日本教育工学会研究報告集 JSET B1 プログラミング教育の指導に対する不安を軽減するための試案 A Sequence of Plans to Reduce Anxiety Factors on Teaching Programming 中村佐里 * 三尾忠男 ** 波多野和彦 ***
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(2) それぞれの難しさに合わせた演習課題を検討. 述),④プログラミング教育を実施すること. し,指導方法を工夫することにより,難しさ. への不安(4 件法)とその理由(自由記述),. の軽減につながると考える(中村ほか 2018).. 不安を解消するために必要なこと(複数選択. また,プログラミング教育では,. から回答)とした.. 「コンピュテーショナルシンキング: Computational Thinking」に基づき,プロ. 3.3. 授業計画. グラムを作成する際に用いられる,様々な概. 授業計画を表 1 に示す.. 念を生かし,日常生活の中で,論理的な思考. 表 1 A 大学「プログラミング教育法」 の授業内容. である「プログラミング的思考」を育成する ことが主眼である.だが,初学者がこれらの. カテゴリ. 概念を踏まえた授業設計することは難しい.. 回 1. そのため,実習を通じて,プログラミング技. 知識. 術の良さや課題を検討し,プログラミング的 思考を理解させることが望ましい.. 2. 小学校のプログラミング教育は,中学校技 3. 術・家庭科(技術分野)や高等学校の情報へ. 技術 体験. 続いており,情報教育の全体像を理解してお. 4. く必要はあろう.また,最近では,プログラ 5. ミング教室などで学ぶ子どもも増え,プログ. 6. ラミングに対するニーズやレベルも多様化し. 7. ている.それらを踏まえて,少なくとも今春. 知識. から必修となった「情報Ⅰ」で扱う程度のプ 8. ログラミング技術を理解しておく必要はある. 実践 解説 ・ 技術 体験. そこで,教員養成課程の学生がプログラミ ング教育に抱く不安を軽減するため,プログ ラミング教育の指導において扱うべきテーマ や授業内容など,カリキュラムの組み立てや 学生への支援方法を検討した.. 9 10 11. 12. 3. 方法 3.1. 概要 首都圏にある A 大学の教育学部学生(1~ 4 年次:76 名)を対象に,2021 年 10 月から 2022 年 2 月まで(計 15 回)教職課程の選択 科目として,本年度より開講の「プログラミ ング教育法」において,授業最終回に Google フォームを利用し,調査を実施した. このうち,有効回答数は 74 名であった. 3.2. 調査項目 調査項目は,①授業について(授業内容, 分量,難しさ:5 件法)と授業内容以外で扱. これま での 復習. 13. 14. まとめ. 15. 授業内容 オリエンテーション,プログラミン グ教育の目的や位置づけ,情報教育 での扱い,プログラミング教育で育 む力 プログラミング体験(VBA) 開発環境設定とフローチャート プログラムの構造:変数と入出力 ① プログラムの構造:変数と入出力 ② プログラムの構造:条件分岐 プログラムの構造:繰り返し プログラミング体験まとめ プログラミング的思考とは (「テキシコー」の利用) 小学校での授業実践 Scratch 小学校での授業実践①音楽 小学校での授業実践②算数 プログラミング教材の利用 小学校での授業実践③教科外での実 践例 「リンゴキャッチゲーム」 小学校での授業実践④教科外での実 践例(応用 1)「シューティングゲ ーム」 小学校での授業実践⑤教科外での実 践例(応用 2)「シューティングゲ ーム」 Scratch を用いた教材の作成 (最終課題) Scratch を用いた教材の作成 (相互評価)と修正,まとめ. 4. 考察 4.1. 授業全般について 授業で扱ったテーマやカリキュラムの組み 立てが適当であったかどうかを検討するため, 授業最終回に,授業全般について質問した.. って欲しい項目(自由記述),②授業後の自 己評価(5 件法),③プログラミング教育の 継続について(5 件法)とその理由(自由記 ─ 91 ─.
(3) 4年(N =12) 授業と自身のイメージ 講義部分の分量 演習や課題の分量 授業内容の難しさ. M 4.08 4.58 4.50 3.50. SD 1.08 0.41 0.42 1.25. 表2 授業についての平均値と標準偏差 3年(N =23) 2年(N =12). M 3.70 4.09 4.39 3.87. SD 0.86 0.88 0.64 0.90. M 3.67 4.33 4.41 3.17. SD 0.72 0.56 0.58 0.64. 1年(N =27) M SD 3.52 0.77 4.07 0.59 3.93 0.74 4.00 0.74. 全体(N =74) M SD 3.69 0.92 4.20 0.81 4.24 0.79 3.74 0.96. 授業の分量については,講義(座学)(M =. ラミング」と呼ばれ,コンピュータを利用せ. 4.20, SD = 0.81)と演習や課題(M = 4.24,. ずに,プログラミング的思考を育成すること. SD = 0.79)ともに適当であったと考えられ るが,授業内容のレベル( M = 3.74, SD =. ができるため,低学年の児童も学習すること. 0.96)については少し難しいと感じた学生が. せる手順等の意義を考えた上で授業設計をし. 多かった.また,授業の印象も当初に抱いて. ないと,単なる作業で終わってしまう可能性. いたものと少し異なっていたようであった.. があり,扱うことが難しいテーマである(松. 学年による違いは見られなかった(表 2).. 永ほか 2019) .そのため,今回の授業では,. 学習内容については(図1),「Scratch で のプログラミング」(83.8%)「動画教材」. が可能である.しかし,教材の意味や体験さ. アンプラグドプログラミングの意味と実践例 を紹介するに止めることとした.. (59.5%)の関心が高く,特に Scratch は小. 「Scratch 以外でのプログラミング」や. 学校での実践例が豊富であり,高い技術力を. 「PC 以外でできるプログラミング教材」な. 要することなく使用でき,教える際にも活用. どをテーマとして扱うのであれば,体験させ. しやすいことが理解を深めたいという気持ち. るだけではなく,学生が自身の授業目的に合. につながったといえる.. わせて,扱う教材を選択できる力も育成すべ. 一方,VBA のプログラミング(23.0%). きであると考える.. については,「情報 I」レベルのプログラミ ング技術力の必要性から授業内容に加えたが,. 4.2. プログラミング教育の学習継続. 学生から難しいとの意見も多く,関心も低か. 4.2.1. 目的. った.しかし,授業時のリフレクションから,. 次に,体系的な学習計画や必要な取り組み. ロジック構築の面白さを体感し,達成感を感. を検討するために,プログラミング教育の学. じた学生もおり,理解を深めたいとする様子. 習機会の必要性やその理由について質問した. も少数ではあったが見受けられた.. ところ,全体の8割近くが今後も学びたいと. プログラミングの学習では,コンピュータ. 回答した.そのため,調査した「継続して学. を使う場合と,コンピュータを使わない場合. びたい理由(自由記述)」についても分析す. に大別される.後者は「アンプラグドプログ. ることとした.. 図 1 学習テーマの回答結果. ─ 92 ─.
(4) 「クラスター03」は,実習や教材作成など. 4.2.2. 共起分析と意味の抽出 記述の分析には,「KH Coder」(樋口 2014). の実体験を通じ,プログラミング能力や教材. を用い,前処理を行った上で,テキストの単. 開発力が「向上」した(させたい)といった. 純集計を行った結果,90の文が確認された.. 回答例から「実習を通じたプログラミング教. 総抽出語数は2,004語(異なり語数 386語). 育の能力向上」としたグループであった.. で,分析に使用される語数は820語(異なり. 「クラスター04」と「クラスター08」では, 「タブレット」「プログラミング教育」「学校」. 語数 282語)とした. 上位の51語について,共起分析を行い,共. 「重要」「必要」といった「これからの教育へ. 起ネットワークを作成した(図2).共起ネッ. の対応」を意識した言葉が多く抽出された.. トワークから抽出した結果と具体的な内容を. 特に3,4年生は,教育実習や学校ボラン. 表3に示す.また,共起ネットワークから要. ティア等で,小学校を訪れることも多く,パ. 約して抽出した意味を検討するため,継続の. ソコンやタブレットが日常的に利用されてい. 理由を5つの要素に整理した.. る状況を目にしており,自身が教員になった. 「クラスター01」は「プログラミング」 「授 業」「学ぶ」といった語からなっており,「プ. 時のために準備しておこうとする様子が窺え た.. ログラミング技術の授業活用」を学びたいと. 「クラスター05」では,「難しい」「内容」. するグループであった.バブルプロットの円. 「多い」「VBA」といった言葉が抽出され,. の大きさは語の出現数を表しており,多くの. 「授業内容の難しさ」から成るグループであ. 学生が,自身が授業する際に活用できること. った.授業内容の関心が少なかった VBA に. を示していた.また,「クラスター07」も. 関して,「難しさ」とバブルプロットが結び. 「活用方法」「学べる」「知る」といった語で. ついていたことから,回答例を確認した.. 構成されており,「クラスター01」と同じよ. 「VBA の内容ではなく,Scratch を使った教. うな傾向を示していた.. 材作成は楽しかったので」 「VBA の内容でつ. 「クラスター02」では, 「教員」「技術」「指. いていくのが難しかった場面などがあったた. 導」といった語から成り,とする「プログラ. め」「これ以上専門的な内容はついていく自. ミングの技術指導」を目的としたグループで. 信がない」などの否定的な意見が多く,テキ. あった.. 図 2 学習の継続理由に対する共起ネットワーク. ─ 93 ─.
(5) 表 3 各クラスターでの継続したい理由の回答例. スト言語の扱いなどを含めて,扱う内容のレ. プログラムを作成し,それぞれの言語の表現. ベルや回数などを検討する必要がある.例え. 方法の違いや特徴を比較させるなど,テキス. ば,苦手な学生も学びやすいよう,簡単な内. ト言語の習得を緩やかに進めていくことによ. 容をテキスト言語とビジュアル言語の両方で. って,技術向上を図ることは可能であろう.. ─ 94 ─.
(6) 「クラスター05」では,「子どもたち」「教. しさは課題であり,授業で扱う場合,ビジュ. える」といった「プログラミング教育の教. アル言語との併用で学習するなどの工夫が必. 授法」に関する語が抽出された.. 要であることが示唆された.. プログラミング授業では,技術的な側面を. また,学生の記述を分析した結果から,大. よりも,プログラミングの持つ面白さや楽し. 学の授業の中で,プログラミング技術の活用. さ,意図した通りに動いた時の達成感をどの. 方法,プログラミング技術,プログラミング. ように指導していくかが重要であり,「教え. 授業の教授法を身につけることを望んでおり,. る」ことに重点を置き,模擬授業を体験させ. これらを体系的に学習することが不安を軽減. ることは必要と考える.. する一助となることが明らかとなった. 今回の結果を活かした授業を開発し,授業. 4.3. 指導の不安を軽減するための取り組み. の効果検証を試みたい.. 指導不安を軽減するため,どのような取り 組みを期待するか聞いたところ,プログラミ ングの指導法やプログラミング技術を大学の 授業で学びたいとする意見が多かった(図3). その他,「コンピュータやプログラミング 技術の相談室」や「プログラミング教室へ教 員として参加」することを望む声があった. プログラミング教室などで指導することは, 子どもの思考過程を理解するためにも有益で あり,模擬授業ともなりうる.大学と地域社 会が連携し,積極的にこのような場を検討し ていくことが求められる.. 図 3 指導の不安を軽減するために 必要だと思う取り組み. 5. 今後に向けて 本稿では,教員養成課程の学生を対象に, プログラミング教育に抱く不安を軽減するた め,プログラミング教育の指導において扱う べきテーマや授業内容など,カリキュラムの 組み立てや学生への支援方法を検討した. その結果,難しさに対応した学習内容の設 定は適当であったが,テキスト言語の持つ難. 参考文献 樋口 耕一 (2014) 社会調査のための計量テキ スト分析 内容分析の継承と発展を目指 して.ナカニシヤ出版,京都 松永 豊,梅田 恭子,磯部 征尊,齋藤 ひと み (2019) 教員を目指す学生に対するプ ログラミング教育の指導法について. 愛知教育大学教職キャリアセンター紀 要,2019, 4:91-96 松田 稔樹 (2017) 機器操作能力から問題解決 力へ:情報教育の課題と展望. Informatio : 江戸川大学の情報教育と環 境,14:3-12 中村佐里,波多野和彦,三尾忠男(2018) 文 系学生に対するプログラミング学習体験 が及ぼす影響について.日本教育工学会 研究報告集,18-1:29-32 中村佐里,三尾忠男,波多野和彦 (2022) 小 学校でのプログラミングの教育指導にか かわる不安要因について.日本教育工学 会研究報告集,22-1:147-150 南葉宗弘,宮寺庸造,櫨山淳雄,北澤武,加 藤直樹 (2018) 小学校教員養成課程にお けるプログラミング教育.教育システム 情報学会 第 43 回全国大会講演論文集, 201-202 山本 広志 (2019) 教員養成課程のシラバス にみる小学校プログラミング教育への対 応状況に関する調査研究.山形大学教 職・教育実践研究,14:33-39. ─ 95 ─.
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