§2. 黒体放射と
ステファン・ボルツマンの法則
2-1. 放射 (radiation) に関する基本 的な事柄 (復習)
•
電磁波 “
波”
–
波長𝜆
、 振動数𝜈
、 光の速さ𝑐 = 𝜈𝜆
– 𝑐
は一定なので(
真空中)
、𝜆
がわかると、ν
もわかる宇宙に存在するすべての物体はその温度 に応じて放射
(
電磁波)
を放出している。人、地球、
大気、雲、
ストーブ
….
•
可視 visible (VIS)
•
紫外 ultraviolet (UV)
– UV-A (315-400 nm) – UV-B (280-315 nm) – UV-C (100-280 nm)
•
赤外* infrared (IR)
– 近赤外(0.78-3 μm; near infrared; NR) – 中赤外(3-6 μm; middle infrared; MIR) – 遠赤外(6-1000 μm; far infrared; FIR)
(大気放射学の基礎)
*気象では 近赤外0.78-5 μm, 赤外5μm~ とすることがある。
ホッキョクグマ (白熊)
http://en.wikipedia.org/wiki/Polar_bear
2-2. 放射の基本量
面積
𝑆
立体角Ω ≡ 𝑆
𝑟
2 単位:
ステラジアン(sr)
•
立体角Ω
とは?•
極座標(𝑟, 𝜃, 𝜙)
で表現(大気放射学の基礎)
(問)
•
全立体角はいくらか(sr)
レポート①
•
地球から見て、月と太陽はどちらが大きく見 えるか?※ “
立体角(sr)”
を考え、“
定量的に”
比較すること。•
締め切り5
月9
日(
木) 20:00
𝑑Ω = 𝑑𝑆 𝑟 2
𝑑𝑆
(大気放射学の基礎)
放射輝度 * ( 放射の強さ ) 𝐼 𝜆
•
面𝑑𝐴
を通り、𝜃
方向の立体角𝑑Ω
内に進む放射を考える。•
波長𝜆
から𝜆 + 𝑑𝜆
にある、時間𝑑𝑡
あたりの放射エネルギー を𝑑𝐸 𝜆
とすると、𝑑𝐸 𝜆 = 𝐼 𝜆 𝑑𝐴 cos 𝜃𝑑𝜆𝑑𝑡 𝑑Ω
放射輝度
𝐼 𝜆 = 𝑑𝐸 𝜆
𝑑𝐴 cos 𝜃𝑑𝜆𝑑𝑡𝑑Ω [W m −2 sr −1 μm −1 ] 𝑑𝐴
𝜃
*
「放射強度」 ともいう。𝑑𝐴 cos 𝜃
𝑑𝐴の進行方向に対する 鉛直断面積•
放射輝度が方向によらず一定の場合を“等方 的“という。•
放射が平行光の場合は𝑑Ω → 0
なので、上 式は成り立たない。•
全放射輝度𝐼 (
すべての波長で積分) 𝐼 = න
0
∞
𝐼 𝜆 𝑑𝜆
放射フラックス * ( 放射束密度 ) 𝐹 𝜆
•
面𝑑𝐴
を通り、図の半球側への全放射を考える(
単位時間に面𝑑𝐴
の法線方向への放射エネル ギーの大きさ)
図を参照𝐹 𝜆 ≡ න 𝐼 𝜆 cos 𝜃 𝑑Ω
𝐹 𝜆 = න
𝜙=0 2𝜋
න
𝜃=0 𝜋
2
𝐼 𝜆 (𝜃, 𝜙) cos 𝜃 sin 𝜃 𝑑𝜃𝑑𝜙
次元は、 エネルギー 面積・時間・波長
•
放射輝度𝐼 𝜆
が方向によって変わらない場合(
等方的)
※各自計算してみよう。
𝐹 𝜆 = 𝐼 𝜆 න
𝜙=0 2𝜋
න
𝜃=0 𝜋 2
cos 𝜃 sin 𝜃 𝑑𝜃𝑑𝜙
= 2𝜋𝐼 𝜆 න
0 𝜋
2
cos 𝜃 sin 𝜃𝑑𝜃
= 𝜋𝐼 𝜆 (sin 2 𝜋/2 − sin 2 (0) = 𝜋𝐼 𝜆
2-3. 黒体放射 (blackbody radiation)
•
黒体(blackbody)
とは?–
全ての波長の放射(
電磁波)
を完全に吸収する 理想的な物体–
同じ温度ではほかのどの物体よりも多くの放射を 出すことができる•
黒体の放射輝度𝐵 𝜆
–
黒体の放射輝度は絶対温度のみに依存
「プランク関数」 で記述𝐵 𝜆 𝑇 = 2ℎ𝑐 2 𝜆 5 𝑒
ℎ𝑐
𝑘 𝐵 𝜆𝑇 − 1
ℎ (
プランク定数; Planck constant) = 6.62607 × 10
−34Js
𝑘
𝐵(
ボルツマン定数; Boltzmann constant) = 1.38065 × 10
−23JK
−1※
1900年代頃に理論的に導出(
エネルギー量子の仮説)
温度
𝑇
を決めると、波長𝜆
に対する放射輝度 を求めることができるプランク関数 (Planck function)
(大気放射学の基礎)
様々な温度におけるプランク関数
波長
太陽放射
~
6000K
地球放射
~
300 K
高温ほど波長の短い放射を射出
放射輝度
•
ある温度𝑇
でのプランク 関数の極大値は𝑑𝐵
𝜆(𝑇)
𝑑𝜆 = 0
から求めることができる
(
解析的には解けないので 数値計算をする)
•
黒体放射強度が最大と なる波長𝜆
𝑚𝑎𝑥 は絶対温 度𝑇
に反比例
ウィーンの変位則(Wien’s displacement law)
𝜆 𝑚𝑎𝑥 = 𝐶
𝑇
(𝐶: 定数=2897 μmK)英文名 記号 単位 関係式
放射輝度 (放 射強度)
Radiance
(radiant intensity ) 𝐼
𝜆W m
−2sr
−1μm
−1𝐼
𝜆= 𝑑𝐸
𝜆𝑑𝐴 cos 𝜃𝑑𝜆𝑑𝑡 𝑑Ω
放射フラックス
(放射束密度、
放射フラックス 密度)
Radiant flux
(radiant flux density)
𝐹
𝜆W m
−2μm
−1𝐹
𝜆≡ න 𝐼
𝜆cos 𝜃 𝑑Ω
黒体の放射強
度 (等方的)
Blackbody radiation 𝐵
𝜆W m
−2sr
−1μm
−1𝐵
𝜆𝑇
= 2ℎ𝑐
2𝜆
5𝑒
ℎ𝑐
𝑘𝐵𝜆𝑇
− 1
2-4. ステファン・ボルツマンの法則
•
プランク関数𝐵 𝜆
を全波長で積分(
全放射量)
𝐵 𝑇 = න
0
∞ 2ℎ𝑐 2
𝜆 5 𝑒
ℎ𝑐
𝑘 𝐵 𝜆𝑇 − 1
𝑑𝜆
𝐵 𝑇 = 2𝜋 4 𝑘 4
15𝑐 2 ℎ 3 𝑇 4
ゆえに、𝐵 𝑇 ∝ 𝑇 4
Stefan-Boltzmann law of radiation
•
黒体放射の放射フラックスは、𝐹 𝑇 = 𝜋𝐵 𝑇 = 𝜎𝑇 4
𝜎
ステファンボルツマン定数𝜎 = 2𝜋
5𝑘
415𝑐
2ℎ
3= 5.6705 × 10
−8Wm
−2K
−4黒体から放射されるすべての波長の 放射エネルギーは
絶対温度の4乗に比例する。
黒体放射は 等方的なので
2-5. キルヒホッフの法則
(Kirchhoff’s law)
•
一般的に物体は“黒体”ではない。•
黒体の作り方•
キルヒホッフの法則–
熱力学平衡の状態のとき、射出と吸収が一致•
射出係数𝑗
𝜆と吸収係数𝑘
𝜆としたとき、𝑗
𝜆= 𝑘
𝜆𝐵
𝜆(𝑇)
または、𝑗
𝜆𝑘
𝜆= 𝐵
𝜆(𝑇)
•
射出率 (emissivity)𝜀 𝜆
–
壁から射出される放射の強さと𝐵 𝜆 𝑇
の比•
吸収率 (absorptivity)𝑎 𝜆
–
壁が吸収する放射の強さと𝐵 𝜆 𝑇
の比•
黒体は𝜀 𝜆 = 𝑎 𝜆 = 1
•
黒体でなくても熱力学平衡なら𝜀 𝜆 = 𝑎 𝜆
–
ただし𝜀 𝜆 = 𝑎 𝜆 < 1
LTE 近似
•
局所熱力学的平衡の近似(local thermodynamic equilibrium: LTE)
–
地球大気は鉛直温度勾配を持つので、熱力学平 衡状態ではない。–
しかし多くの場合(70 km
以下)
その場(
局所的 に)
で熱力学平衡とみなすことができる。(※参考) サーモグラフィー
Twitter @predators_jp
CORONA
(コロナ)大型石油ストーブGH-B128F
オムロン 耳式体温計
MC-510
ヒトの気温の感じ方は?
(※参考)
(※参考) 放射温度計
※非接触温度センサー
• OMRON D6T-44L-06
(※参考) 実験してみよう!
•
用意するもの①
IH
電磁調理器➁ フライパン
(IH
対応で底面がアルミ製のもの)
➂ サーモグラフィー
,
放射温度計•
実験方法①フライパンを加熱
(
熱くなるので注意!)
➁フライパンの表面と裏面に手をかざしてみよう。違いはあるかな?
(
絶対に直接触れないこと)
➂フライパン表面と裏面の温度を測定してみよう。
※
フライパンを加熱 しすぎるとガスが発生 するので注意すること•
大気や地球は放射率=1
と近似して考えてよ い(
フライパンの黒面)
(※参考)
•
図の下面から𝜀 × 𝐵 𝑇
が射出されたとする(
図中の𝐵 𝑇
は省略)
•
下面を足し合わせ:𝑥 = (1 − 𝜀)2 とおけば、
𝜀 + 𝜀 1 − 𝜀
2+ 𝜀 1 − 𝜀
4+ ⋯ = 𝜀(1 + 𝑥 + 𝑥
2+ ⋯ )
ここで𝑆𝑛 = 1 + 𝑥 + 𝑥2 + ⋯ + 𝑥𝑛 とする。
両辺に𝑥をかけて1を加えると 𝑥𝑆𝑛 + 1 = 𝑆𝑛 + 𝑥𝑛+1となるので、
𝑆𝑛 = 1 − 𝑥𝑛+1 1 − 𝑥
|𝑥| < 1 のとき、𝑛 → ∞ とすると𝑆𝑛→∞ = 1
1−𝑥
従って𝜀 + 𝜀 1 − 𝜀 2 + 𝜀 1 − 𝜀 4 + ⋯ = 𝜀
1− 1−𝜀 2 = 1
2−𝜀
•
上面の足し合わせ:
𝜀 1 − 𝜀 + 𝜀 1 − 𝜀 3 + ⋯ = 1 − 𝜀 2 − 𝜀
•
従って、上面と下面を足し合わせると、1
2 − 𝜀 + 1 − 𝜀
2 − 𝜀 = 1
𝜀
𝜀(1 − 𝜀)
𝜀(1 − 𝜀)
2𝜀(1 − 𝜀)
3𝜀(1 − 𝜀)
4𝜀(1 − 𝜀)
5•
いまさら熱力学?(パリティブックス) 戸田盛和著
参考文献
•
大気と放射過程, 東京堂出版, 会田勝•
大気放射学の基礎, 朝倉書店, 浅野正二•
光の気象学, 朝倉書店, 柴田清孝•
ニューステージ地学図表, 浜島書店•
Fundamentals of Atmospheric Radiation, CF Bohren and EE Clothiaux, Wiley-VCH.(問)
•
以下について説明せよ。①放射強度、放射フラックス
➁プランク関数
➂ステファン・ボルツマンの法則
④キルヒホッフの法則
ハロ ( かさ )
http://cdn.theatlantic.com/static/infocus/antarc101012/a01_EOMARKER.jpg
皆既日食
2009
年7
月22
日11
時31
分56
秒http://www.nao.ac.jp/
皆既日食 (金環日食)
日時: