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Kyushu University Institutional Repository
フェノール系オリゴマーを基体とする高選択性イオ ノホアの開発と難分離金属イオンの抽出相互分離
大渡, 啓介
https://doi.org/10.11501/3159106
出版情報:Kyushu University, 1999, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
フェノール系オリゴマーを基体とする高選択性イオノホアの開発と 難分離金属イオンの抽出相互分離
平成11年4月
大 渡 啓 介
フェノール系オリゴマーを基体とする
高選択性イオノホアの開発と難分離金属イオンの抽出相互分離
目次
頁 目次
第l章 序論
1 . 1 金属の精錬と相互分離 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2
1 . 2 金属イオンの溶媒抽出と抽出剤の分子設計 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9
1 . 3 人工イオノホアについて ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0
1 . 4 カリックスアレーンの基本構造と特徴 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1
1 ・ 5 カリックスアレーン誘導体による金属イオン認識と溶媒抽出 ・ ・ 1 3 1 ・ 6 問題提起と本論文の構成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 1 1 . 7 参考文献 . . . . . 2 2
第 2章 カルボ、ン酸型及びホスホン酸型カリックスアレーン誘導体による
希土類金属イオン相互分離 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 8 2. 1 緒言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 9 2. 2 実験操作 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 3 2. 2. 1 カルボ、ン酸誘導体の合成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 3 2. 2. 2 ホスホン酸誘導体の合成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 1 2. 2. 3 希土類金属の正抽出実 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 6 2. 2. 4 希土類金属の逆抽出 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 7 2. 2. 5 抽出剤の水相への分配 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 7 2. 2. 6 クロロホルム中での抽出剤の会合状態の測定 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 8 2. 3 結果と考察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 9 2. 3. 1 抽出平衡式 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 9 2. 3. 2 カルボ、ン酸系抽出剤による希土類金属イオンの正抽出 ・ ・ ・ 4 9
2. 3. 3 カルボ、ン酸系抽出剤による希土類金属イオン抽出の化学量論 5 6
2. 3. 4 カルボン酸系抽出剤によって抽出された希土類金属イオンの
逆抽出 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 1
2. 3. 5 ホスホン酸系抽出剤の水相への分配 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 2
2. 3. 6 ホスホン酸系抽出剤による希土類金属イオンの抽出 ・ ・ ・ ・ 6 4
2. 4 結言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 2 2. 5 参考文献 . . . . . . . . . • . . . . . . 7 3
第3章 カリックスアレーンカルボン酸誘導体の金属イオン抽出分離能に 及ぼす共存アルカリ金属イオンの影響
3. 1 緒言 3. 2 実験操作
3. 2. 1 抽出剤の合成
3. 2. 2 希土類金属イオンの抽出実験
3. 2. 3 アルカリ金属イオンの抽出実験 3. 2. 4 銅イオンの抽出実験
3. 3 結果
3. 3. 1 アルカリ金属添加系における希土類金属イオンの抽出
3. 3. 2 アルカリ金属イオンの抽出
3. 3. 3 ナトリウム添加系における銅イオンの抽出
3. 4 考察 3. 5 結言
3. 6 参考文献
Fb Fb
QU只u
nV 1ょ っム ワω η,L ウi 1i ヴi ηL 4‘
ヴi ηi ηi ウi QU QUQUQU只U只ununu
1よ 1i 1i 1i 1i 1i
第4章 カリックスアレーン誘導体による銀の特異的抽出挙動 4. 1 緒言
4. 2 実験操作
4. 2. 1 ケトン誘導体の合成
4. 2. 2 アミド誘導体の合成
4. 2. 3 抽出実験 4. 3 結果と考察
4. 3. 1 ケトン誘導体による銀の抽出
4. 3. 2 アミド誘導体による銀の抽出
4. 4 小J土口モ口三子 4. 5 参考文献
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Fb FD Qu nv 1i yi 1ょ 1i 1よ η乙 ηノμ ηノ山
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第5章 結論 5. 1 結論
5. 2 今後の展開 5. 3 参考文献
153 154 156 158 謝辞
第l章 序論
114
1. 1 金属の精練と相互分離
人類と金属の関わりは、 密接である。 古くは紀元前に、 装飾材料や貨幣などとし て用いられ、 現代においては、 その他に高機能性材料の原料として利用されている。
金属は、 人類の生活には切り離すことの出来ない、 重要不可欠なものであり、 それ 無くして人類の歴史は語れない。 金属の中には、 表1-1に示すように、 希少性と乱 用による枯渇化の問題を抱えたものも少なくない[1-1]。 このため、 近年、 資源の再 利用が見直されてきた。 いわゆる" レア ・ メタル(希少金属)" は本来、 これら希 少 性 の 高い も の が 対象と さ れ て き た 。 し か し、 "Rare Metals Handbook汁の 中で C.A.Hampelらは、 この定義を次のように、 より広範なものとしている[1-2]0
1 )地殻中の賦存量が、 極めて希であるもの。
2 )地殻中での存在量は多いが、 その金属を抽出するに足るだけ濃縮した、 経済性 のある品位の鉱石が少ないものO
3 )地殻中の存在量は多いが、 純粋な金属として抽出することが、 化学的もしくは 物理的に極めて困難なもの。
4 )単体として金属が得られでも、 利用するだけの用途が無く、 また特殊な性質も 明らかとされず、 未開発であるもの。
この定義は学問的なものではなかったため、 現在ではさらに拡張されている[1・3]0
5 )先端技術を支える特異な 機能を持っか、 それを提供することのできるもの。
従つて、 " 希少でで、J' \ " 取り出しにくく
に高効率でで、取得でで、きるかが、 高機能材料を開発するために必要な 技術である。 この 意味で、 レアメタルの精製は、 先端技術産業の発展を担う鍵である。
レアメタルの定義は、 上述のように、 その金属が実際に希少であることや、 単離 が困難であることなど、 多岐にわたっている。 一方、 定義に関わらず、 将来的に、
無計画な採掘や使い捨てが続けば、 金属資源の枯渇化は否めない。 結果として、 全 ての元素が、 レアメタルとして列挙されることになる。 この意味で、 現在、 希少と されている金属はもちろんのこと、 将来的に枯渇が予想される金属のために、 再利 用(リサイクル)法の確立が切望される。 しかし、 効率的な再利用のためには、 採 掘の過程における精製と同様に、 他元素との分離精製が必要である。 特に、 分離の 困難な金属群の相互分離は、 十分検討しなければならない。 レアメタルの分離精製 法としては、 表1- 2に示すように、 様々なものがある[1-4]。 本研究に関連する溶媒 抽出法は、 分離性能や汎用性といった観点から、 優れた技術として認められている。
溶媒抽出法の詳細については、 後節で言及する。
また、 相互分離の対象となる金属群として、 代表的なものを以下に示す。
様々な著書で述べられているように[1-5ト希土類元素は、 難分離性 を示す典型的 な金属群である。 希土類元素は、 原子番号57 のランタンから71のルテチウムまでの ランタノイド1 5元素に、 IIIA亜族のスカンジウムとイットリウムの2元素を加え た、 計1 7元素の総称である。 発見当時は希少であり、 鉱石(酸化物)として得ら
表1・1 元素の可採年数
冗素 埋蔵量 (鉱種) 可採年数
(千トン)
ビスマス(Bi) 91 21
ジルコニウム(Zr) 20.865 22
ノてリウム(Ba) 168.000 (重晶石) 27
亜鉛(Zn) 170.000 27
鉛(Pb) 95.000 29
タンタjレ(Ta) 27.0 32
ヒ素(As) l.000 37
セレン(Se) 80 39
ダイヤモンド(C) 0.2 27
銅(Cu) 340,000 42
炭素(C) 29.030 (黒鉛) 50
モリブデン(Mo) 5.433 58
タングステン(W) 2,800 64
ニッケル(Ni) 52,616 75
鉄(Fe) 65.317.000 94
マンガン(Mn) 907,180 114
ストロンチウム(Sr) 6.804 117
クロム(Cr) 1,056,865 (鉱石) 126
コバルト(Co) 3.629 137
ヘリウム(He) l.135 148
白金族(Pt族) 31 149
ノてナジウム(V) 4,354 150
リチウム(Li) l.905 225
アルミニウム(Al) 2l.000.000 267
ホウ素(B) 33l.121 (B203) 320
ニオブ(Nb) 4,082 391
希土類(RE) 45,000 (酸化物) 1216
qu
表1-2 レアメタルの分離精製法
方 法 分離因子
化 1 沈殿 溶解度積
1ロb、
2 品析、 再結晶 溶解度
物 3 溶媒抽出(イオン対、 キレート、 溶媒和) 分配係数 の 4 イオン交換(樹脂、 繊維、 膜) 溶離定数 分 5 分子ふるい(クラウンエーテjレ、 逆浸透膜等) 孔径
離 6 電気泳動 移動度
精 7 蒸留(液体→気体) 蒸気圧
製 8 昇華(固体→気体) 蒸気圧
9 電解精製(水溶液) 酸化還冗電位
10 電解精製(溶融塩) 酸化還冗電位
金 11 揮発分解精製 蒸気圧、 分解温度 属 12 雰囲気溶解(アーク、 プラズマ) 還冗ホ。テンシャル の 13 高真空溶解(高周波、 電子ビーム、 プラズマ) 蒸気圧(亜酸化物等)
で『 司ち「
14 浮上精製(コールドクルーシブjレ) 非接触
純 15 雰囲気処理(真空、 還冗雰囲気など) 還ァじホ。テンシャル
度 16 帯域精製(ZM) 偏析係数
化 17 浮遊帯域精製(FZM, EBFZM) 偏析係数
18 固相電解(S S E) 移動度
19 光励起精製 励起準位
20 質量分離 M/e
が増加しでも、 その可採年数はむしろ十分 すぎるほどである。 実際に、 希土類元素 の用途は近年増加の一途を辿り、 機能性材料の原料としての需要は益々増加する傾 向にある。 しかし、 問題はその可採年数ではなく、 各希土類聞の相互分離である。
希土類イオンで、は最外殻電子は全てs2P6の形を取り、 特にLa3+~Lu3+までのランタ ノイド15元素は、 4fn5s25p6の同じ形を取る。 つまり、 ランタノイドでは、 5sと5p 軌道への充填の後に、 4f軌道への充填が起こる。 このため、 外側の軌道は同一で、
内部の軌道が遮閉されている。 金属イオンでは、 最外殻電子が化学的性質に重要な 役割を果たす。 結果として、 ランタノイドでは、 4f電子の数が異なっても、 化学的 性質にそれほど影響せず、 類似の化学的性質を示すようになる。 これが希土類元素、
特にランタノイドの相互分離が困難となる所以である。 このため、 希土類が単体と して得られることは稀であった。 従って、 数多くのエピソードも残っている。 1つ は、 希土類に属すべきであると主張された元素(実際には、 希土類の混合物)が100 個以上にも及んでいたことである。 また、 1794年に希土類の中でイットリウムが最 初に発見されてから、 最後の元素として、 1907年にルテチウムが発見されるまでに (プロメチウムは自然界には存在せず、 1947年に核分裂生成物から発見された [1-5a,6])、 100年以上経過していたことも興味深い。
一方、 表1-3に示すように、 希土類が機能性材料の原料として使用される際には、
4N'"'--11N (例えば、 4Nは99.99%)といった、 超高純度化が要求されることが多い [1-7]0 つまり、 本来、 相互分離が難しい希土類元素は、 高い機能性のために、 実用 に際しては超高純度を要求される。 この相矛盾する事実は、 希土類の機能性材料の 原料としての利用ばかりでなく、 機能性材料の新規開発そのものをも妨げている。
この意味で、 希土類の相互分離を効率的に行える分離剤の開発が必要である。
希土類に対する分離剤としては、 ジ-2-エチルヘキシルリン酸(D2EHPA、 大八化 学工業製、 商品名: DP-8R)や2-エチルヘキシルホスホン酸モノー2・エチルヘキシル エステル(EHEHPA、 大八化学工業製、 商品名: PC-88A)などの、 酸性有機リン系 抽出剤が知られている。 これらは、 1950年代後半に核燃料廃棄物処理のための抽出 剤として研究された[1-8]0 その後、 多価金属イオンに対して優れた抽出特性を示す ことが明らかとなり、 工業的にも広く利用されている[1-9]0 しかし、 その酸性有機 リン系抽出剤でさえも、 希土類に対する分離性能は十分ではない。 従って、 現在も、
希土類に対して、 高い分離性能を有する抽出剤の開発が、 強く望まれている。
また、 貴金属は白金族、 銀及び金から成る8種類の金属の総称である。 貴金属も 希土類と同様に、 典型的に分離の困難な元素群である。 白金族元素は、 四A亜族の ルテニウムとオスミウム、 医A亜族のロジウムとイリ ジウム、 XA亜族のパラジウ ムと白金の、 計6元素の総称である。 これら元素の地殻中での存在量は、 最も多い パラジウムでさえ4 ppbであり、 白金が2 ppbで、ある他は1ppb以下と、 極めて微量で ある[1-10]。 しかし、 白金族金属は、 貴金属の中でも特に、 機能性材料の原料として の用途が広く、 かつ重要なものが多い。 現行の白金族金属の精錬では、 各金属毎に 沈殿法により分離されている。 しかし、 沈殿法では、 各元素の沈殿物に他元素が微
Fhυ
表1・3 使用希土類金属の要求される純度
ホt 料 使用希土と純度 注
磁 G d 3 --4 N*
d性 光磁気記録材料 Tb 3--4N 酸素数百ppm以下
体 Dy 3--4N
永久磁石 Sm 注95% LaO.05 %以下。
N d 注95% Ca,Mg,Siのないこと。
7ブも、 蛍光体付加剤 E u 203 4N 3Nでも可。 但し、 Fe.Co.Niのないこと。
光 レーザ一発光中心N d 203 4N
材 蛍光体母結晶 Y203 4N イ旦し、 Ce,Pr,Tb< 1 p p mo
料 YAG Y203 7N
シンチレーター G d 203 5・6N
そ 光ファイバー G d 203 9N ファイバ)の吸収から不純物量を推算。
の 光吸蔵合金LaNi5 L a 3N Caのないこと。
他 光学ガラス L a 203 4N
焼結助剤 Y203 4N
*N は9(nine)を意味し、 4Nは99.99%を表す。
量に含まれるために、 その純度は99.95%程度である。 従って、 より高純度化のため に、 さらに精錬が必要である。 また、 多大な労力とエネルギー、 及び処理時間を要 することも大きな問題である。 白金族は、 希少で、高価であること、 また機能性材料 として用いられる重要な金属であるため、 再利用が重要視されることは言を侯たな い。 パラジウムや白金などの精製には、 海外では溶媒抽出技術が応用されており、
囲内でも検討されている。
銀と金は、 クラーク数が68と75であり、 極めて希少な金属の部類に含まれる。 こ れらの金属は、 古来より宝飾材料や貨幣として、 珍重されてきた。 また、 優れた特 性のために、 現在では、 宝飾目的以外に、 様々な材料に利用されている。 金や銀は、
鉱石などのl 次資源からは、 主に青化法と呼ばれるシアン化ナトリウム等のシアン 化物により前処理され、 さらに電気分解などの精製法により、 高純度化される[1-11]0 電子部品、 自動車部品、 装飾品などのスクラップといった、 リサイクル資源からの 回収や精製についても、 青化法が行われる。 一方、 メッキ廃液や工場廃液などの、
微量しか含まない廃液からの回収では、 電気分解法、 イオン交換法、 及び溶媒抽出 法が検討されている。
亜鉛と鉛は一般金属に分類されているが、 表1-1に示すように、 可採年数が短く 希少である。 しかし、 クラーク数はそれぞれ36と24であり、 地殻中に76及び、13ppm 含まれている。 つまり、 埋蔵量としては、 むしろ多量である。 にもかかわらず、 短
い可採年数は、 その用途の多様性と使用形態(使い捨て型)に起因している。 これ らの金属の用途は、 非常に広範である。 例えば、 亜鉛は、 めっき、 合金、 トタン、
電池、 顔料、 蛍光剤、 塗料、 印刷インキ、 加硫促進剤、 発色助剤、 殺菌用薬剤、 還 元器などに使用されている。 一方、 鉛は、 蓄電池、 鉛管、 鉛板、 ハンダ、 易溶合金、
活字合金、 顔料、 電極、 電量計などに利用されている。 亜鉛は、 還元法による乾式 精錬と、 硫酸溶液にした後の電解還元による湿式精錬で精錬されている。 一方、 鉛 は、 還元法による乾式精錬により予備精製する。 その後、 不純物として含まれる銅、
銀、 金、 亜鉛、 スズ、 ヒ素、 及ぴアンチモンを、 段階的に電解除去して処理 する。
両元素はともに、 電解精錬が主な精製法となっている。 しかし、 この方法は莫大な 電力を必要とするため、 エネルギー効率が悪く、 改善が必要である。 また、 亜鉛は、
生産量の半分近くを、 耐食用のめっきとして使用している。 しかし、 めっき廃液中 には、 鉛などの他元素が微量混在するため、 再利用の際には、 再び電解精錬が必要 である。 これらの元素の可採年数は極めて短いため、 リサイクル技術の確立が望ま れており、 特に精製方法の改善は重要視されている。 この観点から、 より省エネル ギー的な精製法として、 溶媒抽出やイオン交換技術が見直されている。 しかし、 現 状では、 両金属の類似した化学的性質のために、 良好な分離は実現されていない。
また、 鉛は人体に有毒であるため、 環境の面で、 土壌や焼却灰からの微量鉛の除去 についても、 関心が高まっている。 この点からも、 近年、 鉛の効率的な回収や除去 が望まれている。
コバルトとニッケルは、 周期表第9族、 及び1 0族に隣接して位置する。 これら
-7・
の金属も、 古くから利用されてきた。 しかし、 単離が困難で、あったため、 原料とな る鉱石等は、 比較的純度の良いものに限られていた。 コバルトはコバルト鉱石とし て存在するほか、 銅、 ニッケル、 鉛の鉱石中にも含まれる。 コバルトは、 磁性合金、
非鉄合金、 耐熱性合金高速度調など、 合金として幅広く用いられてきた。 最近では、
水素化触媒、 リチウムイオン電池、 着色剤、 プラスチック、 顔料、 絵の具などにも 用いられる。 一方、 ニッケルは、 ステンレス鋼ゃめっきが主な用途である。 また、
コバルトと同様、 貨幣用白銅やニクロムなどの合金、 さらには水素化触媒、 電池な どの用途もある。 コバルトは、 水酸化物とした後、 還元を利用した乾式精錬により 精製される。 一方、 ニッケルは通常、 酸化物とした後、 炭素還元し、 電解法により 精製する。 しかし、 両金属の化学的性質は似ており、 分離は困難である。 従って、
可採年数は両金属ともにそれほど短くないが、 鉱石の有効利用や廃棄物からの再利 用といった観点から、 より効率的な分離精製法が望まれている。 現在、 溶媒抽出法 による分離や回収の対象となっているのは、 ( 1 )ニッケル硫化鉱の精製マット、
( 2 )酸化ニッケル鉱の湿式精錬で得られる、 ニッケルとコバルトの混 合硫化物と 混合炭膨盆の沈殿である[1-12]。 これらの分離のために、 カルボン酸系抽出剤やキレー ト抽出剤が用いられた場合には、 ニッケルがコバルトに対して、 僅かに優先的に抽 出される。 一方、 リン酸系抽出剤では選択性は逆転する。 特に、 ホスフイン酸では、
非常に良好な分離が達成できる。 しかし、 カルシウム存在下では、 抽出阻害が起こ る問題がある。 また、 オキシムにリン酸系やカルボ、ン酸系抽出剤を添加した協同抽 出系では、 優れたニッケル選択性を示す。 しかし、 抽出剤が劣化する問題点がある。
放射性元素としては、 核燃料としてのウラン、 プルトニウムなど、 アクチノイド 元素が有名である。 放射性元素は、 高いエネルギ、)効率の面から、 核燃料としての 利用が注目されてきた。 従って、 これらの元素を燃料として利用するために、 鉱石 中から分離精製することは大事である。 しかし、 これ らを核燃料として使用した後 には、 放射性の元素が新たに生成する。 このため、 安全性の面から、 分離精製以上 に、 核分裂で発生する放射性元素を回収することは重要である。 特に、 半減期が長 い元素に対しては、 隔離処置が必要である。 従って、 効率のよい回収が望まれる。
現在、 核廃液の処理は、 ガラス固化法によって行われている[1-13]。 これは、 放射性 元素を含む硝酸系溶液を熱濃縮した後、 ホウケイ酸ガラスにこれらを混入して固化 する方法である。 しかし、 ガラス固化法は、 濃縮の際のエネルギー損失と、 固化保 存の際の体積増加が大きな問題となっている。 この分野における溶媒抽出法の利用 は、 1949年にWarfによってランタノイドやアクチノイドの抽出が報告された[1-14]
のが最初である。 それ以来、 様々な化学者によって抽出剤、 添加する塩類などの最 適条件が、 詳細に検討されてきた。 しかし、 日本におけるプルトニウム処理用高速 増殖炉「もんじゅ」の事故や、 フランスにおける高速増殖炉の操業停止などとも関 連し、 今後の放射性元素の利用や処理は、 エネルギーや安全性などの環境の両面か ら、 重要な課題である。
-圃a・・L
毒として付着するニッケルやバナジウムの除去[1-15]、 タンタルライトからのタンタ ルとニオブの分離、 電子材料からのインジウムとガリウムの分離回収などがある。
将来的には、 現存する工業プロセスの多くが、 最終的には何らかの金属分離技術に 依存すると考えられる。
また、 近年の多消費社会の代償として、 多くの環境 汚染が顕在化している。 身近 には、 様々な廃棄物から流出した、 重金属類による環境汚染が挙げられる。例えば、
乾電池・蛍光灯には水銀、 カドミウム、 鉛など、 繊維類にはスズ、 アンチモンなど、
ゴムには亜鉛、 アンチモン、 クロムなどプラスチックにはカドミウム、 鉛など、 カ ラー印刷用紙にもカドミウム、 鉛、 クロムなどが含まれている。これらは廃棄、 も しくは焼却処分後、 有害元素を回収することなく埋められてきた。これらの灰土に 含まれる重金属は、 土壌中に含まれるフミン質(腐植物質)と安定な錯体を形成す るために、 回収が困難で、ある。この問題は、 特に近年注目され、 有害金属の回収が 求められている。
1. 2 金属イオンの溶媒抽出と抽出剤の分子設計
表1・2に示したように、 金属の分離精製には様々な技術がある。中でも、 分離性 能や汎用性といった観点から、 溶媒抽出法やイオン交換クロマトグラフィー法は、
優れた技術として認められている。特に、 溶媒抽出法は大量処理が可能という利点 がある。溶媒抽出法において、 目的元素を精製するための条件最適化は重要である。
従って、 これまでに様々な因子について検討されてきた。しかし、 基本的には、 抽 出性能や分離性能は、 抽出剤の性質に著しく依存する。この意味で、 性能のよい抽
出剤の開発は、 金属の抽出分離精製にとって、 最も重要な因子である。
しかし、 抽出剤に要求される項目は多く、 抽出剤の新規開発は必ずしも容易では ない。 井上と中塩によって、 抽出剤に要求される項目は、 以下のようにまとめられ ている[1-16]0
①目的とする金属に対して、 高い選択性を持つこと。
②pH調整なとミの余計な操作をせず、に、 浸出液から直接抽出できること。
③抽出速度が充分速いこと。
④抽出反応が可逆的で、 逆抽出が容易なこと。
⑤抽出剤とその金属錯体のいずれもが、 溶剤(希釈剤)に良く溶解すること。
⑥化学的に安定で、 長期間の連続使用に耐えること。(使用済み核燃料の再処理 には、 放射線に対する安定性も要求される。)
①水に難溶であること。
③相分離を妨げないこと。
①工業的使用に対して経済的に充分安価なこと。
⑬生体への毒性が無いこと。
⑪揮発性が小さく、 引火しにくいこと。
これらの要求を全て満たす抽出剤は現状では存在しない。つまり、 工業的に用いら
-9・
価回a・・h
れている市販抽出剤は、 何らかの問題点を抱えたままである。 これらの項目のうち、
①の金属選択性は極めて重要である。 しかし、 ある種の金属については、 様々な抽 出剤が検討されてきたにも関わらず、 未だに効率的ではない。
溶媒抽出法は、 その特性から高純度化の前処理技符として、 広く利用することが できる。 ある種の金属群の相互分離には、 既に溶媒抽出法が利用されている。 しか し、 今後の再利用事情を考慮すると、 低品位資源からの回収機会が増えるため、 高 効率な抽出系の開発が望まれる。 抽出系の機能向上のために、 従来までに検討され てきた要素を、 以下に示す。
①効率的で、選択性の高い抽出剤の開発とその使用濃度
②抽出溶媒(希釈剤)
③水溶液の共存塩類とその濃度
④抽出温度
①両相の接触時間(速度差による相互分離)
③相比 このイ也に、
①協同抽出系
③マスキング効果
などについても、 検討されてきた。 これらは全て、 相互分離実現のために重要な事 項である。 中でも、 抽出剤の開発が最も重要で、あることは、 前述のとおりである。
従来の抽出剤の開発は、 対象金属ごとに、 結合する官能基、 アルキル置換基の鎖 長や分岐などを変化させて検討されてきた。 例えば、 リン酸系抽出剤による希土類 金属の抽出では、 官能基の種類の影響[1-17] 、 アルキル基(ブチル基)の分岐の影響 [ 1 - 1 7 d, 1 - 18]、 及びアルキル鎖、長の影響[1-19]などが検討された。 同様の検討が数多 く報告されている[1- 9b,d, 1- 20]が、 金属聞の分離が劇的に改善された例は、 未だに報 告されていない。
ところで、 近年、 金属イオンに限らず、 広く物質をより選択的に分離するという 観点から、 生体機能を見直し、 かつ模倣する研究が盛んに行われている。 例えば、
酵素反応においては、 「鍵と鍵穴」の関係のように、 基質と酵素は互いに相手を分 子レベルで認識し、 他の化学種から識別している。 このような 互いに対になる分子 認識系を、 人工的な立場から研究する分野が、 いわゆる" ホスト ・ ゲストの化学"
である。 ある特定の金属イオン(ゲストイオン)を選択的に捕らえて、 他から分離 するホスト化合物の開発も、 ホスト ・ ゲストの化学に携わる化学者達の、 当初から の研究目標であった。 本論文の目標もまた、 その延長線にある。 この意味で、 人工 的なホスト化合物の発展の経過を、 ごく簡単に次節にまとめる。
1. 3 人工イオノホアについて
イオノホアとは、 生体(膜)系での金属イオンの能動輸送を、 高度に促進させる
量圃a圃』
れる。本研究 で 述べるイオノホアは、 前者を指す。生体内のイオノホアとしては、
抗生物質パリノマイシン が有名 である。一方、 バリノマイシンのような天然イオノ ホアを模倣した、 人工イオノホアについて も様々なものが研究されてきた。1967年 にPedersen によって報告されたクラウンエーテルは、 最も有名な人工イオノホアであ る[1- 21]0 人工イオノホアとしてのクラウンエーテル及びその誘導体の研究は、 当初、
単純な カチオン捕捉性 、 溶媒抽出における抽出試薬としての 利用に関するものが、
ほとんどであった。現在では、 これらの研究 結果から 発展し、 合成助剤としての相 間移動触媒、 イオンセンサー試薬、 カ ラム分離における充填剤、 金属定量用分析発 色試薬など、 その研究範囲は多岐にわたっている[1-22]。クラウンエー テルのイオン 認識に関する研究は、 金属イオンの捕捉に対して 、 三次元的な概念を確立した。ク リブタンド[1-23]、 コロナンド[1-24]、 スフエランド[1-25]、 ヘミスフェランド[1-26]、
キャピタンド[1-27]、 スペアレンド[1-28]、 クリプトファン[1-29]などのホスト分子は、
クラウンエーテルに続く人工イオノホアとして 、 開発された。 カリックスアレーン に関する研究 も、 その中で派生し、 誕生した。
1. 4 カリックスアレーンの基本構造と特徴
カリックスアレーンは1978年、 アメリカのGutsche ら によって初めて報告された [1-30]0 しかし、 誕生にまつ わる歴史は古く、 フェノール樹脂に端を発する。1872 年に、 Baeyerは強酸 性溶液中で 、 フェノールとホルムアルデヒドから フェノール樹 脂が生成することを示唆した。しかし、 詳細な構造決定には至らなかった[1-31]0
1908年、 Baekelandはフェノールとホルムアルデヒドからフェノール樹脂を合成し、
"Bakelite"と呼ばれる樹脂の商品化に成功した[1-32]0 1944年、 ZinkeとZieglerは構造 決定を簡略化するために、 フェノールではなく、 p-アルキルフェノールとホルムア jレデヒドを水酸化ナトリウム存在下、 高温で反応させた。その結果、 3000C以上で分 解する、 単一化合物が生成することを見出した[1-33]。彼 らは、 この生成物が環状4 量体 であることを示唆したが、 構造決定には至らなかった。1956年、 HayesとHunter は、 環状4 量体の逐次 合成に ついて報告した[1・34]0 その後、 Kaemmerer らは、 環状
4�6量体の合成を行い、 化合物の帰属に成功した[1-35]0 その後、 多くの化学者が この化合物についての研究 を行ったが、 単離や合成量などに問題があり、 大きな発 展に至らなかった。そ れまでの研究者の意図と異なり、 Gutscheは酵素模倣体として の利用を、 当初から考慮し、 Zinkeの環状4量体 に着目した[1-36]。この結果、 彼は、
カリックスアレーンの一段階による大量合成に成功した[1-30]。さらに、 彼は、 この 芳香族化合物(are民)が花の苓の形をしたギリシャ製の混酒器" Calix crater (calyx krater)" に似ている(図1-1参照)ことを述べた。これが、 カリックスアレー ンの命 名の由来である。 カリツクスアレーンのホスト化合物としての特徴は、 次のとおり である。[1-37,38,39]0
①空孔径の異なる化合物が、 容易に利用できる
②官能基の導入に利用で、きる、 フェノール性の水酸基 を有する
ー11・
ー�
③種々の芳香族置換反応により、 官能基の導入が比較的容易である
④コンホメーション変化が可能である
⑤適度に嵩高い置換基の導入により、 コンホメーション異性体となりうる
①に関しては、 環状体のカリツクスアレーンとして、 フェノール単位で3[1-40]から 12[1-41]といったものまで報告されている。 ただし、 GutscheによるCPKモデルを用 いた見解では、 環状3量体はひずみが大きすぎることや、 その後の研究の進展が報 告されないことから、 その生成については真偽が明らかとされていない。 これ以外 のカリックスアレーンで、 一段階での大量合成が報告されているものは、 カリック ス[4]アレーン[1-42]、 カリックス[5] アレーン[1-43]、 カリックス [6]アレーン[1・42]、
カリックス[8]アレーン[1-42]がある。 種々のサイズのカリックスアレーンが、 1段階 で大量に合成できるようにな ったのを機に、 その大きさに見合ったサイズの分子や イオンを認識する機能について、 研究が進められた。
R
OR'
カリックス[4]アレーン ギリシャ製聖杯"calix crater"
図1 - 1 カリックス[4]アレーンとギリシャ製聖杯"calix crater"
(参考文献[1-41]より抜粋)
-
カリックスアレーンは、 その名の由来であるギリシャ聖杯の形にちなんで、 図 1-2に示すように、環径が小さい水酸基側を"ローワ)リム"、環径が大きい アルキル 鎖側を"アッパーリム"と呼ぶことが、 世界的に認められている。 カリックスアレー ンの ロ ーワーリム側への化学修飾として②の特徴が、 また アッパーリム側への化学 修飾として③の特徴が挙げられる。 図1・1中のR基としては、 1.1.3.3-テトラメチル プチル基[1-44]、イソプロピル基[1-45]、 8 ,10,14,16及びの 18の炭素数の直鎖 アルキ ル基[1-46]を有するものなど、多数報告されている。 しかし、t-ブチル基を有するカ リックスアレーンの研究が、圧倒的多数を占めている。 Gutscheらは、このt-プチル 基を脱ブチル化して、母体となるカリックスアレーンを合成し[1-47] 、様々な官能基 を導入して、③の発展の基礎を築いたO
④と⑦に関しては、特にカリックス[4]アレーンについて、早い段階で示唆されて いた。 Confor thらは、カリックス[4]アレーンの水酸基が4つ存在することに着目し て、4つの異性体の存在を提唱した[1-48]。 しかし、現在では、水酸基は室温では、
互いに強固な水素結合により、いわゆる冗one"構造に固定されていることが明らかと なった。 また、 高い温度で三one"構造の反転が起こる場合は、 図1・1のRではなく、
R'側がカリツクスアレーン環をくぐり抜けていることが、明らかにされている[1-49]0 その後、Iwamotoらによって、水酸基にプロピル基以上の長さの官能基を導入するこ と に よ り 、 図 1-3 に 示 す よ う な "cone""\ "parti al cone" 、 11 1,2 - al ternate"、 及 び
"1,3 - al ternate"の4 つのコン ホメーションに固定できることが、 明らか となった [1-50]。 ホスト分子を酵素模倣体、あるいはレセプター模倣体として利用する際には、
ゲストの選択性に及ぼすコンホメーションの影響も、重要な因子となる。
1. 5 カリックスアレーン誘導体による金属イオン認識と溶媒抽出
人工イオノホアとしてのカリックスアレーンの研究は、生体内で重要な役割を果 たすナトリウムやカリウムイオンなどの、 アルカリ金属イオンの認識に関するもの が夫多数である。 アルカリ金属イオンの認識に関する既往の研究を、表1-4に示す。
また、 アルカリ金属イオン以外にも、 アルカリ土類や遷移金属について、研究が行 われるようになった。 これら金属イオンの錯形成及び抽出に関する既往の研究につ いて、表1・5から表1-9に示す。
カリックスアレーンの人工イオノホアとしての最初の研究は、 Izattらによるもの [1-51]である。 彼らは、 フェノーjレ性の水酸基を有する、 未修飾のカリックスアレー ンを用いて、 アルカリ金属イオンの液膜輸送について検討した。 しかし、液膜キャ リアとしての可能性を示したのみで、サイズ適合効果、すなわち人工イオノホアと し て の 性能 に は言及して いな い O その後、 Changら [1-52]、 Mckerveyら[1-53]、
Arduiniら[1-55]によって、エステル基が導入されたカリックスアレーンによる、ア ルカリ金属イオンのサイズ適合効果が確認された。 これらの研究成果によって、 ヵ リックスアレーンの人工イオノホアとしての研究は、 さらに発展している。 様々な 官能基を導入したカリックスアレーンは、 さらにイオン電極や化学センサーなとミへ
-13司
4・』
の利用についても検討され[1-107]、 その発展は著しい。 また、 Dij kstraらによって合 成された、 クラウンエーテル様に架橋されたカリックスアレーン誘導体は、 多くの 化学者により発展を遂げ、 アルカリ金属に対する高性能の人工イオノホアとして、
知られるようになった[1-108]0
"upper rim"
R
cク-:::::::-
氏、
"lower rim"
Rは由来のフェノールによって定まるが、
脱アルキル化反応によって得られる母体 カリックスアレーンに芳香族置換反応を 行い、 改めて様々な官能基を導入できる。
R'に様々な官能基を導入することが できる。 嵩高い置換基を導入すれば 分子のコンホメーションを固定できる。
図1 - 2 カリックスアレーンのローワーリムとアッパーリムと その利用
回圃園h
R
OR'
"cone "partial cone"
OR' OR'
11l,2-alternate11 『113-aitemate11
図1 - 3 カリックス[4]アレーンのコンホメーション異性体
-15-
--
アルカリ土類金属については、 アルカリ金属とともに検討されている例が多い。
しかし、 良好な抽出能力が報告された例は比較的少なく、 またアルカリ土類金属間 の分離性能にも乏しい。 一方、 アミド基を有するカリックスアレ)ンでは、 比較的 良好な抽出性能を示すことが報告された[1-77]。 さらに、 Ogataらはカルボキシル基 とアミド基を併せ持つカリックス[4]アレーンを用いて、 良好なカルシウム選択性を 報告している[1-79]0
遷移金属については、 Yoshidaら[1-81]、 Hamadaら[1-82トNagasakiら[1-83]などの 報告がある。 このうち、 対応するモノマー誘導体との比較を行い、 カリックスアレー ン誘導体の抽出能力の向上を報告したのは、 Nagasakiらの研究のみである。 この意 味で、 YoshidaらとHamadaらの研究から、 カリックスアレーンについての特徴は見 い出されていない。
貴金属については、Nomuraら[1-86] 、Ikedaら[1・90]、 Yordanovら[1-92]などの報告 がある。 このうち、 ソフトな官能基を導入した配位子については、 良好な結果を得 ている。 しかし、 遷移金属と同様に、 対応 するモノマ」誘導体との比較がなされて いない。 このため、 カリックスアレーンの特性と関連付けられてはいない。 ただし、
Ikedaらは、 カリックスアレーンのπ電子を利用した銀の取り込みを述べており、 ヵ リックスアレーンの構造的特徴を利用した例として、 興味深い。
希土類については、 Yoshida[l-96]ら、 Ludwigら[1-97]、 Harrowfieldら[1-98]などの 研究が報告されている。 しかし、 希土類が極めて類似した化学特性を有するために
良好な相互分離には至っていない。
アクチノイドの中で、 ウラニルイオンについての研究は多数報告されている。
Ungaro[1-100]らは、 カリックス[4]アレーン誘導体による、 種々の金属とウラニルイ オンの抽出を行った。 この結果、 カルボン酸誘導体を用いた場合には非常に高い抽 出率を示すが、 分離能力は乏しいことを明らかにしたo Shinkai[1-101]らは、 ウラニ ルイオンが擬平面5配位や6配位をとりやすい性質を利用し、 カリツクス[6] アレー ン誘導体を用いて、 高いウラニル選択性を報告している。
アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンのように、 化学的性質が類似し、
かつイオン径の異なる金属群に関しては、 上述のように、 均相系での錯形成や液液 系での抽出について、 系統的な実験が行われている。 これらの金属イオンについて の結果をもとに、 カリックスアレーン誘導体の、 人工イオノホアとしての特徴が報 告されている。 しかし、 化学的性質に加え、 イオン径までもが類似した、 重金属類 や希土類などの金属群について、 相互分離に関する研究例は少ない。 さらに、 良好 な結果が得られているものは、 限られている。 特に、 これら金属群の相互分離は、
現時点では、 従来の抽出剤の方が、 優れた性能を示している。 従って、 従来の抽出 剤の性能に加え、 さらにカリックスアレーンの特徴を合わせ生かすことによって、
より優れた分子の創製が可能であると考えられる。
表1-4
年代 研究者 対象イオン
198 3 Izattら アルカリ、 アルカリ土類
1984 Changら アルカリ、 アルカリ土類
1985 McKervey ら アルカリ
1986 Changら アルカリ、 アルカリ土類
1986 Arduiniら アルカリ
1987 Fergusonら アルカリ
1988 Arduiniら アルカリ
1988 Gutscheら アルカリ
トー 1989 Shinkaiら アルカリ、 Ag, 01, U02
町江
1989 Schwingら アノレカリ、 Ag、 Tl
1989 Nueら アルカリ
199 0 Shinkaiら アルカリ
1991 Shimizuら アルカリ
1992 Iwamotoら アルカリ
1992 Shinkaiら アルカリ
1992 Seangprasertkijら アルカリ、 アルカリ土類、 重金属
1992 Schwingら アルカリ、 アルカリ土類、 重金属
1992 Nueら Na, K
1992 Connerら アルカリ
アルカリ金属イオンの認識に関する既往の研究
錯形成剤 Um [4] [句[8]
Es, Et [句[8]
Es [4] [6] [8]
Es, CA [4] [句[8]
Es [4]
Kt[勾 Ad [4]
Am [4]
Py [句[句
Es, Kt [4] [句 Es, Kt [4] [6] [8]
Es, Es&Py [4]
Es [4] (Chromogenic)
Es [4]
Es, Fs&Py [4]
Sb [4]
Es [4][5][6][η[8] , Py[4], CA[4]
Es, Kt, Ad, CA [4]
U-Es, U-Kt
方法 液膜輸送 ピクレート抽出 ピクレート抽出 ピクレート抽出、 液膜輸送
ピクレート抽出 ピクレート抽出 ピクレート抽出 ピクレート抽出 ピクレート抽出
均相系(MeOH,AN),ピクレート抽出 均相系(MeOH,AN),ピクレート抽出
ピクレート抽出 ピクレート抽出 ピクレート抽出 ピクレート抽出 ピクレート抽出 ピクレート抽出 均相系(MeOH),ピクレート抽出
ビクレート抽出
特徴
csに選択性 (1-51]
サイズフイツティング効果 [1-52]
サイズフィッティング効果 [1-53]
サイズフイツテイング効果 [1-54]
Na錯体の構造決定 [1-55]
サイズフィッテイング効果 [1-56]
Na選択性 [1-57]
抽出能乏しい [1-58]
抽出能乏しい [1-59) サイズフイツテイング効果 [1-60]
サイズフイツテイング効果 [1-61]
コンホメーション効果 [1-62]
Li選択性 [1-63]
コンホメーション効果 [1-64]
コンホメーション効果 [1-65]
抽出能低い [1-66]
サイズ、 異性体、 官能基効果[1-67]
Na選択性 [1-68]
選択性乏しい [1-69]
年代 研究者 1993 T、Jomuraら 1993 Soedarsonoら 1993 Barrettら 1994 Seangprasertkijら
1995 Soedarsonoら 1995 Pappalardoら
ト」 1996 Yamagishiら
αコ
年代 研究者
198 7 Changら
1991 Nueら
1994 Ogataら 1996 Fanniら
対象イオン アルカリ アルカリ アルカリ
アルカリ、 アルカリ土類、 重金属 アルカリ
アルカリ アルカリ
表1-4 続き
錯形成剤 Et[句 CA&Et [4]
Es [4] [斗[6]
Sb [4]
CA&Et [4]
Py, PyO [4]
Es [4] [6] [8], UCy-Es [3]-[7]
方法 ピクレート抽出
抽出 ピクレート抽出 均相系(MeO町,ピクレート抽出
抽出 ビクレート抽出 ピクレート抽出
表1-5 アルカリ土類金属イオンの認識に関する既往の研究
対象イオン アルカリ、 アルカリ土類、
アルカリ、 アルカリ土類、 Ag アルカリ土類
アルカリ、 アルカリ土類
錯形成剤 Ad [4] [6] [8]
Ad [4]
Ad&CA [4]
Es, Ad [6] [8]
方法 ピクレート抽出
均相系(MeOH)、 ピクレート抽出 抽出
ピクレート抽出
特徴
コンホメーション効果 [1-70]
化学種の確認 [1-71]
サイズフイツテイング効果 [1-72]
抽出能低い [1-73]
化学種の確認 [1-74]
抽出能低い [1-75]
サイズフイツテイング効果 [1-76]
特徴
アルカリ土類に選択性 [ 1-77]
Na,Ca選択性 [1-78]
Ca選択性 [1-79]
Cs, Ca, Sr, Ba選択性 [1-80]
年代 研究者 1989 Yoshidaら 1991 Hamadaら 1992 Nagasakiら 1995 Masudaら 1996 Y ilmazら
トー 年代 研究者
<..0
1989 Nomuraら 1992 Ikedaら 1993 Q'Connorら
1993 Lynchら
1994 Ikedaら 1995 Deligoezら 1995 Yordanovら 1995 Yordanovら 1996 Yordanovら 1996 Yordanovら
表1-6
対象イオン Cu(Il)
アルカリ、 アルカリ土類、 重金属 Fe,ω(IlI), Ni,Cu,Zn,Pd(II), Ag(I), Pt(IV)
C叩1), Mn,Co,Ni,ω,Zn,α,Pb(Il), Ag(I) Fe(III)
表1-7
対象イオン
アルカリ、 アルカリ土類、 重金属 アルカリ、 Ag
アルカリ、 アルカリ土類、 重金属 アルカリ、 アルカリ土類、 重金属
アルカリ、 Ag
アルカリ、 アルカリ土類、 重金属 Ni(Il), Ag(I), Pd(II), Pt(II), Au(III)
Pd(II), Pt(II), Pt(IV) Hg(II), Hg(l), Ag(I), Pd(II), Au(III) Hg(Il), Ag(I), Pd(II), Au(III), Pb(II),α(11)
遷移金属イオンの認識に関する既往の研究
錯形成剤 Um [6]
DPP [4]
CA, HA, Ad [1] [4] [句 Es[8]
Ox&Um [4]
方法 抽出 ピクレート抽出
抽出 抽出 抽出
貴金属イオンの認識に関する既往の研究
錯形成剤
Az [6]
Et (脱Bu) TEt, EAd [4]
TAd, Es, Kt l4]
Et C脱Bu) Ox, Es, Kt [4] [6]
T Et [4]
DTCA [4]
DTCA [4]
DTCA, TEt [4]
方法 ピクレート抽出 ピクレート抽出 ピクレート抽出 ピケレート抽出 ピクレート抽出 ピクレート抽出 抽出CO.1M硝酸) 抽出CO.1M硝酸) 抽出(O.lM硝酸)
抽出
特徴
抽出能低い [1-81 ] 選択性乏しい [1-82]
Fe(III)選択性 [1-83]
抽出能低い [1-84]
抽出性能大 [1-85]
特徴
Ag(り, Hg(l), Hg(II)選択性 [1-86]
K, Ag選択性 [1-87]
Ag選択性 [1-88]
Ag選択性 [1-89]
K, Ag 選択t性 [1-90]
Ag,Hgに選択性 [1-91 ] Ag(I), Au(III)に選択性 [1・92]
Pd(Iりに選択性 [1-93]
ソフトな金属に選択性 [1-94]
Hg(II),Ag(り,Au(III)に選択性 [1-95]
N o
表1-8
年代 研究者 対象イオン
1991 Yoshidaら 希土類
1993 Ludwigら 希土類
1996 Harrowfieldら 希土類
1996 Neuら 希土類、 アクチノイド
表1-9
年代 研究者 対象イオン
1984 Ungaroら UOzと重金属
1986 Shinkaiら UOzと重金属
1989 Shinkaiら UOzと重金属
1990 Nagasakiら UOz
1991 Nagasakiら UOz
1993 Arakiら UOz
1995 Agrawalら UOz
略号
希土類金属イオンの認識に関する既往の研究
錯形成剤
SA [4]
CA [4] [句 PrEs [4]
CMPO [4]
方法
均相系(water) 抽出 ピクレート抽出
抽出
アクチノイドイオンの認識に関する既往の研究
錯形成剤 方法
Um, Es, CA [勾 抽出
SA, CA&SA [句 均相系(water)
CA, CA&SA [6] 均相系(water)、抽出
CA,出[句 抽出
CA, HA [6] 抽出
CA, HA, SA [6] 抽出
U-HA [句 抽出
特徴
Q選択性 分離性乏しい 分離性乏しい
高抽出能
特徴
選択性乏しい UOz選択性 UOz選択性 炭酸濃度依存性 炭酸濃度依存性 G対称分子、UOz選択性
UOz選択性
[4] :カリックス[何アレーン誘導体、[5]:カリックス[5]アレーン誘導体、[司:カリックス[句アレーン誘導体、[η:カリックス[ηアレーン誘導体
[1-96]
[1-97]
[1-98]
[1-99]
[1-100 ] [1-101]
[1-102]
[1-103]
[1-104 ] [1-105]
[1-106]
[8] :カリックス[句アレーン誘導体、[1]:モノマー誘導体、Um:未修飾フェノール、Es:エステル誘導体、Et:エーテル誘導体、Kt:ケトン誘導体、Ad:アミド誘導体 CA:カルボン酸誘導体、比久:ヒドロキサム酸、SA:スルホン酸、Py:ピリジル誘導体、DTCA:ジチオカルパミン酸誘導体、TEt:チオエーテル誘導体
PrEs :ホスフェート誘導体、Ox:オキシム誘導体、UCy:非環状誘導体、Sb:シッフ塩基誘導体、 CMPO:カルパメチルホスフィンオキシド誘導体、Az :アゾ誘導体