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医療的ケアの構造と課題に関する実証的研究

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Academic year: 2021

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     博士(教育学)    コリー紀代 学位論 文題名

医療的ケアの構造と課題に関する実証的研究

学位論文内容の要旨

    . 要  旨

  近 年 の 医 療 技 術 の 発 展 は 、 人 々 の 生 活 や 健 康 に 関 す る 選 択 肢 の 多 様 性 に 大 き く 影 響 し た 。 人 工 呼 吸 器 が 在 宅 用 に 簡 便 化 ・ 軽 量 化 さ れ 、 ノ ー マ ラ イ ゼ イ シ ョ ン や イ ン テ グ レ ー シ ョ ン と い っ た 支 援 の 概 念 変 化 、1990年 の 保 険 点 数 化 を 契 機 と し て 在 宅 へ も 普 及 し た 。 こ れ に よ り 、 人 工 呼 吸 器 装 着 児 ( 者 ) に と っ て は 、 そ れ ま で は 不 可 能 と さ れ て い た 自 立 生 活 の 実 現 と い う 選 択 肢 が 生 ま れ 、 通 学 、 就 職 等 の 社 会 参 加 やQOLの 向 上 に 寄 与 し た 。 一 方 で 、 人 工 呼 吸 器 装 着 児 ( 者 ) の 母 親 ( 主 た る ケ ア 提 供 者 ) は 、 子 ど も の 医 療 依 存 度 が高 い場 合 、祖 父母 や 親 族 と い っ た 身 近 な 社 会 資 源 が 存 在 し て も 、 医 療 的 ケ ア に 関 す る 知 識 や 技 術 の 不 足 や 法 的 制 約 に よ り 、 資 源 と し て 活 用 で き ず 燃 え 尽 き 症 候 群 に 陥 る 例 や 、 一 家 心 中 や 虐 待 に 至 っ た と い う 報 告 も あ る 。 核 家 族 化 や 家 族 の 孤 立 化 な ど 、 近 年 の 家 族 形 態 の 多 様 化 は そ れ に 拍 車 を か け て い る 。 教 育 、 医 療 、 福 祉 と 多 分 野 に わ た る こ の 問 題 は 、 問 題 の 設 定 が 関 係 者 間 で 異 な り 、 い ま だ に そ の 定 義 に つ い て コ ン セ ン サ ス は 得 ら れ て い な い 。 多 く の 先 行 研 究 に お い て 、 医 療 的 ケ ア 問 題 が 「 家 族 と 専 門 家 の 分 業 問 題 」 「 異 な る 専 門 家 間 の 分 業 問 題 」 と し て 矮 小 化 さ れ て お り 、 当 事 者 ・ 家 族 に と っ て の 本 質 的 な 問 題 が 看 過 さ れ る 懸 念 が あ る 。   本 論 文 の 目 的 は 、 医 療 的 ケ ア の 構 造 の 明 確 化 か ら 医 療 的 ケ ア 問 題 の 本 質 を 再 定 義 し 、 解 決 法 を 提 案 す る こ と で あ る 。 第1章 で は 、 在 宅 人 工 呼 吸 器 装 着 者 と 家 族 の ニ ー ド を 調 査 し 、 当 事 者 ・ 家 族 か ら 見 た 医 療 的 ケ ア 問 題 が 就 労 ・ 育 児 と い っ た 社 会 参 加 や 自 ら の 健 康 に 関 す る 自 己 決 定 ( 自 立 ) の 困 難 、 そ し て 自 立 概 念 の 遅 れ に 基 づ く 支 援 不 足 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 第2章 で は 、 第 一 次 的 な ケ ア 提 供 者 で あ る 家 族 に お け る 、 医 療 的 ケ ア を 生 活 に 組 み 入 れ る と い う ス ト レ ス に よ っ て 、 第 一 次 的 な ケ ア 提 供 者 で あ る 家 族 に 生 じ る 危 機 に つ い て 、 代 表 的 家 族 危 機 モ デ ル で あ るABC‑Xモ デ ル(R.Hill)を 道 具 的 に 用 い て 、 新 た な モ デ ル の 構 築 を 試 み た 。 睡 眠 不 足 や 腰 痛 と い っ た 身 体 的 疲 労 の ほ か 、 共 働 き の 制 限 に よ る 貧 困 や 閉 じ こ も り と い う 危 機 的 状 況 の み な ら ず 、NPOを 設 立 し 社 会 資 源 を 創 出 す る 家 族 が 少 数 で は あ る が 確 認 さ れ た こ と か ら 、 「 学 習 」 、 「 ケ ア 指 導 ・ 委 託 」 、 「 疲 労 と分 業に 関 する 認識 」 の3点 を 加 え た モ デ ル を 提 示 し た 。 第3章 で は 、 専 門 家 支 援 の 根 拠 と な る 家 族 の 適 応 理 論

( 段 階 説 、 価 値 転 換 説 、 慢 性 的 悲 嘆 説 ) の 歴 史 的 変 遷 を レ ビ ュ ー し た 結 果 か ら 、 既 存 の 適 応 理 論 の 多 く が 個 人 と 社 会 の 二 分 法 に 基 づ い て お り 、 そ の 結 果 、 現 在 の 専 門 的 支 援 も 個 人 主 義 的 と い う 限 界 を も っ こ と 、 自 己 の 社 会 化 と 社 会 の 学 習 を 包 含 し 、 相 互 作 用 の 視 点 を 加 え た 適 応 概 念 の 必 要 性 を 指 摘 し た 。 続 く 第4章 で は 、 医 療 技 術 の 普 及 に よ る 医 療 専 門 家 へ の 影 響 と 課 題 の 明 確 化 を 目 的 に 、 キ ャ ズ ム 論 くJ.Moore)を 用 い て 検 討 し た 。 人 工 呼 吸 器 の 普 及 を 妨 げ る キ ャ ズ ム ( 障 壁 ) と し て 、 @ 医 師 の 偏 在 、 ◎ 技 術 習 得 の 逆 転 現 象 、 ◎ 医 療 的 ケ ア の 教 育 に 関 す る 責 任 所 在 の 不 明 瞭 性 、 @ 実 施 可 能 な ケ ア 範 囲 が 狭 小 と い う4点 が 示 さ れ た 。 第5章 で は 、2012年 の 社 会 福 祉 士 ・ 介 護 福 祉 士 法 の 一 部 改 正 以 前 の 質 問 紙 調 査 に よ り 、 現 場 の 必 要 性 か ら す で に 気 管 内 吸 引 が 実 施 さ れ て い た こ と が 明 ら か と な っ た 。 医 学 的 管 理 の 必 要 性 に よ る 家 庭 内 へ の 医 療 文 化 の 侵 入 ( = 「 医 療 化 」 ) か ら 当 事 者 ・ 家 族 が 無 カ 化 し 、 ケ ア の 「 資 格 化 」 、 「 法 化 」 に よ る 特 別 支 援 学 校 教 員 、 理 学 療 法 士 ・ 作 業 療 法 士 ・ 言 語 聴 覚 士 等 の 専 門 職 も 無 カ 化 さ れ た 現 状 、 グ レ ー ゾ ー ン が 果 た す 役 割 に つ い て 確 認 さ れ た 。 医 療 的 ケ ア の 難 易 度 の 状 況 依 存 性 、 看 護 行 為 の 不 可 分 性 と い う 特 徴 を 踏 ま え た 法 制 度 設 計 が 必 要

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と 考 え ら れ た 。 第6章 で は 、 諸 外 国 に お け る 医 療 提 供 に 関 す る 法 制 度 比 較 を 行 い 、 ス ウ ェ ー デ ン の パ ー ソ ナ ル ・ ア シ ス タ ン ス(PA)制 度 に 関 す る 面 接 調 査 か ら は 、PAの 研 修 体 制 ・ 労 働 環 境 に 関 す る 整 備 が 本 邦 の 課 題 と し て 挙 げ ら れ た 。 豪 州 に お け る 業 務 委 託 制 度 の 参 与 観 察 、 米 英 豪 の 業 務 委 託 制 度 の 比 較 調 査 か ら は 、 状 況 の 考 慮 を 可 能 と す る 法 の 柔 軟 性 、 責 任 所 在 、PAの 社 会 的 地 位 に 関 す る 配 慮 が 伺 わ れ た 。 第7章 第1節 で は 、 第 一 次 ケ ア 提 供 者 で あ る 家 族 と い う 視 点 に 再 び 立 ち 返 り 、 母 親 を 対 象 に 面 接 調 査 し た 結 果 、 家 族 が ス ト レ ス に 対 し 家 庭 内 外 の 資 源 を 探 索 し 、 必 要 な 技 術 の 習 得 や 他 者 へ の 指 導 に よ っ て 資 源 を 創 出 し 、 ケ ア 全 体 を 見 渡 す こ と ( 抱 え 込 み ) に よ ル ケ ア マ ネ ジ メ ン ト 機 能 の 発 揮 を 変 化 さ せ る 家 族 の 存 在 が 明 ら か と な っ た 。 家 族 適 応 が 、 「 し て あ げ た い ケ ア 」 と 「 で き る ケ ア 」 の よ う な 葛 藤 や ケ ア の 実 施 に よ る 「 疲 労 感 対 自 己 成 長 」 と い う 両 義 性 と 、 個 々 の 家 族 構 成 員 の 適 応 過 程 の 異 速 性 、 重 層 的 に 進 行 す る 共 時 性 が 示 さ れ た 。 家 族 を 集 団 と し て み る 視 点 と そ の 家 族 に 所 属 す る 個 人 と し て み る 視 点 の 両 方 が 重 要 と 考 え ら れ た 。 第2節 で は 、 社 会 福 祉 士 ・ 介 護 福 祉 士 法 の 一 部 改 正 と い う 一 種 の 社 会 的 合 意 形 成 過 程 ( 社 会 の 学 習 ) に つ い て 、 当 事 者 団 体 を 含 め た 多 職 種 の 参 加 と 学 習 と い う 視 点 か ら 分 析 し 、 法 改 正 と い う 大 き な 社 会 的 変 革 を も た ら す 検 討 会 の よ う な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お い て は 、 社 会 の 縮 図 を 作 成 す る 視 点 、 参 加 者 の 意 見 の 同 等 性 の 確 保 、 決 定 事 項 の 効 カ や 会 合 の 開 催 頻 度 に 関 す る 合 意 が 、 当 事 者 ・ 家 族 、 専 門 家 等 ス テ ー ク ホ ル ダ ー の エ ン パ ワ メ ン ト に 必 須 と 考 え ら れ た 。 最 終 章 で は 、 以 上 の 分 析 か ら 浮 き 彫 り と な っ た 医 療 的 ケ ア の 構 造 を 図 示 し 、 本 論 文 中 で 抽 出 さ れ た 医 療 的 ケ ア 関 連 の 諸 ジ レ ン マ を 「 合 意 」 「 学 習 」 「 自 己 決 定 」 「 経 済 性 」 「 専 門 性 」 「 分 業 」 の6っ に 分 類 し た 。 さ ら に 、 医 療 技 術 の 発 展 を 契 機 と し て 生 じ る 当 事 者 ・ 家 族 、 専 門 家 の 学 習 と 、 社 会 レ ベ ル に お け る 問 題 の 定 義 化 や 解 決 法 に 関 す る 合 意 と い っ た 社 会 の 学 習 を 、 医 療 的 ケ ア に 関 す る 階 層 的 ・ 持 続 的 学 習 の 構 造 と し て 提 示 し た 。

  以 上 の 分 析 結 果 よ り 、 医 療 的 ケ ア は 「 あ る 医 療 技 術 の フ オ ー マ ル と イ ン フ オ ー マ ル 間 の 境 界 を 超 え る 普 及 速 度 に 対 し 、 関 連 専 門 職 種 に お け る 技 術 自 体 の 認 識 の 遅 れ 、 法 制 度 等 の 社 会 的 合 意 形 成 の 遅 れ 、 適 応 理 論 等 の 支 援 に 関 す る 理 論 や 自 立 概 念 等 の 概 念 発 達 の 遅 れ が 見 ら れ た 際 に 、 当 事 者 ・ 家 族 の 無 力 化 の み な ら ず 専 門 家 の 無 カ 化 が 生 じ 、 医 療 的 ケ ア 技 術 が 持 つ 特 徴 ( リ ス ク の 状 況 依 存 性 、 看 護 技 術 の 不 可 分 性 、 専 門 性 偏 重 ) と 、 そ れ ら を 解 決 す る た め の 社 会 的 合 意 形 成 の 困 難 性 が そ の 無 カ 化 の 程 度 を 左 右 す る と い う 構 造 を も つ 」 と 考 え ら れ 、 医 療 的 ケ ア 問 題 を 「 医 療 技 術 の 発 展 と い う 状 況 の 変 化 に よ っ て 生 じ た 当 事 者 ・ 家 族 、 専 門 家 の 無 カ 化 に 対 抗 す る 際 の 、 社 会 に お け る 学 習 の 組 織 化 に 係 る 参 加 と 相 互 行 為 の 継 続 に 関 す る 問 題 」 と 再 定 義 し た 。 医 療 的 ケ ア の 本 質 的 な 問 題 に は 、 多 く の ジ レ ン マ が 関 与 す る が 、 そ の 解 決 法 は 、 一 つ ー つ の ジ レ ン マ に 対 し 「 こ う あ る べ き 」 と い う 「 べ き 論 」 の 展 開 で は な く 、 個 人 レ ベ ル に お け る 自 己 決 定 の 尊 重 か ら 導 出 さ れ る と 考 え る と 、 @ 個 人 主 義 的 な 支 援 の 限 界 、 ◎ 技 術 開 発 を 含 め た 「 社 会 の 学 習 」 に 関 す る 持 続 性 の あ る シ ス テ ム の 未 整 備 、 ◎ 社 会 的 合 意 形 成 過 程 に お け る 専 門 性 偏 重 に よ る 排 除 と 抑 圧 的 な 法 律 制 定 、 の 3っ が 解 決 課 題 と 考 え ら れ た 。 そ れ ら3つ の 課 題 に 関 し 、 専 門 職 に よ る 組 織 的 支 援 、 当 事 者 ・ 家 族 と ケ ア 提 供 者 の エ ン パ ワ メ ン ト の た め の グ レ ー ゾ ー ン の 設 定 、PA等 の フ オ ー マ ル な ジ ェ ネ ラ リ ス ト の 役 割 承 認 を 解 決 策 と し て 提 起 し た 。

    以 上 。

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学位論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査

教授 准教授 教授 教授

宮崎 松田 佐川 西岡

学 位 論 文 題 名

隆志 康子

     正(保健科学研究院)

     健(保健科学研究院)

医療的ケアの構造と課題に関する実証的研究

   医療的ケアは、一般に医療施 設外で医師・看護師免許を持たない者が生活援助のために 行う気管内吸引等の医行為をい う。このような行為は、人工呼吸器等の医療技術の発展に より、家庭はもとより特別支援 学校においてもなされるようになり、その実態に合わせて 法制度も整備されてきた。しか し、従来の研究や政策対応は、医療的ケアを技術的な側面 から理解するために、医療的ケ アの展開が惹起する諸問題を、技術的・法的な安全の確保 問題や担い手間における責任体 制の構築問題に焦点を置いてとらえがちであった。その結 果、当事者をはじめ医療的ケア 関係者に生じている種々の困惑や困難の全体像が十分には 把握されず、逆に医療における 技術的合理性(D.Schon) が医 療的ケアの進展を制約する事 態を見過ごす可能性も生じている。

   それに対し、本論文は医療的 ケアを医療的根拠に基づくケア実践として理解し、その実 践の全体構造を把握することに より、医療的ケア問題の本質を明らかにし、以て医療的ケ アの 発 展に貢献することを目的としている。本論文の学術的意 義は以下の四点にある。

   第一に、これまで断片的にし か知られていなかった医療的ケアを要する子どもとその家 族の実態を人工呼吸器装着児( 者)の親を対象とした全国的調査によって明らかにした。

この調査では、1 )  0‑1 歳児の時点からの人工呼吸器装着者が半数に上り、親の医療的ケア 経験年数が長期にわたり、慢性的な疲労が多く見られること、2 ) 55.8 %の保護者に退職等 の働き方の変化が生じて世帯収入が減少し、共働き世帯は9.0 %に留まり(全国平均41.5 %)、

全く外出しない家族が19.3 %に 上るなど、家族に負担が集中していること、3 )週5 回の通 学が可能な者は46.7 %に留まっ ている一方で、教員も含めた各領域の専門職が子どもの自 立生 活 に向けた支援を行うことに対する保護者の期待があるこ と、4 )他方で、NPO を設 立し社会資源の創出を試みてい る母親が複数存在すること、などが確認されている。これ らの知見は、医療的ケアを要す る当事者・家族のニーズを把握する上での基盤を提供する

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も の と い え よ う 。

  第 二 に 、 医 療 的 ケ ア に 内 在 す る 諸 矛 盾 と そ の 相 互 関 連 を 明 ら か に し た 。 例 え ば 、 医 療 的 ケ ア に 関 わ る 技 術 の 普 及 過 程 を キ ャ ズ ム 論(J.Moore)に 基 づ き 検 討 し た 結 果 、 当 事 者 に 近 い 家 族 の ほ う が ケ ア 実 践 の 経 験 を 蓄 積 し 、 保 健 師 や へ ル パ ー な ど の 支 援 者 を 指 導 す る 立 場 に 立 っ と い う 「 技 術 習 得 の 逆 転 現 象 」 ( コ リ ー ) の 発 生 に よ っ て 、 在 宅 サ ー ビ ス の 専 門 的 支 援 が 遅 れ が ち に な る に も 関 わ ら ず 、 医 療 技 術 は エ ン ド ユ ー ザ ー で あ る 患 者 に 選 択 権 は な く 顧 客 た る 医 療 サ ー ビ ス 提 供 者 が 普 及 の 鍵 を 握 る こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。 家 族 の 熟 達 は 法 制 度 対 応 の 遅 れ の 結 果 で も あ る が 、 こ の よ う に 家 族 ・ 専 門 職 ・ 法 制 度 に わ た る 諸 次 元 の 矛 盾 を 相 互 に 関 連 づ け る こ と に よ り 、 医 療 的 ケ ア の 実 践 構 造 を 動 態 的 に 描 き 出 す こ と に 成 功 し て い る 。

  第 三 に 、 そ の よ う な 医 療 的 ケ ア の 実 践 構 造 を 把 握 す る た め の 分 析 枠 組 み を 提 起 し た 。 家 族 看 護 学 で 用 い ら れ る 分 析 枠 組 み の ー っ で あ る 家 族 ス ト レ ス 対 処 理 論(R.HilDお よ び 障 害 受 容 に 関 す る 諸 理 論 ( 段 階 説 ・ 価 値 転 換 論 ・ 慢 性 的 悲 哀 説 ・ 螺 旋 モ デ ル 論 ) を 参 照 し つ つ 、 そ れ ら の 枠 組 み は 家 族 が 有 す る 能 動 性 を 十 分 に 反 映 し て い な い こ と を 批 判 し 、 家 族 は ス ト レ ス を 抱 え 込 み な が ら も 、 技 術 の 習 得 ・ 家 庭 内 外 の 資 源 の 探 索 等 を 通 じ て 自 ら が 変 容 す る と 同 時 に 専 門 職 や 法 制 度 を 含 む 外 部 環 境 の 変 容 も 引 き 起 こ す こ と を 確 認 し た 上 で 、 両 者 の 間 の 相 互 作 用 を 含 む モ デ ル を 仮 説 的 に 提 起 し た 。 こ の モ デ ル に は 、 医 療 的 ケ ア 実 践 構 造 の 分 析 に 基 づ き 確 認 さ れ た 外 部 環 境 の 側 の 対 応 の 相 対 的 遅 延 現 象 や 家 族 ・ 専 門 家 の 無 カ 化 現 象 の 分 析 も 反 映 さ れ て お り 、 今 後 の 理 論 的 実 証 的 検 討 に 資 す る 試 論 的 枠 組 み と 言 え る 。   第 四 に 、 以 上 の 分 析 に 基 づ き 、 医 療 的 ケ ア 問 題 を 解 決 す る た め に は 学 習 の 組 織 化 が 重 要 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 医 療 的 ケ ア 問 題 の 根 底 に あ る 当 事 者 ・ 家 族 ・ 専 門 家 の 無 力 化 を も た ら す 実 践 上 の ジ レ ン マ に 対 抗 す る た め の 学 習 を 組 織 化 し 、 画 一 的 で は な く 、 そ れ ぞ れ の 問 題 状 況 に 対 応 し た 実 践 を 導 き 出 す よ う な 余 地 を 残 す 制 度 の 設 計 が 求 め ら れ る と い う 提 起 は 、 現 段 階 の 医 療 的 ケ ア の 状 況 に 照 ら し て 妥 当 で あ ろ う 。

  以 上 の よ う に 、 本 論 文 は 、 看 護 学 領 域 に 留 ま ら ず 、 対 人 援 助 に 関 わ る 制 度 的 な 境 界 領 域 で 起 き て い る 社 会 変 動 ( 専 門 性 や 自 立 概 念 の 再 定 義 な ど ) の 動 態 過 程 を 実 証 的 に 把 握 す る 上 で の 方 法 的 焦 点 を 明 ら か に す る 研 究 と し て 普 遍 的 な 意 義 を 有 す る 。 ま た 、 か か る 領 域 に お け る 学 習 の 課 題 や 過 程 を 実 証 的 に 把 握 す る た め の 方 法 的 仮 説 の 提 起 と し て も 意 義 が 認 め ら れ る 。 但 し 、 そ の 仮 説 の 検 証 や 導 入 が 試 み ら れ た 相 互 行 為 論 や 活 動 理 論 と の 接 合 は 今 後 の 課 題 と し て 残 さ れ て い る 。

  以 上 に 基 づ き 、 著 者 は 博 士 ( 教 育 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る 。

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参照

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