地球惑星科学 II
海洋学事始( 2/2 )・東日本大震災
北海道大学・環境科学院 藤原正智
http://wwwoa.ees.hokudai.ac.jp/~fuji/
1
海洋学事始( 2/2 )
• 第 1 回
– 海洋圏の概観
– 海洋の温度・塩分分布 – 海洋の循環
– 海氷・流氷 – 海洋観測
• 第 2 回
– 潮汐とそのメカニズム – 津波とそのメカニズム
参考文献・参考図書
・「地学図表」
・「地球惑星科学入門」第
23
・24
・25
章・「南極海ダイナミクスをめぐる地球の不思議」 青木茂、
C&R
研究所・「海洋学」 ポール・
R
・ピネ、東海大学出版会・「ハワイの波は南極から -海の波の不思議-」 永田豊、丸善
・“
Ocean Circulation ” 2nd Edition, The Open University
・「改訂版 流れの科学」 木村竜治、東海大学出版会 2
潮汐と潮流ー月と海の結びつき 1/2
[地学図表より]
・宮島・厳島神社
台風+大潮による被害: 2004.9, 1999.9, 1991.9 ( 100 年以上被害なし?)
3潮汐と潮流ー月と海の結びつき 2/2
[図は全て、地学図表より]
・起潮力により、月に面した側と月と反対側の海水が 上空へ引っ張られる(1日に2周期となる)
・さらに、太陽による引力も寄与する(大潮と小潮)
・実際には、複雑な海陸分布により、海域により 特徴的な日変化を示す
4
http://www.data.kishou.go.jp/db/tide/dbindex.html 5
・ グラフの縦軸は潮位、横軸は日付
・ 毎時潮位は観測基準面上の値で表示
・ 図中の点線は観測基準面の標高
函館
大船渡
小名浜 毎時潮位グラフ 2011 年 3 月
注意:
図に示されているのは、平滑化した潮 位(平滑値)。観測された潮位データの 瞬間値から副振動や津波、波浪などの 短周期変動を除去したもの。
6 http://www.data.kishou.go.jp/db/tide/genbo/explanation.html
「海洋学」より
津波( Tsunami )
[図は全て、地学図表より]・津波と風浪・うねりは 力学的に異なる
・津波の速さは:
200m/s @ h=4km
(時速
700km
)100m/s @ h=1km 10m/s @ h=10m
(
Jet
機:離陸時300km/h
巡航時900km/h
)・海岸に近づき浅くなると、
遅くなるが、エネルギー は保存するため、波高 が数
10m
などと高くなる チリ地震と三陸津波: (1)地球の裏側からの津波は一点に集中。 (2)ハワイ諸島で屈折を起こし、ちょうど三陸沖に集中。
(3)チリの海岸線に垂直な方向に三陸海岸。 7http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq26.html
8http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/know/tsuna mi/generation.html
アラスカにある津波警戒 標識。4度目の波が一番 高く描かれている(wiki)
東日本大震災
- 大気・陸面・海洋の放射能汚染を中心として -
• 地震
• 津波
• 東京電力福島第一原子力発電所の事故
• 放射性物質、単位、人体影響
• 大気拡散・地表沈着過程
– 背景知識として:エアロゾル粒子
– 大気中の人工放射性核種の降下量(フォールアウト)の変遷 – チェルノブイリ事故
– 福島第一事故:大気・陸面汚染
• 海洋拡散・沈降過程
– 福島第一以前の状況
– 福島第一事故により海洋に放出された人工放射性核種 – 海洋汚染:今後どうなっていくか
9
地震
島崎邦彦, Japan Geoscience Letters, No. 2, 2011 10
http://www2.jpgu.org/publication/jgl/JGL-Vol7-2.pdf
2011 年 3 月 11 日 14:46JST M 9.0
長期予測対象海域個別に大地震が起こると予測
今回、「連動」して M9.0
にも達した今後
5
~10
年の間、地震活動が活発化するであろう津波
11
http://nctr.pmel.noaa.gov/honshu20110311/
•
過去の日本国内における巨大津波の痕跡に関する情報が、本講義資料最後の「参考情報」中にあります。•
東北~北関東における浸水範囲概況図(2.5
万分の1
図/10
万分の1
図)は、国土地理院のホームページにあります: http://www.gsi.go.jp/BOUSAI/h23_tohoku.html
ムービー honshu_propagation_animation_v1.mp4
東京電力福島第一原子力発電所の事故
東京電力「東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況」 12
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/
「地震及び津波の発生と事故の概要
(685KB)
[2011
年12
月7日]」より3/12: 1
号機水素爆発か3/14: 3
号機水素爆発か3/15: 4
号機建屋損傷東京電力・プレスリリースより
「福島第一原子力発電所プラント 状況等のお知らせ(4月1日・2日)」
藤原注:
他に、ベント、圧力抑 制プールの爆発、冷却 水漏れなどが生じ、放 射性物質が放出された。
事故原因は、「津波に よる浸水」なのか、「地 震による損傷」なのか。
東京電力福島第一原子力発電所の事故
13 Graph of radiation release from the Fukushima I Nuclear Power Plant following the 2011 Tōhoku earthquake and tsunami, compared to historic events and standards. Updated to show time series geographical effects, local site map, and news reporting. See
commentary on this image.
[By Rama C. Hoetzlein (Rchoetzlein at en.wikipedia), through Wikipedia:福島第一原子力発電所事故]
東京電力福島第一原子力発電所の事故
14
http://d.hatena.ne.jp/oxon/touch/20110318/1300381733
実験系高エネルギー宇宙物理の若手研究者・奥村曉氏による放射線量率測定データの可視化サイト
(
2011.11.24
更新終了)次のサイトも参考になります: 放射線量モニターまとめページ
http://sites.google.com/site/radmonitor311/
500 mSv
(積算値): (全身被ばく)リンパ球の減少100 mSv
(積算値): 通常の緊急作業の上限2.4 mSv/year:
世界平均・1
人当たりの自然放射線(日本:1.5mSv/year
)(放射線量と健康被害の関係については、本講義資料最後の「参考情報」にも)
放射性物質、単位、人体影響
電気事業連合会「原子力・エネルギー図面集
2011
」 15http://www.fepc.or.jp/library/publication/pamphlet/nuclear/zumenshu/
アルファ線:
高い運動エネルギーを持 つヘリウム
4
原子核(陽子2
、 中性子2
)の流れ。ベータ線:
電子または陽電子の流れ
ガンマ線:
波長がおよそ
10 pm
より も短い電磁波(
p=
ピコ=10
-12)エックス線:
波長が
1pm - 10nm
程度 の電磁波(
n=
ナノ=10
-9)中性子線:
中性子の粒子線
cf.
外部被曝と内部被曝放射性物質、単位、人体影響
西條敏美「単位の成り立ち」恒星社厚生閣 より 16
放射能や放射線の単位は 分かりにくい
・人名が使われている
・新旧
2
つの単位が存在1
ベクレル:1
秒間に1
個の原子核が 崩壊して放射線を放つ 放射能の量1
グレイ:照射した放射線のエネル ギーが吸収される程度で はかる、放射線の量
1 kg
の物質に1 J
吸収さ れる場合を基準ととる1
シーベルト:放射線が生物に与える影 響は、吸収された放射線 の量だけでは決まらない。
種類により線質係数(局所 的なエネルギーの大きさ=
危険度)
X
線、γ
線、β
線:1
中性子線:
10
、α
線:20
関連する放射性核種の性質
• 原子炉・原子爆弾における核分裂連鎖反応(天然ウラン(原子番号92)の中のウラン235を利用する):
–
235U + n(中性子)
236U A + B + 2n~3n(高速中性子) (A, Bは様々な核分裂生成物)
• ヨウ素(原子番号53、同位体37種、
127Iのみ安定)
–
ヨウ素131(131I)は半減期8日。
– β崩壊(電子)してキセノン131(
131Xe)になる。γ線(波長<10pmの電磁波)が放出される。
– β線による甲状腺被ばくが問題。
• セシウム(原子番号55、同位体39種、
133Cs のみ安定)
–
セシウム137 (137Cs)は半減期30年。セシウム134(
134Cs )は2.0年。(
134Csで福島第一起源か否か判定可能 ) –
137Cs はβ崩壊して
137mBaになる。γ線が放出される。
134Cs は
134Baになる。
–
137Csは体内に100~200日間(腸、肝臓、筋肉(カリウムと置換)、腎臓)。
• ストロンチウム(原子番号38、同位体16種)
–
ストロンチウム90(90Sr)は半減期29年。
– β崩壊(電子・ニュートリノ放出)して
90Yとなる。
–
カルシウムの代わりに骨に蓄積されて健康被害を引き起こす。• プルトニウム(原子番号94、同位体239, 241等複数)
–
プルトニウム239(239Pu)は半減期約2万4000年(α崩壊)
–
湿気があると自然発火。α
崩壊するので内部被曝による有害性が大きい–
特に空気中に浮遊するPu化合物粒子の吸引により肺に入った場合、強い発がん性を示す• Wikipediaより。 原子力発電所から発生する放射性核種には他にも様々なものがあります。本講義資料最後の「参考情報」中に簡単に
まとめてあります。(「原子力発電所から発生する放射性核種」)
大気拡散・地表沈着過程
背景知識として: エアロゾル粒子(微粒子)
• エアロゾル粒子とは: 大気中の微粒子(直径 1nm ~ 1μm ~ 10μm )
• 土壌粒子(鉱物、有機物)(e.g., 黄砂)、海塩粒子、火山粒子、汚染粒子等々 (硫酸塩、硝酸塩、有機炭素、アンモニア等々) cf. 花粉~30μm
• 気象・気候への役割:
• 雲の凝結核(水蒸気のみでは 1μm の水滴(最小の雲粒)でも生成しにくい)
• 短波放射を散乱
• 組成等によっては短波放射を吸収
• 温室効果あり(熱放射を出す)
• 雲を通して間接的に影響 (. . .が増えると)
1 :雲粒子の粒径減・数大 表面積大
短波放射をより多く散乱(地球を冷却)
2: … 重力落下しにくくなり雲の寿命延びる
(図中のバー:上2μm、下0.4μm)
[図は全て、小倉、一般気象学]
n=
ナノ=10
-9μ=
マイクロ・ミクロン=10
-6大気中の人工放射性核種の 降下量(フォールアウト)の変遷
19
気象庁気象研究所による「環境における人工放射能の研究」(過去の研究のまとめと最新研究結果の紹介)
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ge/2011Artifi_Radio_report/index.html 2011
年3
月以降の137Cs
月間降下量は、暫定値(図の説明の要約) 暫定値は、試料の一部を水のまま取り分けて測定した値を元に算出。セシウムは、液相と固相に分配してしまうの で、正しい値は試料全体の蒸発濃縮ができないと求められない状況。そのため、プロットは過小評価と考えられる。また、134Csがほぼ 等量降下しているので、放射性セシウム全体ではこのプロットのほぼ倍量となる。暫定値でなく正値とするには、蒸発濃縮した試料での 計測が必要となるため、もう少し作業の時間が必要。蒸発濃縮作業工程では、放射能強度が従来の試料にくらべ桁違いに大きいため、
周囲の汚染や作業者の被ばくにも注意を払いながら進めている。
また、福島事故以前の試料については、実験室環境および測定室環境、測定機器のバックグラウンドなどが大幅に上昇してしまったた め、蒸発濃縮工程においても試料の汚染の問題が発生する。そのため、当面、観測値を求めること自体が困難。
137
Cs
総量換算で10 PBq
以上の放出、2
割 が日本の国土に、8
割 は北太平洋に降下1945
:ヒロシマ・ナガサキ1954.3.1
:米国によるビキニ環礁で の水爆実験により、危険水域外にい た第五福竜丸がいわゆる死の灰に より被曝1962:キューバ危機 1963:米・英・ソ「部分 的核実験禁止条約」調
印・111ヶ国調印し発効
1980
:最後の中国大気圏核実験 黄砂による、地上に降下し た放射性核種 の再浮遊か。
(
P=
ペタ=10
15)チェルノブイリ事故後の セシウム 137 の地表沈着量
http://www.unscear.org/unscear/en/chernobylmaps.html 20
北海道の面 積はアイスラ ンドと同程度
1986.4.26 1:23(UTC+3) ソビエト連邦(現ウクライナ)
チェルノブイリ原子力発電所4号炉
翌日スウェーデンで高線量の放射 性物質が検出され明るみに。
150
万Bq/m
220
万Bq/m
2Takemura et al., SOLA, Vol. 7, pp.101-104 (2011) . 21
http://www.jstage.jst.go.jp/article/sola/7/0/7_101/_article/-char/ja/
http://sprintars.riam.kyushu-u.ac.jp/toshi/indexj.html http://weather.is.kochi-u.ac.jp/wiki/archive
福島第一事故:大気・陸面汚染
福島第一事故:大気・陸面汚染
22
全球大気微粒子輸送モデルを用いた数値シミュレーション。
(放射性物質ではなく一般的な微粒子の大気輸送を再現)
3
月14
日の大気状態から、原発近傍高度50 m
から一定 量の仮想微粒子を放出させ続ける数値実験を開始。図: 北半球における地表付近の微粒子濃度の分布を、原 発近傍の微粒子濃度を
1
とした相対値として示す。放出開始から
4
日後: 米国西海岸に到達、そこでの濃度 は発生源付近の「1
億分の1
」程度まで低下。放出開始から
7
日後: アイスランド周辺に到達。放出開始から
9
日後: スイスの上空に到達。
各国からの発表のタイミングとほぼ一致。原発からは
3
月14
〜16
日に特に大量の放射性物質が放 出されたが,偶然にも14
〜15
日に東日本を通過した低気 圧により強い上昇気流がもたらされたために、放射性物質 が地表付近から強い偏西風ジェット気流の高さにまで巻き 上げられ、その後ジェット気流により北半球全域に数日~10
日程度で移流された。なお,原発北西方向等へ大量の放射性物質を運んだ地表 付近の南東風も、この低気圧がもたらしたものである。
Takemura et al., “A Numerical Simulation of Global Transport of Atmospheric Particles Emitted from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant”, SOLA, Vol. 7, pp.101-104 (2011) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/sola/7/0/7_101/_article/-char/ja/
http://sprintars.riam.kyushu-u.ac.jp/toshi/indexj.html
23
福島第一事故:大気・陸面汚染
気象庁気象研究所による「環境における人工放射能の研究」(過去の研究のまとめと最新研究結果の紹介)
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ge/2011Artifi_Radio_report/index.html
図: つくばにおける人工放射性核種の大気濃度変動(注:粒子状物質を捕集・分析。気体状のヨウ素は今回捕集さ れていない)と、トレーサー移流・拡散モデル計算結果(131
I
の単位量を毎時連続的に発生、移流・拡散のみを計算、2011
年4
月時点での簡易計算)検出された放射性核種は:
99
Mo-
99mTc ( T
1/2: 65.9 時間)
129m
Te-
129Te ( T
1/2: 33.6 日)
132
Te-
132I ( T
1/2: 3.20 日)
131
I ( T
1/2: 8.02 日)
133
I ( T
1/2: 20.8 時間)
134
Cs ( T
1/2: 2.07 年)
136
Cs ( T
1/2: 13.2 日)
137
Cs ( T
1/2: 30.0 年)
であった。
24 右図: 日本地球惑星科学連合
福島第一原子力発電所事故に関わる環境問題フォーラム http://157.82.240.167/fukushima/index.html 左図:
文部科学省 放射線モニタリング情報(2011.12.16発表)
測定実施日:2011年10月22日~11月5日
ヘリコプターに高感度で大型の放射線検出器を搭載し、地上に蓄 積した放射性物質からのガンマ線を測定。航空機下部の直径約 300m~600m(飛行高度により変化)の円内の測定値を平均化 したもの。
http://radioactivity.mext.go.jp/
放射性物質の輸送と沈着
・低気圧に伴うガスおよびエアロゾル 粒子の水平・鉛直輸送
・乱流による降下・地表沈着
・エアロゾル粒子が降水とともに降下
・地形の影響(風、降水)
セシウム沈着量への変換:
ヘリコプターで測定されたガンマ線のエネ ルギースペクトルの特性と、セシウム現場 測定による空間線量率との相関関係を基 に算出。ヘリコプター測定のない地点は内 挿している。
100万Bq/m2 30万Bq/m2
25
福島第一事故:大気・陸面汚染
ヨウ素 131
(
8
割がガス、2
割が粒子)セシウム 137
(全て粒径
1μm
の粒子)3
次元化学輸送モデルを用いたシミュレーション 大気中の放射性物質の、移流、拡散、放出、乾性沈着(乱流による地表への沈着:ガスと粒子)、湿性沈着
(降水に取り込まれて沈着:特に粒子)、放射性崩壊、を計算。
ホットスポットはどうして出来た?
(1) 3/15~16
3/14~15
に本州南岸を低気圧通過。直後に北風。放射性物質が関東地方に流入。しかし降水はな かったため、セシウムの湿性沈着は少なかった。
3/15
午後に風向が南東よりに変わり、関東平野上 空の放射性物質は関東北西部山岳域~長野北部 へ。夕方から関東山岳域で雨。これにより、関東北 西部山岳域に広範囲にわたるセシウムのホットス ポットが形成された。また、福島県では
3/15
夜から雨・雪。これにより、原発北西部のホットスポットが形成された。
(2) 3/20~22
低気圧の通過に伴い、
3/20
の昼過ぎから南風。放 射性物質は、宮城から岩手南部へ。夕方頃から東 北各県で降水。これにより宮城北部・岩手南部に ホットスポットを形成。(稲わらの汚染の原因か。)3/20
深夜から、風が北よりに反転。降水により、茨 城南部・千葉北西部にホットスポットを形成。(その 後、関東の水道水から放射性物質が検出された。)(大原利眞、他、「福島原発から大気中に放出された 放射性物質はどこに、どのように落ちたか?」、
科学、2011年12月号)
海洋拡散・沈降過程 福島第一以前の状況
26
気象庁気象研究所による「環境における人工放射能の研究」(過去の研究のまとめと最新研究結果の紹介)
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ge/2011Artifi_Radio_report/index.html
・
2002
年~2007
年に気象庁および海洋研究 開発機構の研究船による太平洋域の(大変 微量な)人工放射性核種の高感度測定 がおこなわれていた。・その結果、太平洋の北半球側、深さ
400
~600m
付近に137Cs
の濃度極大が広く広がって いることが初めて分かった。・これは、
1950
年代後半から1960
年代前半の大規模核実験に起源を持つ137Cs
が、海面に降下したあと
40
年かけて、海洋内部の輸送過程(中央モード水)に従って 海洋内部へ輸送されたためである。・このように、海洋学では、循環・流れの研究に人工物質(フロン、放射性物質等)を「トレーサー」として用いている。
福島第一事故により
海洋に放出された人工放射性核種
27
気象庁気象研究所による「環境における人工放射能の研究」(過去の研究のまとめと最新研究結果の紹介)
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ge/2011Artifi_Radio_report/index.html
図: 福島第一原発近傍の
137Cs の濃度変化
事故に際し大気中に放出された放射能のかなりの部分(
8
割 ほど)が直接海上に降下したと推測される。さらに、高濃度の放射能で汚染された水が海洋に直接漏えい している。(藤原注:左図は、主に“海洋への直接漏えい”の様 子をとらえていると考えられる。)
事故前の同海域での137
Cs
濃度は1.5
~2Bq m
-3であった。従って、福島第一近傍の海域では、
7
月末時点で比較して およそ三桁大きい値である。福島事故現場から
100
~1000km
離れた西部北太平洋 での137Cs
濃度は10
1~10
3Bq m
-3 となっており(藤原注:測定時期が明示されていない)、事故前に比べて
1
~2
桁 高い状態。さらに、
3000km
以上に離れている日付変更線を越えた 東太平洋でもわずかではあるが134Cs
が1 Bq m
-3程度 検出されるとともに、137Cs
が事故前から2
倍程度に増加 していた(藤原注:測定時期が明示されていない)。福島第一事故により
海洋に放出された人工放射性核種
28
気象庁気象研究所による「環境における人工放射能の研究」(過去の研究のまとめと最新研究結果の紹介)
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ge/2011Artifi_Radio_report/index.html
図: 沿岸海洋モデルを用いて福島 事故で放出された137
Cs
の再現シ ミュレーションを行った結果。福島第一原発の近傍
2
点での観測 結果とシミュレーション結果とを合 わせることによって、漏えい量を推 定した。その結果、大きな直接漏え いは3
月26
日から4
月6
日までほぼ 一定の割合で生じ、その後大幅に 減少しているが8
月末の時点で漏え い量はゼロにはなっていない。漏え い量が大きい5
月末までの漏えい 量は3.5 ± 0.7 PBq
であると見積 もられた。福島沖に漏洩した137
Cs
は、図に示 すように渦などの影響によって複雑 な挙動を示すが、主には沿岸に 沿って南下し、黒潮に沿って東へ拡 散する。その後、亜熱帯循環に沿っ て東に向かった後海洋内部へ輸送 される。図: 表層137
Cs
濃度のシミュレーション結果、(a) 4
月8
日、(b) 5
月24
日 注意: ここでの計算・議論は海洋直接漏えいに関してのみ。これとは別に、大気経由で海洋に入ったものもある。
海洋汚染:今後どうなっていくか
29 気象庁の海流に関する解説ページ: http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/db/kaikyo/knowledge/index.html
海洋表層の循環の模式図
(北半球冬季における循環を模式化)
本州南岸を流れる黒潮の典型的な流路 1:非大蛇行接岸流路 2:非大蛇行離岸流路
3:大蛇行流路 親潮の流れ
気象庁の海流に関する解説ページ: 30
http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/db/kaikyo/knowledge/index.html
上左図: 親潮の南限緯度の季節変化
気象庁の旬毎の表層水温解析値による、東経141度~148度における親潮(深さ 100mの水温が5℃以下)の南限緯度の季節変化を表す。太い黒線は平年の位置 (1971~2000年の平均)で、緑の部分は平年並の範囲(1971年~2000年の30年 間の南限位置を南から順に並べて、上位と下位1/3を除いた中央1/3の範囲)。黄色 は、1971~2000年の30年間の親潮の南限位置の、上位1/10および下位1/10を除 いた範囲を示す。
下左図:
2002
年7
月上旬の深さ100m
の水温図( ℃ )
下右図:
2002
年7
月上旬の東経144
度線に沿った水温断面図( ℃ )
この断面図は、函館海洋気象台高風丸による観測結果に基づく。
31 日本地球惑星科学連合
福島第一原子力発電所事故に関わる環境問題フォーラム http://157.82.240.167/fukushima/index.html
海洋汚染:今後どうなっていくか
(海産物・海洋生態系への影響は今後数年以上注視していく必要があるでしょう。)
(鉛直混合の3分の1~半分は、
潮汐に起源を持つ内部重力波が担っていると考えられている。)
中村知裕「潮汐混合と熱塩循環:千島列島の役割」、細氷、2006 http://www.msj-hokkaido.jp/saihyo.html
(上左図および以下の情報: 植松光夫、「福島原発による 海洋汚染」、科学、2011年9月号)
・ 原発放水口付近の濃度が
4
月下旬以降7
月末に至 るまで目立った減少を示していないことは、地下水など を通した流出が生じている可能性を示唆する。・ 海洋直接汚染で過去最大のものは、英国北西部・
セラフィールド核燃料再処理施設からの放射性物質廃 液の海洋への放出。
40
年にわたり続き、放出総量は41 PBq
(P=10
15)。福島原発はこれは超えていない。・ チェルノブイリ事故の際には、海水放射能濃度の増 加から半年遅れて魚類に濃縮のピークが見られた。
今日のまとめ
• 海洋学事始( 2/2 )
– 潮汐とそのメカニズム – 津波とそのメカニズム
• 東日本大震災- 大気・陸面・海洋の放射能汚染を中心として -
• 地震
• 津波
• 東京電力福島第一原子力発電所の事故
• 放射性物質、単位、人体影響
• 大気拡散・地表沈着過程
– 背景知識として:エアロゾル粒子
– 大気中の人工放射性核種の降下量(フォールアウト)の変遷 – チェルノブイリ事故
– 福島第一事故:大気・陸面汚染
• 海洋拡散・沈降過程
– 福島第一以前の状況
– 福島第一事故により海洋に放出された人工放射性核種 – 海洋汚染:今後どうなっていくか
32
参考情報
1. 過去の日本国内における巨大津波の痕跡 に関する情報
2. 放射線量と健康被害の関係
3. 原子力発電所から発生する放射性核種 4. その他参考情報
33
34
巨大津波、三陸で6千年に6回か … 地層に痕跡
宮城県気仙沼市の海岸で、10メートル級の巨大津波が過去約6000年間に6回 襲来していたとみられる痕跡を、北海道大の平川一臣・特任教授(地形学)らが発見 した。
三陸地方の太平洋沖合では、東日本大震災のようなマグニチュード(M)9級の巨 大地震が1000年に1回の頻度で繰り返し起きていた可能性を示すもので、国や自 治体の防災計画の見直しに役立ちそうだ。
津波は海砂や大きな石、貝殻などを運び、これらが陸地に堆積する。平川特任教 授らは今年4~5月に、気仙沼市大谷海岸の崖で、過去約6000年分の地層につい て津波堆積物の有無を調べた。崖は標高約3メートルの位置にあり、数メートルの津 波では堆積物は生じないという。
(
2011
年8
月22
日01
時09
分 読売新聞)(津波堆積物の層の年代は今後精査して決定する。
869
年とは「貞観地震」が起こった年で、津波で多賀城下で千人が溺死したという記録が残っている。)
35
静岡や北海道、四国も 各地で 巨大津波の痕跡見つかる
静岡大や北大が調査 国の想 定上回る
2011/8/21 日本経済新聞
太平洋沿岸各地の地層で、国の想定を 上回る巨大津波の痕跡が相次いで見つ かった。静岡大などは東海地震としては 最大級の津波が静岡市に来ていたこと を確認。北海道大や産業技術総合研究 所、高知大はそれぞれ北海道、東北、
四国の沿岸で複数地震の連動による未 知の津波が押し寄せていたことを突き 止めた。防災計画見直しの参考になり そうだ。
(中略)
中央防災会議は今後の被害想定では、
津波堆積物や古文書の調査などをもと に最大級の地震・津波を検討するよう求 めている。国や自治体の防災計画見直 しが進んでおり、関西大の河田恵昭教 授は「最悪のシナリオを考えるうえで、
過去の津波調査は重要だ」としている。
西條敏美「単位の成り立ち」恒星社厚生閣 より 電気事業連合会「原子力・エネルギー図面集2011」 36
http://www.fepc.or.jp/library/publication/pamphlet/nuclear/zumenshu/
104 mSv
放射線量と
健康被害の関係
原子力発電所から発生する放射性核種
• 天然ウランには、核分裂を簡単に起こすウラン 235 と、起こさない ウラン 234 、ウラン 238 が含まれている。
• ウラン 235 に中性子を吸収させると、ウラン 236 が出来、それが分 裂して高速中性子が生じる。以下に、分裂反応の 2 つの例を示す:
• 235 U + n( 中性子 ) 236 U 95 Y + 139 I + 2n( 高速中性子 )
• 235 U + n ( 中性子 ) 236 U 92 Kr + 141 Ba + 3n ( 高速中性子 )
• (前者の場合、 質量欠損によるエネルギーは、E = mc 2 = ウラン 1 原子あたり 200 MeV, 3.2 × 10 -11 J )
• 放出された高速中性子が別のウラン 235 に再び吸収され、新たな 核分裂反応を引き起こすことを核分裂連鎖反応という。
• 核分裂連鎖反応をゆっくりと進行させ、持続的にエネルギーを取り 出すことに成功したのが原子炉
• 核分裂連鎖反応を高速で進行させ、膨大なエネルギーを一瞬のう ちに取り出すのが原子爆弾
• ( Wikipedia: 核分裂反応 2011.12.15 より)
3738
生成物 収率 半減期
セシウム133 (*) 6.79% 安定 ヨウ素135 (**) 6.33% 6.57h ジルコニウム93 6.30% 1.53My セシウム137 6.09% 30.17y テクネチウム99 6.05% 211ky ストロンチウム90 5.75% 28.9y ヨウ素131 2.83% 8.02d プロメチウム 147 2.27% 2.62y
サマリウム 149 1.09% 安定(毒物)
ヨウ素129 0.66% 15.7My
原子力発電所から発生する放射性核種
ウラン 235 の核分裂による主な核分裂生成物
(総じて陽子数と中性子数との均衡を欠いており放射能を持つ)
(Wikipedia: 核分裂反応 2011.12.15 より)
(*) 一部は中性子捕獲により半減期約 2 年のセシウム 134 になる (**) 崩壊で生成するキセノン 135 は原子炉でもっとも主要な 毒物質で 10-50% が中性子獲得によりキセノン 136 になり、
残りは半減期 9.14h でセシウム 135 になる。
プルトニウム、飯舘村まで飛散=原発事故で、土壌から検出-文科省
文部科学省は30日、福島第1原発周辺で行った土壌調査の結果、原発事故で飛散した とみられるプルトニウムが福島県双葉町、浪江町と飯館村の計6カ所から検出されたと発表 した。原発敷地外での検出は初めて。沈着量はいずれも、過去に海外で行われた核実験で 日本各地に降ったプルトニウムの測定値の範囲に収まっているという。
飯舘村の1カ所は原発から40キロ以上離れていた。プルトニウムは粒子が重く、遠くまで 飛散しにくいとされ<藤原注:これは誤解を招きやすい表現。微粒子の形で(黄砂や花粉の ように)浮遊する。>、爆発を伴った事故の大きさが改めて浮き彫りになった。
調査では6月6日~7月8日、福島第1原発から80キロ圏内にある市町村の100カ所で 土壌を採取。プルトニウムなどの量を分析した。
その結果、3町村の各2カ所で1平方メートル当たり最大4.0ベクレルのプルトニウム23 8を検出した。事故以前の測定値に比べ、同239、同240に対する比率が大きいことから、
今回の事故で新たな沈着があったと判断した。
沈着量が最も大きかった浪江町の地点で、仮に50年間 滞在した場合、同238の被ばく線量は0.027ミリシーベルト にとどまるという。
また、45カ所ではストロンチウム89を検出。半減期が 約50.5日と短いことから、事故後に沈着したとみられる。
( 2011/09/30-22:36 )
時事ドットコム:
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2011093000750&j4
その他参考情報
• 北大における大気放射線測定:
– http://geos.ees.hokudai.ac.jp/eesatom/index.html
• 放射線量モニターまとめページ:
– http://sites.google.com/site/radmonitor311/
• 気象庁・環境緊急対応地区特別気象センター:
– http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/kokusai_eer.html
• 原子力安全委員会・緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム( SPEEDI ):
– http://www.nsc.go.jp/mext_speedi/index.html – http://www.nsc.go.jp/info/110323_top_siryo.pdf
– http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/kanhou_shishin/kanhou_shishin003/siryo3-9-2.pdf
• ヒロシマ・ナガサキ
–
財団法人 放射線影響研究所(放影研)日米共同研究機構http://www.rerf.or.jp/index_j.html – Q&A
よくある質問–
広島・長崎にはまだ放射能が残っているのですか?http://www.rerf.or.jp/general/qa/qa12.html –
チェルノブイリ事故では放射能汚染が深刻でしたが、なぜ原爆の場合にはそれほどでもなかったのでしょうか?
http://www.rerf.or.jp/general/qa/qa12det.html
41
2009 年 4 月 6 日 14:20 頃 2009 年 4 月 6 日 17:20 頃
http://www.miyajima.or.jp/index.html