Structural Analysis of Lignin by Pyrolysis-Gas Chromatography (VI) Analysis of Lignin in Tropical Hardwoods Hiroshi Ohi, Yukino Yasuta, Akiko Izumi an

全文

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研 究 報 文

熱 分 解 ガ ス ク ロ マ トグ ラ フ イ ( に よ る リ グ ニ ン の 構 造 解 析*1(第6報)

熱 帯 産 広 葉 樹 材 リ グ ニ ン の 分 析*2

筑波大学農林工学系 大井 洋,安 田有 紀 野,和 泉 明 子,黒 田健一*1

Structural Analysis of Lignin by Pyrolysis-Gas Chromatography (VI)

Analysis of Lignin in Tropical Hardwoods

Hiroshi Ohi, Yukino Yasuta, Akiko Izumi and Ken-ichi Kuroda

Institute of Agricultural and Forest Engineering, The University of Tsukuba

安 田有紀 野

Pyrograms of pyrolysis-gas chromatography (Py-GC) from thirteen species of tropical

hardwoods were obtained under pyrolytic conditions with a Curie-point pyrolyzer at 500•Ž

for 4 seconds to determine twenty six pyrolysis products and to estimate ratios of syringyl

units to guaiacyl units (S/G ratios) of lignin and lignin-like substances. Before the

pyrolysis, wood meals were extracted with benzene and successively with 70% acetone/wa-

ter to remove tannins and other phenols. The observed S/G ratios were in good agreement

with syringaldehyde/vanillin (S/V) ratios obtained by nitrobenzene oxidation. The extracted

kapur wood meals were treated with hot 1% NaOH solution to extract lignin-like sub-

stances. On a pyrogram of the 70% acetone/water extractives, guaiacol, 4-vinylguaiacol,

syringol, and 4-vinylsyringol were identified as main pyrolysis products. On a pyrogram of

a chloroform-soluble part of the hot 1% NaOH extractives, vanillin and acetoguaiacone

were identified as main peaks, and the characteristic of the pyrogram was quite different

from that of lignin. In order to simplify a method for determination of acid-insoluble

(Klason) lignin in tropical hardwoods, wood samples extracted with 70% acetone/water

were hydrolyzed at 121•Ž, and the acid-insoluble residues were characterized by Py-GC.

The conents of acid-insoluble residues, which were given by hydrolysis with 3% or 4%

sulfuric acid at 121t for 1 hour, were slightly smaller than the Klason lignin contents. On

pyrograms of the acid-insoluble residues given by hydrolysis with 4% sulfuric acid, ratios

*1紙 パ 技 協 誌

,51(6),932‑944(1997)を 第5報 と す る(大 井,和 泉,黒 田3氏 の 顔 写 真 は 第2報:紙 パ 技 協 誌,48,12121に 掲 載)。

*2本 報 の 一 部 は

,第41回 リ グ ニ ン 討 論 会(1996年10月,名 古 屋)に お い て 発 表 し た 。

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1214 大 井 洋,安 田 有 紀 野,和 泉 明 子,黒 田健 一

of 4-methyl guaiacol (4-methylsyringol) to guaiacol (syringol) were higher than those on pyrograms of the Klason lignins.

Keywords: pyrolysis, gas chromatography, lignin, tropical wood, hardwood, alkaline nitrobenzene oxidation, acid-insoluble lignin

1.  緒 言

近 年,熱 帯 林 の減 少 は 急 速 に 進 み つ つ あ り,地 球 的 規 模 で の 環 境 変 化 を も た ら す こ と が 心 配 さ れ て い る。

熱 帯 林 の 保 全 管 理 は 重 要 で あ り,ま た熱 帯 林 資 源 の 有 効 な 利 用 は 今 後 の 非 常 に 重 要 な 課 題 で あ る。

熱 帯 産 材 の 樹 種 は 非 常 に 多 く,そ れ らの 化 学 的 特 徴 も広 範 囲 に わ た る 。 ま た,そ の 大 きな 特 徴 の 一 つ に抽 出 成 分 を含 む こ とが あ げ ら れ る。 熱 帯 産 広 葉 樹 材 の 中 に は タ ン ニ ン等 の ポ リフ ェ ノ ー ル 類 を 多 量 に含 み,リ グニ ン量 が温 帯 産 広 葉 樹 材 に 比 べ て特 に 多 い樹 種 が あ る こ と が 知 られ て い る1)。パ ル プ 用 原 料 と して 使 用 す る場 合,こ れ らは 蒸 解 阻 害 の 要 因 と な る.ま た,熱 帯 産 広 葉 樹 リ グニ ンで は,リ グ ニ ン を 構 成 す る シ リン ギ ル 核(S)と グ ア イア シル 核(G)の 比(S/G比)が, 温 帯 産 広 葉 樹 リグ ニ ン の そ れ よ り も低 い こ と も報 告 さ れ て い る1)。

特 定 の 抽 出 成 分 を含 み,色 合 い に 特 徴 が あ る材 あ る い は 耐 久 性 の 高 い 材 は家 具 等 の 材 料 と して 有 効 に利 用 され る 。 現 在 未 利 用 の 樹 種 に つ い て は そ の 化 学 的 特 徴 を生 か して利 用 す る こ とが 望 ま しい 。 廃 材 をパ ル プ 用 原 料 と して効 率 的 に 利 用 す る た め に は,あ る い は 多 く

の 樹 種 の 中 か らパ ル プ 用 に適 した樹 種 を 見 出 す た め に は,化 学 的 特 徴 を 簡 便 に 分 析 す る 方 法 が 求 め られ る 。

前 報 で 和 泉 ら2)は,日 本 産 広 葉 樹 材 リ グ ニ ン の 定 量 分 析 を 行 っ て ア ル カ リ性 ニ トロベ ンゼ ン酸 化 法 と比較 し,熱 分 解 ガ ス ク ロ マ トグ ラ フ ィー(Py‑GC)が 簡 便 で 有 効 な 方 法 で あ る こ と を 示 した 。 本 研 究 で は,熱 帯 産 広 葉 樹 材 リグ ニ ンの 性 状 を簡 便 に 分 析 す る た め に, 13種 類 の 熱 帯 産 広 葉 樹 をPy‑GCに よ り分 析 した 。 そ

して 第一 に,ニ トロベ ンゼ ン酸 化 法 に代 わ る リ グ ニ ン 分 析 法 と してPy‑GCの 有 効 性 を検 討 す る た め に 。Py

‑GCに よ る リ グニ ンの シ リ ン ギ ル 核/グ ア イ ア シル 核 比(S/G比)を 求 め,ニ トロ ペ ンゼ ン 酸 化 に よ る シ リ ン グ ア ル デ ヒ ド/バ ニ リ ン比(S/V比)と の 相 関性 を 調 べ た 。 第 二 に,木 材 抽 出 物 をPy‑GCで 分 析 し, パ イ ロ グ ラ ム か ら こ れ ら と リグ ニ ンの 特 徴 と を比 較 し た 。 第 三 に,リ グ ニ ン を 簡 便 に 定 量 す る た め,木 材 を オ ー ト ク レ ー プ 中121℃ で 酸 加 水 分 解 し,Py‑GCに

よ っ て そ の 酸 不 溶 性 残 さ の 特 徴 を調 べ た,

2.  実 験

2.1  供 試 材 料

東 南 ア ジ ア お よび パ プ ア ニ ュ ー ギ ニ ア 地 域 に 産 出 す る13種 の 広 葉 樹 材 の 木 粉(20‑80メ ッ シ ュ)を 試 料 と して 用 い た 、 こ れ らは 森 林 総 合 研 究 所 の 島 田 謹 爾 氏 よ り恵 与 さ れ た 。 慣 用 名 お よび 学 名 を 以 下 に 示 す 。 た だ し,熱 帯 産 広 葉 樹 材 の 特 殊 性 か ら種 名 の 定 ま ら な い

もの が あ る。

No.  慣 用 名(英 名),学 名

1.  ア ン ベ ロ イ

(Amberoy), Pterocymbium beccarii

2.  イ ン チ ア

(Intsia), Intsia bijuga

3.  カ ナ リ ウ ム

(Canarium), Canarium indicum

4.  カ プ ー ル

(Kapur), Dryobalanops sp.

5.  カ メ レ レ

(Camerere), Eucalyptus deglupta

6.カ ロ フ ィ ル ム

(Calophyllum) , Calophyllum ve-

xans

7.  ク ル イ ン

(Keruing), Dipterocarpus sp.

8.  ジ ェ ル ト ン

(Jelutong), Dyera sp.

9.  タ ウ ン

(Taun), Pometia pinnata

10.  タ ー ミ ナ リ ア

(Terminalia), Terminalia cara-

mansanai

11.  プ ジ ー ク

(Phdiek), Anisoptera glabra

12.  マ ラ ス

(Malas), Homalium foetidum

13.  ラ イ ト レ ッ ドメ ラ ン チ

(Light red meranti),

Shores sp.

2.2  試 料 の 抽 出 処 理 2.2.1  ベ ンゼ ン抽 出

ワ ッ ク ス類 を 除 去 す る 目 的 で,ソ ッ ク ス レー 抽 出 器 を 用 い て 試 料 を ベ ン ゼ ン で6時 間 抽 出 し,抽 出 液 を濃 縮,乾 固 して 抽 出 物 量 を求 め た 。

2.2.2  ア セ トン/水 抽 出

タ ン ニ ン 等 の ポ リ フ ェ ノ ー ル 類 を 除 去 す る 目 的 で, Oharaら3)の 方 法 に 準 じ,ベ ン ゼ ン 抽 出 後 の 試 料 に 70%ア セ ト ン/水(容 積 比7/3)を 加 え,常 温 で 一 晩 静 置 して 抽 出 し た 。 これ を 遠 心 分 離(4,000rpm,20 分 間)し て 上 澄 み を 回 収 した 。 抽 出 を 合 わ せ て4回 行 い,上 澄 み を濃 縮,乾 固 して抽 出 物 を 得 た 。 こ の 抽 出

―80― 紙 パ技 協誌 第51巻 第8号

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熱 分 解 ガ ス ク ロマ トグ ラ フ ィー に よ る リグニ ンの 構 造 解 析(第6報) 1215 後 の 木 粉 を 試 料 と して リグ ニ ン分 析 を行 っ た 。 ま た,

抽 出 物 をPy‑GCで 分 析 す る場 合 に は,濃 縮 した 抽 出 液 を非 水 系 ク ロ マ トデ ィ ス ク(0.2μm)で ろ 過 し, Py‑GC用 パ イ ロ ホ イ ル 上 に 滴 下 後 乾 燥 し て 熱 分 解 し た 。

2.2.3  水 酸 化 ナ ト リウ ム 水 溶 液 に よ る 熱 抽 出 カ プ ー ル 材 に つ い て,ベ ンゼ ン お よ び70%ア セ ト ン/水 に よ り抽 出 した 試 料 約2gに1%水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液800mlを 加 え,還 流 冷 却 管 を つ け て2時 間,煮 沸 抽 出 した 。 こ れ を吸 引 ろ 別 し,残 さ木 粉 は1 規 定 塩 酸 と水 に よ り順 に洗 浄 し た 。 ろ 液 はpH7と し て 約100mlに 濃 縮 し,生 じた 沈 殿 を ろ 別 し た 。 濃 縮

ろ液 をpH2と して ク ロ ロ ホ ル ム で 抽 出 し,濃 縮,乾 固 して 抽 出物 を得 た。

2.3  リグ ニ ン の 定 量

ア セ トン/水 抽 出 木 粉 約0.5gを 精 秤 し,50mlビ ー カ ー に 入 れ,72%硫 酸7.5mlを 加 え て 室 温 で2時 間 半 放 置 した 。 試 料 は 約15分 ご と に ガ ラ ス 棒 で よ く 混 ぜ 合 わ せ た 。 こ の 処 理 を 第 一 次 加 水 分 解 処 理 とす る。

第 二 次 加 水 分 解 処 理 は以 下 の3つ の 条 件 で 行 っ た 。 (1) 第 一 次 加 水 分 解 後,硫 酸 濃 度 を3%に し,オ ー トク レー ブ 中121℃ で1時 間 の 処 理 を 行 っ た 。

(2) 構 成 糖 分 析 の 加 水 分 解 条 件 と比 較 す る 目的 で, 第一 次 加 水 分 解 後,硫 酸 濃 度 を4%に し,121℃,1時 間 の処 理 を 行 っ た 。 な お,J.TAPPIお よ びTAPPI 法4)に よ る 第 一 次 加 水 分 解 の 処 理 時 間 は1時 間 で あ る

が,1時 間 で は 木 材 セ ル ロ ー ス の 膨 潤 と後 段 の 加 水 分 解 が 不 十 分 で あ る こ と を報 告 した5)。 した が っ て こ こ

で は,一 次 加 水 分 解 処 理 は2.5時 間 と し た。

(3) ア ン ペ ロ イ,カ ナ リウ ム,カ プ ー ル,カ メ レ レ, カ ロフ ィル ム の5樹 種 に つ い て は,ク ラー ソ ン リグ ニ ン法 に よ る処 理,す な わ ち 硫 酸 濃 度 を3%に し,100℃, 4時 間 の 煮 沸 に よ る処 理 を 行 っ た 。

以 上 の 第 二 次 加 水 分 解 処 理 後 に,酸 不 溶 性 残 さ を ガ ラ ス フ ィル タ ー(柴 田 製1G4)で 吸 引 ろ 別 し,水 洗 浄 後 乾 燥 し,リ グ ニ ン 量 を求 め た 。 今 回 は酸 可 溶 性 リ

グニ ンに つ い て は検 討 しな か っ た 。 2.4  熱 分 解 ガ ス ク ロマ トグ ラ フ ィ ー

試 料 約100‑200μgを パ イ ロ ホ イ ル に 包 み,500℃ で 4秒 間熱 分 解 し,そ の 熱 分 解 生 成 物 をガ ス ク ロマ トグ ラ フ ィ ー に よ り分 析 し た 。 分 析 条 件 は 前 報2)に した が っ て 以 下 の とお りで あ る 。

キ ュ ー リ ー ポ イ ン ト熱 分 解 装 置:日 本 分 析 工 業 JHP‑3型,オ ー ブ ン温 度:270℃,ト ラ ンス フ ァ ー チ ュ ー ブ 温 度:270℃,ガ ス ク ロマ トグ ラ フ:島 津 製 作 所GC一14A,検 出 器:FID,検 出 器 温 度:280℃,検

出器 レ ン ジ:10‑1,キ ヤ リア ー ガ ス:ヘ リ ウ ム(流 速 30ml/min),カ ラ ム:Ultra‑Alloy‑(8H)‑1(Hita‑

chi,長 さ30m,内 径0.8mm,膜 厚2.0μm),イ ン ジ ェ ク シ ョン 温 度:170℃,カ ラ ム 温 度:50℃ で1分 間 保 持 後5℃/minで270℃ ま で 昇 温 し,さ ら に10℃/

minで300℃ まで 昇 温 して20分 保 持 。

熱 分 解 物 の 定 量 に あ た っ て は絶 対 検 量 線 法 を 用 い た 。 な お,用 い た検 量 線 フ ァ ク タ ー は 前 報2)に 示 した 。 熱 分 解 物 は23種 類 の 収 率 を求 め,そ の う ち の以 下 の12 種 の 熱 分 解 物 を 用 い て,シ リン ギ ル 化 合 物 の グ ア イ ア

シル 化 合 物 に 対 す る モ ル 比 をS/G比 と して 算 出 した 。 Guaiacyl compounds: Guaiacol, 4-Methylguai- acol, 4-Vinylgualacol, Eugenol, trans-Isoeuge- nol, trans-Coniferyl alcohol.

Syringyl compounds: Syringol, 4-Methylsy- ringol, 4-Vinylsyringol, 4-Allysyringol, trans-4- Propenylsyringol, trans-Sinapyl alcohol.

な お 前 報2)で も 述 べ た よ う に,本 分 析 条 件 で は Coniferaldehydeの ピ ー ク とAcetosyringoneの ピー ク は 分 離 しな い 。 広 葉 樹 型 モ ノ リ グ ノ ー ル 脱 水 素 重 合 物(DHP)のPy‑GCの 場 合 に は α‑カル ポ ニ ル 型 熱 分 解 物 の 収 率 は 小 さ い の で,S/G比 の 計 算 に お い て Acetosyringoneを 無 視 す る こ と が で き る6)。木 材 の 分 析 の 場 合 に は,Acetosyringoneが 比 較 的 多 く生 成 す る こ と も あ り得 る 。 現 状 で はAcetosyringoneと Coniferaldehydeの 正 確 な 分 離,定 量 が で き な い た め, ConiferaldehydeとSinapaldehydeの 定 量 結 果 をS/

G比 の 計 算 に は 用 い な か っ た 。 2.5  ア ル カ リ性 ニ トロ ベ ンゼ ン酸 化

試 料 の ア ル カ リ性 ニ トロ ベ ン ゼ ン酸 化 分 解 は 常法 に 準 じて 行 っ た7)。分 解 物 で あ る バ ニ リ ン お よ び シ リン グ ア ル デ ヒ ドを ジ エ チ ル エ ーテ ル で 抽 出 し,ア セ トグ ア イ ア コ ン を 内 部 標 準 と して,そ れ ら を ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ に よ っ て 分 析 した。 シ リ ン グ ア ル デ ヒ ドの バ ニ リ ン に対 す る モ ル 比 をS/V比 と して 算 出 した 。 3.  結 果 と考 察

3.1  抽 出 物 量 と リグ ニ ン量

表1に,各 抽 出 物 量 お よび 酸 不 溶 残 さ量 を示 す 。 参 考 と して 灰 分 量 も示 す 。 全 体 と して ベ ン ゼ ン抽 出 物 量 お よ び 灰 分 量 は 小 さ く,ま た樹 種 に よ る 違 い も少 な か っ た 。 今 回 の 実 験 で 用 い た70%ア セ トン/水 抽 出 法 は, 樹 皮 の タ ンニ ン等 ポ リフ ェ ノ ー ル 類 の 抽 出 に 用 い られ る 一 般 的 方 法 で あ る。 ア セ ト ン/水 抽 出 物 量 が 最 も多 い樹 種 は ジ ェル ト ンで9.0%,最 も少 な い樹 種 は カ メ レ レ で2.3%で あ っ た 。 酸 不 溶 性 残 さ 量 に つ い て は,

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1216 大 井 洋,安 田 有 紀 野,和 泉 明 子.黒 田 健 一

Table 1 Contents of extractives and lignin in tropical hardwoods

Notes: a) Conditions of the primary hydrolysis: 72% sulfuric acid , 20•Ž, 2.5 hours, the secon-

dary hydrolysis: 3% sulfuric acid, 121•Ž, 1 hour.

b) Conditions of the primary hydrolysis: 72% sulfuric acid, 20•Ž, 2.5 hours, the secon-

dary hydrolysis: 4% sulfuric acid, 121•Ž, 1 hour.

ア ンベ ロ イ と カ ナ リウ ム で は 温 帯 産 広 葉 樹 程 度 で,そ れ 以 外 は 温 帯 産 針 葉 樹 程 度 で あ っ た 。 特 に カ プ ー ル 材 は 酸 不 溶 残 さ量 とア セ ト ン/水 抽 出 物 量 の 合 計 が40%

で あ っ た 。

な お,こ こ で 用 い た酸 不溶 性 残 さ 量 は121℃ の 酸 加 水 分 解 処 理 に よ っ て 得 られ た値 で,後 述 の よ う に ク ラ ー ソ ン リグ ニ ン法 に よ る リグ ニ ン量 よ り もや や 小 さ い 値 を示 した が,こ こ で は リグ ニ ン量 に相 当 す る値 と考

え た 。

3.2  第 二 次 加 水 分 解 条 件 と酸 不 溶 性 残 さ量 リグ ニ ンの 定 量 に は ク ラ ー ソ ン リグ ニ ン法 が 広 く用 い ら れ る が,吉 原 ら8)に よ っ て 第 二 次 加 水 分 解 を 硫 酸 濃 度3%,121℃,30分 で 処 理 す る 簡 便 法 が 提 案 さ れ て い る。 吉 原 ちが ポ プ ラ,ブ ナ な ど を用 い て 行 っ た 実 験 結 果 で は,硫 酸 濃 度2〜4%,お よび 処 理 時 間30分 か ら1時 間 の 範 囲 に お い て 酸 不 溶 性 残 さ収 量 は 変 わ ら な か っ た 。 し た が っ て 本 実 験 で は,硫 酸 濃 度3%, 121℃,1時 間 の 条 件 を 用 い た 。 一 方,硫 酸 濃 度3%の 加 水 分 解 で は,多 糖 の 単 糖 へ の 加 水 分 解 が 不 十 分 で あ る こ とが 指 摘 さ れ て い る8)。木 材 お よ び パ ル プ の 構 成 糖 分 析 で は,硫 酸 濃 度4%で 第 二 次 加 水 分 解 処 理 を行 う4)。硫 酸 濃 度4%の 条 件 を 用 い て も酸 不 溶 性 残 さ収 量 に 変 化 が 無 い の で あ れ ば,同 一 の 加 水 分 解 処 理 で 構 成 糖 と リグ ニ ン を 定 量 で き る と期 待 し,硫 酸 濃 度4%,

121℃,1時 間 の 条 件 に よ る 加 水 分 解 も行 っ た。

表1に 示 す よ う に,硫 酸 濃 度4%と した 条 件 で は, 硫 酸 濃 度3%の 条 件 と比 較 して 酸 不 溶 性 残 さ収 量 が 小 さ い 傾 向 が 認 め ら れ た 。 ま た,ク ラー ソ ン リグ ニ ン法 (100℃,4時 間)に よ る リ グ ニ ン 収 量 は,硫 酸 濃 度3%, 121℃,1時 間 の 条 件 に よ る収 量 に 対 して106%程 度 に な る 傾 向 が 認 め ら れ た(図1)。

熱 帯 産 広 葉 樹 材 の 分 析 で は,硫 酸 濃 度3%あ る い は

Lignin contents by hydrolysis at 121•Ž for 1 hour (•“)

Fig.1 Relationship of lignin contents between the two methods for the secondary hy- drolysis (3%sulfuric acid).

―82― 紙 パ技協 誌 第51巻 第8号

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熱 分 解 ガ ス ク ロマ トグ ラ フ ィー に よ る リグ ニ ンの 構 造 解 析(第6報) 1217 4%,121℃,1時 間 の 条 件 を用 い る と,ク ラ ー ソ ン リ

グ ニ ン法 よ り もや や 小 さ い 値 を示 す 場 合 が あ る こ とが わ か っ た 。 な お ア カ マ ッ パ ル プ の 場 合 で は,4%, 121℃ 加 水 分 解 条 件 に よ る値 が や や 小 さ い こ と,お よ びパ イ ロ グ ラ ム に つ い て は 条 件 が 異 な っ て もほ ぼ 同 等 で あ る こ と を示 した5)。 そ こ で 次 項 で は,熱 帯 産 広 葉 樹 材 酸 不 溶 性 残 さの パ イ ロ グ ラ ム を 比 較 した。

3.3  酸 不 溶 性 残 さの パ イ ログ ラ ム

熱 帯 産 広 葉 樹 材 の 酸 不 溶 性 残 さの パ イ ロ グ ラ ム で は, 特 徴 的 な4つ の 熱 分 解 物(グ ア イ ア コ ー ル,4‑メ チ ル グ ア イ ア コー ル,シ リ ン ゴー ル,4‑メ チ ル シ リ ン ゴ ー ル)が 認 め られ た 。 一例 と して カ プ ー ル,お よび 比 較 と して ブ ナ の パ イ ロ グ ラ ム を 図2に 示 す 。 ま ず,カ プ ー ル と ブ ナ の 比 較 で は ,S/G比 が 異 な る点 を 除 き 両 者 の パ イ ロ グ ラ ム が4つ の 主 な 熱 分 解 物 を与 え る点 で 類 似 して い た 。

カ プ ー ル の酸 不 溶 性 残 さ に つ い て,加 水 分 解 条 件 の 違 い に よ る差 異 を詳 細 に比 較 す る と,第 二 次 加 水 分 解 が4%,121℃,1時 間 の処 理 に よ るパ イ ロ グ ラ ム で は 4‑メ チ ル グ ア イ ア コ ー ル の グ ア イ ア コ ー ル に 対 す る比 (G2/G1比),お よ び4‑メ チ ル シ リン ゴ ール の シ リン ゴ ー ル に対 す る比(S2/S1比)が,ク ラ ー ソ ン リ グ ニ ン法(3% ,100℃,4時 間)の 場 合 よ り もや や 大 き か っ た(表2)。 他 の4つ の 樹 種 に つ い て 調 べ た と こ ろ(表2),4%,121℃,1時 間 の 処 理 に よ る残 さ のG

2/G1比,お よびS2/S1比 が,ク ラ ー ソ ン リグ ニ ン 法 の 場 合 よ り も大 き い 傾 向 が 認 め られ た 。

こ の よ う に熱 帯 産 広 葉 樹 材 の 分 析 に お い て は 酸 不 溶 性 残 さ収 量,お よび パ イ ロ グ ラム の 違 い が 認 め られ た 。 あ る種 の 熱 帯 産 広 葉 樹 材 を1%水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 に よ っ て 熱 抽 出 す る と,リ グ ニ ンに 類 似 した 物 質 が 抽 出 さ れ る とい う報 告 が あ る9)。 こ の よ う な ア ル カ リ

Retention time (min)

Fig.2 Py-GC traces of acid-insoluble lignins from kapur and buna (beech) wood.

Note: The names of pyrolysis products for the peak names are shown in Table 3.

1997年8月 ―83―

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1218 洋 .安 田有 紀 野.和 泉 明 子.黒 田健 一

Table 2 Phrolysis products ratios of acid-insoluble lignins from tropical hardwoods

Legend: G 1: guaiacol, G 2: 4-methylguaiacol, S 1: syringol, S 2: 4-methylsyringol.

抽 出 成 分 の 一 部 が4%,121℃,1時 間 の 酸 加 水 分 解 処 理 で は酸 に可 溶 化 す る た め,酸 不 溶 性 残 さ収 量 が低 く

な るの で は な い か と思 わ れ る。

な お,硫 酸 濃 度3%で 行 っ た ク ラ ー ソ ン リグ ニ ン法 と121℃,1時 間 処 理 に よ る場 合 を 比 較 す る と,酸 不 溶 性 残 さ収 量 の 差 は 小 さ く,ま た パ イ ロ グ ラム は ほ ぼ 同 等 で あ っ た 。 残 さ収 量 に や や 差 が あ る もの の,熱 帯 産 広 葉 樹 材 の リグニ ン定 量 に 吉 原 ら の 簡 便 法(硫 酸 濃 度3%,121℃,30分 間 の 第 二 次 加 水 分 解 処 理)を 用

い る こ とが 可 能 で あ る と考 え られ る。

3.4  抽 出 木 粉 の パ イ ログ ラ ム

図3に70%ア セ ト ン/水 抽 出 カプ ー ル 材 の パ イ ロ グ ラ ム を示 す 。 他 の 熱 帯 産 広 葉 樹 材 お よび 先 に報 告 した 日本 産 広 葉 樹 材 の パ イ ロ グ ラ ム と同 様 に,G1か らG 13の グ ア イ ア シ ル 型 化 合 物,お よびS1か らS13の

シ リ ン ギ ル 型 化 合 物 につ い て 同 定 と定 量 を 行 っ た 。 各 熱 帯 産 材 の 熱 分 解 物 収 率,お よび ア ル カ リ性 ニ トロ ベ ン ゼ ン酸 化 分 解 に お け る ア ル デ ヒ ド収 率 を 表3に 示 す 。 全 熱 分 解 物 収 率 は ニ トロ ベ ンゼ ン酸 化 の ア ル デ ヒ ド収 率 よ り もや や 低 か っ た が,樹 種 間 の 非 縮 合 型 リグ ニ ン の 特 徴 を比 較 す る点 で は十 分 の 収 率 で あ る と考 え ら れ

る。

図4に 示 す よ う に,Py‑GCに よ るS/G比 と ア ル カ リ性 ニ ト ロベ ン ゼ ン 酸 化 に よ るS/V比 の 関 係 で は, ほ ほ 良 い 相 関 が 認 め られ,重 相 関 係 数 は0.85で あ っ た 。

日本 産 広 葉 樹 材 の 結 果(0.95)2)と 比 べ て や や 低 か っ た が,S/G比 お よびS/V比 の 範 囲 が 狭 い こ と が そ の 理 由 の 一 つ に挙 げ ら れ る 。Py‑GCは 熱 帯 産 広 葉 樹 リ グ ニ ンの シ リン ギ ル 核 と グ ア イ ア シ ル 核 との 比 を調 べ る方 法 と して,簡 便 で 有 効 な 方 法 で あ り,ニ トロ ベ ン ゼ ン酸 化 法 の 代 替 法 とな り う る こ とが 示 され た 。

な お,表2に は5種 の 材 の 酸 不 溶 性 残 さ に つ い て, G1,G2,S1,お よ びS2を 用 い てS/G比 を算 出 し

た 結 果 を示 した が,こ れ ら は木 粉 分 析 で 得 ら れ たS/

Gお よびS/V比 と比 較 的 よ く一 致 した 。 3.5  カ プ ー ル 材 抽 出 物 の 分 析 3.5.1  ア セ トン/水 抽 出 物

カ プ ー ル は 他 の 樹 種 に比 べ て 多 くの70%ア セ トン/

水 抽 出 物 を 与 え た 。 図5に そ の パ イ ロ グ ラ ム を示 す 。 特 徴 的 な ピー ク と して は,グ ア イ ア コ ー ル(G1),4‑

ビ ニ ル グ ア イ ア コー ル(G4),シ リ ン ゴー ル(S1), 4‑ビ ニ ル シ リ ン ゴー ル(S4)が あ げ ら れ る。そ の 他 に, 4‑メ チ ル グ ア イ ア コー ル(G2),バ ニ リ ン(G6),4‑

メ チ ル シ リ ン ゴ ー ル(S2),お よ び シ リ ン グ ァ ル デ ヒ ド(S6)が 認 め ら れ た 。 こ れ ら はPy‑GC/MSに よ っ て 同 定 さ れ た 。

グ ア イ ア コー ル の 比 率 は 木 材 リグ ニ ンの 熱 分 解 の 場 合 と比 較 して 非 常 に高 く,こ の グ ア イ ア コ ー ル は熱 帯 産 広 葉 樹 材 の ポ リ フ ェ ノ ー ル 類 を起 源 に もつ 可 能 性 が あ る と思 わ れ る。 カプ ー ル 材 中 に は没 食 子 酸,バ ニ リ

―84― 紙パ 技協誌 第51巻 第8号

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熱 分 解 ガ ス ク ロマ トグ ラ フ ィ ー に よ る リグ ニ ンの 構 造 解 析(第6報) 1219

Fig.3 Py-GC trace of kapur wood extracted with 70% acetone/water.

Note: The names of pyrolysis products for the peak names are shown in Table 3.

Legend: G 9: acetoguaiacone

ン酸,フ ェ ル ラ酸 の 存 在 が 知 られ て い る10)。フ ェル ラ 酸 お よ び シ ナ ッ プ 酸 は 熱 分 解 生 成 物 と し て そ れ ぞ れ, 4‑ビ ニ ル グ ア イ ア コ ー ル お よ び4‑ビ ニ ル シ リ ン ゴ ー ル を 与 え る こ とが 明 ら か に さ れ て い る11)。4‑ビ ニ ル グ ア イ ア コ ー ル お よび4‑ビ ニ ル シ リ ン ゴ ー ル の ピ ー ク か らこ れ ら の 存 在 が 推 定 さ れ る。

ピノ レ ジ ノ ー ル,お よ び シ リ ンガ レ ジ ノ ー ル は,熱 分 解 物 と して そ れ ぞ れ,少 量 の4‑メ チ ル グ ア イ ア コ ー ル とバ ニ リ ン,お よ び4‑メ チ ル シ リ ン ゴ ー ル と シ リ ン グ ア ル デ ヒ ド を 与 え る こ とが 明 ら か に さ れ て い る12)。カ プ ー ル 材 の パ イ ロ グ ラム に お け る こ れ ら の 熱 分 解 物 が リグ ナ ン類 に 由 来 す る可 能 性 は 否 定 で きな い の で,現 在 さ ら に 検 討 中 で あ る。 な お,タ ンニ ン等 の ポ リフ ェ ノ ー ル 類 か ら の 熱 分 解 物 で,カ テ コー ル な ど 芳 香 核 に 水 酸 基 を2つ 以 上 もつ 化 合 物 に つ い て も現 在 検 討 を 行 っ て い る。 タ ン ニ ン等 の ポ リ フ ェノ ー ル 類 の Py‑GCに つ い て は今 後 検 討 す る。

別 に,抽 出 前 後 の カ プ ー ル 材 熱 分 解 物 収 量 を 比較 し

た。 抽 出 に よ っ て 木 材 重 量 に 対 す る 全熱 分 解 物 収 量 は 6.06%か ら5.36%へ 約0.7%減 少 し た 。 ま た グ ア イ ア シル 型 化 合 物 の 方 が シ リン ギル 型 化 合 物 よ り減 少 が 大 きか っ た 。 各 熱 分 解 物 ご とで 比 較 す る と,側 鎖 の 短 い 化 合 物 の 方 が 大 き く減 少 した 。

3.5.2  水 酸 化 ナ トリ ウ ム 水 溶 液 熱 抽 出 物

荻 山 ら9)はい くつ か の 熱 帯 産 広 葉 樹 材 は リ グ ニ ン類 似 物 質 を含 み,1%水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 熱 抽 出 後 の リグ ニ ン量 は 温 帯 産 広 葉 樹 程 度 に な り,こ の リグ ニ ン類 似 物 質 は ポ リフ ェ ノ ー ル 類 が 主 体 とな る と推 定 し て い る。 しか し,リ グ ニ ン類 似 物 質 と タ ンニ ン 等 の ポ リフ ェ ノ ー ル 類 との構 造 の 差 異 は 明 ら か で な い 。 そ こ で,カ プ ー ル 材 に つ い て さ らに こ の よ うな ア ル カ リ抽 出 物 の 性 状 を 調 べ た 。

抽 出 後 に1%水 酸 化 ナ ト リウ ム 水 溶 液 を 濃 縮 す る と 沈 殿 物 が 生 じた 。 こ の 沈 殿 物 をPy‑GCで 分 析 した と こ ろ,グ ア イ ア シル 型 と シ リ ン ギ ル 型 の 熱 分 解 物 は得

られ な か った 。 抽 出 液 の ク ロ ロ ホル ム抽 出 画 分(pH

―85―

(8)

1220 大 井 洋,安 田 有 紀 野,和 泉 明 子,黒 田 健 一

―86― 紙パ 技協 誌  第51巻 第8号

(9)

熱 分 解 ガ ス ク ロマ トグ ラ フ ィー に よ る リグ ニ ンの構 造 解 析(第6報) 1221 2) の パ イ ロ グ ラ ム で は,主 に グ ア イ ア シル 型 の 熱 分

解 物 が 得 られ た(図6)。 バ ニ リ ン(G6)が 最 も多 い が, シ リ ン グ ア ル デ ヒ ドは認 め ら れ な か っ た 。 ア セ トグ ア イ ア コ ン(G9)も 多 い が,ア セ トシ リ ン ゴ ン は 認 め

られ な か っ た 。

Fig.4 Relationship between syringaldehyde/vani- l

lin (S/V) molar ratios by alkaline nitro- benzene oxidation (ANO) and syringyl/

guaiacyl (S/G) molar ratios by Py-GC.

木 粉 の分 析 で は糖 由 来 ピー ク と重 な る た め ア セ トグ ア イ ア コ ン(G9)ピ ー ク の 定 量 が 難 しい 。Izumiら6) に よ っ てDHPの パ イ ロ グ ラ ム で は バ ニ リ ン(G6), お よび ア セ トグ ア イ ア コ ン(G9)の ピ ー ク は 主 要 ピ ー ク で は な い こ とが 明 ら か に さ れ て い る。 こ の 点 で, 図6の パ イ ロ グ ラ ム の 特 徴 は 明 らか に リグ ニ ン の特 徴

と異 な っ て い る。

ま た,パ イ ロ グ ラ ム 上 に2‑メ トキ シー4‑ビ ニ ル カ テ コー ル の ピ ー ク が 認 め ら れ た 。Iiyamaら13)は 熱 帯 産 広 葉 樹 等 の 天 然 リグ ニ ン の 一 部 に5‑ヒ ドロ キ シ グ ア イ ア シル 核 が 存 在 す る と提 案 して い る。 し か し今 回, 1%水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 熱 抽 出 部 に5‑ヒ ドロ キ シ グ ア イ ア シル 型 熱 分 解 物 が 得 られ た こ とか ら,リ グ ニ ン類 似 物 質 の 部 分 に5‑ヒ ドロ キ シ グ ア イ ア シ ル 核 が 存在 す る可 能 性 も否 定 で き な い 。

な お,本 研 究 で は1%水 酸 化 ナ ト リウ ム 水 溶 液 熱 抽 出 処 理 を 行 う前 の 試 料 に つ い てPy‑GC,お よび ア ル カ リ性 ニ トロ ベ ン ゼ ン酸 化 を行 い,前 述 の リグ ニ ン類 似 物 質 も含 め て リ グ ニ ン の シ リ ン ギ ル 核 ノグ ア イ ア シ ル 核 比 と して 評 価 を行 っ た 。Py‑GCは 熱 帯 産 広 葉 樹 材 の リグ ニ ン,タ ンニ ン等 ポ リ フ ェ ノ ール 類,お よ び

Fig.5 Py-GC trace of 70% acetone/water extractives from kapur wood.

Note The names of pyrolysis products for the peak names are shown in Table 3.

―87―

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1222 大 井 洋,安 田 有 紀 野,和 泉 明 子,黒 田 健 一

Fig.6 Py-GC trace of chloroform-soluble part of 1% NaOH hot-extractives from kapur wood.

Note: The names of pyrolysis products for the peak names are shown in Table 3.

Legend: G 9: acetoguaiacone

リグ ニ ン類 似 物 質 の 構 造 解 析 に有 効 な 手 段 で あ り,今 後 さ らに 詳 細 な検 討 を 行 う。

4.  結 論

熱 帯 産 広 葉 樹 材13樹 種 に つ い て タ ンニ ン等 ポ リ フ ェ ノ ー ル 類 の 抽 出 に 用 い られ る70%ア セ トン/水 抽 出 を行 い,抽 出 木 粉 の リ グニ ン を定 量 した と こ ろ,ア ン ベ ロ イ と カ ナ リウ ム 以 外 の 樹 種 は 温 帯 産 針 葉 樹 材 と同 程 度 の リ グ ニ ン 量(約30%)で あ っ た 。 特 に カ プ ー ル 材 は リ グ ニ ン量 と ア セ ト ン/水 抽 出 物 量 の 合 計 が 40%で あ っ た 。

熱 帯 産 広 葉 樹 材 の リグ ニ ン分 析 で は,硫 酸 濃 度3%

あ る い は4%,121℃,1時 間 の 条 件 で 第 二 次 加 水 分 解 処 理 を 行 う と,ク ラ ー ソ ン リグ ニ ン法 よ り もや や 小 さ

い値 を示 す 場 合 が あ る こ と が わ か っ た。

酸 不 溶 性 残 さ をPy‑GCで 分 析 し た と こ ろ,4%, 121℃,1時 間 の 第 二 次 加 水 分 解 処 理 に よ る パ イ ロ グ

ラ ム で は,4‑メ チ ル グ ア イ ア コ ー ル の グ ア イ ア コ ール に 対 す る 比,お よび4‑メ チ ル シ リ ン ゴ ー ル の シ リ ン

ゴ ー ル に 対 す る 比 が ク ラ ー ソ ン リ グ ニ ン 法(3%, 100℃,4時 間)の 場 合 よ り もや や 大 き か っ た 。

Py‑GCに よ っ て 熱 帯 産 広 葉 樹 材 リグ ニ ン の シ リ ン ギ ル 核 と グ ア イ ア シ ル 核 の 比(S/G比)を 求 め た と こ ろ,S/G比 は ニ ト ロベ ンゼ ン 酸 化 に よ る シ リ ン グ ア ル デ ヒ ド/バ ニ リ ン比 と ほ ぼ 良 い 相 関 が 認 め ら れ, Py‑GCが 簡 便 で 有 効 な 方 法 あ る こ とが 示 さ れ た 。

カプ ー ル 材70%ア セ ト ン/水 抽 出 物 の パ イ ロ グ ラ ム で は,主 要 ピ ー ク と して グ ア イ ア コ ー ル,4‑ビ ニ ル グ ア イ ア コ ー ル,シ リ ン ゴ ー ル,4‑ビ ニ ル シ リ ン ゴー ル が 同 定 さ れ た 。

カ プ ー ル 材1%水 酸 化 ナ ト リウ ム 水 溶 液 熱 抽 出 物 の パ イ ロ グ ラ ム で は,主 要 ピ ー ク と して バ ニ リン お よび ア セ トグ ア イ ア コ ンが 認 め られ,こ の特 徴 は 明 ら か に

リグ ニ ン の パ イ ロ グ ラ ム の 特 徴 と異 な っ て い た 。

謝 辞

熱 帯 産 広 葉 樹 材 木 粉 を 恵 与 い た だ い た 森 林 総 合 研 究 所 成 分 利 用 科 科 長 島 田 謹 爾 博 士 に 深 く感 謝 い た し ま す 。

―88― 紙パ技 協誌  第51巻 第8号

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熱 分 解 ガ ス ク ロマ トグラ フ ィー に よ る リ グニ ンの 構 造 解 析(第6報) 1223 引 用 文 献

1)  島 田 謹 爾:  未 利 用 熱 帯 森 林 資 源 の 有 効 利 用,日 本 木 材 学 会 研 究 第6分 科 会,  p.46‑62  (1993).

2)  和 泉 明 子,  黒 田 健 一,  大 井 洋,  山 口 彰:  紙 パ 技 協 誌,  49  (9),  1339‑1346  (1995).

3) Ohara, S., Yanagi, K.: Mokuzai Gakkaishi, 41 (4), 406-413 (1995).

4)  J.  TAPPI紙 パ ル プ 試 験 方 法NO.42‑84:  紙 パ 技 協 誌,  38  (3),  361‑364  (1984);  TAPPITEST METHODS T 249 cm-85, TAPPI PRESS 1996.

5)  大 井 洋,  具 延,  黒 田 健 一:  第46回 日本 木 材 学 会 大 会 研 究 発 表 要 旨集,  熊 本,  1996,  p.384.

6) Izumi, A., Kuroda, K.: Mokuzai Gakkaishi, 43 (2), 194-202 (1997).

7)  中 野 準 三,  飯 塚 尭 介  (翻 訳,監 修):  リ グ ニ ン化 学 研 究 法,  ユ ニ 出 版,  p.217‑232  (1994).

8)  吉 原 一 年,  小 林 武,  藤 井 利 郎,  赤 松 勲:  紙 パ

技 協 誌,  38  (4),  466‑475  (1984).

9)  荻 山 紘 一,  谷 口栄 一:  紙 パ 技 協 誌,  25  (10),  494

‑498  (1971);  荻 山 紘

,  安 江 保 民:  同 上,  27 (9),  441‑448  (1973).

10)  今 村 博 之 他:  林 試 研 報,  第232号,  65‑96 (1970).

11) Kuroda, K., Suzuki, A.: Mokuzai Gakkai- shi, 41 (9), 851-857 (1995).

12)  鈴 木 聡,  筑 波 大 学 農 学 研 究 科 博 士 論 文,  1996 年3月;  鈴 木 聡,  和 泉 明 子,  大 井 洋,  黒 田 健 一,  山 口 彰:  紙 パ 技 協 誌,  48  (9),  1212‑1220

(1994).

13) Iiyama, K., Suzuki, S., Lam, T. B. T.:

Proceedings of the 41 st Lignin Symposium, Nagoya Japan, October 1996, p.37-40.

(受 理'97.3.6)

―89―

(12)

報 文 概 要 一 覧

走査吸液測定 による紙の吸液特性 の解析(第2報) 紙の表面平滑性 と表裏差

東京大学大学院農学生命科学研究科 片 岡裕 司,空 閑 重 則,尾 鍋 史彦 紙 の表 面構 造 が 吸 液 特 性 に与 え る影 響 を動 的走 査 吸 液 試 験 に よっ て調 べ た 。 市 販 の上 質 紙 お よび 新 聞 用紙 の水 吸収 で は 明確 な表 裏 差 が あ り,こ れ は表 面粗 さの 違 い に起 因 す る と考 え られ る。 手 抄 き紙 の 調 製 時 に ウ ェ ッ トプ レス 条 件 と乾 燥 法 を様 々 に変 え る と,条 件 に応 じて粗 さ指 数 と吸 収 速 度 が 変化 した 。 ウ ェ ッ トプ レス 時 にサ ン ドペ ー パ ー を押 し当 て る こ と に よ り粗 さ を調 節 した 手 抄 き紙 はサ ン ドペ ー パ ー の粗 さに 応 じた粗 さ指 数 を与 え た。 水 に対 して は粗 さ指 数 と吸 収 係 数 の 間 に一 般 に正 の 相 関 が あ り,表 面 粗 さ 自体 が 吸収 挙 動 を支 配 す る因 子 で あ るが,両 者 の 関係 はサ イ ズ度 に も依 存 す る。 アマ ニ油 で の 走 査 吸 液 で は粗 さの 違 い が よ り直 接 的 に粗 さ指 数 に反 映 す る が,水 の場 合 と異 な り吸 収 係 数 に は影 響 が な い。 各 種 の 試料 に つ い て粗 さ指 数 と空 気漏 洩 式 平 滑 度 試 験 値 は広 い範 囲 に わ た り高 い相 関 を示 した。

(本文74ペ ー ジ)

熱分 解 ガ ス ク ロマ トグ ラフ ィー に よる リグニ ンの構造 解析(第6報) 熱 帯産広 葉樹 材 リグニ ンの分析

筑波大学農林工学系 大 井 洋,安 田有 紀 野,和 泉 明 子,黒 田健 一 Py‑GCに よ って 熱 帯 産 広 葉 樹 材 リグニ ンの シ リン ギ ル核 とグ ア イ ア シル 核 の 比(S/G比)を 求 め た とこ ろ,S/G比 は ニ トロベ ンゼ ン酸 化 に よ る シ リン グ アル デ ヒ ド/バニ リン比 とほぼ 良 い相 関 が 認 め られ, Py‑GCが 簡 便 で 有 効 な 方 法 あ る こ とが 示 され た 。 カ プ ー ル 材70%ア セ トン/水 抽 出 物 のパ イ ロ グ ラ ム で は,主 要 ピー ク と して グ ア イ ア コ ール,4‑ビ ニ ル グ ア イ ア コール,シ リン ゴー ル,4‑ビ ニ ル シ リン ゴ ー ル が 同 定 さ れ た 。カプ ール材1%水 酸 化 ナ ト リウム 水 溶 液熱 抽 出 物 の パ イ ロ グ ラム で は,主 要 ピー ク と して パ ニ リン お よび ア セ トグア イ ア コ ンが 認 め られ,こ の 特 徴 は 明 らか に リグニ ンの パ イ ログ ラム の 特 徴 と異 な って い た。

(本 文79ペ ー ジ)

1997  年  8  月 ―035―

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参照

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