1. 緒言
マイクロフォーカス X 線を用いた高分解能 X 線 CT は,ミク ロな構造の三次元可視化と構造解析が可能であり,光学・電子 顕微鏡では得られない内部を非破壊観察・計測でき,学術・産 業・医療の広範囲な分野で利用が広がっている。X 線 CT は医 療で欠かせない診断技術であるが,産業用としても透過撮影の 限界を超えて,撮影技術と計算機技術の発達に支えられて,進 歩してきた。特に,医療用では CT の高速化が追求されてきた のに対し,産業用 CT では高分解能化が最も重要な特性として,
追求されてきた。X 線の発生点の寸法が,ミクロンからさらに 微細なサブミクロンにまで開発されることにより,一層高分解 能の CT が実用化されつつある1)−5)。
この様な高分解能の CT を用いることにより,微細な気孔構 造を有するセラミックス等の多孔体の構造解析が可能になった。
セラミックスは元々多孔質な材料であったが,構造用材料とし て強度を重視するようになり,欠陥すなわち気孔ができる限り 少なく,また,その大きさも小さい材料が追求されてきた。し かし,近年の傾向として,ミクロな多孔体構造を積極的に利用 する開発が盛んになりつつあり,水や空気の浄化のための環境 用浄化フィルタ,排ガス処理触媒担持体,燃料電池電極などの 多孔質体は自動車エンジンや水浄化,食品製造に不可欠な存在 となりつつある6)−9)。
医療に於ける骨欠損を修復する人工骨も,この様な多孔質セ ラミックスの一種である。骨は元々,コラーゲンと呼ぶタンパ ク質とハイドロキシアパタイトと呼ぶリン酸カルシュウムの複 合材から成り立っている。形態的には皮質骨と呼ぶ外側容器に あたる骨と,骨梁と呼ぶ線・棒・板状の骨が複雑に絡み合った 三次元構造の海綿骨から成り立っている。骨の修復材としての
人工骨は,血流の観点から,その多孔質構造が重要である。そ こで,本研究では高分解能 CT を用いて,多孔質セラミックス のミクロな気孔構造を三次元的に可視化し,気孔体積,気孔率,
気孔寸法とその分布,気孔間連結部の寸法とその分布を測定し
た10)− 12)。また,多孔質セラミックスを動物骨内に埋入し,セ
ラミックス内外に生成した新生骨の高分解能 CT による評価を 検討した。
今回,これらの研究成果について,3-D 画像を作製し,また,
構造解析データの計算を行い,内容をまとめて報告する。
2. 三次元高分解能 X 線 CT
2.1 高分解能 X 線 CT システムの原理
高分解能 X 線 CT は高分解能の投影データを撮影することか ら始まる。Fig. 1に高分解能の投影データを得るための,マイ クロフォーカス X 線 CT システムの概念図を示す。X 線管には Andrex 社製 MX-4,および浜松ホトニクス製発生器 L-7902(密 閉管型)と L-8322(開放管型)を用いた。MX-4 は焦点寸法が 8μm で,L-7902 は焦点寸法がカタログ値で 4μm,L-8322 は開 発品で,フィラメントに LaB6を用いて 0.4μm の焦点寸法を目 指している。ターゲットから放射された X 線ビームは円錐状の
高分解能 X 線 CT による多孔体の三次元構造および インプラント中の新生骨の解析
水田 安俊
*水野 峰男
*橋本 雅美
*池田 泰
*Three-Dimensional Analyses of Porous Structures of Ceramics and New Bone Formation in Porous Ceramic Implants by High-Resolution X-ray CT
Abstract
3-dimensional structural analyses of porous ceramics have been studied using high-resolution X-ray CT. Various porous bone ceramics were imaged by a micro-focus X-ray CT, and then reconstructed as 3-dimensional voxel images. After binary processing, the pore structures of the CT images were extracted and the volume of each pore was measured, which gave the histogram of pore size distribution. Some artificial bone ceramics were embedded in the body of rats and rabbits for several weeks. Several weeks after the embedding operation, the ceramics were extracted from the animal bodies and imaged by the CT, which gave the images of the newly formed bone in the bodies. After binary processing, the volumes were measured and the relationship between the pore structure and new bone formation was discussed.
Yasutoshi MIZUTA
*,
Mineo MIZUNO
*,
Masami HASHIMOTO
*and Yasushi IKEDA
*Key Words X-ray CT, High-resolution, Porous ceramics, 3-dimensional structural analysis, Implant, Artificial bone, Bone repair
原稿受付:平成 20 年8月 20 日
* (財)ファインセラミックスセンター(愛知県名古屋市熱田区六野 2-4-1)
Japan Fine Ceramics Center (2-4-1 Mutsuno, Atsuta-ku, Nagoya, 456-8587, Japan)
Fig. 1 Outline of 3 dimensional high-resolution X-ray CT Rotation table
Specimen
Rotary table Micro- focus
X- ray tube Micro-focus
X- ray tube X- rayX-ray
2D X- ray image detector 2-D X-ray image detector
Focus: 4 or 8 m Tube Voltage: 50 to 200 kV
Tube Current: 40 to 200mA View number: 360 to 1800
Image Intensifier 1024 100 pixels
Computing System/Software μ
×
コーンビームをなし,回転スデージに置かれた被写体を透過し,
後方に置かれた X 線像検出器に2次元の投影像を投射する。投
影像はFig. 2に示すような拡大像で与えられ,その空間的な画
像の不鮮明領域のサイズ U は,原理的には水平(X 軸)方向,
高さ(Z 軸)方向共に,焦点と像検出器間距離 FDD と焦点と被 写体間距離 FOD の比で決まる拡大倍率Mと,焦点寸法 d の積 で与えられる。
U =(M − 1)d ………(1)
すなわち,U が小さいほど画像が鮮明になり,高い空間分解能 が得られるが,dが小さければ,大きな拡大率 M を採用して も U を小さく抑えることができ,小さな対象物の大きな投影像 を得ることができる。本研究ではケースバイケースで倍率 M は 20 ~ 100 を用いた。従って X 線投影データの不鮮明領域は倍率 に応じて 80 ~ 400μm である。これらの X 線投影データを2次 元 X 線像検出器で撮影した。X 線像検出器にはイメージインテ ンシファイア(I.I.)+デジタル CCD カメラの組合せを用いた。
CT は従来は横1列のライン検出器により画像データが収集 され,1断層ずつ CT 像が取得されていたが,マイクロフォー カス X 線を用いる高分解能 CT では,被写体と検出器の間の距 離を大きくとることにより,被写体による散乱線の影響を少な くできることから,Fig. 1とFig. 3に示すコーンビームを用い た2次元投影が可能である。これにより,1回の回転で,高さ 方向の多段層の画像データを取得することができ,高速の多段 層 CT が可能になった。この様な2次元画像データを取得する X 線像検出器としては,画像データを即座に計算機システムに 転送できるデジタル画像検出器を使用するが,本研究では浜松 ホトニクス製6in 型と東芝製の 4 / 6 / 9in 切換可能なイメー ジインテンシファイア(I.I.)を用いた。これらの 6in 型 I.I. は,
後続の 130 万画素デジタル CCD カメラと一体となって,ほぼ 7line/mm の解像度がある。また,X 線感度も良好で,使いや すい検出器である。
CT 撮影においては,一度に 50 ~ 250 断層の投影データを採 取し,このデータに基づき各断層毎の2次元 CT 像を作製した。
画像の歪み補正,CT 回転中心位置決めは予め補正・設定し,最 適な状態を維持するように努めた。CT 再構成に用いた計算・制 御システムには2社のシステムを用いた。BIR 社の ACTIS+3 はマルチスライスの他,ボリュウム CT やオフセット CT 等の バリエーションもあり,画像のアーチファクト除去も高レベル で行うことができ,安定して使用できる信頼性の高いシステム
であり,この種のマイクロフォーカス CT としては標準的なシ ステムと考えている。一方,別のシステム UH-XVS(ユニハイ トシステム製)は,当ファインセラミックスセンターがシング ル断層 CT 用に開発した再構成ソフトを応用し,マルチスライ ス1本だけのシンプルなソフトウエアであるが,多段層枚数制 限が 250 枚と多く,比較的使用しやすいため併用した。1断面 の CT 再構成には,投影データをファンビーム幾何からパラレ ルビーム幾何に変換した後,アルゴリズムとして,医療用 CT で開発された FBP(Filtered Back Projection)法が用いられて いる。
Fig. 3に高分解能コーンビーム CT で三次元構築した場合の ボクセル構成の特長とボクセル寸法について示した。図では 4mm の幅の試料を 1000 チャネルの画素で投影データを取得す ることを仮定している。この例では1チャネル当たりの試料寸 法(ボクセル寸法)は 4μm と計算される。今回,X 線管の焦点 寸法はカタログ値で 4μm であることから,それ以下の画素寸法 の採用は意味がないと考えられる。また,この三次元 CT の特 長は,通常の医療に於ける三次元 CT と異なり,高さ(Z)方向 のボクセル寸法も断層像と同じ 4μm である。すなわち,ボクセ ルが図のように立体で,スライス間隔がゼロの緻密な三次元デー タ構成となっている。
得られた多段層 CT 像から三次元構成ソフトウエア TRI-3D
(ラトックエンジニアリングシステム社)を用いて三次元立体画 像データを構築した3)。この三次元構成ソフトウエアは元々骨 梁解析など医療目的に開発されたシステムであるが,当研究室 で光造形用 STL データ変換機能,粒子解析など目的に応じたバ リエーションを追加し,三次元画像構成後の解析応用を可能に している。
2.2 多孔質セラミックス試料
本研究で用いた多孔質セラミックスは,医療の骨修復材を目 的としている人工骨に用いられている製品である。試料につ
いてTable 1に一覧を示す。セラミック材料はハイドロキシ
アパタイト(Ca10(PO4)(OH)6 2)から成る多孔体であり,粉体
→成形→焼結過程で造孔により作製した試料1(アパセラム:
HOYA PENTAX 製),試料2(ボーンセラム P:オリンパステ ルモバイオマテリアル製),試料3(セラボーン AW:日本電 気硝子製)と珊瑚由来の天然多孔体から成る試料4(Interpore International 社製)の4種類である。
試料1は人工多孔体であるため,気孔率 0%の緻密体から 80%までの各種気孔率の試料を購入し,撮影することができた。
試料2と試料3は医療用に使用された実績のある製品で,気孔 Fig. 2 Magnification and blurring for X-ray imaging
d
Object
Image Detector Penumbra : U Umbra X-ray Focal Point
FOD
FDD M=FDD/FOD U=(M-1)d
1000channel
Data area4mm
1voxel of 3D CT 4µm 4µm 4µm 100slice
CT data acquisition
CT slice images
1000pixel 1000pixel
Fig. 3 CT data acquisition and 3D reconstruction
率は表のように約 40%と 70%に限定された試料である。また,
試料4については気孔サイズとして平均で 200μm と 500μm,
気孔率 50%,80%の2種類を対象とした。試料1と試料2は多 孔質セラミックスの三次元 CT による構造解析を目的として撮 影実験に供した。試料3と試料4は実際の生体中に埋入し,骨 修復過程で新生骨が形成される様子を解析するために用いら れた。
2.3 CT 撮影
試料の大きさは,多孔体の構造解析を目的とした場合は 4mm
× 4mm × 10mm の大きさに切り出し,高さ方向のほぼ中心 にある 2mm × 2mm の水平面を断層像再構成の対象面とした。
撮影倍率は 60,1回の回転で 100 スライス(断層像数)の投影 データを収集した。X 線管電圧は 60kV,管電流は 0.13mA で撮 影した。試料3と試料4の生体埋入試料については,生体から 取り出した後約 6mm 直径の試料を作製し,試料全体が撮影可 能な倍率 20 倍で撮影した。スライス数と X 線条件は前述と同じ である。
3. 結果および検討
3.1 各種セラミックスに対する CT 2次元断層像の結果と考察 Fig. 4にピクセルサイズ 4μm で撮影した,試料1の各種気 孔率のアパセラムの断層像(2mm × 2mm 領域:500 × 500 チャネル数)を示す。図の黒い部分が気孔で,灰色の部分がア パタイト材料のある部分である。以下に,これらの2次元断層 像から得られる知見について記述する。実際の気孔は三次元で 分布しているため,これらの2次元的観察からは詳細な精確さ は得られないが,大まかな気孔の分布の様子が観察・判断でき る。気孔率 0%では,検出された気孔は存在しなかった。気孔
率 30%(カタログ値:以下本製品の気孔率はこのカタログ値で ある。)では,断層像当たり,直径 30 ~ 150μm の楕円状の気孔 像が数個検出された。気孔率 40%では,像の大きさが直径 200
~ 400μm の気孔が十数個検出された。気孔同士の連結は少なく,
気孔それぞれが孤立している様に見える。気孔率 60%では,像 の大きさが直径 60 ~ 400μm の気孔が多数存在し,断面にかな り均等に分布しているように見える。気孔間の連結はまだそれ ほど多くは見られない。気孔率 70%以上では,断層像で 500μm に達するような大きな気孔が,しかも,連結した様子で観察で きる。このため,強度的にはかなり脆弱であるが,生体中に埋 入した時に,血流が気孔内に流れ込み,新生骨を形成するには 大変適した構造となっていると推測できる。この結果は,骨修 復材料として,気孔率 70%のアパセラムが製品化されているこ とを裏付ける結果となっている。
次に,試料2のボーンセラム(気孔率 35 − 48%)の CT 像を
Fig. 5(a)に示す。また,試料3のセラボーン(気孔率 70%)
の CT 断層像を Fig. 5(b)に示す。両者共に気孔の形状は球に 近いように見える。ボーンセラムの場合は,直径 50 ~ 200μm の気孔が多数存在しているが,連結した構造の気孔はあまり多 くない。先のアパセラムの 60%の画像に近い様子を示している。
気孔の様子から,撮影した部位の気孔率はこのカタログ値より は大きく,60%程度ではないかと思われる。CT 像からの判断で あるが,この試料の場合は,気孔が個々に分離し,連結部の寸 法が小さい傾向にあり,血流が十分に流れ込まないおそれがあ る。血流が流れ込まないと,新生骨の形成が困難になり,生体 骨との融合が促進されず,治癒の効果が遅れることになる。
一方,セラボーンの場合は直径 200μm 以上の気孔が面積の大 半を占め,これらの大きな気孔の間に小さな気孔が隙間を埋め るように存在している。大きな気孔間の連結も大きく,血流の 循環に適した構造となっている。カタログ値 70%であるが,む しろ,アパセラムの 80%に近い画像が得られた。この製品は臨 床実験にも多用されている実績があり,構造的にも優れている ことが推測される。
3.2 2次元断層像からの三次元像の構成と気孔構造の解析 得られた 100 段層の2次元断層像から,TRI-3D を用いて,三 次元立体像を再構成した。立体化は,2次元断層像(X-Y 像)
を Z 方向に積み重ねる方法で行い,各断層間を X-Y 像の画素サ イズ 4μm の寸法に設定した。従って,ボクセルサイズが1辺 4μm の立方体となり,ボクセル数は 500 × 500 × 100,すなわ ち 2,500 万個である。Fig. 6(a)にアパセラム(気孔率 70%)
の三次元立体像を示す。従って,領域のサイズは 2mm × 2mm
× 0.4mm である。灰色の部分が気孔で,それらが立体的に重なっ No. Bone-ceramic
specimen Producer Porosity or Pore
size
1 Apaceram
(Hydroxyapatite) HOYA Corporation 0, 15, 30, 40, 50, 60, 70, 80%
2 Boneceram P Olympusmobilematerial
Co., Ltd. 35-48%
3 CeraboneAW Nippon Electric Glass Co., 70%
4 Coral
Hydroxyapatite Interpore International Co., Pore size: 200, 500μm Table 1 Bone ceramic specimens used in this work
Fig. 4 2D-CT images of Apaceram with various porosities
(Pixel size : 4µm)
(d)Porosity 40% 500μm (e)Porosity 30% 500μm (f)Porosity 0%f)Porosity 0% 500μm (c)Porosity60% 500μm (b)Porosity70% 500μm
Pore
500μm HA
( Porosity80%a)
(d)Porosity 40% 500μm (e)Porosity 30% 500μm (f)Porosity 0%f)Porosity 0% 500μm (c)Porosity60% 500μm (b)Porosity70% 500μm
Pore
500μm HA
( Porosity80%a)
(d)Porosity 40% 500μm (e)Porosity 30% 500μm (f)Porosity 0%f)Porosity 0% 500μm (c)Porosity60% 500μm (b)Porosity70% 500μm
Pore
500μm HA
( Porosity80%a)
Fig. 5 2D-CT images of Boneceram and Cerabone AW (a) Boneceram(35-48%) (b) Cerabone AW (70%)
AW glass
(a) Boneceram(35-48%) (b) Cerabone AW (70%) AW glass
(a) Boneceram(35-48%) (b) Cerabone AW (70%) AW glass
(a) Boneceram(35-48%) (b) Cerabone AW (70%) AW glass
ているため,気孔の壁を見ることになり,黒色で表示される空 隙のようには表現されていない。Fig. 6(b)に気孔の連結状態 を示す。セラミックスが骨修復材として,生体内に埋め込まれ た場合,血液が内部に流入し,絶えず新しい血液が循環する必 要がある。このため,気孔構造は互いに連結し,閉気孔を作ら ないことが重要である。その様な連結性があるかどうかを Fig.
6(b)は示している。気孔部分のボクセルが隣の気孔ボクセル と接触している場合は,連結した気孔と見なし,画像上ではグ リーンの同じ色で表現されており,主要な気孔のほとんどが連 結していることを示している。
気孔は三次元的にはほぼ全体的に連結しており,その構造の ままでは気孔径分布などの計測ができない。そこで,気孔間を 連結部の狭い空間で切断し,孤立化させ,その結果生じた孤立 気孔群に対して径の分布を測定した。Fig. 7(a)で色が異なる 気孔は互いに孤立化し,分離されて,この状態から,それぞれ の気孔体積を求めることができる。Fig. 7(b)に気孔の分離,
孤立化,体積測定の手順を示す。
Fig. 7から求めた気孔の大きさの分布(個数)をFig. 8に示 す。気孔は Fig. 7のように不定型であるため,その大きさの分 布を体積で求め,さらにそれらを同体積の球状気孔と仮定して,
それらの直径の分布を調べた。Fig. 8に分布のヒストグラムを 示す。相当球の直径にして,50μm 以下~ 400μm 以上に分布し ていることが分かる。Fig. 7(a)の最も小さい気孔が相当直径 50 ~ 70μm の球に相当し,それよりやや大きく表示されている 気孔が相当直径 70 ~ 150μm の気孔に相当する。さらに,Fig.
7(a)では 150 ~ 300μm の気孔が存在し,Fig. 8の分布では,
400μm クラスの気孔も存在している。これらは Fig. 7(a)で最 も大きく表示されている気孔に相当する。ただし,これらの大 きな気孔に関しては立体像の境界部分での気孔の切断や,厚さ
方向が 400μm に制限されているなどの理由から,寸法が過小評 価されていると考えられる。
3.3 生体中に埋め込まれた多孔質セラミック周辺での骨形成 の観察と形成量の測定
三次元 CT データを解析することにより,生体中に埋め込ま れた多孔質セラミック周辺における,新規の骨形成を観察し,
その生成量を計測することができる。多孔質セラミックスは骨 修復材として市販されている,日本電気硝子製セラボーン AW および米国 Interpore 社製ハイドロキシアパタイト(珊瑚由来製 品)であり,Table 1にまとめて示す。埋め込んだ生体はラビッ トとラットである。共に大腿骨に埋め込んだ。
3.3.1 ラビットに埋め込まれたAWセラミックガラスの結果 Fig. 5(b)に CT 断層像を示したセラボーンと同類試料を,
ラビットの大腿骨に8週間埋め込んだ試料の CT 像(全体)を
Fig. 9(a)に示す。埋込試料サイズは直径約 6mm である。こ
の CT 像では倍率が低いために,骨形成の様子がはっきりとは 観察できない。次に同図(b)にセラボーンの部分だけを撮影し た CT 像の三次元構築の結果を示す。この図で,灰色部分はセ ラボーンの部分で,その周囲の黄色部分が形成された新生骨領 域と推定される。この場合,試料は AW ガラス部分だけを取り 出し,より高倍率で撮影しているため,AW ガラス周囲の骨形 成と思われる領域がかなり明瞭に現れている。
3.3.2 ラットに埋め込まれた珊瑚由来ハイドロキシアパタイト の結果
珊瑚由来ハイドロキシアパタイト HAp は生体の海綿骨に似た Diameter of pores, μm
Cumulativeporosity(%)
0 50 100 150 200
0 100 200 300 400 500
Number of pores
0 20 40 60 80 Number 100
Porosity Apaceram(70%)
3D calculation
Fig. 8 Histogram of equivalent spherical pore diameter in Apaceram with 3D calculation
Fig. 9 New bone formation in AW glass ceramic implanted in rabbit thigh bone Implanted A-W GC
Thigh bone and tissue of rabbit
Gray area: A-W CG Yellow area: Formed bone
6mm
(a) 3D-CT image of whole implanted AW (b) 3D-CT image of implanted AW with formed bone area by binary processing Fig. 6 3D-CT image and connected structure of Apaceram(70%)
(a) 3D CT image of Apaceram (70%) (b) Connection of pores (a) 3D CT image of Apaceram (70%) (b) Connection of pores
Fig. 7 Procedure of histogram calculation of pore size (a) Isolated pore structure shown
by different colors
(a) Isolated pore structure shown by different colors
Reconstruction of 3D CT Binary processing
Isolation of pores by separation Reduction of noise and small particles
Extraction of pore structure
(b) Algorithm for measuring pore size distribution
Sizing of pore volumes Histogram of pore diameter (b) Algorithm for measuring pore
size distribution (a) Isolated pore structure shown
by different colors
Reconstruction of 3D CT Binary processing
Isolation of pores by separation Reduction of noise and small particles
Extraction of pore structure
(b) Algorithm for measuring pore size distribution
Sizing of pore volumes Histogram of pore diameter
構造を持ち,骨修復材としての効果が一層期待できる試料であ
る。Fig.10に示すように,まず,ラットの骨芽細胞を体外で培
養し,この液の中に HAp を浸し,骨芽細胞を HAp 中に付着さ せた。この骨芽細胞処理した HAp をラットの皮下に4~8週間 埋入した。この修復材は Interpore International 社製で,空隙 200μm(CT 像:Fig.11(a))と 500μm(CT 像:Fig.12(a))の 2種類を用いた。図のように,生体海綿骨と似た構造を持つ。
Fig.11(b),12(b)にラット埋込後,8週間経過時の CT 断層 像を示す。図中の HAp 部分の周囲に,より暗い灰色部分を見る ことができる。この部分は,埋込期間の長さに依存して成長する。
明らかに,HAp よりは密度の低い,従って X 線吸収が少ない物 質からできている。そこで,この部分はラットによる新生骨を 示すものと考えられる。さらに,この新生骨の部分は,埋め込 んだセラミックスの周囲に多く分布し,中央ほど少ない,すな わち,血流がよく循環する周囲から骨修復が始まることを示し ている。
Fig.13に,空隙 200μm と 500μm の HAp の周囲に形成され た新生骨を,2値化によって抽出した結果を示す。図のように,
抽出された領域は,生体内埋込期間によって明らかに増加する 様子が示された。また,新生骨の領域は外側で大きく,明瞭に 見える部分が多いが,内部の HAp 周囲でも黄色の線が一様に太 くなって現れていることから,徐々に骨形成が進んでいるもの と思われる。
Fig.14に埋込後8週間の試料について,三次元画像を示す。
黄色の部分が新生骨領域で,白い部分の HAp 領域を全体に包 んでいることが明らかになった。三次元像は2次元像に比較し,
像の構造が複雑で見にくいところもあるが,全体の様子が分か るので参考になる。さらに,これらの三次元像を解析すること により,骨形成量を定量的に計測することができる。Fig.15に Fig.10 Preparation of implanted specimens to measure in vivo bone formation in rats
Extraction of
bone marrow cell 1st culture Impregnation
2nd culture Subcutaneous tissue implantation HAp
Fig.13 Increase of bone formation area depending on implantation period
4week
4week
8week
8week 200μm
500μm
Fig.11 2D-CT images of coral HAp (200μm) before and after implantation in subcutaneous tissue of rat (a) Before implantation
0week
2mm
(a) Before implantation (b) Implanted for 8 weeks
8week
2mm Formed bone
Formed bone (b) Implanted for 8 weeks
0week
2mm
(a) Before implantation (b) Implanted for 8 weeks
8week
2mm Formed bone
Formed bone
Fig.12 2D-CT images of coral HAp (500μm) before and after implantation in subcutaneous tissue of rat
2mm 2mm
(a) Before implantation(a) Before implantation (b) Implanted for 8 weeks(b) Implanted for 8 weeks
2mm 2mm
(a) Before implantation (b) Implanted for 8 weeks
Fig.14 3D-CT images of bone formation area
200μm, 8week 500μm, 8week
200μm, 8week 500μm, 8week
埋込期間と新生骨形成量の関係を示す。試料 200μm については,
試料によって,初期の HAp 量が多少異なり,5 ~ 6mm3にばら ついている。新生骨形成量は2週間まではほぼ 0 であるが,4 週間と8週間で 2mm3に達している。また,試料 500μm につ いては,埋込後4週間までは骨形成は僅かであるが,8週間で は 1.3mm3に達していることが明らかになった。
4. 結言
1)高分解能 CT を活用することにより,セラミック多孔体の 気孔の三次元構造を可視化し,気孔サイズの分布を測定す ることができ,多孔体の定量評価法を確立できた。
2)骨修復材多孔質セラミックスを生体に埋込んだ試料の三次 元 CT データから,埋込期間と新生骨形成量との関係を計 測した。新生骨を三次元画像で2値化処理し,抽出するこ とにより,8週間後にはかなりの量の新生骨が形成される ことが明らかになった。新生骨の形成量を定量的に評価で きる方法を確立できた。
参 考 文 献
1)藤井正司:マイクロ CT, 非破壊検査, 54(5), pp.228-232, (2005)
2)塩田忠弘:マイクロフォーカス X 線 CT とその応用, 計測技術,
35(2), pp.13-17, (2007)
3)水田安俊:マイクロ CT の新材料への応用, 非破壊検査, 54(5), pp.243-247, (2005)
4)斉藤 泰:投影型 X 線顕微鏡の現状と今後, 日本非破壊検査 協会放射線分科会, 資料 No.10404, (2007)
5)Y. Ikeda, Y. Mizuta, M. Mizuno, Y. Touma, H. Ohgushi and T. Nakamura:High resolution X-ray CT for porous ceramic biomaterials, Proc., Far East Conf. NDT, pp.583-588, (2002)
6)永納保男, 池田 泰, 河本 洋, 高野直樹:三次元 X 線 CT の 均質化法応力解析, 非破壊検査, 53(11), pp.701-708, (2004)
7)Y. Ikeda, Y. Nagano, H. Kawamoto and N. Takano:Image- based Modeling and Stress Analysis by Homogenization Method for Porous Alumina Ceramics, J. Ceram. Soc. Japan, 112(1305), S1052, (2004)
8)池田 泰, 永納保男, 河本 洋, 高野直樹:均質化計算による 多孔質セラミックスの内部局所応力解析, JCOSSAR2003, 論 文集, pp.139-144, (2003)
9)Y. Ikeda, Y. Nagano, H. Kawamoto and N. Takano:3d Modeling of Porous Ceramics by High-Resolution X-Ray CT For Stress Analyses, Key Eng. Mater. 270-273, pp.28-34, (2004)
10)Y. Ikeda, Y. Mizuta, M. Mizuno, M. Mukaida, M. Neo and T.
Nakamura:3 dimensional CT analyses of bone formation in porous ceramic biomaterials, 27th Int. Cocoa Beach Conf. Adv.
Ceram. Compsite: A, pp.185-190, (2003)
11)Y. Ikeda, Y. Mizuta, M. Mizuno, K. Ohsawa, M. Neo and T.
Nakamura:3D CT analyses of porous structures of apatite ceramics and in-vivo bone formation, Proc. 26th Cocoa Beach Conf. Adv. Ceramics and Composites, Am. Ceram. Soc., Mater.
& Structures, B, pp.833-838, (2002)
12)Y. Ikeda, Y. Mizuta, M. Mizuno, M. Mukaida, M. Neo and T.
Nakamura:3 Dimensional CT analyses of bone formation in porous ceramic biomaterials, Ceramic Eng. Science Proc., 24A, pp.185-190, (2003)
Fig.15 Variation of bone formation volume against implantation period
Coral HAp: 200μm Coral HAp: 500μm 0
1 2 3 4 5 6 7 8 9
0w 2w 4w 8w 0w 2w 4w 8w
Volume, mm3
全体 多孔材部 形成部
HAp/Bone HAp Formed bone
Coral HAp: 200μm Coral HAp: 500μm 0
1 2 3 4 5 6 7 8 9
0w 2w 4w 8w 0w 2w 4w 8w
Volume, mm3
全体 多孔材部 形成部
HAp/Bone HAp Formed bone