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輸出の循環的変動の分析

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輸出の循環的変動の分析(杉野真紀) 365

【論 説】 

輸出の循環的変動の分析

  杉 野 真 紀  

は じ め に

 第2次世界大戦後の日本経済には,すでに13回の景気循環が認められ,現 在(20059月)は第14循環の上昇局面にある.2002年1月の谷からはじま る拡張期間が長く続いていたが,「景気の踊り場を脱却した」との見方が政府,

日銀によってなされている.

 現在の状態が,高原状態と呼ばれる景気の山なのか,より高い水準への移 行期なのかは今の時点では判断できないが,今回,景気が回復の途中でとど まった原因の1つは,2004年後半以降の輸出の減少が大きかったと考えられ る.また,輸出が再び増えてきたことでさらに景気の拡大を支えると期待さ れている.

 一般的に「景気循環」という場合は,4.2年の周期を持つ短期循環のことを 指している.ハンセンは,ジュグラー・サイクルを主循環,キチン・サイク ルを小循環と呼んだが,現在では景気研究の主力は後者に置かれている.戦 後の景気転換点については,内閣府経済社会総合研究所の景気基準日付がカ レントに作成されており,これが短期循環を表す指標として広く活用されて いる.

 日本のマクロ経済の景気循環を計測する尺度の1つに,景気動向指数があ る.これは,景気循環論にもとづいて,総体的経済活動を7つの経済分野(生 産,消費,投資,在庫,雇用,価格と利益,金融)の活動としてとらえ,各分野の

( 601 )

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状態の総和として,景気を表現しようとするものである.景気動向指数では,

7つの経済分野から日本経済の景気の拡張や後退に合わせて循環的変動をす る代表的な指標が選ばれる.現行の内閣府経済社会総合研究所の景気動向指 数は29個の指標から構成されている.

 日本経済が輸出に大きな影響を与えているのは紛れも無い事実として認め られている.杉野(2001)では,総体的経済活動を構成するプロセスとして輸 出を考え,輸出の代表的な変数の中でもとくに景気との対応関係が密接であっ た輸出総額の短期の循環的変動を検出したが,景気の基準日付と整合的に循 環的変動をする変数は見つけられなかった.すなわち,輸出は日本の景気循 環と整合性が悪いと考えられる.景気動向指数を構成する指標には輸出が含 まれていないことも,輸出の循環的変動が日本の景気循環の計測に有用でな かったことを示すと考えられる.

 本稿では,輸出に関して可能な限り分析期間を長くし,7年から12年,平 均して10年の周期を持つよりスパンの長い中期循環を検出し,この輸出の中 期循環の山・谷の日付を設定することを目的としている.そして,日本経済に おける中期の循環的要因は,ストック調整原理にもとづく投資比率(民間設備

投資/GDP)で計測されていると考える.そこで,日本経済が直面している中

期循環としての投資比率を軸とし輸出との関係を考察したい.

1 輸出の短期循環

1. 1 輸出総額の短期循環

 短期循環の分析は,第1次石油危機後から現在までを対象としている.

 まず,輸出に関する主要な変数のなかから循環的変動をする変数を検出す るため,景気の基準日付とのタイミングに安定性があるか点検を行った.そ の結果,輸出総額(季節調整済み,月次データ,円建て,単位百万円,外国貿易概況)

のはっきりした循環的変動が確認された.第 1 図にその推移を示す.しかし,

景気の基準日付との対応関係に規則性はなく,タイミングは安定的ではない

(3)

輸出の循環的変動の分析(杉野真紀) 367

ことがわかった.

 輸出総額の短期循環をあらわす山・谷の日付は,ブライ・ボッシャン方式

(1971)を用いて決定している.6つの循環が検出され,第 1 表にその日付と 継続期間を示す.

 第1循環から第2循環と,第3循環から第6循環までの2つに継続期間を 分けてみてみる.継続期間の平均は,上昇局面で1.2倍,下降局面で1.4倍,

全局面で1.3倍と特に下降局面で長くなっていることがわかる.

1. 2 輸出総額の安定化についての分析

 そこで,全体を①オイルショックまで(1963年−1973年),②オイルショッ ク以降プラザ合意まで(1973年−1985年),③円高以降バブル崩壊まで(1985年

−1993年),④バブル崩壊から現在まで(1993年−2005年),の4つの期間に分け てみる.4つの期間の平均値,標準偏差,変動係数の推移をそれぞれ第 2 表,

( 603 )

第 1 図 輸出総額の短期循環

(出所)財務省「外国貿易概況」による. (単位:百万円)

(年)

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第 2 図に表す.

 第1図を見てわかるように,輸出総額には強い上昇トレンド傾向が見られ る.平均値の推移をみると,輸出総額が一定の割合で増加していることがわ かる.標準偏差はオイルショック以後プラザ合意までの期間に大きくなって おり,プラザ合意以後は再び縮小している.標準偏差を平均値で割った変動 係数は,1985年のプラザ合意を境に小さくなり,安定性が見られると考えら れる.

2 輸出の中期循環の検出

2. 1 設備投資比率という中期循環

 現在,世界的に広く認められている景気循環は長短合わせて4種類あり,

循 環 月次日付(年/月) 期 間(月数) 四半期日付 谷 山 谷 上昇局面 下降局面 全循環 山 谷

第1 1975/06 1977/04 1979/02 22 22 44 77/Ⅱ 79/Ⅰ

第2 1979/02 1981/10 1982/12 32 14 46 81/Ⅳ 82/Ⅳ

第3 1982/12 1985/05 1988/03 29 34 63 85/Ⅱ 88/Ⅰ

第4 1988/03 1991/11 1995/01 44 38 82 91/Ⅳ 95/Ⅰ

第5 1995/01 1997/05 1998/11 28 18 46 97/Ⅱ 98/Ⅳ

第6 1998/11 2001/03 2001/12 28 9 37 01/Ⅰ 01/Ⅳ

平均 全期間 30.5(2.5年)22.5(1.9年) 53(4.4年)

平均 1975/06−1982/12 27 18 45 平均 1982/12−2001/12 32.25 24.75 57 第 1 表 輸出総額の循環的動向(短期循環)

1963年‐1973年 1973年‐1985年 1985年‐1993年 1993年‐2005年 平均値

標準偏差 変動係数

373,381 2,150,417 3,208,561 4,167,259

171,451 818,130 321,040 551,730

0.459 0.380 0.100 0.132

第 2 表 輸出総額の変動(短期循環)

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輸出の循環的変動の分析(杉野真紀) 369

その性質の差によって長さに違いがあるというのが一般的な考え方である.

短期,中期,長期の景気循環を実証的,体系的に明らかにすることは難しい1). 短期循環は,ビジネスマンの肌で感じる景気の良い時期,悪い時期の繰り返 しの表れである.戦後の日本経済の短期循環の長さは最長で83ヶ月,最短で 31ヶ月と定期性はない.

 そこで,短期循環を含む中期循環を分析することは景気研究に役に立つと 考えられる.中期循環の上昇局面では短期循環の拡張期は長くなり,後退期 は短くなる.反対に中期循環の下降局面では,短期循環の拡張期は短く,後 退期は長くなると説明される2)

第 2 図 輸出総額の変動(平均値と変動係数)

1 )それぞれ,発見者の名をとってコンドラチェフ・サイクル(長期波動),クズネッツ・サイクル

(長期循環),ジュグラー・サイクル(中期循環),キチン・サイクル(短期循環)と呼ばれている.

詳しくは田原(1998)第2章「景気循環の発見と沿革」を参照されたい.

2 )森(1997)第2章「設備投資のサイクルと景気」に詳しく説明がなされている.

( 605 )

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 中期循環の波とは,10年周期の波であり,発見者の名をとって「ジュグラー の波」と呼ばれている.ジュグラーは,フランス,イギリス,アメリカ3カ 国について物価,利子率,銀行貸出などの長期経済データを収集し,その中 に10年前後の波があることを発見した.シュンペンターは「景気循環論」の 中でジュグラーの業績を高く評価し,これを「ジュグラー・サイクル」と名 づけた.ハンセンはこれを「主循環」と呼んでおり,戦前の景気研究の中心 であった.一方,わが国では長期循環や短期循環と区別する意味で「中期循環」

と呼ばれる.

 設備投資循環の主な変動要因として,「ストック調整原理」がある.これ は,企業が現実に実存する資本ストックと将来保有したいと考える資本ストッ クとのギャップによって設備投資が変動しそれが中期的な景気循環を発生さ せるという考え方である.ジュグラー・サイクルは現在では「設備投資循環」

とも呼ばれている.

 本稿では,篠原(1994)の分析方法にもとづき,設備投資をGDP(68SNAベー ス,名目,年次データ)で割った設備投資比率を中期循環の主要な循環と考え,

設備投資比率を軸に輸出の中期循環との関係をみる.

2. 2 輸出の中期循環の計測

 分析期間は輸出総額の年次データが入手可能である1950年からとする.第 3 図において,左の軸を目盛りとする年次データの輸出総額成長率の3ヵ年 移動平均と9ヵ年移動平均が示されている.輸出成長率の3ヶ年移動平均を 時系列化することによって,3ヵ年周期の短期循環を超える中期循環を導出 することができる.また,9ヶ年移動平均を時系列化することによって,9ヵ 年周期の中期循環を超える長期循環を導出することができる.そこで,グラ フの右の軸を目盛りとして,中期の循環を示す3ヵ年移動平均から長期の循 環を示す9ヵ年移動平均を差し引いたグラフを示す.3ヵ年移動平均には,

長期循環と中期循環が含まれているため,長期循環を取り除くために,9ヵ

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輸出の循環的変動の分析(杉野真紀) 371

年移動平均を差し引く必要がある.その推移をみると,輸出の中期循環をよ り明確にし,一層はっきりとした波を導出することができる3)

 3ヵ年移動平均から9ヵ年移動平均を差し引いた輸出成長率の推移を総合 的に判断して循環的変動を抽出した.中期循環の山には△印,谷には▼印で 示されている.山,谷の日付とその期間については第 3 表にまとめている.

なお,1960年以降のデータに関しては,四半期データで計算している.なお,

中期循環の計測方法は先行研究に従い山から山までとする.

 第3表からわかるように,全循環の平均は8.05年であり,10年周期に近い 中期循環を示していると考えられる.輸出の面からも中期循環の存在が検証 された.

 ただし,より細かな輸出成長率の循環的変動を見出すケースが考えられる.

3 福田・粕谷編(2004)第2部「日本経済の構造変化を検証する」では,短期の循環的変動と長

期の趨勢変動の分離の方法,その評価,分析における問題意識に関する最近の実証研究がまとめ られている.

第 3 図 輸出成長率の中期循環

(出所)財務省「外国貿易概況」による.

(年)

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すなわち,1958年の谷から1965年の山,1967年の谷から1975年の山,さら に1981年の山から1987年の谷の間にそれぞれ1つずつ山を認める場合であ る.3つの山は,1960年Ⅰ期,1970年Ⅰ期,1983年Ⅰ期である.

 つぎに,第1循環から第2循環(19561975/Ⅱ)の高度成長期と,第3循 環から第5循環(1975/Ⅲ−1997/Ⅰ)の安定成長期の2つに分けて継続期間を みてみる.下降局面は28.6%長くなり,反対に上昇局面は56.7%短くなって いる.全循環では21.6%短くなっている.第3図をみても,第1循環から第 2循環は下降局面が短期間でしかも落ち込み方が急であるが,第3循環から 第5循環の下降局面は期間が長く,落ち込み方も緩やかで前回の谷のレベル を下回ることはない.上昇局面においても,前半は緩やかに増加していくが,

後半は急激に増加するという違いがある.

2. 3 輸出成長率の中期循環と景気循環の関係

 設備投資比率において確認されているように,輸出成長率の示す中期循環 においてもその上昇局面では短期の景気循環の拡張期は長くなり,後退局面 では短くなるだろうか.そして,輸出成長率の循環の下降局面では,その反 対の事柄が起こるであろうか.

循 環 四半期日付 期間(年数)

谷 山 谷 下降局面 上昇局面 全循環

第1 1956 1958 1965/Ⅲ 2.00 6.75 8.75

第2 1965/Ⅲ 1967/Ⅰ 1975/Ⅱ 1.50 8.25 9.75

第3 1975/Ⅱ 1978/Ⅰ 1981/Ⅰ 2.75 3.00 5.75

第4 1981/Ⅰ 1987/Ⅰ 1990/Ⅱ 6.00 3.25 9.25

第5 1990/Ⅱ 1993/Ⅲ 1997/Ⅰ 3.25 3.50 6.75

平均 全期間

平均 1956−1975/Ⅱ(高度成長期)

平均 1975/Ⅲ−1997/Ⅰ(安定成長期)

3.10 1.75 4.00

4.95 8.05

7.50 9.25

3.25 7.25

第 3 表 輸出総額の循環的動向(中期循環)

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輸出の循環的変動の分析(杉野真紀) 373

 ここでは,輸出成長率という中期循環の中で,短期循環を扱っている.輸 出成長率の山・谷の日付は前掲の第3表に示されている.この日付に従った,

中期循環の下降局面と上昇局面に含まれる,景気基準日付で確定されている 第3循環から第12循環までの短期循環の後退期と拡張期を分類すれば,第 4 表のようになる.

 この分類によって,戦後の5個の輸出成長率の中期循環と,9個の短期循 環について,つぎのことを明らかにした.まず,前掲の第3表からわかるよ うに輸出成長率で計測された輸出の中期循環は,平均8.05年の継続期間を持っ ている.その下降局面の平均は,3.10年であり,上昇局面の平均は5.05年で ある.そしてこの中期循環の下降局面に含まれる短期循環の後退期の平均は

22.80ヶ月となり,短期循環の拡張期の平均は25.00ヶ月となる.また,中期

循環の上昇局面に含まれる短期循環の後退期の平均は13.75ヶ月となり,短 期循環の拡張期の平均は38.29ヶ月となる.

 したがって,輸出成長率の中期循環の上昇局面では短期循環の拡張期は長 景気後退期 景気拡張期

名 称 継続月数 名 称 継続月数

第8循環 9 第8循環 22 第9循環 36

第10循環 17 第10循環 28 第11循環 32

第12循環 20

平 均 22.80 25.00

第 4 表 輸出成長率の景気局面

景気後退期 景気拡張期 名 称 継続月数 名 称 継続月数 第4循環 10 第4循環 42 第5循環 12 第5循環 24 第6循環 17 第6循環 57 第7循環 16 第7循環 23

第9循環 28

第11循環 51 第12循環 43

13.75 38.29

輸出成長率の下降局面に位置する短期の景気局面 輸出成長率の上昇局面に位置する短期の景気局面

( 609 )

(10)

く,下降局面に含まれる拡張期の1.53倍の長さになった.また,輸出成長率 の中期循環の下降局面では短期循環の後退期は長く,上昇局面に含まれる後 退期の1.66倍の長さになった.

 ただし,ここではより細かな輸出成長率の循環的変動を認めていないため,

第4循環から第7循環までの輸出成長率の中期循環は,下降局面の期間が短 く急激に下落するので,短期循環が全て中期循環の上昇局面に位置する結果 となってしまった.1970年Ⅰ期に山を認める場合,第6循環の景気後退期は 中期循環の下降局面に位置することになるが,その場合でも継続月数の平均 には違いはほとんどなかった.

3 輸出の中期循環と設備投資比率循環

3. 1 設備投資比率という中期循環

 年データによる設備投資比率(民間設備投資/GDP)と,第3図から再掲した 輸出成長率の中期循環を第 4 図に示す.設備投資比率の波はシャープな波を

第 4 図 設備投資比率と輸出成長率の中期循環

(出所)内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算」,財務省「外国貿易概況」による.

(年)

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輸出の循環的変動の分析(杉野真紀) 375

描いており,極めて規則的な循環的なサイクルが読み取れる.投資比率の循 環の日付と継続期間については1960年以降のデータに関しては四半期データ で計算し第 5 表にまとめられている.

循 環 四半期日付 期間(年数)

谷 山 谷 下降局面 上昇局面 全循環

第1 1951 1955 1961/Ⅲ 4.00 5.75 9.75

第2 1961/Ⅲ 1966/Ⅰ 1970/Ⅱ 4.50 4.25 8.75

第3 1970/Ⅱ 1978/Ⅰ 1980/Ⅱ 7.75 2.25 10.00

第4 1980/Ⅱ 1983/Ⅱ 1991/Ⅰ 3.00 7.75 10.75

第5 1991/Ⅰ 1994/Ⅲ 1997/Ⅲ 3.50 3.00 6.50

平  均 4.55 4.60 9.15

第 5 表 投資比率の循環的変動

 設備投資比率を山から山を1循環として計測する場合は、全循環の継続期 間はおよそ10年である.谷から谷を1循環とした場合,5つ目の循環は1994 年第3四半期から始まり,1997年第3四半期が山になり,1999年第3四半期 を谷とする5年の短い循環となり,全循環の継続期間の平均が6.75年と短く なる.

3. 2 輸出成長率と設備投資比率のタイミングの比較

 つぎに,設備投資比率を中期循環の軸とし輸出成長率との関係を詳細にみ ていく4)

 設備投資比率と輸出成長率の中期循環の山・谷のタイミングを第 6 表に示す.

 山のタイミングは最初の2つの循環では安定せず,両者を結びつけるのは 非常にむずかしい.しかし,それ以降はタイミングは安定し,おおむね1年 前後のリード・ラグで山を迎えている.谷のタイミングは,山のタイミング

4 )飯塚・浅子(2003)において,1990年代の低成長かつ変動の増大の原因が,輸出や設備投資と いうもともと変動の大きい需要項目の寄与の高まりにあるとの計測結果が示されている.設備投 資は80年代までのような内需への波及効果「投資が投資を呼ぶ」効果を90年代には失い,もっ ぱら輸出に牽引され,輸出が落ち込めば設備投資も落ち込む形をとっていることを時差相関係数 を通じて確認している.

( 611 )

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にくらべればずっと安定している.1983年第2四半期の谷は7四半期遅れて いるが,それ以外は1年前後のリード・ラグで谷を迎えている.

 全体を見ると,景気基準日付で示される第11循環までは山のタイミング が大幅に遅行していることもあり,両者を結びつけるのは非常にむずかしい.

しかし,それ以後のタイミングはずっと安定しているが,一定であるとはい えない.

第 6 表 輸出成長率のタイミング

循 環 中期循環の日付 ラグ

第1 1961/Ⅲ +49

第2 1970/Ⅱ +60

第3 1980/Ⅱ +3

第4 1991/Ⅰ 1

第5 1997/Ⅲ −2

平均 絶対値平均

22.2 23

中期循環の日付 ラグ

1966/Ⅰ +4

1978/Ⅰ 0

1983/Ⅱ +7

1994/Ⅲ −4

(1999/Ⅲ) +3 2 3.6 山でのリード・ラグ(四半期) 谷でのリード・ラグ(四半期)

(注)( )内の日付は暫定.

お わ り に

 輸出総額の短期循環を分析した結果において,日本経済の短期的な循環と 輸出の対応関係が悪いことはすでに確認されている.両者の波は一致して動 いておらず,短期の景気循環を示す景気基準日付とのタイミングも安定して いないからである.

 本稿では,輸出成長率から中期循環を導出し,設備投資比率との関係を調 べたところ,第11循環以降は,設備投資比率とのタイミングも安定しており,

同じような動きをすることがわかった.

 日本経済には,短期,中期,あるいは長期の変動を引き起こすいろいろな 要因が存在していることは認められており,日本経済が直面している中期循 環に輸出は貢献したと考えられる.

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輸出の循環的変動の分析(杉野真紀) 377

【参考文献】

Bry, G., and C. Boschan, (1971) “Cyclical Analysis of Time Series : Selected Procedures and Computer Programs,” NBER Technical Paper, No.20.

飯塚 信夫・浅子和美,(2003)「日本の景気循環  1990年代に何が起きたか  」,浅 子和美・福田慎一編『景気循環と景気予測』所収,第1章,東京大学出版会.

篠原 三代平,(1994)『戦後50年の景気循環』日本経済新聞社.

福田 慎一・粕谷宗久編,(2004)『日本経済の構造変化と経済予測  経済変動のダイナ ミズムを読む  』東京大学出版会.

杉野 真紀,(2001)「輸出と景気の計量分析」『経済学論叢』(同志社大学)第53巻 第3号, pp.98-124.

田原昭四,(1998)『日本と世界の景気循環』東洋経済新報社.

森一夫,(1997)『日本の景気サイクル』東洋経済新報社.

( 613 )

(14)

The Doshisha University Economic Review Vol.57 No.3

Abstract

Maki SUGINO, Cyclical Fluctuation of Exports

  This paper shows a medium-term export cycle with a 7 to 12 years interval during the peak of each cycle, and reveals that the capital investment rate accords with the total exports at least after the 11th business cycle.

参照

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