暗号プロトコルと それらの安全性に関する数学モデルや効率 的な実装方法に関して意見交換が行われ た。暗号技術を用いた安全なクラウドコン ピューティングによる医療データや個人情 報等の保護なども話題に上り、今後の暗号 技術の更なる応用発展も期待される。  文部科学省連携ワークショップ(WS)「非 可換調和振動子のスペクトルと量子デバイ スの数理」を九大数理・IMIで2012年11月 26日-27日にGCOE共催で開催させていた だきました。私が2012年に同じような主 題の研究会の世話人をさせていただくの は、3月、7月、そしてこの11月で3度目に なります。山中伸弥教授のノーベル医学生 理学賞受賞で日本中が湧いた日の翌日、ノ ルウエィーのノーベル賞委員会が2012年 ノーベル物理学賞を、この研究分野の先駆 者であるHaroche教授とWineland教授に授与 すると発表したときは手が震えました。同時 に、この発表直前に投稿した自分の拙論文 に彼らの論文を引用しておいてよかったと 安堵もしました。  このWSには海外からの2名を含む約30 名の、企業、大学、研究所所属の方々が参加 し、13の講演がありました。各講演時間は 60分(一部20分)で、 若山教授(九大IMI)と ともに非可換調和振動子の生みの親であ るParmeggiani教授(ボローニャ大学)にも講 演していただきました。この研究会では、講 演者の所属をご覧いただければお分かりの ように純粋数学と物理実験の専門家が境界 を越えて議論する場となり、数学からは、表 現論、スペクトル解析、調和解析、数論、数値 計算の専門家が講演し、実験系からは量子 デバイス、cavity QEDの専門家が講演しまし た。全ての講演が非常に興味深く、最先端 を突っ走っている研究成果であることがひ しひしと伝わってくるものばかりで、企画さ せていただいた側からすれば喜ばしい限り でした。  このWSのキーワードである「スペクトル」 の捉え方は数学の各分野でも相当異なりま すが、実験系の専門家のいう「スペクトル」 は、数学のそれとは全く異質なものです。し かし、そこには数学的な真理がたくさん埋 まっているような予感がしています。これか らまた機会があれば、境界を越えたわくわく するような研究会を企画したいと考えてい ます。

数理学研究院・教授

廣島 文生

マス・フォア・インダストリ研究所 教授

高木 剛

Workshop "Cryptographic Technologies suitable for Cloud Computing"

文部科学省連携ワークショップ

「非可換調和振動子のスペクトルと量子デバイスの数理」報告

 12月19日、文部科学省数学・数理科学と諸 科学・産業との連携研究ワークショップの一環 として、東京内幸町富国生命ビルで標記研究 会を開催しました。今回は初回という位置づけ で、農業環境技術研究所、JAMSTEC、IMIを中心 に背景の異なる研究者が約25名集って、互い の研究テーマを紹介し合い、共同研究につな がる芽を探しました。  数学と農業分野とは接点が少ないように 思われがちですが、統計学の歴史を紐解くと すぐわかる様に、統計学の巨人R. A. Fisher は穀 物収量を研究対象としたStudies in Crop Variation を著した後、革新的な業績を数多く生み出し た事で良く知られています。今回のこの話が 来た時、佐久間は最近始めた気候変動予測 を利用した農作物の“収量予測”の研究を取り 上げようと決断しました。連携のテーマは、気 候変動予測情報を広域(世界域)農作物収量 予測に繋げるための新たな農作物モデルの 開発です。モデルパラメータの決定の為にベ イズ推定を使用するという基本的な路線は あるものの、まだ道半ばです。「色々と未知な る問題を数学的に検討する中から面白い テーマが見つかれば」という期待もあります。 JAMSTECの研究グループの仕事は、大気・海洋 の力学がベースとなっていますが、佐久間は 個人的には統計的手法に将来性を感じます。 大気・海洋分野の先人たちが一世紀前に抱い た“予測の夢”がほぼ実現された今、「次なる 応用」の段階に入る時期に来ているのではと 感じています。  次回からは徐々に、食料生産システムに関 する数学的な問題意識を明確にし、より具体 的な課題を数学・気象学・農作物学が連携する 勉強会のテーマとして行きたいと思います。 (独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)・横浜研究所

佐久間 弘文

九州大学マス・フォア・インダストリ研究所

福本 康秀

ワークショップ「気候モデルの農業への応用」報告

−数学を基礎に置いたNext Applicationsを目指して−

(本ワークショップホームページ: http://www.imi.kyushu-u.ac.jp/eng/events/view/478) 佐久間 弘文氏  

GCOE

プログラム「マス・フォア・インダ ストリ教育研究拠点」終了にあたり、事 業推進担当者を代表して、お礼を申し上 げます。  関係各位の親身なサポートとご協力、 学生たちの不断の努力とチャレンジン グな心意気、そして大学からの支援なく しては、5年間の本事業が順調に進んだ とは考えられません。心より感謝申し上 げる次第です。マス・フォア・インダストリ なる旗を立て、本拠点では産業界との連 携を重点におき研究と博士課程人材育 成を進めてまいりました。主な活動は、 博士課程学生の企業長期研究インター ンシップ、産業界から提示していただい た数理的課題を1週間の会期で解決せ んと共同で励むスタディーグループ (

SG

),広がるテーマを定めての大学・産業 界 の 研 究 者 が 集う国 際 会 議

F o r u m

“Math-for-Industry”

、学生・若手研究者が 中心となり開催するチュートリアルセミ ナーやワークショップ、学生等の海外大 学・国際会議等への派遣、そして、応用数 学・純粋数学・統計学の知見を垣根なく 取り入れた産業界との共同研究などで す。これらの活動を通じて、それまでは お目にかかることがなかった方々とも出 会え、新しい交流が始まり、それが深まり ました。これらは大きな財産です。  さて、マス・フォア・インダストリと銘 打った本拠点活動推進の動機は、以下 の不可分な関係にある二つです。  一つ目は、数学の発展には良質の問 題が欠かせないことです。しかも、社会、 とくに産業界はそのような良質な問題 の宝庫です。数学の内部にある興味深 い問題を体系化しつつ解決せんとする のがいわば純粋数学と呼ばれている研 究です。歴史、たとえば19世紀に目を向 ければ明らかですが、数学の問題の多く は、その内部のみならず、社会や自然科 学・技術のなかから現れたものでした。 20世紀は、たしかに、ブルバキに象徴さ れるような数学の抽象化・体系化が進 み、純粋数学が著しく高度に発展した時 代です。もちろんこの時代も、工学等の ユーザー側の必要から発達した数学も 多く、数学が生み出したといってもよい 計算機の出現は、それらを加速させまし た。計算機の出現は、社会の一部に、役 に立てるための数学はもはや不要だと の勘違いを起こさせた時代もあったよ うです。同様に、“情報”というキーワード が表舞台に躍り出て(情報学が生まれ)、 かつては困難を伴ったデータ収集や整 理・解析なども恰も簡単にできると誤解 され、統計学も不要なのではといわれた 時期があったようです。しかし実際にお こったことは逆であり、計算機が発達し それを通した科学や技術が進むに連れ、 優れた計算機シミュレーション、数理モ デルの構築、原理の解明や記述にと、数 学・統計学がますます必要となり、さらに そこから新たな理論や概念も生まれま した。数学・統計学の新しい研究テーマ が格段に増加している所以です。  もう一つは、広い意味での数学ある いは数理科学の研究者を目指している 学生たちの大学教員とは限らないキャ リアパスを拓こうと考えたことです。わ が国ではあまり顕在化していなくとも、 欧米先進国の状況からは、必ずや多く の需要が産業界の研究開発現場に存 在しているはずだと考えました。  2011年4月にマス・フォア・インダス トリ研究所(

IMI

)が創設されましたことも 本活動の果実の一つです。これにより、 わが国に初めての産業数学を標榜する 研究組織ができたわけですが、高度なテ クノロジーを一つの屋台骨とするわが 国の国力や人口に鑑みれば、最低あと 数か所は、このような人材育成機能をも もった研究拠点が必要であろうと考え ている次第です。また、本

GCOE

は終了致 しますが、上述の

Forum

SG

は、

IMI

を核 として、他大学や産業界・関係省庁の協 力を得ながら今後も継続し発展させて 行く所存です。皆様には、今後もマス・ フォア・インダストリ活動に対しまして、ご 支援とご協力を賜りますようお願い申し 上げます。

拠点リーダー

若山 正人

巻頭言 お礼とご報告

(マス・フォア・インダストリ研究所長、副学長)

参照

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