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国際性について

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Academic year: 2021

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(1)

小 泉 潤 二

Junji KOIZUMI

 「国際化」という言葉が日本で頻繁に使われるよ うになったのは、おそらく 1980 年代頃からである。

新聞記事でも学術シンポジウムでも、この言葉を使 いこの概念をテーマとすることが、それ以前よりず っと多くなった。

 今では大阪大学も、いわゆる「グローバル 30」 (国 際化拠点整備事業)初年度採択 13 拠点の一つとなり、

今後の 10 年で留学生を倍増させようとしている。

留学生センターも強化される方向であり、大阪大学 の国際貢献のために平成 19 年に設置されたグロー バルコラボレーションセンター(GLOCOL)も予 算の増額と活動の拡大を目指している。大阪外国語 大学との統合により、国立の総合大学で唯一外国語 学部を持ち国際リソースを拡大した大阪大学は、新 たな条件のもとで教育と研究における国際化を展開 していくことになる。

 私自身は、学部生時代にメキシコへの政府交換留 学の機会を経て、自分が生まれ育った日本の環境と は根本的に異なる世界と歴史を生きる人々について 知った。その後、大学院の修士を終えると同時にア メリカに留学し、博士課程の大学院生生活を送りな がら、全世界で最も豊かな人々と最も力強く活発に 行われる知的活動に接することになった。その間、

アメリカ国立科学財団(NSF)の資金で、中米グア テマラ北西部山間の農村に 16 カ月ほど住み込み、

世界の最周辺部の、最も貧しく政治的社会的歴史的 矛盾に満ちた状況で現地調査と研究を行った。米国 に戻り学位を得た後、しばらくカナダのアルバータ でポスドク生活を送り、同じ先進国の間の微妙な関 係について感じることになった。その後日本に戻っ て阪大に異動するまでいくつかの大学で教えながら、

日本国内のさまざまな地域や大学や学生を見た。阪 大の教授になると同時にプリンストン高等研究所に 招かれ、世界最高の知的生産拠点とされる場を知っ た。

 一時は、海外に滞在した時間が人生の2割を超え た時期もあった。現在、合計で 10 年ほどであるから、

これは決して多くない。しかし振り返ってみれば、

海外生活の時間的な長さや訪問し滞在した場所の数 はあまり重要ではなかった。そうしたさまざまな地 域と社会を自ら訪れ、それらの間の不安定で緊張に 満ちた境界領域に身を置いたこと、そしてグローバ ル世界の中央と周辺に直接取り込まれ、この世界が いかに「多様きわまる」人々により成り立っている かを日常生活の中で知ったことが、なにより印象的 であるばかりでなく、かけがえのない財産となった。

 現在は、人類学民族科学国際連合(IUAES)や人 類学会世界協議会(WCAA)の中心として、国際連 携と国際協力のための仕事をしている。結果として みれば、 「国際」に深く関わってきた。国際 interna- tional とは、国(nation)と国の間を意味すると同 時に、民族(nation)と民族の間、人々と人々の間 をも意味する。そうした「間」に身を置いてきたに しても、それは意図したことではなく結果だった。

「国際化を目指す」という標語はよくみるが、国際 化は目的や目標ではない。国際化は常に結果である。

逆説的ではあるが、 「国際化」という言葉が使われ

− 1 − 1948年9月生

Ph.D., Anthropology, Stanford University スタンフォード大学大学院 人類学博士 課程修了(1981年)

現在、大阪大学 理事・副学長(教育・情 報担当) 附属図書館長 人類学博士 文 化人類学・中南米研究 

人類学民族科学国際連合(IUAES)事務 総長、人類学会世界協議会(WCAA)前 会長     

TEL:06-6879-7002 FAX:06-6879-7007

E-mail:[email protected]

国際性について

Being "International"

Key Words:internationalization, globalization, diversity, contemporary world

生 産 と 技 術  第62巻 第1号(2010)

巻 頭 言

(2)

なくなったときはじめて、国際化が十分に進行した ことになる。

 それにしてもこのグローバル世界は、政治につい ても経済についても文化についても、先が見えなく なっているとつくづく思う。まったく予想もされな かったことが起きており、これからも起きるであろ う。拠点リーダーを務めているグローバル COE プ ログラム「コンフリクトの人文学国際研究教育拠点」

の研究成果を待つまでもなく、世界の変化は加速し、

流動性は増大し、軋轢の根は深い。こうした中で必 要なのは、どのような状況にも機敏かつ柔軟に、多 様な視点から理解すると同時に滑らかに意思疎通し 強靭に対応できる能力である。本当の国際性とは、

そのような能力ではないか。大阪大学の教育を通じ て、そうした能力の育成を実現できればと思う。

− 2 −

生 産 と 技 術  第62巻 第1号(2010)

参照

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