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(1)

FASB負債証券と持分証券に係る会計処理プロジェク トの方向性

著者 志賀 理

雑誌名 同志社商学

巻 58

号 6

ページ 252‑267

発行年 2007‑03‑15

権利 同志社大学商学会

ドウシシャ ダイガク ショウガッカイ

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000007373

(2)

FASB 負債証券と持分証券に係る 会計処理プロジェクトの方向性

志 賀 理

はじめに

負債証券と持分証券に係る会計処理プロジェクトの経緯 所有主関係/決済アプローチ

所有主関係/決済アプローチの適用原則 所有主関係/決済アプローチの適用例

おわりに

FASBは1986年に始まった金融商品会計プロジェクトの一つとして,負債証券と持 分証券の区別に関する諸問題を取り扱うプロジェクトに着手してきた。そのプロジェク トの目的は,負債証券,持分証券,あるいは両方の特徴を有する金融商品について,包 括的な会計基準を開発することとしている。すなわち,現行の実務において,(a)負債 の特徴を有するが,実務上は財政状態表で完全に持分として,もしくは負債の部と持分 の部の間のいずれかで表示されている金融商品,(b)持分の特徴を有するが,実務上は 財政状態表で負債の部と持分の部の間で表示される金融商品,(c)負債と持分との両方 の特徴を有するが,実務上は完全に負債として,もしくは完全に持分として分類される 金融商品,さらに,(d)持分株式を発行する義務を含むある種の金融商品を,財政状態 表でどのように分類すべきかについて作成者,監査人,規制者などによって表明された 懸念に応えるために包括的な会計基準を開発するというものであ

1

る。

FASBは現在までのところ,負債証券,持分証券,あるいは両方の特徴を有する金融 商品を,負債(もしくは資産)あるいは持分かに分類するために,所有主関係/決済ア プローチ(Ownership Settlement Approach),所有主関係アプローチ(Ownership Ap- proach),REOアプローチ(Reassessed Expected Outcomes Approach)という三つの方法 を開発している。所有主関係/決済アプローチは,所有主持分証券,あるいは決済時に 所有主持分証券の発行もしくは返還がなされるような,所有主持分証券に類似する清算 価値を有する他の証券にもとづいて,持分証券もしくは持分構成要素を明確にしようと

────────────

FASB, Exposure Draft, Proposed Statement of Financial Accounting Standards,Accounting for Financial In- struments with Characteristics of Liabilities, Equity, or Both,October 2000, par. 1.

2(456

(3)

する方法である。所有主関係アプローチは,実体の所有主(持分証券)と,所有主に利 用可能な純資産に影響を与えうる証券とを明確にしようとうするものである。REOア プローチは,当該証券の構成方法や発行方法に関係なく,類似する経済結果を有する証 券に対して同じ会計処理を適用しようとするものである。

そこで本稿では,所有主関係/決済アプローチが他の二つの方法の基礎となっている ために,所有主関係/決済アプローチに焦点を当て,FASB による負債証券,持分証 券,あるいは両方の特徴を有する金融商品に係る会計基準の検討について,その方向性 を考察する。

負債証券と持分証券に係る会計処理プロジェクトの経緯

FASBはまず,1990年にFASB ディスカッション・メモランダム『負債証券と持分 証券の区別と,両方の特徴を有する証券に関する会計処理』を公表し,1997年にディ スカッション・メモランダムで生じた諸問題の検討を再開させた。その検討を経て,

2000年10月にFASBステイトメント公開草案『負債,持分,もしくは両方の特徴を有 する金融商品に関する会計処理』(以下,「公開草案」と略称する)が公表された。

その公開草案の主な内容は,たとえば,発行した持分株式を将来に資産を譲渡するこ とによって償還する義務を組み込んでいる定時償還優先株などは負債として分類し,将 来に持分株式を発行するある種の義務を組み込んでいる金融商品も負債として分類する ことを要求するものであった。また,転換社債は社債の償還による資産を譲渡する義務 と,転換オプションが行使された場合に持分株式を発行しなければならない義務と,そ の構成要素に分解し,発行時に負債と持分とに分類することを要求するものであっ

2

た。

それと同時に,持分株式を発行するある種の義務を負債として解釈するために,FASB 公開草案『負債の定義を変更するためのFASB概念ステイトメント第6号改正案』を 公表し,負債の定義を改正することも提案していた。

FASBは公開草案を再検討した結果,2003年5月にFASBステイトメント第150号

『負債と持分の両方の特徴を有するある種の金融商品に関する会計処理』(以下,「ステ イトメント第150号」と略称する)を公表した。ステイトメント第150号は,公開草案 で提示した適用範囲のうち,負債として分類する金融商品,すなわち,定時償還金融商 品,資産を譲渡することによって発行者の持分株式を買い戻す義務を組み込んでいる金 融商品,および発行者の持分株式を発行する義務を組み込んでいる金融商品の三つのク

────────────

公開草案の内容については,志賀理「FASB金融商品会計における負債概念の解釈のあり方−FASB 務会計基準書公開草案『負債,持分,もしくは両方の特徴を有する金融商品に関する会計処理』につい て」『同志社商学』第54巻第1・2・3号,200212月を参照されたい。

FASB負債証券と持分証券に係る会計処理プロジェクトの方向性(志賀) 457)2

(4)

ラスに適用を限定したものであった。負債と持分の要素から構成される転換社債のよう な金融商品や連結子会社における少数株主持分の処理に係る問題については,解決する に至らず,継続審議となっている。また,概念ステイトメントの第6号の改正も,それ らの諸問題を解決するまで延期されることになった。しかし,FASBは明確かつ解決可 能な実務上の問題をもつ金融商品についてガイダンスを提供することのほうがタイムリ ーかつ必要であるとして,公開草案よりも適用範囲を限定したステイトメント第150号 を公表したのであ

3

る。

しかし,ステイトメント第150号の規定を適用した結果,ある種の問題が生じ,その 問題を再検討するまで,その規定の適用を延期することになった。その問題となってい る規定のうちの一つは,ステイトメント第150号が負債として分類することを要求した 定時償還普通株式であるとい

4

う。

FASBは負債証券と持分証券の会計処理プロジェクトの最終目的を,すべての金融商 品に対する分類を提示する包括的な会計基準を開発することとして,公開草案からステ イトメント第150号の公表に至るまでを当該プロジェクトの第一段階と位置づけ,第二 段階では,ステイトメント第150号の範囲内にある金融商品に係る会計処理に関係する 諸問題を再検討し,さらには,第150号で提言されていないある種の金融商品(複合金 融商品)に係る会計処理を検討することとしてい

5

る。

当該プロジェクトの第二段階はいくつかのステップに分割され,その一つのステップ として2005年7月にマイルストーン・ドラフト『一つの構成要素からなる金融商品お よびその他の証券に係る分類(案)』(以下,「ドラフト」と略称する)が公表された。

ドラフトは,FASBステイトメント第150号で負債として分類することを要求した定時 償還金融商品のうち,持分として分類する証券を明確にしたものであった。その内容 は,所有主関係/決済アプローチを導入することによって,永久証券,直接的所有主持 分証券,間接的所有主持分証券という三つのクラスの証券を明確にし,それらの特徴に 合致する金融商品を持分として,それ以外のものを負債もしくは資産として分類するこ とを要求するというものであっ

6

た。FASBは,この所有主関係/決済アプローチによっ

────────────

FASB, Statement of Financial Accounting Standards No. 150, Accounting for Certain Financial Instruments with Characteristics of both Liabilities and Equity, May 2003, par. B 11. FASBステイトメント第150号の 詳しい内容とその本質的な意味については,志賀理「FASB金融商品会計による負債の会計認識領域拡 大化」加藤盛弘編『現代会計の認識拡大』森山書店,20057月,第8章所収を参照されたい。

FASB, Milestone Draft, Proposed Classification for Single-Component Financial Instruments and Certain Other Instruments,July 2005, p. 3.

Ibid.,par. 4.

ドラフトの詳しい内容については,志賀理「FASB発行者による金融商品会計における持分概念の規定

−FASBマイルストーン・ドラフト『一つの構成要素からなる金融商品およびその他の金融商品の分類

(案)』について」『同志社大学ワールドワイドビジネスレビュー』第7巻第2号,20063月を参照さ れたい。

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4(458

(5)

て,財務諸表の利用者に流動性と所有主持分に関連する有用な情報を提供することが可 能となり,また,次のステップで提言される複合金融商品に係る会計処理の基礎として も用いられるとしてい

7

る。

その後,FASBは所有主関係/決済アプローチを基礎として,負債証券,持分証券,

および両方の特徴を有する証券に対して包括的な会計処理を開発するために,2006年4 月に『所有主関係/決済アプローチによる会計原則の目的と概要』(以下,「目的と概 要」と略称する)を公表した。以下で,その内容を考察する。

所有主関係/決済アプローチ

所有主関係/決済アプローチは,「目的と概要」よりも以前に公表されたドラフトに おいて,一つの構成要素からなる金融商品のうち持分証券を明確にするために導入され た分類規準である。所有主関係/決済アプローチは(a)決済要件を有しているか,あ るいは(b)所有主持分証券かによって,当該証券を分類するアプローチである。この アプローチによって,ドラフトは持分の特徴を有する三つの形態の証券を明確にしてい る。一つは永久証券(Perpetual Instruments),二つ目は直接的所有主持分証券(Direct Own- ership Instruments),三つ目は間接的所有主持分証券(Indirect Ownership Instruments)で ある。ドラフトは以下のように,報告実体の財務諸表上で,それらの証券の特徴に合致 する金融商品を持分として,それ以外の金融商品を負債もしくは資産として分類するこ とを要求している。

1 永久証券

永久証券とは決済要件を持たず,会社清算時に発行者の純資産の一部分に対する権利 を保有者に与える証券である。その例として,普通株式や優先株などがある。永久証券 は,それらが以下で示す直接的所有主持分証券の特徴に合致しない場合でも,持分とし て分類され

8

る。

2 直接的所有主持分証券

直接的所有主持分証券とは,以下の二つの特徴を有する証券であり,持分として分類 することを要求してい

9

る。

a.当該証券が会社清算前もしくは会社清算時のいずれかにおいて,その株式に比例

────────────

FASB, Milestone Draft,op. cit.,pp. 5−6.

Ibid.,par. 19.

Ibid.,par. 20.

FASB負債証券と持分証券に係る会計処理プロジェクトの方向性(志賀) 459)2

(6)

した実体の純資産に対する請求権を表していること。ただし,その請求権は制限も 保証もされていないこと(すなわち,純資産がゼロの場合を除いて,下限も上限も ないこと)。公正価値で償還可能な証券はこの特徴に合致する。帳簿価額で償還可 能な証券もしくは帳簿価額にもとづくフォーミュラについても,(1)当該証券に関 して活発な市場がない場合,あるいは(2)当該証券が報告実体とのみ交換できる 場合には,この特徴に合致する。

b.当該証券によって表された請求権は,その分類の決定がなされたときの日におい て,発行者が会社清算するとした場合,他の請求権よりも優先権はない。

上記の特徴aについて,直接的所有主持分証券の必然的特徴は,当該証券が,会社 清算以前かあるいは清算時のいずれかにおいて,株式に比例した実体の純資産に対する 請求権(制限もしくは保証もない)を表すことである。しかし,たとえば,決済もしく は会社清算によって一定額の配当プラス額面金額が支払われるような証券の場合,制限 されたリターンを有するために,当該証券は,直接的所有主持分証券の特徴aに合致 しないとしてい

10

る。

また,公正価値で償還可能な証券は,実体の純資産額だけに制限されている実体の純 資産に対する請求権を有しているが,何ら保証されておらず,もっとも下位の証券であ る場合,当該証券は決済要件にかかわらず,持分として分類され

11

る。

帳簿価額で償還可能な証券は,当該証券に関して活発な市場がなく,当該証券が報告 実体とのみ交換される場合には,特徴aに合致する。たとえば,それぞれのパートナ ーの早期退職もしくは死亡によって帳簿価額で償還可能なパートナーシップ持分を発行 する非公開会社は,この特徴に合致する。それは当該証券の保有者が,公正価値による 償還と同じように,上限もしくは下限なしに持分に比例した実体の純資産に対する請求 権を有しており,当該証券はパートナーシップ内でのみ交換可能であるからである。パ ートナーシップ持分が直接的所有主持分証券の二つの特徴に合致する場合,当該証券は 決済要件にかかわらず,持分として分類され

12

る。

上記の特徴b,すなわち,保有者の請求権の優先権について,直接的所有主持分証券 の必然的特徴は,実体が評価日で会社清算するとした場合,他の請求権以上に優先権を 持たない実体の純資産に対する請求権を意味するという。換言すれば,評価日において 会社清算を仮定した場合に,直接的所有主持分証券よりも下位の証券がないということ であ

13

る。

────────────

Ibid.,par. A 9.

Ibid.,par. A 11.

Ibid.,par. A 12.

Ibid.,par. A 10.

同志社商学 第58巻 第6号(27年3月)

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(7)

3 間接的所有主持分証券

間接的所有主持分証券とは,以下の三つの特徴すべてを有する証券である。以下の特 徴に合致し,報告実体が発行もしくは保有している間接的所有主持分証券で,かつ,そ の清算価値が直接的所有主持分証券に依拠し,それと同じ直接的所有主持分証券で決済 もしくは最終決済される場合にのみ,持分として分類することを要求してい

14

る。

a.当該証券は永久的ではない。

b.当該証券は直接的所有主持分証券の特徴のうちの一つあるいは両方を欠いている が,直接的所有主持分証券の公正価値に依拠し,かつ,それと同じ方向で変動する 決済時の取引相手の清算価

15

値を有している。

c.当該証券は以下の事柄に依拠する偶発的な行使規定を含んでいない。すなわち,

(1)報告実体の直接的所有主持分証券に関する市場以外の観察可能な市場,あるい は(2)報告実体自体の業務(たとえば,報告実体の収益)に関連して単独に計算 もしくは測定される指標以外の観察可能な指標。そのような偶発的行使規定を含ん でいる証券の例として,S&P 500がある一定のレベルに達した場合にのみ行使する ことができる,報告実体の株式を購入するオプションが挙げられる。偶発的行使規 定は,決済時点における取引相手の清算価値に影響を与える規定を含んでいない。

上記の三つの特徴を有する間接的所有主持分証券であって,報告実体が発行もしくは 保有している間接的所有主持分証券は,決済あるいは最終決済のいずれかが,間接的所 有主持分証券の清算価値が直接的所有主持分証券にもとづき,それと同じ直接的所有主 持分証券を譲渡することを一方の当事者に要求する場合,持分として分類される。その 例として,現物決済もしくは株式による差額決済される売建先渡契約や売建コール・オ プションと買建プット・オプションがある。

たとえば,実体が固定価格でその直接的所有主持分証券を固定数発行することを要求 できる権利を取引相手に与える実体の自社株についての売建コール・オプションは,以 下のように間接的所有主持分証券の三つの特徴に合致する。すなわち,(a)保有者が当 該オプションを行使した場合,報告実体が株式を発行することを要求されること,(b)

実体の株式の公正価値が上昇すれば,オプションの取引相手の清算価値も上昇するこ と,(c)当該オプションが偶発的な行使規定を含んでいないことである。しかし,売建

────────────

Ibid.,par. 23.

5 取引相手の清算価値(Counterparty’s Payoff)とは,初期の純投資額を考慮に入れない,決済時点におけ る当該取引相手のポジションの公正価値を意味する。たとえば,実体がオプション契約もしくは先渡契 約を締結した場合,取引相手の清算価値は,行使価格もしくは契約価格と決済時点の株式の公正価値と の差額(本源的価値)に等しくなる。同様に,実体が定時償還株式を発行した場合,取引相手の清算価 値はそれらの株式の償還価額に等しくなる(決済時点における現金額もしくは他の対価の公正価値)

(Ibid.,pars. 14−15.)

FASB負債証券と持分証券に係る会計処理プロジェクトの方向性(志賀) 461)2

(8)

コール・オプションは直接的所有主持分証券ではない。なぜなら,当該オプションが行 使されるまで,それは報告実体の純資産に対する請求権を有さないからであ

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る。したが って,売建コール・オプションは,間接的所有主持分証券として持分に分類される。

しかし,上記の三つの特徴に合致する間接的所有主持分証券であるが,間接的所有主 持分証券の決済あるいは最終決済が直接的所有主持分証券を譲渡することではなく,資 産を譲渡することによって決済される場合,その間接的所有主持分証券は資産もしくは 負債として分類される。その例として,差金決済される売建先渡契約は報告実体のポジ ションによって負債もしくは資産,差金決済される売建コール・オプションは負債,買 建プット・オプションは資産として分類される。

また,株式(直接的所有主持分証券)による差額決済される売建コール・オプション の場合であっても,当該オプションの取引相手の清算価値がある一つのクラスの株式に もとづいているが,異なるクラスの株式でもって決済される場合は,当該売建コール・

オプションは負債として分類され

17

る。

4 その他の証券

取引相手の清算価値が直接的所有主持分証券に連動し,かつ,それと同じ直接的所有 主持分証券でもって決済もしくは最終決済される間接的所有主持分証券は持分として分 類される。しかし,ドラフトの範囲内にある以下のような証券は,それらが直接的所有 主持分証券の譲渡によって決済されたとしても,負債もしくは資産として分類される。

すなわち,(a)実体の直接的所有主持分証券の公正価値の変動とは逆に変動するか,

(b)当初の固定価額にもとづくか,あるいは(c)発行者の直接的所有主持分証券以外 の何かにもとづく,取引相手の清算価値を有する証券は,間接的所有主持分証券の特徴 に合致しないために,負債もしくは資産として分類される。その例として,実体自体の 株式を買い戻す先渡契約,売建プット・オプション,および買建コール・オプションが ある。それらの報告実体が固定価格で株式を買い戻す契約例は,逆の取引相手の清算価 値を説明する。すなわち,報告実体の株式の公正価値が下落すれば,当該契約の決済時 における取引相手の清算価値は上昇す

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る。つまり,このような証券は所有主関係を表さ ないというのである。報告実体と所有主との関係は,その株式の公正価値が上昇すれ ば,所有主の清算価値も上昇する。したがって,それに類似する証券は持分証券とな る。逆に,報告実体の株式の公正価値が下落すれば,取引相手の清算価値が上昇するよ うな証券は,実体と所有主の関係ではないということである。

────────────

Ibid.,par. A 26.

Ibid.,par. 24.

Ibid.,par. A 30.

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(9)

所有主関係/決済アプローチの適用原則

「目的と概要」は,持分,負債,および資産の特徴を有する証券を分類し測定するた めのフレームワークを設定することを目的として,(1)金融商品,あるいは(2)報告 実体あるいは連結グループ内の報告実体が発行した金融商品でもって決済される,ある いはそれにもとづいた清算価値を有する非金融商品のいずれかに該当する,営利企業が 発行もしくは保有しているすべての証券に適用される処理原則を提示したものであ

19

る。

そこでは,ドラフトで導入された所有主関係/決済アプローチにもとづいた分類・測定 規準が展開されている。

「目的と概要」は,証券の分類,測定から消滅に係る会計処理について13原則を示し てい

20

る。

原則1−証券の連結

実体は,同じ約定の一部分である二つ以上の証券については,それらの証券の会 計処理がそれぞれ異なる場合,それらの証券が同じあるいは類似する結果(もしく は起こりうる結果)を有する一つの証券であるかのように,それらの証券を連結

(一つの証券として計上)しなければならない。連結された証券のグループは,そ れが一つの証券であるかのように,分類,測定,表示しなければならない。それら の証券は原則4のもとで,持分の構成要素と非持分の構成要素とに区分されうる。

少なくとも以下の条件の一つに合致する場合,証券は同じ約定の一部分とみなされ る。

(1)相互依存性が当該証券間に存在する場合。たとえば,(a)一つの証券の行使が他 の証券の行使に依拠するか,あるいは他の証券の終了を引き起こす場合,(b)一つ の証券が第二の証券に明確に結びつけられている場合,あるいは(c)結果に影響 を与える相互作用する清算価値の構造について契約上の証拠が存在する場合に,相 互依存性が存在する。それらの場合,タイミングあるいは取引相手は重要ではな い。

(2)当該証券が相互作用する清算価値の構造を有し,同じあるいは関連する取引相 手,もしくは取引相手のために行動する代理人と,ほぼ同時に締結される場合。

────────────

FASB,Ownership−Settlement Approach−Objective and Summary of Accounting Principles, April 2006, p. 2.

Ibid.,pp. 2−9.

FASB負債証券と持分証券に係る会計処理プロジェクトの方向性(志賀) 463)2

(10)

原則2−分 類:実質的な特徴

実体は一つの証券,連結された証券のグループ(原則1で記載されているよう な),あるいは一つの証券の構成要素(原則4で記載されているような)を,同じ かもしくは類似する結果(あるいは同じかもしくは類似する発生の可能性の一連の ありうる結果)をもつ他の証券と同じ方法で分類しなければならない。そのように するためには,実体は実質的な特徴(明確もしくは不明確)を検討し,実質的でな い決済の特徴を無視しなければならない。

(1)明確にされているあるいは不明確な決済の特徴は,次のような特徴を有する場合 に実質的となる。すなわち,(a)ある証券の結果に影響を与える可能性がリモート 以上(合理的に可能性がある)場合,(b)ある証券のなかの他の特徴と比較して,

最小の影響以上がある場合である。その他のすべての決済の特徴は実質的ではな い。たとえば,報告実体が当該証券を決済するために株式を譲渡することができな いと決定した場合,不明確な現金による決済の特徴は明確にされ,それゆえに,分 類目的のために当該証券の実質的な契約条項に含められる。そのような場合,代替 的な二つの実質的な決済方法,すなわち,株式と現金による決済方法が明確にされ る。

(2)実質的な決済の特徴は,証券が相互作用プロセスを適用することによって連結さ れているかどうかを決定するさいに明確にしなければならない。そのプロセスは,

連結されていない方法と連結されている方法のもとで,それぞれの方法に関して実 質的な特徴を明確にすることによって,会計的結果を比較することを伴う。さら に,決済の特徴の発生の可能性は,当該証券の有効期間にわたって,すべての要因 と環境を検討することによって評価される。

原則3−分 類:持分証券

持分証券は報告実体の所有主持分を表し,当該証券が取引相手に譲渡するリター ンの形態と決済の結果によって決定される。持分証券は一つの証券もしくは一つの 証券の構成要素(異なる結果と決済時の清算価値にもとづいて明確にされる)とな りうる。持分証券には次の三つの形態がある。すなわち,(a)報告実体が発行する 永久証券,(b)報告実体が発行する直接的所有主持分証券,(c)同じ直接的所有主 持分証券にもとづいてそれでもって決済される,報告実体が発行もしくは保有する 間接的所有主持分証券である。

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0(464

(11)

原則4−分 類:構成要素の分割

ある証券は次のような場合に,持分と非持分構成要素に分割される。すなわち,

(a)当該証券が義務を組み込んでいる場合,かつ(b)結果日に異なる取引相手の 清算価値を有する持分結果と非持分結果を有する場合である。二つより多くの構成 要素に分割してはならない。当該証券の分割された構成要素は,一つの証券である かのように分類・表示し,原則6−10で記載されている要件のもとで測定しなけれ ばならない。

(1)持分の結果は,持分証券の三つの形態にもとづいて明確にされる。複数の持分構 成要素から構成される証券は,分割されない。

(2)一つの証券全体に関する公正価値オプションは,分割の代わりに利用可能ではな い。しかし,公正価値オプションは,本概要の測定規定を適用するさいに非持分構 成要素に適用される。

(3)分割される証券から構成される中間の決済を有する証券(たとえば,固定価格で プット可能な株式についての保証)は,その中間の決済が生じない限り,分割され ない。中間の決済前は,当該証券はそのまま負債もしくは資産として分類される。

原則5−分 類:その他の証券

持分証券でない,あるいは持分と非持分構成要素に分割されない他のすべての証 券は,そのまま負債もしくは資産として分類される。

原則6−初期測定:一つの証券

全体が持分もしくは非持分である証券は,取引価格で初期測定しなければならな い。資産もしくは負債に関して,それは一般に公正価値である。取引価格は発行コ ストを含まない。また,不明確な権利もしくは特権が,販売者の相場価格(購入者 に対する相場価格)あるいは別々に請求と支払がなされる価格に含まれるかどうか にかかわらず,取引価格はその不明確な権利と特権も含まない。

原則7−初期測定:分割された構成要素

分割された証券の二つの構成要素についての初期測定は,つねに,原則6で記載 されているように当該証券全体の取引価格にまで合計しなければならない。二つの 構成要素間に取引価格の合計を配分するさいに,実体は最初に,分割された非持分

FASB負債証券と持分証券に係る会計処理プロジェクトの方向性(志賀) 465)2

(12)

構成要素と同じかあるいは類似する結果をもたらす条項を有する仮定上の非持分証 券の公正価値を決定しなければならない。分割された非持分構成要素は,その金額

(その構成要素の仮定上の取引価格)で初期測定される。持分構成要素は,当該証 券全体の取引価格から非持分構成要素に割り当てられた金額を控除することによっ て測定される。

仮定上の非持分証券の公正価値を決定するさいに,実体は以下の要因を検討しなけれ ばならない。

(1)非持分の結果の期待金額とタイミングを決定しなければならないこと。株価,プ ット,コール,およびコンバージョン特徴のような要因は,構成要素の期待決済日 を決定するさいに考慮される。

(2)固定決済金額(フロアー)が100% 支払われる可能性のある固定金額を記載する ことをもたらすこと。たとえば,転換社債もしくは固定価格でプット可能な株式に おけるフロアーは,持分結果が発生した場合でさえ,つねに支払われる。

(3)決済義務の金額もしくはタイミングが変動するかあるいは不確実な場合,非持分 構成要素の公正価値が,確率の加重値(期待値)の決済日と支払うべき金額を検討 することによって決定されること。たとえば,全体の規定を有する株式に係る期待 決済日で支払うべき金額が株価について偶発的であるために,報告実体は偶発負債 の確率の加重値の金額を決定しなければならない。

(4)非持分構成要素がその後に累積される場合(転換社債のフロアーの構成要素にお けるように),確率の加重値(期待値)の決済日が最初に決定され,次にその決済 日に支払うべき金額と決済期間の暗黙的利子率を計算するために用いられる。

原則8−持分内での区分表示

現金もしくは他の資産で決済される持分証券もしくは構成要素は,持分のなか で,永久的な持分証券もしくは他の持分証券で決済される持分証券とは区分した見 出しを付けて報告しなければならない。測定要件は原則9で記載されている。

原則9−事後測定:持分証券

現金もしくは他の資産で決済される持分証券もしくは構成要素は,各報告期間に 再測定される。再測定の属性は現在決済価値,すなわち,当該証券が報告日時点で その条項にしたがって決済されたならば支払われるであろう対価の公正価値であ る。他の持分証券は,他の会計基準が要求していない限り再測定されない。

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2(466

(13)

現在決済価値は,償還日に適用される方法で適用される償還フォーミュラの現在の結 果として定義される。現在決済価値は,報告実体が報告日に先立って償還について知っ ていたと仮定した場合の償還フォーミュラから生ずる金額である。その場合,報告実体 は,実際に当該証券を償還する場合に,実体がその事項をアレンジすると期待する同じ 方法で,その事項をアレンジする時間があると仮定する。

原則10−事後測定:非持分証券

決済において清算価値が変動する非金融商品もしくは構成要素は,各報告期間に 公正価値で再測定しなければならない。他の非持分証券もしくは構成要素もまた,

他の会計基準によって異なる測定属性が明確にされていない限り,各報告期間に公 正価値で再測定しなければならない。

(1)固定決済額の証券もしくは構成要素は,APBオピニオン第21号『受取勘定およ び支払勘定についての利息』を適用することによって事後測定される。しかし,転 換社債の非持分の構成要素は,暗黙的利子率にもとづいて,最初に決定された予想 決済日に支払うべき金額まで増価される。報告実体は,当審議会の懸案中の公正価 値オプション・プロジェクトのもとでは,非持分証券もしくは構成要素のように公 正価値を選択しうる。

(2)非持分構成要素および持分構成要素の再配分は,次のような環境のもとでのみ要 求される。すなわち,(a)予想期待決済日が経過し,非持分構成要素が発行済みの ままの場合,もしくは(b)早期に決済が行われるか,あるいは契約条項が変更さ れた場合である(原則13のもとでの消滅の会計処理を参照)。期待決済日は他のい かなる環境のもとでも再評価されない。

(3)他のすべての証券,たとえば,変動もしくは不確実な決済金額を有するデリバテ ィブおよび非持分構成要素は,公正価値で事後測定される(ただし,他のGAAP によって要求されている場合は,その限りでない)。

原則11−分類の再評価

証券は各報告日に,今までの分類がまだ適切かどうかを決定するために再評価さ れなければならない。消滅(もしくは,契約上の修正−原則13参照)がない限 り,再分類の結果として利得もしくは損失は認識されない。

(1)連結時および各報告日に,報告実体は分類目的のために証券もしくは連結された 証券のグループの実質的な特徴(明確および不明確)を再評価しなければならな

FASB負債証券と持分証券に係る会計処理プロジェクトの方向性(志賀) 467)2

(14)

い。

(2)再評価はある再分類を生じさせるかもしれないし,ある場合は,証券の再測定を もたらすかもしれない。資産,負債,あるいは現金もしくは他の資産で決済される 区分表示されている持分へ再分類される証券は,再分類の原因となった事象の発生 時点で,それらの証券がこれまでに分類されていた時に測定されていた属性で測定 しなければならない。再分類時に,債務の消滅もしくは変更(原則13のもとでの 消滅の会計処理の項参照)をもたらさない限り,いかなる利得・損失も認識されな い。証券が再分類される回数には制限はない。

原則12−連結財務諸表における分類

連結子会社の証券の分類は,連結財務諸表で再検討しなければならず,子会社の 個別財務諸表における分類とは異なりうる。

原則13−消滅の会計処理

実体は一貫して消滅の会計処理を適用しなければならない。消滅の会計処理は

(a)それぞれの契約条項事による,(b)契約条項外部の金額による,(c)持分証券 への転換による,(d)証券の変更による,決済を含む。証券が負債と持分構成要素 に分割されていて,その負債構成要素が事後に消滅もしくは変更された場合,その 事象は,当初の証券の両方の構成要素が新しい条項を持つ新しい証券を発行するこ とによって取り替えられたかのように計上される。その新しい証券は原則4にした がって修正された条項を検討することによって分割の評価がなされる。全体の消滅 金額が消滅日時点で負債の帳簿価額と異なる場合,負債と持分構成要素に再配分後 に残っている金額に関して,利得・損失が生じうる。

(1)消滅金額は新しい証券の支払額かあるいは公正価値のいずれかに等しい。

(2)分割された証券に係る消滅の会計処理は以下のように適用される。

(a)全体の消滅金額を負債と持分構成要素に配分する。

(b)以下の事項を使うことによって消滅日あるいは変更日に負債の構成要素の公正 価値を決定する。

衢)当初の期待期間からの残余決済期間,あるいは,それがゼロの場合,新たな 期待決済期間。

衫)残余期間末もしくは新たな期待決済期間末に支払うべき金額。

袁)その期間中の割引率

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4(468

(15)

(c)全体の消滅金額の残っている部分を持分に適用する。

(d)全体の消滅金額が現在の負債の帳簿価額と異なる場合,負債と持分の構成要素 に再配分した後に残っている金額が,消滅利得・損失になる。

(ただし,証券が次のいずれかで決済される場合,詳細な再配分ステップ(2)(a)−(d)

を適用する必要はない。すなわち,漓期待決済日と契約上の金額で決済される場合[そ のような場合,負債の帳簿価額は単純に消滅され,記録する利得・損失はない],もし くは滷消滅の会計処理が適用される日時点でその契約条項の範囲を越えて決済される場 合[そのような場合,支払額と現在の負債の帳簿価額との差額に等しい利得・損失が認 識される]である。)

所有主関係/決済アプローチの適用例

「目的と概要」は,所有主関係/決済アプローチの適用原則を,設例を用いて具体的 に示している。

1 設例1:株式決済および現金決済もありうるという特徴をもつ売建コール・オプション

実体は,取引相手に当該実体が1株を$10で売却する権利を与えるコール・オプショ ンを売り建てたとする。プレミアムは$2,行使価格は$10で,決済方法は現物決済(株 式)で,支配の変更があった場合は差金決済され

21

る。

連 結:当該証券は同じ約定の一部分として他の証券に組み入れられないことを仮定す る。

実質的な特徴(分類):明記されている特徴および明記されていない特徴を明確にする さいに,支配の変更の発生する可能性がほとんどないと決定されることを仮定する。し たがって,当該証券を記述するさいにその特徴は無視される(分類に影響を与えな い)。加えて,報告実体が当該証券の期待年数にわたって株式を引き渡す能力を持って いるということを決定したと仮定する。したがって,明記されていない現金決済の特徴 は無視され,分類には影響を与えない。

分 類:当該証券は持分である。それは直接的所有主持分証券で決済される間接的所有 主持分証券である。

初期測定:プレミアム($2)が持分で記録される。

事後測定:持分は再測定されない。

再評価と消滅の会計処理:当該証券の特徴は,それらが実質的であるか実質的でないか を決定するために,各報告日に再評価される。たとえば,報告実体が,もはや株式を引

────────────

Ibid.,p. 13.

FASB負債証券と持分証券に係る会計処理プロジェクトの方向性(志賀) 469)2

(16)

き渡す能力を持たないということ,あるいは支配の変更の可能性がありうるということ を決定した場合,当該証券全体は公正価値で測定され負債として再分類される。なぜな ら,決済金額が変動するからである。その再分類について,利得・損失は記録されな い。この例については消滅の会計処理について問題は生じない。なぜなら,持分で記録 されるか,あるいは,負債の場合,当該証券は公正価値で記録され消滅されるかのいず れかであるからである。

2 設例2:固定価格でプット可能な株式

実体は,固定価格$820(現金で決済)で株式を償還することを当該実体に要求できる 権利を有する株式を$742で取引相手に発行したとする。第5年度にプット可能とな

22

る。

連結と実質的特徴(分類):当該証券は同じ約定の一部分として他の証券に組み入れら れないことを仮定する。また,全ての特徴は実質的であるということを仮定する。

分 類:当該証券は負債要素と持分要素に区分される。当該証券は,取引相手の清算価 値でもって決済されることを含む,持分(永久証券)と負債(固定金額〈フロアー〉) の両方の結果を有している。

初期測定:最初に,非持分構成要素が公正価値で測定される。決済日に支払われる金額

($820)は,5年間,直線的債務率(6.1%)を用いて割り引かれる。受領額の残りの部 分は持分に配分される。その結果,負債に$607,持分に$135が配分される。

事後測定:債務の構成要素は,利子費用を計算するために,直線的債務率(6.1%)を 適用することによって期待決済日に支払われる元本額($820)まで増価させられる。持 分の構成要素は変更されないままである。

再評価と消滅の会計処理:たとえば,株価が$820以上になったために,そのプット・

オプションが第5年度に満期になった場合,負債はその繰越価格($820)で持分に再分 類される。

この例示において,株式が固定価格ではなく公正価値でプット可能であった場合,当 該証券は持分で区分されて報告される(それが直接的所有主持分証券であるための規準 に合致する場合)。事後において,当該株式は現在の決済金額で持分で再測定され,そ の変動は持分の勘定で記録される。

また,第5年度に,現在の株価が$820以下になった場合,報告実体が$820と現在の 株価との差額に等しい現金を保有者に支払わなければならない(差金決済)と仮定する と,当該取引は差金決済されるプット・オプションと株式の発行であり,負債と持分の 構成要素とに分割される。負債の清算価値はデリバティブ負債として記録され測定され

────────────

Ibid.,p. 14.

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6(470

(17)

る。たとえば,そのデリバティブの最初の公正価値が$100であったと仮定する。報告 実体は最初に,$100の負債と$642の持分を記録する。その負債は事後に公正価値で測 定される。

以上のように,「目的と概要」は,所有主関係/決済アプローチにもとづいて,証券 を構成要素に分割し,それぞれの構成要素ごとに分類・測定を行うというものである。

所有主関係/決済アプローチによって,持分として分類される証券を永久証券,直接的 所有主持分証券,間接的所有主持分証券に明確に規定しているが,証券が持分構成要素 と非持分構成要素から構成されている場合,持分構成要素の金額は,それ自体で測定さ れるのではなく,まず非持分構成要素の公正価値が決定され,当該証券全体の取引価格 から非持分構成要素に割り当てられた金額を控除することによって測定される。このこ とは,証券の構成要素しだいで,持分と負債の分類とその金額が弾力的になることを意 味する。

たとえば,設例1で示されている報告実体の株式についての売建コール・オプション の場合,決済形態の実質によって分類が異なることになる。すなわち,株式による現物 決済の場合は,間接的所有主持分証券として持分に分類され,差金決済の場合は間接的 所有主持分証券に該当しないために負債として分類される。また,設例2で示されてい るプット可能な株式を発行した場合,固定価格で償還されるか,公正価値で償還される かによって,分類とそれに割り当てられる金額が異なる。固定価格で償還される場合 は,当該証券の株式についての要素は永久証券として持分に分類され,固定価格による 償還の要素は所有主関係を構築しないために(間接的所有主持分証券ではないため に),負債として分類される。公正価値で償還される場合は,直接的所有主持分証券と して持分に分類される。

このように,「目的と概要」で展開された所有主関係/決済アプローチにもとづいた 分類・測定原則は,本質的には,証券の組み立て方によって持分と負債とに計上される 項目と金額を弾力的にすることを可能にすることに機能すると考えられる。

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参照

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