The Nonprofit Review, Vol.8, No.1, (2008) JANPORA 2008 NPO の持続性と課題 財務データベース分析から考える 田中弥生 1) 栗田佳代子 1) 粉川一郎 2) 1) 大学評価 学位授与機構 2) 武蔵大学 Financial Sus

全文

(1)

NPO の持続性と課題

―財務データベース分析から考える―

田中 弥生

1)

・栗田佳代子

1)

・粉川 一郎

2)

1) 大学評価・学位授与機構・2) 武蔵大学

Financial Sustainability and Structural Problems of NPOs in Japan:

Data Analysis of NPO Financial Statements

Yayoi T ANAKA

1)

, Kayoko K URITA

1)

and Ichiro K OGAWA

2)

1) National Institute for Academic Degree and University Evaluation

2) Musashi University

The purpose of this paper is to explain the current state and the nature of financial problems of the Japanese NPO sector using financial data analysis which covers 12,509 NPO financial statements. Japanese NPOs were defined as being in the birthing stage, and as such, were mostly concerned with cash flow problems. Analysis of NPO financial data focusing on the cash flow revealed that the both small and big NPOs kept a rather good financial ratio. However, further analysis found that that ratio was possible to preserve as a result of low salaries, expenditures and borrowing from board members and other related members. The managers of NPOs empirically recognize that they have to keep certain amount of cash and liquid asset for their sustainability.

Key words: financial analysis, financial sustainability, deficit of budget, cash flow, financial data base

1. 本研究の背景と目的

特定非営利活動促進法(NPO法)が制定されて

9

年 を経ようとしている.2007年

5

月末で認証された団体

数は

33,003

に至った.また,収入規模に着目すると,

きわめて小規模なものから,

30

億円以上に至るものま で多様化の傾向を示している.

しかしながら,

NPO

の運営の実情は決して容易では ない.全国規模あるいは地域レベルで

NPO

に関する 種々の調査が行なわれているが,共通に指摘されてい るのが資金不足の問題である.「特定非営利活動法人 の見直しに向けて」(内閣府

2006)では,NPO

の課題 の第一位に資金不足が挙げられている.また「NPOの 有給職員とボランティア―その働き方と意識」(労働 政策研究・研修機構

2006)では資金不足が NPO

で働 く職員の待遇を劣化させ,使命に共感し懸命に活動に 従事しながらも職員のバーンアウトを招いていること が指摘されている.

田中(2006)は

NPO

が急速に行政委託に傾斜してい

ることを指摘したが,その背景には行政と市民の協働 に関心が高まっていることに加え,資金調達の難しさ が大きな原因になっていることを指摘した.資金難の 問題は多数の調査報告で指摘されているが,財政デー タ上,この状態はどのように表れるのだろうか.そし てどのような構造を成しているのだろうか.これらの 問題をマクロのレベルで明らかにすることは,今後,

NPO

政策を考える上でも必要であると考えた.

本論は大阪大学が公開した財務データベースと実務 者たちからのヒアリングをもとに,多くの

NPO

が訴 える「資金不足」の実態と構造を定量的,定性的に明 らかにしようとするものである.

2. 財務面から見た NPO

の持続性

2.1. 最近の日本の財務データ分析

日本の

NPO

法人の実態を財務データベースの構築 と分析によって明らかにしようとしたのが,山内ほか

(2007)である.本データ構築以前にも,全国規模の

(2)

データベースとしては,NPOポータルサイト(内閣府

website

)や「

NPO

広場」(日本

NPO

センター

website

) があったが,財務情報に関しては一部のみの公開と なっていた.そこで

NPO

法人の財務状況についてそ の全体像を明らかにすることのできるデータを提供す ることを目的に構築されたのが,山内らが構築した

「NPO法人財務データベース」で,わが国では最大級 の

NPO

法人財務データベースが完成し公開されてい る(

NPO

法人財務データベース作成委員会

website

).

本データベース策定プロセスを通して,山内らは

NPO

法人会計をめぐる二つの課題に対応しなければ ならなかったと述べている.第

1

に,会計基準が統一 されていないために,財務状況を比較分析するための 情報入手が困難であるという点で,通常の簿記には含 まれていないものは排除して入力する必要があったと いう点である.第

2

に,NPO法人の会計処理の信頼性 が低く,会計書類に記入ミスが多いという課題が挙げ られている.全体の

37%

が,貸借対照表上の正味財産 と収支計算書における次期繰越正味財産が整合してい なかったが,このような不整合の背景には,NPO法人 の能力の問題もあるが,会計書類の形式にも問題があ ると指摘している.すなわち,

NPO

法人の会計書類は 旧公益法人の書類を参考としているが,各所轄庁が定 める収支計算書の雛形を調査した結果,21の所轄庁

44%

)が収支計算書に正味財産増減の部の記載を求め ていなかったために,貸借対照表と収支計算書の整合 性が放棄されてしまっているという.山内ほか(2007:

5)は,

信頼性担保の意味からも,会計ルールの見直し が急がれると述べる.

県レベルの財務データ分析として,代表的なのは愛 知県の

NPO

法人に関するものであろう.愛知県県民 生活部社会活動推進課(2007)は,NPO法人の財政状 況及び,会計処理について,

1999

年より愛知県で認証 された

NPO

法人のデータベースをもとに,財務分析 と会計処理の状況について経年で分析している1.財 務データから,資産総額,負債総額,正味財産,収入,

支出,収支差額及び正味財産増加額の状況を分析して いるが,負債額は比較的少ないものの,金融機関から の借入が少なく,役員等からの借入に依存している点 を指摘している.正味財産については,企業でいう自

己資本比率に相当する(正味財産/資産合計)を算出 し,多くの団体が

50%

以上の高水準を示していること を指摘している.ただし,正味財産の絶対額が少なく 財政基盤としては脆弱であることや,15%の団体が債 務超過の状態にある点を指摘している.また,収入の 推移について見ると,設立間もない団体は

1

千万円か ら

2

千万円の間で伸び悩むこと,経常収支差額につい ては毎年黒字で計上する必要はないが,多くの団体が 収支ギリギリの状態であると説明している.財務指標 については,馬場・小椋(

2006: 73

)が,貸借対照表 を見る際の参考指標として,現預金比率,流動比率,

固定比率,自己資本比率を示し解説しているが,短期 的な支払い能力を見るものとして流動資産や流動負 債,長期的な財政基盤を見るものとして固定資産や固 定負債を挙げている.

石田(2007: 150)は,「NPO就労発展への道筋」に おいて,

NPO

の永続性と自立,そしてそのための財政 基盤強化としての資金源の多様性について論じ,自立 性を「ミッションを自立的に遂行できる」「永続的に質 の高い活動を遂行するための有給職員の雇用ができる 頑健な財政基盤をもっている」と定義している.

労働政策研究・研修機構が

2006

年度に実施した,

1930

団体への

NPO

へのアンケート調査結果をもとに,

分野別に見た

NPO

の収入構造,各財源からの収入金額 と年収に占める比率,職員の雇用状態,行政委託事業 収入の有無と職員の雇用形態との関係などを算出して いる.興味深いのは,財源の多様性が自立に与える影 響を定量的に示そうとしている点である.財源の種類 によってグループを分け,職員の雇用形態(正規職員 の比率)を比較し,より多くの財源から収入を得てい る団体の方が正規職員の数と比率を向上させることが できると述べている(石田 2007: 148).

また,

Chang and Tuckman

1994

)が開発した,

NPO

の収入多様性指標,すなわち

Herfindal-Hirschman Index

(HHI)を用いて,わが国の

NPO

の五つの財源につい て各分野毎に多様性の平均値を算出している.これに よれば,比較的多様な資金源を確保している分野は,

NPO

支援,特定の財源に偏向する傾向にあるのが,ま ちづくり,子どもの健全育成であるという.

石田の主張のポイントは,特定資金源の良し悪しを 判断することにあるのではなく,特定財源に偏ること は

NPO

の財政基盤の不安定さにつながり,従って財 源の多様性が財政基盤の強化につながるという点で ある.

資金源多様性の重要性については日本ではあまり指 摘されていないが,米国では比較的以前よりその点が 指摘されている.資金源の多様性が重要であることを

1 2003年から2006年にかけて,愛知県で認証されたNPO法人

1999年から2004年までの経年の財務データを把握し分析し

ている.なお,財務データは,先に紹介したNPO法人財務デー タベース作成委員会NPO財務データベースのフォーマットを 用いて集計を行なっている.データ数は1999年:43件,2000 年:82件,2001年:155件,2002年:265件,2003年:443件,

2004年:580件である.

(3)

前提に,各種資金源が

NPO

の使命や活動方法,組織運 営のあり方にどのように影響があるのかを説明したの は,Froelich(1999)である.

個人寄付,企業寄付,財団助成金,政府資金,収益 事業収入のそれぞれの資金源について,揮発性(不安 定性),

NPO

の使命を脅かす可能性,事業運営及び組 織運営への影響を定性的に分析している.表

1

はこれ らの内容を単純化して一覧にしたものである.それぞ れの資金源には一長一短があるため,これらの影響を 緩和するために資金源を多様化することが必要である ことを述べている.しかしながら,資金源の多様化が 招くリスクもあるわけで,例えば,資金提供者間の異 なる要求を調整するためのコストの問題が発生する可 能性があるが,この点は研究としては未知の領域であ ると指摘している.しかしながら,

Froelich

(1999: 263)

は,組織の自立のために,NPO関係者たちは,今後ま すます資金源の多様化と収益事業に注力してゆくだろ うと述べている.

2.2. 組織の成長過程に着目した持続性の財務指標

非営利組織の持続性は,財務分析の視点からはどの ように捉えられているのだろうか.

非営利組織の社会的使命を中心に財務指標をどのよ うに捉えるのかを示そうとしたのが

Abraham(2006)

である.使命に基づく活動を支えるだけの十分な資金 があるのか,その所在はどこか,資金をいかに効率的 に使うか,という三つの設問に対して,財務指標を用 いた分析方法を示している.短期の活動維持可能性を 測定する財務指標としては「流動資産/総支出」であ ると述べている.

Keating(2001: 53)は,非営利組織の財務指標とし

て,収益性,流動性,財政面の弱点・難点,効率性に かかる指標を説明している.特に,当面の持続性にか かわるものとしては,期日通りの支払い能力を示す

「流動資産-流動負債」,手元流動性を示す「現金/月 額支出」が重要であることを示している.

Greenlee and Tuckman

2007: 330–331

)は

NPO

の成 長段階を五つに分類し,段階別に非営利法人運営のポ イント(質問項目と財務戦略)と財務指標を示してい

る.

5

段階とは,「誕生期」:非営利組織を設立し軌道 に乗せる時期,「安定期」:

NPO

が持続的に運営できる ことを確認する時期,「成長期」:既存の組織体制の中 で事業が成長してゆく時期,「多様化期」:新規事業を 導入し,古いものは整理する時期で他

NPO

の吸収合 併も念頭に入れる時期,「終末期」:フェイドアウトさ せることを念頭に運営し資産を他に移してゆく時期,

である.

Greenlee and Tuckman

2007: 330

)は「誕生期」にお ける運営ポイントと財務指標として,以下の項目を挙 げている.

『質問項目』

どのようなプログラム(事業)を行ってゆくのか,

そのためにはどのような収入源が必要なのか.

社会的使命に焦点を当てながらどのように組織を 維持してゆくのか.

収入源をいかに継続的なものにするか.どうやっ て,繰り返しファンド・レイジングをしなければ ならないような

1

回限り限定的な資金源から,継 続的なものにシフトしてゆくのか.

組織をどのように社会に認知させ,他組織と差別 化するのか.

『財務戦略』

適当な収入源を明らかにする.

適度な支出コントロールをする.

財団による短期支援を探す.

組織代表者によるファンド・レイジングを行う

『財務指標』

手元現金

消耗率

収入の前年度比

他組織と比較した収入構成

誕生期には,主としてキャッシュ・フローに着目し ているのがわかるが,具体的な財務指標として,組織 防衛期間(Defence Interval)を提示している.これは,

「(現金+有価証券+債券)/平均値月別現金支出額」の

1 収入源の戦略プロフィール

民間寄付 政府資金 収益事業

資金の揮発性 高い 低い 中間

使命置き換えの影響 強い 中くらいに強い 弱い

事業実施プロセスへの影響 形式要件あり 形式要件 標準化 合理性が求められる 組織への影響 専門化された運営力を求める 専門化された官僚制の影響を

受ける 専門化された営利企業体の影

響を受ける 出所:Froelich (1999) p.265をもとに筆者作成

(4)

計算式で示され,流動資産を用いて組織を運営できる 期間を意味している.低率あるいは減少傾向は将来の キャッシュ・フローの問題を示唆している.

また,「安定期」の質問項目では,資産構築のための プラン,基金創設の可能性を探ることなどが挙げられ,

財務指標では,収入多様性インデックス(

Herfindal- Hirschman Index(HHI)),「(流動資産-流動負債)

/総 資産」,「(総資産-総負債)/総資産」,また管理費に 関する同業他者との比較などを挙げている.

誕生期と安定期以降の財務指標には明らかな違いが 見られる.則ち,誕生期は現金や支出のコントロール など,キャッシュ・フロー面に重きを置いているのに 対し,安定期以降は,資産の構築面により重きを置く ようになっている.つまり,同じ持続性という表現を 用いながらも,誕生期の持続性は当面の資金繰り,安 定期以降の持続性では中長期の視点からの財政の維 持,あるいは事業拡大に着目して資産の構築に重点を 置いていることから,意味が異なると言える.

2.3. 日本 NPO

の持続性問題と着眼点

今回,分析の対象とした財務データベースは

2003

年度の財務情報であり,最も時間を経ている団体でも 法人設立から

5

年を経過したものである.任意団体と して

NPO

法制定以前より活動をしていた団体もある だろうが所轄庁に提出されたデータからは,本件にか かる情報を得ることはできない.この点は今後の研究 課題であるが,内閣府(2006)など多くの資料が示す ように

NPO

の多くが財政的な問題を抱えていること を鑑み,今回は誕生期の団体が多いと判断した.多く の

NPO

は事業と組織を維持するために,資金を確保 しては,それを運営費に投入する状態にあり,資金繰 りの問題が最大の関心事ではないかと想像される.

そこで,キャッシュ・フローに着目し,手元流動性 に関連する現預金や流動資産,その蓄積に寄与すると 思われる当期収支差額,さらに借入金や流動負債など

を中心に分析を試みることにした.

3. NPO

財務データベースから見る全体傾向

ここでは,山内らが構築し公開している

NPO

財務 データベースを用いて分析を行う.

本データベースに関する基本的な分析は山内らが行 なっており,活動分野別,収入規模別の団体の分布,

収入金額の平均値,中央値を算出している(山内ほか

2007: 7

).また,活動分野別の収入構造についても算

出している(山内ほか

2007: 8)

2.全体の収入額の平均 値は

1580

万円であるが,中央値は

268.6

万円で,収入 格差が大きいために収入規模の大きな団体が平均値を 引き上げている.また,会計数値がすべて

0

となって いる団体が

746

(5%)存在している点も指摘している.

会計数値ゼロの団体は資金ゼロで活動しているか,あ るいは活動していない団体であるが,この点を財務 データでは区分することはできないという.

また,収入構造については,入会金・会費,寄付金 収入,事業収入,補助金・助成金,その他の経常収入 の順で記しているが,経常収入のうち

66.1%

が事業収 入,補助金・助成金が

11.3%

,寄付金(

8.9%

),会費

(7.7%),その他(5.4%)となっている.ただし,分野 別に見ると,事業収入が

7

割以上の分野(保健・医療・

福祉,まちづくり,地域安全など),

3

割に満たない分 野(国際協力)など,分野ごとに収入構造が異なるこ とを説明している.

本論では,まず収入規模,支出規模の分布状況に ついてヒストグラムを作成してみた.経常収入合計

(図

1

)に着目すると少額の収入に集中するため,大き

1 経常収入合計の分布

2 経常収入規模を100万円未満,100万円以上500万円未満,500 万円以上1千万円未満,1千万円以上3千円未満,3千万円以 5千万円未満,5千万円以上1億円未満,1億円以上に区分 しているが,これは経済産業研究所(website)2004年度調査 に整合させたものである.

(5)

く右に歪んだ分布を示している.つまり少額の収入規 模の

NPO

が大半を占めている一方で,

1

億円以上の収 入規模の団体が

2%

存在している.最高額は

35.7

億円 であった.また,2千万円のところで一つの壁ができ ていることがわかる.次に経常支出合計についてもヒ ストグラムを作成するとやはり右に大きく歪んだ分布 を示しており少額が大半であることがわかる.他方で 支出規模

1

億円以上は

2%

程度存在しており,最高額 で

34.7

億円であった.また,収入についても

2

千万円 で壁ができている.

さらに収支の状況を見るべく,経常収支差額,当期

収支差額に着目した.図

3

から,6割以上は収支差額 が

0

円かマイナスとなり,

100

万円未満になると

8

割 を超えている.すなわち,

NPO

の多くがあまり余剰を 残していない状態にあることがわかる.

正味財産についても分布状況を見ることにした.馬 場は,正味財産は団体の意図に従って活動に使用する ことのできる内部留保を示したものであり,

NPO

の財 政基盤を示すものであると述べている(愛知県県民生 活部社会活動推進課

2007: 28

).図

4

から,債務超過を 示しているところが全体の

14.9%

存在し,正味財産

0

円が

20%

程度,100~

200

万円の少額に集中する傾向

2 経常支出合計の分布

3 当期収支差額の分布

4 正味財産の分布

(6)

が見られる.他方で全体の

20%

程度は

2

千万円以上の 正味財産を有している.最高額

27.5

億円,

1

億円以上 は

61

件で,全体の

0.4%

であった.

4. 収入規模別に見た「持続性」の分析 4.1. データの区分方法の検討

先に述べたように「誕生期」の段階にある

NPO

の財 務面の持続性については,手元流動性や資金繰りに焦 点を当てて分析するのが適当と思われる.そこで,本 データベースを流動性や支払い能力を示す費目や財務 指標を用いて分析を行ないたい.

まず,そのためには統計的な配慮を施す必要があっ た.先の収入や支出のグラフ(図

1, 2

)から

NPO

の経 済規模の格差が大きく,分布が大きく歪んでいること がわかる.従って,全体の数値について平均値や中央 値を求めるだけでは,規模の多様な

NPO

の特徴を把 握するのに適当ではないと考えた.またこのように大 きく右に歪んだ分布の場合には標準偏差の意味も希薄 になってくる.だが,このように歪んだ分布を示す対 象の区分方法について特定のルールは存在しない.

そこで本論では,独自に収入規模別に分ける方法を 検討することにした.ここでの対象区分の目的は,で きるだけ性質を共有するグループに分けることであ る.そこで,中間支援団体や

NPO

を支援する税理士・

公認会計士の団体など実務者の意見を参考にしながら に区分点を想定し,それが統計学的に見て齟齬がない かを確認しながら,区分点となる金額を設定した.

まず収入額

0

円の団体の扱いである.経常収入合計

0

円の団体数は

2

千件以上にも及び全体の

15%

以上に も及ぶ.0円は活動を行なっていないか,小規模の活 動で収入を計上しないような団体,あるいは活動を開 始したばかりの団体のいずれかであると考えられる.

データではこれを区分することはできないが,収支額 を計上して活動する

NPO

とは性質を異にするのでは ないかという実務者たちの意見を参考に収入規模

0

円 をクラス

0

とすることにした.

次の区分点として

500

万円を考えた.

500

万円は,常 勤職員を

1

名雇用できるかどうかの目安になる(田中

2006).これは,経常収入合計 500

万円未満の団体は全 体の

6

割程度に当たるが,ただし

0

円の団体が含まれ る.そこで,収入

0

円と区分するために

1

円以上

500

万円未満をクラス

1

とすることにした.

また,思考の順番で言えば,次に考えたのは収入規 模最上位のクラスを何円以上にするかという点であ る.この点については実務者の意見を参考に

1

億円 以上を区分点とすることにした.1億円以上は全体の

2%

であり,統計的には,収入規模の特に大きい特異 なグループとして捉えることができる.

500

万円の次の区分点として

2

千万円に着目した.

全データの経常収入合計や経常支出合計の分布を見る と(図

1, 2),いずれも 2

千万円の壁(funding wall)が できているが,統計的には何らかのシグナルを示唆し ていると考えられる.また,2千万円の壁に関して興 味深い指摘が先行研究でなされている.愛知県

NPO

の財務データ分析を行なった,愛知県県民生活部社会 活動推進課(

2007: 35

)は,「新しい団体は

1

千万円か ら

2

千万円のあたりで伸び悩む傾向もみられる.NPO が社会の中で多様な役割を担うためには,この壁を乗 り越える必要がある」と述べている.つまり収入

2

千 万円の壁が組織成長の一つのポイントになっている と考えられる.そこで

2

千万円を次の区分点とし,

500

万円以上

2

千万円未満をクラス

2

とした.ちなみに,

クラス

2

に属するデータ数は

500

万円以上の団体の

6

割に相当する.

次の区分点の置き方については議論になった

2

千万 円以上

1

億円未満の団体は全体の

15%

である.これを 一つのクラスにしても他クラスの団体数とのバランス 上おかしくはない.しかし,

2

千万円前後の団体と

1

億 円前後の団体では同質の団体とは言い難いのではな いかという実務者の意見を尊重し,区分点を

2

千万円 と

1

億円の間に置く事にした.その際,参考にしたの が,500万円,2千万円の区分点を検討する際に,両者 が示していた

6

割の数字である.則ち,収入規模の低 い方からカウントして全体の

6

割の区分点が

500

万 円,

500

万円以上の対象のうち,収入規模の小さい方 からカウントして

6

割を示しているのが

2

千万円で あった.そこで

2

千万円以上の団体のうち,収入規模 の小さいほうからカウントして

6

割の位置にある

4

千 万円を区分点とした.現場の経験値から出た

500

万 円,2千万円の区分点の双方が何故

6

割を示すのかは 明らかではないが,クラス

1, 2

の区分の仕方に準じて

4

千万円を区分点し,2千万円以上

4

千万円未満をクラ ス

3

とした.そして,

4

千万円以上

1

億円未満をクラ ス

4,1

億円以上をクラス

5

とした.

以上のように収入規模別に区分点とクラス分けを試 行錯誤を繰り返しながら検討したが,またその過程で 統計的に齟齬がないかを確認している.

4.2. 収入規模(クラス)別の特徴

全体のデータ数は

12,509

件である.データベースに

13,652

件の記述があったが,財務データとして整っ

ているデータ数は

12,509

となった.

(7)

4.2.1. 対象区分別の活動分野

2

はクラス

0

からクラス

5

に属する主たる分野別 の

NPO

の数と割合を示したものである.どのクラス も保健・医療・福祉分野が顕著に多い.クラス

1

1

500

万円),クラス

2(500

2

千万円)では,保健・医 療・福祉分野がそれぞれ

30.5%, 40.4%

であるが,次い で,まちづくり,学術・文化・芸術・スポーツ,社会 教育,子どもの健全育成も

10%

前後存在し,比較的多 様な構成となっている.しかし,クラス

3(2

千万~

4

千万円)以降は保健・医療・福祉分野が

56.9%

65%

を占め,当該分野の比率が高くなる一方,先に挙げた 他分野の比率は

5

8.6%

に下がり,

NPO

の援助,環 境保全,国際協力と人権擁護・平和推進以外の分野で は

1%

にも満たない.また,経済活動の活性化,職業 能力・雇用機会はクラス

4

以降

0

になっている.他方,

国際協力分野はクラス

3, 4

では

3%

前後であるが,ク ラス

2,クラス 5

においては

5%

弱存在している.

全体に収入規模

2

千万円までは比較的多様な分野で 構成されているが,

2

千万円以降,収入金額が大きく なるほど保健・医療・福祉分野に偏る傾向がある.

4.2.2. クラス(収入規模)別の収入構造

クラス

1

からクラス

5

の収入構造について見るため に,入会金・会費収入,寄付金収入,事業収入,行政 委託事業,補助金・助成金,行政補助金,その他(そ の他補助金,不明補助金,その他経常収入の合計)に ついて,クラス毎の平均値3をもとに円グラフを作成 した.

クラス

1

1

500

万円)は入会金・会費が

25%

,寄 付金収入

16%

と寄付や会費が

41%

を占める.他方で 事業収入は

49%

で他クラスに比較して低い.クラス

2

(500万~

2

千万円)は入会金・会費収入は

12%,寄付

金収入は

10%

とあわせて

22%

になりクラス

1

に比較 してその比率は大きく減少する.他方で事業収入が

66%

と増加している.また,2千万円以上から様相が 変わってくる.すなわち事業収入が

75%

前後を占め,

他方で入会金・事業収入,寄付金はそれぞれ

5

11%

に留まっている.つまり,2千万円を超えると事業収 入比率が大きくなり,寄付や会費収入は減少傾向にあ

5 収入規模別(クラス別)収入構造

3 中央値についても同様にグラフを作成したが0円が多く事業収 入比率が極端に高いグラフとなったため,平均値値を用いる ことにした.

(8)

2 クラス別(収入規模別)の分野構成

class 0 class 3

主な活動分野 度数 パーセント 累積度数 主な活動分野 度数 パーセント 累積度数

NPOの援助 8 0.78 8 NPOの援助 31 2.79 31

まちづくり 119 11.67 127 まちづくり 74 6.67 105

科学技術 1 0.1 128 学術・文化・芸術・スポーツ 95 8.56 200 学術・文化・芸術・スポーツ 94 9.22 222 環境保全 63 5.68 263

環境保全 103 10.1 325 経済活動の活性化 3 0.27 266

経済活動の活性化 10 0.98 335 国際協力 33 2.97 299

国際協力 56 5.49 391 災害救援活動 5 0.45 304

災害救援活動 7 0.69 398 子どもの健全育成 56 5.05 360

子どもの健全育成 47 4.61 445 社会教育 81 7.3 441

社会教育 116 11.37 561 消費者保護 1 0.09 442

消費者保護 2 0.2 563 情報化社会 2 0.18 444

情報化社会 5 0.49 568 職業能力・雇用機会 2 0.18 446

職業能力・雇用機会 7 0.69 575 人権擁護・平和推進 20 1.8 466 人権擁護・平和推進 22 2.16 597 男女共同参画社会の形成 7 0.63 473 男女共同参画社会の形成 3 0.29 600 地域安全活動 6 0.54 479 地域安全活動 8 0.78 608 保健・医療・福祉 631 56.85 1110 保健・医療・福祉 412 40.39 1020

class 1 class 4

主な活動分野 度数 パーセント 累積度数 主な活動分野 度数 パーセント 累積度数

NPOの援助 86 1.33 87 NPOの援助 16 1.89 16

まちづくり 932 14.37 1019 まちづくり 57 6.73 73

科学技術 12 0.18 1031 学術・文化・芸術・スポーツ 48 5.67 121 学術・文化・芸術・スポーツ 808 12.46 1839 環境保全 30 3.54 151

環境保全 723 11.15 2562 国際協力 28 3.31 179

経済活動の活性化 45 0.69 2607 災害救援活動 3 0.35 182 国際協力 345 5.32 2952 子どもの健全育成 45 5.31 227

災害救援活動 55 0.85 3007 社会教育 41 4.84 268

子どもの健全育成 389 6.0 3396 消費者保護 1 0.12 269

社会教育 758 11.68 4154 情報化社会 2 0.24 271

消費者保護 23 0.35 4177 人権擁護・平和推進 15 1.77 286 情報化社会 58 0.89 4235 男女共同参画社会の形成 7 0.83 293 職業能力・雇用機会 28 0.43 4263 地域安全活動 3 0.35 296 人権擁護・平和推進 138 2.13 4401 保健・医療・福祉 551 65.05 847 男女共同参画社会の形成 52 0.8 4453

地域安全活動 55 0.85 4508 保健・医療・福祉 1979 30.51 6487

不明 1 0.02 1

class 2 class 5

主な活動分野 度数 パーセント 累積度数 主な活動分野 度数 パーセント 累積度数

NPOの援助 53 1.95 53 NPOの援助 3 0.98 3

まちづくり 273 10.03 326 まちづくり 14 4.56 17

科学技術 6 0.22 332 学術・文化・芸術・スポーツ 21 6.84 38 学術・文化・芸術・スポーツ 312 11.46 644 環境保全 8 2.61 46

環境保全 243 8.93 887 国際協力 14 4.56 60

経済活動の活性化 8 0.29 895 災害救援活動 2 0.65 62

国際協力 127 4.67 1022 子どもの健全育成 16 5.21 78

災害救援活動 8 0.29 1030 社会教育 22 7.17 100

子どもの健全育成 260 9.55 1290 職業能力・雇用機会 1 0.33 101 社会教育 214 7.86 1504 人権擁護・平和推進 9 2.93 110 消費者保護 1 0.04 1505 男女共同参画社会の形成 2 0.65 112

情報化社会 12 0.44 1517 地域安全活動 2 0.65 114

職業能力・雇用機会 11 0.4 1528 保健・医療・福祉 193 62.87 307 人権擁護・平和推進 49 1.8 1577

男女共同参画社会の形成 27 0.99 1604 地域安全活動 18 0.66 1622 保健・医療・福祉 1100 40.41 2722

(9)

ることがわかる.

前述のように経常収入,経常支出の双方で

2

千万円 の壁が存在していたことから,2千万円台の収入構造 について見ると,事業収入比率が

73%,寄付や会費は

あわせて

15%

で,クラス

3

とほぼ同様の構造を示して いた.

ちなみに収入規模

10

億円以上の

NPO

12

件ある が,その収入構造は入会金・会費が

11%,寄付金 16%

とあわせて

27%

と他と比べて高い数値を示している.

他方で事業収入は

54%

と他クラスより低くなり,クラ ス

5

(1億円以上)とは異なる様相を示していることも わかった.

500

万円以上の

NPO

は事業収入によってその収入規 模を拡大していることが伺えるが,

500

万円未満の

NPO

は個人の会費や寄付の比率が相対的に高く,また

10

億円以上の大規模

NPO

の場合も寄付・会費収入の 比率が高くなる点は興味深い.

4.2.3. クラス別(収入規模別)に見た主たる費目の

計算結果

本データベースに計上されていた全費目4について,

クラス別に平均値,中央値,標準偏差値,最小値,最 大値を計算した.表

3

は,収入,支出,資産,負債な ど主たる費目5を一覧にしたものである.

殆どの費目の平均値は収入規模の変化に応じて増大

傾向を示している.他方で,クラス

0,クラス 1

のよ うな小規模な団体でも数千万から億円単位の流動費や 負債を有している団体があることがわかる.

4.3. クラス別(収入規模別)に見た流動資産,現預金 4.3.1. クラス別に見た流動資産,現預金の支出月額比

では,クラス別に見た場合の資金繰りあるいは支払 い能力はどのようなものなのか.まず,流動資産及び 現預金が月額支出額にして何ヶ月分を期末に有してい るのか調べてみることにした.

【データの検証】

現預金及び流動資産の対支出比が示す数値は予想 以上に高いものとなった.平均値では

5.4

ヶ月~

53.6

ヶ 月分の現預金を,流動資産は

7.0

ヶ月~

57.2

ヶ月分の 支出を有している.

NPO

実務者たちが訴える「資金不 足」とはおよそ乖離した数値である.そこで,計算結 果を検証してみることにした.クラス別に出した流動 資産,現預金,当期収支差額(支出月割比),流動比 率,現預金比率の全てについて,歪度,尖度,四分位 範囲を算出した(芝・南風原

1990: 34,

竹内

1987: 112).

その結果,これらの数値の分布が大きく歪んでいるこ とがわかった.従って,極端に大きな数値が全体の平 均値をつり上げていると推測される.そこで,ここで は中央値に着目することにした.

【現預金と流動資産の月額支出比】

現預金の月額支出比(中央値)ではクラス

0

3.0

月,クラス

1

2.8

月程度,クラス

3

以上は

1.3

1.4

月程度を持ち,流動資産ではクラス

0

を除けば,

2.4

3.7

月程度を有しているという結果になった.しかし,

この結果も

NPO

関係者が訴える「資金不足」とは乖離 がある.

そこで,現預金や流動資産に直接寄与する当期収支 差額に着目することにした.その平均値は

8.7

46.0

月分とかなり高い数値を示していたのでデータを検証 し中央値に着目することにした.クラス

1

以上の中央 値は

0.2

0.4

月程度で,比較的低い数値を示している.

4.3.2. 比較的高い現預金,流動資産の月額比率の理由

当期収支差額が少額であるにもかからず何故,流動 資産,現預金を一定規模確保できているのであろう か.そこで,NPOの相談業務に携わる公認会計士,

6 収入規模2千万円台の収入構造

7 収入規模10億円以上の収入構造

4 流動資産,固定資産,流動負債,固定負債,正味財産,現預 金,借入金,借入金融機関,借入金その他,借入金不明,入会 金・会費収入,寄付金収入,事業収入,行政委託事業,補助 金・助成金収入,行政補助金,その他補助金,不明補助金,そ の他経常収入,経常収入合計,事業費,管理費,その他経常支 出,経常支出合計,管理人件費,事業人件費,経常収支差額,

当期収支差額,前期繰越正味財産,当期正味財産増加額.

5 愛知県県民生活部社会活動推進課(2007)を参考にした.

(10)

3 クラス別(収入規模別)に見た基本データ

class 0 class 1 class 2 class 3 class 4 class 5

経常収入合計 観測数 1,020 6,487 2,722 1,110 847 307

平均値 0 1,381,863 10,571,825 28,349,177 60,881,318 249,618,893

中央値 0 889,784 9,818,933 27,584,603 56,424,694 148,000,000

標準偏差 0 1,357,556 4,120,399 5,661,345 16,494,782 412,865,518

最小値 0 1 5,000,004 20,006,517 40,007,903 100,000,000

最大値 0 4,989,892 19,953,255 39,994,639 99,976,994 3,570,000,000

経常支出合計 観測数 1,020 6,483 2,721 1,110 847 307

平均値 263,979 1,538,369 10,430,076 26,943,676 57,240,114 214,862,876

中央値 0 905,997 9,555,197 26,349,524 54,029,346 134,000,000

標準偏差 3,684,694 2,043,056 5,569,956 8,241,685 25,878,042 352,954,440

最小値 0 0 0 0 0 91,863

最大値 114,000,000 63,449,114 89,958,917 128,000,000 602,000,000 3,470,000,000

流動資産 観測数 1,020 6,480 2,721 1,110 847 307

平均値 377,164 867,163 3,464,034 8,478,754 17,290,931 71,420,393

中央値 0 246,112 1,947,006 6,181,592 13,643,088 37,234,923

標準偏差 1,832,694 3,186,458 5,592,337 13,931,071 21,141,020 166,080,053

最小値 −2,037,518 −2,762,506 −145,579 −1,154,611 0 1,134,491 最大値 27,231,290 110,000,000 102,000,000 267,000,000 397,000,000 2,150,000,000

固定資産 観測数 1,020 6,389 2,686 1,106 845 306

平均値 543,171 718,483 2,321,679 5,174,468 13,867,584 42,536,807

中央値 0 0 76,440 774,031 2,780,427 8,594,309

標準偏差 5,817,067 9,385,636 12,327,208 19,682,897 98,975,998 154,597,862

最小値 0 −889,018 −738,000 0 0 0

最大値 145,000,000 581,000,000 312,000,000 516,000,000 2,810,000,000 2,360,000,000

流動負債 観測数 1,020 6,411 2,703 1,109 846 307

平均値 351,085 548,442 2,017,205 4,535,385 9,731,124 36,768,253

中央値 0 0 654,198 2,419,015 6,030,301 18,189,889

標準偏差 1,975,178 2,978,575 5,079,558 7,564,328 12,491,439 92,053,636

最小値 −108,293 −1,784,243 −4,213,988 −19,140 −77,435 0

最大値 36,917,459 133,092,353 94,393,304 133,024,713 141,495,975 1,135,549,448

固定負債 観測数 1,020 6,368 2,666 1,103 832 306

平均値 284,909 337,268 1,306,318 3,804,685 9,918,559 16,212,778

中央値 0 0 0 0 0 0

標準偏差 3,031,548 3,212,570 8,175,360 24,492,701 98,616,475 42,030,206

最小値 −1,600,000 0 0 −1,342,046 0 0

最大値 62,447,482 150,000,000 250,000,000 739,000,000 2,800,000,000 339,000,000

正味財産 観測数 1,020 6,479 2,720 1,110 847 307

平均値 297,309 692,233 2,494,761 5,339,611 11,724,978 61,230,585

中央値 0 122,845 918,249 2,884,372 6,851,899 19,910,802

標準偏差 6,093,604 9,333,493 11,716,594 13,088,957 24,727,329 213,650,156

最小値 −69,701,182 −71,563,296 −61,052,012 −73,571,110 −88,768,931 −50,505,114 最大値 150,000,000 582,000,000 365,000,000 226,000,000 407,000,000 2,750,000,000 当期収支差額 観測数 1,020 6,482 2,721 1,110 847 307 平均値 −35,944 35,001 474,252 1,387,485 3,512,057 28,638,099

中央値 0 20,173 164,690 696,217 1,789,780 5,424,385

標準偏差 783,286 1,557,963 3,568,211 5,401,708 10,076,658 170,347,693

最小値 −10,403,264 −18,490,657 −46,352,163 −41,282,276 −73,230,941 −144,731,931 最大値 10,000,000 61,780,681 83,880,039 97,646,475 123,031,792 2,053,486,280

(11)

NPO

センターの相談員にヒアリングを行なったとこ ろ次のような事項が挙げられた.

(1)期末に寄付金や委託金のまとまった現金収入を 得たが,その支出が翌期になるため,結果的に,

期末の現預金が多額になっている.

(2)前の任意団体から引き継いだ流動資産を有して いる.

3

)経常支出を過度に低く押さえている,ボラン ティアによる無償の労働がそれを補っている.

(4)借入金によって現預金を確保している.

そこで,これらの事項を仮説としデータを用いて考 察を試みることとする.

4.4. 仮説と考察

4.4.1. 寄付や委託金及び別団体から引き継いだ流動資

産について

期末に寄付や委託金などまとまった現金収入を得た が,その支出が翌期になるため結果的に期末の現預金 が多額になっている,という事実を本財務データベー スが

2003

年度のみのデータであることから明らかに することは不可能である.但し,収入全体に占める寄 付比率が

1

割以下に留まることを考えると,寄付金の みで

3

ヶ月分の支出に相当する現預金を蓄積したとは 考え難い.また行政委託金のデータが

2

件分しか計上

されていないことからこの点もデータからは明らかに できない.

前任団体から引き継いだ流動資産については,流動 資産内容を区分するデータはないため本データベース から明らかにすることはできなかった.なお,個別の 財務諸表でもこの点を明記している団体とそうでない 団体があるため,改めてヒアリングやアンケートで確 認する必要があると思われる.

4.4.2. 低い経常支出額

経常支出額は事業規模や事業内容と比較しないと正 確にその大小を議論することはできない.しかしなが ら,支出を押さえるために管理費,人件費を押さえて いるという

NPO

関係者の意見をもとに,事業費,管理 費,人件費合計6などを算出しようとした.しかしな がら,本データベースに示されている人件費は

2

件の みのデータであることから分析を断念せざるを得な かった.次に,管理費についてクラス別に算出してみ た.経常支出に対する管理費比率は,クラス

1

0.32

32%

)(中央値),クラス

2

0.23

23%

),クラス

3

0.18

18%

)と,収入規模が大きくなるほど比率が低 くなる傾向がある.NPOの事業の多くが,受益者を対

4 クラス別(収入規模別)に見た流動資産,現預金

class 0 class 1 class 2 class 3 class 4 class 5

流動資産/経常支出

(月額) 観測数 167 6,288 2,714 1,108 845 307

平均値 47.1 57.2 12.7 16.7 7.0 47.6

中央値 5.3 3.7 2.4 2.8 2.9 3.0

標準偏差 146.7 1,790.3 368.8 386.8 73.4 745.3

最小値 −12.0 −195.2 −0.3 −0.6 0.0 0.1

最大値 1,394.3 136,412.2 19,194.1 12,821.4 2,112.1 13,062.9

現預金/経常支出

(月額) 観測数 167 6,287 2,714 1,108 845 307

平均値 46.2 53.6 11.5 15.2 5.4 45.7

中央値 3.0 2.8 1.4 1.3 1.3 1.3

標準偏差 146.9 1,787.0 362.2 377.7 73.4 745.4

最小値 −12.0 −61.0 −1.0 −0.6 −0.7 0.0

最大値 1,394.3 136,412.2 18,853.5 12,515.9 2,112.1 13,062.9

5 クラス別(収入規模別)に見た当期収支差額の支出(月額)比

class 0 class 1 class 2 class 3 class 4 class 5

当期収支差額/

経常支出(月額) 観測数 167 6,289 2,715 1,108 845 307

平均値 1.57 30.2 8.7 13.36 2.18 46.04

中央値 −12 0.27 0.21 0.31 0.35 0.44

標準偏差 79.82 1724.61 335.54 380.45 20.04 745.64

最小値 −129.46 −4148.6 −26.52 −46.94 −8.51 −5.57

最大値 772.85 136,412.2 17,461.42 12,607.75 493.62 13,062.87

6 データベースでは事業人件費と管理人件費が別項目で記され ているため両者を合計した.

(12)

象とした社会サービスを提供する内容であるため労働 集約的な業務であるが,収入の

2

3

割以下という管 理費比率は低めに抑制されていると見ることもでき る.人件費比率,あるいはそこに無償役務として投じ られたボランティアの投入量を確認し,管理費をあわ せて見ることで,

NPO

が経常支出額を低く抑えている 実態をより明確に確認する必要があるが,現預金や流 動費の対経常支出額比が高めに出る理由の一つとし て,抑制された経常支出額を挙げることができるもの と思われる.

4.4.3. 借入金による現預金の確保

借入金によって現預金を確保しているのであれば,

負債にかかる費目について見てゆく必要がある.ま た,借入金は支払い能力にも関係してくる.そこで当 面の返済能力を示す,現預金比率(現預金/流動負 債),流動比率(流動資産/流動負債)についてもクラ ス別(収入規模別)に算出することにした.計算結果 は表

7

の通りである.

【データの検証】

まず目を引いたのは高い現預金比率,流動比率の平 均値である.クラス

4

の流動比率の平均値は

181.8

,他 のクラスも高い比率を示しかつ変動が激しい.現預金

比率もクラス

4

175

倍,他クラスも

4.4

倍から

94.9

倍と高い比率でかつばらつきが大きい.馬場・小椋

(2006: 73)によれば,現預金比率は

1(100%)以下で

あれば資金不足になる可能性があり,流動比率は

1.5

(150%)以上が安心と述べているので,これらの目安 と比較しても相当,かなり高い比率であることがわか る.そこで,データの検証を行なった.ここでも,ク ラス別に出した流動資産,現預金,当期収支差額(支 出月割比),流動比率,現預金比率の全てについて,歪 度,尖度,四分位範囲を算出した.その結果,これら の数値の分布が大きく歪んでいることがわかった.

従って,ここでは中央値に着目することにする.また,

流動比率,現預金比率では観測数が減っているが,流 動負債

0

円と記載した団体が計算から外されたためで ある.

【借入金】

借入金を計上した団体は

3,798

件で全体の

30%

程度 である.平均値は収入規模に応じて上がるがクラス

4

(4千万円~

1

億円)からは

1

千万円以上の借入金があ る.クラス

0,クラス 1

のような収入規模の団体でも

6

千万円から

1

億円以上の借入金を計上する団体も存在 していることがわかる.

6 クラス別(収入規模別)に見た経常支出,事業費,管理費

class 0 class 1 class 2 class 3 class 4 class 5

経常支出合計 観測数 1,020 6,483 2,721 1,110 847 307 平均値 263,979.3 1,538,368.8 10,430,076.2 26,943,675.7 57,240,113.8 214,862,875.7

中央値 0.0 905,997.0 9,555,197.0 26,349,523.5 54,029,346.0 134,000,000.0

標準偏差 3,684,693.8 2,043,056.2 5,569,956.1 8,241,684.8 25,878,041.9 352,954,440.2

最小値 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 91,863.0

最大値 114,000,000.0 63,449,114.0 89,958,917.0 128,000,000.0 602,000,000.0 3,470,000,000.0

事業費 観測数 1,020 6,459 2,717 1,110 846 307

平均値 129,750.4 890,740.2 6,482,265.6 16,949,757.5 36,335,494.1 140,864,834.8

中央値 0.0 344,762.0 5,783,722.0 18,029,574.0 37,174,062.5 99,157,712.0

標準偏差 2,363,510.7 1,547,164.7 4,958,794.2 10,687,828.2 22,576,918.6 245,928,493.7

最小値 0.0 −663,057.0 0.0 0.0 0.0 0.0

最大値 73,546,770.0 49,239,905.0 86,497,828.0 124,000,000.0 102,000,000.0 2,600,000,000.0

管理費 観測数 1,020 6,465 2,714 1,108 845 306

平均値 111,128.4 545,054.2 3,035,365.0 6,874,909.3 13,822,204.3 49,591,451.5

中央値 0.0 183,271.0 1,991,187.5 4,780,956.0 9,128,192.0 21,948,759.5

標準偏差 1,094,639.8 1,027,779.3 3,404,357.6 7,612,212.4 15,516,014.7 148,471,614.6

最小値 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

最大値 29,895,871.0 26,149,003.0 37,127,314.0 62,841,434.0 84,911,056.0 2,078,800,879.0 管理費/経常支出比 観測数 167 6,272 2,708 1,106 842 304

平均値 0.62 0.40 0.3 0.26 0.25 0.23

中央値 1.0 0.32 0.23 0.18 0.18 0.13

標準偏差 0.44 0.34 0.27 0.26 0.26 0.26

最小値 0 0 0 0 0 0

最大値 1 1 1 1 1 1

(13)

流動負債の平均値も収入規模に応じて大きくなる が,他方でクラス

0,クラス 1

のような収入規模の小 さい団体でも

3

千万円強から

1

億円以上の流動負債を 計上する団体もある.固定負債を計上した団体は全体 の

13%

であり,流動負債額と比較して少額である.ち なみに各団体の借入金の流動負債比率を計算したとこ ろ

1.0

を超える団体が

13%

存在しているが,これらは

1

年以上の返済期間を有する固定負債である.

これらのデータからどのようなことが言えるであろ うか.まず金融機関からの借入を計上している団体は 非常に少なく,殆どの団体はそれ以外の方法で借入を 行なっている.その内容は,理事や役員,あるいは職 員からの借入金,あるいは事業立ち上げに必要な資金 を出資のようなかたちで資金を集め「預かり金」とし ているなどが考えられる7.役員からの借入は比較的返 済期限がルーズで流動負債から固定負債に転じること も考えられる.また,預かり金もその性質から固定負

債と記載されている可能性が高いものと考えられる.

従って,1.3~

1.4

月分の支出額に相当する現預金には 借入金が寄与しており,その内訳は役員や会員など団 体関係者からの短期及び中長期の借入の組み合わせに よるものと言えよう.

【現預金比率,流動比率と流動負債の問題】

一般に現預金比率は

1.0

以上,流動比率は

1.5

以上が 安定していると言われている(馬場・小椋

2006: 73).

クラス別に見た現預金比率,流動比率はクラス

3

以降

2

千万~

4

千万円)安定した数値を示している.これ らの指標は当面の支払い能力を示しているのだが,果 たして

NPO

の場合にはこの指標と数値が適当である のか疑問である.その理由として以下

3

点を挙げたい.

1

に多くの

NPO

が訴える「資金不足」と乖離があ

7 クラス別(収入規模別)に見た借入金,負債および現預金比率,流動比率

class 0 class 1 class 2 class 3 class 4 class 5

借入金 観測数 1,020 6,388 2,677 1,106 842 307

平均値 408,931 585,712 1,807,767 3,966,565 11,591,933 19,383,534

中央値 0 0 0 0 1,446,848 2,430,000

標準偏差 3,239,068 3,929,502 8,010,591 10,590,332 98,101,398 41,798,947

最小値 0 −8,706,195 −4,800,000 0 0 0

最大値 62,447,482 150,000,000 265,000,000 135,000,000 2,800,000,000 296,000,000

流動負債 観測数 1,020 6,411 2,703 1,109 846 307

平均値 351,085 548,442 2,017,205 4,535,385 9,731,124 36,768,253

中央値 0 0 654,198 2,419,015 6,030,301 18,189,889

標準偏差 1,975,178 2,978,575 5,079,558 7,564,328 12,491,439 92,053,636

最小値 −108,293 −1,784,243 −4,213,988 −19,140 −77,435 0

最大値 36,917,459 133,092,353 94,393,304 133,024,713 141,495,975 1,135,549,448

固定負債 観測数 1,020 6,368 2,666 1,103 832 306

平均値 284,909 337,268 1,306,318 3,804,685 9,918,559 16,212,778

中央値 0 0 0 0 0 0

標準偏差 3,031,548 3,212,570 8,175,360 24,492,701 98,616,475 42,030,206

最小値 −1,600,000 0 0 −1,342,046 0 0

最大値 62,447,482 150,000,000 250,000,000 739,000,000 2,800,000,000 339,000,000 流動資産/

流動負債 観測数 165 2,871 2,099 996 805 299

平均値 4.8 89.7 100.6 16.6 181.8 28.2

中央値 0.2 1.1 1.6 1.9 1.9 1.8

標準偏差 24.4 2,250.9 3,203.7 141.5 4,669.5 167.3

最小値 −3.5 −69.1 −1,125.3 −282.3 −64.9 0.2

最大値 251.7 85,273.4 146,514.6 3,760.7 132,333.3 2,074.0

現預金/流動負債 観測数 165 2,871 2,099 996 805 299

平均値 4.4 86.4 94.9 14.3 175.0 25.0

中央値 0.1 0.8 1.1 1.0 0.9 0.8

標準偏差 24.0 2,249.6 3,146.2 133.8 4,664.5 164.9

最小値 −3.5 −14.9 −828.2 −281.6 −64.7 0.0

最大値 251.7 85,273.4 143,914.6 3,711.1 132,333.3 2,063.7

7 PRO(アットプロ)からのヒアリングによる(2007710 日).

(14)

る点である.

2

に,流動比率や現預金比率という指標が

NPO

の業態とマッチしているかという点である.例えば,

売掛金があっても支払いが遅れる場合には流動比率は 高く出ても資金がショートする可能性がある.

3

に流動負債の問題である.流動負債を

0

円と計 上した団体は全体の

57%

存在している.発生主義の考 え方に基づけば事業を営んでいる限り何らかの流動負 債が発生しているのだが,未収金や未払金を計上せず 現金主義に基づく会計処理をしているために流動負 債を

0

と計上している団体が相当数存在すると考えら れる.

従って,支払い能力を見るために現預金比率や流動 比率を算出したものの,

NPO

の会計処理方法が整備さ れないとこれらの財務指標を用いるのは難しいと思わ れる.

5. 結  論

本論の目的は,NPOの実務者たちが訴える「資金不 足」を財務データベースから明らかにし,さらにその 構造を探ることにあった.まず資金不足を経営の持続 性の問題と捉えたが,組織の成長段階によってその意 味も異なる.そこでデータベースに記載された団体全 体が「誕生期」にあると考えた.この時期にある財務 面の持続性とは当面の支払い能力や手元流動性であ る.12,509団体を収入規模別に区分し分析を行なった が,意外にも支出

1ヶ月分の現預金,3

月支出分の流 動資産を有していた.この数字は経理担当者たちの苦 労や経験から得られた知恵の結果である.しかしなが ら,それは人件費を低く抑え経常支出を抑制し,理 事や関係者からの借入によって成立している数値で あった.ここから見えてくるのは

NPO

経営者の苦悩と 葛藤である.組織を維持し事業を継続させるためには 一定規模の現金を手元に確保しておく必要があるが,

収支差額(余剰)をあてにすることができないため,

借入によってようやく確保している姿が浮かび上がっ てくる.

この問題を通して再考しなければならないのは内部 留保に対する考え方である.経常収支差額をごく少額 に抑制していることは分析からも明らかであった.そ の背景には利益追求を主たる目的としない

NPO

は余 剰を作るのは望ましくないと考える人が,NPO側に も,また行政側にも少なくないという点が挙げられる だろう.また,旧公益法人制度では内部留保を厳しく 抑制する指導が久しく行われてきたが,この点も先の 考え方に影響していると思われる.しかしながら組織

を維持し事業を継続するという視点からは一定の留保 が必要であるのは明らかである.そのためには,繰越 が可能な寄付や会費,あるいは事業収入からの余剰の あり方を再考する必要があるだろう.

最後に会計処理の問題について挙げたい.

NPO

の主 たる収入源が事業収入であるが,そうであれば発生主 義に基づく会計処理が必要になるだろう.しかし,現 実には処理方法はまちまちであった.この問題は多く の

NPO

経営者が望む「経営の目安」「モデル」を構築 することの障害にもなる.会計基準が統一されず,記 載が統一されていない状態では財務指標を作ることは 困難であるからだ.アカウンタビリティの視点から会 計基準の問題が指摘されて久しいが,

NPO

経営者のた めの診断ツールの開発という視点からも会計処理方法 の標準化が求められる.

6. 今後の課題

【仮説「比較的高い現預金比率や流動比率」に関する更 なる実証作業とデータ整備】

本論では,比較的高い数値を示した現預金比率や流 動比率については,四つの仮説を立てたが,本データ ベースのみでは明らかにすることには限界があった.

課題は次の

4

点である.

1

に期末に委託金などまとまった現金が入り,そ の支出が翌期になることについては経年のデータで,

かつ個票データとあわせて確認してゆく必要があるだ ろう.第

2

に法人格を取得する以前の任意団体の財産 を引き継いでいるという仮説については個票データか らの確認も困難であり別途情報を収集する必要があ る.第

3

に経常支出を低く抑えているという点である が,ボランティアなど無償役務によって事業や組織運 営を支えていることが大きく貢献していると予想され るものの財務データベースでは顕在化されない類のも のである.これについては組織や事業運営にかかる情 報とあわせて分析してゆく必要がある.第

4

に借入の 問題であり,借入先の属性についてより細かなデータ が必要となる.今回はヒアリングによってデータの不 足を補おうとしているが

NPO

全体の傾向を示すため にはデータベースに借入先の情報が組み入れられるの が望ましい.ただし,理事や職員からの借入について は

NPO

側の経理処理の仕方はまちまちであったり,

あるいは曖昧である可能性がある.

以上

4

点について仮説検証から明らかになった課題 を挙げたが,本財務データベース分析によって,

NPO

運営の課題がしかも全体の傾向として見えてくるもの の,その原因や状況をさらに分析しようとする場合に

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参照

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