原 著
原 著
エイズ診療拠点病院担当医師の HIV/AIDS 患者届出状況に関する調査
῍届出に影響を及ぼす因子の解析を含めて῍
谷原 真一+῏῍ 中村 好一,῏῍ 橋本 修二-῏
+῏島根医科大学環境保健医学第一講座
,῏自治医科大学公衆衛生学教室
-῏藤田保健衛生大学医学部衛生学教室
目的: わが国のエイズ診療拠点病院におけるHIV/AIDS患者の診療担当医師を対象とした
HIV/AIDS患者の届出状況の調査と届出に影響を及ぼす因子の解析ῌ
方法:+333年+,月-+日時点でエイズ拠点病院として公表されている-21 施設の-3+ 診療科の 医長を通じて῍HIV/AIDS患者の診療を担当する医師を対象に匿名の調査票を配布し῍郵送にて回 収したῌ
結果:,,.診療科῎/1῍῏から調査に協力が得られ῍配布された調査票1*.枚の内02+枚῎31῍῏
が返送され῍ 有効回答数は0.,枚 ῎3+῍῏であったῌ 診断経験があった者は-.+名 ῎/-῍῏であっ たῌ 診断経験を有する者の2*῍以上が届出を全て実施していたῌ HIV感染者の届出は感染症予防 法施行後に上昇していたが῍転症報告の届出は変化がなかったῌ ῐ他科へ紹介したからῑ及びῐ紹介 元が届けたはずῑ が届出を行わない主な理由であったῌ 診療科が内科または小児科以外の医師は
HIV/AIDS患者の届出及び転症報告の実施がやや不十分な傾向を認めたῌ
結論:わが国のHIV 感染者数の報告数は実態をかなり正確に反映していると考えられるῌ 感染 症予防法施行後は届出実施割合が高くなったが῍ 転症報告は義務から任意に変更されたことによっ て῍ 今後転症報告の報告漏れが増加する可能性があるῌ
キῌワῌド: HIV感染者῍ AIDS患者῍ 感染症予防法῍ 届出 日本エイズ学会誌/:,1῍-,῍ ,**-
緒 言
+333年.月以降῍ ῐ感染症の予防及び感染症の患者に関 する法律ῑ ῎以下῍ ῐ感染症予防法ῑ῏ 第+,条によって῍ HIV/AIDS患者を診断した医師は1日以内に患者の年齢῍ 性別῍ その他省令で定める事項を届け出ることが規定され ているῌ+333年-月以前も ῐ後天性免疫不全症候群の予防 に関する法律ῑ ῎以下῍ 旧法῏ でも届出が規定されており῍ 届け出が必要な疾患であることにはかわりがないῌ しか し῍ 旧法では当該感染者が血液凝固製剤の投与により感染 したと認められる場合には報告を要しない ῎旧法第/条῏ とされており῍ 届け出に関する要件に多少の変更が生じて いるῌ 感染症患者届出に影響を与える因子として῍ 疾病の 種類が重要とされており+῍.῏῍医師としての経験年数や専門 科/῏ならびに患者の秘密保持に対する懸念/,0῏などの影響も
検討されているῌ
伝染病統計調査に関する意識調査では῍ 届出伝染病ῌ寄 生虫病ῌ性病を ῐ全て届け出るῑ と回答した医師は全体の ,2῍であり῍寄生虫病ῌ性病の統計数値には実状を反映し ていないものがあると保健所関係者のほぼ全数が回答して いた+῏ῌ さらに῍ 小児科を主として標榜する医師が届出義 務のある感染症を診断した場合῍2-῍がῐ実際にはほとん ど届けていないῑと報告されている,῏ῌしかし῍HIV/AIDS 患者に関する届出の実態及び῍ 届出に影響を与える因子は ほとんど検討されていないῌ 今回῍ エイズ拠点病院におい てHIV/AIDS患者の診療を担当する医師に対して῍ 感染 症患者届出に関する調査を実施し῍HIV/AIDS患者の診断 経験及び届出状況῍ 届出を行う ῎あるいは῍ 行わない῏ 場 合の理由を検討したῌ
対象及び方法
+333年+,月-+日時点でエイズ拠点病院として公表さ れている-21 施設における-3+HIV診療科の担当医長に 依頼し῍ 各診療科のHIV/AIDS患者の診療を担当する全 ての医師を対象として῍HIV感染者及びAIDS発症者の診 著者連絡先:谷原真一 ῎ῒ03-῍2/*+ 島根県出雲市塩冶町23῍+
島根医科大学環境保健医学第一講座῏
Fax :*2/-῍,*῍,+0*῍ E-mail : taniyan@shimane-med.
ac.jp
,**+年0月,+日受付;,**,年2月,0日受理
῎ ,1 ῏ ,1
断経験῍診断した場合の届出状況῍届出を行うῐ行わないῑ 場合の理由などに関する調査を行ったῌ 表+に本調査で検 討した項目を示すῌ 本調査におけるHIV/AIDS患者の診 療を担当する医師とは῍ ῒ現にHIV/AIDS患者の診療を実 施しているか῍ 患者が受診した場合に診療を担当すること になる全ての医師ΐ と定義したῌ 調査は匿名とし῍ 調査票 を配布することによって,***年+月+日に実施したῌ ま た῍ 担当医長宛には各診療科で配布した調査票の枚数に関 する別の調査を依頼したῌ 内科と小児科のように῍ 複数の 診療科がHIV/AIDS患者の診療を担当していると考えら れた場合には῍ それぞれの診療科の医長に依頼したῌ 調査 票は同封した返信用封筒により῍ 記入者がそれぞれ本研究 の事務局 ῐ自治医科大学公衆衛生学教室ῑ に返送したῌ 各 診療科医長宛に依頼した調査票の配布枚数に関する調査の 結果から῍ 本調査の対象となるHIV診療担当医師数を求 めたῌ
診断経験῍ 届出状況῍ 医師の属性῍ 届出を行う ῐあるい は῍ 行わないῑ 場合の理由に関する分析の他῍ 感染症予防 法施行後の届出状況の改善に関連する因子を検討する目的 で῍ +333年.月+日以降で新規に診断したHIV感染者の 届出及び転症報告の実施状況に関連する医師の属性を解析 したῌ 集計及び統計学的検定には統計パッケ῏ジソフト SASῐVersion0.+,ῑ 及びEpiInfoῐVersion0.*,ῑを用いたῌ
結 果
協力を依頼した-3+診療科のうち῍,,.診療科ῐ/1῍ῑか ら調査の協力が得られたῌ 地域別に見ると῍ 北海道ῌ東北 /1῍ῐ-0ῌ0-ῑ῍関東0*῍ῐ/3ῌ32ῑ῍甲信越ῌ北陸/-῍ῐ+3ῌ
-0ῑ῍ 東海/*῍ ῐ,/ῌ/*ῑ῍ 近畿/-῍ ῐ,-ῌ..ῑ῍ 中国//῍ ῐ+0ῌ,3ῑ῍四国/3῍ῐ,*ῌ-.ῑ῍九州1*῍ῐ,0ῌ-1ῑ と九州地 区の回答率がやや高い傾向であったが῍ それ以外の地区と 比較して統計学的に有意な差は認められなかったῌ また῍ 医育機関附属の病院0-῍ ῐ0,ῌ33ῑ とそれ以外の施設//῍ ῐ+0,ῌ,3,ῑ の間にも統計学的に有意な差は認められなかっ たῌ
HIV/AIDS患者の診療を担当する医師に対する調査票
は῍合計1*.枚が配布されており῍02+枚ῐ31῍ῑが返送さ れ῍有効回答は0.,枚ῐ3+῍ῑであったῌ有効回答のうち῍ HIV感 染 者 の 診 断 経 験 が あ る と 回 答 し た 者 は-.+ 名 ῐ/-῍ῑであったῌ回答者の属性を診断経験の有無で比較す ると ῐ表,ῑ῍ 医籍登録からの経験年数が長くなるにつれ て῍ 診断経験を有する者の割合が統計学的に有意 ῐp
表 , 診断経験別回答者の属性
属性 カテゴリ῏ 診断経験
あり ῍ 診断経験
なし ῍ 合計 ῍ p-value
性 男
女
-+.
,/
ῐ3-῍ῑ ῐ 1῍ῑ
,1/
,/
ῐ3,῍ῑ ῐ 2῍ῑ
/23 /*
ῐ3,῍ῑ
ῐ 2῍ῑ *.0/
医籍登録年数 +*年未満
+*年以上,*年未満 ,*年以上-*年未満 -*年以上
-2 +.+
+,1 -/
ῐ++῍ῑ ῐ.+῍ῑ ῐ-1῍ῑ ῐ+*῍ῑ
., +.- 3+
,/
ῐ+.῍ῑ ῐ.2῍ῑ ῐ-*῍ῑ ῐ 2῍ῑ
2*
,2.
,+2 0*
ῐ+,῍ῑ ῐ..῍ῑ ῐ-.῍ῑ ῐ 3῍ῑ
*.*-/
勤務する施設 医育機関附属の病院
医育機関附属の病院を除く施設 +,+
,+0
ῐ-0῍ῑ ῐ0.῍ῑ
01 ,--
ῐ,,῍ῑ ῐ12῍ῑ
+22 ..3
ῐ-*῍ῑ
ῐ1*῍ῑ p*.**+
主たる業務 診療
教育ῌ研究ῌ管理ῌその他
,23 /,
ῐ2/῍ῑ ῐ+/῍ῑ
,1, ,3
ῐ3*῍ῑ ῐ+*῍ῑ
/0+
2+
ῐ21῍ῑ
ῐ+-῍ῑ *.*-- 主たる診療科 内科ῌ小児科
その他
,01 1+
ῐ13῍ῑ ῐ,+῍ῑ
+3.
+*0
ῐ0/῍ῑ ῐ-/῍ῑ
.0+
+11
ῐ1,῍ῑ
ῐ,2῍ῑ p*.**+
届出義務 知っていた 知らなかった
--1 .
ῐ33῍ῑ ῐ +῍ῑ
,2/
+-
ῐ30῍ῑ ῐ .῍ῑ
0,, +1
ῐ31῍ῑ
ῐ -῍ῑ *.*+, ῐ注:有効回答のみῑ 表 + 調査項目
+῎ 勤務地の所在地 ,῎ 性別
-῎ 医籍登録年数
.῎ 主に従事している施設の種類 /῎ 主たる業務内容
0῎ 従事する診療科名
1῎ HIV感染者の届出義務の認識 2῎ HIV感染者の診断経験の有無
3῎ HIV感染者の届出実施状況及び届出を行うῐ行わないῑ理由 +ῑ +333年-月-+日以前に診断した場合
,ῑ +333年.月+日以降に診断した場合
+*῎ 転症報告の届出実施状況及び届出を行う ῐ行わないῑ 理由 +ῑ +333年-月-+日以前に診断した場合
,ῑ +333年.月+日以降に診断した場合
ῐ ,2 ῑ ,2
*.*/ῐ に高くなる傾向を示したῌ 医育機関附属の病院に勤 務する者῍ 主たる業務が教育ῌ研究である者῍ 主たる診療 科が内科または小児科である者῍ 届出義務に関する知識を 有する者の場合῍ 診断経験を有する者の割合が統計学的に 有意 ῏p*.*/ῐ に高くなっていたῌ
HIV感染者の届出῍ 及び以前よりHIV感染のために フォロ῎されておりAIDSを発症したと診断された感染者 の届出῏以後ῑ転症報告ῒῐの状況を感染症予防法施行前後 の+333年-月-+日以前と+333年.月+日以降に分類し て表-に示すῌ いずれの期間でも診断経験を有する者の 2*῍以上がHIV感染者の届出及び転症報告を実施してい たῌ+333年-月-+日以前にHIV感染者の診断を経験した -**人のうち῍ 全て届け出た者は,/2人῏20῍ῐ῍届出を実 施しなかった経験を有する者は.,人 ῏+.῍ῐ であったῌ +333年.月+日以降でHIV感染者の診断を経験した+03 人のうち῍全て届け出た者は+/3人῏3.῍ῐ῍届出を実施し なかった経験を有する者は+*人 ῏0῍ῐ であったῌ 感染症 予防法施行後の+333年.月+日以降ではHIV感染者の届 出実施割合が統計学的に有意 ῏p*.*/ῐ に高くなってい たῌ
+333年-月-+日以前にAIDS発症の診断経験があった ,,3 人 の う ち῍ 転 症 報 告 を 全 て 実 施 し た 者 は+23 人
῏2-῍ῐ῍ 転症報告を実施しなかった経験を有する者は.*
人῏+1῍ῐであったῌ+333年.月+日以降でAIDS発症の 診断経験を有する32人のうち῍ 転症報告を全て実施した 者は2,人῏2.῍ῐ῍ 転症報告を実施しなかった経験を有す る者は+0人 ῏+0῍ῐ であったῌ +333年-月-+日以前と
+333年.月+日以降の少なくとも一方でAIDS発症の診 断経験のある,-1人について検討すると῍..人῏+3῍ῐが 転症報告を実施しなかった経験を有していたῌ
全ての期間においてHIV感染者の届出または転症報告 を全て実施した者の届出を実施した理由を表.に示すῌ い ずれの場合も該当する割合がもっとも高かったのは ῑ法律 に規定されているからῒ であったῌ 次に高かったものは ῑ重要な疾病であったからῒであったῌ HIV感染者の届出 を実施しなかった経験を持つ./人の届出を実施しなかっ た理由 ῏旧法第/条の規定によるものを除くῐ では ῑ紹介 元が届けたはずῒの+-人῏,3῍ῐがもっとも多かったῌそ の他には ῑ他科へ紹介したῒ῍ ῑ届出は患者のプライバシ῎ 保護に反するからῒ῍ ῑ届出の時期を逃したῒ῍ ῑ患者や家族 が拒否ῒ が挙げられていた ῏複数回答可ῐῌ
転症報告を実施しなかった経験を持つ..人の届出を実 施しなかった理由 ῏旧法第/条の規定によるものを除くῐ としては῍ ῑ紹介元が届けたはずῒ の.人 ῏3῍ῐ がもっと も多かったῌ その他には ῑ他科へ紹介したῒ῍ ῑ届出手続き が煩雑で通常業務に支障を来すからῒ῍ ῑ届出の時期を逃し たῒ῍ ῑ患者や家族が拒否ῒ が挙げられていた ῏複数回答 可ῐῌ
+333年.月+日以降で新規に診断したHIV感染者の届 出及び転症報告を全て実施した者と実施しなかった経験を 有する者の属性の違いについて表/に示すῌHIV感染者の 届出を実施しなかった経験については῍医籍登録年数が,*
年以上の者の,*年未満の者に対するオッズ比῍ 従事施設 が医育機関附属以外の施設の者の医育機関附属の施設に従 事する者に対するオッズ比῍ 内科または小児科以外を主な 診療科とする者の内科または小児科を主な診療科とする者 に対するオッズ比は統計学的に有意ではなかったが῍ いず れも,以上であったῌ
転症報告を実施しなかった経験について῍ 医籍登録年数 が,*年以上の者の,*年未満の者に対するオッズ比は +.,2῏3/῍CI :*.0+ῌ,.02ῐとHIV感染者の届出よりも影響 が小さくなっていたῌ 統計学的には有意ではなかったが῍ 従事施設が医育機関附属以外の施設の者の医育機関附属の 施設に従事する者に対するオッズ比῍ 内科または小児科以 外を主な診療科とする者の内科または小児科を主な診療科 表 - HIV感染者の届出及び転症報告の実施状況
全て届出 ῍ 一部実施
せず ῍ 合計 ῍ p-value
HIV感染者 33ῌ-ῌ-+以前 33ῌ.ῌ +以降
,/2 +/3
῏20῍ῐ
῏3.῍ῐ ., +*
῏+.῍ῐ
῏ 0῍ῐ
-**
+03
῏+**῍ῐ
῏+**῍ῐ *.*/
転症報告 33ῌ-ῌ-+以前 33ῌ.ῌ +以降
+23 2,
῏2-῍ῐ
῏2.῍ῐ .*
+0
῏+1῍ῐ
῏+0῍ῐ
,,3 32
῏+**῍ῐ
῏+**῍ῐ *.2*
῏注:無回答除くῐ
表 . HIV感染者の届出及び転症報告を全て実施した者の届出理由 HIV感染者の届出 転症報告
῏nΐ,2,ῐ ῏῍ῐ ῏nΐ+3-ῐ ῏῍ῐ 法律の規定
重要な疾病 施設の方針 大流行の危険 同意が得られた その他
,1, ++- .1 .2 +1 1
῏30῍ῐ
῏.*῍ῐ
῏+1῍ῐ
῏+1῍ῐ
῏ 0῍ῐ
῏ ,῍ῐ
+2/
02 ,1 -0 0 .
῏30῍ῐ
῏-/῍ῐ
῏+.῍ῐ
῏+3῍ῐ
῏ -῍ῐ
῏ ,῍ῐ
῏注:重複回答ありῐ
῏ ,3 ῐ ,3
とする者に対するオッズ比はいずれも-以上と῍HIV感染 者の届出の場合よりも高い値であったῌ
考 察
感染症患者の届出制度の目的として῍ 当該疾病の現状把 握が第一に挙げられるῌ わが国の寄生虫病ῌ性病の統計数 値には実状を反映していないものがあるとされ+ῑ῍ 届出義 務のある感染症を診断した医師の2*῍以上が ῒ実際には ほとんど届けていないΐ と報告されている,ῑῌ わが国の HIV/AIDS患者の届出状況についてはこれまでほとんど 検討されておらず῍ 本調査は今後のHIV/AIDS対策を検 討する上で有用であるῌ 調査票を配布した-3+ 診療科の 内῍ 調査票をHIV/AIDS診療担当医師に配布したとの回 答が得られたのは,,.診療科 ῐ/1῍ῑ と῍ 拠点病院の全て を必ずしも代表しているとは限らないῌ もっとも῍ AIDS 診療を担当する医師に対する調査票に関しては配布数に対 する有効回答の割合は3+῍と非常に高かったῌまた῍感染 症患者届出状況に関する調査で郵送法にて実施されたもの の 回 答 率 は.,῏3,῍ と 調 査 に よ っ て 異 な っ て い る が+ῌ-,/,0ῑ῍ 本調査の結果はその間に位置するものであったῌ 調査に回答した医師の半数弱はHIV/AIDS患者の診断経 験がなかったῌ 本研究はエイズ拠点病院の担当診療科にて HIV/AIDS患者の診療を担当する医師を調査対象としたῌ よって῍ ῒ現にHIV/AIDS患者の主治医となっている医 師ΐ もしくは ῒもし患者が来たならば治療に当たる ῐ主治 医になるῑ であろう医師ΐ のどちらかに当てはまる医師が 対象となり῍ 必ずしも診断経験を有するとは限らないῌ
調査に協力が得られた診療科あたりの医師数は平均-., 人であったῌ エイズ拠点病院の多くは大学病院などの大規
模な病院であり῍ 担当診療科の多くは内科系であることか ら῍ この値は診療科に所属する実際の医師数より少ないと 考えられるῌ もっとも῍ エイズ拠点病院の担当診療科が HIV/AIDS患者の診療のみを行っているとは限らないῌ当 該診療科に所属する医師であっても῍HIV/AIDS以外の疾 病の診療を担当している場合には調査対象とはされなかっ た可能性があるῌ それぞれのエイズ拠点病院における診療 体制をHIV/AIDS患者の分布などを考慮して検討するこ とは今後の課題であるῌ
医師の属性によってHIV/AIDS患者の診断経験に差が 認められたῌ 経験年数が長い者῍ 医育機関附属の病院に勤 務する者῍ 主たる診療科が内科及び小児科の者で診断経験 を有する者の割合が高くなることに矛盾はないῌ 主たる業 務が教育ῌ管理ῌ研究ῌその他の者が῍ 診療を主たる業務 とする者より診断経験を有していたのは῍ 教育ῌ管理ῌ研 究を主たる業務とする者の多くは医育機関附属の病院に勤 務する者であるためと考えられるῌ
本調査では2*῍以上の医師が診断したHIV感染者の届 出及び転症報告を全て実施していたことが明らかになっ たῌ 伝染病統計に関する調査では῍ 届出伝染病ῌ寄生虫 病ῌ性病を ῒ場合によっては届け出なくても良いと思うΐ と回答した医師は全体の0,῍であり῍ 実際の対応として ῒ全て届け出るΐとした者は,2῍であった+ῑῌさらに῍小児 科を主とする医師への感染症届出の調査では ῒ法律を遵守 し῍ きちんと届け出るべきであるΐ とするものは全体の -.2῍とごくわずかであったとされている,ῑῌ 海外における 感染症サ῎ベイランス届出に関する医師の意識調査では῍ 対象とする疾患が生命に大きくかかわると思われている疾 病の場合には届出の実施率が高くなるとされている-,.ῑῌ米 国でのHIV/AIDS患者の届出に限定した調査では῍ 22῍ 表 / 感染症予防法施行以後のHIV感染者届出及び転症報告実施状況別の回答者の属性
属性 暴露ῌ非暴露 一部実施せず 全て実施 Crude Odds Ratio 3/῍CI HIV感染者の届出
医籍登録年数 ,*年以上 ,*年未満
0 .
00 3.
,4+. *4.2ῌ+*41
従事施設 医育機関附属以外の施設 医育機関附属の病院
2 ,
32 0,
,4/- *4.2ῌ,/4+
主な診療科 内科又は小児科以外 内科又は小児科
/ /
-0
+,. -4.. *41.ῌ+/41
転症報告
医籍登録年数 ,*年以上 ,*年未満
2 2
-, /*
+4/0 *4.0ῌ/4,3
従事施設 医育機関附属以外の施設 医育機関附属の病院
+- -
.0 -0
-4-3 *42-ῌ+341
主な診療科 内科又は小児科以外 内科又は小児科
2 2
+2
0. -4/0 *433ῌ+,4/
ῐ -* ῑ -*
の医師が診断した患者を たいてい または いつも 届 け出ると回答したと報告されている0わが国においても
HIV/AIDS患者の届出実施割合が他の疾病より高くなっ
たとしても矛盾はない
感染症予防法施行後の+333年.月+日以降ではHIV感 染者の届出実施割合が統計学的に有意 p*.*/ に高く なっていた 感染症予防法施行に伴って 旧法第/条の規 定が廃止され 全ての感染者が届出対象になったことと届 出義務には罰則規定が加えられたことが影響していると考 えられる 転症報告の実施状況はHIV感染者の届出状況 より不十分な傾向を認め 感染症予防法施行前後でも大き な変化は認められなかった 転症報告は既に一度報告を 行った後のものであり 報告漏れの可能性がHIV感染者 より高いと考えられる 感染症予防法施行に伴って HIV 感染者の届出義務には罰則規定が加えられたが 転症報告 は義務から任意に変更されたことから 報告漏れが増加す る可能性がある
届出を実施しない理由として最も多かったのは 紹介元 が届けたはず と考えた場合であった 届出をしなかった 理由に関する設問では無回答の者の割合が高かった 無記 名の自記式調査票を用いたことと 法で規定された届出を 実施しなかったという明らかに法律違反となる経験に関す る設問であることから 実際には該当しないにもかかわら ず該当すると回答することは考えにくい よって 届出を しない理由として回答が得られた結果は現実を過小評価し ている可能性の方が過大評価をしている可能性よりも高 い 紹介元が届けたはずと考えたために届出が実施され なかった可能性は 本調査の結果を下回る可能性は低いと 推定される
届出を実施しない理由として 届出は患者のプライバ シ保護に反する を挙げたものはほとんど認められな かった感染症患者-淋病及び梅毒患者/HIV/AIDS患 者0の届出を実施しないことがあるとした医師の.* 0*῍ が 患者のプライバシ保護を問題としていた この割合
の違いは わが国のHIV/AIDS患者の届出には氏名の他
性ῌ生年月日などの情報が含まれていないことが影響して いると考えられる アメリカ合衆国ジョジア州のHIV 届出様式には氏名は含まれていないが性ῌ生年月日などが 含まれており2 HIV/AIDS患者の届出に関する意識調 査0では約2*῍の医師が氏名を含めて報告するべきであ るとしている 重複届出によるHIV/AIDS患者数の過大 評価の可能性1報告漏れの問題転症報告との連携プラ イバシ保護などの複数の観点から個人情報の取り扱いに ついて検討を行う必要がある
淋病や梅毒の届出に関して皮膚科性病科泌尿器科 産婦人科を専門とする医師は届出に対して積極的であっ
た/ 本調査でもHIV/AIDS患者の診療を主に担当してい ると考えられる内科系の医師は届出を実施している割合が 高い傾向が認められた 経験年数が/年未満および,*年 以上の場合は/年以上,*年未満の場合と比較して届出を 実施する医師の割合が高かったがその差は小さかったとさ れ/ 本調査の結果とは異なる傾向が認められたしかし 主たる診療科の影響は経験年数より大きかったことは同様 であった
勤務する施設の種類によって届出状況が異なる傾向が認
められたHIV/AIDS患者の届出状況には勤務する施設の
病床数の関連はないとされている0 しかし 担当する患 者数や月当たりの新患数によって届出に関する意識は異な るとされている/ 勤務する施設のみを検討するのではな く 診療科を含めた業務内容を考慮する必要があると考え られる
本調査の結果 2*῍以上の医師が診断した全てのHIVῌ AIDS患者の届出を実施しており これまでのわが国にお ける感染症患者の届出状況+,,よりも高い割合で届出が実 施されていることが示唆された また 感染症予防法施行 後は届出実施割合がさらに高くなっておりHIV感染者数 の把握状況はより正確になったと考えられる しかし 転 症報告は義務から任意に変更されたことによって 今後は 報告漏れが増加する可能性がある 届出を受けた機関によ る積極的な再調査 アクティヴῌサベイランス1 届出 によって得られた情報をまた別の情報源から収集した情報 によって検証して完全性及び代表性の検討を行うこと capture-recapture methods3 などの方法を用いてHIV/
AIDS患者の届出状況を検討することも重要と考えられ る
本研究は,***年度厚生省厚生科学研究費補助金エイズ 対策研究事業特別重点研究 HIV感染症の疫学研究 主 任研究者:木原正博 の一部として実施した
文 献
+ 宇都宮啓:伝染病統計の実情についてアンケト調 査結果より.厚生の指標-/ +:3ῌ,*,+322. , 岡空輝夫星加忠孝 常井幹生 小谷倫子 大谷恭一:
伝染病の届出義務に関するアンケト調査について 伝染病予防法の改正を願って 日本医事新報-1,-: ./ῌ.3,+33/.
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Survey of Physicians Working for AIDS Core Hospitals about Reporting on HIV Infected Persons and AIDS Patients and the Factors
That May Influence the Decision to Report
Shinichi T
ANIHARA+ῐ, Yosikazu N
AKAMURA,ῐand Shuji H
ASHIMOTO-ῐ+ῐDepartment of Environmental Medicine, Shimane Medical University
,ῐDepartment of Public Health, Jichi Medical School
-ῐDepartment of Hygiene, Fujita Health University School of Medicine
Objective: To clarify the experience with diagnosis and reporting on HIV-infected persons and AIDS patients of physicians who were in charge of HIV/AIDS treatment in AIDS core hospitals and analyze the factors that may influence the decision to report.
Materials and Methods: Through the chief physicians of the -3+ departments that are concerned with AIDS treatment in the -21 medical facilities established as AIDS core hospitals, an anonymous questionnaire regarding their experience with the diagnosis and reporting of HIV/AIDS patients was distributed to all physicians who were in charge of AIDS treatment as of December-+,+333. It was requested that the questionnaire be returned by mail.
Results: Of all-3+departments,,,. ῏/1ῌῐ cooperated with the survey. A total of1*.
questionnaires were distributed to the physicians and 02+ ῏31ῌῐ were returned, among which0., ῏3+ῌῐ contained data that were contributory to our survey. It was learned that -.+ respondents ῏/-ῌῐ had made a diagnosis of HIV/AIDS and more than 2*ῌof the physicians experienced making diagnosis of HIV/AIDS reported all patients. The rate of reporting on HIV/AIDS patients improved after April+,+333. The two major reasons for not reporting were :῎because the patient was referred to another physician” ; and῎because it was believed that the incidence had already been reported”. Physicians in specialties other than internal medicine or pediatrics reported incidences less frequently.
Conclusion: It is conceivable that reporting on HIV/AIDS patients fairly accurately reflects the incidence of this disease in Japan. Following the implementation of the Law Concerning the Prevention of Infectious Diseases and Patients with Infectious Diseases, the rate of reporting on HIV/AIDS patients improved. However, a change in the law concerning reporting on patients who progress to AIDS from mandatory to voluntary may result in non-reporting of some in the future.
Key words: HIV-infected persons, AIDS patients, the Law Concerning the Prevention of Infectious Diseases and Patients with Infectious Diseases, reporting
῏ -, ῐ -,